JP4191715B2 - 車載用電動機制御装置 - Google Patents
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Description
この従来の装置は、電動機制御装置を電気自動車に適用したものであって、制御ユニットに伝達している電動機電流(相電流)の検出信号が途絶える異常が発生した場合にモータへの通電を停止し、車両が慣性力によって走行する状態へと移行させるようにしたものである。
これらの電流検出器の劣化は、電流量対出力電圧の比であるゲイン成分や電流がゼロにおいて発生する出力電圧であるオフセット成分の変動等をもたらす。
この場合、外部の制御演算装置での演算内容は、交流電動機や電動機制御装置の仕様に応じて変更しなければならない。また、特に交流電動機及び電動機制御装置に対して、別な制御演算装置により多数の動作点の変更判断、及び変更先の算出を行おうとすると、多量の情報を取り扱うことから、高い演算処理能力が要求され、制御演算装置の価格が高価となるという問題点があった
前記電動機制御ユニットは、前記車載用電動機制御装置及び前記交流電動機の動作状況に基づいて現総合効率より高い総合効率を得るべき前記車載用電動機制御装置及び前記交流電動機の目標動作点及び前記外部装置が前記目標動作点に対応して前記制御指令を移行させるための情報を算出する目標動作点算出手段と、該目標動作点算出手段により算出した前記目標動作点及び前記情報を外部装置へ伝送し前記外部装置が前記伝送された目標動作点及び前記情報に基づいて前記制御指令を移行し該移行した制御指令を出力するよう誘導する電動機動作情報伝送手段と、前記外部装置から与えられる前記移行した制御指令に基づいて演算したスッチング信号を前記スイッチング素子へ出力する制御演算部とを有するものである。
前記情報は、前記第1の目標動作点に対応する総合効率と前記現総合効率から前記第1の目標動作点に対応する総合効率への増加量とを含む第1の情報と、前記第2の目標動作点に対応する総合効率と前記現総合効率から前記第2の目標動作点に対応する総合効率への増加量とを含む第2の情報と、前記第3の目標動作点に対応する総合効率と前記現総合効率から前記第3の目標動作点に対応する総合効率への増加量とを含む第3の情報とからなることを特徴とするものである。
前記電動機制御ユニットは、前記外部装置からの制御指令に従がう動作条件の下で前記電力変換器と前記交流電動機とに発生する電力損失のうちの少なくとも一方若しくはそれらの総和が現電力損失より小さくなる目標動作点とすべく前記制御指令を補正した補正後制御指令を生成する目標動作点算出手段と、該目標動作点算出手段により生成した前記補正後制御指令に対応する前記目標動作点を前記外部装置へ伝送し前記外部装置が前記伝送された目標動作点に基づいて前記制御指令を移行し該移行した制御指令を出力するよう誘導する電動機動作情報伝送手段と、前記補正後制御指令に基づいて演算したスッチング信号を前記スイッチング素子へ出力する制御演算部とを有することを特徴とするものである。
前記電力変換器は、前記交流電動機に流れる電流量を検出する電流検出器と、前記直流電源の出力を平滑化する平滑用コンデンサとを備え、
前記電動機制御ユニットは、前記自動車が所定の性能低下をもたらすか否かを判定基準として前記車載電動機制御装置の構成部品の劣化を判定する劣化判定手段と、前記外部装置からの制御指令に従がう動作条件の下で前記劣化判定手段による判定の結果と前記車載用電動機制御装置及び前記交流電動機の動作状況とに基づいて、前記構成部品の劣化の進行を防ぎ若しくは前記自動車の性能低下を改善し又はそれら双方をなし得る目標動作点とすべく前記制御指令を補正した補正後制御指令を生成する目標動作点算出手段と、該目標動作点算出手段により生成した前記補正後制御指令に対応する前記目標動作点を前記外部装置へ伝送し前記外部装置が前記伝送された補正後制御指令に基づいて前記制御指令を移行し該移行した制御指令を出力するよう誘導する電動機動作情報伝送手段と、前記補正後制御指令に基づいて演算したスッチング信号を前記スイッチング素子へ出力する制御演算部とを有するものである。
図1は本発明の実施の形態1による電動機制御装置の全体構成を示すブロック図である。
図1において、直流電源3は、電力変換器4を介して三相の交流電動機2に接続されている。交流電動機2は、同期電動機で構成され、車両の駆動原として用いられる。電力変換器4は、三相インバータ6と、三相インバータ6と直流電源3の間に位置する平滑用コンデンサ7と、三相インバータ6と交流電動機2の間の各相の電力線U、V、Wに配置された電流検出器16a、16b、16cとを備えている。
図2に於いて、目標動作点算出手段22は、電力変換器4への入力電力と、この入力電力から電力変換器4と交流電動機2で発生する電力損失の総和を差し引いた電力との比、即ち総合効率を、直流電圧VdcがV1、V2、V3、V4、V5である毎に記憶した総合効率テーブルを備えている。ただし、V1は車載用電動機制御装置1及び交流電動機2の動作時における直流電源3の動作範囲の下限電圧であり、V5は上限電圧である。V1、V2、V3、V4、V5には、それぞれV1<V2<V3<V4<V5の関係がある。
(2)同一出力(トルクτ*と電動機回転速度ωeの積が一定)の特性線上であって最も総合
効率が高い領域での回転速度に関する中点(図2中の点pt)における、電動機回転速度ωet、出力トルクτt、総合効率ηt、現動作点pcからの総合効率の増加量Δηt
ただし、最も総合効率が高い領域が複数存在する場合は、現動作点から最も近い領域を選択する。
図2において、同一出力特性線上で最も総合効率が高い領域は、点pra1から点pra2の間であり、点pra1での回転速度ωera1と、点pra2での回転速度ωera2の中間値を目標動作点の電動機回転速度ωetとする。
[Vdc=V1の総合効率テーブル対応]:
電動機回転速度ωe*_V1、総合効率η*_V1、現動作点からの総合効率の増加量Δη*_V1
[Vdc=V2の総合効率テーブル対応]:
電動機回転速度ωe*_V2、総合効率η*_V2、現動作点からの総合効率の増加量Δη*_V2
ここで、Vdc=V1、V2、V3、V4、V5の総合効率テーブルの要素である総合効率は、直流電圧に関して互いに隣接するテーブル同士で急激な変化があったり不連続な状態があったりしないことを前提とする。急激な変化や不連続な状態が存在する場合は、上記の演算式にしたがっても適切な補間演算を行えないため、直流電圧Vdcの刻みを細かくし、総合効率テーブルの枚数を増やして対応する。
(3) 同一出力トルクτ*、同一回転速度ωeであって、Vdc=V1、V2、V3、V4、V5の各総合効率テーブルの内で最も総合効率が高く、かつ、現直流電圧値Vdcからの変化量が最も小さい点における直流電圧Vdc_v、総合効率ηv、現動作点からの総合効率の増加量Δηv
総合効率が最高となる第2の目標動作点としての出力トルク、回転速度、(3)同一トルク、同一回転速度のもとで総合効率が最高となる第3の目標動作点としての直流電圧を、目標動作点候補として推奨するものである。外部装置24は、これら情報伝送結果からいずれかの目標動作点候補への移行を取捨選択するなど判断し、電動機動作量指示を設定する。
即ち、制御演算部20は、d軸電流指令id0*、q軸電流指令iq0*を入力し、これら電流指令値にしたがって動作するよう制御演算を行う。先ず、電動機電流算出手段28が出力する交流電動機2のU相、V相、W相の電流値iu、iv、iwと、回転角度速度算出手段30が出力する回転角度θを用いて、次式により実際値のd軸電流id、q軸電流iqを算出する。
また、目標動作点候補とその算出方法は、上記に例示した方法とは別のものであってもよい。
図3は、本発明の実施の形態2による電動機制御装置の全体構成を示すブロック図である。
図3中、図1と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示しており、以下の説明では実施の形態1と同一部分の動作説明は適宜省略する。
図3において、電力変換器4の直流電源3側には昇降圧DCーDCコンバータ8が接続されており、電力変換器4内の三相インバータ6に対して直流電源3の出力電圧を昇圧若しくは降圧変換して印加する。昇降圧DCーDCコンバータ8は、トランジスタ13aとフライホイールダイオード14aとを逆並列に接続したもの、及びトランジスタ13bとフライホイールダイオード14bを逆並列に接続したものを、夫々パワー素子の一単位として備え、これらの二つのパワー素子を直列に接続して配置している。
先ず、各サーマルダイオード17a、17b、17cに、これらに夫々対応して接続した定電流回路26a、26b、26cから所定電流を流し、この時の順方向電圧Vfを検知する。そして、ダイオードのPN接合部の温度に依存して順方向電圧Vfが変化することに基づき、パワー素子温度算出手段27a、27b、27cによりパワー素子温度を算出する。
先ず、実施の形態1の場合と同様に、電流指令テーブル21が、外部装置24から電動機の動作量指示として与えられるトルク指令τ*及び電動機回転速度ωeを入力し、保有するテーブルを参照してd軸電流指令id0*、q軸電流指令iq0*を出力する。目標動作点算出手段22は、電流指令テーブル21から出力されたd軸電流指令id0*、q軸電流指令iq0*を入力する。
図4において、目標動作点算出手段22は、電力変換器損失算出器40、電動機損失算出器41、加算器42、制御指令補正演算部43、力率算出手段44から構成される。
本実施の形態2において、目標動作点は車載用電動機制御装置1及び交流電動機2に発生する電力損失の和(=総電力損失)を最小化するものであり、目標動作点算出手段22は現動作点に対してさらに総電力損失が少ない動作点を逐次探索し動作点目標として更新、設定して行く。ここで、総電力損失が少ない動作点を探索するために、現動作点での総電力損失を見積もる。
銅損算出部411は、交流電動機2に電流iaが流れることによって交流電動機2の電流経路の抵抗分で発生する銅損(=ジュール損)を算出する。銅損の特性は、電動機電流iaと電流経路の抵抗成分の関数として表される。電流経路の抵抗成分の大部分を電動機の電機子巻線の抵抗成分が占めており、この電機子巻線の抵抗は温度上昇によって増加する特性を持っている。
総電力損失は、遅延器431と減算器432に伝達される。遅延器431は、離散時間的に目標動作点の更新を行う際の更新単位時間だけ総電力損失の情報伝達を遅延させる処理を行い、その出力は前回周期の目標動作点更新時における総電力損失である。減算器432は、現総電力損失から前回周期の総電力損失を減算し、これを総電力損失の変化量として、d軸電流指令補正器433、q軸電流指令補正器434、直流電圧指令補正器435へ出力する。
先ず減算器432が出力する総電力損失変化量を、不感帯演算器441が入力してゼロ近傍の微小な変化を除去し出力する。この出力を用いて補正係数テーブル442によりテーブルを参照して補正係数を得る。
即ち、係数器463と積分器464からなる積分制御器によって総電力損失を減少させる方向の補正量を演算し、直流電圧指令を補正するよう動作する。
図8は、本発明の実施の形態3による電動機制御装置の全体構成を示すブロック図である。
図8中、図1、図3と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示しており、これらは同様の役割、動作であるため、適宜説明を省略する。
図8において、電動機制御ユニット5は劣化判定手段32を備えている。また、電力変換器4は、平滑コンデンサ7からの情報を処理する平滑用コンデンサ情報処理手段33と、昇降圧DCーDCコンバータ8及び三相インバータ6の各パワー素子の情報を検知するパワー素子情報検知器34a〜34hと、これらのパワー素子情報検知器34a〜34hからの情報を処理するパワー素子情報処理手段35と、平滑用コンデンサ電流検出器36、及びサーミスタ37を備えている。
[パワー素子の劣化]
パワー素子の劣化として、具体的にはパワーチップの割れ、パワーチップを接合する半田のひびによってパワーチップに部分的使用不能領域が発生してパワーチップのオン抵抗が増加し、劣化が進行したパワーチップと劣化していないパワーチップとで電気的特性が異なることで電気供給経路の平衡性が損われたり、オン抵抗の増加により発熱量が増加して放熱、冷却性能の許容値を超え、劣化進行度合いが加速するといった性能悪化が挙げられる。これらパワー素子の劣化によって、電動機の回転が滑らかに行われず出力トルクの変動が発生することや、大電流時にこれを検知してパワーチップのスイッチングを遮断する過電流保護が所定の設定値から誤差をもって動作してしまうことや、局所的な温度上昇によって過熱保護のための電動機出力制限動作が頻発して当初設計通りの連続的な運転を満足できなくなる、といった問題が発生する。
平滑用コンデンサの劣化として、具体的には静電容量の減少、耐電圧性能の低下といったものが挙げられる。この平滑用コンデンサの劣化によって、平滑能力が低下して直流の電圧、電流リップルが増加し、電動機制御の安定性が損われたり、直流側電力供給経路の電磁ノイズの増加、即ち電磁妨害性(EMI)の悪化、バッテリなど直流電源へ電圧、電流リップルが伝わることによる直流電源そのものの劣化を引き起こす。また、耐電圧性能の低下は絶縁破壊に対する余裕の減少となる。一般的に予め耐電圧性能の低下を見越してマージンを持たせるよう電力変換器の直流動作電圧(系電圧)の設定が行われるが、マージン設定は、装置の容積、コストとのトレードオフ関係となるため、可能な限りマージンを削減することが望まれる。
電流検出器の劣化として、具体的には振動によりホール素子の機械的取り付け位置が変化してしまうことでの電流経路との相対位置関係の変動や、集磁材そのものあるいは集磁材の支持構造の膨張収縮による集磁材空隙長の変動、信号の増幅過程のインタフェース回路での電子部品特性変動といったものが挙げられる。
これら電流検出器の劣化によって、電流量対出力電圧の比であるゲイン成分や電流がゼロにおいて発生する出力電圧であるオフセット成分の変動が発生する。電流検出器は電動機の制御性能に関して重要な役割を果たしており、ゲイン成分やオフセット成分の変動によって動作の平衡性が失われて出力トルク変動が発生したり、また電流波形の乱れが大きくなり大電流を検知してパワーチップのスイッチングを遮断する過電流保護が頻発する、所定の電動機出力目標量に対して実際の電動機出力が一致しないといった問題を起こす。
パワー素子温度検出器の劣化として、具体的にはインタフェース回路部品の特性変動といったものが挙げられる。
パワー素子温度検出器が劣化することで温度検出結果に誤差が生じ、実際のパワー素子温度に比べて温度検出結果が高く出力される場合には過熱保護のための電動機出力制限動作が頻発して当初設計通りの連続的な運転を満足できないという問題が発生する。一方、実際のパワー素子温度に比べて温度検出結果が低く出力される場合には、本来過熱保護が動作すべきパワー素子温度に達していても保護動作が行われず、パワー素子の劣化が進行したり、場合によっては破壊に至るおそれがある。また、パワー素子温度検出結果に基づいてパワー素子のON抵抗をテーブル参照するなどして算出し高精度な電動機制御に適用している場合などでは、温度検出結果の誤差によって制御精度が悪化することとなる。
車両用電動機制御装置1の構成部品の劣化は、劣化判定手段32により判定される。図9は劣化判定手段32の詳細な構成を示すブロック図である。劣化判定手段32は、劣化判定基準テーブル321、パワー素子劣化判定部322、平滑用コンデンサ劣化判定部323、電流検出器劣化判定部324、パワー素子温度検出器劣化判定部325を有している。
図10は、劣化判定基準テーブル321の構成例を示す図である。劣化判定基準は、判定対象である各トランジスタ9a〜9f、13a、13b及び各フライホイールダイオード10a〜10f、14a、14bから成るパワー素子、平滑用コンデンサ7、電動機電流検出器16a〜16c、パワー素子温度検出器27a〜27cの各部品毎に、また、各部品におけるそれぞれの劣化判定種類毎に、当該車載用電動機制御装置1が搭載された自動車がシステムとして所定の性能劣化をもたらすか否かに基づいて設定される。
パワー素子劣化判定部322での劣化判定は次のように行われる。先ず、パワー素子情報検知器34a〜34hにより、パワー素子を構成するトランジスタ9a〜9f、13a、13bのそれぞれのコレクターエミッタ間電圧Vce、ゲートーエミッタ間電圧Vge、コレクタ電流分流Icsが検出されパワー素子情報処理手段35を経てパワー素子劣化判定部322へ入力される。
スイッチング信号のオン動作移行後、またはゲートーエミッタ間電圧Vgeの最大振幅到達後の所定時間(トランジスタが既にオンしているであろう時間)経過時点でのコレクターエミッタ間飽和電圧Vce(sat)を、判定基準値[Ref_Vce(sat)]と比較する。
スイッチオン動作によりゲートーエミッタ間電圧Vgeが立ち上がり、ゼロクロス時点から所定時間(ターンオン定格時間)経過時点でのコレクターエミッタ間電圧Vceを、判定基準値[Ref_Vce(ton)]と比較する。
スイッチオフ動作によりゲートーエミッタ間電圧Vgeが減衰を開始した時点から所定時間(ターンオフ定格時間)経過時点でのコレクタ電流分流Icsを判定基準値[Ref_Ics(toff)]と比較する。
平滑用コンデンサ劣化判定部323での劣化判定は、次のように行われる。
先ず、図8に示す平滑用コンデンサ電流検出器36からの信号を用いて平滑用コンデンサ情報処理手段33から平滑用コンデンサ通過電流量ic_rplが出力され、直流母線電流検出器15からの信号を用いて直流母線電流算出手段31から直流母線電流量idcが検出される。また、サーミスタ37からの信号を用いて平滑用コンデンサ情報処理手段33から平滑用コンデンサ7の温度tem_Cが検出される。
なお、平滑用コンデンサ7の劣化判定の方法として、周知の他の方法を用いてもよく、本発明において劣化判定の方法が、前述した方法に限定されるものではない。
電流検出器劣化判定部324(図9)での劣化判定は、例えば次の原理に基づいて行われる。
交流電動機巻線電気特性の平衡性利用
(1)電動機多相巻線の電気特性が平衡(抵抗、自己インダクタンス、相互インダクタンス各成分が各相とも同量)しており、何れの相にも同等振幅の電流が流れる場合に、電流検出器16a〜16cからの各相電流量検出値の振幅が同等であるか否かに基づいて劣化判定を行う。スイッチング信号を矩形波1パルススイッチング法またはすべてオフ(フライホイールダイオード10a〜10fのみに電流が流れる全波整流状態)とすれば、安定した平衡電流が流れるため劣化判定の精度が高まる。
交流電動機2が低回転速度で速度起電力が小さい場合(停止時など)に電流検出器16a〜16cが備えられた複数の経路に単一電流が流れるようパワー素子のスイッチングを組み合わせ、複数の電流検出器で同一電流量を検出し、その検出値の差異に基づいて劣化判定を行う。
例えば、三相の交流電動機2の制御を三相インバータ6で行う場合、三相を構成するU、V、W相の内、U相高電位(P)側トランジスタ9aとV相低電位(N)側トランジスタ9dとをスイッチオンし、その他のトランジスタ9b、9c、9e、9fをスイッチオフすれば、電流は高電位(P)側からトランジスタ9aを経て三相交流電動機のU相巻線を正方向に流れ入り、V相巻線を負方向に流れ出てトランジスタ9dを経て低電位(N)側へ帰還する。このとき電流検出器16aと16bは極性が異なる同一電流量を検出することとなるので、こ時の検出結果に相違があればいずれかの電流検出器に特性変動が生じていることとなる。パワー素子のスイッチングの組み合わせを適宜変更してこれら電流検出器の特性変動を詳細に確認して行くことができる。
パワー素子温度検出器劣化判定部325(図9)での劣化判定は、例えば次のようにして行われる。
(1)車載用電動機制御装置1が充分放熱され、パワー素子の温度が周囲温度相当となった際の各パワー素子温度検出器どうしの検出結果の差異(バラツキ)を基準値と比較する。
(2)多相平衡状態運転時でパワー素子間の0スイッチング頻度、通過電流量が平衡している場合での各パワー素子温度検出器どうしの検出結果の差異(バラツキ)を基準値と比較する。
(3)所定基準時点(例えばパワー素子のスイッチング開始時点)からのパワー素子温度検出器の検出結果変化特性を、予め定められたパワー素子発熱放熱特性テーブルと比較してその差異を基準値と比較する。
図13は、平滑用コンデンサ7の劣化判定時に目標動作点を算出し制御指令値の補正を行う目標動作点算出手段22の詳細な構成を示すブロック図である。
図13に示される目標動作点算出手段22は、制御指令補正演算部43、力率算出手段44、平滑用コンデンサリップル電流ー力率特性テーブル51、及び減算器52から構成されている。また、制御指令補正演算部43は、係数器53、54、積分器55、56、及び加算器57、58から構成されている。
先ず、力率算出手段44は、d軸電流指令id*、q軸電流指令iq*及び回転角度θを用いて算出される電動機電流iaの位相と制御演算部20で算出される電動機端子電圧指令Va*の位相との差から、これの余弦値を取って力率を算出し出力する。
さらに、本実施の形態3では、目標動作点算出、制御指令補正演算につき平滑用コンデンサの静電容量の劣化に関して例示したが、対象となる劣化はこれに限定されず、適宜、他の劣化現象に対する目標動作点算出、制御指令補正演算を組み合わせてよい。
図15は、実施の形態4による車載用電動機制御装置の目標動作点算出手段22の詳細な構成を示すブロック図である。
本実施の形態4による装置のシステムの全体構成は、目標動作点算出手段22が図15に示されるものであることを除いて図3に示される実施の形態2によるシステムの全体構成と同様であるため、以下の説明では、図3及び図15を参照し、構成、動作が異なる部分を主体に説明する。
この本実施の形態4における目標動作点算出手段22は、電力変換器4内のトランジスタ損失が所定の許容量を超過する場合にスイッチング周波数を低下させてトランジスタ損失を低減させるという目標動作点の逐次更新動作を行うものであり、電力変換器4及び交流電動機2で発生する電力損失を指標値とし、目標動作点の更新の際にこの指標値の変化量が所望の範囲内に収まるようスイッチング周波数の更新幅を制限するよう動作する。
変化量制限器64は、減算器641、可変リミッタ642、加算器643、遅延器644から構成される。
図16は、実施の形態5による車載用電動機制御装置における特定指標変化量算出部61の詳細な構成を示すブロック図である。
本実施の形態5は、特定指標変化量算出部61が図16に示されるものであることを除いて、図15に示される実施の形態4による目標動作点算出手段22と同じであるため、以下、動作が異なる部分について説明する。
先ず、電動機回転速度ωeと(式9)にしたがい、d軸電流idとq軸電流iqから求まる電動機電流iaが基本ルックアップテーブル621へ入力される。基本ルックアップテーブル621は、車載用電動機制御装置1及び交流電動機2が所定の動作状況に有る場合の代表値に基づいて、定常状態での電力変換器4と交流電動機2で発生する電力損失の総和、即ち総電力損失を予め実測、算定し、電動機回転速度ωeと電動機電流iaを座標軸として対応する動作点毎に上記総電力損失を要素に持つよう構成されている。基本ルックアップテーブル621は、入力した電動機回転速度ωeと電動機電流iaとに対応する動作点での総電力損失をテーブル参照して検索し出力する。
第一感度ルックアップテーブル622は、パワー素子温度感度テーブル624、電力変換器部スイッチング周波数感度テーブル625、力率感度テーブル626から構成される。
第二感度ルックアップテーブル623は、電動機部スイッチング周波数感度テーブル627、電動機巻線温度感度テーブル628、変調率感度テーブル629から構成される。
実施の形態6は、図15において、電力変換器損失算出器40、電動機損失算出器41により用いる電力変換器4及び交流電動機2の電気的回路定数を、車載用電動機制御装置1及び交流電動機2の動作状況に基づいて設定値がより適正なものとなるよう適宜修正するようにしたものである。
実施の形態7は、図16において、基本ルックアップテーブル621、第一感度ルックアップテーブル622、第二感度ルックアップテーブル623を、車載用電動機制御装置1及び交流電動機2の動作状況に基づいて設定値がより適正なものとなるよう適宜修正するようにしたものである。
図17は、、実施の形態8による車載用電動機制御装置の全体構成を示すブロック図である。図17に於いて、図8と同一の符号を付したものは、同一または相当部分を示している。この実施の形態8は、実施の形態3と比較して、電流指令テーブル21から出力されるd軸電流指令id0*、q軸電流指令iq0*が目標動作点算出手段22による補正を受けないまま、制御演算部20に直接される点が異なる。
2 交流電動機
3 直流電源
4 電力変換器
5 電動機制御ユニット
6 三相インバータ
7 平滑用コンデンサ
8 昇降圧DCーDCコンバータ
9a〜9f トランジスタ
10a〜10f フライホイールダイオード
11 コンデンサ
12 チョークコイル
13a、13b トランジスタ
14a、14b フライホイールダイオード
15 直流母線電流検出器
16a、16b、16c 電流検出器
17a、17b、17c サーマルダイオード
18 回転角検出器
19 サーミスタ
20 制御演算部
21 電流指令テーブル
22 目標動作点算出手段
23 電動機動作情報伝送手段
24 外部装置
25 直流電圧算出手段
26a、26b、26c 定電流回路
27a、27b、27c パワー素子温度算出手段
28 電動機電流算出手段
29 電動機巻線温度算出手段
30 回転角度速度算出手段
31 直流母線電流算出手段
32 劣化判定手段
33 平滑用コンデンサ情報処理手段
34a〜34h パワー素子情報検知器
35 パワー素子情報処理手段
36 平滑用コンデンサ電流検出器
37 サーミスタ
40 電力変換器損失算出器
41 電動機損失算出器
42 加算器
43 制御指令補正演算部
44 力率算出手段
51 平滑用コンデンサリップル電流ー力率特性テーブル
52 減算器
53、54 係数器
55、56 積分器
57、58 加算器
61 特定指標変化量算出部
62 減算器
63 スイッチング周波数設定テーブル
64 変化量制限器
321 劣化判定基準テーブル
322 パワー素子劣化判定部
323 平滑用コンデンサ劣化判定部
324 電流検出器劣化判定部
325 パワー素子温度検出器劣化判定部
401 トランジスタ損失算出部
402 フライホイールダイオード損失算出部
403 加算器
411 銅損算出部
412 鉄損算出部
413 高調波損失補正量算出部
414 加算器
431 遅延器
432 減算器
433 d軸電流指令補正器
434 q軸電流指令補正器
435 直流電圧指令補正器
441 不感帯演算器
442 補正係数テーブル
443 係数器
444 積分器
445 加算器
451 不感帯演算器
452 補正係数テーブル
453 係数器
454 積分器
455 加算器
461 不感帯演算器
462 補正係数テーブル
463 係数器
464 積分器
465 加算器
466 目標直流電圧演算部
501 実効値演算器
502 低域通過フィルタ(LPF)
503 振幅比演算器
504 補正ゲインテーブル
505 係数器
506 比較器
507 減算器
508 リップル抽出器
611 係数器
621 基本ルックアップテーブル
622 第一感度ルックアップテーブル
623 第二感度ルックアップテーブル
624 パワー素子温度感度テーブル
625 電力変換器部スイッチング周波数感度テーブル
626 力率感度テーブル
627 電動機部スイッチング周波数感度テーブル
628 電動機巻線温度感度テーブル
629 変調率感度テーブル
631 変換器損失補正合成手段
632 電動機損失補正合成手段
633、634 加算器
641 減算器
642 可変リミッタ
643 加算器
644 遅延器
Claims (9)
- 直流電源から供給される直流電力をスイッチング素子のスイッチングにより交流電力に変換して自動車に搭載された交流電動機に供給する電力変換器と、外部装置からの制御指令に基づいて前記スイッチングを制御して前記交流電動機を制御する電動機制御ユニットとを備えた車載用電動機制御装置であって、
前記電動機制御ユニットは、前記車載用電動機制御装置及び前記交流電動機の動作状況に基づいて現総合効率より高い総合効率を得るべき前記車載用電動機制御装置及び前記交流電動機の目標動作点と前記外部装置が前記目標動作点に対応して前記制御指令を移行させるための情報とを算出する目標動作点算出手段と、該目標動作点算出手段により算出した前記目標動作点及び前記情報を外部装置へ伝送し前記外部装置が前記伝送された目標動作点及び前記情報に基づいて前記制御指令を移行し該移行した制御指令を出力するよう誘導する電動機動作情報伝送手段と、前記外部装置から与えられる前記移行した制御指令に基づいて演算したスッチング信号を前記スイッチング素子へ出力する制御演算部とを有する、
ことを特徴とする車載用電動機制御装置。 - 前記目標動作点は、前記交流電動機に於けるトルクが同一で且つ前記電力変換器に於ける直流電圧が同一のもとでの現総合効率より高い総合効率を得るべき前記交流電動機の回転速度である第1の目標動作点と、前記交流電動機に於けるトルクと回転速度との積である出力が同一で且つ前記電力変換器に於ける直流電圧が同一のもとでの現総合効率より高い総合効率を得るべき前記交流電動機のトルクと回転速度である第2の目標動作点と、前記交流電動機の同一トルクと同一回転速度のもとでの現総合効率より高い総合効率を得るべき前記電力変換器の直流電圧である第3の目標動作点とからなり、
前記情報は、前記第1の目標動作点に対応する総合効率と前記現総合効率から前記第1の目標動作点に対応する総合効率への増加量とを含む第1の情報と、前記第2の目標動作点に対応する総合効率と前記現総合効率から前記第2の目標動作点に対応する総合効率への増加量とを含む第2の情報と、前記第3の目標動作点に対応する総合効率と前記現総合効率から前記第3の目標動作点に対応する総合効率への増加量とを含む第3の情報とからなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車載用電動機制御装置。 - 直流電源から供給される直流電力をスイッチング素子のスイッチングにより交流電力に変換して自動車に搭載された交流電動機に供給する電力変換器と、外部装置からの制御指令に基づいて前記スイッチングを制御して前記交流電動機を制御する電動機制御ユニットとを備えた車載用電動機制御装置であって、
前記電動機制御ユニットは、前記外部装置からの制御指令に従がう動作条件の下で前記電力変換器と前記交流電動機とに発生する電力損失のうちの少なくとも一方若しくはそれらの総和が現電力損失より小さくなる目標動作点とすべく前記制御指令を補正した補正後制御指令を生成する目標動作点算出手段と、該目標動作点算出手段により生成した前記補正後制御指令に対応する前記目標動作点を前記外部装置へ伝送し前記外部装置が前記伝送された目標動作点に基づいて前記制御指令を移行し該移行した制御指令を出力するよう誘導する電動機動作情報伝送手段と、前記補正後制御指令に基づいて演算したスッチング信号を前記スイッチング素子へ出力する制御演算部とを有する、
ことを特徴とする車載用電動機制御装置。 - 前記目標動作点算出手段は、前記外部装置からの制御指令に従がう動作条件の下で前記目標動作点を逐次更新するとともに、該更新した目標動作点により前記交流電動機を動作させるべく前記制御指令を補正する制御指令補正演算部を備えることを特徴とする請求項3に記載の車載用電動機制御装置。
- 前記目標動作点算出手段は、前記電力変換器及び前記交流電動機の電気的回路定数を用いた数理モデルに基づいて目標動作点の算出を行い、現在の目標動作点と次に算出する目標動作点における特定の指標値の偏差が所望の範囲内であるよう目標動作点を更新して出力するものであり、前記特定の指標値として、電力損失、電力変換器の電流、電圧、電力、温度及び電磁ノイズ、前記交流電動機の電流、電圧、電力、機械出力、トルク、回転速度、温度及び電磁ノイズ、前記直流電源の電流、電圧、電力及び温度のうち、少なくとも何れかを適用することを特徴とする請求項3又は4に記載の車載用電動機制御装置。
- 前記目標動作点算出手段は、前記車載用電動機制御装置及び前記交流電動機の代表動作特性を用いて作成される基本ルックアップテーブルと前記電力変換器の電気的回路定数に関する第1の感度ルックアップテーブル及び前期交流電動機の電気的回路定数に関する第2の感度ルックアップテーブルとに基づいて目標動作点の算出を行い、現在の目標動作点と次に算出する目標動作点における特定の指標値の偏差が所望の範囲内であるよう目標動作点を更新して出力するものであり、前記特定の指標値として、電力損失、前記電力変換器の電流、電圧、電力、温度及び電磁ノイズ、前記交流電動機の電流、電圧、電力、機械出力、トルク、回転速度、温度及び電磁ノイズ、前記直流電源の電流、電圧、電力及び温度のうち、少なくともいずれかを適用することを特徴とする請求項3又は4に記載の車載用電動機制御装置。
- 前記電力変換器及び前記交流電動機の電気回路定数、及び、前記基本ルックアップテーブル、前記第1の感度ルックアップテーブル、前記第2の感度ルックアプテーブルは、前記車載用電動機制御装置及び前記交流電動機の動作状況に基づいて設定値がより適切なものとなるよう適宜修正されることを特徴とする請求項6に記載の車載用電動機制御装置。
- 直流電源から供給される直流電力をスイッチング素子のスイッチングにより交流電力に変換して自動車に搭載された交流電動機に供給する電力変換器と、外部装置からの制御指令に基づいて前記スイッチングを制御して前記交流電動機を制御する電動機制御ユニットとを備えた車載用電動機制御装置であって、
前記電力変換器は、前記交流電動機に流れる電流量を検出する電流検出器と、前記直流電源の出力を平滑化する平滑用コンデンサとを備え、
前記電動機制御ユニットは、前記自動車が所定の性能低下をもたらすか否かを判定基準として前記車載電動機制御装置の構成部品の劣化を判定する劣化判定手段と、前記外部装置からの制御指令に従がう動作条件の下で前記劣化判定手段による判定の結果と前記車載用電動機制御装置及び前記交流電動機の動作状況とに基づいて、前記構成部品の劣化の進行を防ぎ若しくは前記自動車の性能低下を改善し又はそれら双方をなし得る目標動作点とすべく前記制御指令を補正した補正後制御指令を生成する目標動作点算出手段と、該目標動作点算出手段により生成した前記補正後制御指令に対応する前記目標動作点を前記外部装置へ伝送し前記外部装置が前記伝送された補正後制御指令に基づいて前記制御指令を移行し該移行した制御指令を出力するよう誘導する電動機動作情報伝送手段と、前記補正後制御指令に基づいて演算したスッチング信号を前記スイッチング素子へ出力する制御演算部とを有する、
ことを特徴とする車載用電動機制御装置。 - 前記目標動作点算出手段は、前記外部装置からの前記制御指令に従う交流電動機動作条件を起点として前記構成部品の劣化の進行を防ぎ、若しくは前記自動車の性能低下を改善するよう、またはその双方をなすよう前記目標動作点を逐次更新するとともに、該更新した目標動作点により前記で交流電動機を動作させるべく前記制御指令を補正する制御指令補正演算部を備えたことを特徴とする請求項8に記載の車載用電動機制御装置。
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