JP4193280B2 - ホイールインモータ用ブレーキの防水構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホイールインモータ用ブレーキの防水構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図7には、従来の電動モータ100を駆動輪101と直結させたホイールインモータ形式の様子を示した(なお、図示の都合上、構造の一部を省略している)。
【0003】
駆動輪101の中央には、電動モータ100によって回転する回転軸102が連結されている。駆動輪101には、回転軸102の周囲を同軸で取り囲むようにして、ブレーキドラム103が備えられている。また、電動モータ100のモータケーシング106には、ブレーキドラム103とほぼ同径状のバッキングプレート107がネジ止めされており、ここにはブレーキシュー104が組み付けられている。ブレーキシュー104は、ブレーキドラム103の内側に収容されており、ホイールシリンダー105によって駆動可能に連結されている。
【0004】
ブレーキドラム103の周縁には、全周に沿って受け溝部108が凹設されている。一方、バッキングプレート107の外周縁からは、全周に沿って鍔縁109が延設されており、これが受け溝部108に嵌まり込むことで、ラビリンス構造を形成してブレーキドラム103の内部空間が簡易的に防水されるようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、受け溝部108と鍔縁109とは、ブレーキドラム103の全周に沿って形成されているため、一旦、このブレーキドラム103の内部に水等が浸入してしまった場合には、そこから水が容易には排除されない構造となっていた。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ブレーキドラム内に水等が浸入しても、容易にこれを排除できるホイールインモータ用ブレーキの防水構造を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために請求項1の発明に係るホイールインモータ用ブレーキの防水構造は、駆動輪のホイールの内側に、車両シャーシに支持された電動モータを配してなるホイールインモータ式車両において、前記電動モータによって駆動される回転軸には、前記電動モータに対向する側が開口するブレーキドラムが同軸で嵌着されており、前記電動モータのモータケーシングには、前記ブレーキドラムの開口面を覆いかつ前記ブレーキドラム内に配されるブレーキユニットを取り付けるための組み付け部が形成されており、前記組み付け部には、前記ブレーキドラムの開口縁に周方向に沿って重なり合うようにして対向する水切り用の鍔縁が短円筒形状に突出形成されており、前記鍔縁の下端部には、外部に開口する排水口が設けられており、前記ブレーキドラムの外部には、前記ブレーキユニットを外部からブレーキ動作させるための操作部が配されており、前記排水口には、前記操作部と前記ブレーキユニットを接続するための中継手段が通されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものであって、前記ブレーキドラム内には前記組み付け部に植設されたアンカーピンによって拡開動作可能な一対のブレーキシューが組み込まれるとともに、両ブレーキシューの間には両ブレーキシューを拡開・復帰させるために、前記操作部と前記中継手段を介して接続されるブレーキカムが介在され、かつこのブレーキカムは前記排水口の上部に配されており、前記ブレーキユニットは、前記アンカーピン、前記一対のブレーキシュー、及び、前記ブレーキカムによって構成されていることを特徴とする。
【0010】
【発明の作用、および発明の効果】
請求項1の発明によれば、鍔縁の下部には、排水口が開口されているので、ブレーキドラム内に浸水しても直ちに排水させることができる。
請求項1の発明によれば、排水口が、ブレーキユニットと外部の操作部との中継手段を通すためのものとして兼用されているため、構成の簡素化が図れる。
請求項2の発明によれば、排水口の上部にブレーキカムを配置させたため、排水口を通して小石、泥水などが侵入しにくくなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について、図1〜図6を参照しつつ詳細に説明する。図1には、ホイールインモータ形式の電気自動車の駆動輪2付近の様子を示した。車両シャーシ3からは、上下一対の支持部材17が外方へ向けて延出されており、それぞれの一端側は車両シャーシ3に対して回動可能に接続されている。また、各支持部材17の他端側には電動モータ1が支持され、これらの接続部分も同様に回動可能とされている。
【0012】
電動モータ1は正逆回転可能であり、その中心部には外側(駆動輪2側)へ向けて回転軸6が突出している。また、電動モータ1のモータケーシング7において駆動輪2と対向する側の面には、ブレーキユニット12を組付けるための組み付け部8が形成されている。
【0013】
さて、本実施形態におけるブレーキには、ドラムブレーキによる方式が採用されている。駆動輪2の中央からは、電動モータ1側へ向けて開口する有底円筒状のブレーキドラム5が備えられている。このブレーキドラム5は回転軸6の軸端に締め込まれたロックボルト18によって電動モータ1に固定されている。
【0014】
ブレーキドラム5は、ホイール4の中心部に開口する装着孔4Aを介してホイール4に嵌め込み可能とされている。ブレーキドラム5の外周面には90゜間隔毎にリブ20が突出し、それぞれのリブ20にはハブボルト21が溶接によって取り付けられ、ホイール4側に差し込まれナット22にて締め付けられることで、駆動輪2の取付けが可能となっている。
【0015】
ブレーキドラム5の内部には、駆動輪2に制動力を作用させるためのブレーキユニット12が備えられている。このブレーキユニット12は、車両シャーシ3に備えられるサブシリンダー13とカム機構15(本発明の「操作部」に該当する)とによって引っ張られるケーブル14(本発明の「中継手段」に該当する)を介して接続されている。
【0016】
ブレーキユニット12には、一対のブレーキシュー9とアンカーピン10とブレーキカム11とが備えられている。すなわち、図2において、組み付け部8の上端付近には、アンカーピン10が植設されており、両ブレーキシュー9はこのアンカーピン10を回動中心として、それぞれが拡開する方向へ回動可能である。
【0017】
両ブレーキシュー9は、全体としてリング状をなして組付がなされている。また、両ブレーキシュー9の間には、上下一対のスプリング23(図4または図5を参照。なお図3においては、図示の都合上、スプリング23は削除されている。)が架設されており、常には、このスプリング23によって、互いに近接する方向に付勢されている。このため、両ブレーキシュー9は、その外周面がブレーキドラム5の内周面と僅かな隙間をおいて対向するようになっている。また、両ブレーキシュー9においてアンカーピン10とは反対側の端部9Aの間には、ブレーキカム11が介在されている。
【0018】
ブレーキカム11は、略平板状に形成されており、組み付け部8の下端付近の排水口26の上側に、回動可能な状態で植設されている。ブレーキカム11は、カム機構16を介してケーブル14に連結されており、ケーブル14の引張り操作によって回動するようになっている。カム機構16は、排水口26の内部に配設されており、これによってケーブル14の引張り操作によって駆動する空間が確保されている。
【0019】
ブレーキカム11は、常には両端部9Aの間に最も幅狭となる位置で挟み付けられており(図4に示す位置)、この状態からケーブル14の操作によってブレーキカム11が回動すると、ブレーキカム11が端部9Aを離間する方向に押し広げる(図5に示す位置)。この押し広げ操作によって、両ブレーキシュー9がアンカーピン10を回動中心として拡開方向に回動し、ブレーキシュー9の外面がブレーキドラム5に押し付けられ、駆動輪2の駆動を制御する。
【0020】
次に、ブレーキドラム5と組み付け部8との組み付き構造について説明する。組み付け部8の先端縁(駆動輪2側)には、下端の一部を除いて、ほぼ全周に沿ってブレーキドラム5方向に突出する水切り用の鍔縁24が備えられており、回転軸6と同心をなす短円筒形状に形成されている。鍔縁24は、外周側が内周側よりも高く(すなわち、外周側が、内周側よりも駆動輪2側に近く)形成されている。また、鍔縁24の下端部分には、外部に開口する排水口26が設けられている。
【0021】
一方、ブレーキドラム5の開口縁25の外径は、鍔縁24の外径とほぼ同径とされており、開口縁25の端縁部は、内側が外側よりも電動モータ1側に突出した構造とされている。こうして、開口縁25と鍔縁24との縁部は、互いに相補的に凹凸状とされている。開口縁25と鍔縁24とは、僅かな間隔を隔てて対向可能とされており、駆動輪2に電動モータ1が組み付けられると、ブレーキドラム5の内部は、排水口26の部分を除いて、ほぼ全周が簡易な防水構造を備えた状態で覆われる。
【0022】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用および効果について説明する。
ブレーキドラム5の開口面側に電動モータ1が組み付けられると、開口縁25が組み付け部8から突出される鍔縁24によって、排水口26を残してほぼ全周が覆われた状態となる。このため、ブレーキドラム5の内側空間は、ほぼ防水構造が採られている。このとき、鍔縁24の下部には、排水口26が開口されているので、たとえブレーキドラム5の内部に水が浸入したとしても、直ちに排水させることができる。
【0023】
また、排水口26は、ブレーキユニット12と外部のサブシリンダー13およびカム機構15とのケーブル14を通すためのものとして兼用されているため、全体として構成の簡素化が図られる。
【0024】
さらに、排水口26の上部にブレーキカム11を配置させたため、排水口26を通して小石、泥水などが侵入しにくくなる。
【0025】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば次のようなものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
本実施形態では、中継手段としてケーブルを使用しているが、本発明によれば、排水口の上部にサブシリンダーを備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態におけるホイールインモータ用ブレーキの取付構造を備えた駆動輪とその周辺部分の断面図
【図2】駆動輪の断面図
【図3】ブレーキドラムとブレーキシューとの構造を示す駆動輪の一部破断図
【図4】ブレーキを駆動させたときのブレーキユニットの部分拡大図
【図5】ブレーキドラムと組み付け部との関係を示す部分拡大図
【図6】ブレーキを駆動させていないときのブレーキユニットの部分拡大図
【図7】従来例におけるホイールインモータ用ブレーキの取付構造を示す断面図
【符号の説明】
1…電動モータ
2…駆動輪
3…車両シャーシ
4…ホイール
5…ブレーキドラム
6…回転軸
7…モータケーシング
8…組み付け部
9…ブレーキシュー
10…アンカーピン
11…ブレーキカム
12…ブレーキユニット
13…サブシリンダー(操作部)
14…ケーブル(中継手段)
15…カム機構(操作部)
24…鍔縁
25…開口縁
26…排水口
Claims (2)
- 駆動輪のホイールの内側に、車両シャーシに支持された電動モータを配してなるホイールインモータ式車両において、
前記電動モータによって駆動される回転軸には、前記電動モータに対向する側が開口するブレーキドラムが同軸で嵌着されており、
前記電動モータのモータケーシングには、前記ブレーキドラムの開口面を覆いかつ前記ブレーキドラム内に配されるブレーキユニットを取り付けるための組み付け部が形成されており、
前記組み付け部には、前記ブレーキドラムの開口縁に周方向に沿って重なり合うようにして対向する水切り用の鍔縁が短円筒形状に突出形成されており、
前記鍔縁の下端部には、外部に開口する排水口が設けられており、
前記ブレーキドラムの外部には、前記ブレーキユニットを外部からブレーキ動作させるための操作部が配されており、
前記排水口には、前記操作部と前記ブレーキユニットを接続するための中継手段が通されていることを特徴とするホイールインモータ用ブレーキの防水構造。 - 前記ブレーキドラム内には前記組み付け部に植設されたアンカーピンによって拡開動作可能な一対のブレーキシューが組み込まれるとともに、両ブレーキシューの間には両ブレーキシューを拡開・復帰させるために、前記操作部と前記中継手段を介して接続されるブレーキカムが介在され、かつこのブレーキカムは前記排水口の上部に配されており、
前記ブレーキユニットは、前記アンカーピン、前記一対のブレーキシュー、及び、前記ブレーキカムによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のホイールインモータ用ブレーキの防水構造。
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