JP2557842Y2 - ドラムブレーキにおけるダストカバー取付構造 - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本考案は、ドラムブレーキにおい
てアンカーブラケットに内側から取り付けられ、ブレー
キドラムにより囲まれたブレーキシュー配設空間内への
ダスト、水等の侵入を防止するダストカバーの取付構造
に関する。

【０００２】

【従来の技術】ドラムブレーキは、車体すなわちアクス
ルハウジング（アクスルシャフト）に固定されるアンカ
ーブラケットと、このアンカーブラケットの外側面上に
取り付けられたブレーキシューユニットと、このブレー
キシューユニットを外側から覆うようにして取り付けら
れるブレーキドラムとから構成される。このドラムブレ
ーキは、通常、ホイールリム内部に配設され、ブレーキ
ドラムはホイールリム（もしくはこれが取り付けられる
ホイールハブ）に結合されてアンカーブラケットに対し
て回転自在となっている。

【０００３】このように、ドラムブレーキの外側はホイ
ールリムおよびブレーキドラムにより覆われるのである
が、このままでは内側からブレーキ内部にダスト、水等
が侵入するという問題があるため、アンカーブラケット
の内側面にはブレーキシューユニットが配設される空間
を覆ってダストカバーが取り付けられている。

【０００４】

【考案が解決しようとする課題】従来におけるダストカ
バーは、その外周部はブレーキドラム先端部を覆うよう
な庇状に形成されており、外周部からのダスト、水の侵
入は効果的に防止されるようになったいる。ところが、
その内周部は平板状に形成されるとともにこれがアンカ
ーブラケットの内周側面にボルト締めされて取り付けら
れているだけであった。このアンカーブラケットの内周
側面の面は鋳肌のままであったり、粗い加工が施されて
いるだけであり、この内周側面とこの上に取り付けられ
たダストカバー内周部との間に隙間が発生しやすい。さ
らに、ダストカバー内周面は平板状であり、この部分に
反り、変形等が発生し易く、このような場合には、アン
カーブラケットの内周側面との間に隙間が発生し易い。

【０００５】ここで、アンカーブラケットの内周側面と
ダストカバーとの接合部は、走行中にタイヤの回転等に
より巻き上げられた水等が直接当り易い箇所であり、上
記のように隙間があると、この隙間からブレーキ内部に
水等が侵入し、ブレーキ内部に錆が発生し易くなるとい
う問題や、この水がライニング面に付着してウォーター
フェード現象を発生させるおそれがあるという問題があ
る。本考案はこのような問題に鑑みたもので、アンカー
ブラケットの内周側面とダストカバーとの接合部に隙間
が生じるのを阻止して、ブレーキ内部への水等の侵入を
効果的に防止できるようなダストカバー取付構造を提供
することを目的とする。

【０００６】

【課題を解決するための手段】このような目的達成のた
め、本考案においては、車体に固定されるアンカーブラ
ケットと、このアンカーブラケットの外側面上に取り付
けられた拡張ブレーキシューユニットと、このブレーキ
シューユニットを外側から覆って回転自在に取り付けら
れるブレーキドラムと、このブレーキドラムにより外側
から囲まれた内部空間を内側から覆ってアンカーブラケ
ットに取り付けられたダストカバーとからドラムブレー
キを構成し、このブレーキにおいて、アンカーブラケッ
トにおけるダストカバーの内周端面が当接する側面にリ
ング状溝を形成し、ダストカバーの内周端面にリング状
溝内に突出するリング状凸部を形成しており、リング状
凸部をリング状溝内に突出させるようにしてダストカバ
ーがアンカーブラケットに取り付けられる。

【０００７】なお、本考案に係るダストカバー取付構造
としては、上記ドラムブレーキにおいて、ダストカバー
の内周端部をアンカーブラケットの内周面を覆うように
折り曲げ成形した構造のものや、アンカーブラケットに
おけるダストカバーの内周端面が当接する側面にリング
状溝を形成し、このリング状溝内ににシール剤を塗布し
た構造のものや、ダストカバーの内周端面におけるアン
カーブラケットの側面と当接する部分に、アンカーブラ
ケットの側面から離れる方向に突出したリング状凸部を
形成し、このリング状凸部内面とアンカーブラケットの
側面との間のリング状空間内にシール剤を塗布した構造
のものもある。

【０００８】

【実施例】以下、図面に基づいて本考案の好ましい実施
例について説明する。本考案に係るダストカバー取付構
造を採用したドラムブレーキの一例を図１および図２に
示している。このドラムブレーキは、アクスルハウジン
グ（車体）１に固定されたアンカーブラケット１０と、
このアンカーブラケット１０の外側面に取り付けられた
拡張ブレーキシューユニット２０と、このブレーキシュ
ーユニット２０を外側から覆って回転自在に取り付けら
れるブレーキドラム２５と、このブレーキドラム２５に
より外側から囲まれた内部空間（ブレーキシューユニッ
ト２０が配設されている空間）を内側から覆ってアンカ
ーブラケット１０に取り付けられたダストカバー１５と
から構成される。

【０００９】なお、アクスルハウジング１からは外方に
アクスルシャフト２が突出し、このアクスルシャフト２
上に一対のテーパローラベアリング３ａ，３ｂを介して
回転自在にホイールハブ４が取り付けられる。このホイ
ールハブ４にホイールリム５が取り付けられ、ホイール
リム５にはタイヤ（図示せず）が取り付けられる。な
お、ブレーキドラム２５はホイールハブ２５に結合され
ており、この結果、ブレーキドラム２５はホイールと一
体に回転自在となっている。

【００１０】拡張ブレーキシューユニット２０は、アン
カーブラケット１０の支持アーム部１１，１１に、アン
カーピン２１により基端部が左右に揺動自在に取り付け
られた左右一対のブレーキシュー２２，２２を有する。
このブレーキシュー２２の先端部同士間に引っ張りスプ
リング２４が配設されており、通常（ブレーキ非作動
時）は、これらブレーキシュー２２はこの引っ張りスプ
リング２４の付勢力を受けてそれぞれ内方に揺動した位
置にある。

【００１１】ブレーキシュー２２の先端部同士間には、
拡張ピストン装置２３も配設されている。この拡張ピス
トン装置２３は油圧力を受けて拡張し、ブレーキシュー
２２，２２をアンカーピン２１による支持部を中心とし
て、互いに離れる方に、すなわち、外周側に拡張するよ
うに揺動させる。拡張ピストン装置２３への油圧力はブ
レーキ作動時に供給されるものであり、ブレーキ作動時
には拡張ピストン装置２３がブレーキシュー２２を引っ
張りスプリング２４に抗して拡張方向に揺動させる。

【００１２】ブレーキシュー２２を囲んでブレーキドラ
ム２５が配設されており、このようにブレーキシュー２
２が拡張方向に揺動されると、ブレーキシュー２２の外
周のブレーキライニングがブレーキドラム２５の内面に
押し付けられ、両者の間の摩擦力により、ブレーキドラ
ム２５の回転が制動される。これにより、ブレーキドラ
ム２５が取り付けられたホイールの制動がなされる。

【００１３】以上のように構成したドラムブレーキは、
ホイールリム５内に配設されており、ホイールリム５お
よびホイールハブ４により外側から覆われている。この
ため、ドラムブレーキ内に車体外側からダスト、水等が
直接侵入しない。特に、ダスト、水等の侵入が問題とな
りやすいブレーキシューユニット２０は外側からブレー
キドラム２５により覆われているため、ブレーキシュー
ユニット２０内への車体外側からのダスト、水等の侵入
が問題となることはない。

【００１４】一方、ブレーキシューユニット２０の内側
にはこれが取り付けられるアンカーブラケット１０があ
るが、これだけでは内側からのダスト、水等の侵入が問
題となりやすい。このため、ブレーキドラム２５により
外側から囲まれるとともにブレーキシューユニット２０
が配設されている空間を内側から覆うようにしてアンカ
ーブラケット１０にダストカバー１５が取り付けられ
る。ダストカバー１５は、図４に示すような半円状プレ
ートを左右対象に形成したものを一対用いて構成され
る。この一対の半円状プレートは、左右から端部同士を
接合させるようにしてアンカーブラケット１０に取り付
けられ、この結果、ブレーキシューユニット２０が配設
された空間を内側から覆う円盤状のダストカバーが構成
される。

【００１５】ダストカバー１５の外周部１５ａは、ブレ
ーキドラム２５の内側端部２５ａを覆う庇状に形成され
ており、これにより、車体内側からダスト、水等がブレ
ーキシューユニット２０の配設空間内に侵入するのを効
果的に防止するようになっている。一方、ダストカバー
１５の内周部１５ｂは、アンカーブラケット１０の内側
面１０ａ（図５参照）に当接してボルト１３により固定
されている。アンカーブラケット１０は図５に示すよう
な形状に鋳造成形されて作られており、ダストカバー１
５が取り付けられる内側面１０ａは鋳肌のままである
か、もしくは、粗い加工が施されているだけである。こ
のため、この内側面１０ａとダストカバー１５の内周部
１５ｂとの間に隙間が生じやすく、このままではこの隙
間を通って外部からダスト、水等が侵入するおそれがあ
る。

【００１６】このようなことに鑑み、本例においては、
図３および図５に示すように、アンカーブラケット１０
の内側面１０ａにリング状溝１２を形成している。さら
に、ダストカバー１５の内周部に、このリング状溝１２
に対応するようにして、リング状の凸部１６（アンカー
ブラケット１０の方に突出する）を形成している。この
ため、ダストカバー１５は、図３に示すように、リング
状の凸部１６がリング状溝１２内に突入するようにして
アンカーブラケット１０の内側面１０ａにボルト１３に
より締結されて取り付けられる。

【００１７】このようにすれば、図３において矢印Ａで
示すように、タイヤの回転により巻き上げられた水等が
ダストカバー１５の接合部に当たったとしても、リング
状溝１２内に突入するリング状凸部１６がこの水が内部
に侵入するのを阻止する。このため、ブレーキシューユ
ニット２０の配設空間内への水等の侵入を押さえて、内
部部品に錆が発生したり、ウォーターフェード現象が発
生したりするのを効果的に防止することができる。

【００１８】なお、この場合、ダストカバー１５の内周
部１５ｂにリング状凸部１６を設けることによりこの部
分の剛性が高くなるので、内周部１５ｂの平面度を高く
することができる。このため、この構造の場合には、内
周部１５ｂとアンカーブラケット１０の内側面１０ａと
の接合部の隙間が大きくなるのを抑えることができると
いう利点もある。また、リング状溝１２内にリング状凸
部１６を突入させることにより、ダストカバー１５をア
ンカーブラケット１０に取り付ける際の取付位置決めを
行わせることができる。このため、本例の構造の場合に
は、ダストカバー１５の取付が容易である。

【００１９】以上においては、リング状溝１２とリング
状凸部１６とにより内部への水等の侵入を阻止する構造
を示したが、本考案に係るダストカバー取付構造はこれ
に限られず、以下に示すような構造もある。まず、第２
の取付構造を図６に示しており、この構造の場合には、
アンカーブラケット３０の内側面３０ａは平面状であ
る。ところが、ダストカバー３５の内周部３５ｂの先端
３５ｃを、アンカーブラケット３０の内周面３０ｂを覆
うように内方に折り曲げ成形しており、この折り曲げ部
により内部空間内への水等の侵入を防止するようになっ
ている。

【００２０】第３の取付構造を図７に示している。この
構造の場合には、ダストカバー４５の内周部４５ｂは平
板状であるが、アンカーブラケット４０の内側面４０ａ
にリング状溝４２を形成している。このリング状溝４２
内にはシール剤８が塗布され、この塗布の後、ダストカ
バー４５が取り付けられるようになっている。このよう
にすれば、シール剤８が内部空間内への水等の侵入を防
止する。

【００２１】第４の取付構造を図８に示している。この
構造の場合は、第３の構造とは逆で、ダストカバー５５
の内周部５５ｂにアンカーブラケット５０側から離れる
方向に突出したリング状凸部５６を形成し、アンカーブ
ラケット５０の内側面５０ａは平面状である。ダストカ
バー５５のリング状凸部５６の内面（アンカーブラケッ
ト５０と対抗する面）側にはリング状の溝が形成される
ため、この溝内にシール剤８が塗布され、この塗布を行
ったダストカバー５５をアンカーブラケット５０の内側
面５０ａに取り付けるようになっている。この場合に
も、シール剤８が内部空間内への水等の侵入を防止す
る。

【００２２】

【考案の効果】以上説明したように、本考案によれば、
このブレーキドラムにより外側から囲まれたブレーキシ
ューユニット配設空間を内側から覆ってダストカバーが
アンカーブラケットに取り付けられるようになったドラ
ムブレーキにおいて、アンカーブラケットにおけるダス
トカバーの内周端面が当接する側面にリング状溝を形成
し、ダストカバーの内周端面にリング状溝内に突出する
リング状凸部を形成しているので、リング状凸部をリン
グ状溝内に突出させるようにしてダストカバーがアンカ
ーブラケットに取り付けられ、この部分において、水等
が内部に侵入するのを防止する。このため、ブレーキシ
ューユニット内への水等の侵入を確実に防止でき、錆の
発生、ウォーターフェード現象の発生を防止することが
できる。

【００２３】なお、本考案に係るダストカバー取付構造
としては、上記ドラムブレーキにおいて、ダストカバー
の内周端部をアンカーブラケットの内周面を覆うように
折り曲げ成形した構造のものや、アンカーブラケットに
おけるダストカバーの内周端面が当接する側面にリング
状溝を形成し、このリング状溝内ににシール剤を塗布し
た構造のものや、ダストカバーの内周端面におけるアン
カーブラケットの側面と当接する部分に、アンカーブラ
ケットの側面から離れる方向に突出したリング状凸部を
形成し、このリング状凸部内面とアンカーブラケットの
側面との間のリング状空間内にシール剤を塗布した構造
のものもあり、いずれの構造においても、内部空間への
水等の侵入を防止し、錆の発生、ウォーターフェード現
象の発生を防止することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本考案に係るダストカバー取付構造を採用した
ドラムブレーキを示す断面図である。

【図２】上記ドラムブレーキの正面図である。

【図３】上記ドラムブレーキにおけるアンカーブラケッ
トへのダストカバーの取付構造を示す断面図である。

【図４】上記ドラムブレーキに用いられるダストカバー
を示す側面図および正面図である。

【図５】上記ドラムブレーキに用いられるアンカーブラ
ケットを示す断面図および正面図である。

【図６】本考案の第２の取付構造を示す断面図である。

【図７】本考案の第３の取付構造を示す断面図である。

【図８】本考案の第４の取付構造を示す断面図である。

【符号の説明】

５ ホイールリム １０，３０，４０，５０ アンカーブラケット １０ａ，３０ａ，４０ａ，５０ａ 内側面 １２ リング状溝 １５，３５，４５，５５ ダストカバー １６ リング状凸部 ２０ ブレーキシューユニット ２５ ブレーキドラム

Claims (4)

(57)【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 車体に固定されるアンカーブラケット
   と、このアンカーブラケットの外側面上に取り付けられ
   たブレーキシューユニットと、このブレーキシューユニ
   ットを軸方向外側から覆って回転自在に取り付けられる
   ブレーキドラムと、このブレーキドラムにより外側から
   囲まれた内部空間を軸方向内側から覆って前記アンカー
   ブラケットに取り付けられたダストカバーとからなるド
   ラムブレーキにおいて、 前記アンカーブラケットにおける前記ダストカバーの内
   周側面が当接して取り付けられる側面にリング状溝を形
   成し、前記ダストカバーの内周側面に前記リング状溝内
   に突出嵌合するリング状凸部を形成したことを特徴とす
   るドラムブレーキにおけるダストカバー取付構造。
2. 【請求項２】 車体に固定されるアンカーブラケット
   と、このアンカーブラケットの外側面上に取り付けられ
   たブレーキシューユニットと、このブレーキシューユニ
   ットを軸方向外側から覆って回転自在に取り付けられる
   ブレーキドラムと、このブレーキドラムにより外側から
   囲まれた内部空間軸方向を内側から覆って前記アンカー
   ブラケットに取り付けられたダストカバーとからなるド
   ラムブレーキにおいて、 前記ダストカバーの内周端部を、前記アンカーブラケッ
   トにおける前記ダストカバーの内周側面が当接して取り
   付けられる側面を覆うようにして、内方に折り曲げ成形
   したことを特徴とするドラムブレーキにおけるダストカ
   バー取付構造。
3. 【請求項３】 車体に固定されるアンカーブラケット
   と、このアンカーブラケットの外側面上に取り付けられ
   たブレーキシューユニットと、このブレーキシューユニ
   ットを軸方向外側から覆って回転自在に取り付けられる
   ブレーキドラムと、このブレーキドラムにより外側から
   囲まれた内部空間を軸方向内側から覆って前記アンカー
   ブラケットに取り付けられたダストカバーとからなるド
   ラムブレーキにおいて、 前記アンカーブラケットにおける前記ダストカバーの内
   周側面が当接して取り付けられる側面にリング状溝を形
   成し、このリング状溝とこの上に取り付けられた前記ダ
   ストカバーの内周側面との間に形成されるリング状空間
   内にシール剤を充填させたことを特徴とするドラムブレ
   ーキにおけるダストカバー取付構造。
4. 【請求項４】 車体に固定されるアンカーブラケット
   と、このアンカーブラケットの外側面上に取り付けられ
   たブレーキシューユニットと、このブレーキシューユニ
   ットを軸方向外側から覆って回転自在に取り付けられる
   ブレーキドラムと、このブレーキドラムにより外側から
   囲まれた内部空間を軸方向内側から覆って前記アンカー
   ブラケットに取り付けられたダストカバーとからなるド
   ラムブレーキにおいて、 前記アンカーブラケットの側面と当接して取り付けられ
   る前記ダストカバーの内周側面にリング状溝部を形成
   し、前記ダストカバーの内周側面を前記アンカーブラケ
   ットの側面に接合した状態で前記リング状溝部と前記ア
   ンカーブラケットの側面との間に形成されるリング状空
   間内にシール剤を充填させたことを特徴とするドラムブ
   レーキにおけるダストカバー取付構造。