JP4179988B2 - 変性リポ蛋白質の定量法、変性リポ蛋白質の定量用試薬、循環器疾患の検出方法および循環器疾患の検出試薬 - Google Patents

変性リポ蛋白質の定量法、変性リポ蛋白質の定量用試薬、循環器疾患の検出方法および循環器疾患の検出試薬 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、生体試料中の変性リポ蛋白質をホスホコリンに対する抗体を用いて定量することを特徴とする生体試料中の変性リポ蛋白質の定量方法、生体試料中の変性リポ蛋白質をホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を用いて定量することを特徴とする生体試料中の変性リポ蛋白質の定量方法、生体試料中の変性リポ蛋白質をホスホコリンに対する抗体を用いて定量し、その定量値から循環器系疾患を検出することを特徴とする循環器系疾患の検出方法、生体試料中の変性リポ蛋白質をホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を用いて定量し、その定量値から循環器系疾患を検出することを特徴とする循環器系疾患の検出方法、ホスホコリンに対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用試薬およびホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用試薬に関する。
背景技術
動脈硬化症は大動脈、冠状動脈、脳動脈及び頚動脈などの筋型動脈に多く発生し、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などの主因となる疾患である。その原因として血清コレステロールの上昇、血小板凝集、内皮傷害などが提唱されているが、その成因はほとんど解析されていない。
血清脂質は、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈系疾患、脳梗塞や脳血管系痴呆などの脳動脈系疾患、あるいは腎症、糖尿病性腎症などの腎動脈系疾患および末梢動脈閉塞症などの末梢動脈系疾患などの各種循環器系疾患との関わりが強く示唆されており、その測定は、これら疾患の診断、病態の解明、治療の効果検出などに極めて重要であると考えられている。
しかしながら、最近の研究で、上記の疾患患者群と健常者群との血清脂質の絶対量の比較を行った結果、両群間でそれほど大きな違いはなく、むしろ変性されたリポ蛋白質(以下、変性リポ蛋白質と称す)の血清中の存在量が明確に両群間で異なっていることが報告された[例えば、Circulation, 94, Suppl. I, 1288 (1996)]。また、変性リポ蛋白質の一つである酸化リポ蛋白質と粥状硬化病巣の進展との関連性が、スタインバーグ(Steinberg) らにより指摘された[例えば、N. Engl. J. Med., 320, 915 (1989)]。
さらにスカべンジャー受容体などの、変性リポ蛋白質に対する受容体の存在が明らかにされ、変性リポ蛋白質がこれらの受容体を介して細胞内に取り込まれることによって、泡沫細胞となり粥腫形成のイニシエーションが起こるという仮説、また変性リポ蛋白質が内皮細胞を傷害することで、血小板の粘着凝集や、白血球の集結、血球成分の血管内への浸潤がおこり、これらが引き金になって、平滑筋細胞の遊走や増殖を引き起こすといった仮説が提唱されている。
変性リポ蛋白質が病巣に蓄積していることは、例えば1988年にハーバーランド(Haberland)等がマロンジアルデヒドで修飾した低密度リポ蛋白質(LDL)に対する抗体[抗マロンジアルデヒド(MDA)−LDL抗体]により動脈硬化病巣部が染色されること[Science, 241, 215 (1988)]、また1989年にイラーハーテエアラ(Yla Herttuala)等が、抗MDA−ApoB抗体によるイムノブロッティング法により、病巣部から抽出されたアポB(apoB)を検出されること[J. Clin. Invest., 84, 1086 (1989)]などが報告されている。しかしながら、上述の抗MDA−ApoB抗体はマロンジアルデヒドを用いて人工的に酸化修飾したリポ蛋白質を抗原として得られた抗体であるが、酸化生成物だけでなく他の変性蛋白質、例えば酸化アルブミンなどとも交叉反応を示すという性質を有するため、変性リポ蛋白質を測定しているかどうかは不明である。
上記のように、変性されたリポ蛋白質としては、アセチル化リポ蛋白質、糖化リポ蛋白質、マロンジアルデヒド化リポ蛋白質、4−ヒドロキシ−2−ノネナール(HNE)修飾リポ蛋白質、酸化リポ蛋白質等が知られているが、生体内での変性リポ蛋白質の実体は未だ不明確である。
また、リポ蛋白質が凝集をおこすことによって性質が変化し、マクロファージによって取り込まれやすくなることが知られており[J. Biol. Chem., 272, 31700, (1997)]、これもリポ蛋白質の変性の一種と考えられる。この変性は酸化、チオール化、ある種の酵素処理などによって引き起こされることが知られており[Arterioscier. Thromb., 11, 1209 (1991)、Arch. Biachem. Biophys., 310, 489 (1994)、Biochim. Biophys. Acta., 1215, 79 (1994)、Nutr. Metab. Cardiovasc. Dis., 4, 70 (1994)、Proc. Nati. Acad. Sci. U.S.A., 86, 2713 (1989)、Arterioscier. Thromb., 11, 1643 (1991)、J. Biol. Chem., 268, 20419 (1993)、Circ. Res., 71, 218 (1992)]、さらにボルテックス処理などの物理的処理においてもこのような変性は引き起こされる[Arteriosclerosis, 8, 348(1988)]。またこのような変性を起こしたリポ蛋白質は、マクロファージによって容易に取り込まれるようになる。そのため、マクロファージにコレステロールの蓄積を引き起こし、動脈硬化性病巣の発生・進展に深く関与していると考えられている。
以上のことから、動脈硬化をはじめとする循環器疾患の診断として、変性リポ蛋白質の測定方法が開発されている。
具体的には、ホスファチジルコリンの酸化物を認識する抗体を用いて酸化リポ蛋白質を測定する方法(特開平8−304395号、特開平9−288106号)、HDLの酸化リン脂質(特にリゾホスファチジルコリン)を認識する抗体である9F5-3aと、抗apo-AI抗体とを用いた酸化HDLを測定する方法(特開平9−33525号)、アセチル化、マロンジアルデヒド化、酸化など化学処理したLDLをすべて認識する抗体と酸化剤とを組み合わせて酸化LDLを測定する方法(特開平9−5323号)、プラスミノーゲン及びLDLと交差反応性がなく、リポ蛋白質(a)の酸化、還元、加水分解などの分解、加熱、又は蛋白質変性剤などの変性剤等により、一次構造、高次構造若しくは立体構造の変化、分解又は化学的修飾を受け構造、組成又は立体的配置が変化する特定のペプチドを認識する抗体を用いて変性又は修飾リポ蛋白質(a)を測定する方法(特開平9−297137号)、マロンジアルデヒド化されたリポ蛋白質に対する抗体と界面活性剤とを併用して変性リポ蛋白質類を測定する方法(特開平8−101195号)などがこれまでに報告されているが、十分な成果を示しているものはない。
発明の開示
本発明の目的は、生体試料中の変性リポ蛋白質の定量方法、循環器系疾患の検出方法、変性リポ蛋白質の定量用試薬および循環器系疾患の検出試薬を提供することである。
本発明は、下記(1)〜(36)に関する。
(1) 生体試料とホスホコリンに対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性リポ蛋白質の定量方法。
(2) 生体試料とホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性リポ蛋白質の定量方法。
(3) 生体試料とホスホコリンに対する抗体および低密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性低密度リポ蛋白質の定量方法。
(4) 低密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体である上記(3)記載の方法。
(5) 生体試料とホスホコリンに対する抗体および高密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性高密度リポ蛋白質の定量方法。
(6) 高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に対する抗体である上記(5)記載の方法。
(7) 生体試料とホスホコリンに対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中のリポプロテイン(a)の定量方法。
(8) 生体試料とホスホコリンに対する抗体、高密度リポ蛋白質に対する抗体および低密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性高密度リポ蛋白質および変性低密度リポ蛋白質の定量方法。
(9) 高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に対する抗体である上記(8)記載の方法。
(10) 低密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体である上記(8)記載の方法。
(11) 生体試料とホスホコリンに対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
(12) 生体試料とホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
(13) 生体試料とホスホコリンに対する抗体および低密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
(14) 低密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体である上記(13)記載の方法。
(15) 生体試料とホスホコリンに対する抗体および高密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
(16) 高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に対する抗体である上記(15)記載の方法。
(17) 生体試料とホスホコリンに対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
(18) 生体試料とホスホコリンに対する抗体、高密度リポ蛋白質に対する抗体および低密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
(19) 高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に対する抗体である上記(18)記載の方法。
(20) 低密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体である上記(18)記載の方法。
(21) ホスホコリンに対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用試薬。
(22) ホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用試薬。
(23) リポ蛋白質に対する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体、アポA蛋白質に対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体からなる群から選ばれる上記(22)記載の試薬。
(24) 凍結保護剤を含む、上記(21)〜(23)のいずれか1項に記載の試薬。
(25) ホスホコリンに対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用キット。
(26) ホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用キット。
(27) リポ蛋白質に対する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体、アポA蛋白質に対する抗体およびアポプロテイン(a) に対する抗体からなる群から選ばれる上記(23)記載のキット。
(28) 凍結保護剤を含む、上記(25)〜(27)のいずれか1項に記載の変性リポ蛋白質の定量用キット。
(29) ホスホコリンに対する抗体を含有する循環器系疾患の検出試薬。
(30) ホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する循環器系疾患の検出試薬。
(31) リポ蛋白質に対する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体、アポA蛋白質に対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体からなる群から選ばれる上記(30)記載の検出試薬。
(32) ホスホコリンに対する抗体を含有する循環器系疾患の検出用キット。
(33) ホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する循環器系疾患の検出用キット。
(34) リポ蛋白質に対する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体、アポAに対する抗体およびアポプロテイン(a) に対する抗体からなる群から選ばれる上記(33)記載のキット。
(35) 凍結保護剤を含む、上記(32)〜(34)のいずれか1項に記載の循環器系疾患の検出用キット。
(36) 糖類、高分子物質および親水性有機溶媒からなる群から選ばれる化合物を有効成分として含有する、生体試料のための凍結保護剤。
変性リポ蛋白質としては、変性を受けていないリポ蛋白質であればいかなるものも包含される。具体的には、糖化変性リポ蛋白質、酸化変性リポ蛋白質、アセチル化変性リポ蛋白質、マロンジアルデヒド等の作用によるアルデヒド化変性リポ蛋白質、4−ヒドロキシ−2−ノネナール修飾変性リポ蛋白質などの化学変化を受けた変性リポ蛋白質、酸化、チオール化、リポプロテインリパーゼ等の酵素処理、ボルテックスなどの物理処理、凍結などの温度処理などにより引き起こされる凝集や結合といった形態的変性を受けた変性リポ蛋白質、表面構造の変化や3次元構造の変化といった構造的変性を受けた変性リポ蛋白質等があげられる。また、未変性のリポ蛋白質に比較して荷電の変化、分子量の変化、生体内リセプターへの親和性変化、マクロファージなどの細胞への取り込まれ易さの変化などの生物学的変化が見られるリポ蛋白質も、変性リポ蛋白質に包含される。
本発明の変性リポ蛋白質の定量方法としては、ホスホコリンに対する抗体を用いて、変性リポ蛋白質を免疫学的に測定する方法であれば特に制限されるものではなく、測定方法の工程には生体試料とホスホコリンに対する抗体とを接触させる工程、反応により生じる変性リポ蛋白質−抗ホスホコリン抗体複合体(免疫複合体)量を測定する工程が含まれる。
測定方法としては、免疫学的測定方法があげられる。免疫学的測定方法としては、イムノアッセイ法、イムノブロッティング法、凝集反応、補体結合反応、溶血反応、沈降反応、金コロイド法、クロマトグラフィー法、免役染色法など抗原抗体反応を利用した方法であればいかなるものも包含されるが、好ましくはイムノアッセイ法があげられる。
イムノアッセイ法は、各種標識を施した抗原または抗体を用いて、抗体または抗原を検出或いは定量する方法であり、抗原または抗体の標識方法に応じて、放射免疫検出法(RIA)、酵素免疫検出法(EIAまたはELISA)、蛍光免疫検出法(FIA)、発光免疫検出法(luminescent immunoassay)、物理化学的検出法(TIA,LAPIA,PCIA)、フローサイトメトリーなどがあげられるが、好ましくは酵素免疫検出法があげられる。
放射免疫検出法で用いる放射性標識体としては、任意の公知[J.CLAUSEN著、佐々木 實 監訳、加藤泰治・戸谷敬子訳、生化学実験法15 免疫化学的同定法、東京化学同人(1993)]の放射性同位元素を用いることができる。例えば、32P、125I、131I等を用いることができる。
酵素免疫検出法で用いる酵素標識体としては、任意の公知(石川榮次ら編、酵素免疫測定法、医学書院)の酵素を用いることができる。例えば、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ等を用いることができる。
発光免疫検出法で用いる発光標識体としては、任意の公知[今井一洋編、生物発光と化学発光、廣川書店;臨床検査42(1998)]の発光体を用いることができる。例えば、アクリジニウムエステル、ロフィン等を用いることができる。
蛍光免疫検出法で用いる蛍光標識体としては、任意の公知(川生明著、蛍光抗体法、ソフトサイエンス社製)の蛍光を用いることができる。例えば、FITC、RITC等を用いることができる。
イムノアッセイ法における測定方法としては、競合法、サンドイッチ法[免疫学イラストレイテッド 第5版(南光堂)]等があげられる。
具体的には、生体試料とホスホコリンに対する抗体(以下、抗ホスホコリン抗体と称す)とを接触させたのちに、標識物質を結合させた抗ホスホコリン抗体に反応する抗体を反応させることにより、生体試料中の変性リポ蛋白質を検出または定量することができる。また、標識物質を結合させた抗ホスホコリン抗体と生体試料とを接触させて反応させることにより、生体試料中の変性リポ蛋白質を検出または定量することができる。
上述のイムノアッセイ法で用いる抗体としては、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれを用いてもよく、Fab、Fab’、F(ab)などの抗体フラグメントを用いてもよい。また、モノクローナル抗体としては、生体内において自然に生産された抗体、非ヒト動物を用いて取得されたハイブリドーマから生産された抗体、抗体分子を形成する重鎖および軽鎖の可変領域および定常領域のアミノ酸配列をコードするDNAをもとに遺伝子工学的な手法を用いて抗体分子を発現させる遺伝子組換え抗体などいかなるものでもよい。
本発明で用いられる抗ホスホコリン抗体としては、ホスホコリンに反応する性質を有すれば上記のいずれの抗体でもよい。具体的には、T−15抗体[J. Exp. Med., 132, 737 (1970)]、ハイブリドーマKTM−285(FERM BP−7589)により生産されたモノクローナル抗体KTM−285、形質転換細胞KTM−2001(FERM BP−7549)により生産された遺伝子組換え抗体KTM−2001などがあげられる。
また、本発明は、ホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を用いて、変性リポ蛋白質を免疫学的に測定する方法をも包含する。
具体的には、固相に第一の抗体(一次抗体)を固定した後、生体試料を第一の抗体と接触させ、試料中の非反応のサンプル成分を洗浄した後、生体試料中の目的物質と第一の抗体との免疫複合体に、第二の抗体(二次抗体)を反応させ、生体試料中の変性リポ蛋白質を検出または定量することもできる。
一次抗体および二次抗体として用いられる抗体としては、抗ホスホコリン抗体と抗リポ蛋白質抗体があげられる。一次抗体と二次抗体の組み合わせとしては、好ましくは一次抗体として抗ホスホコリン抗体、二次抗体として抗リポ蛋白質抗体があげられる。
リポ蛋白質とは、血中ではコレステロールエステル、トリグリセライドなどの脂質類が中心(core)をなし、それらの表面をリン脂質と遊離コレステロール、さらに蛋白質(アポ蛋白質)で覆われた構造で存在するものをいう。
リポ蛋白質としては、超低密度リポ蛋白質(以下、VLDLと略す)、低密度リポ蛋白質(以下、LDLと略す)、高密度リポ蛋白質(以下、HDLと略す)、中間比重リポ蛋白質(以下、IDLと略す)、リポ蛋白質(a)(以下、(Lp(a)と略す)などがあげられる。
VLDLは、トリグリセライドを中心とする脂質とアポB−48、アポC、アポEなどの蛋白質などから構成される比重0.96〜1.006の粒子で、内因性脂肪の運搬体としての機能を有する。
LDLは、コレステロールに富んだリポ蛋白質で、主要蛋白質としてアポB−100を持つ比重1.006から1.063の粒子で、コレステロールを肝臓から末梢組織へ運搬する機能を有している。
HDLは、脂質としてリン脂質やコレステロールを主に含み、アポA−I、アポA−II、アポCなどが主な蛋白質として含まれる比重1.063〜1.21の粒子で、末梢組織からコレステロールを運び出し肝臓で代謝する機能を有している。
IDLは、VLDLからLDLへの変換過程での中間代謝物で、VLDLよりコレステロールに富み、アポB−100,アポC、アポEなどが主な蛋白質として含まれた比重1.006〜1.019を持つ粒子である。
Lp(a)は、LDL類似のリポ蛋白粒子に独特の構造を持つアポ蛋白質(a)が結合した比重1.03〜1.08の粒子で、血液凝固に関連した機能を有している。
したがって、各種リポ蛋白質に対する抗体として、各種リポ蛋白質に含まれる主要なアポ蛋白質を用いることができ、抗ホスホコリン抗体と種々のリポ蛋白質に含まれる主要なアポ蛋白質に反応する抗体(以下、抗アポ蛋白質抗体ということもある)とを用いることにより、種々の変性リポ蛋白質の検出および定量を行うことができる。
変性リポ蛋白質に含まれるアポ蛋白質に反応する抗体としては、具体的には抗Apo−AI蛋白質抗体、抗Apo−AII蛋白質抗体、抗Apo−AIV蛋白質抗体、抗Apo−B−100蛋白質抗体、抗Apo−B−48蛋白質抗体、抗Apo−CI蛋白質抗体、抗Apo−CII蛋白質抗体、抗Apo−CIII蛋白質抗体、抗Apo−D蛋白質抗体、抗Apo−E蛋白質抗体等があげられる。
例えば、変性リポ蛋白質として、変性LDLを検出または定量する場合、使用する抗アポ蛋白質抗体としては、抗Apo−B蛋白質抗体があげられる。変性VLDLを検出または定量する場合、使用する抗アポ蛋白質抗体としては、抗Apo−E蛋白質抗体があげられる。変性HDLを検出または定量する場合、使用する抗アポ蛋白質抗体としては、抗Apo−AI蛋白質抗体があげられる。変性Lp(a)を検出または定量する場合、使用する抗アポ蛋白質抗体としては、抗アポプロテイン(a)抗体があげられる。
以上のように、特定のリポ蛋白質に対する抗体を用いることで、特定の種類の変性リポ蛋白質を定量または検出することができる。また、本方法は特定の変性リポ蛋白質のみを定量または検出できるだけではなく、いくつかの抗アポ蛋白質抗体を組み合わせることにより、2種類以上の変性リポ蛋白質を同時に定量または検出することができる。
具体的には、HDLに対する抗体、すなわち抗Apo−AI蛋白質抗体とLDLに対する抗体、すなわち抗Apo−B蛋白質抗体とを用いることにより、変性HDLと変性LDLとを定量または検出することができる。
また、各種変性リポ蛋白質の定量方法としては、予め生体試料を遠心分離処理等で精製し、精製試料にホスホコリンに対する抗体を反応させることにより、特定の種類の変性リポ蛋白質を定量または検出することもできる。
生体試料から遠心分離でLDLを精製する方法としては、正常ヒト血清に、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA−2Na)と、NaBrとを用いた密度勾配遠心分離法を行い、LDL画分を取得する方法(特開平7−238098号公報)、ヘパリン採血で得られたヒト血漿にEDTAを添加して、遠心分離した後、さらにKBr溶液を添加して遠心分離してLDL画分を取得する方法(特開平8−304395号公報)、ヒト血漿から超遠心分離法でLDLを回収する方法(特開平9−288106号公報)などがあげられる。
また、生体試料から遠心分離でLp(a)を精製する方法としては、ヘパリン採血で得たヒト血漿にEDTAを加え、EDTA含有NaClを重層して遠心分離したのち、KBrを加えて遠心分離し、得られた溶液をゲル濾過、リジンセファロース4Bに通塔しLp(a)を分画する方法(特開平8−304395号公報)などがあげられる。
また、遠心分離でHDLを精製する方法としては、ヒト血清に、四酢酸ナトリウム(EDTA−2Na)、NaClをそれぞれ加え、溶媒密度を1.063とした溶液を用いて遠心分離して得られた溶液に、NaBrを加えて溶媒密度を1.21とした溶液を用いて遠心分離してHDL分画を取得する方法[山村卓、新生化学実験講座 脂質I、195(1993)、東京化学同人]などがあげられる。
さらに本発明の測定方法では、抗リポ蛋白質抗体の代わりに、例えばアポ蛋白質のレセプター、アポ蛋白質結合蛋白質などを用いることができる。具体的には、Apo−AIを認識するレシチン・コレステロール・アシルトランスフェラーゼ、Apo−B−100を認識する肝臓、小腸の細胞のLDLリセプター、Apo−CIIを認識するリポプロテインリパーゼ、Apo−Eを認識する肝臓のEレセプター等があげられる。
以下に、具体例として、抗ホスホコリン抗体と抗アポB蛋白質抗体を用いるイムノアッセイ法について説明する。
96ウエルマイクロプレート等の固相に抗ホスホコリン抗体を緩衝液で希釈した溶液を添加し、低温で例えば1〜24時間インキュベートしたのち溶液を捨て、1%(w/v)程度のBSAを含むTris−HCl(pH8.0)等の緩衝液を加えて室温で例えば1〜12時間インキュベートすることによりブロッキングした後、0.05%(v/v)Tween20等の界面活性剤を含むPBS(pH7.4)等で洗浄し抗ホスホコリン抗体結合固相を作成する。
次に、血漿等の生体試料を1%BSA、5%ポリエーテル、140mmol/L NaClを含む10mmol/L リン酸緩衝液(pH7.4)等の検体希釈液で希釈しウェルに添加し、室温で1〜12時間インキュベートした後、0.05(v/v)%Tween20を含むPBS(pH7.4)等で洗浄する。
さらに、各ウェルに1%(w/v)BSAを含むPBS(pH7.4)で希釈されたペルオキシダーゼ等で標識した抗ヒトアポB蛋白質抗体を二次抗体として加えて、室温で10〜60分間インキュベートする。次に、0.05(v/v)%Tween20を含むPBS(pH7.4)等で洗浄した後、標識を測定する。予め既知濃度の標準物質を用いて得られる検量線から、検体中の変性LDLの定量を行うことができる。パーオキシダーゼの検出は例えば、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン(TMBZ)液を用いることができる。
本アッセイにより、変性LDLを定量することができる。
本発明は、生体試料とホスホコリンに対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法に関する。
循環器系疾患としては、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈系疾患、脳梗塞や脳血管系痴呆などの脳動脈系疾患、腎症や糖尿病性腎症などの腎動脈系疾患および末梢動脈閉塞症のような末梢動脈系疾患などの各種循環器系疾患があげられる。
本発明では、変性リポ蛋白質の定量値、即ち生体試料中の変性リポ蛋白質を抗ホスホコリン抗体、または抗ホスホコリン抗体とリポ蛋白質に対する抗体とを用いて変性リポ蛋白質を定量することにより、循環器系疾患を検出することができる。
I 上記の定量で用いられるリポ蛋白質に対する抗体としては、変性リポ蛋白質を構成するアポ蛋白質に対する抗体があげられ、例えば、変性LDLを構成するApo-B蛋白質に対する抗体、変性VLDLを構成するApo−E蛋白質に対する抗体、変性HDLを構成するApo−AI蛋白質に対する抗体、変性Lp(a)を構成するアポプロテイン(a)に対する抗体があげられる。これらの抗体を組み合わせて用いることにより、各種変性リポ蛋白質を定量することが可能となり、循環器系疾患を検出することができる。
循環器系疾患患者の生体試料中に含まれる変性リポ蛋白質濃度は、健常人の生体試料中に含まれる変性リポ蛋白質に比べて有意に上昇している。したがって、変性リポ蛋白質にカットオフ値を設けて、採取した生体試料中の変性リポ蛋白質を定量し、変性リポ蛋白質がカットオフ値より高い場合に循環器系疾患であると検出することができる。
健常者の変性リポ蛋白質の値は、予め循環器系疾患でないことを臨床的に確認された健常者から生体試料を採取し、該生体試料中の変性リポ蛋白質を本発明の変性リポ蛋白質の定量方法で定量することにより得ることができる。
臨床的に各種循環器系疾患を確認する方法は特に制限がないが、例えば冠動脈造影法、負荷心電図および心エコー等の機器診断方法、胸痛症状等の自覚症状等から確認する方法等があげられる。
カットオフ値とは、ある物質に着目して目的とする疾患群と非疾患群とを判定する場合に定める値をいう。目的とする疾患と非疾患とを判定する場合に、カットオフ値以下であれば陰性、カットオフ値以上であれば陽性として、またはカットオフ値以下であれば陽性、カットオフ値以上であれば陰性として疾患を判定することができる(金井正光編、臨床検査法提要 金原出版株式会社)。
カットオフ値の臨床的有用性を評価する目的で用いられる指標としては、感度と特異度があげられる。
ある母集団をカットオフ値を用いて判定し、疾病患者のうち、判定で陽性とされたものをa(真陽性)、疾病患者でありながら判定で陰性とされたものをb(偽陰性)、疾病患者でないにも関わらず判定で陽性とされたものをc(偽陽性)、疾病患者でなく判定で陰性とされたものをd(真陰性)と表したときに、a/(a+b)で表される値を感度(真陽性率)、d/(c+d)で表される値を特異度(真陰性率)として表すことができる。
目的とする疾患群と非疾患群との測定値の分布は通常、一部重複する。したがって、カットオフ値を上下させることにより、感度と特異度は変化する。カットオフ値を下げることにより感度は高くなるが、特異度は低下し、カットオフ値を上げることにより感度は低くなるが、特異度は上がる。判定方法としては、感度と特異度の両者の値が高いほうが好ましい。また、感度と特異度の値が0.5を超えない判定方法は、有用とは認められない。
カットオフ値を設定する方法としては、非疾患群の分布の95%を含む、中央からの両端のいずれかの値をカットオフ値として設定する方法、非疾患群の分布が正規分布を示す場合、平均値+2倍の標準偏差(SD)または平均値−2SDをカットオフ値として設定する方法などがあげられる。
生体試料としては、血液、尿、髄液、穿刺液などいかなるものでもよいが、好ましくは血液があげられる。血液としては、全血、血漿、血清、血球溶血液、血球内液などがあげられるが、好ましくは血清または血漿があげられる。
本発明の変性リポ蛋白質の定量用試薬および循環器系疾患の検出方法に用いる試薬としては、抗ホスホコリン抗体を含有する試薬があげられる。さらにリポ蛋白質に対する抗体、例えば、抗アポ蛋白質抗体を含有していてもよく、抗ホスホコリン抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する試薬は、各種変性リポ蛋白質を分別定量または検出が可能である。また、抗ホスホコリン抗体または抗アポ蛋白質抗体が、標識物質を結合した抗体であってもよい。
抗ホスホコリン抗体としては、ホスホコリンに反応する性質を有すれば上記のいずれの抗体でもよい。具体的には、T−15抗体[J. Exp. Med., 132, 737 (1970)]、ハイブリドーマKTM−285(FERM BP−7589)により生産されたモノクローナル抗体KTM−285、形質転換細胞KTM−2001(FERM BP−7549)により生産された遺伝子組換え抗体KTM−2001などがあげられる。
リポ蛋白質に対する抗体としては、各種アポ蛋白質例えばApo−AI、Apo−AII、Apo−AIV、Apo−B−100、Apo−B−48、Apo−CI、Apo−CII、Apo−CIII、Apo−D、Apo−E等に対する抗体があげられる。
本発明のキットとしては、機器または試薬の組み合わせにより構成されるが、以下に述べる各構成要素と本質的に同一、またはその一部と本質的に同一な物質が含まれていれば、構成または形態が異なっていても、本発明のキットに包含される。
試薬としては抗ホスホコリン抗体、または抗ホスホコリン抗体および抗リポ蛋白質抗体を含み、また、必要に応じ、生体試料の希釈液、抗体固定化固相、反応緩衝液、洗浄液、標識された二次抗体またはその抗体断片、標識体の検出用試薬、変性リポ蛋白質などの標準物質なども含まれる。また、抗ホスホコリン抗体または抗リポ蛋白質抗体が、標識物質を結合した抗体であってもよい。
生体試料の希釈液としては、界面活性剤、緩衝剤などにBSAやカゼインなどの蛋白質を含む水溶液などがあげられる。
抗体固定化固相としては、各種高分子素材を用途に合うように整形した素材に、抗ホスホコリン抗体あるいは抗リポ蛋白質抗体またはそれらの抗体断片を固相化したものが用いられる。形状としてはチューブ、ビーズ、プレート、ラテックスなどの微粒子、スティック等が、素材としてはポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ゼラチン、アガロース、セルロース、ポリエチレンテレフタレート等の高分子素材、ガラス、セラミックスや金属等があげられる。抗体の固相化の方法としては物理的方法と化学的方法またはこれらの併用方法等、公知の方法により調製することができる。例えば、ポリスチレン製96ウェルの免疫測定用マイクロタープレートに抗体または抗体断片等を疎水固相化したものがあげられる。
反応緩衝液は、抗体固定化固相の抗体と生体試料中の抗原とが結合反応をする際の溶媒環境を提供するものであればいかなるものでもよいが、界面活性剤、緩衝剤、BSAやカゼインなどの蛋白質、防腐剤、安定化剤、反応促進剤等があげられる。
標識された二次抗体またはその抗体断片としては、本発明に用いられる抗体または抗体断片に西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、ウシ小腸アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼなどの標識用酵素をラベルしたもの、緩衝剤、BSAやカゼインなどの蛋白質、防腐剤などを混合したものが用いられる。
標識体の検出用試薬としては前記の標識用酵素に応じて、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼであれば、テトラメチルベンジジンやオルトフェニレンジアミンなどの吸光測定用基質、ヒドロキシフェニルプロピオン酸やヒドロキシフェニル酢酸などの蛍光基質、ルミノールなどの発光基質が、アルカリホスファターゼであれば、4−ニトロフェニルフォスフェートなどの吸光度測定用基質、4−メチルウンベリフェリルフォスフェートなどの蛍光基質等があげられる。
標準物質としては、超遠心分離法によりリポ蛋白質を単離・精製し、これを銅イオン等の金属イオンで酸化させる、無水酢酸と反応させてアセチル化する、あるいは、マロンジアルデヒド等と反応させるなどの方法等の方法により得られた変性リポ蛋白質、凍結融解して凝集した変性リポ蛋白質、物理的振動を与えて変性させた変性リポ蛋白質等があげられる。
生体試料中の変性リポ蛋白質の定量は、生体試料を採取後直ちに行うのが好ましいが、保存した生体試料を用いることもできる。生体試料の保存方法としては、変性リポ蛋白質の量が変化しない条件で有れば特に制限は無いが、例えば0〜10℃の凍結しない程度の低温条件、暗所条件および無振動条件下が好ましい。
また、本発明で使用する生体試料としては凍結保存されたものであってもよい。生体試料を凍結するに際しては、以下にあげる凍結保護剤を共存させて凍結を行うのが好ましい。
凍結保剤としては、例えばシュークロース、トレハロース、ラクトース、マンニトール、グルコースなどの糖類、デキストラン、デキストラン硫酸、プルラン、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースなどの高分子物質、グリセロールやジメチルスルキサイドなどの水溶性有機溶媒があげられる。これらの物質は生体試料中に例えば0.1〜50%、好ましくは1〜30%、さらに好ましくは5〜20%で共存させて使用する。
凍結は、溶媒温度を氷結点以下にして行うが、温度降下は過冷却開始温度から過冷却温度まで急速冷却し、凝固潜熱を一気に回収することが望ましく、プログラムフリーザーを使用することが好ましい。例えば冷却開始温度である10℃まで冷却した後、この温度から過冷却開始温度である−5〜−10℃付近まで−1℃/分の速度で冷却し、この温度より過冷却温度である−40℃まで急激に冷却する。この後必要に応じて−18℃の自然昇温保持温度まで急速に昇温させ、以後目標到達温度まで−1℃/分で冷却する。また自然昇温温度にすることなく過冷却温度である−40℃から目標到達温度まで−1℃/分で冷却してもよい。凍結温度降下速度は、−0.1℃/分以上が好ましく、−1.0℃/分以上がより好ましい。到達温度は、−20℃以下が好ましく、−30℃以下がより好ましく、液体窒素で達成できる−196℃が特に好ましい。
凍結保存された生体試料中の変性リポ蛋白質を測定する際に、解凍試料の解凍方法は特に制限は無いが、例えば振動を加えながら水浴、湯浴する方法等があげられる。
したがって、本発明の変性リポ蛋白質の定量用試薬およびキット、循環器系疾患の検出試薬またはキットには、上記の凍結保護剤を含めてもよい。
以下に、本発明に用いるモノクローナル抗体の製造方法の一例を詳細に説明する。
1.モノクローナル抗体の製造方法
(1)抗原の調製
抗原としては、ホスホコリンを直接免疫抗原として用いてもよいが、ホスホコリンを他の高分子と結合させたものを免疫抗原として用いるのが好ましい。高分子としては、牛血清アルブミン、蛋白質、多糖体、核酸、合成高分子等があげられるが、例えばリポ蛋白質が好ましい。また、ホスホコリンは、ホスホコリンを含む化合物、例えばホスホコリン誘導体の形態が好ましい。ホスホコリン誘導体としては、ホスホコリン基がエピトープとして認識される誘導体で有れば特に制限はないが、例えば1−パルミトイル−2−(9−オキソノナノイル)−グリセロ−3−ホスホコリンや1−パルミトイル−2−(5−オキソバレロイル)−グリセロ−3−ホスホコリンがあげられる。これらホスホコリン誘導体は、文献[J. Biol. Chem., 266(17), 11095 (1991)]に記載の方法により調製される。
また高分子としてのリポ蛋白質は、例えばLDL、HDL、VLDL、IDLなどがあげられるが、LDLが好ましい。LDLとしては特に制限はなく、例えばヒト、ウマ、ウシ、ウサギ、イヌ、ヤギ、ヒツジなど各種動物の血液、卵黄、ミルクなどに由来するLDLがあげられ、ヒト血液由来のLDLが好ましい。リポ蛋白質上にホスホコリン誘導体を結合させるには、リポ蛋白質溶液にホスホコリン誘導体を滴下混合する等両者をまぜあわせることにより行うことができる。
(2)動物の免疫と抗体生産細胞の調製
3〜20週令のマウス、ラット、ハムスター、ウサギ、モルモット、ヤギ、ヒツジやニワトリに(1)で調製した抗原を免疫して、その動物の脾、リンパ節、末梢血中の抗体生産細胞を採取する。ポリクローナル抗体を作製する場合にはウサギ、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ニワトリなどを用いるのが好ましく、モノクローナル抗体作製にはマウス、ラットを用いるのが好ましい。
免疫は、動物の皮下あるいは静脈内あるいは腹腔内に、適当なアジュバント[例えば、フロインドの完全アジュバント(complete freund’s adjuvant)や水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなど]とともに抗原を投与することにより行う。抗原が部分ペプチドである場合には、BSA(ウシ血清アルブミン)やKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)などのキャリア蛋白質とコンジュゲートを作製し、これを免疫原として用いる。
抗原の投与は、1回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、その血清が抗原と反応することを酵素免疫測定法[Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988]などで調べる。免疫に用いた抗原に対し、その血清が十分な抗体価を示したマウス、ラットまたはハムスターを抗体生産細胞の供給源として提供する。
ポリクローナル抗体の場合には、免疫を完成させた動物より、定期的に採血、または全採血により一回で血液を集める。通常血液は凝固防止を行わずに採血し、一旦血液を凝固させてから遠心分離などの方法を用いて血清画分を回収して用いる。血液中の抗体は必要に応じて精製して使用することができる。精製方法としては例えば硫酸アンモニウムなどを用いた塩析分画法、イオン交換クロマトグラフィー法、ゲル濾過カラムクロマトグラフィー法、プロテインAやプロテインGを用いたアフィニティカラムクロマトグラフィー法、および抗原を固相化したゲルを用いるアフィニティカラムクロマトグラフィー法などがあげられ、これらの方法を単独または組合せて用いることができる。
モノクローナル抗体作製に用いる抗体生産細胞の採取源としては免疫した動物の脾臓、リンパ節、末梢血液などがあげられる。また免疫を行っていない動物の脾臓、リンパ節、末梢血液等より抗体生産担当細胞を取り出し、これら細胞に対し直接免疫を行って抗体生産細胞とする所謂 in vitro 免疫[新井、太田、実験医学、6, 43 (1988)]を行った細胞を用いてもよい。
抗体生産細胞と骨髄腫細胞の融合に供するにあたって、抗原物質の最終投与後3〜7日目に、免疫したマウス、ラットまたはハムスターより脾臓を摘出し、脾細胞を採取する。脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(1200rpm、5分間)した後、上清を捨て、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去し、MEM培地で3回洗浄して融合用脾細胞として提供する。
(3)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスから得られた株化細胞を使用する。たとえば、8−アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3−X63Ag8−U1(P3−U1)[Current Topics in Microbiology and Immunology, 18, 1-7 (1978)]、P3−NS1/1−Ag41(NS−1)[European J. Immunology, 6, 511-519 (1976)]、SP2/O −Ag14(SP−2)[Nature, 276, 269-270 (1978)]、P3−X63−Ag8653(653)[J. Immunology, 123, 1548-1550 (1979)]、P3−X63−Ag8(X63)[Nature, 256, 495-497 (1975)]などが用いられる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地[RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mmoles/L)、2−メルカプトエタノール(5×10−5moles/L)、ジェンタマイシン(10μg/mL)および牛胎児血清(FCS)を加えた培地(以下、正常培地という。)に、さらに8−アザグアニン(15μg/mL)を加えた培地]で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地に継代し、融合当日2×10個以上の細胞数を確保する。
(4)細胞融合
細胞融合はKohlerとMilstein[Nature, 256, 495 (1975)]によって発明され、急速に発展し、様々に改良されてきた方法が用いられる。
(2)で免疫した抗体生産細胞と(3)で得られた骨髄腫細胞をMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体生産細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、遠心分離(1,200rpm、5分間)した後、上清を捨て、沈澱した細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングライコール−1,000(PEG−1,000)2g、MEM2mlおよびジメチルスルホキシド 0.7mLの混液0.2〜1mL/10抗体生産細胞を加え、1〜2分間毎にMEM培地1〜2mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50mLになるようにする。遠心分離(900rpm、5分間)後、上清を捨て、ゆるやかに細胞をほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかに細胞をHAT培地[正常培地にヒポキサンチン(10−4moles/L)、チミジン(1.5×10−5moles/L)およびアミノプテリン(4×10−7moles/L)を加えた培地]100ml中に懸濁する。この懸濁液を96穴培養用プレートに100μL/穴ずつ分注し、5%COインキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
培養後、培養上清の一部をとり下記に述べる酵素免疫測定法などにより、ホスホコリンに反応し、ホスホコリンを含まない抗原に反応しないものを選択する。ついで、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し[1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する]、安定して強い抗体価の認められたものを抗ホスホコリンモノクローナル抗体生産ハイブリドーマ株として選択する。
酵素免疫測定法
抗原あるいは抗原を発現した細胞などを96ウェルプレートにコートし、ハイブリドーマ培養上清もしくは精製抗体を第一抗体として反応させる。
第一抗体反応後、プレートを洗浄して第二抗体を添加する。
第二抗体とは、第一抗体のイムノグロブリンを認識できる抗体を、ビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物等で標識した抗体である。具体的にはハイブリドーマ作製の際にマウスを用いたのであれば、第二抗体としては、マウスイムノグロブリンを認識できる抗体を用いる。
反応後、第二抗体を標識した物質に応じた反応を行ない、抗原に特異的に反応するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマとして選択する。
(5)モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理[2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane)0.5mlを腹腔内投与し、2週間飼育する]した8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(3)で得られた抗ヒトSCGFモノクローナル抗体生産ハイブリドーマ細胞2×10〜5×10細胞/匹を腹腔内注射する。10〜21日でハイブリドーマは腹水癌化する。このマウスから腹水を採取し、遠心分離(3,000rpm、5分間)して固形分を除去後、40〜50%硫酸アンモニウムで塩析した後、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムあるいはゲル濾過カラムによる精製を行ない、IgGあるいは、IgM画分を集め、精製モノクローナル抗体とする。
抗体のサブクラスの決定は、サブクラスタイピングキットを用いて酵素免疫測定法により行う。蛋白量の定量は、ローリー法および280nmでの吸光度より算出する。
以上の方法で製造される本発明の方法に使用するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマの具体例としては、ハイブリドーマKTM−285があげられる。ハイブリドーマKTM−285は、平成13年5月16日付で、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM BP−7589として寄託されている。以下、ハイブリドーマKTM−285の生産するモノクローナル抗体を、単にKTM−285抗体と称する。
2.ヒト化抗体の製造方法
(1)ヒト化抗体発現用ベクターの構築
本発明の方法に用いられたモノクローナル抗体は、前記1のモノクローナル抗体の製造方法に従って取得する以外に、上述の細胞から遺伝子工学的手法を用いて該抗体の重鎖(H鎖)および軽鎖(L鎖)をコードするcDNAを取得し、抗体発現用ベクターのプロモーターの下流にH鎖およびL鎖をコードするcDNAを挿入した組換えベクターを造成し、それを宿主細胞に導入することにより得られた該抗体発現細胞を適当な培地中で培養するか、動物に投与して該細胞を腹水癌化させ、該培養液または腹水を分離精製することにより調製することができる。また、ハイブリドーマにより生産されたモノクローナル抗体がIgA型、IgM型などの多量体である場合に、本項の方法を用いて抗体を生産すれば、IgG型の抗体を取得することができる。
このような抗体発現用ベクターは、適当な動物抗体の定常領域(C領域)である定常領域重鎖(CH)および定常領域軽鎖(CL)をコードする遺伝子が組み込まれた動物細胞用発現ベクターであり、動物細胞用発現ベクターに適当な動物抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子をそれぞれ挿入することにより構築される。
動物抗体のC領域としては、例えばヒト抗体H鎖ではCγ1やCγ4、マウス抗体H鎖ではCγ1やCγ2a、Cγ2b、Cγ3、ヒト抗体L鎖ではCκ、マウス抗体L鎖ではCκ等の任意の動物抗体のC領域を用いることができる。抗体のC領域をコードする遺伝子としてはエキソンとイントロンよりなる染色体DNAを用いることができ、また、cDNAを用いることもできる。動物細胞用発現ベクターとしては、抗体C領域をコードする遺伝子を組込み発現できるものであればいかなるものでも用いることができる。
該ベクターとしては例えば、pAGE107[Cytotechnology, 3, 133 (1990)]、pAGE103[J. Biochem, 101, 1307 (1987)]、pHSG274[Gene, 27, 223 (1984)]、pKCR[Proc. Natl. Acad. Sci., 78, 1527 (1981)]、pSG1βd2−4[Cytotechnology, 4, 173 (1990)]等があげられる。動物は発現用ベクターに用いるプロモーターとエンハンサーとしては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー[J. Biochem, 101, 1307 (1987)]、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターとエンハンサー[Biochen. Biophys. Res. Comun., 149, 960 (1987)]、および免疫グロブリンH鎖のプロモーター[Cell, 41, 479 (1985)]、エンハンサー[Cell, 33, 717 (1983)]等があげられる。
発現用ベクターは、抗体H鎖、L鎖が別々のベクター上に存在するタイプあるいは同一ベクター上に存在するタイプ(タンデム型)のどちらでも用いることができるが、発現ベクターの構築のし易さ、動物細胞への導入のし易さ、動物細胞内での抗体H鎖およびL鎖の発現量のバランスが取れる点でタンデム型の発現用ベクターの方が好ましい[J. Immunol. Methods, 167, 271 (1994)]。タンデム型のヒト化抗体発現用ベクターとしては、pKANTEX93(WO 97/10354)、pEE18(Hybridoma, 17, 559-567, 1998)などがあげられる。
構築したヒト化抗体発現用ベクターは、ヒト型キメラ抗体およびヒト型CDR移植抗体の動物細胞での発現に使用できる。
(2)抗体の可変領域をコードするDNAの取得
抗体、例えばマウス抗ホスホコリン抗体の可変領域重鎖(VH)および可変領域軽鎖(VL)をコードするcDNAは以下のようにして取得する。自然抗体であるマウス抗ホスホコリン抗体を生産する細胞、例えばマウス末梢血細胞あるいはマウス脾臓細胞等より、常法[モレキュラー・クローニング 第2版(Molecular Cloning 2nd edition, Cold Spring Harbor Lab. Press New York(1989);以下モレキュラー・クローニング 第2版と略す)やカレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、サプルメント1〜38(Current Protocols in Molecular Biology Supplement 1-38;以下カレント・プロトコールズと略す)]によりcDNAライブラリーを作製する。
cDNAライブラリー作製法としては、モレキュラー・クローニング 第2版 (1989年)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(1987年)およびDNA Cloning 1: Core Techniques, A Practical Approach, Second Edition, Oxford University Press (1995)等に記載された方法、あるいは市販のキット、例えばスーパースクリプト・プラスミド・システム・フォー・cDNA・シンセシス・アンド・プラスミド・クローニング[SuperScript Plasmid System for cDNA Synthesis and Plasmid Cloning;Gibco BRL社製]やザップ−cDNA・シンセシス・キット[ZAP-cDNA Synthesis Kit、ストラタジーン社製]を用いる方法などがあげられる。更に市販のcDNAライブラリー、例えば宝酒造社製のマウス脾臓細胞cDNAライブラリー等を利用することもできる。
cDNAライブラリーを作成するためのクローニングベクターとしては、大腸菌K12株中で自立複製できるものであればファージベクター、プラスミッドベクター等いずれでも使用できる。具体的には、ZAP Express[Stratagene社製、Strategies, 5, 58 (1992)]、pBluescript II SK(+)[Nucleic Acids Research, 17, 9494 (1989)]、λzap II(Stratagene社製)、λgt10、λgt11[DNA Cloning, A Practical Approach, 1, 49 (1985)]、λ TriplEx(クローンテック社製)、λ BlueMid(クローンテック社製)、λExCell(ファルマシア社製)、pT7T318U(ファルマシア社製)、pcD2[Mol. Cell. Biol., 3, 280 (1983)]、pUC18[Gene, 33, 103 (1985)]等をあげることができる。
cDNAを組み込んだベクターを導入する大腸菌としては、大腸菌に属する微生物であればいずれでも用いることができる。具体的には、Escherichia coli XL1-Blue MRF’[Stratagene社製、Strategies, 5, 81 (1992)]、Escherichia coli C600[Genetics、39, 440 (1954)]、Escherichia coli Y1088[Science, 222, 778 (1983)]、Escherichia coli Y1090[Science, 222, 778 (1983)]、Escherichiacoli NM522[J. Mol. Biol., 166, 1 (1983)]、Escherichia coliK802[J. Mol. Biol., 16, 118 (1966)]、Escherichia coli JM105[Gene, 38, 275 (1985)]等を用いることができる。cDNAを上述クローニングベクターに組み込み、該クローニングベクターを宿主細胞に導入することによりcDNAライブラリーを作製する。該クローニングベクターがプラスミドの場合には、エレクトロポレーション法あるいはカルシウムクロライド法等により宿主細胞に導入する。該クローニングベクターがファージの場合には、インビトロパッケージング法等により宿主細胞に導入する。
上述で取得されたcDNAライブラリーから、マウス抗ホスホコリン抗体のVHならびにVLをコードするDNAを含む形質転換株については、例えば文献[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 73 , 2109 (1985)]に掲載されたマウス抗ホスホコリン抗体のVHならびにVLをコードするDNAの塩基配列を基にプローブを作製して、蛍光物質、放射線、酵素等で該プローブをラベル化し、プラークハイブリダイゼーション、コロニーハイブリダイゼーション、サザンハイブリダイゼーション等を行うことにより該プローブにハイブリダイズする形質転換株を選択することができる。
プローブは具体的には、配列番号1に示されるVHの塩基配列および配列番号2に示されるVLの塩基配列の全部あるいは一部を有するDNAがあげられる。
VHをコードするDNAは、例えば配列番号3に示される塩基配列を有する合成DNAをセンスプライマーおよび配列番号4に示される塩基配列を有する合成DNAをアンチセンスプライマーとして、マウス脾臓細胞cDNAライブラリーを鋳型にしてポリメラーゼ・チェイン・リアクション(Polymerase Chain Reaction;以下PCRと記す)により増幅することで取得できる。同様にVLをコードするDNAは、配列番号5に示される塩基配列を有する合成DNAをセンスプライマーおよび配列番号6に示される塩基配列を有する合成DNAをアンチセンスプライマーとして、マウス脾臓細胞cDNAライブラリーを鋳型にしてPCRにより増幅することで取得できる。またPCRを利用することでVH並びにVLの全配列を含むDNAを取得する事もできる。
上述で取得されたマウス抗ホスホコリン抗体のVHならびにVLをコードするDNAの全塩基配列を決定し、塩基配列よりVHおよびVLの全アミノ酸配列を推定する。
(3)ヒト型キメラ抗体発現ベクターの構築
前記で構築した抗体発現ベクターの抗体CHおよびCLをコードする遺伝子の上流にマウス抗ホスホコリン抗体のVHならびにVLをコードするcDNAを挿入し、発現ベクターを構築することができる。例えば、発現ベクターの抗体のCHおよびCLをコードする遺伝子の上流にあらかじめマウス抗ホスホコリン抗体のVHならびにVLをコードするcDNAをクローニングするための制限酵素の認識配列を設けておき、このクローニングサイトにマウス抗ホスホコリン抗体のVHならびにVLをコードするcDNAを下記に述べる合成DNAを介して挿入することにより、発現ベクターを製造することができる。合成DNAは、マウス抗ホスホコリン抗体のV領域の3’末端側の塩基配列と、発現ベクター上の抗体のC領域の5’末端側の塩基配列とからなるものであり両端に適当な制限酵素部位を有するようにDNA合成機を用いて製造する。
(4)ヒト化抗体の発現
前記の発現ベクターを適当な宿主細胞に導入することにより抗ホスホコリン抗体を安定に生産する形質転換株を得ることができる。宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、エレクトロポレーション法[特開平2−257891号公報, Cytotechnology, 3, 133 (1990)]等があげられる。発現ベクターを導入する宿主細胞としては、抗体を発現させることができる宿主細胞であればいかなる細胞でも用いることができる。例えば、マウスSP2/0−Ag細胞(ATCC CRL1581)、マウスP3X63−Ag8.653細胞(ATCC CRL1580)、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子(以下、DHFR遺伝子と称す)が欠損したCHO細胞[Proc. Natl. Acad. Sci., 77, 4216 (1980)]、ラットYB2/3HL.P2.G11.16Ag.20細胞(ATCC CRL1662,以下YB2/0細胞と称す)等があげられる。
ベクターの導入後、抗体を安定に生産する形質転換株は、特開平2−257891号公報に開示されている方法に従い、G418およびFCSを含むRPMI1640培地により選択する。得られた形質転換株を培地中で培養することで培養液中に組換え抗体を生産蓄積させることができる。また、形質転換株は特開平2−257891に開示されている方法に従い、DHFR遺伝子増幅系等を利用して組換え抗体の生産量を上昇させることができる。
抗体は、形質転換株の培養上清よりプロテインAカラムを用いて精製することができる(アンチボディズ、第8章)。また、その他に通常の蛋白質に用いられる精製方法を使用することができる。例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィーおよび限外濾過等を組み合わせて精製することができる。精製した組換え抗体のH鎖、L鎖あるいは抗体分子全体の分子量は、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS−PAGE)[Nature, 227, 680 (1970)]やウェスタンブロッティング法(アンチボディズ 第12章)等で測定する。
本発明の方法に使用する抗体を生産する抗体生産細胞の具体例としては、例えば抗体生産細胞KTM−2001があげられる。抗体生産細胞KTM−2001は、平成13年4月18日付で、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305-8566)独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターにFERM BP−7549として寄託されている。抗体生産細胞KTM−2001の生産する抗体を、以下、単にKTM−2001抗体と称する。
以下に本発明を実施例により具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
発明を実施するための最良の形態
実施例1 抗ホスホコリン抗体の製造(KTM−2001抗体)
(1) マウス抗ホスホコリン抗体遺伝子の取得
1) マウス脾臓細胞cDNAライブラリーの作製
通常に飼育したBalb/cマウスを脱血死させた後、開腹手術を施して脾臓を摘出した。脾臓をRPMI1640培地(日水製薬社製)中で、裁断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(1200r.p.m.、5分間)した後、上清を捨て、トリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH 7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去し、RPMI1640培地で3回、さらに生理食塩水で3回洗浄し、mRNAの抽出に用いた。mRNA抽出キットであるQuick Prep. mRNA purification kit(商品番号27−9254−01、アマシャム・ファルマシア社製)を用い、キットに添付の使用説明書に従って、上記脾臓細胞5.0×10個よりmRNAを取得した。
mRNA5μgから、cDNA Synthesis Kit(商品番号 27−9260−01、ファルマシア社製)を用い、キットに添付の使用説明書に従って、両端にEco RI−Not Iアダプターを有するcDNAを合成した。作製したそれぞれのcDNA約6μgを10μLの滅菌水に溶解後、アガロースゲル電気泳動にて分画し、抗体のH鎖に対応する約1.8kbpのcDNA断片とL鎖に対応する約1.0kbpのcDNA断片をそれぞれ約0.1μL回収した。次に、各々H鎖に対応する約1.8kbpのcDNA断片0.1μLおよびL鎖に対応する約1.0kbpのcDNA断片0.1μLと、Lambda ZAPIIベクター[Lambda ZAPIIベクターをEco RIで切断後、ウシ腸アルカリフォスファターゼ(CalfIntestine Alkaline Phosphatase)で処理したもの:ストラタジーン社製]1μLをT4 リガーゼ緩衝液11.5μLに溶解し、T4 DNAリガーゼ175単位を加えて、12℃にて24時間インキュベートし、さらに室温にて2時間インキュベートした。各々の反応液のうち4μLを常法[マニアティス(Maniatis)ら編集、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)、2. 95、Cold Spring Harbor Laboratory1989刊行]に従い、ギガパックゴールド(ストラタジーン社製、商品番号SC200201)を使用してラムダファージにパッケージングし、これらを常法[マニアティス(Maniatis)ら編集、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)、2, 95-107、Cold SpringHarbor Laboratory 1989刊行]に従って、ギガパックゴールドに付属の大腸菌株XL1−Blue MRF’[バイオテクニクス(Biotechniques)、5, 376 (1987)]に感染させて、マウス脾臓細胞cDNAライブラリーとしてファージクローンを取得した。次にファージを常法に従い、ハイバンドNフィルター(商品番号RPN87B、アマシャム・ファルマシア社製)上に固定した[マニアティス(Maniatis)ら編集、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)、2, 112 、Cold Spring HarborLaboratory 1989刊行]。
2) VH用プローブDNAの調製
配列番号7および配列番号8で表される塩基配列を有するプライマー12.5pmole、前記1)で作製したマウス脾臓細胞cDNA 10ng、および、200μmol/L デオキシヌクレオチド三リン酸を含むEx Taq.ポリメラーゼ反応液(宝酒造社製)中に1単位のEx Taq.ポリメラーゼ(商品番号RR001A、宝酒造社製)を加えて、95℃で5分間の前処理をした後に、95℃で2分間、55℃で2分間、72℃で2分間のポリメラーゼ・チェイン・リアクション(PCR)を30回繰り返し、約260bpのDNA断片を回収した。
PCR反応は全てGeneAmpPCR system 9700(Perkin Elmer社製)を用いて行った。増幅断片は、下記5に示した方法で配列を決定し、マウス抗ホスホコリン抗体H鎖cDNAの塩基配列(GENBANK アクセッションナンバーM16334)と一致することを確認した。
3) VL用プローブDNAの調製
配列番号9および配列番号10で表される塩基配列を有するプライマー12.5pmole、上記1)で作製したマウス脾臓細胞cDNA 10ng、および、200μmol/L デオキシヌクレオチド三リン酸を含むEx Taq.ポリメラーゼ反応液(宝酒造社製)中に1単位のEx Taq.ポリメラーゼ(商品番号RR001A、宝酒造社製)を加えて、95℃で5分間の前処理をした後に、95℃で2分間、55℃で2分間、72℃で2分間のPCR反応を30回繰り返し、約220bpのDNA断片を回収した。増幅断片は、下記5に示した方法で配列を決定し、マウス抗ホスホコリン抗体L鎖cDNAの塩基配列(GENBANK アクセッションナンバーU29423)と一致することを確認した。
4) マウス抗ホスホコリン抗体cDNAのクローニング
前記1)で作製したマウス脾臓細胞cDNAライブラリーを転写したメンブレンより、常法[マニアティス(Maniatis)ら編集、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)、2.108 、Cold Spring Harbor Laboratory 1989年刊行]に従い、前記2)および3)で作製したプローブをECL Direct Labelling and detection Kit(商品番号RPN3000、アマシャム・ファルマシア社製)に添付のプロトコールに従い標識したプローブに強く結合したファージクローンを選択した。次に、cDNA合成キットであるZAP-cDNA Synthesis Kit(商品番号SC200400、ストラタジーン社製)を用いて、ファージクローンをプラスミドpBluescript SK(−)にサブクローニングし、マウス抗ホスホコリン抗体のH鎖cDNAを含む組換えプラスミドpBSPCVH(第1図)およびマウス抗ホスホコリン抗体のL鎖cDNAを含む組換えプラスミドpBSPCVL(第2図)を取得した。pBSPCVHおよびpBSPCVLをEcoRIで切断したところ、pBSPCVHには約1.8kbpのcDNA断片が、pBSPCVLには約1.1kbpのcDNA断片がそれぞれ挿入されていた。
(2) H鎖cDNAおよびL鎖cDNAの可変領域の塩基配列
前記4)で得られたH鎖cDNAおよびL鎖cDNAの可変領域の塩基配列をDye Terminator Cycle Sequencing FS Ready Reaction Kit(Perkin Elmer社製、商品番号 402123)を用いてダイデオキシ法[マニアティス(Maniatis)ら編集、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)、13.42 、Cold Spring Harbor Laboratory 1989年刊行]により決定した。すべて5’末端に開始コドンATGと推定されるメチオニンが存在し、リーダー配列を含む完全長のcDNAであった。配列番号1にVHの塩基配列、配列番号2にVLの塩基配列をそれぞれ示した。
(3) 組換え抗体発現ベクターの構築
1) ヒトIgG1型組換え抗体発現ベクターの構築
WO 97/10354に記載のヒトIgG1型キメラ化抗体発現ベクターpKANTEX93(第3図)に、上記4)で得られたH鎖cDNAおよびL鎖cDNAの可変領域を下記の手順に従って、挿入した。
2) マウス抗ホスホコリン抗体VH領域の挿入
マウスVH領域のcDNAをヒト定常領域と遺伝子工学的に融合させるために、配列番号3および配列番号4で表される2種の合成DNAの25pmoleずつを10mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTTおよび50mmol/L 塩化ナトリウムからなる緩衝液10μLに溶解し、70℃の水浴中で10分間反応させた後、徐冷することにより会合反応を行い、二本鎖合成DNAカセットを作製した。
一方、H鎖全長cDNAを含むプラスミドpBSPCVH 1μgを30μLの10mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTTおよび50mmol/L 塩化ナトリウムからなる緩衝液に溶解し、10単位のBstPIと10単位のSpeIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、cDNAのVH領域およびAp耐性遺伝子を含む約3.4kbpのDNA断片を回収した。
上記で得られたプラスミドpBSPCVH由来のBstPI−SpeI断片(3.4kbp)0.1μgおよび二本鎖合成DNAカセット(10fmole)を滅菌水9μLに溶解し、DNAライゲーションキットver.2 Solution I(商品番号6022、宝酒造社製)9μLを加え、16℃で1時間結合反応を行った。このようにして得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、第4図に示したプラスミドpBSVH−2を得た。
次に、上記で得られたpBSVH−2 1μgを30μLの10mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTTからなる緩衝液に溶解し、10単位のApaIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液に終濃度が50mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTT、100mmol/L 塩化ナトリウム0.01% Triton X−100および0.01% BSAとなるように緩衝液60μLを調製し、10単位のNotIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、VH領域のcDNAを含む約0.5kbpのDNA断片を回収した。
一方、第3図に示されるヒト型キメラ抗体発現ベクターpKANTEX93 1μgを30μLの10mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTTからなる緩衝液に溶解し、10単位のApaIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液に終濃度が50mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTT、100mmol/L 塩化ナトリウム、0.01% Triton X−100および0.01% BSAとなるように緩衝液60μLを調製し、10単位のNotIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、ヒトγ1 H鎖定常領域cDNA、ヒトκ L鎖定常領域cDNA、二カ所のモロニーマウス白血病ウィルスプロモーター、二カ所のスプライシングシグナル、デヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、およびG418耐性遺伝子を含む約13.2kbpのDNA断片を回収した。
上記で得られたプラスミドpBSVH−2(第4図)由来のNotI−ApaI断片(0.5kbp)0.05μgおよびpKANTEX93由来のNotI−ApaI断片(13.2kbp)0.1μgを滅菌水9μLに溶解し、DNAライゲーションキットver.2 Solution I(宝酒造社製)9μLを加え、16℃で1時間結合反応を行った。このようにして得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、第6図に示したプラスミドpKANTEXPCVHを得た。
3) マウス抗ホスホコリン抗体VL領域の挿入
マウスVL領域のcDNAをヒト定常領域と遺伝子工学的に融合させるために、配列番号5および配列番号6で表される2種の合成DNAの25pmoleずつを10mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTTおよび50mmol/L 塩化ナトリウムからなる緩衝液10μLに溶解し、70℃の水浴中で10分間反応させた後、徐冷することにより会合反応を行い、二本鎖合成DNAカセットを作製した。
一方、L鎖全長cDNAを含むプラスミドpBSPCVL 1μgを30μLの50mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTTおよび100mmol/L 塩化ナトリウムからなる緩衝液に溶解し、10単位のEcoRIと10単位のSfcIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、cDNAのVL領域を含む約0.4kbpのDNA断片を回収した。
また、クローニングベクターpBluescript SK(−)(STRATAGENE 社製)1μgを30μLの20mmol/L トリス−塩酸(pH8.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTTおよび100mmol/L 塩化カリウムからなる緩衝液に溶解し、10単位のEcoRIと10単位のBamHIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、クローニングベクターpBluescript SK(−)を含む約2.9kbpのDNA断片を回収した。
上記で得られたプラスミドpBSPCVL由来のEcoRI−SfcI断片(0.4kbp)0.1μg、プラスミドpBluescript SK(−)由来のEco RI−Bam HI断片(2.9kbp)0.1μgおよび二本鎖合成DNAカセット(10fmole)を滅菌水9μLに溶解し、DNAライゲーションキットver.2 Solution I(商品番号6022、宝酒造社製)9μLを加え、16℃で1時間結合反応を行った。このようにして得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、第5図に示したプラスミドpBSVL−2を得た。また、次に、上記で得られたpBSVL−2 1μgを30μLの50mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTT、100mmol/L 塩化ナトリウムからなる緩衝液に溶解し、10単位のEcoRIと10単位のBsiWIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、VL領域のcDNAを含む約3.4kbpのDNA断片を回収した。
一方、上記(3)の2)で得られた発現プラスミドpKANTEXPCVH 1μgを50mmol/L トリス−塩酸(pH7.5)、10mmol/L 塩化マグネシウム、1mmol/L DTT、100mmol/L 塩化ナトリウムからなる緩衝液に溶解し、10単位のEcoRIと10単位のBsiWIを加えて37℃で2時間消化反応を行った。該反応液をアガロースゲル電気泳動後、マウス抗ホスホコリン抗体H鎖可変領域cDNA、ヒトγ1 H鎖定常領域cDNA、ヒトκ L鎖定常領域cDNA、二カ所のモロニーマウス白血病ウィルスプロモーター、二カ所のスプライシングシグナル、デヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、およびG418耐性遺伝子を含む約13.7kbpのDNA断片を回収した。
上記で得られたpBSPCVL由来のEcoRI−BsiWI断片(0.5kbp)0.05μgおよびpKANTEXPCVH由来の断片(13.7kbp)0.1μgを滅菌水9μLに溶解し、DNAライゲーションキットver.2 Solution I(宝酒造社製)9μLを加え、16℃で1時間結合反応を行った。このようにして得られた組換えプラスミドDNAを用いて大腸菌DH5α株を形質転換し、第7図に示したプラスミドpKANTEXPChCγ1を得た。
(4) 組換え抗ホスホコリン抗体発現ベクターの発現
マウスキメラ化抗ホスホコリン抗体発現ベクターのYB2/0細胞への導入は、Miyajiらの方法に従い、エレクトロポレーション法[サイトテクノロジー(Cytotechnology)、3, 133 (1990)]にて行った。キメラ化抗ホスホコリン抗体発現ベクターの4μgを4×10個のYB2/0細胞(ATCC CRL1581)へ導入後、40mlのRPMI1640−FCS(10) [FCS を10%含むRPMI1640培地(ギブコ社製)]に懸濁し、96ウェルマイクロタイタープレートに200μLずつ分注した。COインキュベーターで37℃、24時間培養した後、G418(ギブコ社製)を0.5mg/mlになるように添加して1〜2週間培養した。形質転換株のコロニーが出現し、コンフルエントになったウェルより培養液を回収し、組換え抗体の発現量を以下に示す酵素免疫測定法(ELISA法)にて測定した。
(5) 酵素免疫測定法(ELISA法)
1) 抗体活性測定用ELISA
実施例2の(2)で調製したPC9CHO−LDLコンジュゲートをPBSにて1μg/mLに調製した。この溶液50μLまたはこの溶液の希釈液50μLを96ウェルマイクロタイタープレート(ファルコン社製)の各ウェルにそれぞれ分注し、風乾後、0.1% BSAを含むPBSでブロッキングを行った。これに形質転換株の培養上清、あるいは精製した組換え抗ホスホコリン抗体を50〜100μL加え、1〜2時間室温で反応させた。反応後、各ウェルをPBSで洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトγ1抗体(商品番号A110POD、アメリカンカレックス社製)を50〜100μL加え、1〜2時間室温で反応させた。PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウムの550mgを0.1mol/L クエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素1μL/mLを加えた溶液]を50〜100μL加えて発色させ、415nmの吸光度を測定した。
2) 抗体量測定用ELISA
抗ヒトκL鎖抗体(ザイメッド社製、商品番号05−3900)溶液の希釈液50μLを96ウェルマイクロタイタープレート(ファルコン社製)の各ウェルにそれぞれ分注し、風乾後、0.1% BSAを含むPBSでブロッキングを行った。これに形質転換株の培養上清、あるいは精製した組換え抗ホスホコリン抗体を50〜100μL加え、1〜2時間室温で反応させた。反応後、各ウェルをPBSで洗浄後、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトγ1抗体(商品番号A110POD、アメリカンカレックス社製)を50〜100μL加え、1〜2時間室温で反応させた。PBSで洗浄後、ABTS基質液[2,2’−アジノビス(3−エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸)二アンモニウムの550mgを0.1mol/L クエン酸緩衝液(pH4.2)に溶解し、使用直前に過酸化水素1μL/mLを加えた溶液]を50〜100μL加えて発色させ、415nmの吸光度を測定した。
(6)遺伝子増幅による高発現株の取得
上記で得られたクローンについて、G418を0.5mg/mL、メソトレキセート(以下、MTXと略記する)を50nmol/L含むRPMI1640−FCS(10)培地に1.0〜2.0×10細胞/mLになるように懸濁し、24ウェルプレートに1mL分注した。COインキュベーターで37℃で1〜2週間培養して、50nmol/L MTX耐性クローンを誘導した。得られた50nmol/L MTX耐性クローンについて、G418を0.5mg/mL、100nmol/L MTXを含むRPMI1640−FCS(10)培地に1.0〜2.0×10細胞/mLになるように懸濁し、24ウェルプレートに1mL分注した。COインキュベーターで37℃で1〜2週間培養して、100nmol/L MTX耐性クローンを誘導した。得られた100nmol/L MTX耐性クローンについて、G418を0.5mg/mL、200nmol/L MTXを含むRPMI1640−FCS(10)培地に1.0〜2.0×10細胞/mLになるように懸濁し、24ウェルプレートに1mL分注した。
COインキュベーターで37℃で1〜2週間培養して、200nmol/L MTX耐性クローンを誘導した。コンフルエントになった時点で、培養液中の各キメラ化抗体発現量をELISA法にて測定した。得られたクローンの中で、最も高い発現量を示した200nmol/L MTX耐性クローンを限界希釈法により、シングルセルクローニングを行った。コンフルエントになった時点で、培養液中の各キメラ化抗体発現量をELISA法にて測定した。得られたクローンの中で、最も高い発現量を示した200nmol/L MTX耐性クローンのキメラ化抗体量は約10μg/mLであった。pKANTEXPChCγ1導入YB2/0細胞から得られた200nmol/L MTX耐性クローンを形質転換株KTM−2001(ヒト型キメラ化抗体KTM−2001生産株)と命名した。
実施例2 抗ホスホコリン抗体の製造(KTM−285抗体)
(1) ヒト血漿中のLDL画分の調製
ヘパリン採血で得られたヒト血漿に最終濃度で0.25mmol/LとなるようにEDTAを加えて、その0.75mLずつを超遠心分離用試験管(4mL容)に採り、0.3mmol/L EDTAを含む0.15mol/L NaClを250μL重層して185,000×gにて10℃で2.5時間遠心分離した。
上層150μLを捨て、下層750μLを分取して、KBr溶液(50w/v%)150μLを加えて、密度1.063とした。超遠心分離用試験管(4mL容)の底に密度調整した血漿を移して240,000×gにて10℃で16時間遠心分離し、上層の榿色バンド(約100〜150μL)を注意深く回収し、0.25mmol/LのEDTAを含むPBSに対して4℃、6時間(3リットルを2時間間隔で3回交換)透析した。得られたLDL試料は、アガロース電気泳動法と脂質染色法に単一のバンドを与えることでLDL純度を確認した後、ローリー法にてBSAを標準物質として蛋白質を定量し、この値をLDL濃度とした。
(2) 免疫用抗原および固相用抗原の調製
1−パルミトイル−2−(9−オキソノナノイル)−グリセロ−3−ホスホコリンは、文献[J.Biol.Chem., 266(17), 11095 (1991)]に記載の方法に従って調製した。1−パルミトイル−2−オレオイル10−グリセロ−3−ホスホコリン(Avanti社製)のクロロホルム溶液にオゾンガスを吹き込み、生成したジアシルグリセロホスホコリンのオゾニド体をジメチルスルフィドにより還元して合成した。得られた酸化物を薄層クロマトグラフ法により展開溶媒(クロロホルム:メタノール:水=10:5:1)の条件で展開し、1−パルミトイル−2−(9−オキソノナノイル)−グリセロ−3−ホスホコリン(以下、PC9CHOと略す)を単離した。PC9CHOの純度は、逆相HPLC(ODSカラム、メタノール:20mmol/L塩化コリン水溶液:アセトニトリル=875:100:25)にて単一ピークを与えることを確認し、クロロホルム−エタノール(1:1)溶液中にて−20℃で保存した。
(1)項で取得した精製LDLを1mg/mLになるように0.25mmol/LのEDTAを含むPBS溶液を用いて調整し、この溶液1mLに対し、5,000ngの上記PC9CHOを溶解したDMSO溶液100μLを加えて撹拌し、PC9CHO−LDLコンジュゲートを得た。
(3) モノクローナル抗体の調製
6週令の雄Balb/cマウスの背中皮下にフロインドの完全アジュバントと等量混合したホスホコリン−LDLを0.1mg/匹投与した。以後該等量混合物0.1mg/匹を背中皮下に3週間毎に2回投与し、その3週間後、尾静脈よりPBSに溶解したPC9CHO−LDLコンジュゲートを0.1mg/匹投与し、3日後に抗体生産細胞を下記のとおり脾臓より採取した。
免疫動物から脾臓を無菌的に摘出し、血清を含まないRPMI−1640培地(日水製薬社製)中にて解し、100メッシュの網を通過させて単独細胞化し、低張液中に懸濁し赤血球を溶解した後、血清を含まないRPMI−1640培地で3回遠心洗浄し抗体生産細胞を得た。
一方マウスミエローマ細胞P3X−Ag8−U1を10%牛胎児血清(FCS)含有RPMI−1640培地で培養して対数増殖期で細胞を回収し、血清を含まないRPMI−1640培地で3回遠心洗浄した。
上記で得られた抗体生産細胞懸濁液とマウスミエローマ細胞P3X−Ag8−U1懸濁液を10:1の比率で混合し、1200rpmで5分間遠心分離し、培養液を取り除いた。残った細胞に50%ポリエチレングリコール1500液(ベーリンガー・マンハイム社製)1mLをゆっくり加え、さらに血清を含まないRPMI−1640培地50mLを徐々に加えてから1200rpmで5分間遠心分離して培地を取り除き、残った細胞をHAT培地(1×10−4mol/Lヒポキサンチン、4×10−7mol/Lアミノプテリン、2×10−5mol/Lチミジンを含む10%FCS含有RPMI−1640培地)に1×10細胞/mLとなるよう懸濁し、懸濁液を96ウェルマイクロタイタープレートに各ウェル200μLずつ分注した。細胞はこのままの状態でCOインキュベーターにて5%COを含む空気中、37℃で培養した。10日後全ウェルにハイブリドーマのコロニーが観察された。
目的抗体を生産している細胞を含むウェルを選択する目的で、下記のとおり培養上清中の抗体価をELISA法で定量した。96ウェルマイクロタイタープレートに50μLのPC9CHO−LDLコンジュゲ−ト溶液(20μg/mL 0.1mol/L炭酸緩衝液、pH9.5)またはLDL溶液(コントロール、20μg/mL 0.1mol/L炭酸緩衝液、pH9.5)を分注し、4℃で一夜静置した。プレートをPBSで3回洗浄した後、1%BSA/PBS溶液250μLを分注して室温で1時間静置し、PBSで各ウェルを3回洗浄して反応用プレートとした。反応用プレートに0.1%のBSAを含むPBSで11倍に希釈した培養上清50μLを入れ、室温で3時間静置反応させた。反応終了後プレートを0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、50μLのペルオキシダーゼ(POD)標識−抗マウスイムノグロブリンズ−ウサギIgG(ダコ社製)を加え、室温で1時間反応させた。反応後プレートを0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、50μLのTMB発色試薬溶液(インタージェン社製)を加え、30分間室温で反応させ、最後に50μLの1mol/L硫酸水溶液を加え、マイクロプレートリーダー(MTP−120、コロナ電気)で450nmの吸光度を測定した。コントロールに比較し、1.0以上の吸光度を示したウェルの細胞を選択した。
クローニングは限界希釈法でおこなった。上記で得られたウェル内の細胞を1×10個/mLの胸腺細胞を含む10%FCS含有RPMI−1640培地にて0.5個/mLになるよう希釈し、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに200μL分注し、5%COインキュベーターにて37℃で培養を行った。培養開始10〜14日後に各ウェルを観察し、生育コロニーが1個/ウェルのウェルを選び出し、その培養上清中抗体価を上記ELISA法にて定量し、目的抗体を生産している細胞株を含むウェルを選択した。さらに同様の操作を2回繰り返し、安定して目的抗体を生産するモノクローナル抗体生産細胞株を得た。得られた株が生産する抗体の免疫グロブリンクラスをモノクローナル抗体タイピングキット(ザイメット社製)を用い、培養上清中の抗体について同定し、採取した。取得された抗体はIgMタイプであった。
8週令以上の雄Balb/cマウスの腹腔内に0.5mL/匹のプリスタン(2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン)を注入し、2週間飼育した。
このマウスに1×10/匹のモノクローナル抗体生産細胞を腹腔内接種した。
7〜14日後、マウス腹腔に十分腹水が貯留した時点で、腹腔から18Gの注射針を用いて腹水を回収し、3,000rpmで10分間遠心分離して上清を回収した。この上清をPBSで3倍に希釈した後、この希釈腹水と等量の飽和硫酸アンモニウム/PBS溶液を撹拌しながら滴下混合し、滴下し終わった後もしばらくの間撹拌を継続した。この混合液を回収して3,000rpmで10分間遠心分離し、残査を回収した後、この残査を3倍希釈腹水と等量のPBSで溶解し、上記と同様の操作を繰り返した。回収した残査を腹水量と等量の0.5mol/LのNaClを含むPBSで溶解した。0.5mol/LのNaClを含むPBSで平衡化したセファクリルS−300カラムに前記溶解液を通塔した後、0.5mol/LのNaClを含むPBSで溶出し、溶出液の280nm吸光度をモニターしながら分子量800KD付近のピーク部分を回収し、これを精製抗体とした。
(4)抗体の選択
96ウェルマイクロタイタープレート(ヌンク社製)に50μLの上記(2)で作製したPC9CHO−LDL溶液(20μg/mL 0.1mol/L炭酸緩衝液、pH9.5)を分注し、4℃で一夜静置した。プレートをPBSで3回洗浄した後、1%BSA/PBS溶液250μLを分注して室温で1時間静置し、PBSで各ウェルを3回洗浄して反応用プレートとした。該反応用プレートに、種々の種類および濃度の物質を加えた0.1%BSA含有0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)または0.1%BSA含有0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)のみ(コントロール:阻害0%)を50μL加え、これに、上記(3)で得られた抗体を0.1%BSA含有0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)で100ng/mLに希釈したものをプレートを撹拌しながら50μL分注し、混合して4℃で一夜静置反応させた。反応終了後プレートを0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、POD標識−抗マウスイムノグロブリンズ−ウサギIgGを50μL加え、室温で1時間反応させた。反応後プレートを0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、50μLのTMB発色溶液(インタージェン社製)を加え、30分間室温で反応させ、最後に50μLの反応停止液を加え、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。反応性は、反応に用いたホスホコリンの濃度/吸光度曲線を作成し、コントロールの吸光度を100%としたときの、各物質、各濃度の反応阻害率から相対決定した。この結果をもとに、上記(3)で得られたモノクローナル抗体生産株からホスホコリンによる阻害が最も低濃度で得られたものを選択し、当該生産株をKTM−285と命名した。
実施例3 抗体の特異性
96ウェルマイクロタイタープレート(ヌンク社製)に50μLの実施例2の(2)で作製したPC9CHO−LDL溶液(20μg/mL 0.1mol/L炭酸緩衝液、pH9.5)を分注し、4℃で一夜静置した。プレートをPBSで3回洗浄した後、1%BSA/PBS溶液250μLを分注して室温で1時間静置し、PBSで各ウェルを3回洗浄して反応用プレートとした。該反応用プレートに、種々の種類・濃度の物質を加えた0.1%BSA含有0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)または0.1%BSA含有0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)のみ(コントロール:阻害0%)を50μL加え、これに、実施例2で得られたKTM−285抗体および実施例1で得られたKTM−2001抗体を0.1%BSA含有0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)で100ng/mLに希釈したものをプレートを撹拌しながら50μL分注し、混合して4℃で一夜静置させ反応させた。反応終了後プレートを0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、POD標識−抗マウスイムノグロブリンズ−ウサギIgGを50μL加え、室温で1時間反応させた。反応後プレートを0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、50μLのTMB発色溶液(インタージェン社製)を加え、30分間室温で反応させ、最後に50μLの反応停止液を加え、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。反応性は、反応に用いたホスホコリンの濃度/吸光度曲線を作成し、コントロールの吸光度を100%としたときの、各物質、各濃度の反応阻害率から相対決定した。KTM−285抗体、KTM−2001抗体ともにホスホコリンにのみ低濃度で阻害が観察され、ホスフォセリン、ホスフォスレオニン、ニトロフェニルホスホコリン、ホスファチジルコリン、ホスフォリルエタノールアミン、精製ヒトLDL、精製ヒトHDLには実質的に阻害されなかった。
実施例4 KTM−2001抗体を用いた生体内変性リポ蛋白質の測定および疾患との相関
(1) パーオキシダーゼ標識抗体の作製
精製抗ヒトアポB抗体(ヤギ、カッペル社製)溶液(5mg/mL、0.1mol/L ホウ酸緩衝液、pH8.0)1mLに、50μLの2−イミノチオラン−HCl溶液(60mmol/L、0.1mol/L ホウ酸緩衝液、pH8.0)を加え、30℃で30分間反応させた後、5mmol/LのEDTAを含む0.1mol/Lのリン酸緩衝液(pH6.0)で平衡化したセファデックスG−25カラム(1cm×30cm、Amersham-Pharmacia社製)にかけ、溶出された抗体画分を回収した。西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRPと略す。東洋紡社製)溶液(10mg/mL 0.1mol/L リン酸緩衝液、pH7.0)1mLに50μLのEMCS溶液(同人化学社製、50mmol/L、DMSO溶液)を加え、30℃で30分間反応させた後、0.1mol/Lのリン酸緩衝液(pH6.5)で平衡化したセファデックスG−25カラム(1cm×30cm、Amersham-Pharmacia社製)にかけ、溶出されたHRP画分を回収した。上記回収した抗体画分およびHRP画分を混合し、30℃で30分間反応させた後、0.1mol/Lのリン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したセファデックスG−200カラム(1cm×100cm、Amersham−Pharmacia社製)にかけ、溶出された抗体−HRPコンジュゲート画分を回収し、これをペルオキシダーゼ標識抗ヒトアポB抗体とした。回収した画分は直ちに終濃度1%になるようにBSAを添加し、使用するまで−50℃で保存した。
(2) ELISA法
96ウエルマイクロプレート(ヌンク社製)の各ウエルに、実施例1で作製したKTM−2001抗体をTris−HCl(pH8.0)で10μg/mLに希釈したものを、100μL/ウエルとなるように加えて、4℃で16時間インキュベートした。溶液を捨て、1%(w/v)BSAを含むTris−HCl(pH8.0)350μLを加えて室温で2時間インキュベートすることによりブロッキングした後、0.05%(v/v)Tween20を含むPBS(pH7.4)で4回洗浄した。
次に、新鮮な動脈硬化患者血漿ならびに健常者血漿を検体希釈液(1%BSA、5%ポリエーテル、140mmol/L NaClを含む10mmol/L リン酸緩衝液、pH7.4)で1,000倍に希釈し、さらにこれを同検体希釈液で4/5、3/5、2/5、1/5にそれぞれ希釈して、検体希釈液のみと合わせてそれぞれ100μLずつウェルに分注し、室温で2時間インキュベートした後、0.05(v/v)%Tween20を含むPBS(pH7.4)で4回洗浄した。
さらに、各ウェルに1%(w/v)BSAを含むPBS(pH7.4)で1,000倍に希釈されたペルオキシダーゼ標識抗ヒトアポB抗体100μLを加えて、室温で30分間インキュベートした。次に、0.05(v/v)%Tween20を含むPBS(pH7.4)で4回洗浄した後、発色液(TMBZ液、TSI社製)100μLを加えて30分間37℃で発色させた後、1mol/L硫酸50μLを加えて反応を停止させ、450nmの吸光度を測定した。
結果を第8図に示す。第8図より、動脈硬化患者血漿中にはKTM−2001抗体と親和性を持つ変性リポ蛋白質が含まれ、また本発明の方法はこの変性リポ蛋白質を定量的に測定できることが明らかとなった。
実施例5 KTM−285抗体を用いた生体内変性リポ蛋白質の測定および疾患との相関
96ウエルマイクロプレート(ヌンク社製)の各ウエルに、実施例2で作製したKTM−285抗体をTris−HCl(pH8.0)で10μg/mLに希釈したものを、100μL/ウエルとなるように加えて、4℃で16時間インキュベートした。溶液を捨て、1%(w/v)BSAを含むTris−HCl(pH8.0)350μLを加えて室温で2時間インキュベートすることによりブロッキングした後、0.05%(v/v)Tween20を含むPBS(pH7.4)で4回洗浄した。

次に健常人と冠動脈造影法にていずれかの冠動脈に75%以上の狭窄が観察される患者の血中変性リポ蛋白質を本発明の測定法にて測定した。生体試料としては血清を用いた。被検者に対し、10時間以上の絶食を課した後、早朝空腹状態で全血10mLを真空採血管で採血し、室温で30分間放置して凝固させた後、3,000rpmで10分間遠心分離し、上清の液体成分を回収し血清とした。
この血清を検体希釈液(1%BSA、5%ポリエーテル、140mmol/L NaClを含む10mmol/L リン酸緩衝液、pH7.4)で1,000倍に希釈し、それぞれ100μLずつウェルに分注し、室温で2時間インキュベートした後、0.05(v/v)%Tween20を含むPBS(pH7.4)で4回洗浄した。
さらに、各ウェルに1%(w/v)BSAを含むPBS(pH7.4)で1,000倍に希釈されたペルオキシダーゼ標識抗ヒトアポB抗体100μLを加えて、室温で30分間インキュベートした。次に、0.05(v/v)%Tween20を含むPBS(pH7.4)で4回洗浄した後、発色液(TMBZ液、TSI社製)100μLを加えて30分間37℃で発色させた後、1mol/L硫酸50μLを加えて反応を停止させ、450nmの吸光度を測定した。結果を第9図に示す。
健常人に比較し、冠動脈に75%以上の狭窄のある患者の測定値が有意に高く、本発明により得られる変性リポ蛋白質の定量値から循環器系器官である冠動脈の疾患が検出できる。
実施例6 狭心症患者の本発明生体内物質の測定
健常人と狭心症発作をおこし、負荷心電図にてST波の低下を認めた狭心症患者に対し全血10mLをEDTA入り真空採血管で採血し、直ちに3,000rpmで10分間遠心分離し、上清の液体成分を回収し血漿とした。回収した血清を実施例4と同様にしてKTM−2001抗体を用いてELISA法にて測定した。結果を第10図に示す。第10図に示した通り健常人に比較し、狭心症患者の変性リポ蛋白質の測定値が有意に高く、本発明により得られる変性リポ蛋白質の定量値から循環器系器官の疾患が検出できる。
実施例7 心筋梗塞患者の本発明生体内物質の測定
胸痛症状を示し、心電図にてST波の上昇が確認された心エコーにて局所壁運動異常が観察された心筋梗塞患者と健常人より全血10mLをEDTA入り真空採血管で採血し、直ちに3,000rpmで10分間遠心分離し、上清の液体成分を回収し血漿とした。各血漿にエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA−2Na)水溶液(10mmol/L)を加え、最終濃度を1mmol/Lとし、これにNaBrを加え、密度1.000に合わせた。遠心チューブに分注し、その上にNaBrで、密度1.150、1.063、1.019及び1.006に合わせた緩衝液を順に重層し、これを4℃で24時間遠心分離(120,000g)した。上端から順に分画し、各画分の密度を屈折計で測定し、密度1.019〜1.063の画分をLDL画分として採取した。このようにして得られたLDL分画を、採取後直ちに、0.25mmol/L EDTAを含むPBSで透析した。回収したLDL画分を実施例4と同様にしてELISA法にて測定した。結果を第11図に示す。第11図に示したとおり健常人に比較し、心筋梗塞患者の変性LDLの測定値が有意に高く、本発明により得られる変性LDLの定量値から循環器系器官の疾患が検出できる。
実施例8 変性LDLの測定(1)
健常人と健常人と冠動脈造影法にて主要冠動脈に75%以上の狭窄が観察される患者を10時間以上の絶食を課した後、早朝空腹状態で全血10mLをEDTA入り真空採血管で採血し、直ちに3,000rpmで10分間遠心分離し、上清の液体成分を回収し血漿とした。各血漿にエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA−2Na)水溶液(10mmol/L)を加え、最終濃度を1mmol/Lとし、これにNaBrを加え、密度1.000に合わせた。遠心チューブに分注し、その上にNaBrで、密度1.150、1.063、1.019及び1.006に合わせた緩衝液を順に重層し、これを4℃で24時間遠心分離(120,000g)した。上端から順に分画し、各画分の密度を屈折計で測定し、密度1.019〜1.063の画分をLDL画分として採取した。このようにして得られたLDL分画を、採取後直ちに、0.25mmol/L EDTAを含むPBSで透析した。回収した精製LDLを15mLのコニカルチューブに各4分割し、所定の時間ボルテックスで撹拌してリポ蛋白質を変性させた。変性は披検体の680nmの吸光度が上昇していくことで確認した。変性操作後、この精製LDLを実施例4と同様にしてELISA法にて測定した。結果を第12図に示す。
第12図に示した通り、ボルテックスで撹拌して変性させることによりその測定値は健常人、患者ともに高くなり、また変性時間を長くしてより大きな変性をさせることにより、さらに測定値は高くなることが示された。
実施例9 変性LDLの測定(2)
健常人に10時間以上の絶食を課した後、早朝空腹状態でEDTA入り真空採血管で採血し、採血後 5〜50U/kgのドーズでヘパリンを静脈投与し、さらに投与15分後、全血10mLをEDTA入り真空採血管で採血し、直ちに3,000rpmで10分間遠心分離し、上清の液体成分を回収し血漿として一部を−50℃で凍結保存した。回収した各血漿にエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA−2Na)水溶液(10mmol/L)を加え、最終濃度を1mmol/Lとし、これにNaBrを加え、密度1.000に合わせた。遠心チューブに分注し、その上にNaBrで、密度1.150、1.063、1.019及び1.006に合わせた緩衝液を順に重層し、これを4℃で24時間遠心分離(120,000g)した。上端から順に分画し、各画分の密度を屈折計で測定し、密度1.019〜1.063の画分を精製LDLとして採取した。このようにして得られた精製LDLを、採取後直ちに、0.25mmol/L EDTAを含むPBSで透析した。この精製LDLを実施例4と同様にしてELISA法にて測定した。一方凍結保存してあった血漿中のリポプロテインリパーゼ濃度をリポプロテインリパーゼ測定試薬(第一化学社製)にて測定し、血漿中のリポプロテインリパーゼ濃度とその血漿由来の精製LDLのELISA測定値とを比較検討した。結果を第13図に示す。
第13図に示した通り、リポプロテインリパーゼ濃度が高い血漿由来の精製LDLほど高い測定値が得られ、本発明の定量方法によりリポプロテインリパーゼによって変性された変性リポ蛋白質を測定することができる。
実施例10 変性LDLおよび変性HDLの測定
(1) ヒト血漿中のHDL画分の調製
ヘパリン採血で得られたヒト血漿に最終濃度で0.25mmol/LとなるようにEDTAを加えて、その0.75mLずつを超遠心分離用試験管(4mL容)に採り、0.3mmol/L EDTAを含む0.15mol/L NaClを250μL重層して185,000×gにて10℃で2.5時間遠心分離した。
上層150μLを捨て、下層750μLを分取して、KBr溶液(50w/v%)150μLを加えて、密度1.063とした。超遠心分離用試験管(4mL容)の底に密度調整した血漿を移して240,000×gにて10℃で16時間遠心分離し、上層の榿色バンド(約100〜150μL)を捨て、残った画分を注意深く回収した。この回収した分画にKBr溶液(50w/v%)を加えて密度1.21に調整し、超遠心分離用試験管に分注して244,000×gで10時間遠心分離し、上層750μLを回収して、0.25mmol/LのEDTAを含むPBSに対して4℃、6時間(3リットルを2時間間隔で3回交換)透析した。得られたHDL試料は、アガロース電気泳動法と脂質染色法に単一のバンドを与えることでHDL純度を確認した後、ローリー法にてBSAを標準物質として蛋白質を定量し、この値をHDL濃度とした。
(2)変性LDLおよび変性HDLの調製
実施例2(1)で精製したLDLおよび上記(1)で精製したHDLを共にPBSで平衡化したセファデックスG−25カラム(1cm×30cm、Amersham-Pharmacia社製)に通筒し、含まれているEDTAを除いた後、ローリー法にてBSAを標準物質として蛋白質を定量し、PBSにて1mg/mLとなるよう調整した。この溶液に最終濃度5μmol/LとなるようCuSOを添加し、37℃で3時間空気下酸化を行った。3時間後、0.01%となるようEDTAを加えて酸化反応を停止させ、直ちに0.01%EDTAを含むPBSにて4℃で透析し、回収してローリー法にてBSAを標準物質として蛋白質定量し、変性LDL、変性HDL溶液の濃度をそれぞれ決定した。
(3)変性LDLおよび変性HDLの測定
96ウェルマイクロタイタープレート(ヌンク社製)に50μLの上記で作製した変性LDLおよび変性HDLならびに酸化する前のLDLおよびHDL溶液(10μg/mL PBS)を分注し、4℃で一夜静置した。プレートをPBSで3回洗浄した後、1%BSA/PBS溶液250μLを分注して室温で1時間静置し、PBSで各ウェルを3回洗浄して反応用プレートとした。該反応用プレートに実施例2で得られたKTM−285抗体および実施例1で得られたKTM−2001抗体を0.1%BSA含有0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)で100ng/mLに希釈したものを50μL分注、混合して4℃で一夜静置し反応させた。反応終了後プレートを0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、POD標識−抗マウスイムノグロブリンズ−ウサギIgGを50μL加え、室温で1時間反応させた。反応後プレートを0.05%Tween20を含むPBSで5回洗浄した後、50μLのTMB発色溶液(インタージェン社製)を加え、30分間室温で反応させ、最後に50μLの反応停止液を加え、マイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。結果を第14図に示す。第14図に示した通り、KTM−285抗体およびKTM−2001抗体は変性操作前のLDLおよびHDLとは反応しないが、変性LDLおよび変性HDLとは反応することが示された。これにより、変性LDLおよび変性HDLの測定ができることが確認された。
実施例11 変性リポ蛋白質の測定
実施例10で作製した変性LDLをウェルマイクロタイタープレート(ヌンク社製)の各ウェルに1%BSA/PBS溶液250μLを分注して室温で1時間静置し、PBSで各ウェルを3回洗浄して反応用プレートとした。この反応用プレートのウェルに実施例10で作製した変性LDL、変性させる前のLDL溶液(170μg/mL PBS)および変性LDLをそれぞれ1/2希釈、1/4希釈、1/8希釈した溶液を100μL/ウェル分注し、さらに各ウェルに実施例2で得られたKTM−285抗体を0.1%BSA含有0.1mol/Lリン酸緩衝液(pH7.4)で970μg/mLに希釈したものを50μL分注、混合して24℃で20分間静置し反応させた。反応終了後、プレートをマイクロプレートリーダーで450nmの吸光度を測定した。結果を第15図に示す。第15図に示した通り、KTM−285抗体は変性させる前のLDLとは反応しないが、これらに変性操作を加えた変性LDLとは反応することが示され、本発明により変性LDLの測定ができることが確認された。さらに同様の結果は実施例10で作製した変性HDLを用いても再現された。
本発明により、生体試料中の変性リポ蛋白質をホスホコリンに対する抗体を用いて定量することを特徴とする生体試料中の変性リポ蛋白質の定量方法、生体試料中の変性リポ蛋白質をホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を用いて定量することを特徴とする生体試料中の変性リポ蛋白質の定量方法、生体試料中の変性リポ蛋白質をホスホコリンに対する抗体を用いて定量し、その定量値から循環器系疾患を検出することを特徴とする循環器系疾患の検出方法、生体試料中の変性リポ蛋白質をホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を用いて定量し、その定量値から循環器系疾患を検出することを特徴とする循環器系疾患の検出方法、ホスホコリンに対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用試薬およホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用試薬が提供される。
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第1図は、組換えプラスミドpBSPCVHの構造を示す。 第2図は、組換えプラスミドpBSPCVLの構造を示す。 第3図は、発現ベクターpKANTEX93の構造を示す。 第4図は、プラスミドpBSVH−2の構造を示す。 第5図は、プラスミドpBSVL−2の構造を示す。 第6図は、プラスミドpKANTEXPCVHの構造を示す。 第7図は、プラスミドpKANTEXPChCγ1の構造を示す。 第8図は、健常者ならびに冠動脈硬化疾患患者の血漿、さらにコントロールとして検体希釈液を5段階希釈し、測定した結果を示す。−●−は、動脈硬化患者の血漿、−▲−は、健常人の血漿および−○−は、検体希釈液のみの結果をそれぞれ示す。 第9図は、健常者ならびに冠動脈狭窄疾患患者の血漿中の変性リポ蛋白質の測定値を示す。 第10図は、健常者ならびに狭心症患者の血漿中の変性リポ蛋白質の測定値を示す。 第11図は、健常者ならびに心筋梗塞患者の血漿中の変性リポ蛋白質の測定値を示す。 第12図は、健常者ならびに冠動脈硬化疾患患者の血漿由来のリポ蛋白質に種々物理的変性を加えて測定した結果を示す。−○−は、健常人の血漿、−●−は、患者の血漿について測定した結果をそれぞれ示す。 第13図は、健常者のリポ蛋白質にリポプロテインリパーゼを作用させて酵素的変性を加えて測定した結果を示す。 第14図は、精製リポ蛋白質に変性を加えて、KTM−285抗体およびKTM−2001抗体との反応性を測定した結果を示す。 第15図は、精製リポ蛋白質に変性を加えて、KTM−285抗体との反応性を測定した結果を示す。

Claims (35)

  1. 生体試料とホスホコリンに対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性リポ蛋白質の定量方法。
  2. 生体試料とホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性リポ蛋白質の定量方法。
  3. 生体試料とホスホコリンに対する抗体および低密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性低密度リポ蛋白質の定量方法。
  4. 低密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体である請求項3記載の方法。
  5. 生体試料とホスホコリンに対する抗体および高密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性高密度リポ蛋白質の定量方法。
  6. 高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に対する抗体である請求項5記載の方法。
  7. 生体試料とホスホコリンに対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中のリポプロテイン(a)の定量方法。
  8. 生体試料とホスホコリンに対する抗体、高密度リポ蛋白質に対する抗体および低密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする生体試料中の変性高密度リポ蛋白質および変性低密度リポ蛋白質の定量方法。
  9. 高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に対する抗体である請求項8記載の方法。
  10. 低密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体である請求項8記載の方法。
  11. 生体試料とホスホコリンに対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
  12. 生体試料とホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
  13. 生体試料とホスホコリンに対する抗体および低密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
  14. 低密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体である請求項13記載の方法。
  15. 生体試料とホスホコリンに対する抗体および高密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
  16. 高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に対する抗体である請求項15記載の方法。
  17. 生体試料とホスホコリンに対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
  18. 生体試料とホスホコリンに対する抗体、高密度リポ蛋白質に対する抗体および低密度リポ蛋白質に対する抗体とを接触させ、生じる免疫複合体を定量することを特徴とする循環器系疾患の検出方法。
  19. 高密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポA蛋白質に対する抗体である請求項18記載の方法。
  20. 低密度リポ蛋白質に特異的に結合する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体である請求項18記載の方法。
  21. ホスホコリンに対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用試薬。
  22. ホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用試薬。
  23. リポ蛋白質に対する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体、アポA蛋白質に対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体からなる群から選ばれる請求項22記載の試薬。
  24. 凍結保護剤を含む、請求項21〜23のいずれか1項に記載の試薬。
  25. ホスホコリンに対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用キット。
  26. ホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する変性リポ蛋白質の定量用キット。
  27. リポ蛋白質に対する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体、アポA蛋白質に対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体からなる群から選ばれる請求項23記載のキット。
  28. 凍結保護剤を含む、請求項25〜27のいずれか1項に記載の変性リポ蛋白質の定量用キット。
  29. ホスホコリンに対する抗体を含有する循環器系疾患の検出試薬。
  30. ホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する循環器系疾患の検出試薬。
  31. リポ蛋白質に対する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体、アポA蛋白質に対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体からなる群から選ばれる請求項30記載の検出試薬。
  32. ホスホコリンに対する抗体を含有する循環器系疾患の検出用キット。
  33. ホスホコリンに対する抗体およびリポ蛋白質に対する抗体を含有する循環器系疾患の検出用キット。
  34. リポ蛋白質に対する抗体が、アポB蛋白質に対する抗体、アポAに対する抗体およびアポプロテイン(a)に対する抗体からなる群から選ばれる請求項33記載のキット。
  35. 凍結保護剤を含む、請求項32〜34のいずれか1項に記載の循環器系疾患の検出用キット。
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