JP4913373B2 - ミシンの針駆動機構 - Google Patents
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Description
このうちバックタック縫いは、縫製の開始時及び終了時に、針板上を搬送される被縫製物の送り方向に沿って重複して縫い目を施すものである。このため、針を支持する針棒が送り方向に沿って揺動可能とされた針駆動機構を有するミシンが知られている(例えば、特許文献1参照)。上記特許文献1に示されるミシンでは、ミシン外部に配設された針振り量の調整用のパルスモータを駆動することにより、針棒に連結された針棒揺動軸を送り方向に沿って揺動せしめてバックタック縫いを施す構成となっている。
特に、ミシンのフレームは、鋳造により一体成型されることが多く、組み付け後の調整作業を行うためには、作業用の穴等を設ける必要があり、また、狭いフレーム内での作業は非常に困難なものであった。
このため、針振り機構部のメンテナンスや部品交換を容易に行うことができるとともに、該針振り機構部をミシンに搭載した後における調整作業を容易に行うことができるミシンの開発が望まれていた。
(実施の形態の全体構成)
まず、図1及び図2に基づき第一の実施形態たるミシンの針駆動機構10が搭載される玉縁縫いミシン100の全体構成について説明する。
玉縁縫いミシン100は、図示しない身頃生地に対して玉縁布を縫着するミシンであって、その外形の大部分を構成するミシンフレーム40と、身頃生地及び玉縁布からなる布地の送りを行う布送り機構である図示しない大押さえ送り機構と、二本の針棒25,25を上下に駆動する針上下動機構20及び、針棒25に保持された縫い針26を布送り方向に揺動させる針振り機構30からなる針駆動機構10と、を備えている。
なお、玉縁縫いミシン100は上記構成以外は周知のものであり、本実施の形態では詳述しないが縫製の作業台となる図示しないテーブル、身頃生地の上側で玉縁布を上方から押さえるバインダー、各針棒25の布送り方向下流側で動メスを昇降させて各布地に切れ目を形成するメス機構、該メス機構による直線状の切れ目の両端となる位置に略V字状の切れ目を形成するコーナーメス機構等を備えている。
図1は本実施形態たるミシンの針駆動機構10の要部構成を示す斜視図である。
ミシンフレーム40は、図示しないミシン脚卓上に載置されており、一端側の上面に針板45が設けられたベッド部41と、該ベッド部41の他端部側から立設された縦胴部42と、縦胴部42の上端からベッド部41と同じ方向に延出されたアーム部43とを備えており、全体的には略コ字状に形成されている。
アーム部43内には後述する針上下動機構20と針振り機構30との主要構成が格納されている。また、アーム部43の先端側下端部からは2本の縫い針25,25が垂下支持されている。また、テーブル上には、該ベッド部41の針板45上に載置される被縫製物を搬送する図示しない大押さえ送り機構が備えられている。なお、針板45はその上面がX−Y平面に平行であって、水平な状態で使用される。
大押さえ送り機構は、図示しないバインダーにセットされた玉縁布の幅方向両端部のそれぞれを上方から押さえる大押さえと、これらの大押さえを支持する支持体と、支持体を介して大押さえを上下に移動させる図示しないエアシリンダと、大押さえにより押さえた玉縁布及び身頃生地を支持体を介して布送り方向に移動させる押さえモータとを備えている。
各大押さえは、それぞれ長方形状の平板であり、それぞれが長手方向をX軸方向に沿わせた状態で支持体に支持されている。また、各大押さえはその平板面がX−Y平面に平行となるように支持されている。そして、エアシリンダの駆動により上下の二位置に切り替え可能であり、上位置の時にはテーブルの上面から離間し、下位置でテーブルの上面高さとなる。また、二つの大押さえは、その間に、少なくともバインダーの立板部を通すことができるように離間した状態で支持されている。
支持体は、テーブル上においてX軸方向に沿って移動可能に支持されている。また、支持体は、図示しないボールネジ機構を介して押さえモータに駆動されるようになっている。
次に、本実施形態たるミシンの針駆動機構10について説明する。
針駆動機構10は、針棒25を上下方向に往復駆動する針上下動機構20と、針の先端をX軸方向すなわち送り方向に沿って揺動させる針振り機構30とを備えている。
そして、針上下動機構20は、上軸51及び回転錘21がミシンモータにより回転駆動されると、上述した回転錘21やクランクロッド23を介することにより、上軸51の回転駆動力を上下動駆動力に変換して針棒25に伝達し、縫い針26を上下方向に往復駆動させることが可能となっている。
さらに、本実施形態における針棒25は、後述する針振り機構30により、その往復移動方向を略垂直方向から斜め方向に傾斜させて縫製動作を行うことが可能となっている。
針振り機構30は、ミシンモータとは別に針振り用の駆動源としてエアシリンダ35を備えている。また、針振り機構30は、前述した2本の針棒25,25の移動方向を規制する支持枠体である針棒支持枠27と、該針棒支持枠27を先端部において固定支持するとともに該支持部において針棒支持枠27に揺動力を伝達する針棒揺動軸31と、エアシリンダ35により付与される駆動力を針棒揺動軸31に伝達する伝達機構と、これら駆動源であるエアシリンダ35と伝達機構とを一体的に保持する保持枠体としての連結体36と、を備えている。
また、布送り方向に沿って逆方向にあるいは正方向と逆方向に短いストロークで縫いを行い、その上から重ねるように縫製を行うことで、縫い始めと縫い終わりの縫い糸が解けることを防止するいわゆるバックタック縫いを行うために、針棒揺動軸31は、回動駆動源であるエアシリンダ35から駆動力が付与されるものである。従って、通常縫製時には、針棒揺動軸31は、各針棒抱き24がZ軸方向に平行となる状態で保持されている。
連結体36は、ミシンフレーム40の外面に当該連結体36を固定するための本体部36eと、本体部36eを挟んで一端側に延設された伝達機構支持用のアーム部36a、36bと、本体部36eを挟んで他端側に延設され、エアシリンダ35を揺動可能に支持するシリンダ支持軸35aが挿通されたアーム部36c、36dとを有している。
また、「バックタック縫い」とは、縫製動作の開始時及び終了時において、搬送方向つまりX軸方向に沿って針先を往復移動させることにより縫い目の端部に重ねて縫い目を形成し、縫製動作の開始位置及び終了位置において糸が解け難くするためものであり、例えば一度後退してから搬送方向に縫い目を形成したり(V字型)、前進、後退、再前進(N字型)して縫い目を施すことにより行われるものである。
針上下動機構20は、ミシンモータの駆動に伴い上軸51および回転錘21が回転駆動され、回転錘21の回転に伴い該回転錘21の回転中心から偏心した部位に連結されたクランクロッド23の上端部は円軌道を描いて回転される。クランクロッド23の下端部は、針棒支持枠27により移動方向が上下方向(Z軸方向)に規制されている針棒25,25を支持する針棒抱き24と回動自在に連結されていることにより、上下方向の往復直線動作を行うものである。すなわち上軸51の回転動作はクランクロッド23を介して針棒25の上下動作に変換され、針板45上を搬送される被縫製物に対して針落ちを行う。
図示しないプランジャポンプ等により針振り機構30の駆動源であるシリンダ35の内部に圧縮空気等が流出入されると、エアシリンダ35は、シリンダ支持軸35aにより揺動可能に支持されているため、シリンダ35内のピストンおよび該ピストンに連結されたロッド35bが略X軸方向に沿って往復移動される。ロッド35bの移動に伴い、アーム部37aを介して該ロッド35bと連結された連結ピン抱き37および連結ピン34が軸周り方向に回動される。連結ピン34の回動動作に伴い、偏心部34aと回動自在に連結されたクランクロッド33の一端がZ−X平面内で円軌道を描き、クランクロッド33の他端部はほぼX軸方向に沿って往復移動される。これにより、クランクロッド33の他端部とアーム部32aを介して連結された針棒揺動軸抱き32および針棒揺動軸31が軸周り方向に回動される。針棒揺動軸31が回動されると、該針棒揺動軸31を軸中心として針棒支持枠27が揺動され、さらに、針棒支持枠27の上下のメタル軸受けに挿通された針棒25が揺動される。このようにして、エアシリンダ35の往復直線動作が針棒揺動軸31の回動動作に変換され、さらには針棒25の揺動動作に変換されることにより、針振り動作が行われるものである。
また、回転錘21の回転駆動力はクランクロッド23を介して針棒25に伝達されるため、針振り機構30による針棒25の揺動すなわち傾斜に関わらず、針棒25には往復駆動力が伝達されるものである。
なお、かかる針振り機構30において、連結ピン34に偏心部34aを設け、これによりクランクロッド33、針棒揺動軸抱き32を介して針棒揺動軸31を揺動させる構成としたのは、エアシリンダ35のロッド35bの移動量および針棒25の下端に支持された縫い針26の移動量と比較して針棒揺動軸31の駆動に必要な揺動量が極めて小さいために採られたものであり、かかる構成により、エアシリンダ35のロッド35bの移動量(例えば、10mm)をクランクロッド33の微小移動量(例えば、1mm)に変換することができ、縫い針26の先端におけるバックタック縫いに必要な所望の移動量(例えば4mm)に変換される。また、大きな移動量を小さな移動量に変換するため、比較的駆動力が小さいエアシリンダを使った場合であっても、針棒揺動軸31には大きな駆動力を伝達することができる。
本実施形態では縫製動作の開始時において、針振り機構30のエアシリンダ35を突出させ、しかる後、後退するように駆動することにより、針棒25,25及び縫い針26,26が微小ストロークで移動され、N字型の重複した縫い目が形成される。すなわちバックタック縫いが施されるものである。
本実施形態における連結体36は、ミシンフレーム40の開口部44に伝達機構及びアーム部36a,36bを挿入しながら締結部材であるねじ39によりミシンフレーム40のアーム部43の側面位置に取り付けられる。この場合、当該ねじ止め箇所の他、伝達機構のクランクロッド33の一端側と針棒揺動軸31との連結部のみに段ねじ38のねじ止めを行うことにより、針振り機構30の駆動源であるエアシリンダ35及び該駆動源から針棒揺動軸31に針振り用の駆動力を伝達する伝達機構とが共に一時に搭載される。また、連結ピン34の偏心部34aを予め回転調節しておくことで、搭載後における針棒25の原点位置(針棒25がZ軸に平行となる状態)調整作業は必要としない。なお、ミシンフレーム40には段ねじ38の回転装着用の小孔が予め形成されている。
さらに、該ユニット部を取り外す場合においても、上述同様、連結体36をミシンフレーム40に固定するねじ39と、針振り用の駆動力伝達部すなわち針棒揺動軸抱き32の一端部とクランクロッド33とを連結するねじ38とを弛めることにより、針振り機構30の駆動源であるエアシリンダ35及び該駆動源から針棒揺動軸31に針振り用の駆動力を伝達する伝達機構とが共に一時に取り外される。
以上のように、本実施形態に係るミシンの針駆動機構10によれば、針振り機構30の部品交換或いはメンテナンス時において、該針振り機構30の駆動源であるエアシリンダ35及びその駆動力の伝達機構からなるユニット部のみをミシンフレーム40から取り外すことが可能となる。これにより、メンテナンスや部品交換時の作業性を向上させることができる上に、該針振り機構30を構成するユニット部以外の部品を取り外したり分解したりする必要がなくなるため、作業時間を大幅に短縮することができる。また、ユニット単位で着脱可能となるため、ユニット装着前に、伝達機構に対し、針棒25の原点とエアシリンダ35の動作開始点又は終了点とを一致させる調整を行うことができ、ミシン搭載後における調整作業を大幅に簡略化することができる。
なお、連結体36は、本実施形態の形状に限定されるものではなく、針振り機構30の駆動源と、この駆動源の動作を受けて針棒揺動軸31に回動動作を付与することができる伝達機構とを一体的に保持することが可能なものであればいかなるものであっても適用可能である。
また、針振り機構30の駆動源はエアシリンダ35に限定されるものではなく、針棒揺動軸31に回動動作を付与することが可能であればいかなる駆動源でも適用可能であり、例えば、ソレノイド等の直線的な駆動力を供給することができる直動型のアクチュエータとしてもよい。
次に、本発明にかかるミシンの針駆動機構の第二の実施形態について説明する。なお、本実施形態において、上述した第一の実施形態と同様の構成については同様の符号を用いることとし、重複する記載については図示及び説明を省略するものとする。
さらに、偏心カム134a、ベアリング140及びクランクロッド33の一端をそれぞれ貫通した出力軸135aの先端には、鍔付きベアリング141が装着されている。そして、鍔付きベアリング141が補助枠体136bの略中央部に嵌合されることで、出力軸135aは、連結体136の補助枠体136bに回動自在に支持されている(図4参照)。
そして、パルスモータ135の駆動に応じてフォトセンサ138bのスリットの間に遮蔽版138aが進入し、光源を遮ることで出力軸135aが所定の角度(例えば原点)であることを検出することができるようになっている。
かかる遮蔽板138aは、補助枠体136bを貫通した出力軸135aの先端にねじで締結され装備されている。一方、フォトセンサ138aは、ねじ139dにより台座を介して連結体136に固定されている(図4、図5参照)。
つまり、この連結体136は、パルスモータ135、原点センサ138、伝達機構及びクランクロッド33を一体的に保持するユニット部を形成し、ミシンフレーム40に対してこれら各部材を一体的に着脱可能とする保持枠体となっている(図5、図6参照)。
従って、針駆動機構は、パルスモータ135、原点センサ138、伝達機構、クランクロッド33を含めて一体(ユニット)とし、これらユニットごとにミシンフレーム40に対して搭載或いは交換することができるようになっている。
そして、かかるユニット部をミシンフレーム40に搭載し、クランクロッド33の他端と針棒揺動軸抱き32とを回動自在に連結することで、パルスモータ135の回転駆動力が偏心カム134aによってほぼX軸方向に沿うクランクロッド33の往復移動力に変換され、さらに針棒揺動軸31に回動動作力として伝達されるものである。
第二の実施形態では、上述した第一の実施形態の場合と同様に、クランクロッド33を針棒揺動軸抱き32に連結する操作と、二つのねじ139a,139aの回転操作とにより、針振り用の駆動源と伝達機構とが一体となったユニット部がミシンフレーム40に対して共に一時に搭載又は取り外される。
そして、予め設定された縫い針26の先端の移動量(針振り量)に対応した回転量の駆動信号が制御部から送られ、それに従ってパルスモータ135が駆動することで、所望のバックタック縫いが行われる。
以上のように、第二の実施形態たるミシンの針棒駆動機構110によれば、第一の実施形態と同様に、針振り用の駆動源と当該針振り用の駆動力の伝達機構とを、ミシンフレーム40に対してユニット部として一体的に搭載又は取り外することが可能となる。また、その際、ねじ139a,139aの回転操作により容易に着脱作業を行うことが可能となる。これにより、針振り機構130の部品交換或いはメンテナンス時において、針振り用の駆動源であるパルスモータ135及びその駆動力の伝達機構を搭載するユニット部のみをミシンフレーム40から取り外すことができる。従って、メンテナンスや部品交換時における作業性を大幅に向上することができる。また、特に、針振り用の駆動源としてパルスモータ135を採用したことにより、微小寸法の針振り動作や、所望するタイミングでの針振り動作が可能となり、正確な針振り動作を実現することができる。
20 針上下動機構
21 回転錘
23、33 クランクロッド
24 針棒抱き
25 針棒
26 縫い針
27 針棒支持枠
30,130 針振り機構
31 針棒揺動軸
32 針棒揺動軸抱き
34 連結ピン
34a、134a 偏心カム
35 エアシリンダ
35a シリンダ支持軸
35b ロッド
36 連結体(ユニット)
40 ミシンフレーム
41 ベッド部
42 縦胴部
43 アーム部
45 針板
51 上軸
100,200 ミシン
135 パルスモータ
135a 出力軸
136 連結体(保持枠体)
138 原点センサ
138a 遮蔽版
138b フォトセンサ
139a ねじ
Claims (3)
- 上軸の回転動作を針棒の上下動作に変換し、被縫製物に対して針落ちを行う針上下動機構と、
前記針棒を送り方向に沿って揺動させる針振り機構と、を備えるミシンの針駆動機構において、
前記針振り機構は、
前記針棒の移動方向を規制する針棒支持枠と、
前記針棒支持枠を先端部で固定支持するとともに、前記針棒支持枠に揺動力を伝達する針棒揺動軸と、
前記針振り機構を駆動する駆動源としてのパルスモータと、
前記パルスモータからの駆動力を、前記上軸とは無関係に、偏心カムとクランクロッドとを介して前記針棒揺動軸に伝達する伝達機構と、
前記クランクロッドと前記針棒揺動軸とを連結する針棒揺動軸抱きと、
前記パルスモータと前記伝達機構とを保持する保持枠体とを備えており、
前記パルスモータ及び前記伝達機構は、前記保持枠体を介してミシンフレームの外面に対して一体的に着脱可能となるとともに、
前記パルスモータの駆動により前記針棒揺動軸に所定の回転角度範囲で回動力が付与され、前記針棒の下端部に位置する縫い針が縫製方向に沿って移動されることで、針落ち位置が変更されることを特徴とするミシンの針駆動機構。 - 前記クランクロッドと前記針棒揺動軸抱きとを連結するねじを備え、
前記保持枠体は、締結部材によりミシンフレーム外部に着脱自在に固定可能であることを特徴とする請求項1に記載のミシンの針駆動機構。 - 前記保持枠体は、メイン枠体と補助枠体とを備えており、
前記保持枠体には、前記パルスモータと原点センサとが固定装備されるとともに、前記伝達機構は、前記パルスモータの出力軸を介して前記保持枠体に搭載されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のミシンの針駆動機構。
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