JP4186632B2 - リチウムイオン二次電池の制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リチウムイオン二次電池用電極と、その電極を備えたリチウムイオン二次電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リチウム二次電池は軽量であり、なおかつ高電圧で高エネルギー密度が得られるため、近年、移動体通信機器、携帯電子機器の主電源として利用されている。しかしながら、これら機器の小型高性能化にともなってより一層の高エネルギー密度化が求められており多くの研究が行われている。
【0003】
これまでリチウムイオン二次電池の正・負極活物質材料として、数多くの材料が提案・研究されているが、負極に関しては、活物質材料に炭素材料やアルミニウム合金等を用いたものが実用化されている。上記の負極活物質材料の中では炭素材料が最も高性能であり広く用いられている。
【0004】
しかし、この材料は既に理論容量(約370mAh/g)に近い容量で使われており、さらに大幅な高エネルギー密度化をすることが困難な状況である。
【0005】
そこで、リチウム二次電池のより一層の高容量化を可能にする負極活物質材料として、種々の新規材料の検討が行われている。例えば、負極活物質材料としてはシリコンやスズをはじめとするリチウムを吸蔵放出可能な金属やこれら金属の合金等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平07−29602号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、例えばシリコン等の金属粉末を活物質材料として用いる場合、充放電サイクルにともなう容量劣化が大きい。また、充放電時のリチウムの吸蔵放出反応に伴う活物質自身の体積変化が大きく、電極厚みが大きく変化することになる。このため、放電状態に対して充電状態では電池全体の膨れが起こり、特に、角形電池では厚み増加の原因となる。前述のサイクルにともなう容量劣化に関しても、充放電時の大きな体積変化の繰り返しに耐えられず、電極内部において活物質粒子の割れや粒子同士の接触不良に伴う集電性の低下を引き起こし、容量劣化の一因となっている。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、充放電サイクルにともなう容量劣化を抑制し、なおかつ活物質粒子の充放電に伴う体積変化を抑制して、厚み変化が小さくサイクル特性の優れたリチウムイオン二次電池用負極を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
前記従来の課題を解決するために、本発明のリチウムイオン二次電池の制御方法は、活物質を含む負極と、正極と非水電解質を備えたリチウムイオン二次電池の制御方法であって、前記負極の前記活物質は、可逆的にリチウムの吸蔵・放出が可能なSi相と、電気化学的にLiを吸蔵放出しないSi合金相との2相から成り、前記Si合金相は、Ti,Fe,Co,Ni,Cuから選ばれる少なくとも一種の金属とSiとの合金であり、充放電時に、前記Si相を、Li X Si(0≦X≦2.33)の組成範囲内となるように、リチウムを吸蔵・放出させるリチウムイオン二次電池を制御する。
【0012】
また、本発明のリチウムイオン二次電池の制御方法は、活物質を含む負極と、正極と非水電解質を備えたリチウムイオン二次電池の制御方法であって、前記負極の前記活物質は、リチウムの吸蔵・放出が可能なSiであり、かつ、スパッタ、蒸着またはCVDで形成された膜であり、充放電時に、前記Siを、Li X Si(0≦X≦2.33)の組成範囲内となるように、リチウムを吸蔵・放出させるリチウムイオン二次電池を制御する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
(実施の形態1)
本発明は、LiXSiを含有する活物質を有するリチウムイオン二次電池用負極において、LiXSiを0≦X≦2.33の組成範囲内で動作させることにより、充電時の電極厚み増加を抑制し、なおかつ充放電繰り返し時の電極内での集電性低下による容量劣化を改善するものである。この結果、充電時の電池膨れが少なくサイクル特性の優れたリチウムイオン二次電池となる。
【0015】
本発明を具体的に説明する。LiXSiには組成比に応じてX=0、1.71、2.33、3.25、4.4の5種類の相が存在しており、充放電時のX値の変化にともない相変化が起こっている。この相変化にともない体積変化も起こり、X値が大きくなる程体積は増加する。ここで、LiXSiを0≦X≦2.33の組成範囲内で動作させた場合、理論容量である0≦X≦4.4の組成範囲での動作と比較して充電時の体積膨張は38%低減する。さらに、LiXSiを含有する材料、具体的には電気化学的にLiを吸蔵放出しないSi合金とLiXSiとの二相から成る合金材料では、Liと電気化学反応しないSi合金相の三次元骨格的な組織構造による膨張抑制効果のため、より体積膨張が小さくなる。特に、0≦X≦2.33の組成範囲でその効果は大きい。しかしながら、2.33<Xの範囲ではLiXSi相の膨張の応力がSi合金相による抑制効果を上回ってしまうため粒子の膨張率も増加すると考えられる。
【0016】
上述の膨張抑制効果はLiXSi相が非晶質状態であればより顕著となる。このことは、非晶質状態といえども微小な領域では結晶構造を保っており、結晶状態と同様の体積変化をするものの全体には乱れた構造であるため、LiXSi相内で膨張の応力が緩和され易くなるためであると考えられる。Si合金との二相合金の場合にはSi合金相による膨張抑制力がより効果的に機能する。さらに、ナノサイズレベルで分散した微小な組織構造から成る二相合金であれば、粒子内部で応力が分散されてより効果的である。
【0017】
また、反応性の面でもX≦3.25まで使った場合には一部がX=3.25相の状態のままLiを放出することなく残留し容量低下の原因ともなる。詳細につては明確ではないが、固相内でのLi拡散や相変化の速度の影響により、X=3.25相からX=2.33相への反応性が低下してしまうためであると考えられる。このことは、体積変化の応力の大きさに耐えられずに粒子内部で微小な割れが生じ集電不良となってしまうことも原因の一つであると考えられる。
【0018】
本発明において用いられる電極の形状としては、粉末状の活物質材料を、溶媒を加えて導電剤、結着剤等と混合し集電体に塗布することにより得られるシート状電極、粉末状の活物質材料と導電剤、結着剤等との混合物を成形して得られるシート状およびペレット状電極、スパッタ、蒸着、CVD等の方法で集電体上に活物質膜を形成することにより得られる薄膜状電極等のいずれにおいても同等の効果が得られる。
【0019】
粉末状の活物質材料と混合する導電剤としては、電子伝導性材料であれば何でもよい。例えば、天然黒鉛(鱗片状黒鉛など)、人造黒鉛、膨張黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維類、銅、ニッケル等の金属粉末類およびポリフェニレン誘導体などの有機導電性材料などがあり、これらを単独又はこれらの混合物として負極に含ませることができる。
【0020】
これらの導電剤のなかで、微粒子で導電性の高いカーボンブラック類が特に好ましい。導電剤の添加量は、特に限定されない。これらの導電剤は負極合剤に添加する導電剤としても用いることができる。
【0021】
本発明において電極合剤中に添加される結着剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれであってもよい。
【0022】
本発明において好ましい電極合剤中に添加する結着剤は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)をはじめとする一般にリチウム二次電池用電極に用いられる樹脂であれば、これらの材料を単独又は混合物として用いることができる。
【0023】
本発明に用いられる負極集電体としては、構成された電池において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。例えば、負極に用いる集電体材料としてはステンレス鋼、ニッケル、銅、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケルあるいはチタンを処理させたものなどが用いられる。特に、コストや加工性、安定性の面で銅あるいは銅合金が好ましい。
【0024】
これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることも可能である。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチングされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0025】
本発明に用いられる正極材料には、一般式LixCoO2で表される化合物(1.0≧X≧0.6)、一般式LixNiO2で表される化合物(1.0≧X≧0.2)、一般式LixMn2O4で表される化合物(1.0≧X>0)をはじめとする一般にリチウム二次電池の正極材料として用いられるリチウム含有化合物、または、非含有の化合物を用いることができる。
【0026】
本発明で使用される正・負極用導電剤は、用いる電極材料の充放電電位において、化学変化を起こさない電子伝導性材料であれば何でもよい。
【0027】
例えば、黒鉛類やカーボンブラック類、炭素繊維等の炭素材料や金属粉末、金属繊維等が挙げられる。
【0028】
本発明に用いられる正極用集電体としては、用いる正極材料の充放電電位において化学変化を起こさない電子伝導体であれば何でもよい。
【0029】
例えば、材料としてステンレス鋼、アルミニウム、チタン、炭素、導電性樹脂などの他に、アルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボンあるいはチタンを処理させたものが用いられる。特に、コストや加工性、安定性の面でアルミニウムあるいはアルミニウム合金が好ましい。これらの材料の表面を酸化して用いることもできる。また、表面処理により集電体表面に凹凸を付けることも可能である。形状は、フォイルの他、フィルム、シート、ネット、パンチされたもの、ラス体、多孔質体、発泡体、繊維群、不織布体の成形体などが用いられる。厚みは、特に限定されないが、1〜500μmのものが用いられる。
【0030】
電池の形状はコイン型、ボタン型、シート型、積層型、円筒型、偏平型、角型、電気自動車等に用いる大型のものなど、いずれにも適用できる。
【0031】
また、本発明のリチウムイオン二次電池は、携帯情報端末、携帯電子機器、家庭用小型電力貯蔵装置、自動二輪車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車等に用いることができるが、特にこれらに限定されるわけではない。
【0032】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)
実施例1として、Si粉末を負極活物質として用いた場合について説明する。
【0034】
先ず、活物質としてのSi粉末と導電剤としてのアセチレンブラック、結着剤としてのSBR樹脂に溶媒を加えて混練し、合剤ペーストを調製した。この合剤ペーストを集電体としての銅箔上にドクターブレード法で塗布し、十分に乾燥させて負極板シートを作成した。
【0035】
以上のようにして作成した極板シートを直径1cmの円形に切り出し、これを電極として、次の方法で図1に示すコイン型試験セルを作製し、電池特性を評価した。
【0036】
図1は本発明における、リチウムイオン二次電池用負極の評価用試験セルの断面図を示す。試験極6は、前述の方法で作成した電極であり、集電体7とともに、ケース5内に設置した。この試験極6上にセパレータ4としての多孔質ポリエチレンシートを設置し、電解液(図示せず)としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1の混合溶媒に1Mの濃度で六フッ化リン酸リチウムを溶解した溶液をケース内に充填した。
【0037】
このケース5に、対極としてのリチウム箔2を封口板1内に設置した集電体3に圧着したものを重ねた後、ガスケット8を装着し、プレス封口機を用いかしめ封口してコイン型電池を作製した。
【0038】
なお、試験極は直径1cmの円形に切り出した状態で、電極上の活物質重量が20mgとなるようにあらかじめ塗布量を調整しておいた。
【0039】
試験セルは、充電放電ともに電流密度0.5mA/cm2の定電流でおこない、X値がそれぞれ1.71、2.33、3.25、4.4となるように容量規制で充放電を行った。このとき、導電剤であるアセチレンブラックの充放電への関与も考慮して容量設定した。なお、目的とするX値の範囲で充放電できていることは、同条件で充放電した電池の活物質を透過電子顕微鏡装置を用いた電子線回折法により測定することで確認した。また、各設定容量での充電状態の負極合剤膨れを調べるため、初期充電状態の電池を分解して負極を取り出して厚み測定を行った。
【0040】
図2および図3に各設定容量の50サイクル目の容量維持率と初期充電状態での負極合剤厚み増加を示す。
【0041】
ここで、本発明は負極に関するものであるので、試験極が酸化される方向(Li脱離方向)を放電、還元される方向(Li挿入方向)を充電とよぶ。
【0042】
図2よりX>2.33では大幅に容量維持率が低下しており、X≦2.33の範囲で充放電させることにより良好なサイクル特性が得られることがわかる。また、図3より合剤厚み増加に関してもX≦2.33の範囲とすることで抑制されている。
【0043】
(実施例2)
実施例2として、M−Si合金(MはTi,Fe,Co,Ni,Cu)粉末を負極活物質として用いた場合について説明する。
【0044】
合金粉末の調製は溶融法で得た合金を出発原料としたメカニカルアロイング法により行い、各元素についてTi37wt%−Si63wt%、Fe40wt%−Si60wt%、Co41wt%−Si59wt%、Ni41wt%−Si59wt%、Cu42wt%−Si58wt%の合金を合成した。合成した合金は透過電子顕微鏡装置を用いた電子線回折法によりMSi2合金とSiの二相となっていることを確認した。
【0045】
電極および電池の作成、評価については実施例1と同様の方法で行った。
【0046】
先ず、活物質としてのM−Si合金(MはTi,Fe,Co,Ni,Cu)粉末と導電剤としてのアセチレンブラック、結着剤としてのSBR樹脂に溶媒を加えて混練し、合剤ペーストを調製した。この合剤ペーストを集電体としての銅箔上にドクターブレード法で塗布し、十分に乾燥させて負極板シートを作成した。
【0047】
以上のようにして作成した極板シートをそれぞれ直径1cmの円形に切り出し、これを電極として、次の方法で図1に示すコイン型試験セルを作製し、電池特性を評価した。
【0048】
図1は本発明における、リチウムイオン二次電池用負極の評価用試験セルの断面図を示す。試験極6は、前述の方法で作成した電極であり、集電体7とともに、ケース5内に設置した。この試験極6上にセパレータ4としての多孔質ポリエチレンシートを設置し、電解液(図示せず)としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1の混合溶媒に1Mの濃度で六フッ化リン酸リチウムを溶解した溶液をケース内に充填した。
【0049】
このケース5に、対極としてのリチウム箔2を封口板1内に設置した集電体3に圧着したものを重ねた後、ガスケット8を装着し、プレス封口機を用いかしめ封口してコイン型電池を作製した。
【0050】
なお、試験極は直径1cmの円形に切り出した状態で、電極上の活物質重量が20mgとなるようにあらかじめ塗布量を調整しておいた。
【0051】
試験セルは、充電放電ともに電流密度0.5mA/cm2の定電流でおこない、M−Si合金中のLiと反応しうるLiXSi成分のX値がそれぞれ1.71、2.33、3.25、4.4となるように容量規制で充放電を行った。このとき、導電剤であるアセチレンブラックの充放電への関与も考慮して容量設定した。なお、目的とするX値の範囲で充放電できていることは、同条件で充放電した電池の活物質を透過電子顕微鏡装置を用いた電子線回折法により測定することで確認した。また、各設定容量での充電状態の負極合剤膨れを調べるため、初期充電状態の電池を分解して負極を取り出して厚み測定を行った。
【0052】
(表1)に各設定容量の初期充電状態での負極合剤厚み増加と50サイクル目の容量維持率を示す。また、図4および図5に代表的な例としてTi37wt%−Si63wt%合金を用いた場合の容量維持率と合剤厚み増加の図を示す。
【0053】
【表1】
【0054】
図4よりX>2.33では大幅に容量維持率が低下しており、X≦2.33の範囲で充放電させることにより良好なサイクル特性が得られることがわかる。また、図5に示すように合剤厚み増加に関してもX≦2.33の範囲とすることで大幅に抑制されている。
【0055】
なお、本実施例2のM−Si合金はメカニカルアロイング法で調製したが、その他の溶解法や粉末冶金法等の一般に合金の調製に用いられる手法を用いても同様の結果が得られる。また、メカニカルアロイング法においても出発原料してMとSiそれぞれの単体を用いて調製しても、その他の方法で調製したM−Si合金を用いてさらに微小分散化させても良い。
【0056】
(実施例3)
実施例3として、Ti−Si合金粉末を負極活物質として用いた場合について説明する。
【0057】
合金粉末の調製は溶融法で得た合金を出発原料としたメカニカルアロイング法により行い、Ti41wt%−Si59wt%、Ti32wt%−Si68wt%、Ti18wt%−Si82wt%の合金を合成した。合成した合金は透過電子顕微鏡装置を用いた電子線回折法によりMSi2合金とSiの二相となっていることを確認した。
【0058】
電極および電池の作成、評価については実施例1と同様の方法で行った。
【0059】
先ず、活物質としてのTi−Si合金粉末と導電剤としてのアセチレンブラック、結着剤としてのSBR樹脂に溶媒を加えて混練し、合剤ペーストを調製した。この合剤ペーストを集電体としての銅箔上にドクターブレード法で塗布し、十分に乾燥させて負極板シートを作成した。
【0060】
以上のようにして作成した極板シートをそれぞれ直径1cmの円形に切り出し、これを電極として、次の方法で図1に示すコイン型試験セルを作製し、電池特性を評価した。
【0061】
図1は本発明における、リチウムイオン二次電池用負極の評価用試験セルの断面図を示す。試験極6は、前述の方法で作成した電極であり、集電体7とともに、ケース5内に設置した。この試験極6上にセパレータ4としての多孔質ポリエチレンシートを設置し、電解液(図示せず)としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1の混合溶媒に1Mの濃度で六フッ化リン酸リチウムを溶解した溶液をケース内に充填した。
【0062】
このケース5に、対極としてのリチウム箔2を封口板1内に設置した集電体3に圧着したものを重ねた後、ガスケット8を装着し、プレス封口機を用いかしめ封口してコイン型電池を作製した。
【0063】
なお、試験極は直径1cmの円形に切り出した状態で、電極上の活物質重量が20mgとなるようにあらかじめ塗布量を調整しておいた。
【0064】
試験セルは、充電放電ともに電流密度0.5mA/cm2の定電流でおこない、Ti−Si合金中のLiと反応しうるLiXSi成分のX値がそれぞれ1.71、2.33、3.25、4.4となるように容量規制で充放電を行った。このとき、導電剤であるアセチレンブラックの充放電への関与も考慮して容量設定した。なお、目的とするX値の範囲で充放電できていることは、同条件で充放電した電池の活物質を透過電子顕微鏡装置を用いた電子線回折法により測定することで確認した。また、各設定容量での充電状態の負極合剤膨れを調べるため、初期充電状態の電池を分解して負極を取り出して厚み測定を行った。
【0065】
(表2)に各設定容量の初期充電状態での負極合剤厚み増加と50サイクル目の容量維持率を示す。
【0066】
【表2】
【0067】
(表2)より各組成において同様の効果が得られている。
【0068】
なお、本実施例3のTi−Si合金はメカニカルアロイング法で調製したが、その他の溶解法や粉末冶金法等の一般に合金の調製に用いられる手法を用いても同様の結果が得られる。また、メカニカルアロイング法においても出発原料してMとSiそれぞれの単体を用いて調製しても、その他の方法で調製したM−Si合金を用いてさらに微小分散化させても良い。
【0069】
ここでは、Ti−Si合金について説明したが、Fe−Si合金、Co−Si合金、Ni−Si合金、Cu−Si合金のいずれにおいても同様の効果が得られる。
【0070】
(実施例4)
実施例4として、Si薄膜を負極活物質として用いた場合について説明する。
【0071】
先ず、スパッタ法によりCu基盤上に厚さ5μmのSi膜を形成した。これを直径1cmの円形に切り出し電極として、次の方法で図1に示すコイン型試験セルを作製し、電池特性を評価した。
【0072】
図1は本発明における、リチウムイオン二次電池用負極の評価用試験セルの断面図を示す。試験極6は、前述の方法で作成した電極であり、集電体7とともに、ケース5内に設置した。この試験極6上にセパレータ4としての多孔質ポリエチレンシートを設置し、電解液(図示せず)としてエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの1:1の混合溶媒に1Mの濃度で六フッ化リン酸リチウムを溶解した溶液をケース内に充填した。
【0073】
このケース5に、対極としてのリチウム箔2を封口板1内に設置した集電体3に圧着したものを重ねた後、ガスケット8を装着し、プレス封口機を用いかしめ封口してコイン型電池を作製した。
【0074】
試験セルは、充電放電ともに電流密度0.1mA/cm2の定電流でおこない、X値がそれぞれ1.71、2.33、3.25、4.4となるように容量規制で充放電を行った。なお、目的とするX値の範囲で充放電できていることは、同条件で充放電した電池の活物質を透過電子顕微鏡装置を用いた電子線回折法により測定することで確認した。また、各設定容量での充電状態の負極合剤膨れを調べるため、初期充電状態の電池を分解して負極を取り出して厚み測定を行った。
【0075】
図6および図7に各設定容量の50サイクル目の容量維持率と充電状態での負極合剤膨張率を示す。
【0076】
図6よりX>2.33では大幅に容量維持率が低下しており、X≦2.33の範囲で充放電させることにより良好なサイクル特性が得られることがわかる。また、図7に示すように合剤厚み増加に関してもX≦2.33の範囲とすることで抑制されている。
【0077】
以上、実施例1〜4として電池特性の説明を行ったが、それぞれの場合について50サイクル目放電状態の電極の7Li−NMR測定を行った。(表3)にX値とピーク位置に関する事前の検討結果を示すが、組成変化にともないシグナル位置のシフトが見られる。
【0078】
【表3】
【0079】
各電極の測定結果ではサイクル劣化の大きなX=3.25、4.4の組成まで使って充放電した場合には、放電状態であるにも関わらずX=3.25相に対応する位置にシグナルが大きく現れた。従って、X=3.25の相は反応性が低く、Liが脱離されきれずに一部この組成のまま電極内に残留してしまっていると考えられる。LiXSiとLiの反応はX=2.33とX=3.25の中間組成ではそれぞれの相が共存する二相反応であるので、X>2.33の範囲で充放電を行った場合にはサイクル毎にX=3.25相の残留が起こり、サイクル劣化を起こしてしまう。もちろん、X>3.25の範囲で充放電を行ってもX=3.25相が必ず生成するためサイクル劣化が起こる。図8に代表的な例として、実施例2のTi37wt%−Si63wt%合金を用いた電池のX≦2.33の範囲で充放電した電極とX≦3.25の範囲で充放電した電極の50サイクル目放電状態での7Li−NMR測定結果を示す。
【0080】
なお、本実施例ではコイン型電池を用いて試験を行ったが、円筒形電池や角形電池、積層形電池、またポリマー電解質を用いた電池等においても同様の結果が得られる。
【0081】
【発明の効果】
以上のように、可逆的にリチウムの吸蔵・放出が可能な活物質を含むリチウムイオン二次電池用負極において、前記活物質がLiXSiを含有し0≦X≦2.33の組成範囲内で動作させることにより、サイクル劣化の少ない優れた特性を有し、なおかつ厚み変化の少ない電極及びその電極を用いたリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例におけるリチウムイオン二次電池用負極を具備した評価用試験セルの断面図
【図2】本発明の実施例1におけるX値と50サイクル目容量維持率の関係を示す図
【図3】本発明の実施例1におけるX値と初期充電状態での負極合剤厚み増加の関係を示す図
【図4】本発明の実施例2におけるX値と50サイクル目容量維持率の関係を示す図
【図5】本発明の実施例2におけるX値と初期充電状態での負極合剤厚み増加の関係を示す図
【図6】本発明の実施例4におけるX値と50サイクル目容量維持率の関係を示す図
【図7】本発明の実施例4におけるX値と初期充電状態での負極合剤厚み増加の関係を示す図
【図8】Ti37wt%−Si63wt%合金を用いた電極の50サイクル目放電状態での7Li−NMR測定結果を示す図
【符号の説明】
1 封口板
2 リチウム箔
3 集電体
4 セパレータ
5 ケース
6 試験極
7 集電体
8 ガスケット
Claims (3)
- 活物質を含む負極と、正極と非水電解質を備えたリチウムイオン二次電池の制御方法であって、
前記負極の前記活物質は、可逆的にリチウムの吸蔵・放出が可能なSi相と、電気化学的にLiを吸蔵放出しないSi合金相との2相から成り、
前記Si合金相は、Ti,Fe,Co,Ni,Cuから選ばれる少なくとも一種の金属とSiとの合金であり、
充放電時に、前記Si相を、Li X Si(0≦X≦2.33)の組成範囲内となるように、
リチウムを吸蔵・放出させるリチウムイオン二次電池の制御方法。 - 前記Si合金相は、MSi 2 (Mは、Ti,Fe,Co,Ni,Cuから選ばれる少なくとも一種の金属)である請求項1記載のリチウムイオン二次電池の制御方法。
- 活物質を含む負極と、正極と非水電解質を備えたリチウムイオン二次電池の制御方法であって、
前記負極の前記活物質は、リチウムの吸蔵・放出が可能なSiであり、かつ、スパッタ、蒸着またはCVDで形成された膜であり、
充放電時に、前記Siを、Li X Si(0≦X≦2.33)の組成範囲内となるように、リチウムを吸蔵・放出させるリチウムイオン二次電池の制御方法。
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