JP3251848B2 - ヒト酸化リポタンパク質の測定法およびこれに用いられる標準物質 - Google Patents

ヒト酸化リポタンパク質の測定法およびこれに用いられる標準物質

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JP3251848B2 JP09870896A JP9870896A JP3251848B2 JP 3251848 B2 JP3251848 B2 JP 3251848B2 JP 09870896 A JP09870896 A JP 09870896A JP 9870896 A JP9870896 A JP 9870896A JP 3251848 B2 JP3251848 B2 JP 3251848B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒト酸化リポタン
パク質の測定法およびこれに用いられる標準物質に関す
るものである。詳しく述べると、本発明は、血液成分を
酸化リン脂質を認識する抗体と接触させ、該抗体の試料
に対する反応性を測定することによって血液成分中に含
まれる酸化リポタンパク質を測定することを特徴とする
血液中のヒト酸化リポタンパク質の測定法およびこれに
用いられる標準物質に関するものである。本発明はま
た、上記測定法を用いて心筋梗塞や狭心症などの冠動脈
系疾患、脳梗塞や脳血管系痴呆などの脳動脈系疾患、あ
るいは腎症、糖尿病性腎症などの腎動脈系疾患および末
梢動脈閉塞症のような末梢動脈系疾患などの各種循環器
系疾患を診断する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】動脈硬化症は大動脈、冠状動脈、脳動脈
及び頚動脈などの筋型動脈に多く発生し、狭心症、心筋
梗塞、脳梗塞などの主因となる疾患である。その原因と
して血清コレステロールの上昇、血小板凝集、内皮傷害
などが提唱されているが、その成因はほとんど解析され
ていないのが現状である。
【0003】変性リポタンパク質の一つである酸化リポ
タンパク質と粥状硬化病巣の進展との関連性が、スタイ
ンバーグ(Steinberg) らにより指摘されて以来、動脈硬
化の進展における酸化リポタンパク質の問題は脚光を浴
びるようになっている(例えば Steinberg,D., Partha
sarathy,S., Carew,T.E., Khoo,J.C., and Witztum,J.
L.,(1989) N. Engl. J. Med. 320:915 )。
【0004】スカベンジャー受容体など酸化を受けたリ
ポタンパク質に対する受容体の存在が明らかにされ、酸
化LDL が、これらの受容体を介して細胞内に取り込まれ
ることによって、泡沫細胞となり粥腫形成のイニシエー
ションが起こるという仮説、また酸化LDL が内皮細胞を
傷害することで、血小板の粘着凝集や、白血球の集結、
血漿成分の血管内への浸潤がおこり、これらが引き金に
なって、平滑筋細胞の遊走や増殖を引き起こすといった
仮説が提唱されている。
【0005】酸化LDL が病巣に確かに蓄積しているかど
うかについては、例えば1988年にハーバーランド(Haber
land) 等がマロンジアルデヒドで修飾したLDL に対する
抗体;抗MDA-LDL 抗体により動脈硬化病巣部が染色され
ることを示し(Herberland,M. E., Fong ,D., and Chen
g, L., (1988) Science 241:215)、また1989年にイラ
−ハーテュアラ(YLa-Herttuala) 等は、やはり抗MDA-ap
oB抗体によるイムノブロッティング法により、病巣部か
ら抽出されたアポB(apoB)を検索し、酸化変性を受けた
LDL が確かに病巣部から抽出されたと報告している(Yl
a-Herttuala ,S., Parinski ,W., Rosenfeld, M. E., P
arthasarathy, S., Carew, T. E., Butler, S., Witztu
m, J. L., and Steinberg, D., (1989) J. Clin. Inves
t. 84:1086)。しかしここで用いられた抗体はマロンジ
アルデヒドを用いて人工的に修飾したLDL を抗原として
得られたものであるが、LDL の酸化生成物だけでなく他
の酸化蛋白、例えば酸化アルブミンなどとも交叉反応を
示すという性質を有している。
【0006】しかるに、粥状硬化病巣のホモジネートを
抗原としてハイブリドーマを作成し、その中から、酸化
LDL を特異認識する抗体を産生するハイブリドーマを選
択すると、特異性の高いモノクローナル抗体が得られる
ことが開示されている(Itabe, H., Takeshima, E., Iw
asaki, H., Kimura, J., Yoshida, Y., Imanaka, T.,Ta
kano, T., (1994) J. Biol.Chem. 269 (21):15274) 。
この抗体は、クローンFOH1a/DLH3が産生することから、
FOH1a/DLH3と名付けられているが、同抗体が、酸化リポ
タンパク質と特異的に反応し、正常なリポタンパク質、
マロンジアルデヒド化LDL 、アセチル化LDL などとは、
交叉反応を示さないことや、同抗体の認識するエピトー
プは、リポタンパク質の構成成分であるフォスファチジ
ルコリンというリン脂質が酸化されたときに生成するこ
とが開示されている。また、同抗体が、ヒト粥状硬化病
巣内の泡沫細胞を特異的に認識する抗体であることも開
示されている。
【0007】一方、これまでの研究ではLDL の酸化は、
血管組織への沈着後の二次的な化学修飾によって引き起
こされると考えられているが、炎症部位で発生する活性
酵素などにより循環血液中に酸化変成を受けたリポタン
パク質が存在する可能性もある。実際に、ヒト血液ある
いはそのLDL 画分から脂質を抽出し、その中に過酸化リ
ン脂質の存在を立証し、心虚血、糖尿病や肝炎などの疾
患時に上昇するとする報告がある(Miyazawa, T., (198
9) Free Radical Biology 7: 209、Hodis, H.N., Krams
ch, D. M., Avogaro, P., Bittolo-Bon, G., Cazzolat
o, G., Hwang,J., Peterson, H., and Sevanian, A.,
(1994) J. Lipids Res. 35: 669)。しかしながら、その
測定法は複雑であり、多数の臨床検体を測定して、血中
酸化リポタンパク質の臨床診断的な意義を明らかにする
には不向きであるため、血液中の酸化リポタンパク質と
疾病との関りについては未だ明確になっていない現状で
ある。酸化LDL が粥状効果病巣の進展と深く関わってい
るならば、循環血液中の酸化LDL 等の酸化リポタンパク
質を高感度にかつ定量的に検出することが、病態進展の
早期診断に役立つことは明らかであり、そのような方法
の開発は強く望まれていた。
【0008】上記したような問題を解決するためには、
エピトープが明確でかつ酸化LDL に対する特異性が高
く、また各種のリポタンパク質を別々に定量する方法が
必要である。本発明者らは、先に、粥状硬化病巣を抗原
として得られた抗体FOH1a/DLH3は、リン脂質の酸化によ
り生成するエピトープを認識し、酸化リポタンパク質へ
特異的に結合する性質を有することを明らかにした(特
開平7−238098号、Itabe, H., Takeshima, E.,
Iwasaki, H., Kimura, J., Yoshida, Y., Imanaka, T.,
Takano, T., (1994) J. Biol.Chem. 269 (21):15274)
)。
【0009】本発明者らは、さらにこのような抗体につ
いて鋭意研究を進めた結果、このような抗体こそが、上
記した要求される測定法を提供できる最も優れた抗体で
あることを見い出し、リン脂質の酸化により生成する抗
原を認識する抗体を用いて血漿中の酸化リポタンパク質
を測定するヒト酸化リポタンパク質の測定法を提唱した
(特願平7−106153)。特に、その抗体が、実際
に粥状硬化病巣を適当な動物に感作させて得られたもの
である場合、また、その認識するエピトープがペプチド
の共存下にホスファチジルコリンの酸化により生成する
構造に由来する場合、その効果はより確実になる。
【0010】このような抗体の抗原は、実際にヒト組織
中で起こるリポタンパク質の生成によって発現し、しか
も血漿蛋白質の中でペプチドとリン脂質を両方備えたリ
ポタンパク質の酸化によって生じる可能性が非常に高
い。ハイブリドーマFOH1a/DLH3の産生する抗体は、まさ
にその性質を備えている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】ところで、このように
リン脂質の酸化により生成する抗原を認識する抗体を用
いて血漿中の酸化リポタンパク質を測定する場合におい
て、その測定結果を定量的に評価するためには、適当な
標準物質を用意することが望まれるが、上記したような
測定法自体が新規なものであるため、このような標準物
質として如何なるものが適当であるかも当然に従来知ら
れていないものであった。
【0012】従って、本発明は、新規なヒト酸化リポタ
ンパク質の定量的な測定法およびこれに用いられる標準
物質を提供することを目的とする。本発明はさらに、比
較的簡単な手順により、循環血液中の酸化LDL 等の酸化
リポタンパク質を高感度にかつ定量的に検出するヒト酸
化リポタンパク質の測定法およびこれに用いられる標準
物質を提供することを目的とするものである。本発明は
また、血液中のヒト酸化リポタンパク質を測定すること
により、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈系疾患、脳梗塞
や脳血管系痴呆などの脳動脈系疾患、あるいは腎症、糖
尿病性腎症などの腎動脈系疾患、末梢動脈閉塞症のよう
な末梢動脈系疾患などを含む、粥状硬化症を主因とする
各種循環器系疾患を診断する方法を提供することを目的
とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記諸目的は、リン脂質
の酸化により生成する抗原を認識する抗体を用いて血漿
中の酸化リポタンパク質を測定するにおいて、リン脂質
を人工的に酸化させて得られた化合物および/または当
該化合物を血漿タンパク質へ組込んだものを測定の標準
物質として用いることを特徴とするヒト酸化リポタンパ
ク質の測定法によって達成される。
【0014】本発明はさらに、当該リン脂質を酸化して
得られた化合物が、グリセロリン脂質の2位のアシル基
にアルデヒド基が結合したものである上記測定法を示す
ものである。
【0015】本発明はさらに、当該リン脂質を酸化して
得られた化合物が、1−パルミトイル−2−(9−オキ
ソノナノイル)−グルセロ−3−ホスホコリンまたは1
−パルミトイル−2−(5−オキソバレロイル)−グル
セロ−3−ホスホコリンである上記測定法を示すもので
ある。
【0016】本発明はまた、抗体が、ペプチドの共存下
にホスファチジルコリンの酸化により生成する抗原を認
識するものである上記測定法を示すものである。
【0017】本発明はさらに、被験体の血漿および/ま
たはこれより分離したリポタンパク質画分を至適な濃度
に希釈した後、リン脂質の酸化により生成する抗原を認
識する抗体と接触させ、当該抗体と結合した酸化リポタ
ンパク質をさらに当該リポタンパク質を認識する抗体と
接触させることで測定を行い、得られた測定値を、前記
標準物質によって得られる検量線と対比することで、被
験体血液中の酸化リポタンパク質の量を定量的に求める
ものである上記測定法を示すものである。
【0018】上記諸目的はまた、リン脂質の酸化により
生成する抗原を認識する抗体を用いて血漿中の酸化リポ
タンパク質を測定するにおいて用いられる標準物質であ
って、リン脂質を人工的に酸化させて得られた化合物お
よび/または当該化合物を血漿タンパク質へ組込んだも
のからなることを特徴とする標準物質によっても達成さ
れる。
【0019】本発明はまた、当該リン脂質を酸化して得
られた化合物が、グリセロリン脂質の2位のアシル基に
アルデヒド基が結合したものである上記標準物質を示す
ものである。
【0020】本発明はさらに、当該リン脂質を酸化して
得られた化合物が、1−パルミトイル−2−(9−オキ
ソノナノイル)−グルセロ−3−ホスホコリンまたは1
−パルミトイル−2−(5−オキソバレロイル)−グル
セロ−3−ホスホコリンである上記標準物質を示すもの
である。
【0021】本発明はさらに、被験体の血漿および/ま
たはこれより分離したリポタンパク質画分を各種濃度に
希釈した検体に対し、前記標準物質を標識化してなるも
のを所定量添加し、これを、リン脂質の酸化により生成
する抗原を認識する抗体と接触させ、前記標識化標準物
質と検体中の酸化リン脂質とを競合反応させることを特
徴とする検体中の酸化リン脂質総量の測定法を示すもの
である。
【0022】
【作用】本発明においては、リン脂質の酸化により生成
する抗原を認識する抗体を用いることによって酸化リポ
タンパク質を検出する。このような抗体がリン脂質の酸
化物を抗原としていることから、本発明ではリン脂質を
化学的に酸化した後、当該抗原物質を純品まで精製した
ものを標準物質として用いるものであり、その値を当該
抗原物質量より定量的に評価することができる点で有利
である。特に、実施例に示すごとく、この標準物質は、
高純度品として得られるリン脂質を化学反応により酸化
し、抗原性を持つ酸化物を純品として精製した後に、リ
ポタンパク等の血漿タンパク質に組込んで作成できるた
め、当該血漿タンパクに対する各種抗体の特異性を維持
しながら、単一性、再現性が確保された標準品を得るこ
とができるという点で重要である。
【0023】他の酸化リポタンパク質に対する抗体、例
えば酸化リポタンパク質のタンパク部分の酸化物をエピ
トープとして認識する抗体を用いて酸化リポタンパク質
を検出する場合、このような標準品は作成困難である。
なぜならば、これらの抗体の認識するエピトープはリポ
タンパクのポリペプチド鎖の一部として共有結合により
結びつけられており、それ自体を合成・単離・精製した
後に当該リポタンパク質に組込むことは困難だからであ
る。従ってこのようなエピトープを認識する抗体を用い
た場合、標準物質としては、当該リポタンパク質そのも
のを例えば銅イオン存在下で酸化するか、あるいは、リ
ポタンパク質中あるいは単独の特定のアミノ酸を化学修
飾したものを合成して用いることとなる。いずれにせよ
リポタンパク質そのものを反応させた場合、反応するア
ミノ酸は多数あり、その反応は複雑で、反応が進みすぎ
るとタンパク質そのものが分解されてしまうために、反
応の程度を調節して再現性のある酸化物を得ることや、
まして生成物を分離精製して単一性のある標準物質を精
製することは不可能である。また特定のアミノ酸を修飾
して標準品とする場合単一性の確保された標準品は得ら
れるが、それを当該リポタンパク質へ組込むことはでき
ないため、リポタンパク質に特異性を持つ抗体の当該標
準物質に対する特異性は確保できない。
【0024】なお、上記したようなリン脂質の酸化によ
り生成する抗原を認識する抗体を用いて測定する場合、
血漿および/または血清を直接抗体と接触させることで
目的は達成され、得られたデータを前記標準物質によっ
て得られる検量線と対比することによって、測定結果を
その抗原量として表示することができるが、後述するサ
ンドイッチELISA法などを用いる場合、その測定法
に起因する非特異的な吸着などを防ぐため、前もって試
料を適当な方法(例えば、超遠心分離)により、あらか
じめリポタンパク質画分まで分画して用いてもよい。
【0025】また、このような抗体は、その認識するエ
ピトープがアポ蛋白に依存しないため、血液中の異なる
リポタンパク質の酸化物を別々に評価するための方法を
提供することができる。このためには、酸化リン脂質特
異抗体と当該リポタンパク質特異的な抗体の2種類の組
み合わせによることが必要である。この際、どちらかの
抗体をプラスチックプレートやガラスビーズなどの平板
状または球状等の担体に固相化した、いわゆるサンドイ
ッチELISA法とするのが簡便である。
【0026】この際、どちらかの抗体を固相化するかに
制限はないが、酸化リン脂質を認識する抗体の抗体価が
高い場合、そちらを固相化した方が抗原を濃縮でき、高
感度化できる点で有利である。実施例には、ハイブリド
ーマFOH1a/DLH3の産生する抗体を固相化して作製したE
LISA法の例を示すが、本発明がこの実施例に限定さ
れるものではないことはいうまでもないことである。
【0027】さらに、本発明に係る標準物質を用いるこ
とにより、競合阻害試験法に基づき酸化リン脂質を定量
することができる。すなわち、前記標準物質にビオチ
ン、酵素、放射性同位元素、色素等の標識を結合し、こ
れを検体(血漿)に添加したものを固相化抗体に適用
し、検体中の酸化リン脂質と競合反応させることにより
検体中の酸化リン脂質を測定するものである。
【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施態様に基づき
より詳細に説明する。本発明の測定法は、被験体の血液
成分を上記したようなリン脂質の酸化により生成する抗
原を認識する抗体と接触させ、該抗体と特異的に反応し
た抗原量を、標準物質によって得られた検量線を用い
て、定量することにより、血液中に含まれる酸化リポタ
ンパク質を測定することを特徴とするものである。測定
は、RIA法、ELISA法、イムノブロット法、免疫
沈降法等の公知の方法に基づき行なうことができる。
【0029】さらに、前記したように本発明に係る上記
したようなリン脂質の酸化により生成する抗原を認識す
る抗体が認識するエピトープがアポ蛋白に依存しないた
め、当該リポタンパク質に特異的な抗体を組合せること
により、血液中の異なるリポタンパク質の酸化物を別々
に評価することできる。このようなリポタンパク質に特
異的な抗体としては、特にカイロミクロン、VLDL、LDL
、HDL2、HDL3、Lp(a)などの1つないし2つ以上を認識
する抗体を用いることができる。特にこの中で、酸化LD
L の評価は、酸化LDL と粥状硬化症との関連から重要で
あるが、これに加えて最近、動脈硬化の独立した危険因
子として注目されているLp(a) (例えば、Scanu,A.M.,L
awn,R.M.,and Berg,K.,(1991) Lipoprotein(a) and ath
erogenesis, Ann, Int. Med. 115:209-218) の酸化変成
の有無を評価することは重要である。これらのリポタン
パク質に対する抗体は市販品として、あるいは公知の手
法により容易に入手ないし調製可能である。このように
血液中の異なるリポタンパク質の酸化物を別々に評価す
る場合には、上記したような酸化リン脂質特異抗体とリ
ポタンパク質特異抗体のいずれか、望ましくは抗体価が
高い方を、平板状または球状等に固相化することが望ま
しく、特にサンドイッチELISA法を用いることが好
ましい。例えば、固相化において用いられる担体として
は、多穴プレートなどのプレートやビーズといったこれ
らの分野において常用されるプラスチック製ないしガラ
ス製の器具等が例示できる。
【0030】被測定試料としての血液成分は、被験体よ
り採血、好ましくはヘパリン等の抗凝固剤を添加して採
血して得た血液試料を、遠心分離法等の常法に基づき成
分分離して得られた血漿ないし血清成分である。また、
測定法に起因する非特異的吸着を抑制し、より高精度の
測定とするために、この血漿成分をさらに超遠心分離に
より分離してリポタンパク質画分としてもよい。
【0031】また、測定に当っては、このような血漿お
よび/またはリポタンパク質画分を、至適な濃度に希釈
する。その濃度は測定条件によっても左右されるため一
概には規定できないが、例えば、0〜500μg/m
l、より好ましくは0〜100μg/mlへと希釈す
る。希釈媒体としては、特に限定されるものではない
が、例えば、生理食塩水、EDTAを含むリン酸緩衝液
(PBS)等が用いられ得る。
【0032】至適な濃度とされた血漿および/またはリ
ポタンパク質画分と酸化リン脂質特異抗体との接触は、
このような血液成分中に含まれる酸化リン脂質と酸化リ
ン脂質特異抗体との特異的反応が十分に進行するもので
あればよく特に限定されるものではないが、例えば、4
〜30℃、より好ましくは25℃の下、1〜24時間、
より好ましくは1〜2時間程度静置反応させることが望
ましい。また、その際の酸化リン脂質特異抗体の濃度と
しては、血液試料中に存在すると思われるリン脂質の量
よりも十分に過飽和な量であればよく、またこの抗体の
抗体価、測定方法のタイプによっても左右されるが、例
えば、血漿1μl当りに存在する酸化LDL 量が0〜1n
g程度であると想定される場合にあって、酸化リン脂質
特異抗体として後述するようなDLH3抗体を用いる場
合、当該血漿1μl当りに0.2〜1.0μg、より好
ましくは0.5μg前後であることが望ましい。
【0033】次に本発明の測定法において用いられるリ
ン脂質の酸化により生成する抗原を認識する抗体につい
て詳述する。このような抗体を得る方法としては、特に
限定されるものではないが、好ましくは以下に述べるよ
うに粥状硬化病巣を適当な動物に感作する方法であり、
一般的な細胞融合法に基づき次のような手法により得ら
れるハイブリドーマセルラインにより産生される。
【0034】ハイブリドーマ作製に用いられる動物種と
しては、特に限定されるものではなく、従来使用されて
いるマウス、ラット、ハムスター等が使用可能である
が、特に入手および取扱いの容易性からBalb/cマ
ウスが好ましく、主にこれらの動物の脾細胞が用いられ
る。また、ヒトのリンパ節細胞や末梢リンパ球を用いる
こともできる。
【0035】これらの動物に対する免疫用の抗原は、粥
状硬化病巣より調製される。例えば、動脈硬化症患者の
死亡直後における剖検あるいはバイパス手術等において
取出された病変血管を入手し、この病変血管から粥状硬
化病巣を含む血管部を切出し、緩衝液中で血管外膜部を
剥離除去した後、病巣の内膜と中膜部(intima and med
ia) をホモジナイザーを用いて冷却下、好ましくは氷冷
下にホモジナイズし、静置後得られる上清を抗原液とす
る。さらに必要に応じて、静置後に遠心処理を行ない、
得られたペレットに緩衝液を加えて同様の操作を行な
い、得られる上清を前の上清と合せて抗原液とすること
もできる。このようにして調製された抗原液は、例えば
アルゴン等の不活性ガスで置換の後、使用直前まで凍結
保存することが望ましい。
【0036】次いで、このようにして調製された粥状硬
化病巣のホモジェネートからなる抗原を、所定蛋白(抗
原)濃度として、前記したような動物種に免疫する。な
おこの際、必要に応じて、フロイント完全アジュバン
ト、フロイント不完全アジュバント等のアジュバントを
添加してもよい。
【0037】投与量は、動物種によって左右されるが、
マウスの場合、初回免疫で2.0〜60μg(蛋白)/
匹、より好ましくは40μg(蛋白)/匹程度である。
【0038】さらに、初回免疫の後、例えば、2週間お
よび4週間程度の間隔で、初回免疫と同量ないしそれ以
下の蛋白量で、追加免疫を行なうことが望ましい。
【0039】最終免疫の後、2〜3日後に免疫動物から
採血し、ELISA(enzyme-linkedimmunosorbent assa
y) 法、イムノブロット法等の検定法により、血清抗体
価上昇の確認を行ない、抗体価上昇の認められた免疫動
物をスクリーニングする。
【0040】スクリーニングされた免疫動物から脾細
胞、あるいはリンパ節などから抗体産生細胞を採取し、
約37℃に加温したRPMI培地、DMEM培地等の維
持培地で洗浄、懸濁し、生細胞数を計測する。
【0041】一方、HGPRT(hypoxanthine-guanine
phosphoribosyl transferase) 欠損株の腫瘍細胞を、胎
児ウシ血清(FCS)添加RPMI培地、FCS添加DME
M培地等の増殖培地において増殖させ、対数増殖期にな
るように培養しておく。なお、HGPRT 欠損株の腫瘍細胞
としては、例えば、P3/X63-Ag8(X63) (カッコ内は略名
以下同じ)、P3/NSI-1-Ag4-1(NS-1)、P3/X63-Ag8.U1
(P3/U1)、Sp2/O-Ag14(Sp2/O) 、FO、210.RCY3.Ag 1.2.
3.(Y3)、U-266AR1(SKO-007) 、LICR-LON-HMy2(HMy2) 、
8226AR/NIP4-1(NP41)などの公知の腫瘍細胞を、使用す
る動物種に応じて用いることができる。対数増殖期にあ
る腫瘍細胞を、前記抗体産生細胞の細胞数に対して腫瘍
細胞の細胞数が1:1〜1:10となるように調整し、
約37℃に加温したRPMI培地、DEME培地等の維持培地で
洗浄して細胞融合を阻害するFCS 成分を除去する。
【0042】そして、細胞数を調整された抗体産生細胞
と腫瘍細胞を、例えばガラスチューブ等の容器内で混和
し、遠心してペレットを得、上清をなるべく除去する。
なお、この操作を含めて以下の操作は、20〜37℃、
より好ましくは約37℃の温度条件下で行なうことが望
ましい。
【0043】次いで、得られたペレットに対して、0〜
37℃、より好ましくは約37℃に加温された細胞凝集
性媒体を、ペレットをほぐしながら、ゆっくりと添加す
る。細胞凝集性媒体としては、ポリエチレングリコール
(PEG)、リゾレシチン、グリセロールオレイン酸エ
ステルなどの化合物、あるいは不活化されたセンダイウ
ィルス(HVJ)、麻疹ウィルス、ニューカッスル病ウ
ィルス等のパラミクソウィルスなどが使用可能である
が、このうち特にPEG が好ましい。PEG を使用する場合
には、例えば、RPMI培地、DMEM培地等で、その平均分子
量にもよるがPEG4000 の場合は45〜50重量%程度の
濃度に希釈して用いることが望ましい。
【0044】細胞凝集性媒体の添加後、さらに1〜2分
間程度攪拌した後、RPMI培地等の維持培地を、2〜3回
に別けてゆっくりと添加する。その後、PEG 等の細胞凝
集性媒体を除去するため、例えば800〜1200×
g、3〜5分間という弱い条件で遠心し、上清を除去す
る。
【0045】続いて、得られたペレットをほぐしなが
ら、FCS 添加HAT 培地等の選択培地を、脾臓細胞濃度が
1×106 〜1×107 細胞/mlとなるように、ゆっ
くりと添加し、96穴プレートのような多穴プレートの
各ウェルに分注し、温度約37℃、CO2 濃度約7%、
湿度100%の条件下で培養する。なお、培養期間中、
細胞の状態にもよるが、2〜3日程度の間隔で、液替え
を行なう。なお、培地条件としては、上記に例示したよ
うなものに限定されるものではなく、これ以外にも、例
えば、最初にFCS 添加RPMI培地等の増殖培地をペレット
に添加し、培養開始後、選択培地を各ウェルに添加する
といった態様とすること等も可能である。
【0046】融合しなかった細胞は、3日目あたりから
急速に死滅しはじめ、7日程度で完全に死滅する。一
方、融合に成功した細胞、すなわち、ハイブリドーマは
このころよりコロニーを形成しはじめる。ハイブリドー
マコロニーの形成が認められたウェルより次に述べるよ
うなスクリーンニングを開始し、必要に応じて24穴プ
レート等のより大きなプレートに継代していく。
【0047】スクリーニングは、RIA法、ELISA
法、イムノブロット法等によって行なうことができる
が、このうち好ましくはELISA法である。抗原とし
ては、CuSO4 と3時間以上反応させることにより得
られた酸化LDL を使用する。必要に応じて、未変性のLD
L を併用してもよい。特に好ましくはホスファチジルコ
リンの酸化により生成する抗原であり、これをペプチド
の共存下に認識するものが望ましい。あるいはリン脂質
を何らかの方法により酸化し、そこから抗体に対する反
応性を持つ酸化生成物を単離精製した後、その酸化生成
物を所定量、LDL分画に添加して得られた酸化LDL を抗
原として用いてもよい。各アッセイ法に基づき、ハイブ
リドーマコロニーの形成が認められたウェルから採取し
た培養上清を、スクリーニングし、酸化LDL との反応で
陽性(かつ未変性LDL との反応で陰性)となる細胞株を
選択する。
【0048】そして、スクリーニングで陽性となったウ
ェルから直ちにクローニングを行なう。クローニング
は、限界希釈法(limiting dilution) 、単個細胞マニピ
ュレーション法(single cell manipulation)などを用い
て行なうことができるが、限界希釈法の方が技術的に容
易であるため好ましい。
【0049】クローニングした細胞が再び増殖してきた
ら、上記と同様にしてスクリーニングを行ない、再度ク
ローニングを繰り返し、未変性LDL とは反応せず、酸化
LDLとのみ反応する高産生細胞株を同定する。
【0050】なお、得られたハイブリドーマの保存法と
しては、特に限定されるものではないが、例えば、凍結
保存用のバイアルになるべく多くの細胞、例えば1×1
7〜2×107 個程度を、90%FCS 、10%ジメチ
ルスルフォキシド(DMSO)1〜2ml程度に懸濁して、液
体窒素中に凍結保存する方法が適当である。
【0051】Balb/cマウスを用いて上記したような細胞
融合操作により、未変性のLDL とは反応せず、酸化LDL
とのみ反応する細胞株を得ることができることが、前述
の論文(Itabe, H., Takeshima, E., Iwasaki, H., Kim
ura, J., Yoshida, Y., Imanaka, T., Takano, T., (19
94) J. Biol.Chem. 269 (21):15274) に開示されてい
る。特に、同論文に記載されている抗体FOH1a/D
LH3は、マロンジアルデヒド修飾LDL(MDA-LDL)、アセ
チル化LDL(AcLDL)とは、反応しない点で、特に好ましい
モノクローナル抗体である。この抗体を産生するマウス
−マウス ハイブリドーマセルライン FOH1a/DLH3は、
工業技術院生命工学工業技術研究所に寄託し、受託番号
FERM P-14153を付与され、さらに、平成12年5月26
日付で通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所に
おいて、当該原寄託よりブダペスト条約に基づく寄託
(国際寄託)への移管手続がなされ、FERM BP−
7171号の受託番号が付与された。
【0052】モノクローナル抗体FOH1a/DLH3
は、LDL を銅イオンを用いて人工的に酸化したLDL に反
応するが、未変性のLDL には反応せず、他の方法(たと
えばマロンジアルデヒド化や、アセチル化など)でLDL
を修飾したものにも反応しない。また他の血清蛋白質た
とえばアルブミンやグロブリンを酸化させたものにも反
応しない。しかし、LDL とは異なるリポタンパク質であ
る高比重リポタンパク質質(HDL )を酸化したものには
反応する。
【0053】しかしながら、本発明に係るリン脂質の酸
化により生成する抗原を認識する抗体を得る方法として
は、上記のごとき粥状硬化病巣を適当な動物に感作する
方法に限定されるものではなく、これ以外にも例えば酸
化LDL を免疫源とする方法、アポタンパク質あるいは、
その構成ペプチドの一部の共存下で、リン脂質を酸化さ
せたものを免疫源とする方法などが考えられる。
【0054】しかして、本発明において用いられる標準
物質は、測定に用いられる抗体が上記したようにリン脂
質の酸化により生成する抗原を認識する抗体であること
から、リン脂質を人工的に酸化させて得られた化合物お
よび/または当該化合物を血漿タンパク質へ組込んだも
のとすることができる。
【0055】リン脂質を人工的に酸化して得られる化合
物としては、リン脂質の脂肪酸残基のいずれかの炭素原
子にアルデヒド基を結合してなるもの(末端の炭素原子
を修飾してアルデヒド基としたものを含む)であればよ
いが、好ましくはホスファチジルコリン、ホスファチジ
ルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファ
チジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジ
ホスファチジルグリセリンなどのグリセロリン脂質、特
にホスファチジルコリンを酸化したものが望ましい。一
般に、グリセロリン脂質では、グリセロールの1位に飽
和アシル、アルケニルあるいは飽和アルキル基が結合
し、グリセロールの2位に不飽和アシル基が結合してい
るものが多いため、この2位の不飽和アシル基の不飽和
結合部にアルデヒド基を結合させることにより所望の化
合物とすることができる。しかしながら、もちろんアル
デヒド基を結合させる脂肪酸残基としては、このような
2位のアシル基に限定されるものではなく、いずれのも
のであってもよい。
【0056】さらに、当該リン脂質を酸化して得られた
化合物としては、1−パルミトイル−2−(9−オキソ
ノナノイル)−グルセロ−3−ホスホコリンまたは1−
パルミトイル−2−(5−オキソバレロイル)−グルセ
ロ−3−ホスホコリンが特に好ましい。
【0057】このようにして生成したリン脂質を人工的
に酸化して得られる化合物を、反応系から単離、精製し
て、そのまま標準物質として用いることができるが、よ
り好ましくはこの化合物を、各種血漿タンパク質、特に
リポタンパク質、さらに好ましくは例えばLDLのよう
な測定対象となるリポタンパク質に対して、任意に既知
濃度添加ないし組込むことにより、標準物質を調製する
ことが望ましい。このように当該化合物を血漿タンパク
質に添加して標準物質を調製する場合の化合物の添加量
は、使用する抗体種、血漿タンパク質種、および当該化
合物種によって左右されるため一概には規定できない
が、予め各種添加量において抗体の反応性を検討する予
備実験を行ない、当該抗体に対して常に一定の反応性を
示す添加量を決定すればよい。
【0058】本発明に係る測定法においては、実際の検
体の測定に先立ち、このようにして調製される既知濃度
の当該化合物を含有する標準物質を用いて、同様の測定
工程を踏み、抗体の反応性と酸化リン脂質濃度との関係
に係る検量線を作成しておき、実際の検定によって得ら
れた結果をこの検量線に対比させることで、定量的に酸
化リポタンパク質量を測定することができる。
【0059】また、上記のごとき標準物質を用いること
により、競合阻害試験法に基づき検体中の酸化リン脂質
総量を定量することも可能である。具体的には、まず、
既知濃度の前記化合物を含有する標準物質を用意し、こ
れをビオチン、酵素、放射性同位元素、色素等によって
標識化する。一方、検体、例えば血漿を、リン酸緩衝液
等の適当な希釈剤によって種々の濃度に希釈する。各希
釈割合の血漿試料群のそれぞれに一定量の標準物質を添
加し、これを固相化抗体に適用し、検体中の酸化リン脂
質と競合反応させる。また比較対照として、前記添加量
と同量の標準物質のみを別途固相化抗体に適用し反応さ
せる。そして、比較対照(検体非存在下)で得られた抗
体結合標準物質量に対する検体存在下で得られた抗体結
合標準物質量の割合を求め、この割合が50%となる試
料を決定し、この試料の検体希釈率から検体中の酸化リ
ポタンパク質総量を求めるものである。
【0060】なお、本発明の上記測定方法、ないし測定
方法に用いられる抗体を産生するハイブリドーマを得る
において必要とされる人工的な酸化リポタンパク質の生
成条件としては、次のようなものが考えられる。すなわ
ち、ヒト正常血清から、例えば遠心沈降法などによりリ
ポタンパク質分画を得、この分画を必要により透析、脱
塩によって精製処理した後、蛋白濃度0.1〜1mg/
ml、より好ましくは0.2mg/ml、CuSO4
度2.5〜25μM、より好ましくは5μMの割合で、
リポタンパク質分画にCuSO4 を添加し、約37℃の
下に、3〜24時間反応させるものである。あるいは上
記したようにリン脂質を何らかの方法により酸化し、そ
こから抗体に対する反応性を持つ酸化生成物を単離精製
した後、その50〜5000ngを上記のごときリポタ
ンパク質分画1ml(蛋白濃度0.1〜2mg/ml)
に加え調製するものである。
【0061】
【実施例】次に、実施例を示して本発明による酸化リポ
タンパク質の測定法および酸化リン脂質の定量法をより
具体的に説明する。
【0062】実施例1 (1)酸化LDL 標準物質の調製 LDLは、EDTAを抗凝固剤として得たヒト血漿から
超遠心分離法にて比重1.019〜1.063の部分を
回収して用いた。LDLの純度は、アガロース電気泳動
法にて単一の鋭いバンドを与えることを使用に確認し
た。0.25mMEDTAを含むPBS溶液(pH7.
4)に対して十分に透析し、蛋白定量からLDL蛋白1
mg/ml 0.25mM EDTA−PBS溶液(p
H7.4)として4℃で保存した。
【0063】1−パルミトイル−2−(9−オキソノナ
ノイル)−グリセロ−3−ホスホコリンおよび1−パル
ミトイル−2−(5−オキソバレロイル)−グリセロ−
3−ホスホコリンは、文献[K. E. stremler et al.,
J. B. C. 266(17) (1991) 11095-11103]に記載の方法
に従って調製した。1−パルミトイル−2−オレオイル
−グリセロ−3−ホスホコリンおよび1−パルミトイル
−2−アラキドノイル−グルセロ−3−ホスホコリン
[Avanti社製]のクロロホルム溶液にオゾンガスを吹き
込み、生成したジアシルグリセロホスホコリンのオゾニ
ド体をジメチルスルフィドにより還元して合成した。得
られた酸化物を薄層クロマトグラフ法により展開溶媒
(クロロホルム:メタノール:水=10:5:1)の条
件で展開し、1−パルミトイル−2−(9−オキソノナ
ノイル)−グリセロ−3−ホスホコリンおよび1−パル
ミトイル−2−(9−オキソバレロイル)−グリセロ−
3−ホスホコリンを単離した。得られた1−パルミトイ
ル−2−(9−オキソノナノイル)−グリセロ−3−ホ
スホコリンおよび1−パルミトイル−2−(5−オキソ
バレロイル)−グリセロ−3−ホスホコリンの純度は、
逆相HPLC(ODSカラム、メタノール:20mM塩
化コリン水溶液:アセトニトリル=875:100:2
5)にて単一ピークを与えることを使用に確認し、クロ
ロホルム−エタノール(1:1)溶液中にて−20℃で
保存した。
【0064】酸化LDL標準物質(PC9CHO-LDL、および
PC5CHO-LDL)は、上記LDL溶液(1ml)に上記1−
パルミトイル−2−(9−オキソノナノイル)−グリセ
ロ−3−ホスホコリン(PC9CHO) または1−パルミトイ
ル−2−(9−オキソバレロイル)−グリセロ−3−ホ
スホコリン(PC5CHO) 50〜5000ngのDMSO溶
液(100μl)を加えることにより調製した。
【0065】LDLに対するPC9CHOの至適添加量を検討
した結果、図1に示すようにLDL(1mg/ml)に
対して、PC9CHOを5μmol以上添加することでDLH
3抗体に対して常に一定の反応性を示す酸化LDL標準
品を得ることが可能であった。
【0066】(2)サンドイッチELISA分析 プレートにPBSで希釈下DLH3抗体(各1μg/ウ
ェル)を加えて、4℃で16時間放置した。抗体溶液を
捨て、1%BSA−TBS溶液(pH8.0)350μ
lを加えて、室温で2時間放置してブロッキングした
後、0.05%Tween20を含むトリス緩衝生理食
塩水(0.05%Tween-TBS pH8.0)で3回洗浄する。
その後、酸化LDL標準品(PC9CHO-LDL 0〜80μg
/dl)、および1%BSA−4%PEG−0.25m
M EDTAを含む10mM PBS溶液(pH7.
4)で1600倍希釈したヒト血漿を分注し、室温で2
時間放置した後、0.05%Tween-TBS(pH8.0)で3回
洗浄する。1%BSA−PBS溶液で1000倍希釈し
たペルオキシダーゼ標識抗ApoBモノクローナル抗体
(抗apoBモノクローナル抗体(MOAB ANTI-APOB MIA
1610、MEDIX BIOTECHINC.社製)をマレイミド法を用い
てペルオキシダーゼで標識して調製した。)100μl
を加え、室温で30時間放置する。0.05%Tween-TBS(p
H8.0)で3回洗浄した後、o−フェニレンジアミン
3mg/mlを含む0.03%過酸化水素水100μl
を加えて発色させ、20分後に2N硫酸50μlで反応
を停止させて492nmの吸光度を測定する。
【0067】(3)ヒト血漿(健常人および循環器系疾
患患者)を用いた分析結果 臨床検体としては、横浜栄共済病院の循環器内科外来の
患者(49名)を対照に測定した。循環器疾患として
は、高血圧、冠動脈狭窄、狭心症、陳旧性心筋梗塞、重
症冠硬化症を単独あるいは複数合併している患者を対象
とした。健常者は、上記の循環器疾患を明らかに持たな
い健康者(30名)を対象とした。酸化LDL(PC9CHO
-LDL) を標準品とした典型的な検量線および臨床検体に
ついて分析した結果を図2および図3にそれぞれ示し
た。
【0068】実施例2 ビオチン標識化PC9CHOによる血漿中の総酸化ホスファチ
ジルコリン量の定量 DLH3抗体[10μg/ml 50mM Tris-HCl緩
衝液(pH8.0)]を96穴プレートに1ウェル当り
1μg/100μlづつ加え、4℃で1晩静置した。0.
05%Tween-TBSで3回洗浄後、1%BSAを含むTBS溶
液(pH8.0)350μlを加え室温で2時間ブロッ
キングした。0.05%Tween-TBSで3回洗浄後、実施例1に
おけると同様にして調製されたPC9CHOとビオチンヒドラ
ジド(ピアス社製)とを反応して得られたビオチン標識
化PC9CHO(24μg/ml)、および1%BSA−0.
25mM EDTAを含む10mM PBS溶液(pH
7.4)で10〜100000倍に希釈したヒト血漿
(50μl)を良く混合して加え、25℃で1時間放置
した。0.05%Tween-TBSで5回洗浄した後、HRP標識ス
トレプトアビジン(Vector社製)(5μg/1%BSA
−10mM PBS−0.05%TBS−Tween )10
0μlを加えて25℃にて5分間放置した。0.05%Tween
-TBSで5回洗浄した後、OPD試薬にて発色させ、2N
硫酸溶液で反応を停止させた後、492nmの吸光度を
測定した。
【0069】なお、測定に用いたヒト血漿は、酸化LD
L値が21.0、68.2および117.8ng/ml
と測定された検体であった。ヒト血漿非存在下で得られ
たPC9CHO量に対する各ヒト希釈血漿存在下で測定された
PC9CHO量の割合をPC9CHO残存率として求め、検体の希釈
率に対してプロットし図4を得た。図4に示されるよう
に、ヒト血漿中の総酸化ホスファチジルコリン量は、残
存PC9CHOの割合が50%を与える血漿の希釈率としてそ
れぞれ求めたところ、酸化LDL値と良い相関関係が認
められた。
【0070】
【発明の効果】以上述べたように本発明は、リン脂質を
人工的に酸化させて得られた化合物および/または当該
化合物を血漿タンパク質へ組込んだものを測定の標準物
質として用い、血液成分と酸化リン脂質を認識する抗体
を接触させ、該抗体の該試料に対する反応性を測定する
ことにより定量的に血液中の酸化リポタンパク質の検出
を行なう方法に関し、また、その検出法を用いて、粥状
硬化症を主因とする各種循環器系疾患を診断する方法に
関するものである。このような循環器系疾患としては、
心筋梗塞や狭心症などの冠動脈系疾患、脳梗塞や脳血管
系痴呆などの脳動脈系疾患、あるいは腎症、糖尿病性腎
症などの腎動脈系疾患、末梢動脈閉塞症のような末梢動
脈系疾患まで、全ての循環器系疾患がある。実施例に示
すように、本発明により、これらの循環器系疾患の患者
の血液中に高濃度の酸化LDL が検出され、このような疾
患と酸化リポタンパク質の因果関係が明確になった。し
かし、本発明の効果は、これに限定されるものではな
く、およそ酸化リポタンパク質が関与する全ての疾患が
適用になるのであり、その疾患の範囲は、本発明を用い
た今後の臨床的検討により拡大するものであることはい
うまでもない。また、上記のごとき標準物質を用いるこ
とで検体中の酸化リン脂質量を定量することも可能であ
るため、この定量結果を合せて考慮すれば、上記のごと
き疾患の診断においてより高い確実性が期待できるもの
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1において調製された酸化リ
ン脂質(PC9CHO)のLDLに対する添加量と抗体反応性
との関係を示すグラフ、
【図2】 本発明の実施例1において得られた酸化LDL
(PC9CHO-LDL) を標準品とした検量線、
【図3】 本発明の実施例1において臨床検体について
分析した結果を示すグラフ、
【図4】 本発明の実施例2において得られた血漿希釈
率と標準品残存率との関係を示すグラフ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/53 BIOSIS(DIALOG) JICSTファイル(JOIS)

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リン脂質の酸化により生成する抗原を認
    識する抗体を用いて血漿中の酸化リポタンパク質を測定
    するにおいて、リン脂質を人工的に酸化させて得られた
    化合物および/または当該化合物を血漿タンパク質へ組
    込んだものを測定の標準物質として用いることを特徴と
    するヒト酸化リポタンパク質の測定法。
  2. 【請求項2】 当該リン脂質を酸化して得られた化合物
    が、グリセロリン脂質の2位のアシル基にアルデヒド基
    が結合したものである請求項1に記載の測定法。
  3. 【請求項3】 当該リン脂質を酸化して得られた化合物
    が、1−パルミトイル−2−(9−オキソノナノイル)
    −グルセロ−3−ホスホコリンまたは1−パルミトイル
    −2−(5−オキソバレロイル)−グルセロ−3−ホス
    ホコリンである請求項1に記載の測定法。
  4. 【請求項4】 抗体が、ペプチドの共存下にホスファチ
    ジルコリンの酸化により生成する抗原を認識するもので
    ある請求項1〜3のいずれかに記載のヒト酸化リポタン
    パク質の測定法。
  5. 【請求項5】 被験体の血漿および/またはこれより分
    離したリポタンパク質画分を至適な濃度に希釈した後、
    リン脂質の酸化により生成する抗原を認識する抗体と接
    触させ、当該抗体と結合した酸化リポタンパク質をさら
    に当該リポタンパク質を認識する抗体と接触させること
    で測定を行い、得られた測定値を、前記標準物質によっ
    て得られる検量線と対比することで、被験体血液中の酸
    化リポタンパク質の量を定量的に求めるものである請求
    項1〜4のいずれかに記載のヒト酸化リポタンパク質の
    測定法。
  6. 【請求項6】 リン脂質の酸化により生成する抗原を認
    識する抗体を用いて血漿中の酸化リポタンパク質を測定
    するにおいて用いられる標準物質であって、リン脂質を
    人工的に酸化させて得られた化合物および/または当該
    化合物を血漿タンパク質へ組込んだものからなることを
    特徴とする標準物質。
  7. 【請求項7】 当該リン脂質を酸化して得られた化合物
    が、グリセロリン脂質の2位のアシル基にアルデヒド基
    が結合したものである請求項6に記載の標準物質。
  8. 【請求項8】 当該リン脂質を酸化して得られた化合物
    が、1−パルミトイル−2−(9−オキソノナノイル)
    −グルセロ−3−ホスホコリンまたは1−パルミトイル
    −2−(5−オキソバレロイル)−グルセロ−3−ホス
    ホコリンである請求項6に記載の標準物質。
  9. 【請求項9】 被験体の血漿および/またはこれより分
    離したリポタンパク質画分を各種濃度に希釈した検体に
    対し、請求項6〜8のいずれかに記載の前記標準物質を
    標識化してなるものを所定量添加し、これを、リン脂質
    の酸化により生成する抗原を認識する抗体と接触させ、
    標識化標準物質と検体中の酸化リン脂質とを競合反応さ
    せることを特徴とする検体中の酸化リン脂質総量の測定
    法。
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