JP4193558B2 - 単結晶の製造方法 - Google Patents
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- C30B15/305—Stirring of the melt
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁場を印加するチョクラルスキー法により単結晶を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体デバイスの基板として用いられる単結晶は、例えばシリコン単結晶があり、主にチョクラルスキー法(Czochralski Method、以下CZ法と略称する)により製造されている。
【0003】
CZ法により単結晶を製造する際には、例えば図1に示すような単結晶製造装置10を用いて製造される。この単結晶製造装置10は、例えばシリコンのような原料多結晶を収容して溶融するための部材や、熱を遮断するための断熱部材などを有しており、これらは、メインチャンバー11内に収容されている。メインチャンバー11の天井部からは上に伸びる引上げチャンバー12が連接されており、この上部に単結晶4をワイヤー13で引上げる機構(不図示)が設けられている。
【0004】
メインチャンバー11内には、溶融された原料の融液14を収容するルツボ5が設けられ、このルツボ5は駆動機構(不図示)によって回転昇降自在にシャフト9で支持されている。このルツボ5の駆動機構は、単結晶4の引き上げに伴う融液14液面低下を補償すべく、ルツボ5を液面低下分だけ上昇させるようにしている。
【0005】
そして、ルツボ5を囲繞するように、原料を溶融させるための黒鉛ヒーター7が配置されている。この黒鉛ヒーター7の外側には、黒鉛ヒーター7からの熱がメインチャンバー11に直接輻射されるのを防止するために、断熱部材6がその周囲を取り囲むように設けられている。
【0006】
以上のような単結晶製造装置内に配置されたルツボ5に原料塊を収容し、このルツボ5を、黒鉛ヒーター7により加熱し、ルツボ5内の原料塊を溶融させる。このように原料塊を溶融させたものである融液14に、ワイヤー13の下端に接続している種ホルダー1で固定された種結晶2を着液させ、その後、種結晶2を回転させながら引き上げることにより、種結晶2の下方に所望の直径と品質を有する単結晶4を育成する。この際、種結晶2を原料融液14に着液させた後に、通常直径を3mm程度に一旦細くして絞り部3を形成するいわゆる種絞り(ネッキング)を行い、次いで、所望の口径になるまで太らせて、無転位の結晶を引き上げている。
【0007】
近年、製造する単結晶の結晶直径の大型化に伴い、ルツボサイズが大型化し、ルツボ内の融液の体積が増大してきている。この増大した体積の融液の熱対流をいかに制御するかということが、課題となっている。その方策の一つとして、磁場を印加したCZ法(Magnetic field applied Czochralski Method法、以下MCZ法と略称する)がある。このMCZ法では、例えば図1に示したようなメインチャンバー11の外側に設けられたマグネットコイル8で磁場を印加し、その磁場により融液の熱対流を制御する。
【0008】
MCZ法において磁場を制御して結晶を製造する方法の例としては、単結晶を製造する際に融液のアスペクト比が大きい引上げ条件下では引上げ方向に対して垂直に2000ガウス以上の磁場を印加し、融液のアスペクト比が小さい引上げ条件下では引上げ方向に対して平行に1000ガウス程度の磁場を印加することで、融液の利用率を良くするとともに高品質の単結晶を育成する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。また、シリコン単結晶を製造する際に結晶成長面における磁場強度を略一定に制御しつつ単結晶を引き上げることで、単結晶に導入される欠陥を低減する方法(例えば、特許文献2参照。)や、結晶を製造する際に強度勾配を持つ磁場中で結晶の引き上げを行うことで、結晶性に優れた低不純物濃度の結晶を得る方法(例えば、特許文献3参照。)なども開示されている。
【0009】
しかし、近年のさらなるルツボの大口径化に伴い、高品質の結晶を生産性良く製造するためには上記結晶製造方法だけでは不十分となり、さらなる磁場強度を制御した結晶の製造方法が求められていた。
【0010】
【特許文献1】
特開昭60−221392号公報
【特許文献2】
特開2000−247787号公報
【特許文献3】
特開平6−227887号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、磁場を印加するチョクラルスキー法において、高品質の単結晶を生産性良く製造する方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、磁場を印加するチョクラルスキー法により単結晶を製造する方法において、少なくとも、融液内全体での磁場強度分布において、ルツボに収容された融液内の最小磁場強度を2000G以上の範囲とし、融液内の最大磁場強度を6000G以下の範囲とし、かつ該最大と最小の磁場強度の差をその距離で除したものである最大磁場勾配を55G/cm以下の範囲として、単結晶を引き上げることを特徴とする単結晶の製造方法が提供される。
【0013】
このように、ルツボに収容された融液内の最小磁場強度を2000G以上の範囲とし、融液内の最大磁場強度を6000G以下の範囲とし、かつ最大と最小の磁場強度の差をその距離で除したものである最大磁場勾配を55G/cm以下の範囲として、単結晶を引き上げることで、近年の大口径のルツボを用いた場合であっても高品質の単結晶を生産性良く製造することができる。
【0014】
この場合、前記融液を収容するルツボの直径が24インチ(600mm)以上のものを用いることができる。
【0015】
本発明の単結晶の製造方法では、近年用いられている直径24インチ(600mm)以上といった大口径のルツボに適用する場合に特に有効である。
【0016】
この場合、前記印加する磁場を水平磁場とするのが好ましい。
このように、印加する磁場が水平磁場であれば、効果的に融液の熱対流を抑制することができる。
【0017】
この場合、前記単結晶をシリコンとすることができる。
このように、本発明の単結晶製造方法は、近年特に大口径化が著しいシリコン単結晶を製造する際に好適に適用することができる。
【0018】
さらに、以上のような単結晶の製造方法で製造された単結晶が提供される。
【0019】
本発明の製造方法を用いれば、近年要求される大口径の単結晶を生産性良く製造できる上に、高品質のものとすることができる。従って、製造された単結晶は高品質かつ安価なものとなる。
【0020】
以下本発明について説明する。
単結晶の製造において、近年のルツボの大口径化にともない、融液の対流が増大するという問題がある。この増大した対流を抑制するために、MCZ法においては、従来磁場強度を増大するという対策がとられてきた。しかし、磁場強度を増大した結果、かえって単結晶の生産性が低下し、品質も悪化するというケースが見受けられた。
【0021】
この原因としては次のことが考えられる。
図2は、マグネットコイル8により磁場を印加した時の磁力線分布を模式的に示した図である。図2(a)はルツボを横から見た断面図であり、図2(b)はルツボを上から見た平面図である。このような磁力線分布の水平磁場を印加した場合、図3に示したように、磁場強度の分布が融液内で全て均一とはならず、磁場強度の強い部分と弱い部分が生じる。
【0022】
先ず、磁場強度が弱い部分を補うために全体の磁場強度を増大した場合、磁場強度が強い部分がさらに強くなり、その部分では磁場による対流抑制力が過剰となる。その結果、融液内で磁場が強い部分では、対流が生じない結果熱伝導が支配的になる。したがって、▲1▼温度の不均一による育成単結晶の無転位化の阻害、品質の不均一性の発生、▲2▼育成単結晶付近の温度勾配の低下による結晶の無転位化の阻害、成長速度の低下による生産性の低下、▲3▼結晶付近の不純物拡散の抑制による面内品質の不均一化といった問題が発生する。
【0023】
一方、磁場分布が同じ状態で、単純に全体の磁場強度を増大すると、磁場の強い部分と弱い部分とで同じ比率で磁場強度が増大することにもなる。したがって磁場の強い部分と弱い部分の磁場強度の絶対値の差は広がり、磁場勾配が大きくなる。その結果、融液内のある部分では対流が発生し、その部分では対流抑制力は不足すると考えられる。その結果生じた過剰な対流により、結晶成長界面が振動し、温度変動が大きくなり、高品質の結晶を得ることができなくなる。
【0024】
このように、融液内で部分的に対流抑制力が過剰になったり、対流抑制力が不足したりして、融液が熱的にアンバランスとなる結果として、操業が不安定になり、また単結晶の品質が悪化するという問題が生じたと考えられる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、MCZ法により単結晶を製造する際に、融液内のある点での磁場強度にのみ着目するのではなく、融液内全体での磁場強度分布について考慮し、融液内の最大と最小磁場強度、さらには最大と最小の磁場強度の差をその距離で除したものである最大磁場勾配を最適な範囲に規定することにより、ルツボが大口径の場合でも、普遍的な効果を得ることが可能であることに想到し、本発明を完成させた。
【0026】
すなわち本発明では、磁場を印加するチョクラルスキー法により単結晶を製造する際に、少なくとも、ルツボに収容された融液内の最小磁場強度を2000G以上の範囲とし、融液内の最大磁場強度を6000G以下の範囲とし、かつ最大と最小の磁場強度の差をその距離で除したものである最大磁場勾配を55G/cm以下の範囲として、単結晶を引き上げる。
【0027】
このように、融液内の最小磁場強度を2000G以上とすれば、対流抑制の効果を十分に得ることができる。したがって、対流が過剰になることがないために、成長界面の振動、温度変動を適度に小さく保つことができ、高品質の単結晶を得ることができる。
また、最大磁場強度を6000G以下、より好ましくは5500G以下とすれば、対流抑制の効果が過剰になることもない。したがって、対流抑制が過剰で熱伝導のみになってしまうといった弊害もなく、高品質の単結晶を生産性良く製造することができる。
さらに、最大磁場勾配を55G/cm以下、より好ましくは45G/cm以下とすることで、磁場勾配が起因の対流の発生を防ぐことができる。
【0028】
上記条件で磁場を印加することで、融液を収容する直径が24インチ(600mm)以上、さらには32インチ(800mm)以上のルツボを用いて、例えば300Kgを超す融液から直径12インチ(300mm)以上の大口径の結晶を引き上げる場合であっても、生産性良く、高品質の単結晶を製造できる。
特に、近年大口径化が著しいシリコン単結晶を製造する際に好適に適用することができる。
【0029】
また、印加する磁場が水平磁場であれば、効果的に融液の熱対流を抑制することができる。磁場を印加する際には、融液内の磁場分布をより均一にできる磁場発生装置を使用するのが好ましい。磁場分布をより均一にする方法の例として、図4(a)に示したように複数のマグネットコイルを用いる方法や、図4(b)に示したように鞍型のマグネットコイルを用いる方法を挙げることができる。なお、複数マグネットコイル方式、鞍型マグネットコイル方式、いずれにしても、磁場強度及び分布が同じであれば、その効果は同じである。
【0030】
こうして、本発明の製造方法を用いれば、近年要求される大口径の単結晶を生産性良く製造できる上に、高品質のものとすることができる。従って、製造された単結晶は高品質かつ安価なものとなる。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。
[実施例1〜3、比較例1,2]
図1に示した引上げ装置を用いて、MCZ法によりシリコン単結晶を製造した。具体的には、口径32インチ(800mm)ルツボを用いて原料多結晶シリコンを300Kgチャージし、内径920mmのヒーターで溶融して融液にした。そして、この融液に横磁場を印加しながら直径12インチ(300mm)のシリコン単結晶棒を引上げた。なおこの場合、横磁場を印加するマグネットコイルは図2に示すように配置し、磁場中心を融液の中央部として磁場を印加した。融液内で磁場強度が最大となる部分は、マグネットコイル中心の最近接部分であり、一方融液内で磁場強度が最小となる部分は、マグネットコイル中心の最近接部分から融液面で周方向に90°離れた部分であった。
【0032】
以上のような単結晶製造方法で、さらに磁場強度条件を以下の条件(実施例1〜3、比較例1,2)とし、それぞれの条件で、製造結晶の面内の主品質特性である抵抗率の面内分布、ならびに結晶の無転位化本数率(DF化率)を調査した。
【0033】
(実施例1)
中心磁場強度を4000Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、6000Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、3000Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(3000G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、50G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約5%であり、またDF化率は80%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が良好であると判断でき、シリコン単結晶を製造する上で十分に許容できる範囲である。
【0034】
(実施例2)
中心磁場強度を3500Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、5200Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、2600Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(2600G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、44G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約3%であり、またDF化率は82%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が十分に良好であると判断でき、シリコン単結晶を製造する上でも望ましい範囲である。
【0035】
(実施例3)
中心磁場強度を3000Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、4500Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、2250Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(2250G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、38G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約3%であり、またDF化率は85%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が十分に良好であると判断でき、シリコン単結晶を製造する上でも望ましい範囲である。
【0036】
(比較例1)
中心磁場強度を5000Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、7000Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、3750Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(3250G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、62G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約8%であり、またDF化率は50%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が悪いと判断でき、シリコン単結晶を製造する上で望ましくない範囲である。
【0037】
(比較例2)
中心磁場強度を2000Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、3000Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、1500Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(1500G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、25G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約3%であり、またDF化率は47%であった。抵抗率の面内分布は十分に良好であると判断できるが、DF化率が悪く、シリコン単結晶を製造する上で望ましくない範囲である。
【0038】
これらの結果を下記表1にまとめた。
【表1】
【0039】
直径12インチ(300mm)の単結晶の製造では、直径8インチ(200mm)の単結晶の製造に比べ、ルツボ口径が大型化し、原料のチャージ量も増加している。従って、融液の対流抑制向上を目的とし磁場を印加するのであれば、中心磁場強度を増大することが望ましいことが容易に想像される。したがって、直径12インチ(300mm)の単結晶の製造する際には、従来は、例えば比較例1のように中心磁場強度を5000Gとした条件で単結晶を製造する必要があると思われていた。しかし、この条件では、最大磁場強度が6000Gを超え、しかも最大磁場勾配が55G/cmを超えることになる。その結果、抵抗の面内分布は約8%と悪く、またDF化率も50%と悪い。
【0040】
そこで、例えば実施例1のように従来よりも弱い中心磁場強度である4000Gとした条件で単結晶を製造した場合、最大磁場強度が6000G以下の範囲、最小磁場強度が2000G以上の範囲、及び最大磁場勾配が55G/cm以下の範囲となる。その結果、抵抗の面内分布は約5%と改善され、またDF化率も80%と改善された。さらに、例えば実施例2、実施例3のようにさらに弱い中心磁場である3500G、3000Gの条件で単結晶を製造した場合、最大磁場強度が5500G以下の範囲となり、しかも最大磁場勾配が45G/cm以下の範囲となる。その結果、抵抗の面内分布は約3%とさらに改善され、DF化率も82、85%とさらに改善された。
【0041】
しかし、例えば比較例2のようにさらに中心磁場強度を弱めた2000Gの条件で単結晶を製造した場合、最大磁場強度及び最大磁場勾配は所望の範囲となるが、最小磁場強度が2000G未満の範囲となる。その結果、抵抗の面内分布は約3%と良好であったが、結晶DF化率は47%と悪かった。
【0042】
[実施例4〜6、比較例3,4]
図1に示した引上げ装置を用いて、MCZ法によりシリコン単結晶を製造した。具体的には、口径32インチ(800mm)ルツボを用いて原料多結晶シリコンを300Kgチャージし、内径920mmのヒーターで溶融した。そして、この融液に横磁場を印加しながら直径12インチ(300mm)のシリコン単結晶棒を引上げた。なおこの場合、横磁場を印加するマグネットコイルは、融液内で磁場分布がより均一になるように、図4(a)に示すように配置して(複数マグネットコイル方式)磁場を印加した。
【0043】
以上のような単結晶製造方法で、さらに磁場強度条件を以下の条件(実施例4〜6、比較例3,4)とし、それぞれの条件で、製造結晶の面内の主品質特性である抵抗率の面内分布、ならびに結晶の無転位化本数率(DF化率)を調査した。
【0044】
(実施例4)
中心磁場強度を4000Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、5800Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、3700Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(2100G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、46G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約5%であり、またDF化率は67%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が良好であると判断でき、シリコン単結晶を製造する上で十分に許容できる範囲である。
【0045】
(実施例5)
中心磁場強度を3500Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、5100Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、3200Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(1900G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、40G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約3%であり、またDF化率は85%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が十分に良好であると判断でき、シリコン単結晶を製造する上で望ましい範囲である。
【0046】
(実施例6)
中心磁場強度を3000Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、4400Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、2700Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(1700G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、34G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約3%であり、またDF化率は88%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が十分に良好であると判断でき、シリコン単結晶を製造する上で望ましい範囲である。
【0047】
(比較例3)
中心磁場強度を4500Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、6600Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、4200Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(2400G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、52G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約8%であり、またDF化率は50%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が悪いと判断でき、シリコン単結晶を製造する上で望ましくない範囲である。
【0048】
(比較例4)
中心磁場強度を2000Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、3000Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、1850Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(1150G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、23G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約3%であり、またDF化率は56%であった。抵抗率の面内分布は十分に良好であると判断できるが、DF化率が悪く、シリコン単結晶を製造する上でも望ましくない範囲である。
【0049】
これらの結果を下記表2にまとめた。
【表2】
【0050】
実施例5、実施例6では、最大、最小磁場勾配が所望の範囲内である上に、それぞれ同じ中心磁場強度の実施例2、実施例3と比較して最大磁場勾配が改善されている。その結果、DF化率がさらに向上した。
【0051】
[比較例5,6]
図1に示した引上げ装置を用いて、MCZ法によりシリコン単結晶を製造した。具体的には、口径32インチ(800mm)ルツボを用いて原料多結晶シリコンを300Kgチャージし、内径920mmのヒーターで溶融した。そして、この融液に横磁場を印加しながら直径12インチ(300mm)のシリコン単結晶棒を引上げた。なおこの場合、実施例1と同様に、横磁場を印加するマグネットコイルは図2に示すように配置し、磁場中心を融液の中央部として磁場を印加した。ただし、マグネットコイルを、実施例1と比較してコイル径を2割小さくしたものを配置した。融液内で磁場強度が最大となる部分は、マグネットコイル中心の最近接部分であり、一方融液内で磁場強度が最小となる部分は、マグネットコイル中心の最近接部分から融液面で周方向に90°離れた部分であった。
【0052】
以上のような単結晶製造方法で、さらに磁場強度条件を以下の条件(比較例5,6)とし、それぞれの条件で、製造結晶の面内の主品質特性である抵抗率の面内分布、ならびに結晶の無転位化本数率(DF化率)を調査した。
【0053】
(比較例5)
中心磁場強度を3500Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、5700Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、2400Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(3300G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、63G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約10%であり、またDF化率は40%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が悪いと判断でき、シリコン単結晶を製造する上で望ましくない範囲である。
【0054】
(比較例6)
中心磁場強度を3000Gとした。この場合、融液内の最大磁場強度は、5100Gであり、一方融液内の最小磁場強度は、2000Gであった。また、最大と最小の磁場強度の差(3100G)をその距離で除したものである最大磁場勾配は、58G/cmであった。
この条件では、抵抗率の面内分布は約8%であり、またDF化率は47%であった。抵抗率の面内分布とDF化率の両方が悪いと判断でき、シリコン単結晶を製造する上で望ましくない範囲である。
【0055】
これらの結果を下記表3に示す。
【表3】
【0056】
比較例5、比較例6では、最大磁場強度が6000以下の範囲で、最小磁場強度が2000以上の範囲であるものの、最大磁場勾配が55G/cmを超えたものとなっている。その結果、抵抗率の面内分布とDF化率の両方が悪くなっている。
【0057】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、MCZ法により単結晶を製造する際に、融液内の最小及び最大磁場強度、ならびに最大磁場勾配を所定範囲内として単結晶を引き上げることで、無転位化率が向上し製造コストの低減が達成できる上に、製造する単結晶も高品質のものにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】単結晶製造装置を示す概略図である。
【図2】水平磁場を印加した時の磁力線分布を模式的に示した図である。(a)ルツボを横から見た断面図、(b)ルツボを上から見た平面図。
【図3】水平磁場を印加した時の融液内の磁場強度の分布の様子を示す説明図である。
【図4】融液内の磁場分布をより均一にできる磁場発生装置の例である。
(a)複数マグネットコイル方式、
(b)鞍型マグネットコイル方式。
【符号の説明】
1…種ホルダー、 2…種結晶、 3…絞り部、 4…単結晶、
5…ルツボ、 6…断熱部材、 7…黒鉛ヒーター、
8…マグネットコイル、 9…シャフト、
10…単結晶製造装置、 11…メインチャンバー、
12…引上げチャンバー、 13…ワイヤー、 14…融液。
Claims (4)
- 磁場を印加するチョクラルスキー法により単結晶を製造する方法において、少なくとも、融液内全体での磁場強度分布において、ルツボに収容された融液内の最小磁場強度を2000G以上の範囲とし、融液内の最大磁場強度を6000G以下の範囲とし、かつ該最大と最小の磁場強度の差をその距離で除したものである最大磁場勾配を55G/cm以下の範囲として、単結晶を引き上げることを特徴とする単結晶の製造方法。
- 前記融液を収容するルツボの直径が24インチ(600mm)以上のものを用いることを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
- 前記印加する磁場を水平磁場とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶の製造方法。
- 前記単結晶をシリコンとすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
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