JP4826940B2 - アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法およびそれに用いるキット - Google Patents
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Description
しかし、血清中総 ALP 活性が広く用いられて有効である一方で、測定結果単独では疾患の特定に結びつきづらい。それには上記の血清中アイソザイムの問題がある。ALP の電気泳動をおこなうと 6、7 本のバンドが分離されるが、抗血清を用いて蛋白質としての抗原性から ALP を考察すると、臓器特異型(Tissue Specific ALP:TSALP)と臓器非特異型(Tissue-Non Specific ALP:TNSALP)の2種類に大きく分類される。臓器特異型(Tissue Specific ALP:TSALP)と呼ばれている胎盤型(ALP4)、小腸型(ALP5)、生殖細胞型の 3 種については、2q34-37 に存在する遺伝子によって産生されていることがわかっている。次に臓器非特異型(Tissue-Non Specific ALP:TNSALP)は肝、骨、腎、白血球に見られるタイプで同一のアミノ酸配列を有し、遺伝子 1p34-36.1 から発現することが知られている。その中でも肝型と骨型では同一遺伝子から転写調節の違いで二種類の mRNA が作られるが、酵素の成熟にしたがってまた全く同一の配列を持つようになることが知られている(非特許文献1)。しかし、酵素に結合する糖鎖の違いから N型糖鎖を 3 本持つ肝型(ALP2)と N 型糖鎖 2 本と O 型糖鎖 1 本をもつ骨型(ALP3)が電気泳動上で分けられると考えられる。さらに膜成分、GPI アンカーとの結合から ALP1、そして免疫グロブリンの結合から ALP6 が近接的に観察される。そしてこの全てのアイソザイム活性の総和が血清中 ALP 値として反映されるため、ALP 高値が疾患と一対一対応しにくい現状である。
アイソザイムの測定法としては、これまでに L-フェニルアラニンによる肝型、骨型(ALP2、3)の測定、L−ホモアルギニンによる胎盤型、小腸型(ALP4、5)の測定など阻害アミノ酸を利用してアイソザイムを測定する方法や(非特許文献3)、加熱によって胎盤型(ALP4)活性だけを残し、ALP4 を特異的に測定する方法(非特許文献4、非特許文献5)、先に述べた肝型、骨型 ALP 糖鎖の差を利用してレクチンを利用し、肝型(ALP2)や骨型(ALP3)を測定する方法(非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9)、骨型 ALP(ALP3)に対する特異的モノクローナル抗体を使用する方法(非特許文献10)などが開発されて、いくつかのアイソザイムは測定が可能となっている。しかし、イムノグロブリン結合型である ALP6 は臨床的にも意義が唱えられながら依然としてその絶対値を知る方法がないために電気泳動法から存在の有無を知ることで臨床診断に使用されている状況にある。
本発明者らの研究によれば、電気泳動で ALP6 及び ALP1 が陽性となった検体中に、糖系非イオン性界面活性剤を添加し、電気泳動を行ったところ ALP1 の分解が確認されてそのバンドが消失し、かつ、ALP6 のバンドが残存していることが確認された。
また、検体として虚血性腸疾患患者血清を用い、その検体中に糖系非イオン性界面活性剤を添加し、抗体として、抗ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼモノクローナル抗体と抗ヒト IgG モノクローナル抗体との組合せを使用してALP6 の量を精密測定したところ感度良く測定でき、虚血性腸疾患診断上、有用であることを見出した。従って、検体中に糖系非イオン性界面活性剤を添加した後に、抗体として、抗ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼモノクローナル抗体と抗ヒト免疫グロブリン抗体との組合せを使用して ALP6 の量を測定することで反応系中の他の ALP1 の影響を防ぎ精密測定することが可能となった。さらに、このような方法で ALP6 を精密測定することが、虚血性腸疾患診断により有効であることを見出した。本発明は、かかる知見により完成されたものである。
膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質により、検体中に存在する膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解して、膜結合型アルカリ性ホスファターゼの影響を無くしてもしくは低下させて、検体中のアルカリ性ホスファターゼ6を測定することを特徴とする、
検体中のアルカリ性ホスファターゼ6の測定方法である。
膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質により、検体中に存在する膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解して、膜結合型アルカリ性ホスファターゼの影響を無くしてもしくは低下させて、検体中のアルカリ性ホスファターゼ6と、アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分であるアルカリ性ホスファターゼ部位を認識するアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質と、アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する免疫グロブリン部位認識物質とを反応させ、得られるアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質とアルカリ性ホスファターゼ6と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルからアルカリ性ホスファターゼ6を測定することを特徴とする、
アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法である。
膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質により、検体中に存在する膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解して、膜結合型アルカリ性ホスファターゼの影響を無くしてもしくは低下させて、検体中のアルカリ性ホスファターゼ6とヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体とを抗原抗体反応させ、次いで、得られる抗原抗体反応物と、アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する免疫グロブリン部位認識物質とを反応させ、得られるヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体とアルカリ性ホスファターゼ6と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルからアルカリ性ホスファターゼ6を測定することを特徴とする、
アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法である。
i)膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質により、検体中に存在する膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解して、膜結合型アルカリ性ホスファターゼの影響を無くしてもしくは低下させて、検体中のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼをヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体と抗原抗体反応させ、次いで、抗原抗体反応したヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼを、アルカリ性ホスファターゼ用酵素基質と反応させ、反応した酵素活性のレベルから、検体中のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ活性を求め、
ii)上記 i)とは独立に、上記のいずれかの方法により検体中のアルカリ性ホスファターゼ6のレベルを求め、
iii)上記 i)で得られるヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ活性値と上記 ii)で得られるアルカリ性ホスファターゼ6のレベル値との乗法値を求め、その乗法値から検体中のアルカリ性ホスファターゼ6の量を求める、
ことを特徴とする、
アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法である。
i)固相支持体、
ii)アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分であるアルカリ性ホスファターゼ部位を認識するアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質、
iii)アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する、標識された免疫グロブリン部位認識物質、
iv)標識を検出するための成分、および
v) 膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質
を含むキットである。
本発明による ALP6 の測定は虚血性腸疾患のような臨床診断薬としても利用可能であり、また自己抗体のメカニズムなど基礎医学の発展にも貢献し利用できるものである。
本発明において、検体とは、アルカリ性ホスファターゼ6を含む可能性のある液体または混合物であれば特に限定しないが、通常、血液、血清、血漿、尿等の生体内試料が好適である。
本発明において、膜結合型アルカリ性ホスファターゼとは、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(例えば、常光のアルフォーを用いる電気泳動法(医学のあゆみ、741-42、Vol.155、No.11・12、1990(12-22);Medical Technology (別冊電気泳動法のすべて)、101-109(1991))で ALP1 のバンドに由来する ALP をいう。なお、ALP1 は、そのほとんどが細胞膜断片を持っているといわれている。
本発明において、アルカリ性ホスファターゼ6とは、免疫グロブリン結合性アルカリ性ホスファターゼのことであり、ポリアクリルアミドゲル電気泳動法(例えば、常光のアルフォーを用いる電気泳動法)で ALP6 のバンドに由来する ALP をいう。本明細書では ALP6 とそのまま記載することもある。
そのような物質として、例えば、糖系非イオン性界面活性剤を例示できる。本発明において使用できる糖系非イオン性界面活性剤は、糖部分を有する非イオン性界面活性剤であれば特に限定しないが、親水性部分として糖残基、疎水性部分として疎水性置換基を有するものが好ましい。そのような糖系非イオン性界面活性剤として、例えば、一般式(I)
A−B (I)
(式中、Aは、ヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基)
で表される糖系非イオン性界面活性剤が挙げられる。
非イオン性界面活性剤内の疎水性置換基Bに関しては、例えば、炭素数 5〜18のアルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルおよびアシロキシ;炭素数 5〜18 の(N−アシル)アルキルアミノ;炭素数 17〜25 のステロイド骨格を有する置換基を例示でき、炭素数6〜14のアルキル、アルキルオキシ、アルキルアミノ、アルキルチオ、アシルおよびアシロキシ、(N−炭素数 5〜14 のアシル)-(炭素数 1〜3 のアルキル)アミノがさらに好ましい。
これらの具体的な非イオン界面活性剤を例示すれば、n−オクチル−β−D−マルトシド、n−デシル−β−D−マルトシド、n−ヘプチル−β−D−チオグルコシド、n−オクチル−β−D−チオグルコシド、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、n−オクタノイル−N−メチルグルカミド、n−デカノイル−N−メチルグルカミド、スクロースモノカプレート(CAS 番号 31835-06-0)、スクロースモノラウレート(CAS 番号 25339-99-5)を例示できる。
(式中、2つのAはそれぞれ同じでも異なっていてもよいヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基、m、nはそれぞれ独立に2〜5の自然数を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤が好ましい。ここで、A,Bに関しては、上記に説明したとおりである。そのような糖系非イオン性界面活性剤として、N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)コール酸アミド(CAS 番号 86303-22-2)、N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)デオキシコール酸アミド(CAS 番号 86303-23-3)を例示できる。
検体に糖系非イオン性界面活性剤を添加するに際しては、糖系非イオン性界面活性剤を、Tris 緩衝液、グッドバッファーなどの緩衝液に、通常 0.1 から 10 % の濃度に溶解して、その溶解液を検体に添加する。検体に添加する溶解液の量には、特に制限はないが、通常、検体に対して 10 から 20 容量%を加える。
検体に添加後に、そのまま、通常のアルカリ性ホスファターゼ6の測定に付してもよく、また、添加後に、室温で、1 時間から 24 時間の間、放置した後に、通常のアルカリ性ホスファターゼ6の測定に付してもよい。
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法としては、例えば、常光のアルフォーを用いるポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法(医学のあゆみ、741-42、Vol.155、No.11・12、1990(12-22);Medical Technology (別冊電気泳動法のすべて)、101-109(1991))が挙げられる。このポリアクリルアミドゲル電気泳動法は、7 % 程度のポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動法であり、測定するに際して、血清などの検体に、糖系非イオン性界面活性剤等の膜結合型アルカリ性ホスファターを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質を添加することにより、検体中の目的とするアルカリ性ホスファターゼ6を、より特異的に正確に検出できる。
ここでアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質とは、ALP6 中のアルカリ性ホスファターゼ部位と結合可能な物質をいう。具体的には、肝臓由来 ALP 、骨由来 ALP 等のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ(TNSALP)に結合可能な物質を例示できる。ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ(TNSALP)は、通常、遺伝子 1P34-36.1 から発現する蛋白質を指すが、一般的には、肝型 ALP(ALP2)、骨型 ALP(ALP3)、腎臓型 ALP、白血球型 ALP を例示できる。TNSALP に結合可能な物質としては、TNSALP に対する抗体が好ましく挙げられる。抗体としては、抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもよい。ALP6 を正確に測定するためには、TNSALP に特異的なモノクローナル抗体であることが好ましい。具体的には、後述する参考例1に示すように、同じ酵素活性量の小腸型、胎盤型、肝臓型および骨型 ALP と反応させた時に、小腸型 ALP と反応する ALP 酵素活性値と胎盤型 ALP と反応する ALP 酵素活性値との和が、肝臓型 ALP と反応する ALP 酵素活性値と骨型 ALP と反応する ALP 酵素活性値との和の 1/10 以下である抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体が好ましい。特に、骨型 ALP と反応する ALP 酵素活性値が、肝臓型 ALP と反応する ALP 酵素活性値の 0.7 以下である抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体が更に好ましい。本発明に使用可能な抗ヒト TNSALP 抗体としては、本発明者が確立し製造法を後述する製造例1で示すモノクローナル抗体 3-29-3R や 2C5-32 および 1A5-7 を例示でき(特開 2004-33385 号公報)、モノクローナル抗体 3-29-3R および 2C5-32 が好ましい。また、HLMS−1、HLMS−2、HLMS−3、HLMS−4(以上、特開平 2-35098 号公報 )等のモノクローナル抗体も好ましく、それらと類似している既知の抗 TNSALP モノクローナル抗体も使用可能である。
以上に記載した、例えば TNSALP あるいは IgG1 に対する抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体は、それ自体周知の方法により調製することができる。IgG1 に対する抗血清、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体は、市販品を利用することもできる。
ELISA 法により、抗原抗体反応した結合物のレベルを求めるためには、抗 IgG1 モノクローナル抗体などの免疫グロブリン部位認識物質としては、標識された免疫グロブリン部位認識物質を用いることが好ましい。標識法としては、通常、免疫測定法で標識に使用できるものであれば、とくに限定しないが、ペルオキシダーゼ等の酵素、放射線同位元素、蛍光物質、磁性物質、コロイドなどでもよい。
この乗法値を利用する測定方法において、検体中のヒト TNSALP 活性を求めるには、検体中のヒト TNSALP をヒト TNSALP に反応する抗体と抗原抗体反応させ、次いで、抗原抗体反応したヒト TNSALP を、アルカリ性ホスファターゼ用酵素基質と反応させ、反応した酵素活性のレベルから、検体中のヒト TNSALP 活性を求めることにより実施できる。アルカリ性ホスファターゼ用酵素基質としては、通常用いられる基質を用いることができる。例えば、フェニルリン酸などの発色基質を、抗原抗体反応したヒト TNSALP と酵素反応させて発色させ、吸光度を測定することにより、検体中のヒト TNSALP を求めることができる。
膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質としては、前記した各種の糖系非イオン性界面活性剤を用いることができる。これらの界面活性剤は、通常用いられる緩衝液に溶解させた形態で、キットに含ませることができる。
標識を検出するための成分とは、抗体が標識されたものを測定するための成分で、標識がビオチンの場合、ペルオキシダーゼ標識ストレプトアビジン、テトラメチルベンジジンのペルオキシダーゼ酵素基質、及び過酸化水素水を含む試薬であり、標識がペルオキシダーゼの場合、OPD (o−フエニレンジアミン)、DAB(ジアミノベンジジン)、TMB(テトラメチルベンジジン)等のペルオキシダーゼ基質を含む試薬である。このキットには、必要に応じ、洗浄剤液含んでもよい。本発明において、このキットを使用するときは、検体中の ALP6 を一次抗体に結合させた後、固相支持体に吸着しなかった成分を除去するために、洗浄液を含むことが好ましい。洗浄液としては、例えば、界面活性剤を含むトリス緩衝液を使用することができる。さらに、本発明のキットには、必要に応じ、検体希釈液を加えて含むこともできる。検体希釈液としては、例えば、トリス等緩衝液を使用できる。その緩衝液には、必要に応じて、EDTA・2Na 等のキレート剤、食塩等の無機塩を加えてもよい。
実施例1〜6および比較例1〜4
ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動によるアルカリ性ホスファターゼ6の測定
ポリアクリルアミドゲルディスク電気泳動法で、ALP1 および ALP6 が陽性だったヒト血清を用い血清中に糖系非イオン性界面活性剤を添加し、それをディスク電気泳動で泳動し膜結合型 ALP(ALP1)の分解を確認した。また、ELISA 法により OD 値の変化も確認した。以下に詳述する。
各種の糖系非イオン性界面活性剤を用い、それぞれを 10mM Tris 緩衝液(pH 7.5)で 10 % の濃度になるように溶解した。それぞれの 10 % 界面活性剤溶液及び 10 mM Tris 緩衝液(pH 7.5)50 μL にヒト血清 200 μL を加えよく攪拌し、それを検体としディスク電気泳動を行なった。ディスク電気泳動は ALP アイソザイム検出キット「アルフォー」(常光)を用いた。電気泳動の結果を表1と図1に示す。
ALP6 測定に用いる抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体 3-29-3R の製造
ALP6 測定に用いる TNSALP モノクローナル抗体 3-29-3R は、特開2004−333385号公報に記載する方法により製造した。
(1)モノクローナル抗体作製用抗原の選択と準備
本発明者らは抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体作成のための抗原として、TNSALP を発現していることが知られているヒト骨芽細胞株 Saos-2 由来の ALP を精製した。以下に精製法を述べる。
Saos-2(HTB-85)は ATCC(American Type Culture Collection)より入手し、10 % 牛胎児血清(FCS)を含むα-MEM(大日本製薬)にて培養した。80 % 程度細胞がコンフルーエントになったら、50 mM トリス緩衝液(pH 7.5)にて 3 回デイッシュを洗浄し、0.5 % アデカトール SO-135 を含む 50 mM トリス緩衝液(pH 7.5)を加えた。ラバーポリスマンを使用して上記細胞を回収し、氷上にて超音波ホモジナイザーにて1分間ホモジナイズした。その細胞破砕液を遠心分離(22,000 rpm 30 min RT)操作してその上清を 40 % 硫安分画した。遠心分離(10,000 rpm 30 min RT)を行って、その上清に硫安を追加溶解して 60 % 硫安となるように調整し再分画を行った。この 40-60 % 硫安分画沈殿を 50 mM トリス緩衝液(pH 7.5)に再溶解して 50 mM トリス緩衝液(pH 7.5)に対して透析した。透析済みサンプルを DEAE カラム(アマシャムバイオサイエンス社)にアプライし、吸着したタンパク質は NaCl を含む上記トリス緩衝液の直線濃度勾配(0-0.5 M NaCl)で溶出した。
ピークの ALP 活性は日立 7150 自動分析装置を使用して、N−アッセイ ALP −LS 試薬(日東紡)を用いて測定した。活性のあったフラクションは限外ろ過法によって濃縮し、S-300 カラム(アマシャムバイオサイエンス)によって精製した。この活性フラクションを先の DEAE と同様に濃縮して SDS-PAGE により確認するとほぼ TNSALP がメジャーになっており、これを免疫用抗原として使用した。
精製 TNSALP を 1 mg /mL となるように 50 mM トリス酸緩衝液(pH 7.5)で希釈し、50μg(50μL)をとってフロインド完全アジュバンド(WAKO)50μL と乳化するまでよく混和した。調製した懸濁液を Balb/c 6 週齢雌マウス(日本クレアー)にジエチルエーテル麻酔下にて腹腔内投与した。2 週間後には同量の TNSALP (50μg/mL)をフロインド不完全アジュバンド(和光純薬)と混和してフロインド完全アジュバンドの時と全く同様の操作により乳化懸濁液とし、それぞれマウスに感作した。以降 2 週間後に同様の操作を行い、4 回目には最終免疫として TNSALP 50μg/mL を 50 mM トリス酸緩衝液(pH 7.5)で調製しマウス尾静脈注射により投与した。
最終免疫より 3 日後に TNSALP により感作済みのマウスよりジエチルエーテル麻酔下に外科的摘出された脾臓を無菌的に分散し脾臓細胞を調製した。融合はケーラーとミルスタインの方法(Nature.256,495.1975)に従って行われ、ポリエチレングリコール(PEG4000)(メルク社)を用いて脾細胞と骨髄腫細胞 P3-X63-Ag8-U1(P3U1)を融合した。その融合比率は脾臓細胞数 10×107個に対して骨髄腫細胞 P3-X63-Ag8-U1(P3U1)2×107個で、5:1 であった。融合細胞は10 % FCS(インビトロジェン)α−MEM(アーバイン)HAT(コスモバイオ)培地に分散し 96 穴マイクロタイターカルチャープレート(住友ベークライト)に分注して 37 ℃、5 % CO2条件にて培養した。
約 2 週間後にコロニーの生育を確認してスクリーニングを実施した。スクリーニングの実施法を以下に述べる。
スクリーニング用プレートを作製するために上記(1)にて精製した TNSALPを 50 mM トリス酸緩衝液中に溶解し、0.5μg/100μL/well となるように 96 穴ウエル(ヌンク社)に分注した。プレートを 4 ℃で 2 晩静置した後に 0.05 % Tween 20 を含むトリス緩衝液で 3 回洗浄し、非特異的反応を抑えるために1.5 % BSA 溶液を 200μL 分注して、更に4 ℃で 1晩静置した。完成したプレートを 0.05 % Tween20 を含むトリス緩衝液で 3 回洗浄した後に培養上清 100μL を反応させ、更に洗浄を行った後に二次抗体である HRP 標識抗マウスイムノグロブリン抗体(ザイメッド社)を加えて反応させた。洗浄後に HRP の発色基質である 3 mg/mL o−フェニレンジアミン(OPD)(ナカライテスク社)クエン酸発色溶液を 100μL 加えて一定時間の発色後、1 N 硫酸を停止液として更に 100μL 添加し、測定波長 492 nm にて吸光度を測定した。上記のようにして陽性になったクローンは限界希釈法によって再クローニングされ上清を再度チェックした。
ELISA によって精製 TNSALP との反応性を確認し、クローン 3-29-3R が TNSALP を認識したものとして選択した。得られたモノクローナル抗体のクラスは IgG1 であり、軽鎖はκであった。
上記(5)で得られたハイブリドーマ 3-29-3R 細胞 1×107 細胞個をプリスタン(アルドリッチ社)0.5 mL 投与後 2 週間の Balb/c マウス(日本クレアー社)、10 週齢、雌性に腹腔内投与し、約 2 週間後にマウス腹腔内に貯留した腹水をジエチルエーテル麻酔下にて外科的に採取した。スクリーニングで行った ELISA 法により、腹水をサンプルとして段階希釈して確認すると高濃度のモノクローナル抗体が含まれていた。この腹水を硫安 40 % で処理し、PBS に透析した後、プロテイン G カラム(アマシャムバイオサイエンス社)により精製して SDS-PAGE により確認した。その結果 3-29-3R は非還元では分子量約 150,000 に単一の、メルカプトエタノール還元では分子量約 50,000 のバンドと 25,000 の2 本のバンドが確認された。精製されたモノクローナル抗体 3-29-3R はマウス 1 匹あたりそれぞれ約 10 mg 以上であって工業的利用を行うには十分量であった。
ハイブリドーマ 3-29-3R は、平成 15 年 4 月 16 日に工業技術院生命工学工業技術研究所に、受託番号 FERM BP-8360 として寄託されている。
抗ヒト TNSALP モノクローナル抗体の特異性検定
モノクローナル抗体 3-29-3R の特異性を調べるためにさまざまなアイソザイム(Saos-2 由来 TNSALP、肝型 ALP(常光)、骨型 ALP(常光)、小腸型 ALP (常光)、胎盤型 ALP (シグマ社)を用いて下記の実験を行った。測定方法は以下のとおりである。
固層プレート(ヌンク社)上に精製したモノクローナル抗体を 2μg/100 μL PBS/well になるように分注し、4 ℃で 2 日間静置した。0.05 % Tween 20 を含む20 mM トリス緩衝液(pH 7.0)洗浄液にて 3 回洗浄した後、1.5 % BSA トリス緩衝液(pH 7.0)を200μL 加えて 4 ℃で一晩ブロッキングした。このようにして作製したプレートを先の洗浄液で 1 回洗浄して、各種アイソザイムを反応させた。アイソザイムの酵素活性は Kind-King 変法(ホルマザン法,日東紡 N−テスト ALP K−K キット使用)試薬を用いて測定し、全て 25 IU/L にあわせてその 100μL を抗体結合プレート上に加えた。室温で 2 時間反応させ、反応終了後、前出の洗浄液にて 3 回洗浄して Kind-King 変法(ホルマザン法)に従い酵素活性を測定した。すなわち、抗体プレートに結合した ALP に、100μL の基質溶液(フェニルリン酸二ナトリウムと4−アミノアンチピリン溶液とを含む溶液)を加えて、37 ℃、1 時間反応させて、抗体が捕らえた ALP 酵素と合成基質とで酵素反応させ、ついで、得られる混合物に発色試薬(メタ過ヨウ素酸ナトリウムを含む溶液)を加えて発色させ、492 nm で吸光度を測定した。なお、このとき、ALP を入れないで同様に操作して得られるブランク値を求め、各測定値からブランク値を差し引いた値が抗体に対する各 ALP の活性値となる。
その結果、抗体 3-29-3R の各種 ALP に対する活性値は、Saos-2 TNSALP では0.033、肝臓型では 0.371 、骨型では 0.184 、小腸型では 0.011、胎盤型では 0であった。
抗体 3-29-3R は、Saos-2 由来 TNSALP、肝型、骨型としか反応せず、他アイソザイムとの交差反応性を殆ど示さないことからヒト TNSALP に特異性の高いモノクローナル抗体であることがわかった。すなわち、抗体 3-29-3R は、TNSALP に特異的、例えば、小腸型 ALP 活性値と胎盤型 ALP 活性値との和が、肝臓型 ALP活性値と骨型 ALP 活性値との和の 1/10 以下であることが判明した。
なお、モノクローナル抗体3-29-3R の 25 IU/L における肝型、骨型反応比率(肝:骨反応比率)は、1:0.50 であった。
本発明の ALP6 測定による虚血性腸疾患の診断
(1)使用した検体と糖系非イオン性界面活性剤
検体としては、インフォームド・コンセントを行った健常人ボランティア検体32 検体及び虚血性腸疾患患者検体 44 検体を用い、2 % 糖系非イオン性界面活性剤を添加したもの及び無添加のものを用いた。糖系非イオン性界面活性剤としては、スクロースモノラウレートを使用した。
(2)TNSALP 値の測定
TNSALP 値は、以下のようにして求めた。上記方法によって作製、精製されたモノクローナル抗体 3-29-3R を製造例1と全く同様の方法で Nunc 社製プレートに 2μg/100μL PBS で分注、ブロッキングして抗体結合プレートを作製した。使用前にそのプレートを、0.05 % Tween 20 を含む 100 mM トリス緩衝液(pH 7.5)200μL で 1 回洗浄し、界面活性剤添加または無添加のヒト血清検体 10 μL と 100 mM トリス緩衝液(pH 7.5)90 μL を加えて室温、1 時間反応させた。反応終了後、そのプレートを 0.05 % Tween 20 を含む 100 mM トリス緩衝液(pH 7.5)200μL で 3 回洗浄した。次いで、そのプレートに 100 μL の N テスト ALP Kind-King 試薬(日東紡)の基質溶液、すなわち、フェニルリン酸二ナトリウムと 4−アミノアンチピリンを含む溶液)を加えて更に 37 ℃、pH 10 で 1 時間、酵素反応させた。さらに、その反応液に、発色試薬(メタ過ヨウ素酸ナトリウムを含む溶液)100μL を添加してその発色値を 492 nm にて比色することにより TNSALP 値を求めた。測定範囲を超える高値検体については希釈して再測定をした。
ELISA 法は、一次抗体として 3-29-3R プレートを用い、免疫グロブリ結合物質である二次抗体として、1/1600 希釈 HRP 標識抗ヒト IgG モノクローナル抗体(ザイメッド社)を用いた。まず、抗体 3-29-3R プレートを、0.05 % Tween 20 を含む洗浄液(100 mM トリス緩衝液(pH 7.5))200μL で 1 回洗浄した。次いで、このプレートに、上記で調製した界面活性剤添加または無添加のヒト血清、各 50μL と 100 mM Tris 緩衝液(pH 7.5)50μL を加えて室温、1 時間反応させた。一次反応終了後、そのプレートを、0.05 % Tween 20 を含む 100 mM トリス緩衝液(pH 7.5)200μL で 3 回洗浄し、100 μL の二次標識抗体 HRP 標識抗ヒト IgG モノクローナル抗体(ザイメッド社)を加えて更に室温、1 時間反応させた。1 時間後に洗浄液で 3 回洗浄を行い、標識 HRP に対する基質溶液(OPD 溶液)を反応させ、一定時間後に発色停止試薬 1N 硫酸 100μL を添加して反応を停止させた。その発色値を 492 nm にて比色し ELISA 法による ALP6 値を求めた。その結果を表2に示す。
乗法値法による ALP6 値を測定は、「ELISA 法による ALP6 値」と「TNSALP 値」との乗法値を計算して求めた。
糖系非イオン性界面活性剤添加の測定系の ALP6 乗法値の健常者検体による参考基準値(C.R.R 法により算出)と、それを基準に求めた虚血性腸疾患患者の陽性率の結果を表3に示す。
Claims (16)
- 検体中のアルカリ性ホスファターゼ6の測定方法において、
膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質である糖系非イオン性界面活性剤であって一般式(I)
A−B (I)
(式中、Aは、ヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤または一般式(II)
(式中、2つのAはそれぞれ同じでも異なっていてもよいヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基、m、nはそれぞれ独立に2〜5の自然数を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤により、検体中に存在する膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解して、膜結合型アルカリ性ホスファターゼの影響を無くしてもしくは低下させて、検体中のアルカリ性ホスファターゼ6を測定することを特徴とする、
検体中のアルカリ性ホスファターゼ6の測定方法。 - 糖系非イオン性界面活性剤が、n−オクチル−β−D−マルトシド、n−デシル−β−D−マルトシド、n−ヘプチル−β−D−チオグルコシド、n−オクチル−β−D−チオグルコシド、n−オクチル−β−D−グルコシド、n−ドデシル−β−D−マルトシド、n−オクタノイル−N−メチルグルカミド、n−デカノイル−N−メチルグルカミド、スクロースモノカプレート(CAS 番号 31835-06-0)またはスクロースモノラウレート(CAS 番号 25339-99-5)である請求項1の測定方法。
- 糖系非イオン性界面活性剤が、N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)コール酸アミド(CAS 番号 86303-22-2)または N,N−ビス(3−D−グルコンアミドプロピル)デオキシコール酸アミド(CAS 番号86303-23-3)である請求項1の測定方法。
- 電気泳動法または ELISA 法により、アルカリ性ホスファターゼ6を測定する請求項1から3のいずれかの測定方法。
- 検体中のアルカリ性ホスファターゼ6の測定方法であって、
膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質である糖系非イオン性界面活性剤であって一般式(I)
A−B (I)
(式中、Aは、ヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤または一般式(II)
(式中、2つのAはそれぞれ同じでも異なっていてもよいヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基、m、nはそれぞれ独立に2〜5の自然数を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤により、検体中に存在する膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解して、膜結合型アルカリ性ホスファターゼの影響を無くしてもしくは低下させて、検体中のアルカリ性ホスファターゼ6と、アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分であるアルカリ性ホスファターゼ部位を認識するアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質であってヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼと結合可能な物質である抗ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼモノクローナル抗体と、アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する免疫グロブリン部位認識物質とを反応させ、得られるアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質とアルカリ性ホスファターゼ6と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルからアルカリ性ホスファターゼ6を測定することを特徴とする、
アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法。 - 免疫グロブリン部位認識物質が、免疫グロブリンと結合可能な物質である請求項5の測定方法。
- 免疫グロブリンと結合可能な物質が、抗ヒト免疫グロブリンモノクローナル抗体である請求項6の測定方法。
- 検体中のアルカリ性ホスファターゼ6の測定方法であって、
膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質である糖系非イオン性界面活性剤であって一般式(I)
A−B (I)
(式中、Aは、ヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤または一般式(II)
(式中、2つのAはそれぞれ同じでも異なっていてもよいヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基、m、nはそれぞれ独立に2〜5の自然数を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤により、検体中に存在する膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解して、検体中に存在する膜結合型アルカリ性ホスファターゼの影響を無くしてもしくは低下させて、検体中のアルカリ性ホスファターゼ6とヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体とを抗原抗体反応させ、次いで、得られる抗原抗体反応物と、アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する免疫グロブリン部位認識物質とを反応させ、得られるヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体とアルカリ性ホスファターゼ6と免疫グロブリン部位認識物質との結合物のレベルからアルカリ性ホスファターゼ6を測定することを特徴とする、
アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法。 - 免疫グロブリン部位認識物質が、免疫グロブリンと結合可能な物質である請求項8の測定方法。
- 免疫グロブリンと結合可能な物質が、抗ヒト免疫グロブリンモノクローナル抗体である請求項9の測定方法。
- 検体中のアルカリ性ホスファターゼ6の測定方法であって、
i)膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質である糖系非イオン性界面活性剤であって一般式(I)
A−B (I)
(式中、Aは、ヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤または一般式(II)
(式中、2つのAはそれぞれ同じでも異なっていてもよいヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基、m、nはそれぞれ独立に2〜5の自然数を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤により、検体中に存在する膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解して、膜結合型アルカリ性ホスファターゼの影響を無くしてもしくは低下させて、検体中のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼをヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼに反応する抗体と抗原抗体反応させ、次いで、抗原抗体反応したヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼを、アルカリ性ホスファターゼ用酵素基質と反応させ、反応した酵素活性のレベルから、検体中のヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ活性を求め、
ii)上記 i)とは独立に、請求項5から9のいずれかの方法により検体中のアルカリ性ホスファターゼ6のレベルを求め、
iii)上記 i)で得られるヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼ活性値と上記 ii)で得られるアルカリ性ホスファターゼ6のレベル値との乗法値を求め、その乗法値から検体中のアルカリ性ホスファターゼ6の量を求める、
ことを特徴とする、
アルカリ性ホスファターゼ6の測定方法。 - 虚血性腸疾患を診断するための請求項1から11のいずれかの測定方法。
- 検体中のアルカリ性ホスファターゼ6を測定するためのキットであって、
i)固相支持体、
ii)アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分であるアルカリ性ホスファターゼ部位を認識するアルカリ性ホスファターゼ部位認識物質であってヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼと結合可能な物質である抗ヒト臓器非特異型アルカリ性ホスファターゼモノクローナル抗体、
iii)アルカリ性ホスファターゼ6の構成成分である免疫グロブリン部位を認識する、標識された免疫グロブリン部位認識物質、
iv)標識を検出するための成分、および
v) 膜結合型アルカリ性ホスファターゼを分解するがアルカリ性ホスファターゼ6を分解しない物質である糖系非イオン性界面活性剤であって一般式(I)
A−B (I)
(式中、Aは、ヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤または一般式(II)
(式中、2つのAはそれぞれ同じでも異なっていてもよいヒドロキシを1つ除いた糖残基、Bは疎水性置換基、m、nはそれぞれ独立に2〜5の自然数を表す)
で表される糖系非イオン性界面活性剤
を含むキット。 - 免疫グロブリン部位認識物質が、免疫グロブリンと結合可能な物質である請求項13のキット。
- 免疫グロブリンと結合可能な物質が、抗ヒト免疫グロブリンモノクローナル抗体である請求項14のキット。
- 虚血性腸疾患診断用である、請求項13から15のいずれかのキット。
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