JP4185169B2 - 慢性線維形成肝疾患および急性肝疾患の治療のための薬剤の製造におけるブラジキニンアンタゴニストの使用 - Google Patents

慢性線維形成肝疾患および急性肝疾患の治療のための薬剤の製造におけるブラジキニンアンタゴニストの使用 Download PDF

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Description

【0001】
本発明は慢性線維形成肝疾患(肝硬変および肝線維症)および急性肝疾患の治療、並びに合併症の予防のための薬剤の製造におけるブラジキニンアンタゴニストの使用に関する。
ブラジキニンおよび関連のペプチドは炎症や痛みをもたらす強力な血管作用性の内因性物質である。ブラジキニンが関与し、誘導し、または促進する状態をコントロールするための薬剤としてのブラジキニンアンタゴニストの使用が開示されている(EP−B 0 370 453)。
【0002】
驚くべきことに、今般、ブラジキニンアンタゴニストは慢性線維形成肝疾患(肝硬変および肝線維症)および急性肝疾患の治療、並びに合併症の予防、特に門脈圧亢進、代償不全現象、例えば腹水、浮腫形成、肝腎症候群、高血圧性胃疾患および結腸疾患、門脈圧亢進による胃腸管の脾腫および出血性合併症、副行循環および充血、並びに慢性的な筋力過多循環状態およびその結果としての心臓疾患の予防または治療において適当な薬剤であることがわかった。
適当な化合物はラットのCCl4−誘発肝線維症モデルにおいてナトリウム排泄増加作用を示すブラジキニンアンタゴニストである。
【0003】
特に適当なブラジキニンアンタゴニストはとりわけ式I
Z−P−A−B−C−E−F−K−(D)Q−G−M−F′−I (I)
〔式中、Zはa1) 水素、(C1〜C8)−アルキル、(C1〜C8)−アルカノイル、(C1〜C8)−アルコキシカルボニル、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C4〜C9)−シクロアルカノイルまたは(C1〜C8)−アルキルスルホニルであり、ここで、1、2または3個の水素原子はそれぞれ場合によりカルボキシル、NHR(1)、〔(C1〜C4)−アルキル〕NR(1)または〔(C6〜C10)−アリール−(C1〜C4)−アルキル〕NR(1)(ここで、R(1)は水素またはウレタン保護基である)、(C1〜C4)−アルキル、 (C1〜C8)−アルキルアミノ、 (C6〜C10)−アリール−(C1〜C4)−アルキルアミノ、ヒドロキシル、(C1〜C4)−アルコキシ、ハロゲン、ジ−(C1〜C8)−アルキルアミノ、ジ−〔(C6〜C10)−アリール−(C1〜C4)〕−アルキルアミノ、カルバモイル、フタルイミド、1,8−ナフタルイミド、スルファモイル、(C1〜C4)−アルコキシカルボニル、(C6〜C14)−アリールおよび(C6〜C14)−アリール−(C1〜C5)−アルキルからなる群より選択される1、2または3個の同一または異なる基により置換され、
あるいは1個の水素原子はそれぞれ場合により(C3〜C8)−シクロアルキル、(C1〜C6)−アルキルスルホニル、(C1〜C6)−アルキルスルフィニル、(C6〜C14)−アリール−(C1〜C4)−アルキルスルホニル、(C6〜C14)−アリール−(C1〜C4)−アルキルスルフィニル、(C6〜C14)−アリール、(C6〜C14)−アリールオキシ、 (C3〜C13)−ヘテロアリールおよび(C3〜C13)−ヘテロアリールオキシからなる群より選択される基により置換され、
そして1または2個の水素原子はカルボキシル、アミノ、(C1〜C8)−アルキルアミノ、ヒドロキシル、(C1〜C4)−アルコキシ、ハロゲン、ジ−(C1〜C8)−アルキルアミノ、カルバモイル、スルファモイル、(C1〜C4)−アルコキシカルボニル、(C6〜C14)−アリールおよび(C6〜C14)−アリール−(C1〜C5)−アルキルからなる群より選択される1または2個の同一または異なる基により置換され;
【0004】
2) (C6〜C14)−アリール、(C7〜C15)−アロイル、(C6〜C14)−アリールスルホニル、(C3〜C13)−ヘテロアリールまたは(C3〜C13)−ヘテロアロイルであり;
3) 場合により窒素上で(C1〜C8)−アルキル、(C6〜C14)−アリールまたは(C6〜C14)−アリール−(C1〜C5)−アルキルにより置換されうるカルバモイルであり;
ここで、a1)、a2)およびa3)で定義される基において、アリール、ヘテロアリール、アロイル、アリールスルホニルおよびヘテロアロイル基は場合によりカルボキシル、アミノ、ニトロ、(C1〜C8)−アルキルアミノ、 ヒドロキシル、(C1〜C6)−アルキル、(C1〜C6)−アルコキシ、(C6〜C14)−アリール、(C7〜C15)−アロイル、ハロゲン、シアノ、ジ−(C1〜C8)−アルキルアミノ、カルバモイル、スルファモイルおよび(C1〜C6)−アルコキシカルボニルからなる群より選択される1、2、3または4個の基により置換され;
【0005】
Pは直接結合または式II
−NR(2)−(U)−CO− (II)
(式中、R(2)は水素、メチルまたはウレタン保護基であり、
Uは場合により置換されうる(C3〜C8)−シクロアルキリデン、(C6〜C14)−アリーリデン、(C3〜C13)−ヘテロアリーリデン、(C6〜C14)−アリール−(C1〜C6)−アルキリデン、または〔CHR(3)〕n(ここで、nは1〜8、好ましくは1〜6である)であり、
R(3)は互いに独立して水素、(C1〜C6)−アルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C6〜C14)−アリール、(C3〜C13)−ヘテロアリール(ここで、水素以外の基はそれぞれ場合によりアミノ、置換アミノ、アミジノ、置換アミジノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、グアニジノ、置換グアニジノ、ウレイド、置換ウレイド、メルカプト、メチルメルカプト、フェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ニトロフェニル、4−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、フタルイミド、1,8−ナフタルイミド、4−イミダゾリル、3−インドリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジルまたはシクロヘキシルにより単置換され、また置換アミノは好ましくは−N(A′)−Zであり、置換アミジノは好ましくは−(NH=)C−NH−Zであり、置換グアニジノは好ましくは−N(A′)−C〔=N(A′)〕−NH−Zであり、そして置換ウレイドは好ましくは−CO−N(A′)−Zであり、ここでA′は互いに独立して水素またはZであり、Zはa1)またはa2)において定義された通りである)であり、あるいは
R(2)およびR(3)はそれらを有する原子と一緒になって2〜15個の炭素原子を有する単一、二−または三環式環系を形成する)の基であり;
AはPのように定義され;
Bは側鎖が置換されうるL−またはD−配置の塩基性アミノ酸であり;
【0006】
Cは式IIIaまたはIIIb
G′−G′−Gly (IIIa)
G′−NH−(CH2)P−CO (IIIb)
(式中、pは2〜8であり、そして
G′は互いに独立して式IV
−NR(4)−CHR(5)−CO− (IV)
(式中、R(4)およびR(5)はそれらを有する原子と一緒になって2〜15個の炭素原子を有する単一、二−または三環式複素環系を形成する)の基である)の化合物であり;
Eは中性、酸性または塩基性の脂肪族または脂環式脂肪族アミノ酸の基であり;
Fは互いに独立して側鎖が置換されうる中性、酸性または塩基性の脂肪族または芳香族アミノ酸の基、または直接結合であり;
【0007】
(D)Qは場合によりハロゲン、メチルまたはメトキシにより置換されうるD−Tic、D−Phe、D−Oic、D−ThiまたはD−Nal、あるいは次の式(V)
【化2】
Figure 0004185169
(式中、Xは酸素、イオウまたは直接結合である)の基であり;
Rは水素、(C1〜C8)−アルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C6〜C14)−アリール、(C6〜C14)−アリール−(C1〜C4)−アルキル(ここで、脂環式系は場合によりハロゲン、メチルまたはメトキシにより置換されうる)であり;
Gは上記G′のように定義されるか、または直接結合であり;
F′はFのように定義されるか、−NH−(CH2)q−基(ここで、q=2〜8である)であるか、または
Gが直接結合でない場合、直接結合であり;
Iは−OH、−NH2またはNHC25であり;
Kは−NH−(CH2)x−CO−基(ここで、x=1〜4である)であるか、または直接結合であり;そして
MはFのように定義される〕のペプチドおよびそれらの生理学的に許容しうる塩である。
【0008】
適当なブラジキニンアンタゴニストは例えば特許出願WO 95/07294〔Scios Nova、プソイドペプチド〕、WO 94/08607〔Scios Nova、プソイドペプチド〕、WO 94/06453〔Stewart、5−位の脂肪族アミノ酸〕、WO 93/11789〔Nova〕、EP−A 552 106〔Adir〕、EP−A 578 521〔Adir〕、WO 94/19372〔Scios Nova、 シクロペプチド〕、EP−A 370 453〔ヘキスト〕、EP−A 472 220〔Syntex〕、 WO 92/18155〔Nova〕、 WO 92/18156〔Nova〕、WO 92/17201〔Cortech〕およびWO 94/11021〔Cortech;式X(BKA)n(式中、Xは連結する結合であり、BKAはブラジキニンアンタゴニストのペプチド鎖であり、そしてnは1より大きい整数である)のブラジキニンアンタゴニスト;式X(BKA)のブラジキニンアンタゴニスト;および式(Y)(X)(BKA)(式中、Yは非ブラジキニン受容体に対するアンタゴニストまたはアゴニストであるリガンドである)のブラジキニンアゴニスト〕に記載されている。
【0009】
特に適当な式Iのペプチドは、
Zは水素であるか、あるいはa1)、a2)またはa3)において定義された通りであり、
Pは結合または式II
−NR(2)−(U)−CO− (II)
(式中、UはCHR(3)であり、
R(3)は上記で定義された通りであり、そして
R(2)はHまたはCH3である)の基であり、
Aは結合であるものである。
特に好ましい式Iの化合物は、
Zは水素であるか、あるいはa1)、a2)またはa3)において定義された通りであり、
Pは結合または式II
−NR(2)−(U)−CO− (II)
(式中、UはCHR(3)であり、
【0010】
R(3)は互いに独立して水素、(C1〜C6)−アルキル、(C3〜C8)−シクロアルキル、(C6〜C14)−アリール、 (C3〜C13)−ヘテロアリール(ここで、水素以外の基はそれぞれ場合によりアミノ、置換アミノ、ヒドロキシル、カルボキシル、カルバモイル、グアニジノ、置換グアニジノ、ウレイド、メルカプト、メチルメルカプト、フェニル、4−クロロフェニル、4−フルオロフェニル、4−ニトロフェニル、4−メトキシフェニル、4−ヒドロキシフェニル、フタルイミド、4−イミダゾリル、3−インドリル、2−チエニル、3−チエニル、2−ピリジル、3−ピリジルまたはシクロヘキシルにより単置換され、また置換アミノは好ましくは−N(A′)−Zであり、そして置換グアニジノは好ましくは−N(A′)−C〔=N(A′)〕−NH−Zであり、ここでA′は互いに独立して水素またはZであり、Zはa1)またはa2)において定義された通りである)であり、あるいは
R(2)およびR(3)はそれらを有する原子と一緒になって2〜15個の炭素原子を有する単一、二−または三環式環系を形成し、
R(2)はHまたはCH3である)の基であり、
Aは結合であり、そして
(D)QはD−Ticであるものである。
【0011】
好ましくは、次の化合物が適当である;
H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH(HOE 140)、
パラ−グアニドベンゾイル−Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Phe-Ser-D-HypE(トランスプロピル)-Oic-Arg-OH、
H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Cpg-Ser-D-Cpg-Cpg-Arg-OH、
H-D-Arg-Arg-Pro-Pro-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
H-Arg(Tos)-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
H-Arg(Tos)-Pro-Hyp-Gly-Phe-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Phe-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
Fmoc-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
Fmoc-Aoc-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
Fmoc-ε−アミノカプロイル−D−Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
ベンゾイル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
シクロヘキシルカルボニル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
Fmoc-Aeg(Fmoc)-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
Fmoc-Aeg(Fmoc)-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
インドール−3−イル−アセチル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
ジベンジルアセチル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OHおよび
これらの生理学的に許容しうる塩。
【0012】
次の化合物は特に適当である;
H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH(HOE 140)、
パラ−グアニドベンゾイル−Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OHおよび
これらの生理学的に許容しうる塩。
H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH(HOE 140)およびその生理学的に許容しうる塩は特に極めて適当である。
【0013】
投与は経小腸的に、非経口的に、例えば皮下的に、筋肉内的に、または静脈内的に、経鼻的に、経腸的に、あるいは吸入により行うことができる。活性化合物の投与量は体重、年令および投与方法に依存する。
本発明の医薬製剤はそれ自体知られている溶解、混合、粒状化、錠剤化または糖衣工程で製造される。
非経口的投与の場合、活性化合物またはそれらの生理学的に許容しうる塩は所望により、例えば等張化またはpH調整のため、薬学的に慣用の補助剤と可溶化剤、乳化剤または他の補助剤を用いて溶液、懸濁液または乳濁液にされる。
【0014】
上記の薬剤において、皮下または筋肉内投与のため注射可能な遅効性製剤の使用もまた有効である。使用されうる薬剤形態は例えば油性結晶懸濁液、マイクロカプセル、微粒子、極微粒子または移植錠であり、後者については例えばポリ乳酸−ポリグリコール酸コポリマー系のような組織適合性ポリマー、特に生分解性ポリマーから構成することができる。他の考えられるポリマーはポリアミド、ポリエステル、ポリアセテートまたは多糖類である。
【0015】
経口投与形態の場合、活性化合物はこの用途で慣用の添加剤、例えば賦形剤、安定剤または不活性希釈剤と混合され、そして慣用の方法により適当な投与形態、例えば錠剤、コーチング錠、硬質ゼラチンカプセル剤、水性、アルコール性または油性懸濁液、あるいは水性、アルコール性または油性溶液にされる。使用されうる不活性賦形剤は例えばアラビアゴム、マグネシア、炭酸マグネシウム、リン酸カリウム、ラクトース、グルコース、ステアリルフマル酸マグネシウムまたはスターチ、特にコーンスターチである。この場合、固体状薬剤形態の製造は乾燥したまたは湿った顆粒として行うことができる。適当な油性賦形剤または溶媒は例えばひまわり油およびタラ肝油のような植物または動物油である。
【0016】
経口遅効性製剤または腸溶コーチングを有する製剤もまた考えられる。遅効性製剤は脂肪、ろうまたはポリマーを包埋する錠剤に基づいて構成されうる。これに関して、多層からなる、またはコーチングの施された錠剤またはペレット剤もまた適している。
上記の薬剤において、全身的な活性レベルを達成するために粘膜への投与もまた有効である。これは鼻腔内的に、吸入により、また経腸的に投与できることと関連がある。
【0017】
鼻腔内投与形態の場合、化合物はこの用途で慣用の添加剤、例えば安定剤または不活性希釈剤と混合され、そして慣用の方法により適当な投与形態、例えば粉末、水性、アルコール性または油性懸濁液、あるいは水性、アルコール性または油性溶液にされる。エチレンジアミン−N,N,N′,N′−四酢酸のようなキレート化剤、並びに酢酸、リン酸、クエン酸、酒石酸およびこれらの塩のような緩衝剤を水性鼻腔内製剤に加えることができる。多重用量容器はベンズアルコニウムクロライド、クロロブタノール、クロルヘキシジン、ソルビン酸、安息香酸、PHBエステルまたは有機水銀化合物のような保存剤を含有する。
【0018】
経鼻液剤の投与は計量噴霧器により、または粘度を高める成分を有する点鼻剤として、あるいは経鼻ゲル剤または経鼻クリーム剤として行うことができる。
吸入による投与の場合、噴霧器たまは不活性キャリヤーガスを使用する加圧ガスパックを使用することができる。
鼻または肺の吸入により粉末を投与する場合、特殊なアプリケーターが必要である。
活性投与量はその症状の重篤度に応じて、体重75kgの成人に基づき、体重1kgあたり、少なくとも0.001mg/kg/日、好ましくは少なくとも0.01mg/kg/日、多くて3mg/kg/日、好ましくは0.03〜1mg/kg/日である。
アミノ酸について使用される略語はEurop. J. Biochem., 138, 9 (1984年)に記載されているようなペプチド化学において慣用の三文字記号である。
【0019】
他に使用される略語は下記の通りである;
Aeg N−(2−アミノエチル)グリシン
Cpg シクロペンチルグリシル
Fmoc 9−フルオレニルメチルオキシカルボニル
NaI 2−ナフチルアラニル
Oic シス、エンド−オクタヒドロインドール−2−カルボニル
Thi 2−チエニルアラニル
Tic 1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−イルカルボニル
【0020】
【実施例】
実施例1
四塩化炭素により肝線維症を誘発されたラットの尿および電解質排泄におけるHOE 140の作用
方法:初めの体重が120〜150gのウィスターラット(ブリーダー;ヘキストAG社)を使用した。
肝線維症の誘発:BickelらのJ. Hepatol., 13 (Suppl.3), 26〜33 (1991年)に記載のようにして肝線維症を誘発した。動物に四塩化炭素(CCl4)を週に2回、1ml/kgの投与量で少なくとも6週間、経口投与した。肝臓の線維症は肝臓のコラーゲン含有量および肝臓と関係のある血清パラメーター(ビリルビン、ALAT、胆汁酸)により確認した。
線維成長過程において、動物を次の様な標準条件下に置いた:日中/夜間リズム(明期6,30〜18,30)、室温22±2℃および相対大気湿度60±10%。動物にラット用標準食(Altromin(登録商標)1321)と水を自由に与えた。
【0021】
塩分排泄および利尿試験
利尿試験時、動物の体重は200〜320gになっていた。試験の16時間前から動物に食事を与えるのを止め、試験の間ずっと与えなかった。また、実際の試験開始時までは動物が自由に水を飲めるようにした。
利尿試験の間、動物を特殊な利尿ケージの中に置いた。0時間時に体重1kgあたり20mlの水を経口投与して対照する利尿を誘発した。0〜5および6〜24時間の採集期間おいて各動物について電解質の排泄量および尿量をそれぞれ測定した。5日後、同じ動物についてブラジキニンアンタゴニストを投与して再び試験を行った。0時間および6時間時に、それぞれ0.3mg/kgのHOE 140s.c.を体重1kgあたり5mlの塩水に溶解して動物に与えた。
ナトリウムおよびカリウムは炎光分析(エッペンドルフ炎光光度計)により測定した。塩化物は電位差終点測定法(エッペンドルフ塩化物計量器)を用いて銀滴定により測定した。分析結果を使用して尿排泄量(ml/kg体重)および電解質排泄量(ミリモル/kg体重)を計算した。
【0022】
結果:
【表1】
Figure 0004185169
【0023】
統計:
結果は算術平均および標準偏差(SD)により示した。
統計的検査はT検定法により行ったが、正規分布の偏差の場合は非母数のMann-Whitney検定法により行った。
【0024】
結果および評価:
ブラジキニンアンタゴニストで処置した動物は四塩化炭素により肝線維症を誘発されたラットのナトリウム排泄量において著しい増加を示す。例として、ペプチドブラジキニンアンタゴニストHOE 140(INN icatibant)を用いた実験データを表1に示す。著しい、統計的に有意なナトリウム排泄増加が達成された。
【0025】
四塩化炭素により肝線維症を誘発されたラットのモデルは一般に、ヒトの肝硬変のモデルとして認められる。過度のナトリウム停留はヒトや動物の肝線維症および肝硬変の特徴であり、根深い血行動態疾患の結果であると考えられている(SchrierらのHepatology 8, 1151〜1157 (1988年))。この血行動態疾患は特に内蔵神経系において過度の末梢血管拡張(筋力過多循環状態)と密接に関連した門脈圧亢進に存在する。末梢血管拡張の原因は今までわかっていなかった。異常なナトリウムおよび水の停留は例えば浮腫形成および腹水の一因となり症状を悪化させる。門脈圧亢進は不十分な末梢血管拡張およびナトリウムの停留と関係がある。これらは肝線維症および肝硬変において代償不全現象の原因となる。これらの代償不全現象は浮腫形成および腹水のような微候だけでなく、いわゆる肝腎症候群(深刻な肝疾患の結果としての腎不全)もまた含む。
【0026】
ブラジキニンアンタゴニストの強いナトリウム排泄増加作用は健康な動態で見られないため、肝線維症および肝硬変のラットにおいてブラジキニンアンタゴニストのこの作用は予想されず、それどころか、特に高血圧症モデルは利尿およびナトリウム排泄の減少さえもたらしうる(MadedduらのBr. J. Pharmacol. 106, 380〜386 (1992年);MajimaらのHypertension、 22, 705〜714 (1993年))。例えばブラジキニンは血管および尿細管のメカニズムにより腎臓の塩分排泄および利尿を刺激することができる。
【0027】
ブラジキニンは様々な血管領域において強く血管拡張および透過性を増大する性質を有する内因性ペプチドである。本発明者らの実験結果はブラジキニンが過剰なナトリウム停留の重要な媒介物質であることを示す。改善された血行動態および微小血管分布は治療的に有利な効果が得られるように腎臓で内因性ブラジキニンの刺激作用を阻害することによりナトリウムおよび水の排泄の起こりうる制限を断然補償する。
したがって、ブラジキニンアンタゴニストは慢性線維形成肝疾患(肝硬変および肝線維症)および急性肝疾患の治療、および予防、並びに合併症の予防に適している。

Claims (6)

  1. 慢性線維形成肝疾患若しくは急性肝疾患の治療、またはそれらの合併症の予防のための薬剤の製造における、
    H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH(HOE 140)、
    パラ−グアニドベンゾイル−Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    H-D-Arg-Arg-Pro-Pro-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    H-Arg(Tos)-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    H-Arg(Tos)-Pro-Hyp-Gly-Phe-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Phe-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-Aoc-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-ε−アミノカプロイル−D−Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    ベンゾイル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    シクロヘキシルカルボニル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-Aeg(Fmoc)-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-Aeg(Fmoc)-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    インドール−3−イル−アセチル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OHまたは
    ジベンジルアセチル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH
    であるブラジキニンアンタゴニストまたはその生理学的に許容しうる塩の使用。
  2. ブラジキニンアンタゴニストは
    H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH(HOE 140)または
    パラ−グアニドベンゾイル−Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH
    である請求項1記載のブラジキニンアンタゴニストの使用。
  3. ブラジキニンアンタゴニストは
    H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH(HOE 140)
    である請求項2記載のブラジキニンアンタゴニストの使用。
  4. H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH(HOE 140)、
    パラ−グアニドベンゾイル−Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    H-D-Arg-Arg-Pro-Pro-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    H-Arg(Tos)-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    H-Arg(Tos)-Pro-Hyp-Gly-Phe-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Phe-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-Aoc-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-ε−アミノカプロイル−D−Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    ベンゾイル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    シクロヘキシルカルボニル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-Aeg(Fmoc)-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    Fmoc-Aeg(Fmoc)-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH、
    インドール−3−イル−アセチル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OHまたは
    ジベンジルアセチル−D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH
    であるブラジキニンアンタゴニストまたはその生理学的に許容しうる塩からなる慢性線維形成肝疾患若しくは急性肝疾患の治療、またはそれらの合併症の予防のための薬剤。
  5. ブラジキニンアンタゴニストは
    H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH(HOE 140)または
    パラ−グアニドベンゾイル−Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH
    である請求項4記載の薬剤。
  6. ブラジキニンアンタゴニストは
    H-D-Arg-Arg-Pro-Hyp-Gly-Thi-Ser-D-Tic-Oic-Arg-OH(HOE 140)
    である請求項5記載の薬剤。
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