JP4769534B2 - 玉縁縫いミシンの大押さえ装置 - Google Patents

玉縁縫いミシンの大押さえ装置 Download PDF

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Description

本発明は、玉縁縫いミシンの大押さえ装置に関する。
玉縁縫いは、身頃生地のポケットの周囲に玉縁布を縫いつける際に行われる縫い方法であり、ポケットの開口の両側に玉縁が形成される両玉縫いと片側にのみ形成される片玉縫いの二種類がある。
従来の玉縁縫いミシンが行う両玉縫いの概略を図8(A)に示す。玉縁縫いミシンは、両玉縫いに際し、身頃生地Mの上に重ねられた玉縁布Tの上に断面逆T字状のバインダー201を押し当てて、当該バインダー201の逆T字形状に沿わせるように一対の大押さえ202が保持を行い、かかる状態でバインダー201の長手方向に沿って布送り方向に身頃生地M及び玉縁布Tの送りを行う。
そして、バインダーの下流側で二本針203による縫いを行うと共に二本針203の間の位置でセンターメス204による切断を行う。その結果、センターメス204の切断によりポケットの開口が形成され、開口の両側では玉縁布Tが袋状に身頃生地Mに縫いつけられて両玉縁Bが形成される。そして、図8(B)のように、開口の両側の玉縁布Tの袋状の部分がそれぞれ裏返されると、当該各玉縁Bの先端部が互いに対向してポケットの開口を塞いだ状態となる。
一方、片玉縫いは、図9(A)に示すように、一方の大押さえ202によりバインダー201の片側のみに玉縁布Tが保持され、バインダー201の反対側には当該バインダー201の下側に挟まれないように向当て布Kが他方の大押さえ202に保持される。
そして、センターメス204による切断を行いつつ、二本針203により縫製が行われる。その結果、図9(B)のように、開口の片側に形成される玉縁Bが裏返されるとポケットの開口を塞いだ状態となる。
ところで、玉縁縫いでは、二本針203の間隔の幅Gが身頃生地Mの開口幅となる。従って、両玉縫いの場合には、身頃生地Mの開口部分をその両側から折り返された一対の玉縁Bが塞ぐためには、開口幅Gを二分して玉縁をG/2の幅とする必要がある。一方、片玉縫いの場合には玉縁Bが一つしかないので、その幅をGとする必要がある。
従って、両玉縫いを行う際には左右対称なバインダーを使用し、片玉縫いを行う際には玉縁Bが形成される一端側が幅広のバインダーが使用されていた。
そして、従来の玉縁縫いミシンにあっては、上記各バインダーに対応するために大押さえを左右方向に移動させるエアシリンダと、大押さえを両玉縫いと片玉縫いとに適した位置に位置決めする位置決め機構とを備えていた。
かかる位置決め機構は、大押さえと共に左右移動を行う長穴を備えた取付板と、取付板の長穴に嵌挿されたボス状の板止めネジとを備え、長穴の一端と他端とに板止めネジを当てることで二位置に大押さえを位置決めして両玉縫いと片玉縫いとに適した位置の切り替えが行われていた。
実開昭63−147185号公報
上記従来の玉縁縫いミシンでは、縫い条件、例えば玉縁布Tの布厚が異なると、両玉縫いと片玉縫いとで大押さえを位置決めすべき位置が変わってくる。
しかしながら、上記従来例にあっては、取付板の組み付けを行う際の微調整のための構成は備えているが、規制板による大押さえの規制位置を調節する手段は設けられてなく、玉縁布Tの厚さ変化に対応することはできなかった。
本発明は、両玉縫いと片玉縫いとの切り替えにおいて、大押さえを適正な位置に調整可能とすること、その目的とする。
請求項1記載の発明は、上下動する二本針の両側で身頃生地に重ねられた玉縁布を押圧保持する一対の大押さえと、対向配置される一対の支持部を有し、送り駆動手段に連結されて布送り方向に移動する土台部と、土台部に設けられ、各支持部に支持され、各大押さえを個別に保持する一対の大押さえ保持機構とを備え、各大押さえ保持機構は、対向配置される各支持部にその外側に向けて延出支持された第一のガイド軸と、一端が第一のガイド軸に沿って移動可能に支持され、他端が大押さえを保持する押さえ腕とを備えてなる玉縁縫いミシンの大押さえ装置において、少なくとも一方の大押さえ保持機構は、押さえ腕を第一のガイド軸に沿って支持部に対して接近又は離隔移動させることにより、身頃生地及び玉縁布に対する片玉縫いに適する片玉縫い位置と両玉縫いに適する両玉縫い位置とに切り替える切替駆動手段と、切替駆動手段による大押さえの片玉縫い位置の調整を行う第一調整手段と、切替駆動手段による前記大押さえの両玉縫い位置の調整を行う第二調整手段とを備え、第一調整手段は、押さえ腕よりも外側に突出した第一のガイド軸の端部に形成された第一のネジ部と、離隔移動を行う押さえ腕に当接するように第一のガイド軸に設けられると共に第一のネジ部に螺合して回転操作により位置調整可能な第一の操作部材とを有し、第二調整手段は、押さえ腕に前記第一のガイド軸と同じ方向に向けて延出支持された第二のガイド軸と、第二のガイド軸の端部に形成された第二のネジ部と、第二のネジ部に螺合して回転操作により位置調整可能な第二の操作部材と、押さえ腕の離隔移動側に位置し、接近移動を行う押さえ腕と共に移動する第二の操作部材に当接するように支持部に設けられた突き当て部材とを備える、という構成を採っている。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明と同様の構成を備えると共に、第一の操作部材及び第二の操作部材には、所定回転角度ごとに回転操作させる、という構成を採っている。
請求項1記載の発明は、両玉縫いと片玉縫いとを切り替える際には、少なくとも一方の大押さえ保持機構が備える切替駆動手段により、押さえ腕の移動が行われる。
その際、押さえ腕が第一のガイド軸に沿って土台部の支持部から離隔する方向に移動する場合には、その先にある第一の操作部材に当接して位置決めが行われる。
また、押さえ腕が第一のガイド軸に沿って土台部の支持部に接近する方向に移動する場合には押さえ腕と共に移動する第二のガイド軸に設けられた第二の操作部材が突き当て部材に当接して位置決めが行われる。
つまり、押さえ腕は、第一の調節手段と第二の調節手段とにより二位置に位置決めされる。従って、これらの二位置の一方を両玉縫いに適した位置に大押さえを位置決めさせる位置とし、他方を片玉縫いに適した位置に大押さえを位置決めさせる位置に設定することで、切り替えを適正に行うことができる。
そして、第一の調節手段による位置決めの位置を調整する際には、第一のネジ部に螺合する第一の操作部材に回転操作を加えることで第一のガイド軸に沿って当該第一の操作部材の移動調節ができる。また、第二の調節手段による位置決めの位置を調整する際には、第二のネジ部に螺合する第二の操作部材に回転操作を加えることで第二のガイド軸に沿って当該第二の操作部材の移動調節ができる。
従って、玉縁布が異なる各種の厚さであっても、これに容易に対応して玉縁縫いを行うことが可能となる。
また、上記発明は、第一の操作部材と第二の操作部材とが、それぞれ第一のネジ部と第二のネジ部とに螺合しているので、それぞれを回転操作するという非常に簡易な操作だけで容易に両玉縫いと片玉縫いにおける大押さえの位置調節が可能となる。
また、その調節作業は工具を不要とすることが可能である。
さらに、第一及び第二の操作部材は、土台部の支持部に対して外側に向けて延出支持された第一及び第二のガイド軸の先端部に設けられているので、いずれも押さえ腕よりも外側に位置することで操作を行いやすい配置となり、操作性の向上を図ることが可能となる。
なお、「対向配置される各支持部の外側」の方向とは、一対の支持部を中心として、一対の大押さえが互いに離隔する方向をいうものとする。
請求項2記載の発明は、第一の操作部材又は第二の操作部材による回転操作を行う際に、所定回転角度単位ので回転操作が可能となる。従って、第一のネジ部又は第二のネジ部のネジピッチに応じて所定の回転角度単位に対応する移動距離で大押さえの位置決め位置を調整することが可能となる。
このため、両玉縫いと片玉縫いの位置決め調整作業において何回の回転角度単位での回転操作を加えたかを数えることで、位置調整量の目安となり、当該位置調整量を容易に認識することができるので、正確に任意の位置に位置調整することが可能となる。
(発明の実施形態の全体構成)
以下、本発明の実施の形態である玉縁縫いミシン10について図1乃至図7に基づいて説明する。図1は玉縁縫いミシン10の全体の概略構成を示す斜視図である。なお、本実施の形態においては、各図中に示したXYZ軸を基準にしてそれぞれの方向を定めるものとし、Z軸方向は後述するセンターメスの上下動方向と一致し、縫製作業を行う平面はZ軸方向と垂直となり、当該作業平面に平行であって布送りが行われる方向をX軸方向とし、作業平面に平行であってX軸方向に直交する方向をY軸方向とする。
玉縁縫いミシン10は、二本針14,14により形成される二本の平行な縫い目Tにより身頃生地Mに対して玉縁布Tを縫着すると共にこれらの布地の送り方向Fに沿った直線状の切れ目と当該切れ目の両端部に略V字状の切れ目とを形成するミシンである。
そして、この玉縁縫いミシン10は、直線状の切れ目の両側に玉縁Bを形成する両玉縫いと片側のみに玉縁を形成する片玉縫いとを切り替え操作により行うことが可能なミシンである。
上記玉縁縫いミシン10は、縫製の作業台となるミシンテーブル11と、ミシンテーブル11に配置されたミシンフレーム12と、身頃生地M及び玉縁布Tからなる布地の送りを行う大押さえ装置50と、身頃生地Mの上側で玉縁布Tを上方から押さえるバインダー30a(30b)と、バインダー30a(30b)の布送り方向Fにおける下流側近傍であってバインダー30a(30b)の両側で針落ちを行う針上下動機構と、各縫い針14の布送り方向下流側でセンターメス15を昇降させて身頃生地M及び玉縁布Tに切れ目を形成するセンターメス機構と、直線状の切れ目の両端となる位置に略V字状の切れ目Vを形成するコーナーメス機構20とを備えている。
以下各部を詳説する。
(テーブル及びミシンフレーム)
テーブル11はその上面がX−Y平面に平行であって、水平な状態で使用される。そして、テーブル11における縫い針14による針落ち位置には針板13が装着されている。針板13には、二本の縫い針14が個別に挿入される針穴と、センターメス15が挿通されるスリットが形成されている。
また、テーブル11上には、ミシンフレーム12のベッド部12aを格納する凹部が形成されており、当該凹部にミシンフレーム12は設置されている。さらに、テーブル11には、ミシンフレーム12の布送り方向下流側に大押さえ装置50とコーナーメス機構20とが配置され、布送り方向上流側にはバインダー機構(バインダー30a以外は図示略)が配置されている。
ミシンフレーム12は、主に、テーブル11に設置されるベッド部12aとそこから立設された縦胴部12bとその上部から水平に延設されたアーム部12cとから構成されている。
そして、ミシンフレーム12の下部には図示しないミシンモータが配設され、ベッド部12aの内部にはミシンモータから図示しない釜機構に回転駆動力を伝達する下軸がY軸方向に沿った状態で支持されており、アーム部12cの内部には針上下動機構の上下動駆動力をミシンモータから伝達する上軸がY軸方向に沿った状態で支持されている。
上軸と下軸にはそれぞれプーリが固定装備されると共に、ミシンフレーム12の縦胴部12b内を通されたタイミングベルトで連結されている。
(針上下動機構)
針上下動機構は、二本針を構成する二つの縫い針14と、二本針のそれぞれの縫い針14を下端部に保持する二本の針棒と、各針棒をその長手方向に沿って滑動可能に支持する上下のメタル軸受けと、二本の針棒を同時に保持する針棒抱きと、ミシンモータにより回転駆動される上軸と、上軸の一端部に固定連結され回転運動を行う回転錘と、回転錘の回転中心から偏心した位置に一端部が連結されると共に他端部が針棒抱きに連結されたクランクロッドとを有する、周知の構成からなる。
上軸が回転されると、回転錘も同様に回転を行い、クランクロッドの一端部は上軸を中心として円運動を行い、他端部では、一端部の円運動のZ軸方向に移動成分のみが針棒抱きに伝達されて各針棒が往復上下動を行うようになっている。
(センターメス機構)
センターメス機構は、直線状の切れ目を形成するセンターメス15と、センターメス15を下端部に備えると共にアーム部12c内で上下動可能に支持されたメス棒と、メス棒の上下動の駆動源となるメスモータと、メスモータからの回転駆動力を上下方向の往復の駆動力に替えて伝達する伝達機構とを備えている。
即ち、メスモータは、身頃生地M及び玉縁布Tの送り動作と共に回転駆動を行い、伝達機構によりセンターメス15を上下動させて、メス幅に応じた切れ目を繰り返し形成して直線状の切れ目を形成する。
(バインダー機構)
バインダー機構は、断面形状が逆T字状であって玉縁布Tを巻き付けるようにセットして長手方向に沿って送り出すバインダー30a(30b)と、バインダー30a(30b)を昇降可能に支持する支持機構(図示略)とを有している。
上記バインダー30は、テーブル11の上面に対向する底板と当該底板の上面に垂直に立設された立板とから断面視で逆T字状の形状を成している。
このバインダーは、両玉縫い用のバインダー30aと片玉縫い用のバインダー30bと二種類あり、両玉縫い用のバインダー30aは立板31aを境界とする底板32aの両端部の幅が左右均一に形成され(図7(A)参照)、片玉縫い用のバインダー30bは立板31bを境界とする底板32bの一端部(玉縁が形成される方の端部)の幅が他方の端部の幅よりも広く形成されている(図7(B)参照)。
二本の縫い針14はY軸方向について幅Gだけ離れており、それぞれの縫い針14が各バインダー30a,30bの立板31a,31bを挟んで等距離となるG/2の距離で針落ちを行う。
そして、両玉縫い用のバインダー30aの底板32aは各縫い針14の針落ち位置からさらに外側にG/2よりわずかに短く張り出されている。
また、片玉縫い用のバインダー30bの底板32bの一端部は一方の縫い針14の針落ち位置からさらに外側にGよりわずかに短く張り出されており、底板32bの他端部は他方の縫い針14の針落ち位置からさらに外側にG/2よりわずかに短く張り出されている。
支持機構は、バインダー30の昇降動作の駆動源となる図示しないエアシリンダと、当該エアシリンダを駆動する図示しない電磁弁と、エアシリンダの駆動力を上下方向の移動力に替えてバインダー30に付与する複数のリンク体とを備えている。
そして、縫製時には、バインダー機構は、エアシリンダによりバインダー30を下降させ、後述する大押さえ装置50の一対の大押さえ51との協働によりバインダー30の断面形状となるように玉縁布Tをバインダー30に巻き付けるように保持した状態で長手方向に玉縁布Tを送り出し、身頃生地Mへの縫着が行われる。
(大押さえ装置)
図2は大押さえ装置50の全体を示す斜視図である。
大押さえ装置50は、図2に示すように、上下動する二本の縫い針14の両側で身頃生地Mに重ねられた玉縁布Tを押圧保持する一対の大押さえ51と、各大押さえ51が保持する身頃生地M及び玉縁布Tを送り方向Fに沿って送るための図示しない送り駆動手段と、送り駆動手段に連結されて布送り方向Fに移動する土台部52と、土台部52に設けられ、各大押さえ51を個別に保持する一対の大押さえ保持機構70と、身頃生地Mの上に載置された玉縁布Tの両端部をバインダー30a(30b)の底板32a(32b)の上面に沿わせるように折り返す一対の折込板54と、各折込板54を支持すると共に当該各折込板54を互いの接離方向に駆動させる一対の折込板支持機構60とを備えている。
なお、Y軸方向両側に一対で設けられた大押さえ51,大押さえ保持機構70,折込板54及び折込板支持機構60の各構成は、いずれも大押さえ装置50全体のY軸方向中間位置におけるX−Z平面を基準として鏡面対称となる構造なので、大押さえ51及び大押さえ保持機構70の詳細については図2における手前側の構成についてのみ説明することとする。
(大押さえ装置:土台部)
土台部52は、テーブル11上面に固定装備された図示しない支持機構によりX軸方向に沿って移動可能に支持されたベース板55と、ベース板55の下面側にY軸方向に沿って設けられた支軸56により揺動可能に軸支されて対向配置され,各大押さえ保持機構70を個別に保持する一対の保持アーム57(支持部)と、各保持アーム57を揺動させる一対の駆動手段としてのエアシリンダ58とを備えている。
ベース板55は大押さえ装置50の送り駆動手段を除く全体の構成を支持しており、送り駆動手段によりX軸方向に移動位置決めが行われる。即ち、送り駆動手段は、ベース板55を介して、玉縁縫いの縫製作業に際し、布送り方向Fにおける身頃生地M及び玉縁布Tの移動位置決めを行うようになっている。
各支持アーム57は、その長手方向をX軸方向に沿わせた状態で、当該長手方向のほぼ中間位置において支軸56を貫通させた状態でベース板55に支持されている。
各支持アーム57の一端部側には、大押さえ保持機構70及び折込板支持機構60が設けられ、他端部側は、エアシリンダ58に係合している。
各エアシリンダ58は、各支持アーム57の他端部を上下方向に駆動し、一端部側の大押させ51の昇降を可能としている。即ち、各大押さえ51において身頃生地M及び玉縁布Tの保持を行わない状態での各大押さえ51の移動の際には、支持アーム57の他端部を下方に押圧して大押さえ51を上昇させ、身頃生地M及び玉縁布Tの保持を行った状態での各大押さえ51の移動の際には、支持アーム57の他端部を上方に引き寄せて大押さえを下降させ、布保持状態での移動を行わせる。
(大押さえ装置:大押さえ及び折込板)
図3は大押さえ51と大押さえ保持機構70の分解斜視図である。
図3に示すように、大押さえ51は、長尺状の平板であり、その長手方向をX軸方向に沿わせた状態で大押さえ保持機構70に支持されている。
この大押さえ51には、その上面側には天板53が装備され、下面側には身頃生地Mに対する滑り止めと保護を兼ねたゴム板59が装備されている。そして、天板53と大押さえ51との間には隙間空間が形成されており、その中に未使用時の折込板54(図2参照)が格納されるようになっている。
折込板54もまた長尺状の平板であり、その長手方向をX軸方向に沿わせた状態で折込板支持機構60に支持されている。
玉縁布Tは、各大押さえ51の天板53の上面に載置された状態でその上からバインダーに保持される。その結果、玉縁布Tの両端部は、各大押さえ51の先端部に押されて上方に折り曲げられた状態となる。
かかる状態の玉縁布Tに対して、折込板54は、その格納状態から、各大押さえ51の間に配置されたバインダー30a(30b)の立板31a(31b)に向かって移動を行うことで、玉縁布Tの端部を底板32a(32b)と立板31a(31b)に沿わせた状態に折り返すようになっている。
(大押さえ装置:折込板支持機構)
折込板支持機構60は、図2に示すように、折込板54の一端部を保持する移動体61と、移動体61を介して折込板54をY軸方向に沿って移動させる駆動手段としてのエアシリンダ62と、移動体61を介して折込板54を大押さえ51の内側格納位置側に引っ張る引っ張りバネ63とを備えている。
つまり、エアシリンダ62の非作動時には、引っ張りバネ63の張力により、折込板54は大押さえ51の内側への格納状態が維持され、エアシリンダ62が駆動すると、折込板54がバインダー30a(30b)の立板31a(31b)に向かって移動し、玉縁布Tの端部の折り返しが行われるようになっている。
(大押さえ装置:大押さえ保持機構)
大押さえ保持機構70は、図2及ぶ図3に示すように、土台部52の保持アーム57にその外側に向けて延出支持された第一のガイド軸71と、一端が第一のガイド軸71に沿って移動可能に支持され、他端が大押さえ51を保持する押さえ腕72と、押さえ腕72を第一のガイド軸71に沿って土台部52の保持アーム57に対して接近又は離隔移動させることにより身頃生地M及び玉縁布Tに対する片玉縫いに適する片玉縫い位置と両玉縫いに適する両玉縫い位置とに切り替える切替駆動手段としてのエアシリンダ73と、エアシリンダ73による大押さえ51の片玉縫い位置の調整を行う第一調整手段80と、エアシリンダ73による大押さえ51の両玉縫い位置の調整を行う第二調整手段90とを備えている。
上記第一のガイド軸71は、その長手方向をY軸方向に向けた状態でその基端部が保持アーム57の外側面上に固定支持されている。なお、土台部52の外側又は保持アーム57の外側とは、Y軸方向に沿った方向であって、対になるもう一方の各構成から離隔する方向をいうものとする。
また、この第一のガイド軸71は、押さえ腕72に設けられた貫通穴に挿通されており、押さえ腕72をY軸方向に沿って案内するガイドとなっている。
さらに、この第一のガイド軸71は、押さえ腕72を貫通してその先端部には、第一調整手段80が設けられている。
押さえ腕72は、その長手方向がX軸方向に沿った状態で第一のガイド軸71を介して保持アーム57に支持されている。
かかる押さえ腕72は、その一端部に大押さえ51に固定連結される連結体74を備えている。この連結体74は、押さえ腕72の先端部においてY軸方向に沿った支軸により軸支されており、押さえ腕72に対して大押さえ51を幾分揺動可能としている。つまり、大押さえ51は保持アーム57の揺動により昇降を行うので、当該揺動における角度変化を生じても大押さえ51のゴム板59全体がテーブル11の上面の身頃生地Mに追従して接するようになっている。
また、押さえ腕72の他端部近傍にはY軸方向に貫通した貫通穴が形成され、その内部には滑り軸受メタル72aを介して第一のガイド軸71が挿通されており、当該押さえ腕72は、第一ガイド軸71(Y軸方向)に沿って滑動可能となっている。
なお、押さえ腕72と保持アーム57とは、引っ張りバネ75により連結されており、押さえ腕72は、保持アーム57側に近接する方向に常時張力を受けている。
さらに、押さえ腕72における上記貫通穴の上側には、エアシリンダ73が固定装備されている。このエアシリンダ73は、本体部が押さえ腕72に固定されており、突出移動を行うプランジャの先端部が保持アーム57に連結されている。また、エアシリンダ73のプランジャの動作方向がY軸方向に沿うように押さえ腕72に固定されている。
このため、エアシリンダ73のプランジャの後退動作時には押さえ腕72を保持アーム57に近接する方向に引き寄せ(図5参照)、プランジャの突出動作時には押さえ腕72を保持アーム57から離隔する方向に引き離すことができる(図6参照)。
(大押さえ装置:大押さえ保持機構の第一調整手段)
第一調整手段80は、押さえ腕72よりも外側に突出した第一のガイド軸71の端部に形成された第一のネジ部81と、離隔移動を行う押さえ腕72に当接するように第一のガイド軸71に設けられると共に第一のネジ部81に螺合して回転操作により位置調整可能な第一の操作部材82とを備えている。
第一のネジ部81は、第一のガイド軸71の先端の小径部の外周面に形成された雄ネジであり、押さえ腕72は、この第一のネジ部81よりも保持アーム57側において第一のガイド軸71に支持される。
図4(A)は第一の操作部材82の一部を切り欠いた側面図、図4(B)は正面図である。
この図4に示すように、第一の操作部材82は、第一のガイド軸71の先端部が挿通される筒状体であり、その一端部には第一のネジ部81と螺合する雌ネジ部が形成されている。つまり、第一の操作部材82の雌ネジ部を第一のネジ部81と螺合させつつ第一のガイド軸71を挿通させることにより、第一の操作部材82に回転操作を加えることで当該第一の操作部材82を第一のガイド軸71に沿って位置調整することができる。
また、この第一の操作部材82と第一のガイド軸71の先端部との間には、第一の操作部材82を所定回転角度ごとに回転操作させるラチェット機構83が設けられている。
このラチェット機構83は、第一の操作部材82の円周方向について均等な角度間隔である90度ごとに軸方向に沿って形成された四本の溝部84と、第一のガイド軸71に設けられた孔部85内に格納された二つのボール86と、各ボール86を第一の操作部材82の内周面に向かって押圧する押圧バネ87とを備えている。
上記各溝部84は、第一のガイド軸71の軸方向に沿って形成され、第一の操作部材82の内周面から外周面にかけて貫通されている。
孔部85は、第一のガイド軸71に形成された第一のネジ部81の近傍においてガイド軸71の円周の直径方向に沿って貫通形成された円孔である。かかる孔部85はボール86が内部で移動可能な内径に設定されている
二つのボール86は、押圧バネ87を挟んだ状態で孔部85内に格納され、押圧バネ87の自然長は第一のガイド軸71の直径よりも長く設定されている。従って、第一の操作部材82が第一のガイド軸71の先端部に装着された状態において、各ボール86は、第一の操作部材82の内周面を絶えず押圧する。
かかる構成により、ラチェット機構83は、第一の操作部材82に回転操作が加えられると、90度回転されることに各ボール86が溝部84に嵌り込むので、作業者は、その都度90°回転したことを認識することができる。
また、第一のネジ部81のネジピッチが既知であればラチェット機構83による単位回転角度ごとに四分の一ピッチ分の位置調節が行われたことが容易に認識可能である。
なお、溝部84の角度間隔と本数は特に限定されるものではなく、より多くとも少なくとも良いが、一周360度を均一に分割できる角度単位とすることが望ましい。
また、第一の操作部材82の位置調節量を示すゲージを第一のガイド軸71の第一のネジ部近傍の外周面に形成しても良い。
第一調整手段80は、図5に示すように、押さえ腕72がエアシリンダ73により保持アーム57から離隔方向に移動する場合に、押さえ腕72が第一の操作部材82に当接する位置でそれ以上の移動を規制するため、第一の操作部材82の回転操作により適宜位置調整することにより大押さえ51の外側移動における停止位置を任意に調整することができる。
なお、この第一の調整手段80による停止位置は、大押さえ51の片玉縫いを行うための位置決め位置に対応している。
(大押さえ装置:大押さえ保持機構の第二調整手段)
第二調整手段90は、押さえ腕72にY軸方向に向けて延出支持された第二のガイド軸91と、第二のガイド軸91の先端部に形成された第二のネジ部92と、第二のネジ部92に螺合して回転操作により位置調整可能な第二の操作部材93と、押さえ腕72の離隔移動側(外側)に位置し、接近移動(内側移動)を行う押さえ腕72と共に移動する第二の操作部材93に当接するように土台部52の保持アーム57に設けられた突き当て部材としての突き当て板94とを備えている。
第二のガイド軸91は、押さえ腕72の他端部においてY軸方向に沿った状態で抱き締めにより固定保持されている。そして、押さえ腕72が第一のガイド軸71に挿通支持された状態において、第二のガイド軸91の一端部は保持アーム57の貫通穴57aに挿通可能な長さに設定されている。これにより、押さえ腕72が第一のガイド軸71を中心に揺動することを防止している。
さらに、第二のガイド軸91の他端部には、第二のネジ部92が形成されると共に、これを介して第二の操作部材93が装着されている。
なお、第二のガイド軸91と第二の操作部材93との間には、第一のガイド軸71と第二の操作部材82との間に設けられたラチェット機構と同じものが形成されており、且つ、第二の操作部材93は第一の操作部材82と同一の構造を有するのでこれらの説明は省略する。
突き当て板94は、保持アーム57の外側面から立設された二本の保持軸95,95により、押さえ腕72と第二の操作部材93との間の定位置で固定支持されている。この突き当て板94には、第二のガイド軸91の他端部側が挿通される貫通穴が形成されており、当該貫通穴は第二の操作部材93よりも小径に設定されている。
第二調整手段90は、図6に示すように、押さえ腕72がエアシリンダ73により保持アーム57への近接方向に移動する場合に、押さえ腕72と共に移動を行う第二の操作部材93が突き当て板94に当接する位置でそれ以上の移動を規制するため、第二の操作部材93の回転操作により適宜位置調整することにより大押さえ51の内側(近接)移動における停止位置を任意に調整することができる。
なお、この第二の調整手段90による停止位置は、大押さえ51の両玉縫いを行うための位置決め位置に対応している。
(コーナーメス機構)
コーナーメス機構20は、テーブル11の下方であって大押さえ装置50による大押さえ51の通過経路に配置されており、大押さえ装置50により一対のメス21,21からなるコーナーメスの作業位置に搬送された身頃生地M及び玉縁布Tを下方からコーナーメス21を突き通すことで直線状の切れ目の両端となる位置に略V字状の切れ目Vを形成する。
即ち、コーナーメス機構20は、コーナーメス21を上下動させるエアシリンダと、メス21をX軸方向に沿って移動位置決めする駆動モータとを備えている。
(玉縁縫いミシンの縫製動作)
上記構成からなる玉縁縫いミシン10の縫製動作を図1及び図5乃至図7に基づいて説明する。図5及び図7(A)は両玉縫いにおける動作説明図であり、図6,図7(B)及び図7(C)は片玉縫いにおける動作説明図である。
まず、両玉縫いを行う場合にはバインダー30aが使用され、片玉縫いを行う場合にはバインダー30bが使用される。
また、両玉縫いを行う場合には、両方の大押さえ保持機構70のエアシリンダ73が収縮方向に駆動され、各大押さえ51を近接方向に移動させる。これにより、第二の操作部材93が突き当て板94に当接し、各大押さえ51は、両玉縫いに適した位置、つまり、各大押さえ51の間隔が2Gとなる位置(各縫い針14からG/2だけ外側となる位置)に位置決めされる。
一方、片玉縫いを行う場合には、一方の大押さえ保持機構70(例えば図2における手前側の大押さえ保持機構70)のエアシリンダ73のみが突出方向に駆動され、各大押さえ51が離隔するように、一方の大押さえ51を離隔方向に移動させる。これにより、図6に示すように、押さえ腕72が第一の操作部材82に当接し、一方の大押さえ51は、片玉縫いに適した位置、つまり、各大押さえ51の間隔が2.5Gとなる位置(近い方の縫い針14からGだけ外側となる位置)に位置決めされる(図7(B))。
また、玉縁布Tが厚みがある場合には、バインダー30bの端部と大押さえ51との間の距離dをより大きく設定する必要があるため、第一の操作部材82をより第一のガイド軸71の先端側に移動調整する。これにより、バインダー30bの端部と大押さえ51との間の距離dをより大きくした位置に大押さえ51を位置決めすることができる(図7(C))。なお、この場合、位置調整された大押さえ51と縫い針14の距離はdの調整分だけGよりも若干大きくなる。
上記各状態で、身頃生地Mがテーブル11の上面の所定位置に載置され、大押さえ装置70は、各エアシリンダ58により各大押さえ51を上昇させた状態で身頃生地Mの保持位置まで送り駆動手段により搬送する。
そして、大押さえ51を下降させ、両玉縫いの場合には、各大押さえ51の天板53上に玉縁布Tが載置される。また、片玉縫いの場合には、離隔された大押さえ51の天板53上にのみ玉縁布Tが載置される。
さらに、その後、バインダー30a(又は30b)が各大押さえ51の間に向かって下降され、玉縁布Tを保持する。この後、片玉縫いの場合には、玉縁布Tが載置されなかった大押さえ51の下側に向合わせ布Kがセットされる。
そして、各折込板支持機構60は、エアシリンダ62の駆動により折込板54を前進させ、玉縁布T又は向合わせ布Kの端部を折り返す。
その後は、大押さえ装置50の送り駆動手段が駆動しつつ、針上下動機構及びセンターメス機構が所定の動作を行い、直線状の切れ目を形成すると共にその両側で縫いが行われる。
その後、コーナーメス機構20により直線状の切れ目の両端部にはV字状の切れ目が形成される。
これにより、玉縁布Tを身頃生地Mの裏側に折り返すことにより、両玉縫い又は片玉縫いが完了する。
(実施形態の効果)
上記玉縁縫いミシン10の大押さえ装置50にあっては、第一の操作部材82と第二の操作部材93とが、それぞれ第一のネジ部81と第二のネジ部92とに螺合しているので、それぞれを回転操作するという非常に簡易な操作だけで容易に両玉縫いと片玉縫いにおける大押さえ51の位置調節が可能となる。
そして、その調節作業は工具を不要とすることは勿論である。
また、第一及び第二の操作部材82,93は、土台部52の保持アーム57に対して外側に向けて延出支持された第一及び第二のガイド軸71、81の先端部に設けられているので、いずれも押さえ腕72よりも外側に位置することで操作を行いやすい配置となり、操作性の向上を図ることが可能となる。
また、第一の操作部材82又は第二の操作部材93と第一及び第二のガイド軸71、81との間には、回転操作を行う際に、所定回転角度単位ので回転操作が可能とするラチェット機構を設けたので、両玉縫いと片玉縫いの位置決め調整作業において何回の回転角度単位での回転操作を加えたかを数えることで、位置調整量の目安となり、当該位置調整量を容易に認識することができるので、正確に任意の位置に位置調整することが可能となる。
(その他)
なお、大押さえ装置50の両方の大押さえ保持機構70に、第一及び第二の調整手段80,90を設けたが、これらの構成は片方の大押さえ保持機構70のみに設けても良い。
発明の実施形態たる玉縁縫いミシンの全体の概略構成を示す斜視図である。 図1に開示された大押さえ装置の全体を示す斜視図である。 大押さえと大押さえ保持機構の分解斜視図である。 図4(A)は第一の操作部材の一部を切り欠いた側面図、図4(B)は図4(A)のZ−Z線に沿った断面図である。 両玉縫いにおける大押さえ保持機構の動作説明図である。 片玉縫いにおける大押さえ保持機構の動作説明図である。 図7(A)は両玉縫いにおける針板上の動作説明図、図7(B)は片玉縫いにおける針板上の動作説明図、図7(C)は片玉縫いにおける大押さえの位置調節を示す動作説明図である。 図8(A)は従来例における両玉縫いの動作説明図、図8(B)は両玉縫い後の布地の状態を示す説明図である。 図9(A)は従来例における片玉縫いの動作説明図、図9(B)は片玉縫い後の布地の状態を示す説明図である。
符号の説明
10 玉縁縫いミシン
14 縫い針(二本針)
50 大押さえ装置
51 大押さえ
52 土台部
70 大押さえ保持機構
71 第一のガイド軸
72 押さえ腕
73 エアシリンダ(切替駆動手段)
80 第一調整手段
81 第一のネジ部
82 第一の操作部材
83 ラチェット機構
90 第二調整手段
91 第二のガイド軸
92 第二のネジ部
93 第二の操作部材
94 突き当て板(突き当て部材)
M 身頃生地
T 玉縁布
B 玉縁
K 向合わせ布

Claims (2)

  1. 上下動する二本針の両側で身頃生地に重ねられた玉縁布を押圧保持する一対の大押さえと、
    対向配置される一対の支持部を有し、送り駆動手段に連結されて布送り方向に移動する土台部と、
    前記各支持部に支持され、前記各大押さえを個別に保持する一対の大押さえ保持機構とを備え、
    前記各大押さえ保持機構は、前記対向配置される各支持部にその外側に向けて延出支持された第一のガイド軸と、一端が前記第一のガイド軸に沿って移動可能に支持され、他端が前記大押さえを保持する押さえ腕とを備えてなる玉縁縫いミシンの大押さえ装置において、
    少なくとも一方の前記大押さえ保持機構は、
    前記押さえ腕を前記第一のガイド軸に沿って前記支持部に対して接近又は離隔移動させることにより、前記身頃生地及び玉縁布に対する片玉縫いに適する片玉縫い位置と両玉縫いに適する両玉縫い位置とに切り替える切替駆動手段と、
    前記切替駆動手段による前記大押さえの片玉縫い位置の調整を行う第一調整手段と、
    前記切替駆動手段による前記大押さえの両玉縫い位置の調整を行う第二調整手段とを備え、
    前記第一調整手段は、
    前記押さえ腕よりも外側に突出した前記第一のガイド軸の端部に形成された第一のネジ部と、
    前記離隔移動を行う押さえ腕に当接するように前記第一のガイド軸に設けられると共に前記第一のネジ部に螺合して回転操作により位置調整可能な第一の操作部材とを有し、
    前記第二調整手段は、
    前記押さえ腕に前記第一のガイド軸と同じ方向に向けて延出支持された第二のガイド軸と、
    前記第二のガイド軸の端部に形成された第二のネジ部と、
    前記第二のネジ部に螺合して回転操作により位置調整可能な第二の操作部材と、
    前記押さえ腕の離隔移動側に位置し、前記接近移動を行う押さえ腕と共に移動する前記第二の操作部材に当接するように前記支持部に設けられた突き当て部材とを備えることを特徴とする玉縁縫いミシンの大押さえ装置。
  2. 前記第一の操作部材及び第二の操作部材には、所定回転角度ごとに回転操作させることを特徴とする請求項1記載の玉縁縫いミシンの大押さえ装置。
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