JP2010515023A - 心血管系自己免疫疾患パネルおよびその使用方法 - Google Patents

心血管系自己免疫疾患パネルおよびその使用方法 Download PDF

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Abstract

ここに、特に、心血管系自己免疫疾患および心血管系自己免疫疾患の危険性を評価および管理するための診断試験、使用方法およびキットが提供される。本発明のアッセイ方法は特に、心血管系疾患、自己免疫疾患に罹っているまたは自己免疫疾患のある個体の血縁である対象の心血管系自己免疫疾患またはその危険性を同定するために使用できる。この方法は、心血管疾患の症状を呈している対象、および、見かけは健康で心血管疾患の症状をまだ呈していないが時が経てば示す可能性のある対象を試験するために使用できる。1つの実施態様において、本発明はまた、心血管疾患のあるまたはその危険性のある対象が免疫抑制療法または免疫吸収療法の候補であるかを判断する方法を提供する。本発明はまた、本発明の方法を実行するために有用なキットおよびキット構成要素を提供する。

Description

本発明は一般的には心血管系自己免疫疾患の診断、管理および治療に関する。より特定的には本発明は特に心血管系自己免疫疾患および心血管系自己免疫疾患の危険性の評価および管理に関する診断試験、使用方法およびキットに関する。1つの実施態様において本発明は心血管系自己免疫疾患の危険性を層別化する方法および手段を提供する。
自己免疫疾患はヒトの器官系のほぼすべてに関連する80を超える重篤な疾患に関与している。確定された自己免疫疾患(たとえば、全身性ループス・エリトマトーデス、リウマトイド関節炎、甲状腺炎など)の患者では心血管病の発症率が高くなっていることが科学文献に報告されている(Frostegard,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,15:1776−1785(2005))。多くの内因性抗原に対する自己抗体が検出されており、そのうちには心血管病の指標となる自己抗体も含まれる。酸化LDLに対する自己抗体は冠状血管造影図が正常な患者においても異常な患者においても検出されるが、その抗体価は、正常な対象および冠状血管造影図が正常な患者よりも血管造影図に冠状動脈疾患の症状がある患者のほうが有意に高い(Buiら,American Health Journal,131(4),663−667(1996))。心筋炎および拡張性心筋症においても根底に自己免疫が存在することが示唆されている(Maisch,Herz,30,535−544(2005);Caforioら,G.Ital.Cardiol.,27,106−112(1997))。
自己抗体はまた、トロポニンアッセイを含む心臓のバイオマーカー試験で得られた擬陰性結果の一因となることが観察された(たとえば、Bohnerら,Clin.Chem.,42,2046(1996))。この観察および最近追加された証拠は、心血管疾患(CD)の発症には臨床症状よりも数年または数十年早く生じていた自己免疫成分が関与するらしいという本発明の基礎をなす新しい推論を支持する。患者に心臓病があっても苦痛がないため医師を訪ねて診断を受けるのが遅れることもあり得る。
CDは合衆国の主要死亡原因の1つである。CDは、進行性で、ゆっくりと進行し、確定されたときには慢性化していることもある臨床症候群である。自己免疫性の心血管疾患――心血管系自己免疫疾患(CADとしても知られる)――の早期検出の重要性は誇張しすぎることはない。心血管系自己免疫疾患の早期検出は、特に慣用の療法に非応答性の患者および/または免疫抑制剤が有益であるような患者においては、治療の開始についても回復の可能性についてもより大きい機会を提供する。なお、疾患が自己免疫性であることが早期に判断されたならば、選択される治療方法は必然的に標準的なCD治療の方法とは違ってくるであろう。
個別に測定できる様々な心血管病の指標となるバイオマーカーが存在する(たとえば、トロポニン、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、nt−プロBNP、クレアチンキナーゼアイソザイムMB(CKMB)、ミオグロビン、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、コリン、C−反応性タンパク質(CRP)、インターロイキン−6(IL−6)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、胎盤成長因子(PlGF)、妊娠関連血漿タンパク質−A(PAPP−A)、可溶性CD−40(sCD40)など)。緊急の介入および入院の理由となる急性冠状動脈症候群(ACS)を診断するために使用されるマーカーが特に重要である。けれどもこれらのバイオマーカーを使用すると、ある程度のパーセンテージの患者はACSであると正しく診断されないので、その結果として不運な成り行きになる。問題の一部は、これらの内因性心血管抗原が患者サンプル中でしばしば不安定であり、タンパク分解または酸化または他の反応を生じてこれがサンプル処理を混乱させ、患者サンプルの再分析能力を限定することにある。さらにこれらのマーカーは心血管の病態生理学の危険性を前以って確定して発症を予防することはできない。
このように、現行の診断ツールは心血管系自己免疫疾患の検出には明らかに不適切である。心血管疾患については一般開業医も専門医も等しく過小診断したり、誤診断したりする。心血管疾患の危険性を評価できるツールが必要とされている。
上記に基づいて、疾患の急性症状に関連したバイオマーカーに依存しない心血管系自己免疫疾患の危険性を評価する方法および手段の必要性が依然として存在する。従って、特に心血管疾患に関連する危険性を評価するための診断試験、診断試験パネル、使用方法およびキットを提供することが本発明の目的である。自己抗体はインビボで長い循環寿命およびインビトロで長期安定性を有しており、いくつかの抗原よりもはるかに有効な分析物である。従って最適な形態においては、本発明の試験、試験パネル、方法およびキットが内因性心血管抗原に対する自己抗体の検出を含み、これにより場合によっては現用の方法に固有の心血管疾患検査が陥り易い陥穽をある程度防止できる。これらのおよびその他の目的はこの文中に与えられた記載から明らかであろう。
背景情報に関する上記の論議は読者が本発明を理解する助けとなるように提供したものであり、これらの情報が本発明の先行技術の記載であるまたは先行技術を構成すると認めたものではない。
Frostegard著,Arteioscler.Thromb.Vasc.Biol.,15,2005年,p.1776−1785 Buiら著,American Health Journal,131(4),1996年,p.663−667 Maisch著,Herz,30,2005年,p.535−544 Caforioら著,G.Ital.Cardiol.,27,1997年,p.106−112 Bohnerら著,Clin.Chem.,42,1996年,p.2046
要旨
本発明は一般的には心血管系自己免疫疾患の診断、管理および治療に関する。より特定的には本発明は特に心血管系自己免疫疾患および心血管系自己免疫疾患の危険性の評価および管理に関する診断試験、使用方法およびキットに関する。本発明はまた、心血管系自己免疫疾患の危険性を層別化する方法および手段を提供する。
1つの実施態様において本発明は、対象が心血管系自己免疫疾患に罹っている(たとえば、現在罹っている)または発症し得る(たとえば、将来のある時期に)危険性を評価する方法に関する。この方法は、
(a)対象からサンプルを採取する段階と、
(b)対象のサンプル中の複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベル(たとえば、量)を測定する段階と、
(c)該レベルを臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象または心血管疾患を有している標準対象から採取したサンプル中で測定した同じ自己抗体のレベルに比較する段階と、および
(d)段階(c)の比較に基づいて対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかの危険性を同定する段階と、を含む。
この方法によれば、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが、
(i)臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して対象サンプル中で高いとき、および/または、
(ii)心血管疾患を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して対象のサンプル中で高いかまたはほぼ同じであるとき、
このような危険性が存在する。
1つの特徴によれば、対象が自己免疫疾患を有しているときまたは自己免疫疾患を有している個体の一親等の血縁であるとき、危険性がさらに増加する。別の特徴によれば、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルは心血管系自己免疫疾患の存在が理由で上昇している。また別の特徴によれば、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルは心血管系自己免疫疾患の発症危険性の増加が理由で上昇している。
上記方法に使用される対象のサンプルは、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、尿または他の体液サンプルを含み得る。
上記方法において、心血管系自己免疫疾患は、心筋炎、心筋症および虚血性心疾患から成るグループから選択された疾患、障害または状態である。
場合により、対象のサンプル中の“複数”の異なる内因性心血管抗原が2つ以上の内因性心血管抗原を含む。さらに場合により、複数が2から10、特に5から10の範囲を含む。より特定的には場合により、複数が2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20から成るグループから選択された数を含む。
この方法に使用される異なる内因性心血管抗原は、α1−アドレナリン受容体、アンギオテンシン−1受容体、アネキシンV、B型ナトリウム利尿ペプチド、心筋トロポニン、ミオシン、トロポミオシン、細胞質好中球、プロテインCの内皮受容体、VIII因子、グレリン、ハロゲン化タンパク質、硝酸化タンパク質、熱ショックタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、胎盤成長因子、リン脂質、プロテイナーゼ−3、プロトロンビン、プルキンエ線維、筋線維鞘Na−K−ATPアーゼ、β1−アドレナリン受容体、β2−アドレナリン受容体および組織型プラスミノーゲン活性化因子から成るグループから選択される。別の特徴によれば、この方法に使用される異なる内因性心血管抗原がさらに、カルジオリピン、酸化LDLおよびβ−2−グリコプロテイン−1から成るグループから選択された抗原を含む。
別の実施態様において本発明は、心血管疾患のある患者が自己免疫療法を受けるために適格であることを同定する方法に関する。この方法は、
(a)心血管疾患患者からサンプルを採取する段階と、
(b)対象のサンプル中の複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを測定する段階と、
(c)該レベルを臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象または自己免疫疾患を有している標準対象から採取したサンプル中で測定した同じ自己抗体のレベルに比較する段階と、および
(d)段階(c)の比較に基づいて記心血管疾患患者が自己免疫療法を受けるために適格であることを同定する段階と、
を含む。
このような方法によれば、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが、
(i)臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して心血管疾患患者のサンプル中で高いとき、および/または、
(ii)自己免疫疾患を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して心血管疾患患者のサンプル中で高いかまたはほぼ同じであるとき、
心血管疾患患者は自己免疫療法を受けるために適格である。
さらにこのような方法によれば、対象が自己免疫疾患を有しているときまたは自己免疫疾患を有している個体の一親等の血縁であるとき、心血管疾患患者は自己免疫療法を受けるために適格である。
この方法の1つの特徴によれば、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルは心血管系自己免疫疾患の存在が理由で上昇している。この方法の別の特徴によれば、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルは心血管系自己免疫疾患の発症危険性の増加が理由で上昇している。
上記方法に使用される対象のサンプルは、末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、尿または他の体液サンプルを含み得る。
上記方法において、心血管系自己免疫疾患は、心筋炎、心筋症および虚血性心疾患から成るグループから選択された疾患、障害または状態である。
場合により、対象のサンプル中の“複数”の異なる内因性心血管抗原が2つ以上の内因性心血管抗原を含む。さらに場合により、複数が2から10、特に5から10の範囲を含む。より特定的には場合により、複数が2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20から成るグループから選択された数を含む。
この方法に使用される異なる内因性心血管抗原は、α1−アドレナリン受容体、アンギオテンシン−1受容体、アネキシンV、B型ナトリウム利尿ペプチド、心筋トロポニン、ミオシン、トロポミオシン、細胞質好中球、プロテインCの内皮受容体、VIII因子、グレリン、ハロゲン化タンパク質、硝酸化タンパク質、熱ショックタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、胎盤成長因子、リン脂質、プロテイナーゼ−3、プロトロンビン、プルキンエ線維、筋線維鞘Na−K−ATPアーゼ、β1−アドレナリン受容体、β2−アドレナリン受容体および組織型プラスミノーゲン活性化因子から成るグループから選択される。別の特徴によれば、この方法に使用される異なる内因性心血管抗原がさらに、カルジオリピン、酸化LDLおよびβ−2−グリコプロテイン−1から成るグループから選択された抗原を含む。
また別の実施態様において本発明は、心血管系自己免疫疾患に罹っているまたは発症危険性のある対象の同定方法を提供する。この方法は、対象から採取したサンプルをアッセイにかけて複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを検定する段階を含み、対象が自己免疫疾患に罹っているかまたは対象が自己免疫疾患に罹った個体の一親等の血縁である場合、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の高レベル存在が当該心血管系自己免疫疾患の存在または危険性を示す指標となる。
本発明によればまた、サンプル中の少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体を検定する検査キットが提供される。この検査キットは複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを検出する手段を含む。1つの特徴によれば、この検査キットがさらに、固相と固相に固定された捕獲剤とを含み、捕獲剤はα1−アドレナリン受容体、アンギオテンシン−1受容体、アネキシンV、B型ナトリウム利尿ペプチド、心筋トロポニン、ミオシン、トロポミオシン、細胞質好中球、プロテインCの内皮受容体、VIII因子、グレリン、ハロゲン化タンパク質、硝酸化タンパク質、熱ショックタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、胎盤成長因子、リン脂質、プロテイナーゼ−3、プロトロンビン、プルキンエ線維、筋線維鞘Na−K−ATPアーゼ、β1−アドレナリン受容体、β2−アドレナリン受容体および組織型プラスミノーゲン活性化因子から成るグループから選択された内因性心血管抗原のアミノ酸配列の一部または全部に対応する配列を有するペプチドである。別の特徴によれば、異なる内因性心血管抗原がさらに、カルジオリピン、酸化LDLおよびβ−2−グリコプロテイン−1から成るグループから選択された抗原を含む。
この検査キットはさらに場合により、種特異的抗体を含む標識された検出試薬を含み、さらに場合により、該ラベルと相互作用して検出可能なシグナルを発生する指示薬を含む。
1つの特徴によれば、検査キットの固相がマイクロプレートを含む。
別の特徴によれば、検査キットの固相が微粒子を含む。
また別の特徴によれば、検査キットの固相が電極を含む。
追加の実施態様において本発明は、対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかの危険性を評価する方法に関する。この方法は、
(a)対象からサンプルを採取する段階と、
(b)対象のサンプル中の1つ以上の内因性心血管抗原のレベルを測定する段階と、
(c)対象のサンプル中の複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを測定する段階と、
(d)1つ以上の内因性心血管抗原のレベルを、臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象から採取したサンプル中、心血管疾患に罹っている標準対象から採取したサンプル中またはもっと早い時期に採取した当該対象のサンプル中で測定した同じ内因性心血管抗原のレベルに比較する段階と、
(e)自己抗体のレベルを、臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象から採取したサンプル中、心血管疾患に罹っている標準対象から採取したサンプル中またはもっと早い時期に採取した当該対象のサンプル中で測定した同じ自己抗体のレベルに比較する段階と、および
(f)段階(d)および(e)における比較に基づいて対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかの危険性を同定する段階と、
を含む。
場合により、段階(b)の測定と段階(c)の測定とが同時に行われる。さらに場合により、段階(b)の測定と段階(c)の測定とが任意の順序で順次に行われる。
ここに記載の方法の1つの特徴によれば、
(i)段階(d)において1つ以上の内因性心血管抗原のレベルが、臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で変化(たとえば、増加)しているとき、および/または、心血管疾患に罹っている標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で変化(たとえば、増加)しているかまたはほぼ同じレベルであるとき、および/または、もっと早い時期に採取した対象のサンプル中に比較して変化(たとえば、増加)しているかもしくはほぼ同じレベルであるとき、および/または、
(ii)段階(e)において少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で変化(たとえば、増加)しているとき、心血管疾患に罹っている標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で変化(たとえば、増加)しているかもしくはほぼ同じレベルであるとき、および/または、もっと早い時期に採取した対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で変化(たとえば、増加)しているかもしくはほぼ同じレベルであるとき、危険性が存在している。
ここに記載の方法の別の特徴によれば、
(i)段階(d)において1つ以上の内因性心血管抗原のレベルが臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で変化しているときおよび/または、もっと早い時期に採取した対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で変化しているかもしくはほぼ同じレベルであるとき、および/または、
(ii)段階(e)において少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で増加しているとき、および/または、心血管疾患に罹っている標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で増加しているかもしくはほぼ同じレベルであるとき、危険性が存在している。
本発明のこれらのおよびその他の特性、特徴、目的および実施態様は、本発明の代表的な特性、特徴、目的および実施態様に関する情報を含む以下の詳細な記載からいっそう明らかになるであろう。
詳細な説明
驚きでもあり予想外でもあったが、内因性心血管抗原に対する自己抗体が、見かけは健康な個体で見出され、病的特性を有しており、心臓の病態生理に導くことが発見された。内因性心血管抗原に対するこのような自己抗体はこの文中に記載した診断試験、方法およびキットを使用して評価できる。特に、これらの自己抗体のレベル(たとえば、複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベル)は、心血管系自己免疫疾患について発症危険性のある対象または現在罹っている対象を臨床的に鑑別するために使用できる。本発明は場合により、心血管疾患の急性症状に対する現用のバイオマーカーに依存しない危険性評価手段を提供する。この文中に記載した診断試験、方法およびキットを使用して得られたデータは、治療計画の有効性をモニターするために使用でき、また場合により緊急環境および非緊急環境で使用できる。特に有利なことに、心血管疾患の症状を呈している対象および見かけは健康で心血管疾患の症状をまだ呈していないが時が経てば示す可能性のある対象を検査するために使用できる。
従って本発明は特に、心血管系自己免疫疾患および心血管系自己免疫疾患の危険性の評価および管理に関する診断試験、使用方法およびキットに関する。1つの実施態様において本発明は、心血管系自己免疫疾患の危険性を層別化する方法および手段を提供する。本発明のこれらのおよび追加の実施態様、特性、特徴、代表例および実施例は以後の項においてより詳細に記載する。
定義
この文中に否定の定義がないならば、この文中に使用したすべての技術用語および科学用語は本発明が所属する分野の平均的な当業者が共通に理解する意味と同義である。
“危険性”という用語は、現在または将来のある時期に発生する特定イベントの可能性または確率を表す。“危険性の層別化”は、医師が患者を特定の疾患、障害または状態の発生の危険性が低い、普通、高いまたは最も高いという階層に分類できるような既知の臨床的危険要因の編制を意味する。
本発明による“診断する”は、該当する疾患、合併症または危険性の判定、モニター、確認、下位分類および予測を行うことを意味する。“判定”は疾患、合併症、危険性または因子(たとえば、自己抗体)の認識に関する。“モニター”は、疾患の進行または疾患もしくは合併症の進行に対する特定治療の影響を分析するために既に診断した疾患、合併症または危険因子を追跡することである。“確認”は、既に行った診断を他の指標またはマーカーを使用して補強または実証することである。“分類”または“下位分類”は、診断された疾患、障害または状態を種々のサブクラスに従ってさらに限定する、たとえば、疾患または危険性を軽度、中度または重度の形態に限定することである。“予測”は、他の症状またはマーカーが明白になる前または有意に変化する前に疾患、障害、状態または合併症を予知することである。
この文中に使用した“心血管系自己免疫疾患”という用語は、正常な機能を低下させるような心臓または心臓に供給する血管の構造的または機能的な異常を含む隠れた自己免疫疾患に起因する心臓の健康なまたは正常な状態からの逸脱を表す。心血管系自己免疫疾患の例は、隠れた自己免疫疾患がおのおのの原因である心筋炎、心筋症および虚血性心疾患を含む。
“自己免疫疾患”は、自己抗原に対する免疫寛容の喪失を表す。自己免疫疾患の診断基準はいくつか存在し、(1)循環中に自己抗体が存在する、(2)罹病した器官で自己抗体が観察される、(3)標的抗原が同定される、(4)抗原、血清または自己抗体の導入によって免疫感作した動物モデル体内で誘導される、および、(5)免疫抑制治療または免疫吸収治療に応答する、などを含む。自己免疫疾患は他にも、(a)女性の罹患率が高い、(b)家族に群発する傾向がある(疾患によって違うが)、(c)無症候性の危険がある(すなわち、自己抗体が疾患に何年も先行して存在している)、(d)周期性である、および(e)慢性である、などの特徴を含む。
“自己免疫”は、たとえば自己抗体または宿主抗原に反応性のTリンパ球の存在によって特徴づけられる宿主抗原に指向性の1つ以上の免疫応答を表す。
“心筋炎”という用語は、心筋の炎症を表す。心筋炎は、ウイルス感染、サルコイドーシス、リウマチ熱、自己免疫疾患(全身性ループス・エリテマトーデスなど)および妊娠のような様々な状態が原因で生じる。
“心筋症”という用語は、心臓筋肉の弱体化または心臓筋肉の構造変化を表す。これはしばしば不適正な心臓のポンプ作用または他の心機能異常を伴う。心筋症は、ウイルス感染、心臓発作、アルコール中毒、長期間の重篤な高血圧、栄養不足(特に、セレン、サイアミン、L−カルニチンの不足)、全身性ループス・エリテマトーデス、ツェリアカ病、末期腎臓病などが原因で生じる。心筋症のタイプには、拡張性心筋症、肥大性心筋症および拘束性心筋症などがある。
この文中に使用した“拡張性心筋症”という用語は、左心室の顕著な拡張および不適正機能によって特徴づけられる通常は特発性の全体的な心筋障害である。拡張性心筋症は、虚血性心筋症、特発性心筋症、高血圧性心筋症、感染性心筋症、アルコール性心筋症、中毒性心筋症および周産期心筋症を含む。
この文中に使用した“肥大性心筋症”という用語は、左右の心筋が異なる大きさに成長した結果として生じた状態を表す。
この文中に使用した“拘束性心筋症”という用語は、収縮期と収縮期との間の心臓筋肉の弛緩能力が失われ十分な血液供給が阻害されることを特徴とする状態を表す。
“虚血性心疾患”という用語は、血液供給の欠如または相対的不足が理由で心筋が損傷されたかまたは機能効率が低下した状態を表す。もっとも多い原因はアテローム性動脈硬化症であり、これは、狭心症、急性心筋梗塞および慢性虚血性心疾患を含む。
“狭心症”という用語は、心筋の血管(冠状血管)の不適正な血流を原因とする胸部の不快を表す。
“心筋梗塞”(心臓発作)は、心臓筋肉の1つの領域が、該領域に適正な酸素供給が行われないために壊死または損傷したときに生じる。
この文中に使用した“免疫抑制療法”という用語は、たとえば自己抗体の産生のような体内の免疫応答の抑制を目的とする治療方法を意味する。
この文中に使用した“免疫吸着療法”という用語は、標的抗体に結合させることによって血漿から抗体を除去する治療を表す。典型的には、血漿を対象から取出し、固相に固定した標的抗体の結合パートナーに、結合するために十分な条件下で接触させ、次いで血漿を対象に戻す。
“対象”は何らかの動物種、好ましくは哺乳類の構成員、場合によりヒトである。対象は健康な見かけの個体、疾患に罹った個体、および疾患治療中の個体でよい。単数または複数の“標準対象”は、1つ以上のパラメーターに関して別の個体または集団を評価するために標準として使用される個体または集団である。
さらにこのような標準対象に関してこの文中に記載した“臨床的に正常な心血管機能”は、既知のまたは見かけのまたは現在検出可能な心血管機能低下が存在せずまた内因性心血管抗原に対する自己抗体の検出可能な増加もない標準対象を意味する。
“一親等の血縁”という用語は、両親、子供または同胞の兄弟姉妹を表す。
本発明の方法を使用してアッセイにかけることができる“サンプル”は、全血、血清、血漿、滑液、脳脊髄液、気管支洗浄液、腹水、骨髄吸引液、胸膜滲出液、尿のような生物流体、および、腫瘍組織または他の体内成分または問題の分析物を含有できる何らかの組織培養上清を含む。サンプルは当業界で公知の適当な方法のいずれかによって採取できる。
この文中に使用した“分析物”という用語は、サンプル(すなわち、生物サンプル)中に存在し得る検出すべき物質を表す。分析物は、天然産生の特異的結合パートナーを有するかまたは特異的結合パートナーを製造できる物質であればよい。従って、分析物は1つのアッセイにおいて1つ以上の特異的結合パートナーに結合できる物質である。
この文中に使用した“結合パートナー”という用語は、結合ペア、すなわち、一方の分子が他方の分子に結合する一対の分子の構成員を表す。特異的に結合する結合パートナーは“特異的結合パートナー”と呼ばれる。イムノアッセイに常用の抗原抗体結合パートナーの他にも、ビオチンとアビジン、糖質とレクチン、相補的ヌクレオチド配列、エフェクター分子とレセプター分子、補因子と酵素、酵素阻害剤と酵素などの特異的結合パートナーがある。特異的結合パートナーはさらに、原形の特異的結合パートナーの(1つ以上の)類似体である(1つ以上の)パートナー、たとえば分析物−類似体を含み得る。免疫反応性特異的結合パートナーは、組換えDNA方法によって形成されたものも含めた抗原および抗原フラグメント、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびこれらの抗体のフラグメント、それらの複合体を含む。
この文中に使用した単数または複数の“エピトープ”または“問題のエピトープ”という用語は、いずれかの分子に存在し特異的結合パートナーの(1つまたは複数の)相補的部位によって認識され該部位に結合できる(1つまたは複数の)部位を表す。該分子および特異的結合パートナーは特異的結合部位の部品である。たとえば、エピトープはポリペプチド、タンパク質、ハプテン、糖質抗原(非限定例は糖脂質、糖タンパク質またはリポ多糖)または多糖であり、その特異的結合パートナーは非限定的に抗体たとえば自己抗体である。典型的にはエピトープはもっと長い抗原フラグメント(すなわち、抗体に結合できる領域またはフラグメント)に内包され、特異的結合パートナーに接触することが判っている正確な残基を表す。抗原性フラグメントが2つ以上のエピトープを内包することも可能である。
特異的結合対の構成員(たとえば、抗原と抗体)間の相互作用に関してこの文中に使用した“特異的”または“特異性”は、相互作用の選択的反応性を表す。“に特異的に結合する”という表現およびその類似用語は、内因性心血管抗原に特異的に結合し(たとえば優先的に反応し)他の因子に特異的に結合しない自己抗体の能力を表す。内因性心血管抗原に特異的に結合する抗体(自己抗体を含む)または抗体フラグメントはたとえば、診断用イムノアッセイ(たとえば、ラジオイムノアッセイ(“RIA”)および酵素結合免疫吸着剤アッセイ(“ELISA”)(参照:たとえば、Paul編,Fundamental Immunology,2nd ed.,Raven Press,New York,pp.332−336(1989))、BIAcore(R)(生体高分子相互作用分析(biomolecular interaction analysis)、たとえば、BIAcore International AB,a GE Healthcare company,Upsala,Swedenから入手可能な機器)、KinExA(R)(動的排除アッセイ(Kinetic Exclusion ssay),Sapidyne Instruments(Boise,Idaho)から入手可能な機器)または当業者に公知の他の技術によって同定できる。1つの実施態様において、“特異的に結合する”という用語は、標的分子/配列に対する結合優先性(たとえば、親和性)が非特異的標的分子(たとえば、ランダムに生じた特異的認識部位のない分子)の少なくとも約2倍、より好ましくは少なくとも約5倍であることを示す。
“異なる内因性心血管抗原に”に指向性であると記述された自己抗体は、同一内因性抗原中の異なるエピトープを指向するだけでなく、当該自己抗体が異なる内因性抗原に特異性を有していることを意味する。しかしながら、この方法および検査キットのパネルが異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体を評価するように設計されることに加えて、場合によってはこの方法および検査キットパネルが同じ内因性心血管抗原を指向する1つ以上の自己抗体を検出する手段を含むことができる。言い換えると、特に内因性心血管抗原が複合抗原性分子であるときには自己抗体を検出するために特定内因性心血管抗原の多数のエピトープまたは抗原性部位がパネルに含まれるのが望ましい。
内因性心血管抗原に対する自己抗体に関してまたは内因性心血管抗原に関してこの文中に使用した“高レベル”という用語は、正常レベルもしくは正常範囲よりも高いまたは他の標準レベルもしくは範囲(たとえば、もっと前の時期またはベースラインのサンプル)よりも高い生物サンプル中のレベルを表す。“変化したレベル”という用語は、正常レベルもしくは範囲または別の標準レベルもしくは範囲(たとえば、もっと前の時期またはベースラインのサンプル)に比べて変化(増加または減少)したサンプル中のレベルを表す。内因性心血管抗原および該抗原に反応性の自己抗体の正常レベルまたは範囲は標準実態に従って限定される。いくつかの場合には、抗体のレベルが極めて低いので、いわゆる変化したレベルまたは変更は正常レベルもしくは範囲または標準レベルもしくは範囲に比べて実験誤差やサンプルのばらつきによって説明できない明白な変化が存在するときに生じたと考えることができる。従って、特定の生物サンプル中で測定されたレベルは、正常組織の同様のサンプル中で測定されたレベルまたはレベル範囲に比較されるであろう。この文脈で、“正常組織”は、検出可能な心臓病のない個体から採取した組織であり、“正常な”(ときには“対照”と呼ばれる)患者または集団は、検出可能な心臓病を示さない患者または集団である。分析物が正常には検出されない(たとえば、正常レベルがゼロまたは正常集団の約25から約75百分位数の範囲内)のに試験サンプル中では検出される場合、および、分析物が正常レベルよりも高いレベルで試験サンプル中に存在する場合に、分析物のレベルが“高い”と言う。
この文中に使用した“固相”という用語は、不溶性であるかまたは以後の反応によって不溶性にされる材料を表す。固相は捕獲剤を引き付けて固定化する固有能力に基づいて選択できる。あるいは、捕獲剤を引き付けて固定化する能力をもつ連結剤を固相に固定してもよい。連結剤はたとえば、捕獲剤自体に対してまたは捕獲剤に共役した帯電物質に対して逆の電荷に帯電した物質を含む。一般的に連結剤は、固相に固定化され(付着し)、結合反応を介して捕獲剤を固定化する能力をもつ結合パートナー(好ましくは特異的)であればよい。連結剤は、アッセイの実行前またはアッセイの実行中に捕獲剤を固相材料に間接結合させ得る。固相はたとえば、プラスチック、誘導プラスチック、磁性または非磁性の金属、ガラスまたはシリコンでよく、たとえば、試験管、マイクロタイターウェル、シート、ビーズ、微粒子、チップおよび平均的な当業者に公知の他の形状を含む。
この文中に使用した“微粒子”という用語は、超遠心によって回収可能な小粒子を表す。微粒子は典型的には約1ミクロン以下のオーダの平均粒径を有している。
この文中に使用した“捕獲剤”という用語は、分析物に好ましくは特異的に結合する結合パートナーを表す。捕獲剤は固相に付着できる。この文中に使用したように、固相に固定された捕獲剤が分析物に結合して、“固相に固定された複合体”が形成される。
この文中に使用した“標識された検出試薬”という用語は、分析物に好ましくは特異的に結合し、検出可能ラベルで標識されているかまたはアッセイにおいて使用中に検出可能ラベルで標識される結合パートナーを表す。
“検出可能ラベル”は、検出可能であるかまたは検出可能にできる部分を含む。
標識された検出試薬に関して使用した“直接ラベル”は、何らかの手段によって検出試薬に付着させた検出可能ラベルである。
標識された検出試薬に関して使用した“間接ラベル”は、検出試薬に特異的に結合する検出可能ラベルである。従って間接ラベルは、検出試薬の一部分の特異的結合パートナーである部分を含む。たとえば、標識されたアビジンにビオチニル化抗体を接触させることによって間接標識抗体を生成するために使用されるビオチンおよびアビジンはこのような部分の例である。
この文中に使用した“指示薬”という用語は、ラベルに接触して検出可能シグナルを発生する何らかの物質を表す。従ってたとえば慣用の酵素標識方法では、酵素で標識した抗体を基質(指示薬)に接触させて、有色反応生成物のような検出可能シグナルを発生させる。
この文中に使用した“抗体”という用語は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされている1つ以上のポリペプチドから構成されるタンパク質を表す。この用語は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および、それらのフラグメント、ならびに、免疫グロブリン遺伝子配列の操作によって得られた分子を包含する。認識された免疫グロブリン遺伝子は、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子ならびに多様な免疫グロブリン可変領域遺伝子を含む。L鎖はカッパまたはラムダとして分類されている。H鎖はガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類されており、これらは免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEをそれぞれ決定する。
典型的な免疫グロブリン(抗体)構造単位はテトラマーを含むことが知られている。各テトラマーは等しい2対のポリペプチド鎖から構成され、各対が1つの“L”鎖(約25kD)と1つの“H”鎖(約50−70kD)とを有している。各鎖のN末端は、主として抗原認識を担当する約100から110またはそれ以上のアミノ酸の可変領域を限定している。“可変L鎖(VL)”および“可変H鎖(VH)”という用語はこれらのL鎖およびH鎖をそれぞれ表す。
抗体は完全形の(intact)免疫グロブリンとして存在するかまたは様々なペプチダーゼによる消化によって産生した確定された特性をもつ複数のフラグメントとして存在する。従ってたとえばペプシンは、ヒンジ領域のジスルフィド連鎖下方で抗体を消化してF(ab’)2を産生させる。これはFabのダイマーであり、それ自体がジスルフィド結合によってVH−CH1に接合したL鎖である。F(ab’)2は緩やかな条件下で還元され、ヒンジ領域のジスルフィド連鎖が破断され、これによりF(ab’)2ダイマーがFab’モノマーに変換される。Fab’モノマーは本質的に、ヒンジ領域部を伴うFabである(他の抗体フラグメントのより詳細な記載に関してはFundamental Immunology,W.E.Paul編,Raven Press,N.Y.(1993)を参照するとよい)。完全形の抗体の消化によって様々な抗体フラグメントが決定されるが、当業者は、このようなFab’フラグメントが化学的にまたは組換えDNA方法の使用によって新規に合成できることを理解されるであろう。
従って、この文中に使用した“抗体”という用語はまた、完全抗体の修飾によって作製されるかまたは組換えDNA方法を使用して新規に合成された抗体フラグメントを含む。好ましい抗体は、一本鎖抗体(一本鎖ポリペプチドとして存在する抗体)、より好ましくは一本鎖Fv抗体(sFvまたはscFv)を含み、この場合の可変H鎖および可変L鎖は互いに接合して(直接的にまたはペプチドリンカーを介して)、連続ポリペプチドを形成している。一本鎖Fv抗体は共有結合的に連結したVH−VLヘテロダイマーであり、直接接合されているかまたはペプチドをコードするリンカーによって接合されたVHおよびVLのコーディング配列を含む核酸から発現され得る(Hustonら,(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879−5883)。VHおよびVLは一本鎖ポリペプチドとして互いに接続されているが、VHドメインとVLドメインとは非共有結合的に会合している。scFv抗体、および、抗体のV領域に由来の天然には凝集していたが化学的に分離されたL鎖およびH鎖ポリペプチドを、抗原結合性部位の構造に実質的に同様の三次元構造に折り畳まれる分子に変換する多数の他の構造は当業者に公知である(参照:米国特許Nos.5,091,513、5,132,405および4,956,778)。
“自己抗体”は、抗体が産生される個人の体内に天然に存在する分析物に結合する抗体である。内因性心血管抗原に対する自己抗体は、内因性心血管抗原に結合する自己抗体である。
この文中に使用した単数形の不定冠詞および定冠詞は、文脈からそうでないことが明らかである場合を除いて複数という意味を含む。
この文中に使用した“約”という用語は、記述された値のほぼ10%内外の変化を表す。具体的にこの用語を使用したか否かにかかわりなく、この文中に提示した所与の値にはつねにこの程度の変化が含まれていることを理解されたい。
サンプルの収集およびプロセシング
本発明のアッセイ方法は一般に、動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトから採取された生物サンプルに対して行われる。
本発明の方法は異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体を含有するサンプルを使用して行うことができる。好都合なサンプルはたとえば血液、血清および血漿を含む。
必要に応じて適当なバッファ溶液もしくは他の溶液に希釈することによってサンプルを前処理してもよく、または所望ならば濃縮してもよい。リン酸塩、トリスなどのような様々なバッファのいずれかを場合により生理的pHで使用する多くの標準水性バッファ溶液のいずれかを使用できる。
種々の内因性心血管抗原に対する自己抗体のアッセイ
ここの記載は特に内因性心血管抗原に対する自己抗体アッセイを提供する。1つの実施態様においてこの方法は、対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかの危険性を評価する方法を提供し、場合により、
(a)対象からサンプルを採取する段階と、
(b)対象のサンプル中の複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを測定する段階と、
(c)これらの自己抗体のレベルを臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象または心血管疾患を有している標準対象から採取したサンプル中で測定した同じ自己抗体のレベルに比較する段階と、および
(d)段階(c)の比較に基づいて対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかの危険性を同定する段階と、を含む。
この方法においては、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが、
(i)臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して対象サンプル中で高いとき、および/または、
(ii)心血管疾患を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して対象のサンプル中で高いかまたはほぼ同じレベルであるとき、危険性が存在すると考える。
心血管系自己免疫疾患:心筋炎、心筋症および虚血性心疾患
特定実施態様において本発明は、心筋炎、虚血性心疾患または心筋症のあるまたはこれらの危険性のある対象のスクリーニング方法を提供する。これらの実施態様の変形においては、心筋症が拡張性心筋症でない。従ってたとえばこの方法は、肥大性心筋症および/または拘束性心筋症のあるまたはそれらの危険性のある対象をスクリーニングするために使用できる。
この方法は、対象から採集したサンプルをアッセイにかけて複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体を検定する段階を含み、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の高レベル存在が心血管系自己免疫疾患の存在またはその危険性を示す指標となる。この方法は、心筋炎、虚血性心疾患または肥大性もしくは拘束性心筋症の鑑別診断を可能にする身体検査および/または病歴の収集を非限定的に含む1つ以上の他の検査と併用して実行できる。これらの障害の診断に使用される様々な検査およびパラメーターは当業者に公知である。
これらの方法は、無症候性対象または心血管系自己免疫疾患に関連する1つ以上の危険要因もしくはその症状を有している対象から採取したサンプルで行うことができる。たとえば、対象は、自己免疫疾患や高血圧の患者であったり、または、肥大性心筋症のような遺伝性の心血管系自己免疫疾患または心血管機能に有害な影響を与える自己免疫疾患(たとえば、糖尿病、リウマチ性心疾患またはループス)の患者の近い(たとえば、一親等の)血縁であったりする。
内因性心血管抗原に対する自己抗体は何らかの簡便な手段によって検出および定量できる。この目的に適した様々なイムノアッセイフォーマットの例は後述する。このアッセイは標準実態に従ってスコア化される。
特定実施態様において、対象に少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体が高レベルで存在すると判定されたときは場合により、対象のミオグロビン、CK−MB、BNP、CRP、トロポニン−I、トロポニン−T、血中酸素レベル、心臓造影、心電図などのような心血管系自己免疫疾患の1つ以上の追加の指標を評価する。
内因性心血管抗原のアッセイに併用される種々の内因性心血管抗原に対する自己抗体のアッセイ
特に内因性心血管抗原トロポニンに対する自己抗体のアッセイは、2006年10月26日に出願された“Assay For Cardiac Troponin Autoantibodies”という標題のUS11/588703に記載されている。該出願に記載されている心臓病の危険性を評価する方法は、(a)サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニンを検定する段階と、および(b)サンプルをアッセイにかけて心筋トロポニン特異的自己抗体を検定する段階とを含み、心筋トロポニンおよび/または心筋トロポニン反応性自己抗体の高レベル存在が心臓病の高い危険性を示す指標となる。
本発明の文脈では、心筋トロポニンの高レベル存在および少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の高レベル存在が心血管系自己免疫疾患の高い危険性を示す指標として使用できる。1つの実施態様においては、自己抗体と共にアッセイにかける内因性心血管抗原が心筋トロポニンを含む。別の実施態様において、アッセイにかける内因性心血管抗原が心筋トロポニン以外の抗原を含む(たとえばこれがパネルアッセイの一部として試験されない場合)。場合により、アッセイで評価される特異的内因性心血管抗原は、アッセイによって同定される自己抗体が指向する複数の内因性心血管抗原と同じでもよくまたは違っていてもよい。
さらに、心筋トロポニン以外の内因性心血管抗原の場合、心血管系自己免疫疾患のいずれかの抗原についておよび/またはいずれかの時期に、内因性心血管抗原のレベルが経時的におよび/または別の標準(たとえば正常または疾患カットオフ)レベルに比べて増加でなく減少するであろう。このような変化は有効な診断または予後情報を与える。従って本発明の1つの実施態様は、(a)サンプルをアッセイにかけて1つ以上の内因性心血管抗原のレベルを検定する段階と、および(b)サンプルをアッセイにかけて複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを検定する段階とを含み、内因性心血管抗原のレベル変化の存在および/または少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の高レベル存在が心血管系自己免疫疾患の高い危険性を示す指標となる心血管系自己免疫疾患の危険性評価方法を目的とする。
別の実施態様において、対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかの危険性を評価する方法は、
(a)対象からサンプルを採取する段階と、
(b)対象のサンプル中の1つ以上の内因性心血管抗原のレベルを測定する段階と、
(c)対象のサンプル中の複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを測定する段階と、
(d)1つ以上の内因性心血管抗原のレベルを、臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象から採取したサンプル中、心血管疾患に罹っている標準対象から採取したサンプル中またはもっと早い時期に採取した当該対象のサンプル中で測定した同じ内因性心血管抗原のレベルに比較する段階と、
(e)自己抗体のレベルを、臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象から採取したサンプル中、心血管疾患に罹っている標準対象から採取したサンプル中またはもっと早い時期に採取した当該対象のサンプル中で測定した同じ自己抗体のレベルに比較する段階と、および
(f)段階(d)および(e)における比較に基づいて対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかの危険性を同定する段階と、
を含む。
このような方法によれば、
(i)段階(d)の比較において1つ以上の内因性心血管抗原のレベルが、臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で変化しているとき、および/または、もっと早い時期に採取した対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で変化しているかもしくはほぼ同じレベルであるとき、および/または、
(ii)段階(e)の比較において少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で増加しているとき、および/または、心血管疾患に罹っている標準対象のサンプル中に比較して対象のサンプル中で増加しているかもしくはほぼ同じレベルであるとき、危険性が存在する。
これらの方法は、無症候性対象または心血管系自己免疫疾患1つ以上の症状のある対象から採取したサンプルに行うことができる。たとえば、対象は胸痛があったりまたは他の何らかの心筋梗塞の徴候があったりする。この方法は場合により、段階(b)と(c)との判定を同時に行ってもよく、または順次に行ってもよい(場合により任意の順序で)。また、内因性心血管抗原に対する自己抗体のアッセイが、内因性心血管抗原アッセイを伴うことなく行われてもよい。内因性心血管抗原に対する自己抗体のアッセイは、内因性心血管抗原のアッセイに使用した対象と同一の対象から採取した同じサンプルまたは異なるサンプルを用いて行うことができる。異なるサンプルを使用する場合、該サンプルは一般には同種類(たとえば、血液)であり、内因性心血管抗原のアッセイに使用したサンプルとほぼ同時に採取される。
内因性心血管抗原に対する自己抗体は当業者に公知の多数の方法のいずれかによって検出および定量できる。これらは、流体もしくはゲル沈降素反応、免疫拡散(シングルまたはダブル)、アフィニティクロマトグラフィー、免疫電気泳動、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着剤アッセイ(ELISA)、免疫蛍光アッセイ、ウェスタンブロット法などのような多数の免疫学的方法のいずれかを含む。本発明の方法に有用なイムノアッセイについてはより詳細に後述する。
このアッセイは標準的な実態に従ってスコア化でき、場合により陽性および/または陰性の対照および/または内因性心血管抗原に対する抗体を既知の濃度で含有する標準の使用を含む。内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルを場合により対照レベルまたは対照範囲に比較する。後者はアッセイ実施のときに決定してもよいが予め決定しておくほうが好都合である。自己抗体のレベルに関して対照レベルまたは範囲に比べて何らかの増加が試験サンプル中に存在するならば、または、内因性心血管抗原のレベルに関して何らかの変化(増加または減少)が試験サンプル中に存在するならば、慣用の統計的方法によって有意性を評価する。内因性心血管抗原に対する自己抗体の高レベル存在は、このような自己抗体が内因性心血管抗原測定に否定的に干渉するかもしれないこと、したがって心筋梗塞のような心臓病の危険性の評価に関してはこの測定値の信頼性が失われたことを示す指標となる。
特定実施態様において、対象に内因性心血管抗原に対する自己抗体が高レベルで存在すると判定されたときは場合により、対象のミオグロビン、CK−MB(クレアチンキナーゼ筋肉−脳)、BNP(B型ナトリウム利尿ペプチド)、CRP(C反応性タンパク質)、心筋トロポニン−I(cTnI)、心筋トロポニン−T(cTnT)、血中酸素レベル、心臓造影、心電図などのような1つ以上の追加の心臓病指標を評価する。しかしながらこのような検査は場合により、以前に高レベルの自己抗体が検出されたことがない場合にも行うことができる。たとえば、自己抗体の増加が検出されない場合であっても、本発明の方法に付随して心疾患に関連する1つ以上のマーカーを測定できる。このようなマーカーは非限定的に、妊娠関連血漿タンパク質−A(PAPP−A)、IL−8、IL−10、インターロイキン−18(IL−18/IL−18b)、虚血性修飾アルブミン(IMA)、ICAM−1(細胞間細胞接着分子−1)、VCAM−1(血管性細胞接着因子−1)、脂肪酸結合タンパク質(FABP)、E−セレクチン、P−セレクチン、フィブリノーゲン、血清アミロイドA(SAA)、MPO(ミエロペルオキシダーゼ)、LpPLA2(リポタンパク質関連ホスホリパーゼA2)、GP−BB(グリコーゲンホスホリラーゼアイソザイムBB)、IL1RA、TAFI(トロンビン活性化フィブリン溶解阻害物質)、可溶性フィブリン、抗−oxLDL(酸化低密度リポタンパク質に対する抗体)、MCP−1(単球走化性タンパク質−1)、プロ凝固組織因子(TF)、MMP−9(マトリックスメタロプロテイナーゼ9)、Ang−2(アンギオポイエチン−2)、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)、VLDL(超低密度リポタンパク質)、PAI−1(プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター−1)を含む。
少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体が高レベルで存在すると判定された対象は標準実態に従ってたとえば心筋梗塞の治療を受けるであろう。
自己免疫疾患患者の血縁
本発明の方法は、自己免疫疾患のある対象または自己免疫疾患患者の血縁である対象の心血管系自己免疫疾患またはその危険性を同定するために行うことができる。たとえば、自己免疫疾患患者の一親等または二親等の血縁である対象は本発明の方法を使用して評価され得る。
この方法は、対象から採集した生物サンプルをアッセイにかけて複数の異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体を検定する段階を含み、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の高レベル存在が心血管系自己免疫疾患の存在またはその危険性を示す指標となる。この方法は、1つ以上の他の検査、たとえば、心筋炎、虚血性心疾患または拡張性、肥大性もしくは拘束性心筋症の鑑別診断を可能にする身体検査および/または病歴の収集と併用して実行できる。これらの障害の診断に使用される様々な検査およびパラメーターは当業者に公知である。
これらの方法は、無症候性対象または心血管系自己免疫疾患に関連する1つ以上の危険要因もしくはその症状を有している対象から採取したサンプルで行うことができる。
異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体は何らかの簡便な手段によって検出および定量できる。この目的に適した様々なイムノアッセイフォーマットの例は後述する。アッセイは標準実態に従ってスコア化される。
特定実施態様において、対象に少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体が高レベルで存在すると判定されたときは場合により、対象のミオグロビン、CK−MB、BNP、CRP、トロポニン−I、トロポニン−T、血中酸素レベル、心臓造影、心電図などのような1つ以上の追加の心臓病指標を評価する。
免疫抑制療法または免疫吸収療法の候補の同定方法
特定実施態様において本発明はまた、心血管系自己免疫疾患を有しているまたはその危険性を有している対象が免疫抑制療法または免疫吸収療法の候補であるかを判断する方法を提供する。一般的に対象は、心血管系自己免疫疾患の何らかの症状を示したことがある者または現在心血管系自己免疫疾患であるもしくはその危険性を有していると診断された者である。
この方法は、対象から採取したサンプルをアッセイにかけて複数の内因性心血管抗原に対する自己抗体を検定する段階を含み、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の高レベル存在は、自己免疫性が対象の心血管系自己免疫疾患またはその危険性の一因であることを示す指標となる。この方法は、心臓病および/または自己免疫疾患の標準診断実態に従って1つ以上の他の検査、身体検査および/または病歴収集と併用して実行できる。
1つの実施態様において、この方法は場合により心血管疾患のある患者が自己免疫療法を受けるために適格であるかを同定するために、
(a)心血管疾患患者からサンプルを採取する段階と、
(b)対象のサンプル中の複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを測定する段階と、
(c)該レベルを臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象または自己免疫疾患を有している標準対象から採取したサンプル中で測定した同じ自己抗体のレベルに比較する段階と、および
(d)段階(c)の比較に基づいて心血管疾患患者が自己免疫療法を受けるために適格であることを同定する段階と、
を含む。
このような方法において、少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが、
(i)臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して心血管疾患患者のサンプル中で高いとき、および/または、
(ii)自己免疫疾患を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して心血管疾患患者のサンプル中で高いかまたはほぼ同じのとき、
患者は自己免疫療法を受けるために適格である。
内因性心血管抗原に対する自己抗体はこの文中に記載の手段を含む何らかの簡便な手段によって検出および定量できる。このアッセイは標準実態に従ってスコア化される。
少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体が高レベルで存在すると判定された対象は標準実態に従って免疫抑制療法または免疫吸収療法で治療され得る。
イムノアッセイ方法
概論
本発明のイムノアッセイ方法は多様なフォーマットのいずれかで実行できる。イムノアッセイの概観に関しては、Methods in Cell Biology Volume 37:Antibodies in Cell Biology,Asai,ed.Academic Press,Inc.New York(1993);Basic and Clinical Immunology 7th Edition,Stites & Terr,eds.(1991)を参照するとよい。これらの記載内容全部が参照によって組込まれるものとする。
特定実施態様において本発明のイムノアッセイ方法は、サンプルを内因性心血管抗原に、サンプル中に反応性自己抗体が存在するならば内因性心血管抗原に結合できる十分な条件下で接触させる段階を含む。自己抗体は、反応性自己抗体に結合した内因性心血管抗原を含む(1つ以上の)複合体を検出することによって検出/定量される。このようなアッセイは均一系でもよく不均一系(すなわち固相を使用する)でもよい。不均一系アッセイでは、分析物(ここでは内因性心血管抗原に対する自己抗体)に結合する捕獲剤が典型的には固相に固定されている。
内因性心血管抗原に対する自己抗体は非競合イムノアッセイで測定でき、この場合、内因性心血管抗原に対する自己抗体に結合した内因性心血管抗原の量はサンプル中に存在する内因性心血管抗原に対する自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
従ってたとえばこの方法は、微粒子のような固相に固定された内因性心血管抗原にサンプルを接触させる凝集アッセイとして行うことができる。サンプル中に存在する内因性心血管抗原に対する自己抗体が微粒子に結合し、その結果として微粒子が凝集するので、これをたとえばサンプルの目視点検によって検出できる。所望の場合、凝集の検出を容易にするために微粒子を着色するかまたは標識できる。凝集の程度はサンプル中に存在する内因性心血管抗原に対する自己抗体の濃度に正の相関関係を有している。
別の実施態様においては、サンプルを、内因性心血管抗原(固相に固定してもよいが必ずしも固定しなくてもよい)に接触させ、また種特異的抗体にも接触させる。この場合の種特異的抗体はサンプルを提供した種に特異的である。このような自己抗体によって生じた干渉を補正する手段は独自に米国特許出願60/854569に記載されており、該手段に関する教示はすべて参照によってここに組込まれるものとする。この段階は、内因性心血管抗原に対する自己抗体が存在するならば種特異的抗体に特異的に結合できる十分な条件下で行われる。自己抗体は、種特異的抗体に結合している反応性自己抗体に結合した内因性心血管抗原を含む(1つ以上の)複合体を検出することによって検出/定量される。サンプルは、内因性心血管抗原および種特異的抗体に同時に接触させてもよくまたは任意の順序で順次に接触させてもよい。接触順序にかかわりなく、内因性心血管抗原に対する自己抗体がサンプル中に存在するならば、内因性心血管抗原と種特異的抗体との間に“サンドイッチされた”抗体を含有する複合体が形成される。
たとえば、サンドイッチイムノアッセイの1つのフォーマットを用いる本発明の実施態様においては、内因性心血管抗原が固相に固定されており、内因性心血管抗原に対する自己抗体がサンプル中に存在するならば内因性心血管抗原に結合し、固相に固定された複合体が形成され、検出は固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む。このフォーマットの特定実施態様において、固相に固定された複合体は直接または間接に標識された種特異的抗体を用いて検出される。必要ならば、遊離状態の標識された種特異的抗体から結合完全体を典型的には洗浄によって分離し、結合したラベルからのシグナルを検出する。
サンドイッチイムノアッセイの別のフォーマットを用いる本発明の実施態様においては、種特異的抗体が固相に固定されており、内因性心血管抗原に対する自己抗体がサンプル中に存在するならば種特異的抗体に結合し、固相に固定された複合体が形成され、次にこれが検出される。いくつかの実施態様においては、固相に固定された複合体は直接または間接に標識された内因性心血管抗原を用いて検出される。必要ならば、遊離状態の標識された内因性心血管抗原から結合完全体を典型的には洗浄によって分離し、結合したラベルからのシグナルを検出する。
内因性心血管抗原に対する自己抗体はまた、競合イムノアッセイで測定でき、この場合のシグナルはサンプル中に存在する内因性心血管抗原に対する自己抗体の濃度に負の相関関係を有している。競合フォーマットの一例においては、サンプルを内因性心血管抗原(固相に固定してもよいが必ずしも固定しなくてもよい)に接触させ、また、内因性心血管抗原に対する(直接または間接に)標識された抗体に接触させる。この段階は、内因性心血管抗原に対する標識された抗体が内因性心血管抗原に特異的に結合できる十分な条件下で行う。サンプル中の内因性心血管抗原特異的自己抗体は内因性心血管抗原への結合に関して内因性心血管抗原に対する標識された抗体と競合する。従って、内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが高いほど、内因性心血管抗原に対する標識された抗体は内因性心血管抗原に少なく結合する。
サンプルは、内因性心血管抗原および内因性心血管抗原に対する標識された抗体に同時に接触させてもよくまたは任意の順序で順次に接触させてもよい。
この種の競合イムノアッセイは、固相に固定された内因性心血管抗原を用いて簡便に行うことができる。この場合、内因性心血管抗原は、内因性心血管抗原に対する標識された抗体に結合するかまたは内因性心血管抗原に対する自己抗体がサンプル中に存在するならば該抗体に結合し、固相に固定された複合体を形成し、検出は、固相に固定された複合体からのシグナルの検出を含む。必要ならば、内因性心血管抗原に対する遊離状態の標識された抗体から結合完全体を典型的には洗浄によって分離し、結合ラベルからのシグナルを検出する。
自己抗体の代表的なイムノアッセイはたとえば、米国特許出願11/588,073、11/934,688および61/015,449に記載されている。イムノアッセイに関する教示はすべて参照によってここに組込まれるものとする。
捕獲剤
本発明のイムノアッセイ方法に有用な捕獲剤は、内因性心血管抗原または内因性心血管抗原に対する自己抗体に結合できまた固相に固定化され得る物質を含む。好都合な捕獲剤は内因性心血管抗原および種特異的抗体を含み、この場合、種特異的抗体はサンプルを提供した種に特異的である。当業者は理解されるであろうが、内因性心血管抗原のおのおのは対応する内因性心血管抗原に対する自己抗体に結合(捕獲)するので特異的捕獲剤を表す。これに対して、種特異的抗体は特異性にかかわりなく自己抗体に結合するので非特異的捕獲剤を表す。サンドイッチイムノアッセイにおいて、非特異的捕獲剤は典型的には、分析物に特異的に結合する標識された検出試薬と共に使用される。従ってたとえば内因性心血管抗原に対する自己抗体を特異的に検出するために固相に固定された種特異的抗体は標識された内因性心血管抗原と併用される。
内因性心血管抗原
(たとえば、結合用または標準もしくは対照として)本発明のイムノアッセイ方法およびキットに有用な内因性心血管抗原は非限定的に、以下の内因性心血管抗原、すなわち、α1−アドレナリン受容体、アンギオテンシン−1受容体、アネキシンV、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心筋トロポニン、カルジオリピン、ミオシン、トロポミオシン、細胞質好中球、プロテインCの内皮受容体、VIII因子、グレリン、ハロゲン化タンパク質、硝酸化タンパク質、熱ショックタンパク質(HSP)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)、酸化低密度リポタンパク質(LDL)、胎盤成長因子(PlGF)、リン脂質、プロテイナーゼ−3、プロトロンビン、プルキンエ線維、筋線維鞘Na−K−ATPアーゼ、β1−アドレナリン受容体、β2−アドレナリン受容体、β−2−グリコプロテイン−1および組織型プラスミノーゲン活性化因子を含む。
特定実施態様において、内因性心血管抗原は、いずれかの生物の何らかの内因性心血管抗原様ポリペプチドに由来する内因性心血管抗原アミノ酸配列である。本発明に有用な内因性心血管抗原アミノ酸配列は一般に、脊椎動物、好ましくは鳥類または哺乳類、より好ましくはマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ネコ、イヌ、ニワトリ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマならびにサルおよび他の霊長類のような研究価値もしくは商業価値のある動物または愛玩用に価値のある動物に由来する。特定実施態様において、内因性心血管抗原アミノ酸配列はヒトポリペプチドに由来する。
本発明の方法は、全長の内因性心血管抗原または1つ以上のそのフラグメントを使用できる。フラグメントは一般に自己抗体が結合できる少なくとも1つのエピトープを有しているであろう。このようなフラグメントはたとえば、約125、100、75、50、25もしくは15アミノ酸の長さ、または、これらの値のいずれかによって限定される終点をもつ範囲(たとえば、15−125、25−100、50−75、15−100など)内に含まれる長さを有し得る。より多い数の天然エピトープを有している内因性心血管抗原(たとえば、全長の内因性心血管抗原)の使用は一般に、より少ない数の天然エピトープを有している内因性心血管抗原の使用よりも様々な特異性の自己抗体をより包括的に測定できることは当業者には容易に理解される。従って一般には、実質的に先天性のコンホメーションを有しているかまたは自己抗体に反応性の内因性心血管抗原エピトープを含む1つ以上のペプチドを有している内因性心血管抗原の使用が好ましい。
内因性心血管抗原アミノ酸配列は野生型アミノ酸配列でもよくまたは野生型ポリペプチドの対応領域のアミノ酸配列変異体でもよい。いくつかの実施態様においては内因性心血管抗原が野生型内因性心血管抗原アミノ酸配列または上記に定義のような保存性アミノ酸置換を含有する内因性心血管抗原アミノ酸配列を含む。
本発明に有用な内因性心血管抗原は上述のアミノ酸配列に加えて、異種タンパク質に由来の配列も含めた他のアミノ酸配列を含み得る。従って本発明は、内因性心血管抗原アミノ酸配列が一端または両端で1つ以上の異種タンパク質由来の(1つ以上の)アミノ酸配列に融合した融合ポリペプチドを包含する。問題のタンパク質にしばしば組込まれている追加のアミノ酸配列の例は、タンパク質の精製を容易にするシグナル配列、および、免疫学的検出またはアフィニティ精製のために使用できるエピトープタグを含む。
本発明による内因性心血管抗原ポリペプチドはたとえば、排他的固相合成、部分的固相合成、フラグメント縮合および古典的な溶液合成のような当業界で公知の方法を使用して合成できる。参考文献はたとえば、Merrifield,J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1963)である。固相ペプチド合成手順に関する記述については、John Morrow Stewart and Janis Dillaha Young,Solid Phase Peptide Syntheses(2nd Ed.,Pierce Chemical Company,1984)を参照するとよい。
内因性心血管抗原ポリペプチドはまた、組換え技術を使用して製造できる。いくつかの実施態様においては、発現ベクターに組込める内因性心血管抗原ポリペプチドをコードする合成核酸分子を設計するためのガイドとして内因性心血管抗原コーディング領域の配列が使用される。合成遺伝子の構築方法は当業者に公知である。参考文献はたとえば、Dennis,M.S.,Carter,P.and Lazarus,R.A.(1993)Proteins:Struct.Funct.Genet.,15:312−321である。
発現ベクターは、作動可能に連結されたポリペプチドコーディング配列の発現を実行および/または増進できる1つ以上の調節配列を含む。たとえば原核細胞中での発現に適した調節配列はプロモーター配列、オペレーター配列およびリボソーム結合部位を含む。真核細胞中で発現するための調節配列はプロモーター、エンハンサーおよび転写終結配列(すなわち、ポリアデニル化シグナル)を含む。
本発明の発現ベクターはまた、たとえばシグナル配列または増幅可能遺伝子をコードする核酸配列のような他の配列を含み得る。シグナル配列は、シグナル配列に融合したポリペプチドをタンパク質発現細胞から分泌するように指令できる。発現ベクター中のシグナル配列をコードする核酸は、ポリペプチドコーディング配列の読み枠を保存するようにポリペプチドコーディング配列に連結されている。選択宿主中の栄養要求性欠失を相補する遺伝子をベクターに含有させると、ベクターによって形質転換された宿主細胞を選択することが可能になる。
ベクターの増殖および/または発現のために多様な種類の宿主細胞を利用できる。その例は、原核細胞(たとえば、E.coli、Bacillus、Pseudomonasおよび他の細菌の菌株)、酵母またはその他の真菌類細胞(S.cerevesiaeおよびP.pastorisを含む)、昆虫細胞、植物細胞、ファージならびにより高等な真核細胞(たとえば、ヒトの胚性腎細胞および他の哺乳類細胞)を含む。
内因性心血管抗原を発現するベクターは簡便な方法によって宿主細胞に導入できる。方法は、使用されるベクター−宿主系次第で変り得る。一般にベクターは形質転換(“トランスフェクション”としても知られている)によってまたはベクター保有ウイルス(たとえば、ファージ)の感染によって宿主細胞に導入される。宿主細胞が原核細胞(または、細胞壁を有する他の細胞)であるとき、好都合な形質転換方法は、Cohenら,(1972)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69:2110−14によって記載されたカルシウム処理方法を含む。宿主として原核細胞が使用され、ベクターがファージミドベクターであるとき、ベクターはトランスフェクションによって宿主細胞に導入できる。酵母細胞は、たとえばHinnen(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,75:1929−33によって教示されているように、ポリエチレングリコールを使用して形質転換できる。哺乳類細胞は、Grahamら,(1978)Virology,52:546およびGormanら,(1990)DNA and Prot.Eng.Tech.,2:3−10によって記載されているリン酸カルシウム沈殿法を使用して好都合に形質転換される。しかしながら、核注入、電気穿孔、プロトプラスト融合のような宿主細胞にDNAを導入するための他の公知の方法も本発明の使用に適格である。
形質転換宿主細胞による内因性心血管抗原の発現は、細胞の増殖および発現に適した条件下で宿主細胞を培養する段階と、発現されたポリペプチドを細胞溶解液からまたはポリペプチドが分泌される場合には培養培地から回収する段階を含む。特に、培養培地は使用される宿主細胞用の適当な栄養素と増殖因子とを含有している。栄養素および増殖因子は多くの場合、当業者に公知であるかまたは当業者が実験によって容易に決定できる。哺乳類宿主細胞の適当な培養条件は、たとえば、Mammalian Cell Culture (Mather ed.,Plenum Press 1984)およびBarnes and Sato(1980)Cell 22:649に記載されている。
さらに培養条件は、転写、翻訳および細胞隔室間のタンパク質輸送ができる条件でなければならない。これらのプロセスに影響する要因は公知であり、たとえば、DNA/RNAコピー数、DNAを安定させる因子、培養培地中に存在する栄養素、サプリメントおよび転写インデューサーまたはリプレッサー、培養物の温度、pHおよび浸透圧、ならびに、細胞密度を含む。特定のベクター−宿主細胞系中の発現を促進するためのこれらの要因の調整は当業界の技術レベルの範囲内である。インビトロの哺乳類細胞培養物の生産性を最大にするための原理および実施技術はたとえば、Mammalian Cell Biotechnology:a Practical Approach(Butler ed.,IRL Press(1991)に見出される。
タンパク質を大規模または小規模生産するための多数の公知技術のいずれかを本発明のポリペプチド発現に使用できる。これらは非限定的に、振盪フラスコ、流動床バイオリアクター、回転瓶培養系および撹拌タンクバイオリアクター系の使用を含む。細胞培養は、バッチ、フェッド−バッチまたは連続モードで実施できる。
上述のように産生された組換えタンパク質の回収方法は公知であり、使用した発現系次第で変更される。シグナル配列を含むポリペプチドは培養培地からまたは細胞周辺から回収できる。ポリペプチドはまた細胞内で発現され細胞溶解液から回収されてもよい。
発現されたポリペプチドは、宿主細胞または培養培地の1つ以上の成分からポリペプチドを分離できる何らかの方法によって培養培地または細胞溶解液から精製できる。典型的には、宿主細胞からおよび/またはポリペプチドの予定用途を妨害する培養培地成分からポリペプチドを分離する。第一段階として、培養培地または細胞溶解液を通常は遠心または濾過して細胞破片を除去する。次に上清を典型的には所望容量に濃縮もしくは希釈するかまたは適当なバッファに透析濾過して以後の精製に備えて調製物を状態調整する。
次に公知の技術を使用してポリペプチドをさらに精製できる。選択される技術は発現されたポリペプチドの特性次第で変更される。たとえばポリペプチドがエピトープタグまたは他のアフィニティドメインを含有する融合タンパク質として発現されているならば、精製は典型的には、対応する結合パートナーを含有するアフィニティカラムの使用を含む。たとえばグリーン蛍光タンパク質、赤血球凝集素もしくはFLAGエピトープタグまたはヘキサヒスチジンもしくは同様の金属アフィニティタグに融合したポリペプチドはアフィニティカラムで分画化することによって精製できる。
抗体
本発明のイムノアッセイ方法およびキットに有用な抗体は、内因性心血管抗原または内因性心血管抗原に対する自己抗体に指向性であるポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を含む。このようなポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、当業界で公知のいずれかの手段によって調製できる。内因性心血管抗原に対する抗体は当業界で公知であるかおよび/または市販されており、これらのいずれかを使用できる。ポリクローナル抗体は、ヒト以外の適当な哺乳動物(たとえば、マウスまたはウサギ)に免疫原を注入(たとえば、皮下または筋肉内注射)することによって増産できる。一般に免疫原は標的抗原に比較的高い親和性をもつ高力価抗体の産生を誘発するはずである。
所望の場合、当業界で公知の共役技術によって内因性心血管抗原をキャリアータンパク質に共役させてもよい。常用のキャリアーは、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、チログロブリン、ウシ血清アルブミン(BSA)および破傷風トキソイドを含む。次に共役体を使用して動物を免疫感作する。
次に動物から採取した血液サンプルから抗体が得られる。ポリクローナル抗体を製造するために使用される技術は、文献に広く記載されている(参照:たとえば、Methods of Enzymology,“Production of Antisera With Small Doses of Immunogen:Multiple Intradermal Injections,”Langoneら,eds.(Acad.Press,1981))。動物によって産生されたポリクローナル抗体はたとえば、標的抗原が結合されたマトリックスに結合させ該マトリックスから溶出させることによってさらに精製できる。当業者はポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を精製および/または濃縮するために免疫学分野で常用の様々な技術を知っているはずである。参考文献はたとえばColiganら(1991) Unit 9,Current Protocols in Immunology,Wiley Interscienceである。
多くの用途にはモノクローナル抗体(mAb)のほうが好ましい。ハイブリドーマ分泌性mAbの産生に使用される一般方法は公知である(Kohler and Milstein(1975)Nature,256:495)。KohlerおよびMilsteinの記述を要約すると、この技術は、黒色腫、奇形種、子宮頸癌、神経膠腫または肺癌のある別々の5名の癌患者の排液性局所リンパ節からリンパ球を単離し(この場合のサンプルは手術標本から得られた)、細胞をプールし、細胞をSHFP−1に融合させる段階を含んでいた。癌細胞系に結合した抗体を産生するハイブリドーマをスクリーニングした。mAbの特異性の確認は、常套のスクリーニング技術(たとえば酵素結合免疫吸着剤アッセイすなわち“ELISA”)を使用して問題のmAbの要素反応パターンを判定することによって遂行できる。
この文中に使用した“抗体”という用語は、ファージ提示技術または酵母提示技術を使用して産生/選択できる抗原結合性抗体フラグメント、たとえば一本鎖抗体(scFvなど)を包含する。細菌に感染するウイルス(バクテリオファージまたはファージ)の表面に抗体フラグメントを発現させることができれば、たとえば1010を上回る非結合性クローンのライブラリーから単一の結合性抗体フラグメントを単離することが可能になる。ファージの表面に抗体フラグメントを発現させるためには(ファージ提示)、ファージ表面タンパク質(たとえばpIII)をコードしている遺伝子に抗体フラグメント遺伝子を挿入し、抗体フラグメント−pIII融合タンパク質をファージ表面に提示させる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554;Hoogenboomら(1991)Nucleic Acids Res.19:4133−4137)。
ファージ表面の抗体フラグメントは機能性なので、ファージに保有された抗原結合性抗体フラグメントは抗原アフィニティクロマトグラフィーによって非結合性ファージから分離できる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。抗体フラグメントの親和性次第では、1回の親和性選択で20倍から1,000,000倍の富化倍率が得られる。しかしながら、溶出したファージを細菌に感染させることによってもっと多くのファージを増殖させ、もう1回の選択を行うことができる。このようにすると、1回で1000倍の富化は2回の選択で1,000,000倍になる(McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554)。従って富化倍率が低い場合にも(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597)、多数回のアフィニティ選択を行うことによって、希少ファージを単離できる。抗原に対するファージ抗体ライブラリーの選択の結果として富化が生じるので、大多数のクローンは3から4回の選択後に抗原に結合する。従って、抗原結合性の分析が必要なのは比較的少数のクローン(数百)だけである。
ヒト抗体はファージ上に極めて多くの多様なV遺伝子の目録を提示させることによって予め免疫感作することなく産生され得る(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597)。1つの実施態様においては、ヒト末梢血リンパ球に存在する天然目録中のVHおよびVLをPCRによって非免疫ドナーから単離する。PCRを使用して目録中のV遺伝子をランダムにスプライスすると、ファージベクターにクローニングして3千万のファージ抗体のライブラリーを作製できるscFv遺伝子の目録が作成される(同書参照)。単一の“実験未使用”ファージ抗体ライブラリーから、ハプテン、多糖およびタンパク質を含む17を上回る種類の異なる抗原に対する結合性抗体フラグメントが単離された(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Marksら(1993)Bio/Technology.10:779−783;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734;Clacksonら(1991)Nature.352:624−628)。ヒトチログリブリン、免疫グロブリン、腫瘍壊死因子およびCEAを含む自己タンパク質に対する抗体は産生されている(Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734)。抗体フラグメントは選択に使用された抗原に極めて特異的であり、1nMから100nMの範囲の親和性を有している(Marksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597;Griffithsら(1993)EMBO J.12:725−734)。ファージ抗体ライブラリーが大きいほど、より大きい抗原集団に対してより高い結合親和性を有しているより多くの抗体が単離される。
当業者には容易に理解されるであろうが、抗体は多くの事業施設のいずれかによって調製できる(たとえば、Berkeley Antibody Laboratories、Bethyl Laboratories、Anawa、Eurogenetecなど)。
固相
捕獲剤の支持体として固相を使用する本発明の実施態様の場合、固相は捕獲剤に結合できる十分な表面親和性を有しているいかなる適当な材料でもよい。有用な固体支持体は、天然の高分子糖質および合成的に修飾、架橋または置換されたそれらの誘導体、たとえば、寒天、アガロース、架橋アルギン酸、置換および架橋されたグアーガム、セルロースエステル特に硝酸およびカルボン酸とのエステル、混合セルロースエステル、セルロースエーテル;タンパク質および誘導体のような窒素含有天然高分子、たとえば、架橋または修飾されたゼラチン;ラテックスおよびゴムのような天然炭化水素ポリマー;ビニルポリマーのような合成ポリマーたとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルおよびその部分加水分解誘導体、ポリアクリルアミド、ポリメタクリレート、ポリエステル、ポリアミドのような上記重縮合物のコポリマーおよびターポリマー、および、ポリウレタンまたはポリエポキシドのような他のポリマー;アルカリ土類金属およびマグネシウムの硫酸塩または炭酸塩のような無機材料、たとえば、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムおよびマグネシウムのケイ酸塩;アルミニウムまたはケイ素の酸化物または水和物、たとえば、クレー、アルミナ、タルク、カオリン、ゼオライト、シリカゲルまたはガラス(これらの材料は上記高分子材料と共にフィルターとして使用され得る);既存の天然ポリマーに合成ポリマーの重合を開始させることによって得られたグラフトコポリマーのような上記クラスの混合物またはコポリマーを含む。これらの材料のすべてが、フィルム、シート、チューブ、粒状物またはプレートのような適当な形状で使用されるか、または、紙、ガラス、プラスチックフィルム、布などのような適当な不活性担体に塗布、接着または積層される。
ニトロセルロースはモノクローナル抗体を含む多様な試薬に対して優れた吸収および吸着品質を有している。ナイロンも同様の特性を有しており、やはり適当である。
フロースルーアッセイデバイスに好ましい固相材料は、多孔質繊維ガラス材料または他の繊維マトリックス材料のような濾紙を含む。このような材料の厚みは厳密ではなく、主としてアッセイにかけるサンプルまたは分析物の特性たとえば生物サンプルの流動性に基づく選択事項である。
あるいは、固相が微粒子を構成できる。本発明に有用な微粒子は、適当な種類の粒状材料から当業者が選択でき、ポリスチレン、ポリメチルアクリレート、ポリプロピレン、ラテックス、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネートまたは同様の材料から成る微粒子を含む。さらに、磁場内部で微粒子を操作し易いように微粒子は磁性または常磁性の微粒子でよい。
微粒子は可溶性試薬とサンプルとの混合物に懸濁させてもよく、または、支持材料によって保持されて固定化されてもよい。後者の場合、支持材料上または支持材料中の微粒子は支持材料内部の他の場所に実質的に移動できない。あるいは、可溶性試薬とサンプルとの混合物に懸濁している微粒子は沈降または遠心によって分離できる。微粒子が磁性または常磁性のとき、可溶性試薬とサンプルとの混合物に懸濁している微粒子は磁場によって分離できる。
本発明の方法は、固相が微粒子を含む全自動および半自動のシステムを含む微粒子技術を利用するシステムにおける使用に適応できる。このようなシステムは、公開されたEPO出願EP0 425 633およびEP0 424 634にそれぞれ対応する係属中の米国出願425,651および米国特許5,089,424ならびに米国特許5,006,309に記載されている。
特定実施態様において、固相は1つ以上の電極を含む。(1種以上の)捕獲剤は(1つ以上の)電極に直接または間接に固定されている。たとえば1つの実施態様においては捕獲剤が磁性または常磁性微粒子に固定され、次に磁石を使用して電極表面の近傍に配置される。1つ以上の電極が固相として機能するシステムは電気化学的相互作用に基づく検出を行う場合に有用である。この種の代表的なシステムはたとえば米国特許6,887,714(2005年5月3日発行)に記載されている。電気化学的検出に関する基本的方法はより詳細に後述する。
捕獲剤は吸着によって固相に付着し、疎水性力によって固相に保持される。あるいは、固相の表面を化学的処理によって活性化して捕獲剤を支持体に共有結合的に連結させる。
固相の固有電荷を変更または強化するために、帯電物質を固相に直接コーティングできる。欧州公開0326100に対応する米国出願150,278および米国出願375,029(欧州公開0406473)に記載された、負電荷をもつポリマーによって固定化可能な反応複合体を固定化するためのイオン捕獲手順を本発明に従って使用すると、高速溶液相免疫化学反応を左右できる。これらの手順では、負電荷をもつポリアニオン/免疫複合体と前処理した正電荷をもつマトリックスとの間のイオン相互作用によって固定化可能な免疫複合体を反応混合物の残りの部分から分離し、たとえば欧州公開0273,115に対応する米国出願921,979に記載された化学発光システムを含む多くのシグナル発生システムのいずれかを使用して検出する。
固相がシリコンまたはガラスの場合、一般には特異的結合パートナーに付着させる前に表面を活性化しなければならない。アミノ、ビニルおよびチオールのような反応性基を導入するためにそれぞれトリエトキシアミノプロピルシラン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.から入手可能)、トリエトキシビニルシラン(Aldrich Chemical Co.,Milwaukee,Wis.)および(3−メルカプト−プロピル)−トリメトキシシラン(Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.)のような活性化シラン化合物を使用できる。このような活性化表面が捕獲剤を直接的に連結するために使用されてもよく(アミノまたはチオールの場合)、または、捕獲剤を表面から分離するために活性化表面がグルタルアルデヒド、ビス(スクシニミジル)スベレート、SPPD 9スクシニミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート)、SMCC(スクシニミジル−4−[Nマレイミドメチル]シクロヘキサン−1−カルボキシレート)、SIAB(スクシニミジル[4ヨードアセチル]アミノベンゾエート)およびSMPB(スクシニミジル4−[1マレイミドフェニル]ブチレート)のようなリンカーとさらに反応してもよい。ビニル基は酸化して共有結合的付着手段を提供できる。ビニル基はポリアクリル酸のような様々なポリマーの重合アンカーとしても使用でき、特異的捕獲剤に多数の付着点を提供する。アミノ基は様々な分子量の酸化デキストランと反応して様々なサイズおよび容量の親水性リンカーを提供できる。酸化性デキストランの例は、Dextran T−40(分子量40,000ドルトン)、Dextran T−110(分子量110,000ドルトン)、Dextran T−500(分子量500,000ドルトン)、Dextran T−2M(分子量2,000,000ドルトン)(全部がPharmacia,Piscataway,N.J.から入手可能)またはフィコール(分子量70,000ドルトン;Sigma Chemical Co.,St.Louis,Mo.から入手可能)を含む。加えて、1988年1月29日出願の米国出願150,278および1989年7月7日出願の米国出願375,029に記載された技術および化学を使用して特異的捕獲剤を固相に固定化するために高分子電解質相互作用を使用できる。上記特許出願のおのおのは参照によってここに組込まれるものとする。
固相の選択を左右する他の考察要件は、標識された完全体の非特異的結合を最小にする能力、および、使用した標識系との適合性を含む。たとえば、蛍光ラベルと共に使用される固相はシグナル検出ができるように十分に低いバックグラウンド蛍光を有していなければならない。
特異的捕獲剤の付着後、血清、タンパク質または他のブロッキング剤のような非特異的結合を最小にする材料で固体支持体の表面をさらに処理してもよい。
標識系
上記に論議したように、本発明による多くのイムノアッセイは、標識された種特異的抗体および標識された内因性心血管抗原のような標識された検出試薬を使用する。
本発明の検出試薬として使用するための適当な検出可能ラベルは、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的、電気的、光学的または化学的手段によって検出可能ないかなる組成物をも含む。本発明に有用なラベルは、磁気ビーズ(たとえばDynabeadsTM)、蛍光色素(たとえば、フルオレセイン、テキサスレッド、ローダミン、グリーン蛍光タンパク質など、参照:たとえばMolecular Probes,Eugene,Oregon,USA)、アクリジニウム(たとえばアクリジニウム−9−カルボキサミド)、フェナントリジニウム、ジオキセタン、ルミノールなどのような化学発光化合物、放射性ラベル(たとえば、H、125I、35S、14Cまたは32P)、酵素のような触媒(たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ベータ−ガラクトシダーゼおよびELISAで常用の他の酵素)、および、コロイド金(たとえば、粒度範囲40から80nmの金粒子は緑色光を高い効率で散乱させる)または着色したガラスもしくはプラスチック(たとえば、ポリスチレン、ホリプロピレン、ラテックスなど)のビーズのような比色ラベルを含む。このようなラベルの使用を教示する特許は、米国特許3,817,837;3,850,752;3,939,350;3,996,345;4,277,437;4,275,149;および4,366,241を含む。
ラベルは生物サンプルに接触させる前、接触中または接触後に検出試薬に付着させ得る。いわゆる“直接ラベル”はアッセイに使用する前に検出試薬に直接的に付着させるかまたは組込ませた検出可能ラベルである。直接ラベルは当業者に公知の多数の手段のいずれかによって検出試薬に付着または組込まれる。
これに対して、いわゆる“間接ラベル”は典型的にはアッセイ中のある時点に検出試薬に結合する。間接ラベルはしばしば、使用前に検出試薬に付着させたかまたは組込ませた部分に結合する。従ってたとえば、検出試薬として使用される抗体(“検出用抗体”)はアッセイに使用する前にビオチニル化できる。アッセイ中に、アビジン共役フルオロホアがビオチン保有検出試薬に結合して、検出容易なラベルを提供できる。
間接標識の別の例においては、ポリペプチドAまたはポリペプチドGのような免疫グロブリン定常領域に特異的に結合できるポリペプチドもまた検出用抗体のラベルとして使用できる。これらのポリペプチドは連鎖球菌の細胞壁の正常な構成成分である。それらは様々な種に由来の免疫グロブリン定常領域に強い非免疫原性反応性を示す(一般論についてはKronvalら(1973) J.Immunol.,111:1401−1406およびAkerstrom(1985)J.Immunol,135:2589−2542参照)。従って、このようなポリペプチドを標識してアッセイ混合物に加えると、これらが検出用抗体および種特異的抗体に結合して両者を標識し、サンプル中に存在する分析物および自己抗体に帰属する複合シグナルを提供できる。
本発明に有用ないくつかのラベルは検出可能シグナルを発生するための指示薬の使用を要する。たとえばELISAにおいて酵素ラベル(たとえばベータ−ガラクトシダーゼ)は検出可能シグナルを発生するために基質(たとえばX−gal)の添加を要するであろう。
代表的フォーマット
蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)
代表的実施態様においては、本発明による蛍光偏光イムノアッセイ(FPIA)に蛍光ラベルが使用される。一般的に、蛍光偏光技術は、蛍光ラベルが特性波長の平面偏光によって励起されたときに、入射光に対して所与の媒体中のラベルの回転速度に反比例する偏光度を有する別の特性波長に光(すなわち蛍光)を放出するという原理に基づく。この特性の結果として、回転が拘束されたラベルたとえば相対的に低い回転速度の別の溶液成分に結合したラベルは溶液中で遊離状態であるときよりも相対的に大きい偏光度を有する光を放出するであろう。
この技術を本発明によるイムノアッセイに使用できる。そのためにはたとえば、蛍光標識された完全体が結合すると十分に異なるサイズの複合体が形成され、所与の平面に放出された光の強度変化を検出できるような試薬を選択すればよい。たとえば、標識された内因性心血管抗原が1つ以上の自己抗体に結合したとき、得られる複合体は遊離状態の標識された内因性心血管抗原に比べて十分に大きいのでその回転が十分に拘束され、結合が容易に検出される。
FPIAに有用なフルオロホアは、フルオレセイン、アミノフルオレセイン、カルボキシフルオレセインなど、好ましくは5および6−アミノメチルフルオレセイン、5および6−アミノフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、チオウレアフルオレセイン、および、メトキシトリアジノリル−アミノフルオレセインおよび同様の蛍光誘導体を含む。蛍光偏光アッセイを行うことができる市販の全自動器具の例は、IMx(R)システム、TDxシステムおよびTDxFLx(R)システム(すべてAbbott Laboratories,Abbott Park,Ill.から入手可能)を含む。
走査型プローブ顕微鏡検査(SPM)
イムノアッセイ用の走査型プローブ顕微鏡検査(SPM)の使用も本発明のイムノアッセイ方法が容易に適応できる技術である。SPM、特に原子力顕微鏡検査においては、走査に適した表面を有している固相に捕獲剤を付着させる。たとえばプラスチックまたは金属表面に捕獲剤を吸着させる。あるいは、平均的な当業者に公知の方法に従ってたとえば誘導体化したプラスチック、金属、シリコンまたはガラスに捕獲剤を共有結合的に付着させる。捕獲剤の付着後、サンプルを固相に接触させ、固相に固定された複合体を走査型プローブ顕微鏡で検出し定量する。SPMを使用すると、イムノアッセイシステムでは典型的に使用されるラベルの必要性を削除できる。このようなシステムは、米国出願No.662,147に記載されている。該特許は参照によってここに組込まれるものとする。
マイクロ電気機械的システム(MEMS)
本発明のイムノアッセイはマイクロ電気機械的システム(MEMS)を使用して行うこともできる。MEMSは機械素子、光学素子および流体素子を電子素子に組合せてシリコンに集積した顕微鏡構造であり、問題の分析物を簡便に検出できる。本発明に使用するための適当な代表的MEMSデバイスは、Protiverisのマルチカンチレバーアレイである。このアレイは、特別設計のシリコン製マイクロカンチレバーの化学機械的起動およびその後のマイクロカンチレバーの撓みの光学的検出に基づく。片面に結合パートナーをコーティングすると、マイクロカンチレバーは相補性分子を含有する溶液に接触したときに屈曲するであろう。この屈曲は結合イベントに起因する表面エネルギーの変化によって生じる。屈曲(撓み)の程度を光学的に検出すると、マイクロカンチレバーに結合した相補性分子の量の測定値が得られる。
電気化学的検出システム
他の実施態様において、本発明のイムノアッセイは電気化学的検出を用いて行うことができる。電気化学的検出の基本的手順はHeinemanおよび彼の共同研究者らによって記載されている。これは、一次抗体(Ab、ラット−抗マウスIgG)を固定化し、次いで抗原(Ag、マウスIgG)、酵素ラベルに共役した二次抗体(AP−Ab、ラット抗マウスIgGとアルカリホスファターゼ)およびp−アミノフェニルホスフェート(PAPP)を含有する一連の溶液に接触させる段階を含む。APはPAPPを、APが最適活性を示すpH9.0で酸素と水の還元を妨害しない電位で電気化学的に可逆性のp−アミノフェノール(PAPR、この“R”は酸化形PAPOキノンイミンから還元形を識別するための記号である)に変換する。PAPRはフェノールと違って電極付着を生じない。フェノールは前駆体フェニルホスフェートが酵素基質としてしばしば使用される。PAPRは空気および光で酸化されるが、小規模および短時間枠ではこれを容易に防止できる。20μLから360mLの範囲の量のPAPPを使用するマイクロ電気化学的イムノアッセイでPAPRに関してピコモルの検出限度およびIgGに関してフェムトグラムの検出限度が得られたことがこれまでに報告されている。電気化学的検出を伴う毛管イムノアッセイにおいてこれまでに報告された最小検出限度は、70mL容量および30分または25分のアッセイ時間を用いて3000分子のマウスIgGである。
電気化学的検出を使用する代表的な実施態様においては本発明による捕獲剤を電極の表面に固定化する(“固相”)。次に電極をたとえばヒト由来のサンプルに接触させる。サンプル中に抗−内因性心血管抗原抗体が存在するならば捕獲剤に結合し、固相に固定された複合体が形成される。たとえばAP標識された抗−ヒト抗体は複合体中の自己抗体に結合し、これにより電極の表面に固定化される。PAPPを添加するとAPによってPAPRに変換され、次いで検出される。
様々な電気化学的検出システムが米国特許7,045,364(2006年5月16日発行;参照によってここに組込まれる)、7,045,310(2006年5月16日発行;参照によってここに組込まれる)、6,887,714(2005年5月3日発行;参照によってここに組込まれる)、6,682,648(2004年1月27日発行;参照によってここに組込まれる);6,670,115(2003年12月30日発行;参照によってここに組込まれる)に記載されている。
本発明はたとえば、TnI、CKMBおよびBNPを含む複数の心臓マーカーに対してサンドイッチイムノアッセイを行うAbbott Laboratoriesから市販のPoint of Care(i−STAT(R))電気化学的イムノアッセイシステムを含むポイントオブケアアッセイシステムに応用できる。イムノセンサおよびそれらの製造方法と使い捨て試験デバイスにおけるそれらの使用方法は、たとえば、米国特許5,063,081および公開された米国特許出願US 20030170881、US 20040018577、US 20050054078およびUS 20060160164に記載されている。これらの出願のおのおのの該当デバイスに関する教示は参照によってここに組込まれるものとする。
加えて、ここに紹介した代表的フォーマットのいずれかおよび本発明によるアッセイまたはキットのいずれかが、たとえば米国特許5,089,424および5,006,309に記載されているような、また、たとえば非限定的にAbbottのARCHITECT(R)、AxSYM(R)、IMx(R)、ABBOTT PRISM(R)およびQuantum IIプラットフォームならびに他のプラットフォームを含むAbbott Laboratories(Abbott Park,IL)によって市販されているような全自動および半自動のシステム(微粒子から成る固相が存在するシステムを含む)における使用に適応できるまたは最適化できることは言うまでもない。
マルチプレックスフォーマット(代表的パネル)
たとえば1つのサンプル中の多数の分析物を同時に検定するために有用な特定実施態様においては、固相が内因性心血管抗原に対する自己抗体を捕獲する捕獲剤を含めた複数の異なる捕獲剤を含有できる。従ってたとえば、複数の抗原を固相に固定し、抗原のおのおのによってサンプル中の異なる自己抗体の存在を試験できる。代表的な実施態様においては固相が表面上の複数の異なる領域から構成され、各領域内部に特定の内因性心血管抗原が固定されている。場合によりこのような固相はいわゆる“パネル”を含み、従って本発明は場合により、自己抗体検出用の内因性心臓抗原を含有する迅速なマルチプレックスパネルアッセイを提供する。
1つの実施態様において、パネルに含まれる内因性心臓抗原はアレイとして存在する。“アレイ”という用語は、少なくとも2つの化合物が1次元、2次元または3次元編制で付着または結合されている固相またはゲル状担体を表す。このようなアレイは(“チップ”、抗体アレイなどを含む)は当業者に普遍的に知られており、典型的には、ガラスの顕微鏡スライド、具体的にはポリカチオン−、ニトロセルロース−もしくはビオチンをコートしたスライドのようなコーテッドガラススライド、カバースリップ、および、たとえばニトロセルロースもしくはナイロンを基材とする膜のような膜に形成される。しかしながら、パネルの膜がアレイを構成することは厳密には必要でない。たとえば、アッセイを直列に処理し、従ってパネルアッセイが内因性心臓抗原に対する自己抗体を個別にかつ独立に評価する独立のアッセイ結果の集合を含むことも可能である。
マルチプレックスフォーマットは、複数のラベルを使用し、特定抗原に反応性の自己抗体を各ラベルに検出させることができるが、必ずしも複数のラベルを使用しなくてもよい。たとえば、抗原のような複数の捕獲剤が既知の種々の位置で固相に固定されている場合には複数のラベルを使用することなく特異性に基づいて多数の異なる自己抗体を検出できる。各位置の捕獲剤の特異性が既知なので、特定位置のシグナルの検出が該位置に結合した自己抗体の存在に関連する。このフォーマットの例は、それぞれチャンネルまたは毛管に沿った種々の位置に種々の捕獲剤を含有するマイクロ流体デバイスおよび毛管アレイ、ならびに、典型的には固体支持体の表面に点行列(“標的素子”)として配列された種々の捕獲剤を含有するマイクロアレイを含む。特定実施態様においては種々の捕獲剤のおのおのが、たとえば固体支持体の表面、マイクロ流体デバイスのチャンネルまたは毛管に形成された異なる電極に固定される。
全自動計器
この文中に記載のイムノアッセイは場合により、市販のプラットフォームイムノアッセイ用キット(たとえば、AbbottのPRISM(R)、AxSYM(R)およびARCHITECT(R)および/またはEIA(Bead)プラットフォーム上のアッセイ)において、ならびに、他の市販のおよび/またはインビトロの診断アッセイにおいて使用できる。
検査キット
本発明はまた、サンプル中の内因性心血管抗原に対する自己抗体を検定する検査キットを提供する。本発明による検査キットは、1つ以上の本発明のイムノアッセイを行うために有用な1種以上の試薬を含む。検査キットは一般に、試薬を1種以上の個別組成物として収容するかまたは場合により試薬の適合性が許容するならば混合物として収容する1つ以上の容器を伴うパッケージを含む。検査キットはまた、(1種または複数の)バッファ、(1種または複数の)希釈剤、(1種または複数の)標準のような使用者の見地から望ましい(1種または複数の)他の材料および/またはサンプルの処理、洗浄または他の何らかのアッセイ段階を行うために有用な他の何らかの材料を含み得る。
いくつかの実施態様において、検査キットはヒト化モノクローナル抗体を含み、該ヒト化モノクローナル抗体は内因性心血管抗原に特異的である。この成分は本発明によるイムノアッセイで陽性対照として使用できる。所望の場合、試験サンプル中で検出されたシグナルを比較できる標準曲線の作成を容易にするためにこの成分を複数の濃度で検査キットに含ませる。あるいは、キットに備えられた単一のヒト化モノクローナル抗体溶液の希釈液を調製することによって標準曲線を作成できる。
本発明によるキットは、固相および固相に固定された捕獲剤を含むことができ、捕獲剤は内因性心血管抗原および種特異的抗体から成るグループから選択され、種特異的抗体はサンプルを提供する種に特異的である。このようなキットをサンドイッチイムノアッセイに使用する場合、キットはさらに、標識された検出試薬を含む。このような実施態様において捕獲剤が内因性心血管抗原であるとき、検出試薬は種特異的抗体でよい。捕獲剤が種特異的抗体であるときは、内因性心血管抗原を検出試薬として使用できる。特定実施態様においては種特異的抗体がヒト特異的抗体である。
本発明の検査キットはまた、内因性心血管抗原に特異的な標識された非ヒトモノクローナル抗体を含み得る。この成分は、使用された内因性心血管抗原が抗体に結合できることを確認するための対照として有用である。
いくつかの実施態様においては検査キットがアクリジニウム−9−カルボキサミドのような少なくとも1つの直接ラベルを含む。本発明による検査キットはまた少なくとも1つの間接ラベルを含むことができる。使用されるラベルが一般に、検出可能シグナルを発生する指示薬を必要とするならば、検査キットが1種以上の適当な指示薬を含むのが好ましい。
代表的な実施態様においては固相が1つ以上の微粒子または電極を含む。マルチプレックスアッセイ用に設計された検査キットは複数の異なる自己抗体に特異的な複数の抗原を含む1つ以上の固相を含有するのが便利である。従ってたとえば、マルチプレックス電気化学的イムノアッセイ用に設計された検査キットは複数の電極を含む固相を含有でき、各電極が異なる抗原を担持している。
本発明による検査キットは好ましくは、1つ以上の本発明のイムノアッセイを実行するための使用説明書を含む。本発明のキットに含まれる使用説明書は包装材料に添付されてもよくまたは包装インサートとして含まれてもよい。使用説明書は典型的には書面または印刷文書であるが、このような形態に限定はされない。このような使用説明書を記憶して最終使用者に伝達できる何らかの媒体が本発明によって考察されている。このような媒体は非限定的に、電子記憶媒体(たとえば、磁気ディスク、テープ、カートリッジ、チップ)、光学媒体(たとえば、CD ROM)などを含む。この文中に使用した“使用説明書”という用語は、使用説明書を提供するインターネットサイトのアドレスを含み得る。
この明細書で参照した公開特許出願を含めたすべての特許、刊行物およびデータベースエントリーの開示情報のすべては、個々の特許、刊行物およびデータベースエントリーのおのおのを参照によって組込まれると個別に記載した場合と同様に、参照によって組込まれるものとする。
本発明をいくつかの特定実施態様に基づいて説明してきたが、本発明の要旨および範囲を逸脱しない様々な変更は当業者に明らかであろう。当業者に明らかであろうこのような変更のすべては特許請求の範囲に包含されるものである。

Claims (39)

  1. (a)前記対象からサンプルを採取する段階と、
    (b)前記対象のサンプル中の複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを測定する段階と、
    (c)前記レベルを臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象または心血管疾患を有している標準対象から採取したサンプル中で測定した同じ自己抗体のレベルに比較する段階と、および
    (d)段階(c)の比較に基づいて前記対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかの危険性を同定する段階と、
    を含む、対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているまたは発症し得る危険性を評価する方法。
  2. 少なくとも2つの前記異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが、
    (i)臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して前記対象のサンプル中で高いとき、および/または、
    (ii)心血管疾患を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して前記対象のサンプル中で高いかまたほぼ同じレベルであるとき、
    前記危険性が存在する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記対象が自己免疫疾患を有しているときまたは自己免疫疾患を有している個体の一親等の血縁であるとき、前記危険性がさらに増加する、請求項1に記載の方法。
  4. 少なくとも2つの前記異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の前記レベルが、心血管系自己免疫疾患の存在が理由で上昇している、請求項1に記載の方法。
  5. 少なくとも2つの前記異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の前記レベルが、心血管系自己免疫疾患の発症危険性の増加が理由で上昇している、請求項1に記載の方法。
  6. 前記対象のサンプルが末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、尿または他の体液サンプルを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記心血管系自己免疫疾患が、心筋炎、心筋症および虚血性心疾患から成るグループから選択される疾患、障害または状態である、請求項1に記載の方法。
  8. 前記複数が2以上を含む、請求項1に記載の方法。
  9. 前記複数が2から10の範囲を含む、請求項1に記載の方法。
  10. 前記複数が5から10の範囲を含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記複数が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20から成るグループから選択された数を含む、請求項1に記載の方法。
  12. 前記異なる内因性心血管抗原が、α1−アドレナリン受容体、アンギオテンシン−1受容体、アネキシンV、B型ナトリウム利尿ペプチド、心筋トロポニン、ミオシン、トロポミオシン、細胞質好中球、プロテインCの内皮受容体、VIII因子、グレリン、ハロゲン化タンパク質、硝酸化タンパク質、熱ショックタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、胎盤成長因子、リン脂質、プロテイナーゼ−3、プロトロンビン、プルキンエ線維、筋線維鞘Na−K−ATPアーゼ、β1−アドレナリン受容体、β2−アドレナリン受容体および組織型プラスミノーゲン活性化因子から成るグループから選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記異なる内因性心血管抗原がさらに、カルジオリピン、酸化LDLおよびβ−2−グリコプロテイン−1から成るグループから選択された抗原を含む、請求項12に記載の方法。
  14. (a)前記心血管病患者からサンプルを採取する段階と、
    (b)前記対象のサンプル中の複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを測定する段階と、
    (c)前記レベルを臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象または自己免疫疾患を有している標準対象から採取したサンプル中の同じ自己抗体のレベルに比較する段階と、および
    (d)段階(c)の比較に基づいて前記心血管病患者が自己免疫療法を受けるために適格であることを同定する段階と、
    を含む、心血管疾患のある患者が自己免疫療法を受けるために適格であることを同定する方法。
  15. 少なくとも2つの前記異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体のレベルが、
    (i)臨床的に正常な心血管機能を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して前記心血管疾患患者のサンプル中で高いとき、および/または、
    (ii)自己免疫疾患を有している標準対象から採取したサンプル中に比較して前記心血管疾患患者のサンプル中で高いかまたはほぼ同じのとき、
    前記患者が自己免疫療法を受けるために適格である、請求項14に記載の方法。
  16. 前記対象が自己免疫疾患を有しているときまたは自己免疫疾患を有している個体の一親等の血縁であるとき、前記心血管疾患患者が自己免疫療法を受けるために適格である、請求項14に記載の方法。
  17. 少なくとも2つの前記異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の前記レベルが、心血管系自己免疫疾患の存在が理由で上昇している、請求項14に記載の方法。
  18. 少なくとも2つの前記異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の前記レベルが、心血管系自己免疫疾患の発症危険性の増加が理由で上昇している、請求項14に記載の方法。
  19. 前記心血管疾患患者のサンプルが末梢血、血清、血漿、脳脊髄液、尿または他の体液サンプルを含む、請求項14に記載の方法。
  20. 前記心血管系自己免疫疾患が、心筋炎、心筋症および虚血性心疾患から成るグループから選択された疾患、障害または状態である、請求項14に記載の方法。
  21. 前記複数が2以上を含む、請求項14に記載の方法。
  22. 前記複数が2から10の範囲を含む、請求項14に記載の方法。
  23. 前記複数が5から10の範囲を含む、請求項14に記載の方法。
  24. 前記複数が、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20から成るグループから選択された数を含む、請求項14に記載の方法。
  25. 前記異なる内因性心血管抗原が、α1−アドレナリン受容体、アンギオテンシン−1受容体、アネキシンV、B型ナトリウム利尿ペプチド、心筋トロポニン、ミオシン、トロポミオシン、細胞質好中球、プロテインCの内皮受容体、VIII因子、グレリン、ハロゲン化タンパク質、硝酸化タンパク質、熱ショックタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、胎盤成長因子、リン脂質、プロテイナーゼ−3、プロトロンビン、プルキンエ線維、筋線維鞘Na−K−ATPアーゼ、β1−アドレナリン受容体、β2−アドレナリン受容体および組織型プラスミノーゲン活性化因子から成るグループから選択される、請求項14から24のいずれか一項に記載の方法。
  26. 前記異なる内因性心血管抗原がさらに、カルジオリピン、酸化LDLおよびβ−2−グリコプロテイン−1から成るグループから選択された抗原を含む、請求項25に記載の方法。
  27. 対象から採取したサンプルをアッセイにかけて複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを検定する段階を含み、対象が自己免疫疾患に罹っているかまたは対象が自己免疫疾患に罹った個体の一親等の血縁である場合に、少なくとも2つの前記異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体の高レベル存在が前記心血管系自己免疫疾患の存在または危険性を示す指標となる、心血管系自己免疫疾患に罹っているまたは発症危険性のある対象の同定方法。
  28. 複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを検出する手段を含む、サンプル中の少なくとも2つの異なる内因性心血管抗原に対する自己抗体を検定する検査キット。
  29. 前記検査キットがさらに、固相と固相に固定された捕獲剤とを含み、捕獲剤はα1−アドレナリン受容体、アンギオテンシン−1受容体、アネキシンV、B型ナトリウム利尿ペプチド、心筋トロポニン、ミオシン、トロポミオシン、細胞質好中球、プロテインCの内皮受容体、VIII因子、グレリン、ハロゲン化タンパク質、硝酸化タンパク質、熱ショックタンパク質、ミエロペルオキシダーゼ、胎盤成長因子、リン脂質、プロテイナーゼ−3、プロトロンビン、プルキンエ線維、筋線維鞘Na−K−ATPアーゼ、β1−アドレナリン受容体、β2−アドレナリン受容体および組織型プラスミノーゲン活性化因子から成るグループから選択された内因性心血管抗原のアミノ酸配列の一部または全部に対応する配列を有するペプチドである、請求項28に記載の検査キット。
  30. 前記異なる内因性心血管抗原がさらに、カルジオリピン、酸化LDLおよびβ−2−グリコプロテイン−1から成るグループから選択された抗原を含む、請求項29に記載の検査キット。
  31. 検査キットがさらに、種特異的抗体を含む標識された検出試薬を含む、請求項28から30のいずれか一項に記載の検査キット。
  32. さらに、前記ラベルと相互作用して検出可能なシグナルを発生する指示薬を含む、請求項31に記載の検査キット。
  33. 固相がマイクロプレートを含む、請求項29または30に記載の検査キット。
  34. 固相が微粒子を含む、請求項29または30に記載の検査キット。
  35. 固相が電極を含む、請求項29または30に記載の検査キット。
  36. (a)前記対象からサンプルを採取する段階と、
    (b)前記対象のサンプル中の1つ以上の内因性心血管抗原のレベルを測定する段階と、
    (c)前記対象のサンプル中の複数の異なる内因性心血管抗原のおのおのに対する自己抗体のレベルを測定する段階と、
    (d)前記1つ以上の内因性心血管抗原の前記レベルを、臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象から採取したサンプル中、心血管疾患に罹っている標準対象から採取したサンプル中またはもっと早い時期に採取した前記対象のサンプル中で測定した同じ内因性心血管抗原のレベルに比較する段階と、
    (e)自己抗体の前記レベルを、臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象から採取したサンプル中、心血管疾患に罹っている標準対象から採取したサンプル中またはもっと早い時期に採取した前記対象のサンプル中で測定した同じ自己抗体のレベルに比較する段階と、および
    (f)段階(d)および(e)における比較に基づいて前記対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかという危険性を同定する段階と、
    を含む、対象が心血管系自己免疫疾患に罹っているかまたは発症し得るかの危険性を評価する方法。
  37. (i)段階(d)において前記1つ以上の内因性心血管抗原のレベルが臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象のサンプル中に比較して前記対象のサンプル中で変化しているとき、および/または、もっと早い時期に採取した前記対象のサンプル中に比較して前記対象のサンプル中で変化しているかもしくはほぼ同じレベルであるとき、および/または、
    (ii)段階(e)において少なくとも2つの前記異なる内因性心血管抗原に対する前記自己抗体のレベルが臨床的に正常な心血管機能をもつ標準対象のサンプル中に比較して前記対象のサンプル中で増加しているとき、および/または、心血管疾患に罹っている標準対象のサンプル中に比較して前記対象のサンプル中で増加しているかもしくはほぼ同じレベルであるとき、
    前記危険性が存在する、請求項36に記載の方法。
  38. 段階(b)の測定と段階(c)の測定とが同時に行われる、請求項36または37に記載の方法。
  39. 段階(b)の測定と段階(c)の測定とが任意の順序で順次に行われる、請求項36または37に記載の方法。
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