JP4195533B2 - 穴かがりミシンの布開き装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被縫製物に形成した切込みを、一対の布保持部材の相互離間方向への移動により開くようにした穴かがりミシンの布開き装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、穴かがりミシンにおいては、ベッド部に送り台を移動可能に設け、この送り台に、被縫製物を保持可能とする一対の布保持部材を、布切りメスの上下動経路を挟んで該上下動経路に接近または離間するように移動可能に設け、該一対の布保持部材を前記上下動経路に対してそれぞれ接近または離間するように移動させることで、前記一対の布保持部材に保持されて布切りメスによって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉するようにしている。
【0003】
上記のように被縫製物の切込みを開閉する布開き装置の一例として、例えば、特許第2722777号公報に記載のものが知られている。
この公報に記載の布開き装置は、前後方向延びるカッター(布切りメス)の左右両側に位置し得るように送り台に設けられた一対の布受け板と、各布受け板に設けられた布押えとを備え、前記両布受け板に載せられた加工布(被縫製物)に前記カッターにより前後に延びる切込みを形成し、この切込みの両側を前記各布押えにより押えた状態で、前記両布受け板を相互に離れる方向に移動させることにより前記切込みを開くようにしたものにおいて、それぞれの中間部が前記送り台に軸支されて両端が揺動する複数のリンク(第1のリンクと第2のリンク)を前後方向に連結して構成され後端側および前端側の自由端の揺動ストロークが同一となるように設定されたリンク機構を左右一対設け、各リンク機構における後端側および前端側の前記自由端に前記各布受け板の前端部および後端部とそれぞれ連結する連結部(ピン)を設け、前記リンク機構を作動させることにより前記布受け板を移動させるようにしたものである。
【0004】
また、前記布受け板の閉じ側(一対の布受け板が相互に接近する方向)のストッパは前記送り台に、第1のリンクの前端側に対向して固定されており、該ストッパに第1のリンクの前端側が当接することで、第1のリンクの移動を規制するようになっている。
一方、前記布受け板の開き側(一対の布受け板が相互に離間する方向)のストッパは、前記送り台に、第1のリンクの後端側に対向して固定されており、該ストッパに第1のリンクの後端側が当接することで、第1リンクの移動を規制するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記のような布開き装置では以下に述べるような課題があった。
▲1▼リンク機構による揺動運動であるため、布受け板との連結部である第1のリンクおよび第2のリンクの先端、つまりピン(連結部)が円弧運動することになり、このため、布開きの際、布受け板と布押えが前後運動を伴い、この結果被縫製物が所定の位置からずれてしまう。
▲2▼上記のような前後方向の移動量を少なくするためには、第1および第2のリンクのうちの少なくとも一方のリンクの長さを大きくとる必要があり、このようにすると、前後のスペースを大きく必要とし、装置の大型化を招くことになる。
▲3▼リンク機構による揺動運動であるため、第2のリンクの両端部に長孔を形成し、各長孔に角駒を摺動自在に嵌合したうえで、この角駒にピンを回動自在に挿入しているので、構造が複雑になるとともに、角駒と長孔には高い加工精度が要求されるので、コスト高を招くことにもなる。
▲4▼前記リンク機構を構成する第1および第2のリンクにそれぞれ設けられている前後のピンの移動量差は、リンク機構を構成する部品の加工精度で決まり、高い部品精度が要求され、また、リンク機構であるために、前後のピンの移動量差の微調節、つまり、布受け板を移動させる機構の微調節をすることができない。
【0006】
▲5▼また、前記布受け板の閉じ側のストッパが前記送り台に、第1のリンクの前端側に対向して固定されているので、つまりストッパが布受け板から近いとことにある被駆動系側に設けられているので、布受け板の閉じ側における移動規制の微調整を行うことが困難である。
▲6▼同様に、ストッパが布受け板から近いとことにある被駆動系側に設けられているので、布押えや布切りメス等が邪魔になって、ストッパの位置調整を行い難くく、しかも、布受け板に被縫製物を載せた状態ではストッパの位置調整は殆ど不可能である。
▲7▼同様に、ストッパが布受け板から近いとことにある被駆動系側に設けられているので、言い換えるとストッパが機構の内部にあるため、送り台のカバーを取り外しての、調整作業となり手間がかかる。
▲8▼また、前記布受け板の開き側のストッパも、布受け板から近いとことにある被駆動系側に設けられているので、送り台のカバーを取り外しての、調整作業となり手間がかかる。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、布開きの際に被縫製物がずれることなく、かつ装置の大型化、コスト高を招くこともなく、布受け板(布保持部材)を移動させる機構の微調整ができ、さらには、布受け板の閉じ側における移動規制の微調整を容易に行うことができる穴かがりミシンの布開き装置を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の穴かがりミシンの布開き装置は、例えば図1に示すように、被縫製物を保持可能とし互いに布切りメス(7)の上下動経路を挟んで該上下動経路に接近または離間するように左右方向に移動可能に設けられた一対の布保持部材(布受け板11)と、前記一対の布保持部材(11)を前記上下動経路に対してそれぞれ接近または離間するように左右方向に移動させることで、前記一対の布保持部材(11)に保持されて布切りメス(7)によって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉する一対の布開き手段(21)とを備え、前記布開き手段(21)を、前記布保持部材(11)の移動方向と直交する前後方向に移動可能に設けられると共に、該前後方向に対して傾斜した傾斜面30が形成された作動体(カム板22)と、この作動体(22)に連結されて、該作動体(22)を前後方向に移動させる駆動部材(駆動リンク23)と、前記布保持部材(11)に連結されて、左右方向に移動可能に設けられた従動体(レール板24)と、前記従動体 ( 24 ) に取付けられると共に、前記作動体(22)の前後方向への移動によって該作動体 ( 22 ) の傾斜面(30)を相対的に転動することにより、前記従動体 ( 24 ) を左右方向に移動させるコロ27とを備えた構成としたものである。
また、請求項2の穴かがりミシンの布開き装置は、請求項1記載において、
前記作動体(22)は、この作動体(22)に形成した長穴(22a)と、この長穴(22a)に挿通された段ねじ(29)により、前後方向に移動可能に支持される一方、
前記従動体 ( 24 ) は、この従動体 ( 24 ) に形成した長穴(24a)と、この長穴(24a)に挿通された段ねじ26により、左右方向に移動可能に支持されるものである。
【0009】
前記布保持部材は、例えば、板状に形成され、被縫製物を縦横に送る送り台に左右方向に移動自在に設けられる。前記作動体は、例えば、前後に長尺な板材で形成され、送り台に前後方向に移動可能に設けられる。また、作動体の端部には前記従動板のコロに摺動自在に当接する傾斜面が形成され、この傾斜面上をコロが相対的に移動することで、該従動体は作動体の前後移動に連動して、左右方向に移動する。
【0010】
前記従動体は、例えば、左右に長尺な板材で形成され、送り台に左右方向に移動可能に設けられる。また、従動体には、前記作動体に形成された傾斜面上を転動可能なコロが設けられているので、作動体の前後移動に連動して従動体が滑らかに左右に移動する。前記駆動体は、例えば、中央部を送り台に回動可能に軸支された駆動リンクで形成する。そして、この駆動リンクの一端部を前記作動体に連結し、他端部をエアシリンダ等の駆動源に連結する。前記布保持部材と従動体とを連結するには、例えば、布保持部材に穴を形成する一方で、従動体にピンを設け、このピンを前記穴に挿入すればよい。
【0011】
請求項1の穴かがりミシンの布開き装置においては、駆動部材によって作動体が前後方向に移動すると、この作動体の前後移動に連動して、従動体が左右方向に移動し、これによって、該従動体に連結された布保持部材が左右方向に移動する。つまり、布保持部材は従動体の左右方向の移動に伴って、左右方向にのみ移動し、従来のような前後運動を伴わないので、布開きの際に被縫製物がずれることがない。
【0012】
また、従来のリンク機構と異なり、布保持部材が前後運動を伴わず被縫製物にずれが生じないので、従来のようなリンクの長さを大きくとるといったことが必要なく、よって、前後のスペースは従来に比して少なくなり、装置の大型化を招くことがない。
さらに、作動体の前後移動に連動して従動体が左右方向に移動し、これによって布保持部材が左右方向に移動するので、つまり、機構が直線運動によって構成されているので、従来と異なり、リンクに長孔を形成したり、この長穴に角駒を摺動自在に嵌合するといった複雑な構造を必要としない。よって、構造が簡単であり、コスト高を招くこともない。
【0013】
請求項3の穴かがりミシンの布開き装置は、例えば図2に示すように、被縫製物を保持可能とし互いに布切りメス ( 7 ) の上下動経路を挟んで該上下動経路に接近または離間するように左右方向に移動可能に設けられた一対の布保持部材 ( 布受け板11 ) と、前記一対の布保持部材 ( 11 ) を前記上下動経路に対してそれぞれ接近または離間するように左右方向に移動させることで、前記一対の布保持部材 ( 11 ) に保持されて布切りメス ( 7 ) によって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉する一対の布開き手段 ( 21 ) とを備え、前記布開き手段 ( 21 ) を、前記布保持部材 ( 11 ) の移動方向と直交する前後方向に移動可能に設けられた作動体 ( カム板22 ) と、この作動体 ( 22 ) に連結されて、該作動体 ( 22 ) を前後方向に移動させる駆動部材 ( 駆動リンク23 ) と、前記布保持部材 ( 11 ) に連結されて、前記作動体 ( 22 ) の前後移動に連動して、左右方向に移動する従動体 ( レール板24 ) とを備え、
前記従動体(24,24)を前後に離間して複数設け、これら従動体(24,24)に、各従動体(24)と前記作動体(22)との位置関係を調節する調節部材(40)をそれぞれ設けたものである。
【0014】
前記調整部材は、例えば、前記従動体に取付け位置を調整可能に取付けられたコロ板と、このコロ板に取付けられて、前記作動体に形成された傾斜面を転動するコロとから構成する。
【0015】
請求項3の穴かがりミシンの布開き装置においては、各従動体と作動体の位置関係をそれぞれの調節部材によって調節することで、複数の従動体の位置を調節し、これによって、従動体に連結されている布保持部材を移動させる機構の調整を行うことができる。また、各従動体の位置を調節部材によって調節できるので、従動体等には高い部品精度は必要ない。
【0016】
請求項4の穴かがりミシンの布開き装置は、例えば図3に示すように、被縫製物を保持可能とし互いに布切りメス ( 7 ) の上下動経路を挟んで該上下動経路に接近または離間するように左右方向に移動可能に設けられた一対の布保持部材 ( 布受け板11 ) と、前記一対の布保持部材 ( 11 ) を前記上下動経路に対してそれぞれ接近または離間するように左右方向に移動させることで、前記一対の布保持部材 ( 11 ) に保持されて布切りメス ( 7 ) によって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉する一対の布開き手段 ( 21 ) とを備え、前記布開き手段 ( 21 ) を、前記布保持部材 ( 11 ) の移動方向と直交する前後方向に移動可能に設けられた作動体 ( カム板22 ) と、この作動体 ( 22 ) に連結されて、該作動体 ( 22 ) を前後方向に移動させる駆動部材 ( 駆動リンク23 ) と、前記布保持部材 ( 11 ) に連結されて、前記作動体 ( 22 ) の前後移動に連動して、左右方向に移動する従動体 ( レール板24 ) とを備え、
前記従動体(24,24)を前記作動体(22)の移動方向に離間して複数設け、これら従動体(24,24)に、これらを連結するようにして作動部材(布開き板45)を固定し、この作動部材(45)に前記布保持部材(11)を連結したものである。
【0017】
請求項4の穴かがりミシンの布開き装置においては、複数の従動体を作動部材によって連結し、この作動部材に前記布保持部材を連結したので、複数の従動体に作動部材を介して容易に布保持部材を連結することができる。
【0018】
請求項5の穴かがりミシンの布開き装置は、例えば図4に示すように、被縫製物を保持可能とし互いに布切りメス ( 7 ) の上下動経路を挟んで該上下動経路に接近または離間するように左右方向に移動可能に設けられた一対の布保持部材 ( 布受け板11 ) と、前記一対の布保持部材 ( 11 ) を前記上下動経路に対してそれぞれ接近または離間するように左右方向に移動させることで、前記一対の布保持部材 ( 11 ) に保持されて布切りメス ( 7 ) によって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉する一対の布開き手段 ( 21 ) とを備え、前記布開き手段 ( 21 ) を、前記布保持部材 ( 11 ) の移動方向と直交する前後方向に移動可能に設けられた作動体 ( カム板22 ) と、この作動体 ( 22 ) に連結されて、該作動体 ( 22 ) を前後方向に移動させる駆動部材 ( 駆動リンク23 ) と、前記布保持部材 ( 11 ) に連結されて、前記作動体 ( 22 ) の前後移動に連動して、左右方向に移動する従動体 ( レール板24 ) とを備え、
前記布切りメス(7)の上下動経路に対して前記布保持部材(11)が最接近する位置と、最離間する位置とのうち、少なくとも最接近する位置を、前記駆動部材(23)の移動範囲を規制することで規制する規制手段(50)を、前記駆動部材(23)の近傍に設け、該駆動部材(23)の移動ストロークを、前記従動体(24)の移動ストロークより長く設定したものである。
【0019】
請求項5の穴かがりミシンの布開き装置においては、前記規制手段が駆動部材の近傍に設けられており、該駆動部材の移動ストロークが従動体の移動ストロークより長いので、少なくとも、布保持部材の閉じ側(前記布切りメスの上下動経路に対して前記布保持部材が最接近する位置)における移動規制の微調整を容易に行うことができる。また、規制手段が布保持部材から遠いところにある駆動部材の近傍に設けられているので、移動規制の調整作業を、布切りメス等が邪魔になることなく、しかも、被縫製物を布保持部材に載せたままで容易に行うことができる。
【0020】
請求項6の穴かがりミシンの布開き装置は、例えば図4に示すように、請求項5において、前記規制手段(50,51)が、前記駆動部材(23)の移動範囲を調節可能に構成されているものである。
【0021】
請求項6の穴かがりミシンの布開き装置においては、駆動部材の移動範囲を調節することができるので、布保持部材の閉じ側(前記布切りメスの上下動経路に対して前記布保持部材が最接近する位置)と、開き側(前記布切りメスの上下動経路に対して前記布保持部材が最離間する位置)との位置を容易に変更調節することができる。したがって、布保持部材に保持されている被縫製物の布開き量の微調整を行うことができる。
【0022】
請求項7の穴かがりミシンの布開き装置は、例えば図4に示すように、請求項6において、前記規制手段(50,51)が、ミシン機枠の外側から、駆動部材(23)の移動範囲を調節操作可能に構成されているものである。
【0023】
ミシン機枠の外側から調節操作可能とは、例えば、ミシン機枠の一部を構成するベッド上に送り台が設けられ、この送り台に布開き装置が設けられている場合において、送り台の外側から調節操作可能であるということである。
【0024】
請求項7の穴かがりミシンの布開き装置においては、ミシン機枠の外側から、駆動部材の移動範囲を調節操作可能であるので、送り台のカバーを装着したままの状態で布保持部材の移動規制の微調整を行うことができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の穴かがりミシンの布開き装置(以下、布開き装置と略称する。)の実施の形態について説明する。
まず、図8を参照して穴かがりミシンの概略構成について簡単に説明する。ミシン機枠1は、略矩形箱状をなすベッド部2に、その奥方上部から前方に延びるアーム部3が設けられてなるもので、ベッド部2の下部にはボトムカバー4が取付けられている。アーム部3の先端部には、縫針5が取付けられた針棒6が上下動可能に設けられており、一方、ベッド部2には針棒6の直下に位置して、該針棒6の上下動に同期して作動することにより縫針5と協働して被縫製物に縫目を形成するルーバー(図示せず)が設けられている。
【0026】
また、前記アーム部3には、布切りメス7が上下動可能に設けられており、前記ベッド部2にはメス受け台(図示せず)が設けられている。そして、前記布切りメス7では、被縫製物に鳩目穴状の切り込みを形成できるようになっている。
図8において符号8で示すものは布押えであり、この布押え8によって、被縫製物を送り台10上に設けられた布受け板(布保持部材)11に押え付け、この状態で、鳩目穴の形状に応じて送り台10を移動させて鳩目穴の周縁に順次かがり縫いを施すようになっている。なお、送り台10はその下方およびベッド部2内に設けられた送り台移動手段12によって移動するようになっている。
【0027】
前記布押え8を作動させる機構について説明すると、図9に示すように、布押え8を先端に備えたアーム部13は軸13aを介して布受け板11に回動自在に軸支されており、その基端部には、前記布受け板11に形成された孔11aを通して該布受け板11の裏側に延出する⊂状の受けアーム部14が形成されている。そして、送り台10にはリンク15が左右に延びる軸16を介して回動自在に設けられており、その一方の端部に取付けられたピン17が前記受けアーム部14と連結されている。この場合、受けアーム部14はピン17に対して左右方向に摺動自在である。また、リンク15の他方の端部に取付けられたピン18は、送り台10に設けられたエアシリンダからなる押え用駆動体19のロッド19aにジョイント20を介して連結されている。
そして、上記構成の機構では、ロッド19aを伸ばすと、布押え8が下方に回動し、この布押え8によって被縫製物が布受け板11に押さえ付けられるようになっている。
【0028】
(第1実施形態例)
次に、本発明に係る布開き装置の第1例について図1を参照して説明する。
図1は布開き装置を示す平面図である。この図に示すように、前記送り台10には、布切りメス7の上下動経路を挟んで左右両側に、一対の布受け板(布保持部材)11,11が前記上下動経路に接近または離間するように左右方向(矢印A・B方向)に移動可能に設けられているが、図1においては、右側の布受け板11は、布開き手段21を示すために省略してある。
この布開き手段21は、前記布切りメス7の上下動経路を挟んで左右両側にそれぞれ設けられており、前記一対の布受け板11,11をそれぞれ左右方向に移動させることで、該布受け板11,11に保持されて布切りメス7によって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉するようになっている。
【0029】
前記布開き手段21は、送り台10に左右対称にして設けられているので、ここでは、右側の布開き手段21ついて説明し、左側の布開き手段21についての説明は省略する。
すなわち、右側の布開き手段21は、前記布受け板11の移動方向(図1において矢印A・B方向)と直交する前後方向(図1において矢印C・D方向)に移動可能に設けられたカム板(作動体)22と、このカム板22に連結されて、該カム板22を前後方向に移動させる駆動リンク(駆動部材)23と、前記布受け板11に連結されて、前記カム板22の前後移動に連動して、左右方向に移動するレール板(従動体)24,24とを備えている。
【0030】
前記布受け板11には前後に二つの穴11b,11bが形成され、該穴11b,11bに、前記レール板24,24の先端部に設けられた布開き受けピン25,25を挿入することにより、布受け板11とレール板24,24とが連結されている。
前記レール板24は左右に長尺なものであり、その左右両端部にはそれぞれ左右方向に長い長穴24a,24aが形成されており、該長穴24a,24aに段ねじ26,26を挿通し、該段ねじ26,26を送り台10にねじ込むことにより、レール板24は送り台10に左右方向に直線移動可能に取付けられている。また、前記各レール板24の右端部下面には、コロ27が段ねじ28によって回転可能に取付けられている。
【0031】
前記カム板22は前後(矢印C・D方向)に長尺なものであり、その前後端部にはそれぞれ前後に長い長穴22a,22aが形成されており、該長穴22a,22aに段ねじ29,29を挿通し、該段ねじ29,29を送り台10にねじ込むことにより、カム板22は送り台10に前後方向に直線移動可能に取付けられている。また、前記カム板22はレール板24,24の下側に配置されており、該カム板22の前後端部には、それぞれ傾斜面30,30が形成されている。これら傾斜面30,30は後方に向かうにしたがって漸次左方に傾斜するもので、該傾斜面30,30には以下のようにして前記コロ27,27が当接するようになっている。
【0032】
すなわち、前記送り台10には、前記レール板24,24より前方位置において、ばね31,31がねじ段32,32によって取付けられており、該ばね31,31は、レール板24,24に設けられたピン33,33に当接されている。そして、該ピン33,33はばね31,31によって、左方(矢印A方向)に付勢され、これによって、レール板24,24が左方に付勢されている。
したがって、レール板24,24に取付けられたコロ27,27は、前記ばね31,31の付勢力によって、前記傾斜面30,30にカム板22を左方に付勢した状態で当接している。
【0033】
そして、前記カム板22が前後に移動すると、コロ27,27が傾斜面30,30を相対的に転動して、左右方向に移動し、これに伴ってレール板24,24が左右に移動するようになっている。すなわち、レール板24,24は、カム板24,24の前後の移動に連動して、左右に移動するようになっている。
【0034】
前記駆動リンク23は、前記レール板24,24間でかつ前記カム板22の右方に配置されており、その中央部を段ねじ34によって送り台10に取付けることで、段ねじ34を支点として回動自在に送り台10に取付けられている。前記駆動リンク23の一端部には長穴23aが形成されており、この長穴23aに段ねじ35を挿入して、該段ねじ35を前記カム板22の中央部にねじ込むことによって、駆動リンク23の一端部は、カム板22の中央部に回動かつ摺動自在に連結されている。
【0035】
一方、前記駆動リンク23の他端部は、エアーシリンダ36のピストンロッド36aにナックル37を介して回転可能に連結されている。このエアーシリンダ36は、送り台10の右縁部に、前後に向けて配置されたもので、その後端部はピン38を介して送り台10に回転可能に取付けられている。なお、前記エアーシリンダ36は、図示しないコンプレッサ等のエアー供給源に、図示しない電磁弁とエアーホースを介して接続され、制御装置によってピストンロッド36aが動作するようになっている。
【0036】
そして、駆動リンク23はエアーシリンダ36のピストンロッド36aによって段ねじ34を支点として回動し、該駆動リンク23の回動によって、カム板22が前後に直線移動し、このカム板22の前後の直線移動によってレール板24,24が傾斜面30,30およびコロ27,27を介して、左右に直線移動するようになっている。
また、前記駆動リンク23の移動ストローク、すなわち、駆動リンク23の端部の前後方向への移動ストロークは、レール板24,24の左右方向への移動ストロークより長くなるように設定されている。例えば、駆動リンク23の移動ストローク:レール板の左右方向への移動ストローク=5:1に設定されている。
【0037】
次に上記構成の布開き手段21による布開き動作について説明する。
まず、エアーシリンダ36のピストンロッド36aが引込み位置にあり、この状態において、前記カム板22は、図1に示す状態より前方側に位置して、コロ27,27は傾斜面30,30の下側に位置し、レール板24,24が閉じ側(布切りメスの上下動経路に対して布受け板11が最接近する位置)に位置している。
【0038】
上記の初期状態からエアーシリンダ36を作動させて、そのピストンロッド36aを図1に示す状態まで伸ばす。すると、駆動リンク23が段ネジ34を支点として時計回りに回転し、これによって、該駆動リンク23の一端部(左端部)が後方(矢印D方向)に移動する。駆動リンク23の一端部が後方に移動すると、カム板22が後方に直線移動し、これによって、前記レール板24,24に取付けられているコロ27,27がばね31,31の付勢力によって傾斜面30,30を相対的に転動しながら上る。
コロ27,27が傾斜面30,30を上ると、レール板24,24が右方(矢印B方向)に直線移動し、該レール板24,24に布開き受けピン25,25によって連結されている布受け板11が右方に移動する。なお、前記送り台10の左側の布受け板11は同様にして、左方に移動する。
したがって、布受け板11,11に保持されている被縫製物の切込みが開かれる。なお、被縫製物の切込みを閉じる際には、上記布開き手段21を逆方向に作動させることで行う。
【0039】
このように、本例の布開き装置においては、駆動リンク23によってカム板22が前後方向に移動すると、このカム板22の前後移動に連動して、レール板24,24が左右方向に移動し、これによって、該レール板24,24に連結された布受け板11が左右方向に移動する。つまり、布受け板11はレール板24,24の左右方向の移動に伴って、左右方向にのみ移動し、従来のような前後運動を伴わないので、布開きの際に被縫製物がずれることがない。
【0040】
また、従来のリンク機構と異なり、布受け板11が前後運動を伴わず被縫製物にずれが生じないので、従来のようなリンクの長さを大きくとるといったことが必要なく、よって、前後のスペースは従来に比して少なくなり、装置の大型化を招くことがない。
さらに、カム板22の前後移動に連動してレール板22,22が左右方向に移動し、これによって布受け板11が左右方向に移動するので、つまり、機構が直線運動によって構成されているので、従来と異なり、リンクに長孔を形成したり、この長穴に角駒を摺動自在に嵌合するといった複雑な構造を必要としない。よって、構造が簡単であり、コスト高を招くこともない。
【0041】
(第2実施形態例)
図2は本発明に係る布開き装置の第2例を示す平面図である。図2に示す布開き装置が、図1に示す布開き装置と異なる点は、前記レール板24,24に、各レール板24と前記カム板22との位置関係を調節する調節部材40をそれぞれ設けた点であるので、この点について説明し、他の共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0042】
前記調整部材40は以下のように構成されている。
各レール板24の右端部下面には、コロ板41が止めねじ42,42によって取付位置を調節可能に取付けられている。つまり、各レール板24には、二つの長穴(図示略)が形成されており、各長穴に止めねじ42を挿通して、該止めねじ42をコロ板41にねじ込むことで、コロ板41はレール板24に固定されている。したがって、止めねじ42を緩めて、コロ板41をレール板24に対して長穴の分だけ若干移動させることで、コロ板41の位置を調節したうえで、止めねじ42を締め付けることで、位置調節されたコロ板41をレール板24に固定することができる。
そして、前記コロ板41に、前記コロ27が段ねじ28によって回転可能に取付けられている。したがって、コロ板41の取付け位置を調節することで、コロ27の位置を調節し、これによって、各レール板24と前記カム板22との位置関係を調節するようになっている。
【0043】
前記コロ板41の調節位置は、前記送り台10上に設けられた左右の布受け板11,11(図2においては右側の布受け板11が省略されている。)が平行となる、言い換えれば、前後に配置されたレール板24,24の先端部に設けられて、該レール板24,24を布受け板11に連結するための布開き受けピン25,25の左右方向の位置が等しくなる位置である。
つまり、前記カム板22の前後に形成された傾斜面30,30に、レール板24,24に設けられた前後2個のコロ27,27が当接した際における、2本のレール板24,24の左右の位置を、前記コロ27,27の位置を調節することで、レール板24,24の先端部に設けられた布開き受けピン25,25の左右方向の位置が等しくなるように調節できるようになっており、これによって、各レール板24とカム板22との位置関係を調節するのである。
【0044】
本例の布開き装置においては、上記第1例の布開き装置と同様の作用効果を得ることができる外、前記レール板24,24に調節部材40,40を設けたので、前後2本のレール板24,24と、カム板22との位置関係を、該レール板24,24の先端部に設けられた布開き受けピン25,25の左右方向の位置が等しくなる位置に調節することができ、これによって、布開き受けピン25,25によってレール板24,24に連結されている布受け板11を移動させる機構の調整を行うことができる。
また、レール板24,24の位置を調節部材40,40によって調節できるので、レール板24,24等に高い部品精度を必要とせず、コスト低下を図ることができる。
【0045】
(第3実施形態例)
図3は本発明に係る布開き装置の第3例を示す平面図である。図3に示す布開き装置が、図2に示す布開き装置と異なる点は、前記レール板24,24に、これらを連結するようにして布開き板(作動部材)45を固定し、この布開き板45に前記布受け板11を連結した点であるので、この点について説明し、他の共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
すなわち、前記布開き板45は、平面視において略二等辺三角形状をなすものであり、その底辺の長さが、前記前後のレール板24,24間の距離とほぼ等しく設定されている。また、前記布開き板45の底辺角部にはそれぞれ、2個の穴が形成されており、該穴にねじ46を挿入して、レール板24,24の先端部にねじ込むことによって、該レール板24,24に、これらを連結するようにして布開き板45が固定されている。
【0047】
また、布開き板45の底辺角部にはそれぞれ長穴が形成されており、該長穴に前記レール板24を送り台10に取付ける段ねじ26の頭部が露出している。
さらに、前記布開き板45の底辺角部には、それぞれ布開き受けピン25,25が設けられており、該布開き受けピン25,25を布受け板11に形成された穴11b,11bに挿入することによって、布受け板11が布開き板45に連結されている。つまり、布受け板11は、布開き板45を介して前後2本のレール板24,24に連結されている。
【0048】
また、前記布開き板45の頂部には、ばね47の一端部が係止されており、該ばね47の他端部には、送り台10に取付けられたばね掛け48に係止されている。前記ばね47は、図1および図2に示すばね31の代わりをなすもので、引張り状態で設けられ、該ばね47の付勢力によって、布開き板45を矢印A方向に付勢し、これによって、レール板24,24に取付けられたコロ27,27は、前記傾斜面30,30にカム板22を左方に付勢した状態で当接している。
【0049】
本例の布開き装置においては、上記第2例の布開き装置と同様の作用効果を得ることができる外、前記2本のレール板24,24を布開き板45によって連結し、この布開き板45に布開き受けピン25,25を設けたので、該布開き受けピン25,25は常に左右方向において等しい位置に位置することになり、よって、前記布受け板11に形成された穴11b,11bに布開き受けピン25,25を容易に挿入することができる。したがって、2本のレール板24,24に布開き板45を介して布受け板11を容易に連結することができる。
【0050】
(第4実施形態例)
図4〜図6は本発明に係る布開き装置の第4例を示すもので、図4は平面図、図5は図4におけるY矢視図、図6は図4におけるX矢視図である。図4〜図6に示す布開き装置が、図3に示す布開き装置と異なる点は、前記布切りメス7の上下動経路に対して前記布受け板11が最接近する位置と、最離間する位置の双方を前記駆動リンク23の移動範囲を規制することで規制する規制手段50,51を、駆動リンク23の近傍に設けた点であるので、この点について説明し、他の共通部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0051】
前記規制手段51は、縫製時の布受け板11の位置決めを行うもので、以下のように構成されている。
すなわち、前記送り台10にはねじ穴52が形成されており、このねじ穴52にはストッパねじ53が螺合されており、ナット54で固定されている。そして、前記ストッパねじ53の先端部に、前記駆動リンク23の先端部が当接することで、駆動リンク23の時計方向への回転を規制するようになっている。
【0052】
上記のような規制手段51では、駆動リンク23の先端部が当接することで、カム板22の後方(矢印D方向)への移動が規制され、これによって、レール板24,24、布開き板45の右方(開き側)への移動が規制されるので、この布開き板45に連結されている前記布受け板11の開き側への移動が規制される。
したがって、前記ストッパねじ53の位置調節を行うことで、布受け板11の開き側への移動規制(位置規制)を行うことができる。
また、前記規制手段51は、布受け板11から遠いところにある駆動リンク23の近傍でかつ送り台10の前端部に設けられているので、布受け板11の開き側への移動規制の調整作業を、布切りメス7等が邪魔になることなく、しかも、被縫製物を布受け板11に載せたままで容易に行うことができる。
【0053】
前記規制手段50は、初期位置での布受け板11の位置決めを行うもので、以下のように構成されている。
すなわち、前記送り台10の側面には、駆動リンク23とエアーシリンダ36およびナックル37との連結部付近に、駆動リンク23の端部の前後の移動量より十分に長い長穴55が形成されている。
また、前記送り台10の長穴55が形成された部分の内側面には、布開きストッパ板56が配置されており、この布開きストッパ板56には、前記長穴55を貫通して止ねじ57,57がねじ込まれている。そして、布開きストッパ56は、止ねじ57,57を締め付けることで、送り台10に固定され、止ねじ57,57を緩めることで、前後に移動可能となっている。なお、前記止ねじ57,57と送り台10との間には長穴55の目隠しとなるストッパカバー58が挟まれて、該止ねじ57,57によって固定されている。
【0054】
また、前記布開きストッパ板56には、長穴60が形成されている。この長穴60は、前記長穴55より短く、かつ、前記駆動リンク23の端部の前後の移動量よりは長いものであり、該長穴60には駆動リンク23の端部に延出形成された延出部23aが挿入されている。なお、この延出部23aは前記ストッパカバー58に接触しない範囲で前記長穴55にも入り込んでいる。
前記布開きストッパ板56の前端部はL型に曲げられており、この部分にはねじ穴61が形成されている。一方、送り台10の側面の前部端面62には穴63が形成されており、この穴63には調節ねじ64が挿通され、該調節ねじ64は前記ねじ穴61に螺合している。したがって、前記止ねじ57,57を緩めたうえで、調節ねじ64を回すことで、布開きストッパ板56は前後に移動するようになっている。
【0055】
そして、上記構成の規制手段50では、前記エアシリンダ36のピストンロッド36aが引き込まれて、駆動リンク23が反時計回りに回転し、その延出部23aが矢印D方向に移動して、布開きストッパ板56の長穴60の端面に当接することで、駆動リンク23の移動範囲を規制し、これによって、布受け板11の閉じ側の位置を規制するようになっている。
すなわち、駆動リンク23の延出部23aが前記長穴60の端面に当接することで、カム板22の前方(矢印C方向)への移動が規制され、これによって、レール板24,24、布開き板45の左方(閉じ側)への移動が規制されるので、この布開き板45に連結されている前記布受け板11の閉じ側への移動が規制される。
したがって、前記布開きストッパ板56の位置を、調節ねじ64によって調節することで、布受け板11の閉じ側への移動規制(位置規制)を行うことができる。
【0056】
上記構成の規制手段50,51を備えた布開き手段21による布開き動作は、基本的には、上記第1例の布開き手段21によるものと同様であるが、以下に簡単に説明する。
まず、エアーシリンダ36のピストンロッド36aが引込み位置にあり、レール板24,24が閉じ側(布切りメスの上下動経路に対して布受け板11が最接近する位置)に位置している。
【0057】
上記の初期状態からエアーシリンダ36を作動させて、そのピストンロッド36aを図4に示す状態まで伸ばすと、駆動リンク23が時計回りに回転し、これによって、該駆動リンク23の一端部が後方(矢印D方向)に移動する。駆動リンク23の一端部が後方に移動すると、カム板22が後方に直線移動し、これによって、前記レール板24,24が右方(矢印B方向)に直線移動し、該レール板24,24に布開き受けピン25,25によって連結されている布受け板11が右方に移動し、これに伴って布受け板11に保持されている被縫製物の切込みが開いていく。
【0058】
そして、前記駆動リンク23の延出部23aが前記規制手段51のストッパねじ53の先端部に当接すると、駆動リンク23の作動が停止し、これによって、布受け板11の移動も停止し、布開き動作が終了する。
一方、被縫製物の切込みを閉じる際には、駆動リンク23の延出部23aがストッパねじ53に当接している状態から、上記布開き手段21を逆方向に作動させることで行うことで、被縫製物の切込みが閉じていく。そして、駆動リンク23の延出部23aが前記規制手段50の布開きストッパ板56の長穴60の端部に当接することで、駆動リンク23の作動が停止し、これによって、布受け板11の移動も停止し、布閉じ動作が終了する。
【0059】
また、前記規制手段50によって、布開き量を調整するには以下のようにして行う。
まず、前記エアシリンダ36のピストンロッド36aを引き込み状態としておき、駆動リンク23の延出部23aを、布開きストッパ板56の長穴60の端面に当接させておく。
次に、この状態で前記止ねじ57,57を緩め、調節ねじ64を回すと、布開きストッパ板56が前後に移動し、その長穴60の端面に当接している駆動リンク23の延出部23aが前後に移動し、これによって、駆動リンク23が段ねじ34を支点として回動する。
【0060】
この場合、調節ねじ64を右に回すと、布開きストッパ板56が前方(矢印C方向)に移動し、これによって、駆動リンク23が時計回りに回転してカム板22が後方(矢印D方向)に移動し、布開き板45が右方(矢印B方向)に移動する。布開き板45が右方に移動すると、これに連結されている布受け板11が右方に移動する。このときの布受け板11の位置が、閉じ側への規制位置であるので、この位置と、開き側の規制位置との間隔が短くなるので、布受け板11の開き側への移動量が小さくなって、この結果、布開き量が小さくなる。
【0061】
一方、前記調節ねじ64を左に回すと、布開きストッパ板56が後方(矢印D方向)に移動し、これによって、駆動リンク23が反時計回りに回転してカム板22が前方(矢印C方向)に移動し、布開き板45が左方(矢印A方向)に移動する。布開き板45が左方に移動すると、これに連結されている布受け板11が左方に移動する。このときの布受け板11の位置が、閉じ側への規制位置であるので、この位置と、開き側の規制位置との間隔が長くなるので、布受け板11の開き側への移動量が大きくなって、この結果、布開き量が大きくなる。
【0062】
上記のようにして、布開き量を調整したならば、前記止ねじ57,57を締め付けて、布開きストッパ板56を送り台10に固定する。このように、前記規制手段50では、布開き量を容易に調整することができる。
また、前記規制手段50が駆動リンク23の近傍に設けられており、該駆動リンク23の移動ストロークがレール板24,24の移動ストロークより長いので、前記調整ねじ64を回転させることで、布受け板11の閉じ側(前記布切りメスの上下動経路に対して前記布保持部材が最接近する位置)における移動規制の微調整を容易に行うことができる。
【0063】
さらに、前記規制手段50は、布受け板11から遠いところにある駆動リンク23の近傍でかつ送り台10の右縁部に設けられているので、布受け板11の閉じ側への移動規制の調整作業を、布切りメス7等が邪魔になることなく、しかも、被縫製物を布受け板11に載せたままで容易に行うことができる。
また、前記規制手段50,51はいずれも、ミシン機枠の外側から、駆動リンク23の移動範囲を調節操作可能に構成されているので、送り台10のカバーを装着したままの状態で布受け板11の移動規制の調節を行うことができる。
なお、本例の布開き装置においても、上記第3例の布開き装置と同様の作用効果を得ることができるのは言うまでもない。
【0064】
(第5実施形態例)
図7は本発明に係る布開き装置の第5例を示す平面図である。図7に示す布開き装置が、図1に示す布開き装置と異なる点は、前記カム板22に延出腕70を形成した点であるので、この点について説明し、他の共通分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0065】
すなわち、本例の布開き装置においては、図1に示す第1例の布開き装置に備えている駆動リンク23が備えられておらず、この替わりに、カム板22に延出腕70が形成されている。
この延出腕(駆動部材)70はカム板22の中央部より若干前側に、右方に延出するように形成されたもので、その先端部は、前記エアシリンダ36のピストンロッド36aの先端部にナックル37を介して回動自在に連結されている。
したがって、前記カム板22はピストンロッド36aを前後に伸縮させることで、延出腕70を介して前後に移動し、これによって、前記布受け板11がレール板24,24を介して左右に移動するようになっている。
【0066】
上記のように、本例の布開き装置では、第1例の布開き装置と同様の作用効果を得ることができる外、駆動リンク23やこれを送り台10に取り付けるための段ねじ34等が不用であるので、部品点数を少なくすることができるとともに、布開き手段21の機構が、第1例のものに比して簡単になるという利点がある。
【0067】
なお、上記の五つの例では、布受け板11にレール板24,24を連結し、該レール板24,24を左右に移動させることで、布受け板11を左右に移動させるようにしたが、本発明では前記レール板24,24に替えてLMガイドを使用してもよく、また、レール板24,24に替えて軸を使用し、送り台10にこの軸を移動自在に支持する穴を設け、この穴にブッシュ等を介して前記軸を左右に移動自在に挿通するようにしてもよい。
【0068】
また、前記第1例、第2例、第3例および第5例の布開き装置に、第4例の布開き装置に設けたような規制手段50,51を設けてもよいのは勿論のことである。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の請求項1および2の穴かがりミシンの布開き装置によれば、開き手段を、布保持部材の移動方向と直交する前後方向に移動可能に設けられると共に、該前後方向に対して傾斜した傾斜面が形成された作動体と、この作動体に連結されて、該作動体を前後方向に移動させる駆動部材と、前記布保持部材に連結されて、左右方向に移動可能に設けられた従動体と、従動体に取付けられると共に、前記作動体の前後方向への移動によって該作動体の傾斜面を相対的に転動することにより、前記従動体を左右方向に移動させるコロとを備えているので、駆動部材によって作動体が前後方向に移動することで、この作動体の前後移動に連動して、従動体が左右方向に移動し、これによって、該従動体に連結された布保持部材が左右方向に移動する。このように、布保持部材は従動体の左右方向の移動に伴って、左右方向にのみ移動し、従来のような前後運動を伴わないので、布開きの際に被縫製物がずれることがない。
【0070】
また、上記のように、布保持部材が前後運動を伴わず被縫製物にずれが生じないので、従来のようなリンクの長さを大きくとるといったことが必要なく、よって、前後のスペースは従来に比して少なくなり、装置の大型化を招くことがない。
さらに、作動体の前後移動に連動して従動体が左右方向に移動し、これによって布保持部材が左右方向に移動するので、つまり、機構が直線運動によって構成されているので、従来と異なり、リンクに長孔を形成したり、この長穴に角駒を摺動自在に嵌合するといった複雑な構造を必要としない。よって、構造が簡単であり、コスト高を招くこともない。
【0071】
請求項3の穴かがりミシンの布開き装置によれば、前記従動体を前後に離間して複数設け、これら従動体に、各従動体と前記作動体との位置関係を調節する調節部材をそれぞれ設けたので、各従動体と作動体の位置関係をそれぞれの調節部材によって調節することで、複数の従動体の位置を調節し、これによって、従動体に連結されている布保持部材を移動させる機構の調整を行うことができる。また、各従動体の位置を調節部材によって調節できるので、該従動体に高い部品精度を必要とせず、この点においても、コスト高を招くこともない。
【0072】
請求項4の穴かがりミシンの布開き装置によれば、前記従動体を前記作動体の移動方向に離間して複数設け、これら従動体に、これらを連結するようにして作動部材を固定し、この作動部材に前記布保持部材を連結したので、複数の従動体に作動部材を介して容易に布保持部材を連結することができる。
【0073】
請求項5の穴かがりミシンの布開き装置によれば、前記布切りメスの上下動経路に対して前記布保持部材が最接近する位置と、最離間する位置とのうち、少なくとも最接近する位置を、前記駆動部材の移動範囲を規制することで規制する規制手段を、前記駆動部材の近傍に設け、該駆動部材の移動ストロークを、前記従動体の移動ストロークより長く設定したので、少なくとも、布保持部材の閉じ側(前記布切りメスの上下動経路に対して前記布保持部材が最接近する位置)における移動規制の微調整を容易に行うことができる。また、規制手段が布保持部材から遠いところにある駆動部材の近傍に設けられているので、移動規制の調整作業を、布切りメス等が邪魔になることなく、しかも、被縫製物を布保持部材に載せたままで容易に行うことができる。
【0074】
請求項6の穴かがりミシンの布開き装置によれば、請求項5と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、前記規制手段が、前記駆動部材の移動範囲を調節可能に構成されているので、布保持部材の閉じ側(前記布切りメスの上下動経路に対して前記布保持部材が最接近する位置)と、開き側(前記布切りメスの上下動経路に対して前記布保持部材が最離間する位置)との位置を容易に変更調節することができる。したがって、布保持部材に保持されている被縫製物の布開き量の微調整を容易に行うことができる。
【0075】
請求項7の穴かがりミシンの布開き装置によれば、請求項6と同様の効果を得ることができるのは勿論のこと、前記規制手段が、ミシン機枠の外側から、駆動部材の移動範囲を調節操作可能に構成されているので、送り台のカバーを装着したままの状態で布保持部材の移動規制の微調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の穴かがりミシンの布開き装置の第1例を示す平面図である。
【図2】本発明の穴かがりミシンの布開き装置の第2例を示す平面図である。
【図3】本発明の穴かがりミシンの布開き装置の第3例を示す平面図である。
【図4】本発明の穴かがりミシンの布開き装置の第4例を示す平面図である。
【図5】図4におけるY矢視図である。
【図6】図4におけるX矢視図である。
【図7】本発明の穴かがりミシンの布開き装置の第5例を示す平面図である。
【図8】本発明に係る布開き装置を備えた穴かがりミシンを示すもので、該ミシンの側面図である。
【図9】同、布押え作動機構を示す側面図である。
【符号の説明】
7 布切りメス
11 布受け板(布保持部材)
21 布開き手段
22 カム板(作動体)
23 駆動リンク(駆動部材)
24 レール板(従動体)
25 布開き受けピン
27 コロ
30 傾斜面
40 調整部材
45 布開き板(作動部材)
50,51 規制手段
56 布開きストッパ板
70 延出腕(駆動部材)
Claims (7)
- 被縫製物を保持可能とし互いに布切りメスの上下動経路を挟んで該上下動経路に接近または離間するように左右方向に移動可能に設けられた一対の布保持部材と、
前記一対の布保持部材を前記上下動経路に対してそれぞれ接近または離間するように左右方向に移動させることで、前記一対の布保持部材に保持されて布切りメスによって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉する一対の布開き手段とを備え、
前記布開き手段は、
前記布保持部材の移動方向と直交する前後方向に移動可能に設けられると共に、該前後方向に対して傾斜した傾斜面が形成された作動体と、
この作動体に連結されて、該作動体を前後方向に移動させる駆動部材と、
前記布保持部材に連結されて、左右方向に移動可能に設けられた従動体と、
前記従動体に取付けられると共に、前記作動体の前後方向への移動によって該作動体の傾斜面を相対的に転動することにより、前記従動体を左右方向に移動させるコロとを備えたことを特徴とする穴かがりミシンの布開き装置。 - 請求項1記載の穴かがりミシンの布開き装置において、
前記作動体は、この作動体に形成した長穴と、この長穴に挿通された段ねじにより、前後方向に移動可能に支持される一方、
前記従動体は、この従動体に形成した長穴と、この長穴に挿通された段ねじにより、左右方向に移動可能に支持されることを特徴とする穴かがりミシンの布開き装置。 - 被縫製物を保持可能とし互いに布切りメスの上下動経路を挟んで該上下動経路に接近または離間するように左右方向に移動可能に設けられた一対の布保持部材と、
前記一対の布保持部材を前記上下動経路に対してそれぞれ接近または離間するように左右方向に移動させることで、前記一対の布保持部材に保持されて布切りメスによって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉する一対の布開き手段とを備え、
前記布開き手段は、
前記布保持部材の移動方向と直交する前後方向に移動可能に設けられた作動体と、
この作動体に連結されて、該作動体を前後方向に移動させる駆動部材と、
前記布保持部材に連結されて、前記作動体の前後移動に連動して、左右方向に移動する従動体とを備え、
前記従動体が前後に離間して複数設けられ、これら従動体には、各従動体と前記作動体との位置関係を調節する調節部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする穴かがりミシンの布開き装置。 - 被縫製物を保持可能とし互いに布切りメスの上下動経路を挟んで該上下動経路に接近または離間するように左右方向に移動可能に設けられた一対の布保持部材と、
前記一対の布保持部材を前記上下動経路に対してそれぞれ接近または離間するように左右方向に移動させることで、前記一対の布保持部材に保持されて布切りメスによって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉する一対の布開き手段とを備え、
前記布開き手段は、
前記布保持部材の移動方向と直交する前後方向に移動可能に設けられた作動体と、
この作動体に連結されて、該作動体を前後方向に移動させる駆動部材と、
前記布保持部材に連結されて、前記作動体の前後移動に連動して、左右方向に移動する従動体とを備え、
前記従動体が前記作動体の移動方向に離間して複数設けられ、これら従動体には、これらを連結するようにして作動部材が固定され、この作動部材に前記布保持部材が連結されていることを特徴とする穴かがりミシンの布開き装置。 - 被縫製物を保持可能とし互いに布切りメスの上下動経路を挟んで該上下動経路に接近または離間するように左右方向に移動可能に設けられた一対の布保持部材と、
前記一対の布保持部材を前記上下動経路に対してそれぞれ接近または離間するように左右方向に移動させることで、前記一対の布保持部材に保持されて布切りメスによって切り込みが形成された被縫製物の前記切込みを開閉する一対の布開き手段とを備え、
前記布開き手段は、
前記布保持部材の移動方向と直交する前後方向に移動可能に設けられた作動体と、
この作動体に連結されて、該作動体を前後方向に移動させる駆動部材と、
前記布保持部材に連結されて、前記作動体の前後移動に連動して、左右方向に移動する従動体とを備え、
前記布切りメスの上下動経路に対して前記布保持部材が最接近する位置と、最離間する位置とのうち、少なくとも最接近する位置を、前記駆動部材の移動範囲を規制することで規制する規制手段が、前記駆動部材の近傍に設けられ、該駆動部材の移動ストロークが、前記従動体の移動ストロークより長く設定されていることを特徴とする穴かがりミシンの布開き装置。 - 請求項5記載の穴かがりミシンの布開き装置において、前記規制手段は、前記駆動部材の移動範囲を調節可能に構成されていることを特徴とする穴かがりミシンの布開き装置。
- 請求項6記載の穴かがりミシンの布開き装置において、前記規制手段は、ミシン機枠の外側から、駆動部材の移動可能な移動範囲を調節操作可能に構成されていることを特徴とする穴かがりミシンの布開き装置。
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