JP2004504327A - 心血管疾患に関するペプチドおよびそのアッセイにおけるそれらの使用 - Google Patents
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Abstract
環化型または多量体形態の、酸化低密度リポタンパク質に対する親和性を有するペプチドは、冠状動脈性心臓疾患のマーカーであるoxLDLを検出するための免疫吸着(immunosolvent)アッセイに有用である。
Description
【0001】
発明の分野
本発明は、冠状動脈性心臓病および他の心血管疾患の危険性を評価するためのアッセイでの使用のためのペプチドの製造に関する。
【0002】
発明の背景
冠状動脈性心臓病(CHD)は欧州の国において主要な死亡原因である。ほとんどの場合、CHDの基本的な原因はアテローム性動脈硬化症である。現在、アテローム性動脈硬化症の危険性は、総コレステロール、低密度リポ蛋白(LDL)および高密度リポ蛋白(HDL)の量を測定することにより評価される。しかし、これらの試験では、およそ1/3の患者の疾患は推測できない。Yla−Herttuala,Current Opinion Lipidol.(1998)9:337〜344を参照。それゆえ、CHDの危険性を推定するためのよりよいアッセイを開発する必要性がある。
【0003】
酸化低密度リポ蛋白(oxLDL)はアテローム性動脈硬化症における危険因子であることが示されているが、循環中での半減期が短いので血漿中のoxLDLを直接測定することは可能ではなかった。それゆえ、最近の研究はLDL酸化の程度を規定するために別の間接測定に焦点をあてている。
【0004】
oxLDLはアテローム性動脈硬化症に重要な役割を果たす。それはアテローム性動脈硬化症の病変に見出されており、種々の細胞型に対し細胞傷害性であり、かつ血中単球に対して走化性である。さらに、oxLDLは免疫原性であり、アテローム性動脈硬化症の病変はoxLDLを認識するイムノグロブリンを含有している(oxLDLに対する自己抗体はヒトおよびウサギ血清中に存在する)。Yla−Herttuala(前述)により示唆されるように、oxLDLを分析するための最も良い方法はoxLDLに対する自己抗体の測定であろう。
【0005】
アポリポ蛋白B−100(apoB−100)はLDLにおける主要なタンパク質構成要素である。ヒトcDNAおよびアミノ酸配列は、Chenら、J.Biol.Chem.(1986)261:12912〜12921により報告されている。
【0006】
LDLの酸化の間、粒子のタンパク質および脂質部分の両方が修飾され得る。Esterbauerら、Free Radical Biol.Med.(1992)13:341〜390により報告されているように、マロンジアルデヒド(MDA)および4−ヒドロキシノネナル(hydroxynonenal)(4−HNE)はLDL酸化の間に形成される主要な反応性アルデヒドであり、これらは各々、apo−B100のリジン残基とさらに反応し得る。これらのほとんど特徴付けられていない酸化特異的エピトープは自己抗体により認識される。さらに最近、Palinskiら(J.Clin.Invest.(1996)98:800−814)により、酸化されたリン脂質が自己抗体に関するエピトープであると示唆されている。さらに、健常な個体が、oxLDLの主要な構成成分であるリソフォスファチジルコリンに対する抗体を生じることが報告されている。
【0007】
抗oxLDL自己抗体からは頸動脈アテローム性動脈硬化症、冠動脈アテローム性動脈硬化症および心筋梗塞の進行を推定することができる。また、増加したレベルの自己抗体は、全身性ループスエリトマトーデス(SLE)、子癇前症、慢性大動脈周囲炎、インシュリン非依存性糖尿病および内皮機能不全において見出されている。
【0008】
oxLDLに対する自己抗体は、非常に異なるイムノアッセイ(EIAまたはRIA)を使用して測定されてきたが、アッセイの標準化に利用可能な標準方法または参照物質は存在しない。これまでの試験に用いられていたLDLはヒト血漿から精製されており、通常、銅イオンとのインキュベーションまたはMDAとの結合により酸化される。銅酸化型LDLは、酸化特異的エピトープの混合物を含有しているので、均一な抗原を作製するために酸化プロセスを注意深く標準化しなければならない。ヒト血漿LDLベースの抗原もまた、本質的に不安定であり、市販の試験キットの作製には適していない。それゆえ、標準化することができ、安定で、再現性のある結果を与える試薬を利用する、CHDに関するアッセイを作製する必要性がある。
【0009】
発明の要旨
本発明は、適切なペプチド(例えば、反応性アルデヒドで修飾したもの)が安定であり、かつCHDに関するイムノアッセイにおいて抗原として使用され得る、という認識に基づく。より具体的には、新規なペプチドは、環化形または多量体形の、酸化低密度リポ蛋白に対して親和性を有する。
【0010】
本発明の局面の1つに従って、本発明のペプチドはサンプル中の、酸化低密度リポ蛋白に対する親和性を有する抗体の存在および、場合により、量を測定するためのイムノアッセイに使用される。
【0011】
第2の局面に従い、サンプル中の酸化低密度に対する自己抗体の量を測定する方法は、
(i)サンプルを、固定された、上記のように誘導体化されたペプチドと自己抗体がペプチドに結合することを可能とする条件下で、接触させること、および
(ii)結合の量を検出すること、を含む。
【0012】
結合の量は、直接的に測定され得、サンプル中の酸化LDLの量に相関する。抗体の量は酸化LDLとネイティブなLDLとの間の抗体結合の比として表現される。
【0013】
誘導体型ペプチドを使用することにより、イムノアッセイに再現性のある結果を提供する安定な抗原の使用を確実にすることができる。
【0014】
第3の局面に従って、酸化LDLの自己抗体を測定するためのキットは、
(i)上記の誘導体ペプチドを含む組成物、
(ii)免疫吸着アッセイを行うために必須の試薬、
を含むマルチコンテナユニット(複数容器からなるユニット)を有する。
【0015】
本発明は、タンパク質を患者の血液から単離する必要性が無い、簡単に合成し得る試薬を提供する。このペプチドは、従来的なCHDアッセイに用いるタンパク質に伴う短い半減期を有しておらず、それゆえ、診断キット中での使用のために商業的に製造することができる。
【0016】
発明の説明
本発明は、好ましくはapoB−100タンパク質に由来するペプチド、または好ましくはapoB−100タンパク質上のエピトープの構造に類似の構造を形成するアミノ酸配列を有するペプチドの生産に基く。従って、これらのペプチドは酸化LDLに対して親和性を有する自己抗体との特異的な相互作用を受け得る。用語「特異的な相互作用」とは、ペプチド(抗原)に対する自己抗体の認識を意味する。このペプチドは、105 l/mol、好ましくは107 l/mol、より好ましくは108 l/molよりも高い親和定数を有する抗体結合を誘発し得る。
【0017】
原則として、およそ10アミノ酸よりも大きい(ただし、自己抗体に対するリガンドとして働く)ペプチド配列が本発明に使用され得る。ペプチドはapoB−100の天然の供給源に由来するか、またはapoB−100に関する既知のタンパク質配列に基づく合成ペプチドであり得る。apoB−100由来のペプチドを単離する方法、ペプチドを合成する方法は当業者に明らかである。
【0018】
ペプチドは任意の適切なアミノ酸上で、反応性アルデヒドを用いて誘導体化される。好ましくは、ペプチドはアルギニン、ヒスチジンまたはリジン残基上で誘導体化される。また、ペプチドを誘導体化する方法は、本明細書中に開示される方法に加えて、当業者に明らかである。
【0019】
ペプチドを誘導体化するために用いる反応性アルデヒドは、マロンジアルデヒドまたはヒドロキシノネナルである。また、他の反応性アルデヒドも当業者に明らかである。
【0020】
ペプチドのサイズは自己抗体による認識に充分なものである。好ましくは、ペプチドは10〜40アミノ酸のサイズであり、より好ましくは15〜30アミノ酸である。好ましくは、ペプチドのアミノ酸配列は、ネイティブなapoB−100タンパク質上の領域と、80%より高い、好ましくは90%より高い、最も好ましくは95%よりも高い同一性を有する。
【0021】
本発明のペプチドは、抗体反応を誘発し得る他の試薬と共に診断アッセイで使用することができる。例えば、ホスファチジルエタノールアミンはMDAを用いて誘導体化することができ、本発明のペプチドと共に使用する場合、自己抗体に対するエピトープとして機能し得る。
【0022】
新規のペプチドベースのEIAアッセイは、心血管疾患およびいくつかの他の障害(例えば、大動脈周囲炎、子癇前症、インシュリン非依存性糖尿病および内皮機能不全)を有する患者の評価および追跡のための試験キットとして使用され得る。
【0023】
イムノアッセイで使用する場合、続いての洗浄工程を簡単に行うことができるように、ペプチドは固体支持体上に固定されていることが好ましい。イムノアッセイを行う方法は当業者に明らかである。
【0024】
以下の実施例は本発明を例示する。
【0025】
実施例1
apoB−100のアミノ酸配列(Chenら、前述)由来の、種々のネイティブなペプチドおよび修飾型ペプチドを、EIAでの使用に適した抗原として試験した。ペプチドをMDAを用いて修飾してoxLDLにおける場合に類似する酸化特異的エピトープを作製した。ペプチドEIAの結果をoxLDL EIA(これは銅酸化型LDLを用いて抗原として最適化されている。Narvanenら、Free Radical Biology&Medicine、印刷中を参照のこと)の結果と比較する。
【0026】
ペプチドを固相ペプチド合成技術およびFmoc化学を用いることにより合成し、C18カラムを用いるHPLCで精製した。合成したペプチドの分子量を、MALDI−TOF質量分析機を用いることにより同定した。apoB−100のアミノ酸配列に由来する、または無関係のいずれかのペプチド配列を、表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
MDAを用いるペプチドの修飾
MDAは、Palinskiら(Arteriosclerosis(1990)10:325−335)の修飾方法を用いることによりリジンの第1アミンを介してペプチドに連結した。MDAは、マロンジアルデヒド−ビス(ジメチルアセタール)から、酸加水分解により新規に作製した。次いで、混合物を37℃で3時間攪拌することにより、MDA(10mol)をペプチド(1mol)へと連結した。連結効率は第1アミンの存在を示すニンヒドリン反応により検査した。
【0029】
ペプチドEIA試験のための血清および血漿サンプルを、実施中の研究から集めた。これは冠状動脈性心臓病が疑われる患者、および健常者対照からのサンプルを含む。これらのサンプルは−20℃で、アリコートで保存した。
【0030】
ペプチドおよびペプチド−MDA複合体に対する自己抗体(ペプチドEIA)
ネイティブなペプチドおよびMDA−修飾型ペプチドは、常にサンプルプレート上で試験した。プレートの1/2をネイティブなペプチド(20μg/ml)でコーティングし、他方の1/2をMDA修飾型ペプチド(20μg/ml)でコーティングした[重炭酸塩緩衝液(100mmol/l、pH9.5)中100μl/ウェル]。コーティングしたプレートを室温(RT)で一晩インキュベートし、次いで、0.05% Tween20を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて自動洗浄機(Wellwash4MKII、Labsystems Oy)で3回洗浄した。プレートを、1%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS(150μl/ウェル)を用いて室温で1時間ブロックし、上記のように洗浄した。0.2%HSAおよび0.05%Tween20を含有するPBS中で血清サンプルを希釈(1:20)し、100μl/ウェルにピペッティングした。プレートを室温で2時間インキュベートし、上記のように洗浄した。HRP結合型抗ヒトIgG(サンプル緩衝液中で1:20000に希釈)を各ウェルに加え(100μl)、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質(発色源としてテトラメチルベンジジン(TMB)、100μ/ウェル)を添加し、プレートを暗所にて室温で30分間インキュベートすることにより発色した。0.5mol/l H2SO4(100μl/ウェル)を用いて反応を停止させ、450nmで吸光度を測定した(Multiskanマイクロプレートリーダー、Labsystems Oy)。結果を表2に示す。この結果は、ブランク対照を差し引いた後の、ネイティブなペプチドおよび修飾型ペプチドについて得られた吸光度測定値、またはネイティブなペプチドおよび修飾型ペプチドに対する抗体結合の比として表されている。
【0031】
【表2】
【0032】
比の値に基づくと、ペプチドEIAおよびヒトLDLベースのoxLSL EIAを用いて試験した場合は、抗体の量は対照の場合よりも患者サンプルの場合の方が高かった。ネイティブおよび修飾型(ペプチド)抗原を用いる自己抗体の反応は、oxLDL−EIAおよびペプチド−EIAの場合は類似している。なぜならば、修飾型抗原(oxLDLおよびMDAp63)はネイティブな抗原(natLDLおよびnatp63)よりもより良く認識されるからである(すなち、修飾型抗原に対する特異性のほうが高い)。ペプチド−EIAに関する結果は、oxLDL−EIAに関する結果よりも有意に良好である。
【0033】
ペプチド−MDA複合体を抗原として使用する場合、自己抗体が、ペプチド、MDA、または両方と反応するかどうかを調べるために、マイクロタイタープレートをnatp63、MDAおよびMDAp63抗原を用いてコーティングし、イムノアッセイを行った。MDA抗原は、ペプチドを用いずにMDAp63抗原と同様にして製造し、MDAをMDAp63と同様にしてコーティングのために希釈した。自己抗体のMDAp63との反応は、対照中のnatp63およびMDAとの反応よりも高かった(それぞれ、0.533±0.077、0.282±0.100および0.300±0.019、平均値±SD、n=23、患者サンプルの場合、それぞれ、0.431±0.040、0.222±0.041および0.338±0.000、n=16)。この結果は、最適な認識にペプチドおよびMDAの両方が必要であることを示している。
【0034】
natp63、MDAおよびMDAp63に対する抗体間のスピアマンの相関係数を計算した。対照および患者サンプルの場合、抗MDAおよび抗MDAp63抗体は相関した(それぞれ、r=0.581、p=0.004およびr=0.582、p=0.018)が、抗natp63および抗MDA抗体は相関しなかった(それぞれ、r=0.297、p=0.169およびr=0.112、p=0.68)。これは、異なる抗体がMDAおよびnatp63と反応することを示し、ペプチド−MDA複合体が最適抗原であることの証拠である。
【0035】
実施例2
何がEIAに対するペプチドの最も良い修飾であるかを見出すために、6個の異なる形態のペプチドp63を試験した。
線状p63(p63)
MDAで修飾したp63(p63−MDA)
MDAおよびホスファチジルエタノールアミンを用いて修飾したp63(p63−PEA−MDA)
ペプチドの両端に2個の余分なアミノ酸(グリシンおよびシステイン)を含有する線状形態のp63(p244);配列番号5を参照のこと。
環状p244(p244cyc)
MDAで修飾した環状p63(p244cyc−MDA)
【0036】
線状ペプチドp244を抗原として用いた場合に、患者サンプルにおける自己抗体の量が最も高かった(表3)。また、環状ペプチド(p244cyc)に対する抗体力価はp63−MDAに対する抗体力価よりもわずかに高かった。この実験において、自己抗体は、ペプチド有り、脂質無しの場合に最も良く反応した。
【0037】
特異性研究
異なる抗原の特異性をペプチドの力価測定により試験した。図1は、1つの患者サンプルを用いて試験した4個のペプチド抗原に対する力価曲線を示す。さらに、環状ペプチドおよび線状ペプチド(p244cycおよびp244)に対する抗体の特異性を、0.5M塩化ナトリウムをサンプル希釈物に加えることにより試験した。塩をサンプル希釈物に加えた場合、p244、p244cycおよびp63−MDAに対する患者サンプルの力価は、それぞれ、19%、38%および47%低かった(20個の患者サンプルの平均値)。おそらく、p244に対する抗体が最も良い特異性を有する。
【0038】
阻害研究
漸増濃度のペプチドをサンプル希釈物に加えることにより、環状ペプチド(p244cyc)および対応する線状ペプチド(p244)の特異性を阻害試験で試験した。p244cycペプチドは最も高いインヒビター濃度(100μg/ml)で阻害し、8個の患者サンプルの結合の平均は61%であった(図2A)。3個のサンプルは50%未満で阻害された。p244は最も高いインヒビター濃度(100μg/ml)で阻害し、24個の患者サンプルの結合の平均は70%であった(図2B)。3個のサンプルは50%未満で阻害された。p244はおそらくp244cycペプチドよりも特異的であるようである。最終的に、プレートをp244でコーティングし、患者サンプルのp63との結合を阻害することにより、p244のエピトープはp63に類似することが確認された。p63は最も高い阻害濃度(100μg/ml)で阻害し、22個の患者サンプルの結合の平均は53%であった(図3)。9個のサンプルは50%未満で阻害した。
【0039】
p244の修飾
これまでの結果をまとめると、患者サンプルはペプチド244により最も良く認識されるようである。それゆえ、修飾型p244をMDAを用いて修飾し、p244およびp244−MDAの両方をEIAにおける抗原として使用した。p244およびp244−MDAに対する患者サンプルの力価(平均値±SD)は対照サンプルの力価よりもわずかに高かった(表5)。
【0040】
ペプチドEIAの評価
CHDの症状を有する患者の205個のサンプルを分析した。患者を血管造影法により試験し、0−、1−、2−または3−脈管疾患として分類した。ペプチドp244およびp244−MDAをペプチドEIAにおける抗原として使用し、結果をヒト−LDL−ベースのoxLDL EIAと比較した。
【0041】
p244−MDAに対する自己抗体の力価は、3−脈環疾患を有する患者において、0−、1−または2−脈管疾患を有する患者と比較して最も高かった(ANOVA p=0.0268)。ヒト−LDL−ベースのoxLDL(n=185)に対する自己抗体の力価は、p244に対する力価と相関し(r=0.227 p=0.0019)、ならびにp244−MDAに対する力価と相関していた(p=0.217 p=0.003)。ペプチドp244およびp244−MDAに対する自己抗体の力価を、抗oxLDL力価に基づいて4つのグループに分類したヒト−LDL−ベースのoxLDLに対する自己抗体の力価と比較した場合に相関が確認された(第1四分位値.0.072−0.22(n=37)、第2四分位値.0.22−0.36(n=44),第3四分位値.0.36−0.63(n=57)および第4四分位値.0.63−2.757(n=68))(図4)。さらに、本発明者らはp244およびp244−MDAに対する抗体の量を、the New York Heart Association(NYHA)心疾患分類(heart disease classification)に従って分類した狭心症症状と比較した(NYHA−1 n=5、NYHA−2 n=12、NYHA−3 n=27およびNYHA−4 n=14)。本発明者らは、狭心症の症状が強まると抗体力価が上昇することを見出した(図5)。NYHAクラス分けと比較した冠状血管狭窄の総和(NYHA−1 n=14、NYHA−2 n=26、NYHA−3 n=57およびNYHA−4 n=29)は、冠状動脈性心臓病の進行に伴う、さらに深刻な症状を示した(図6)。この結果は、冠状血管造影法を用いて試験した冠状血管狭窄の総和、ならびに抗体が狭心症症状の重篤さと相関することを示した。
【0042】
【表3】
値は、ブランクを差し引いた後の平均吸光度±SDである。
【0043】
【表4】
値は、ブランクを差し引いた後の平均吸光度±SDである。
発明の分野
本発明は、冠状動脈性心臓病および他の心血管疾患の危険性を評価するためのアッセイでの使用のためのペプチドの製造に関する。
【0002】
発明の背景
冠状動脈性心臓病(CHD)は欧州の国において主要な死亡原因である。ほとんどの場合、CHDの基本的な原因はアテローム性動脈硬化症である。現在、アテローム性動脈硬化症の危険性は、総コレステロール、低密度リポ蛋白(LDL)および高密度リポ蛋白(HDL)の量を測定することにより評価される。しかし、これらの試験では、およそ1/3の患者の疾患は推測できない。Yla−Herttuala,Current Opinion Lipidol.(1998)9:337〜344を参照。それゆえ、CHDの危険性を推定するためのよりよいアッセイを開発する必要性がある。
【0003】
酸化低密度リポ蛋白(oxLDL)はアテローム性動脈硬化症における危険因子であることが示されているが、循環中での半減期が短いので血漿中のoxLDLを直接測定することは可能ではなかった。それゆえ、最近の研究はLDL酸化の程度を規定するために別の間接測定に焦点をあてている。
【0004】
oxLDLはアテローム性動脈硬化症に重要な役割を果たす。それはアテローム性動脈硬化症の病変に見出されており、種々の細胞型に対し細胞傷害性であり、かつ血中単球に対して走化性である。さらに、oxLDLは免疫原性であり、アテローム性動脈硬化症の病変はoxLDLを認識するイムノグロブリンを含有している(oxLDLに対する自己抗体はヒトおよびウサギ血清中に存在する)。Yla−Herttuala(前述)により示唆されるように、oxLDLを分析するための最も良い方法はoxLDLに対する自己抗体の測定であろう。
【0005】
アポリポ蛋白B−100(apoB−100)はLDLにおける主要なタンパク質構成要素である。ヒトcDNAおよびアミノ酸配列は、Chenら、J.Biol.Chem.(1986)261:12912〜12921により報告されている。
【0006】
LDLの酸化の間、粒子のタンパク質および脂質部分の両方が修飾され得る。Esterbauerら、Free Radical Biol.Med.(1992)13:341〜390により報告されているように、マロンジアルデヒド(MDA)および4−ヒドロキシノネナル(hydroxynonenal)(4−HNE)はLDL酸化の間に形成される主要な反応性アルデヒドであり、これらは各々、apo−B100のリジン残基とさらに反応し得る。これらのほとんど特徴付けられていない酸化特異的エピトープは自己抗体により認識される。さらに最近、Palinskiら(J.Clin.Invest.(1996)98:800−814)により、酸化されたリン脂質が自己抗体に関するエピトープであると示唆されている。さらに、健常な個体が、oxLDLの主要な構成成分であるリソフォスファチジルコリンに対する抗体を生じることが報告されている。
【0007】
抗oxLDL自己抗体からは頸動脈アテローム性動脈硬化症、冠動脈アテローム性動脈硬化症および心筋梗塞の進行を推定することができる。また、増加したレベルの自己抗体は、全身性ループスエリトマトーデス(SLE)、子癇前症、慢性大動脈周囲炎、インシュリン非依存性糖尿病および内皮機能不全において見出されている。
【0008】
oxLDLに対する自己抗体は、非常に異なるイムノアッセイ(EIAまたはRIA)を使用して測定されてきたが、アッセイの標準化に利用可能な標準方法または参照物質は存在しない。これまでの試験に用いられていたLDLはヒト血漿から精製されており、通常、銅イオンとのインキュベーションまたはMDAとの結合により酸化される。銅酸化型LDLは、酸化特異的エピトープの混合物を含有しているので、均一な抗原を作製するために酸化プロセスを注意深く標準化しなければならない。ヒト血漿LDLベースの抗原もまた、本質的に不安定であり、市販の試験キットの作製には適していない。それゆえ、標準化することができ、安定で、再現性のある結果を与える試薬を利用する、CHDに関するアッセイを作製する必要性がある。
【0009】
発明の要旨
本発明は、適切なペプチド(例えば、反応性アルデヒドで修飾したもの)が安定であり、かつCHDに関するイムノアッセイにおいて抗原として使用され得る、という認識に基づく。より具体的には、新規なペプチドは、環化形または多量体形の、酸化低密度リポ蛋白に対して親和性を有する。
【0010】
本発明の局面の1つに従って、本発明のペプチドはサンプル中の、酸化低密度リポ蛋白に対する親和性を有する抗体の存在および、場合により、量を測定するためのイムノアッセイに使用される。
【0011】
第2の局面に従い、サンプル中の酸化低密度に対する自己抗体の量を測定する方法は、
(i)サンプルを、固定された、上記のように誘導体化されたペプチドと自己抗体がペプチドに結合することを可能とする条件下で、接触させること、および
(ii)結合の量を検出すること、を含む。
【0012】
結合の量は、直接的に測定され得、サンプル中の酸化LDLの量に相関する。抗体の量は酸化LDLとネイティブなLDLとの間の抗体結合の比として表現される。
【0013】
誘導体型ペプチドを使用することにより、イムノアッセイに再現性のある結果を提供する安定な抗原の使用を確実にすることができる。
【0014】
第3の局面に従って、酸化LDLの自己抗体を測定するためのキットは、
(i)上記の誘導体ペプチドを含む組成物、
(ii)免疫吸着アッセイを行うために必須の試薬、
を含むマルチコンテナユニット(複数容器からなるユニット)を有する。
【0015】
本発明は、タンパク質を患者の血液から単離する必要性が無い、簡単に合成し得る試薬を提供する。このペプチドは、従来的なCHDアッセイに用いるタンパク質に伴う短い半減期を有しておらず、それゆえ、診断キット中での使用のために商業的に製造することができる。
【0016】
発明の説明
本発明は、好ましくはapoB−100タンパク質に由来するペプチド、または好ましくはapoB−100タンパク質上のエピトープの構造に類似の構造を形成するアミノ酸配列を有するペプチドの生産に基く。従って、これらのペプチドは酸化LDLに対して親和性を有する自己抗体との特異的な相互作用を受け得る。用語「特異的な相互作用」とは、ペプチド(抗原)に対する自己抗体の認識を意味する。このペプチドは、105 l/mol、好ましくは107 l/mol、より好ましくは108 l/molよりも高い親和定数を有する抗体結合を誘発し得る。
【0017】
原則として、およそ10アミノ酸よりも大きい(ただし、自己抗体に対するリガンドとして働く)ペプチド配列が本発明に使用され得る。ペプチドはapoB−100の天然の供給源に由来するか、またはapoB−100に関する既知のタンパク質配列に基づく合成ペプチドであり得る。apoB−100由来のペプチドを単離する方法、ペプチドを合成する方法は当業者に明らかである。
【0018】
ペプチドは任意の適切なアミノ酸上で、反応性アルデヒドを用いて誘導体化される。好ましくは、ペプチドはアルギニン、ヒスチジンまたはリジン残基上で誘導体化される。また、ペプチドを誘導体化する方法は、本明細書中に開示される方法に加えて、当業者に明らかである。
【0019】
ペプチドを誘導体化するために用いる反応性アルデヒドは、マロンジアルデヒドまたはヒドロキシノネナルである。また、他の反応性アルデヒドも当業者に明らかである。
【0020】
ペプチドのサイズは自己抗体による認識に充分なものである。好ましくは、ペプチドは10〜40アミノ酸のサイズであり、より好ましくは15〜30アミノ酸である。好ましくは、ペプチドのアミノ酸配列は、ネイティブなapoB−100タンパク質上の領域と、80%より高い、好ましくは90%より高い、最も好ましくは95%よりも高い同一性を有する。
【0021】
本発明のペプチドは、抗体反応を誘発し得る他の試薬と共に診断アッセイで使用することができる。例えば、ホスファチジルエタノールアミンはMDAを用いて誘導体化することができ、本発明のペプチドと共に使用する場合、自己抗体に対するエピトープとして機能し得る。
【0022】
新規のペプチドベースのEIAアッセイは、心血管疾患およびいくつかの他の障害(例えば、大動脈周囲炎、子癇前症、インシュリン非依存性糖尿病および内皮機能不全)を有する患者の評価および追跡のための試験キットとして使用され得る。
【0023】
イムノアッセイで使用する場合、続いての洗浄工程を簡単に行うことができるように、ペプチドは固体支持体上に固定されていることが好ましい。イムノアッセイを行う方法は当業者に明らかである。
【0024】
以下の実施例は本発明を例示する。
【0025】
実施例1
apoB−100のアミノ酸配列(Chenら、前述)由来の、種々のネイティブなペプチドおよび修飾型ペプチドを、EIAでの使用に適した抗原として試験した。ペプチドをMDAを用いて修飾してoxLDLにおける場合に類似する酸化特異的エピトープを作製した。ペプチドEIAの結果をoxLDL EIA(これは銅酸化型LDLを用いて抗原として最適化されている。Narvanenら、Free Radical Biology&Medicine、印刷中を参照のこと)の結果と比較する。
【0026】
ペプチドを固相ペプチド合成技術およびFmoc化学を用いることにより合成し、C18カラムを用いるHPLCで精製した。合成したペプチドの分子量を、MALDI−TOF質量分析機を用いることにより同定した。apoB−100のアミノ酸配列に由来する、または無関係のいずれかのペプチド配列を、表1に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
MDAを用いるペプチドの修飾
MDAは、Palinskiら(Arteriosclerosis(1990)10:325−335)の修飾方法を用いることによりリジンの第1アミンを介してペプチドに連結した。MDAは、マロンジアルデヒド−ビス(ジメチルアセタール)から、酸加水分解により新規に作製した。次いで、混合物を37℃で3時間攪拌することにより、MDA(10mol)をペプチド(1mol)へと連結した。連結効率は第1アミンの存在を示すニンヒドリン反応により検査した。
【0029】
ペプチドEIA試験のための血清および血漿サンプルを、実施中の研究から集めた。これは冠状動脈性心臓病が疑われる患者、および健常者対照からのサンプルを含む。これらのサンプルは−20℃で、アリコートで保存した。
【0030】
ペプチドおよびペプチド−MDA複合体に対する自己抗体(ペプチドEIA)
ネイティブなペプチドおよびMDA−修飾型ペプチドは、常にサンプルプレート上で試験した。プレートの1/2をネイティブなペプチド(20μg/ml)でコーティングし、他方の1/2をMDA修飾型ペプチド(20μg/ml)でコーティングした[重炭酸塩緩衝液(100mmol/l、pH9.5)中100μl/ウェル]。コーティングしたプレートを室温(RT)で一晩インキュベートし、次いで、0.05% Tween20を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を用いて自動洗浄機(Wellwash4MKII、Labsystems Oy)で3回洗浄した。プレートを、1%ヒト血清アルブミン(HSA)を含有するPBS(150μl/ウェル)を用いて室温で1時間ブロックし、上記のように洗浄した。0.2%HSAおよび0.05%Tween20を含有するPBS中で血清サンプルを希釈(1:20)し、100μl/ウェルにピペッティングした。プレートを室温で2時間インキュベートし、上記のように洗浄した。HRP結合型抗ヒトIgG(サンプル緩衝液中で1:20000に希釈)を各ウェルに加え(100μl)、室温で1時間インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質(発色源としてテトラメチルベンジジン(TMB)、100μ/ウェル)を添加し、プレートを暗所にて室温で30分間インキュベートすることにより発色した。0.5mol/l H2SO4(100μl/ウェル)を用いて反応を停止させ、450nmで吸光度を測定した(Multiskanマイクロプレートリーダー、Labsystems Oy)。結果を表2に示す。この結果は、ブランク対照を差し引いた後の、ネイティブなペプチドおよび修飾型ペプチドについて得られた吸光度測定値、またはネイティブなペプチドおよび修飾型ペプチドに対する抗体結合の比として表されている。
【0031】
【表2】
【0032】
比の値に基づくと、ペプチドEIAおよびヒトLDLベースのoxLSL EIAを用いて試験した場合は、抗体の量は対照の場合よりも患者サンプルの場合の方が高かった。ネイティブおよび修飾型(ペプチド)抗原を用いる自己抗体の反応は、oxLDL−EIAおよびペプチド−EIAの場合は類似している。なぜならば、修飾型抗原(oxLDLおよびMDAp63)はネイティブな抗原(natLDLおよびnatp63)よりもより良く認識されるからである(すなち、修飾型抗原に対する特異性のほうが高い)。ペプチド−EIAに関する結果は、oxLDL−EIAに関する結果よりも有意に良好である。
【0033】
ペプチド−MDA複合体を抗原として使用する場合、自己抗体が、ペプチド、MDA、または両方と反応するかどうかを調べるために、マイクロタイタープレートをnatp63、MDAおよびMDAp63抗原を用いてコーティングし、イムノアッセイを行った。MDA抗原は、ペプチドを用いずにMDAp63抗原と同様にして製造し、MDAをMDAp63と同様にしてコーティングのために希釈した。自己抗体のMDAp63との反応は、対照中のnatp63およびMDAとの反応よりも高かった(それぞれ、0.533±0.077、0.282±0.100および0.300±0.019、平均値±SD、n=23、患者サンプルの場合、それぞれ、0.431±0.040、0.222±0.041および0.338±0.000、n=16)。この結果は、最適な認識にペプチドおよびMDAの両方が必要であることを示している。
【0034】
natp63、MDAおよびMDAp63に対する抗体間のスピアマンの相関係数を計算した。対照および患者サンプルの場合、抗MDAおよび抗MDAp63抗体は相関した(それぞれ、r=0.581、p=0.004およびr=0.582、p=0.018)が、抗natp63および抗MDA抗体は相関しなかった(それぞれ、r=0.297、p=0.169およびr=0.112、p=0.68)。これは、異なる抗体がMDAおよびnatp63と反応することを示し、ペプチド−MDA複合体が最適抗原であることの証拠である。
【0035】
実施例2
何がEIAに対するペプチドの最も良い修飾であるかを見出すために、6個の異なる形態のペプチドp63を試験した。
線状p63(p63)
MDAで修飾したp63(p63−MDA)
MDAおよびホスファチジルエタノールアミンを用いて修飾したp63(p63−PEA−MDA)
ペプチドの両端に2個の余分なアミノ酸(グリシンおよびシステイン)を含有する線状形態のp63(p244);配列番号5を参照のこと。
環状p244(p244cyc)
MDAで修飾した環状p63(p244cyc−MDA)
【0036】
線状ペプチドp244を抗原として用いた場合に、患者サンプルにおける自己抗体の量が最も高かった(表3)。また、環状ペプチド(p244cyc)に対する抗体力価はp63−MDAに対する抗体力価よりもわずかに高かった。この実験において、自己抗体は、ペプチド有り、脂質無しの場合に最も良く反応した。
【0037】
特異性研究
異なる抗原の特異性をペプチドの力価測定により試験した。図1は、1つの患者サンプルを用いて試験した4個のペプチド抗原に対する力価曲線を示す。さらに、環状ペプチドおよび線状ペプチド(p244cycおよびp244)に対する抗体の特異性を、0.5M塩化ナトリウムをサンプル希釈物に加えることにより試験した。塩をサンプル希釈物に加えた場合、p244、p244cycおよびp63−MDAに対する患者サンプルの力価は、それぞれ、19%、38%および47%低かった(20個の患者サンプルの平均値)。おそらく、p244に対する抗体が最も良い特異性を有する。
【0038】
阻害研究
漸増濃度のペプチドをサンプル希釈物に加えることにより、環状ペプチド(p244cyc)および対応する線状ペプチド(p244)の特異性を阻害試験で試験した。p244cycペプチドは最も高いインヒビター濃度(100μg/ml)で阻害し、8個の患者サンプルの結合の平均は61%であった(図2A)。3個のサンプルは50%未満で阻害された。p244は最も高いインヒビター濃度(100μg/ml)で阻害し、24個の患者サンプルの結合の平均は70%であった(図2B)。3個のサンプルは50%未満で阻害された。p244はおそらくp244cycペプチドよりも特異的であるようである。最終的に、プレートをp244でコーティングし、患者サンプルのp63との結合を阻害することにより、p244のエピトープはp63に類似することが確認された。p63は最も高い阻害濃度(100μg/ml)で阻害し、22個の患者サンプルの結合の平均は53%であった(図3)。9個のサンプルは50%未満で阻害した。
【0039】
p244の修飾
これまでの結果をまとめると、患者サンプルはペプチド244により最も良く認識されるようである。それゆえ、修飾型p244をMDAを用いて修飾し、p244およびp244−MDAの両方をEIAにおける抗原として使用した。p244およびp244−MDAに対する患者サンプルの力価(平均値±SD)は対照サンプルの力価よりもわずかに高かった(表5)。
【0040】
ペプチドEIAの評価
CHDの症状を有する患者の205個のサンプルを分析した。患者を血管造影法により試験し、0−、1−、2−または3−脈管疾患として分類した。ペプチドp244およびp244−MDAをペプチドEIAにおける抗原として使用し、結果をヒト−LDL−ベースのoxLDL EIAと比較した。
【0041】
p244−MDAに対する自己抗体の力価は、3−脈環疾患を有する患者において、0−、1−または2−脈管疾患を有する患者と比較して最も高かった(ANOVA p=0.0268)。ヒト−LDL−ベースのoxLDL(n=185)に対する自己抗体の力価は、p244に対する力価と相関し(r=0.227 p=0.0019)、ならびにp244−MDAに対する力価と相関していた(p=0.217 p=0.003)。ペプチドp244およびp244−MDAに対する自己抗体の力価を、抗oxLDL力価に基づいて4つのグループに分類したヒト−LDL−ベースのoxLDLに対する自己抗体の力価と比較した場合に相関が確認された(第1四分位値.0.072−0.22(n=37)、第2四分位値.0.22−0.36(n=44),第3四分位値.0.36−0.63(n=57)および第4四分位値.0.63−2.757(n=68))(図4)。さらに、本発明者らはp244およびp244−MDAに対する抗体の量を、the New York Heart Association(NYHA)心疾患分類(heart disease classification)に従って分類した狭心症症状と比較した(NYHA−1 n=5、NYHA−2 n=12、NYHA−3 n=27およびNYHA−4 n=14)。本発明者らは、狭心症の症状が強まると抗体力価が上昇することを見出した(図5)。NYHAクラス分けと比較した冠状血管狭窄の総和(NYHA−1 n=14、NYHA−2 n=26、NYHA−3 n=57およびNYHA−4 n=29)は、冠状動脈性心臓病の進行に伴う、さらに深刻な症状を示した(図6)。この結果は、冠状血管造影法を用いて試験した冠状血管狭窄の総和、ならびに抗体が狭心症症状の重篤さと相関することを示した。
【0042】
【表3】
値は、ブランクを差し引いた後の平均吸光度±SDである。
【0043】
【表4】
値は、ブランクを差し引いた後の平均吸光度±SDである。
Claims (15)
- 酸化低密度リポ蛋白に対する親和性を有する、環化型または多量体形のペプチド。
- その単量体形が8〜40アミノ酸残基を含有する、請求項1に記載のペプチド。
- 同じ長さのapoB−100タンパク質の配列と少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含有する、請求項1または2に記載のペプチド。
- apoB−100タンパク質の少なくとも一部に対応するアミノ酸配列を有する、請求項3に記載のペプチド。
- 単量体形のペプチドが105 l/molより大きい親和定数を有する抗体と相互作用する、請求項1〜4のいずれかに記載のペプチド。
- 単量体形のペプチドが配列番号1〜3のいずれかの配列を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のペプチド。
- 単量体形のペプチドが配列番号5の配列を含む、請求項1〜5のいずれかに記載のペプチド。
- 各単量体が1つ以上のLys残基を含有し、多量体形はジアルデヒドを用いて誘導体化させることにより得ることができる、請求項1〜7のいずれかに記載のペプチド。
- ジアルデヒドがマロンジアルデヒドである、請求項8に記載のペプチド。
- 単量体がCys残基を含有し、それにより多量体形が連結されている、請求項1〜7のいずれかに記載のペプチド。
- 環化型である、請求項1〜7のいずれかに記載のペプチド。
- イムノアッセイにおいて、酸化低密度リポ蛋白に対する親和性を有するサンプル中の抗体の存在、場合により量を検出するための、請求項1〜11のいずれかに記載のペプチドの使用。
- サンプル中の低密度リポ蛋白に対する自己抗体の量を測定する方法であって、
(i)サンプルを、固定化した請求項1〜11のいずれかに記載のペプチドと、自己抗体が該ペプチドと結合し得る条件下で接触させること、および
(ii)結合の量を決定すること、
を含む方法。 - サンプルが患者からの血清または血漿サンプルである、請求項13に記載の方法。
- (i)請求項1〜11のいずれかに記載のペプチド、および
(ii)免疫吸着アッセイを行うために必須の試薬
をそれぞれ含む容器を備えたユニットを有する、酸化LDLの自己抗体を測定するのに適したキット。
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