JP2009544971A - 急性アテローム硬化症候群を有する患者を診断するための組成物および方法 - Google Patents

急性アテローム硬化症候群を有する患者を診断するための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、自己免疫の分野に属する。より詳細には、本発明は、アテローム性動脈硬化症の指標としてのベータ2−グリコプロテインI(β−GPI)のドメイン4に対する自己抗体の検出に関する。

Description

本発明は、自己免疫の分野に属する。より詳細には、本発明は、アテローム性動脈硬化症の指標としてのベータ2−グリコプロテインI(β−GPI)のドメイン4に対する自己抗体の検出に関する。
最近、急性心筋梗塞の患者および虚血性脳卒中の患者においても、ベータ2−グリコプロテインI(β−GPI)に対するIgAクラスの自己抗体が報告されている(Ranzolin Aら、Arg Bras.Cardiol.83(2):141〜4;137〜40(2004年);Kahles Tら、Rheumatology 44(9):1161〜5(2005年);Staub HLら、Arg Neuropsiquiat 61(3B):757〜63(2003年))。これらの研究のうちの2つからもたらされた衝撃的な観察は、IgAβ−GPI自己抗体が、通常、IgA抗カルジオリピン抗体(ACA)に関して陰性であった患者で検出されたことであった(Ranzolin Aら、Arg Bras.Cardiol.83(2):141〜4;137〜40(2004年);Staub HL、Arg Neuropsiquiat 61(3B):757〜63(2003年))。この知見は、APSの患者では、通常、抗β−GPI抗体と抗カルジオリピン抗体との両方が陽性である点で、抗リン脂質症候群(APS)の患者の観察結果と際立った対照にある。
β−GPIは、N末端から1〜5に付番された5つの相同性ドメインで構成された血清タンパク質である。ドメイン1〜4は、2本の内部ジスルフィド架橋を形成する、4つの保存されたシステイン残基のフレームワークを特徴とするモチーフを含む約60アミノ酸で構成されている(Lozier,J.ら、PNAS 81:3640〜3644(1984年))。第5のドメインは、6つのシステインを有する82アミノ酸残基を含む点でドメイン1〜4と異なっている。第5のドメインは、リン脂質結合部位を含んでいる(Hunt,J.ら、PNAS 90:2141〜2145(1993年))。
抗β−GPI自己抗体のドメイン特異性に関して、相反する知見が公表されている。例えば、ある研究では、昆虫細胞内で発現された組換えβ−GPIおよびβ−GPIドメイン欠失変異体(Dm)を用いて、APS患者由来の血清試料中に見出された抗β−GPI自己抗体が、β−GPIのドメイン1を認識することが示された(Iverson,GMら、PNAS 95:15542〜15546(1998年))。
APS患者におけるIgG抗β−GPI自己抗体がβ−GPIのドメイン3、4、および5にあるエピトープを認識するという報告もある(Blank,Mら、PNAS 96:5164〜8(1999年);Blank,Mら、PNAS 96:5164〜8(1999年);Koike Tら、J.Autoimmun 15:97〜100(2000年);Yang CDら、APLAR J.Rheumatol 1:96〜100(1997年);Iverson,GMら、J.of Autoimmunity 18:289〜297(2002年);およびMcNeeley PAら、Thromb Haemost 86:590〜5(2001年))。
したがって、APS患者が示す抗体プロフィール(カルジオリピンIgG陽性/β−GPI IgG/IgA陽性)に関する理解、およびAPS患者および心臓血管疾患の患者の抗体の異なったドメイン特異性に基づいた、これらのプロフィールと、急性虚血性疾患を有する心臓血管疾患の患者が示すプロフィール(カルジオリピンIgG/IgA陰性/β−GPI IgA陽性)との相違に関する理解を向上させる必要性がある。本発明は、このような理解の向上を提供するものであり、ドメイン4に結合するIgA抗β−GPI自己抗体が、APS患者および様々な心臓血管疾患の患者で高い割合で見出されるという知見に関する。
本発明は、部分的に、急性アテローム硬化症候群(ASS)の疑いがある患者を診断する方法であって、β−GPIのドメイン4に由来するエピトープを有するポリペプチドを含む抗原を調製するステップと、上記抗原を上記患者由来の生物試料と反応させるステップと、上記試料中の、上記抗原に結合しているIgA抗体を検出するステップとを含む方法に関する。
本発明による抗原は、ドメイン4全体またはドメイン4の抗原性断片からなるものでもよく、および/もしくはドメイン2、3、および5の配列のすべてまたは一部を含むものでもよい。したがって、「ドメイン4に由来するエピトープ」という語句は、他の4つのドメインと比較した場合、ドメイン4に優先的に結合するという点において、ドメイン4に選択的な抗体によって上記エピトープが認識されることを意図する。したがって、上記エピトープは、ドメイン4(もしくはその断片)単独、またはドメイン2、3および4;2、3、4および5;3および4;4および5;3、4および5の組合せからなるポリペプチド、ならびに/もしくはこれらの断片でありうる。
下記に示す通り、ドメイン4配列は56アミノ酸からなる。ドメイン4由来の連続したアミノ酸の最小数がおよそ6であることを考慮すると、ポリグリシンおよび他の小さな非極性アミノ酸などの非干渉性連結領域によって分離された反復単位を有する、上記ドメイン4エピトープの多量体(二量体、三量体など)である抗原を構築することも可能である。このような連結領域は、上記エピトープの、天然に存在する隣接配列を含んでもよく、または含まなくてもよい。
一実施形態によれば、本発明は、患者の急性アテローム硬化症候群を診断する方法であって、前記患者においてIgAドメイン4特異的抗ベータ2−グリコプロテインI(β−GPI)抗体の存在または不在を決定するステップを含み、上記IgA抗β−GPI抗体の存在によって、前記患者が急性アテローム硬化症候群であることが示される方法である。
他の一実施形態では、本発明は、患者の急性アテローム硬化症候群を診断する方法であって、a.急性アテローム硬化症候群を有する疑いがある患者から試料を取得するステップと、b.上記試料を、ドメイン4エピトープを含むβ−GPI抗原と接触させるステップと、c.上記ドメイン4エピトープに結合するIgAドメイン4特異的抗β−GPI抗体の存在または不在を検出するステップ、とを含み、前記試料中の前記IgAドメイン4特異的抗β−GPI抗体の存在によって、前記患者が急性アテローム硬化症候群であることが示される方法である。
さらに別の実施形態では、本発明は、患者の急性アテローム硬化症候群を診断する方法であって、a.急性アテローム硬化症候群を有する疑いがある患者からの試料を、リンカー配列を含まない配列番号5のアミノ酸配列を含むβ−GPI抗原のドメイン4に由来するエピトープと、上記エピトープおよびIgAドメイン4特異的抗β−GPI抗体の複合体を形成するのに適した条件下で接触させるステップと、b.上記複合体内のIgAドメイン4特異的抗β−GPI抗体の存在または不在を検出するステップとを含み、前記患者における前記ドメイン4特異的IgA抗β−GPI抗体の存在によって、前記患者が急性アテローム硬化症候群であることが示される方法である。
上記IgA抗β−GPI抗体を検出する方法は、標識された抗IgA抗体などを用いた、酵素結合免疫吸着アッセイ等の種々の既知のアッセイフォーマットなどの、任意の既知の方法によるものでありうる。
一実施形態では、上記方法は、前記患者における抗カルジオリピン(aCL)抗体の存在または不在を決定するステップをさらに含み、前記患者における前記ドメイン4特異的IgA抗β−GPI抗体の存在、および抗カルジオリピン(aCL)抗体の不在によって、前記患者が急性アテローム硬化症候群であることが示される。
上記ドメイン4エピトープは、ドメインの様々な異なった組合せおよびこれらの断片の形態で存在しうる。例えば、上記ドメイン4エピトープは、ドメイン5に隣接した既知のドメイン4断片抗原性配列からなるものでよい(Kasaharaら)。上記ドメイン4エピトープは、ドメイン3のすべてまたは部分を備えた完全なドメイン4+5配列の形態にあるものでもよく、ドメイン2のすべてまたは部分を備えた完全なドメイン3、4、および5配列の形態にあるものでもよく、もしくはドメイン4および5の隣接した断片の形態にはあるものでもよく、以下同様である。しかしながら、好ましい実施形態では、ドメイン1が完全に欠失している。
本発明の他の態様は、本明細書全体を通して記載されている。
組換えβ−GPIおよびDmによる、β−GPIに結合したAPS試料6635の競合阻害を示す図である。β−GPIでコーティングされたウェル中で、一定量の抗体を様々な濃度の阻害剤と混合した。組換えβ−GPIおよびDMを阻害剤として用いた。上側パネルは、IgG抗体の阻害を測定したものである。下側パネルは、IgA抗体の阻害を測定したものである。 組換えβ−GPIおよび欠失変異体による、β−GPIに結合したACS−71由来のIgA抗β−GPIの競合阻害を示す図である。β−GPIでコーティングされたウェル中で、一定量の抗体を様々な濃度の阻害剤と混合した。組換えβ−GPIおよび欠失変異体を阻害剤として用いた。 β−GPIの全配列および三次構造を示す図である。
以下に続く説明において、分子生物学、免疫学、および医学分野で使用される多数の用語が広範に使用される。このような用語に与えられている範囲を含めた、本明細書および特許請求の範囲の、より明確で、かつ一貫した理解を与えるために、以下の非限定的な定義を示す。
本開示で、「1つ(one、a、またはan)」という用語が使用される場合、別段の指示がない限り、これらは、「少なくとも1つ」または「1つまたは複数」を意味する。
「抗体」という用語は、エピトープまたは抗原決定基に結合できる分子を指す。用語「抗体」には、抗体全体、および一本鎖抗体を含めたこれらの抗原結合性断片が含まれる。このような抗体には、Fab、Fab’およびF(ab’)、Fd、単鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、ジスルフィド結合Fv(sdFv)、およびVドメインまたはVドメインのいずれかを含む断片を含めた、ヒト抗原結合性抗体および抗体断片が含まれるが、これらに限定されない。上記抗体は、トリ、ならびに例えば、ヒト、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ラクダ、およびウマなどの哺乳動物を含めた任意の動物源に由来するものでよい。
用語「抗原」は、抗体、またはMHC分子によって提示されている場合にはT細胞受容体(TCR)が結合できる分子を指す。抗原は、さらに、免疫系によって認識されることが可能であり、ならびに/もしくは体液性免疫応答、および/またはBおよび/またはTリンパ球の活性化をもたらす細胞性免疫応答を誘導することが可能でありうる。抗原は、1つまたは複数のエピトープ(BおよびTエピトープ)を有しうる。本明細書で使用される場合、抗原は、いくつかの個々の抗原の混合物でもありうる。
用語「抗原決定基」は、BまたはTリンパ球のいずれかによって特異的に認識される抗原の一部を指す。抗原決定基またはエピトープは、抗体またはMHC関連においてはT細胞受容体によって認識される、抗原の部分である。抗原決定基は、1つまたは複数のエピトープを含む。
用語「自己抗原」は、自己抗体に結合するか、または細胞反応を誘導する、自己の構成成分を指す。
用語「自己抗体」は、自己タンパク質、糖質または核酸に対して産生された、免疫グロブリン、抗原特異的B細胞表面受容体(表面免疫グロブリン)または抗原特異的T細胞受容体を指す。
用語「エピトープ」は、免疫系、より詳細には抗体(例えば自己抗体)、B細胞、またはT細胞によって認識される抗原の一部分を指し、したがって、抗体、B細胞、またはT細胞が結合する特定のドメイン、領域、または分子構造を指す。抗原は、多数のエピトープからなる可能性があり、ハプテンは、通常、少数のエピトープを保持している可能性がある。
用語「野生型」は、天然に存在する供給源から単離された遺伝子または遺伝子産物を指す。野生型遺伝子は、ある集団で最も高頻度で観察される遺伝子であり、それゆえ、随意に、「正常」または「野生型」形態の遺伝子または遺伝子産物と呼ばれる。対照的に、用語「改変」または「変異体」は、野生型の遺伝子または遺伝子産物と比較した際に、配列および/または機能的特性の改変(すなわち、変化した特徴、例えば低メチル化)を示す遺伝子または遺伝子産物を指す。天然に存在する変異体は単離されることが知られている。これらは、物理的および生物学的特性などの特徴が、野生型遺伝子または遺伝子産物と比較して変化しているという事実によって同定される。
用語「天然タンパク質」は、天然に存在する状態のタンパク質で見出されるアミノ酸のみを含むタンパク質を指す。天然タンパク質は、組換え手段によって産生されたものでも、天然に存在する供給源から単離されたものでもよい。
用語「断片」は、天然に存在するアミノ酸、天然には存在しないアミノ酸、または化学的に修飾されたアミノ酸を含むペプチド、ポリペプチド、または化合物を意味する。断片のサイズは、2アミノ酸残基から、全アミノ酸配列から1アミノ酸を引いたものまでの範囲でありうる。
用語「患者」は、トリ、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ、ブタ、ウマ、イヌ、ネコ、齧歯動物、または、例えばヒトを含めた霊長類などの動物を指すが、これらに限定されない。通常、「患者(subject)」および「患者(patient)」という用語は、本明細書において、哺乳動物患者、特にヒト患者に関して同義的に使用される。
用語「試料」は、最も広い意味で使用される。ある意味では、用語「試料」は、生物試料および環境試料に加えて、任意の供給源から得られた標本または培養物を含むことが意図されている。生物試料は、動物(ヒトを含む)から得られたものであり得、および骨髄、血液、血清、血小板、血漿、間質液、尿、脳脊髄液、核酸、DNA、組織、およびそれらの精製または濾過された形態を含むがこれらに限定されない、上記動物の体内で見出される生体物質または組成物を指す。
用語「血清試料」は、血清を含む生物試料を指す。本発明の方法で使用するための血清試料は、他の成分、とりわけ血液成分を含んでもよいと理解されている。したがって、本発明の目的においては、全血試料、または部分的に分画または分離されているが依然として血清を含む血液試料も「血清試料」と考えられる。当業者ならば、例えば、従来の採血技法を用いることによって、容易に血清試料を取得できる。さらに、血清試料中の保存剤、抗凝血物質、または他の化学物質の存在は、IgA β−GPI抗体の検出を妨害しないもであるべきである。
用語「対照」または「対照試料」は、少なくとも1人の健康な献血者から採取された血清試料などの、1つまたは複数の試料を指す。対照が複数の試料を含む場合、IgA β−GPI特異抗体レベルは、各試料で測定されたIgA β−GPI特異抗体レベルの算術平均、中央値、最頻数、または他の適した統計的尺度で表すことができると理解されている。複数の対照試料をプールすることもでき、プールされた試料のIgA β−GPI特異抗体レベルを測定し、患者の試料と比較することができる。
本明細書で使用される場合、アテローム性動脈硬化症(動脈硬化症、アテローム性血管疾患、動脈閉塞性疾患とも呼ばれる)は、血管壁表面の粥腫(plaque)蓄積および血管の炎症を特徴とする心臓血管疾患を指す。粥腫は、蓄積された細胞内および細胞外脂質、平滑筋細胞、結合組織、炎症細胞、およびグリコサミノグリカンからなる。炎症は、血管壁表面の脂質蓄積と併せて起こり、血管の炎症は、アテローム性動脈硬化疾患の過程の特徴を伴う。
用語「急性アテローム硬化症候群」または「ASS」は、急性心筋梗塞、急性冠動脈症候群、「頸動脈試験」、および末梢動脈疾患を含めた、いくつかのタイプの心血管障害を指すが、これらに限定されない。
β−GPIは、N末端から1〜5に付番された5つの相同性ドメインで構成された血清タンパク質である。一次配列および予測されている三次配列を図3に示す。ドメイン1〜4は、2本の内部ジスルフィド架橋を形成する4つの保存されたシステイン残基のフレームワークを特徴とするモチーフを含む、約60アミノ酸で構成されている。ドメイン5は、6つのシステインを有する82アミノ酸残基を含む点で、ドメイン1〜4と異なっている。ドメイン5は、リン脂質結合部位を含む。
N末端で始まり、ドメイン1をドメイン2に連結する短い配列(下線部)で終わる、図3に示すドメイン1のアミノ酸配列(配列番号2)は次の通りである。
GRTCPKPDDLPFSTVVPLKTFYEPGEEITYSCKPGYVSRGGMRKFICPLTGLWPINTLKCTPRV
ドメイン1をドメイン2に連結する短い配列(下線部)のN末端に始まり、ドメイン2をドメイン3に連結する短い配列(下線部)で終わる、図3に示すドメイン2のアミノ酸配列(配列番号3)は、次の通りである。
TPRVCPFAGILENGAVRYTTFEYPNTISFSCNTGFYLNGADSAKCTEEGKWSPELPVCAPII
ドメイン2をドメイン3に連結する短い配列(下線部)のN末端に始まり、ドメイン3をドメイン4に連結する短い配列(下線部)で終わる、図3に示すドメイン3のアミノ酸配列(配列番号4)は、次の通りである。
APIICPPPSIPTFATLRVYKPSAGNNSLYRDTAVFECLPQHAMFGNDTITCTTHGNWTKLPECREVK
ドメイン4をドメイン3に連結する短い配列(下線部)のN末端に始まり、ドメイン4をドメイン5に連結する短い配列(下線部)で終わる、図3に示すドメイン4のアミノ酸配列(配列番号5)は、次の通りである。
REVKCPFPSRPDNGFVNYPAKPTLYYKDKATFGCHDGYSLDGPEEIECTKLGNWSAMPSCKAS
ドメイン4をドメイン5に連結する短い配列(下線部)のN末端に始まり、C末端で終わる、図3に示すドメイン5のアミノ酸配列(配列番号6)は、次の通りである。
KASCKVPVKKATVVYQGERVKIQEKFKNGMLHGDKVSFFCKNKEKKCSYTEDAQCIDGTIEVPKCFKEHSSLAFWKTDASDVKPC
本明細書で使用される場合、用語「ドメインX」は、単独では、上記に特定された下線部のリンカー配列を含まないアミノ酸配列を有するポリペプチドを指すが、用語「ドメインX/Y」または「ドメインX+Y」が使用されている場合には、上記に特定された適切な下線部リンカー配列によって連結された2つのドメインのアミノ酸配列を有するポリペプチドを指すことが理解されよう。同様に、「リンカー配列を含まない配列番号AのドメインXアミノ酸配列」への言及は、上記に特定された下線部リンカー配列を含まない配列番号Aのアミノ酸のすべてを含むポリペプチドということと同じことを意味する。
ドメイン欠失変異体を表す、用語「Dm」または「ドメイン欠失変異体」は、β−GPIドメインの存在を示すのに数字を用い、一方、ダッシュは、そのドメインが欠失していることを表す。したがって、D−−345は、ドメイン3、4、および5を含むが、ドメイン1および2を欠失している組換えタンパク質に与えられた名称である。
本発明のβ−GPIタンパク質はその変異体であってもよい。別段の指示がない限り、用語「β−GPI」は、天然のβ−GPIタンパク質、およびそれらの変異体の両方を指す。本明細書で使用される場合、β−GPI変異体とは、天然β−GPIタンパク質のアミノ酸配列と比較して、1つまたは複数のアミノ酸置換、欠失、および/または付加(内部付加および/またはβ−GPI融合タンパク質など)を有するアミノ酸配列を含むが、それにもかかわらずβ−GPIの免疫学的活性を保持しているβ−GPIタンパク質である。そのような機能的または免疫学的に同等な変異体は、天然の生物学的変異として生じたもの(例えば、ポリペプチドの対立遺伝子変異体、ポリペプチド相同分子種、およびポリペプチドスプライス変異体)でもよく、または、例えば部位特異的変異誘発またはランダム変異誘発等の化学合成または修飾、変異誘発、などの既知の標準的な技法を用いて調製されたものでもよい。したがって、例えば、あるアミノ酸を、例えば電荷密度、親水性/疎水性度、サイズ、および立体配置に関して、β−GPIタンパク質またはそのエピトープの物理化学的性質を保持し、およびそれによって免疫学的構造を保存する別のアミノ酸で置換したものでもよい。「付加」変異体には、単一アミノ酸または複数のアミノ酸の配列内挿入に加えて、N末端またはC末端融合も含まれ得る。欠失は、配列内のものでも、N末端またはC末端のトランケーションでもよい。
上記変異体は、1から3アミノ酸まで、5アミノ酸まで、10アミノ酸まで、15アミノ酸まで、20アミノ酸まで、25アミノ酸まで、50アミノ酸まで、75アミノ酸まで、またはは100アミノ酸まで、もしくは100超のアミノ酸までの置換、挿入、付加、および/または欠失を有するものでよく、その際、上記置換は、保存的なものでも、非保存的なものでも、またはこれらの組合せでもよい。さらに、本発明のβ−GPIタンパク質は、天然のβ−GPIタンパク質の、連続した少なくとも10アミノ酸残基、少なくとも12アミノ酸残基、少なくとも15アミノ酸残基、少なくとも20アミノ酸残基、少なくとも25アミノ酸残基、少なくとも30アミノ酸残基、少なくとも35アミノ酸残基、少なくとも40アミノ酸残基、または少なくとも50アミノ酸残基を含むものでよい。このような変異体は、天然のβ−GPIタンパク質と、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%同一であることが好ましい。さらに、上記β−GPI変異体は、上記天然タンパク質の免疫学的活性の約1%超、約10%超、約25%超、約50%超、約60%超、約70%超、約80%超、約90%超、約95%超、または約100%超の活性を有する免疫学的活性を維持しているものでよい。
β−GPIタンパク質のアミノ酸配列への保存的改変は、通常、元のβ−GPIタンパク質のものと機能的および化学的に類似した特性を有するポリペプチドを産生する。対照的に、β−GPIタンパク質の機能的および/または化学的特性の実質的な改変は、(a)置換領域の(二次、三次、および/または四次)構造、または(b)標的部位の分子の電荷量もしくは疎水性度の維持への影響が有意に異なる、β−GPIタンパク質アミノ酸配列中の置換を選択することによって実現されうる。アミノ酸配列の改変は、当技術分野でよく知られている、化学的および生物学的なペプチドおよびタンパク質合成法によって実現できる。
望ましいアミノ酸置換(保存的なものでも、非保存的なものでも)は、当業者ならば、そのような置換が必要となったときに決定できる。例えば、アミノ酸置換は、例えばβ−GPI特異抗体との結合相互作用等のβ−GPIタンパク質の生物活性を調節するのに、または試料中の他の分子との好ましくない非特異的結合相互作用を低減するのに重要な残基を特定するのに使用できる。適したアミノ酸置換には、AlaからVal、Leu、またはIleへの置換;ArgからLys、Gln、またはAsnへの置換;AsnからGlnへの置換;AspからGluへの置換;CysからSerまたはAlaへの置換;GlnからAsnへの置換;GluからAspへの置換;HisからAsn、Gln、Lys、またはArgへの置換;IleからLeu、Val、Met、Ala、Phe、またはノルロイシンへの置換;Leuからノルロイシン、Ile、Val、Met、Ala、またはPheへの置換;LysからArg、1,4−ジアミノ酪酸、Gln、またはAsnへの置換;MetからLeu、Phe、またはIleへの置換;PheからLeu、Val、Ile、Ala、またはTyrへの置換;ProからAlaへの置換;SerからThr、Ala、またはCysへの置換;ThrからSerへの置換;TrpからTyrまたはPheへの置換;TyrからTrp、Phe、Thr、またはSerへの置換;およびValからIle、Met、Leu、Phe、Ala、またはノルロイシンへの置換が含まれるが、これらに限定されない。置換するためのアミノ酸の選択は、その親水性指標および/または親水性によって導くこともできる。
加えて、上記ポリペプチドは、相同なポリペプチドに融合させて、ホモ二量体を形成させても、または異種ポリペプチドに融合させてヘテロ二量体を形成させてもよい。異種ポリペプチドには、精製を容易にするためのCまたはN末端のポリヒスチジンなどの、β−GPI融合ポリペプチドの検出および/または単離を可能にするエピトープ;触媒活性を有する酵素またはその一部;ロイシンジッパードメインなどの、オリゴマー形成を促進するポリペプチド;ならびに免疫グロブリン定常領域などの、安定性を増大させるポリペプチドが含まれるが、これらに限定されない。
融合は、β−GPIポリペプチドのアミノ末端でも、カルボキシル末端でも行うことができる。融合は、リンカーまたはアダプター分子のない直接的なものでもよく、もしくはリンカーまたはアダプター分子を介したものでもよい。リンカーまたはアダプター分子は、1または複数アミノ酸残基でよく、通常は、約20から約50アミノ酸残基である。リンカーまたはアダプター分子は、融合部分の分離を可能にするために、プロテアーゼの切断部位を有するように設計してもよい。上記融合ポリペプチドは、ひとたび構築されれば、本明細書に記載の方法に従ってさらに誘導体化できることが理解されよう。
本発明のβ−GPIタンパク質は、アシル化(すなわちアセチル化またはホルミル化)、ビオチン化、カルボキシ化、脱アミノ化、グルタチオン化、グリコシル化、脂質化(すなわち、ファルネシル化、ゲラニルゲラニル化(gernylgeranylation)、プレニル化、ミリストイル化、パルミトイル化、またはステアロイル化)メチル化、リン酸化、硫酸化、フコシル化、およびユビキチン化などの、タンパク質の翻訳後修飾を含む、化学的または生物学的に修飾されたタンパク質である、β−GPIの誘導体でもよい。別段の指示がない限り、用語「β−GPIタンパク質」は、天然タンパク質と、それらの変異体および誘導体との両方を指す。タンパク質誘導体は、上記ポリペプチドに天然で結合する翻訳後修飾基とは型、数、または位置が異なる様式で修飾されたものでありうる。例えば、誘導体は、天然タンパク質と比較して、改変されたグリコシル化の数および/または型を有しうる。この結果得られる誘導体は、天然タンパク質より多数または少数のN結合型グリコシル化部位を含みうる。
β−GPIポリペプチドは、1つまたは複数の重合体の共有結合によって修飾されたものでもよい。通常、選択される重合体は、それが結合するタンパク質が生理的環境などの水溶液環境で沈殿しないように、水溶性のものである。上記重合体は、いかなる分子量のものでもよく、分岐していても、分岐していなくてもよい。上記重合体は、通常、それぞれが約1kDaから約100kDaの間の平均分子量を有する。
適した水溶性重合体またはこれらの混合物には、ポリアルキレングリコール(モノ(C〜C10)アルコキシ−、アリールオキシ−ポリエチレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、またはポリプロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体など)、糖質ベースの重合体(デキストランまたはセルロースなど)、ポリオキシエチレン化ポリオール、およびポリビニルアルコールが含まれるが、これらに限定されない。共有結合したβ−GPIポリペプチド多量体を調製するのに使用できる二機能性架橋分子も、本発明に包含される。
一般に、化学誘導体化は、活性化された重合体分子とタンパク質を反応させることによって、適した条件下で実行できる。ポリペプチドの化学的誘導体を調製する方法は、通常、(a)活性化された重合体分子(この重合体分子の反応性エステル誘導体またはアルデヒド誘導体など)とポリペプチドを、上記β−GPIタンパク質が1つまたは複数の上記重合体分子と結合する条件下で反応させるステップと、(b)反応生成物を取得するステップとを含む。最適な反応条件は、選択されたβ−GPIタンパク質と、使用される化学試薬に応じて変動しうるものであり、通常、実験的に決定される。ポリペプチドのPEG化は、アシル化、アルキル化、またはマイケル付加を含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の任意のPEG化反応を用いて実行できる。
診断アッセイ
本発明で使用するのに適したイムノアッセイには、多くの異なったタイプがある。β−GPI抗原と反応する、試料中のβ−GPI特異抗体のレベルを検出するために、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、蛍光免疫吸着アッセイ(FIA)、化学結合免疫吸着アッセイ(CLIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫ブロット、ゲル拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、in situイムノアッセイ(例えば、コロイド金、酵素または放射性同位元素標識を用いる)ウェスタンブロット、沈降反応、凝集アッセイ(例えば、ゲル凝集アッセイ、赤血球凝集反応アッセイなど)、補体結合アッセイ、免疫蛍光測定法、プロテインAアッセイ、および免疫電気泳動アッセイなどの、既知のイムノアッセイのいずれを適合させてもよい。使用されうる様々なイムノアッセイに関する概説には、「Immunoassay Handbook」、David Wild編集、Stockton Press社、New York所在、1994年を参照されたい。固相分離を用いた競合イムノアッセイまたは抗体を試験するためのイムノメトリックアッセイが、本発明での使用にとりわけ適している。「Immunoassay Handbook」、第2章を参照されたい。
本発明の例示的な一実施形態では、上記診断アッセイが、試料中のβ−GPI特異抗体のレベルを検出するためのイムノメトリックアッセイである。上記イムノメトリックアッセイでは、上記β−GPI抗原が、直接的に、または抗β−GPI抗体などの捕捉物質を介して間接的に固体支持体に固定される。患者由来の血清試料などの、試料の分割量を上記固体支持体に添加して、固相表面のβ−GPI抗原と共にインキュベートする。上記β−GPI抗原と反応した、上記試料中に存在する自己抗体の定常領域を認識する二次抗体を添加する。上記患者がヒトである場合、この二次抗体は、抗ヒト免疫グロブリンである。IgA、IgG、またはIgM重鎖定常領域、またはこれらの組合せに特異的な二次抗体が利用できる。固相支持体を液相から分離した後、上記支持体相に検出可能なシグナルがあるかどうか検査する。上記固体支持体上のシグナルの存在は、上記試料中に存在している天然β−GPIタンパク質に対する自己抗体が上記固体支持体上のβ−GPI抗原に結合していることを示す。正常患者由来の対照試料と比較した際の、光学濃度または放射標識されたシグナルの増大は、患者におけるAPSの診断と相関する。
固体支持体は、当業者には既知であり、反応トレー(例えばマイクロタイタープレート)のウェルの壁、試験管、ポリスチレンビーズ、磁気ビーズ、ニトロセルロースストリップ、膜、ラテックス粒子などのマイクロ粒子、ガラスまたはシリコンチップ、ヒツジ(または他の動物)の赤血球、およびDURACYTE(登録商標)が含まれる。固相表面に核酸を固定するのに適した方法には、イオン性、疎水性、および共有結合性などの相互作用が含まれる。固体支持体は、本明細書で使用される場合、不溶性であるか、または後続の反応によって不溶性にできるいかなる物質も指す。固体支持体は、捕捉試薬を誘引および固定するその固有の能力に関して選択することができる。別法では、上記固相は、捕捉試薬を誘引および固定する能力を有する追加分子を保持できる。上記追加分子には、捕捉試薬自体に対して、または捕捉試薬に結合した荷電物質に対して反対に荷電されている荷電物質が含まれうる。さらに別の代替手段として、上記分子は、固体支持体表面に固定されて(結合して)おり、および特異的な結合反応によってβ−GPI抗原を固定する能力を有する任意な特異的結合部でありうる。上記分子は、アッセイ実施前またはアッセイ実施中に、固体支持体物質にβ−GPI抗原を間接的に結合することを可能にする。
上記シグナル発生システムは、1つまたは複数の成分から構成されており、それらのうち少なくとも1つは標識であり、上記標識は、結合標識および/または非結合標識の量、すなわちβ−GPI抗原に結合している標識または結合していない標識の量に対する検出可能シグナルを発生する。上記標識は、シグナルを発生する分子、またはシグナルを発生するように誘導されうる分子である。標識の例には、蛍光剤、酵素、化学発光剤、光増感剤、または懸濁可能粒子(suspendable particle)が含まれる。上記シグナルは、酵素活性、発光、または吸光度を検出することによって、検出され、測定されうる。放射標識も使用でき、放射能のレベルはシンチレーションカウンターを用いて検出され、測定される。
抗ヒト免疫グロブリンを標識するのに使用できる酵素の例には、β−D−ガラクトシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、およびグルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼ(「G6PDH」)が含まれる。抗ヒト免疫グロブリンを標識するのに使用できる蛍光剤の例には、フルオレセイン、イソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルアルデヒド(phthaldehyde)、フルオレサミン、およびAlexa Fluor(登録商標)色素(すなわち、スルホン化クマリン、ローダミン、キサンテン、およびシアニン色素)が含まれる。化学発光剤には、例えば、イソルミノールが含まれる。例えば、上記抗ヒト免疫グロブリンは、セイヨウワサビペルオキシダーゼまたはアルカリ性ホスファターゼのいずれかで酵素標識することができる。
本発明の方法で使用するためのβ−GPI抗原反応性抗体は、周知の方法を用いて酵素に共有結合できる。多数の、既知の結合方法がある。例えば、アルカリホスファターゼおよびセイヨウワサビペルオキシダーゼは、グルタルアルデヒドを用いて抗体に結合することができろ。セイヨウワサビペルオキシダーゼは、過ヨウ素酸法を用いて結合することもできる。酵素結合抗体の市販キットは、広範に入手可能である。酵素が結合した抗ヒトおよび抗マウス免疫グロブリン特異抗体は、複数の商業的供給源から入手可能である。
酵素結合抗体の代替物としてビオチン標識抗体を用いてもよい。このような場合、結合抗体は、市販のストレプトアビジン−セイヨウワサビペルオキシダーゼ検出システムを用いて検出されるであろう。
酵素標識抗体は、基質に応じて様々なシグナル源を産生する。シグナルの発生には反応混合物への基質の添加が関与する。一般的なペルオキシダーゼ基質には、ABTS(2,2’−アジノビス(エチルベンゾチアゾリン−6−スルホン酸))、OPD(O−フェニレンジアミン)、およびTMB(3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン)が含まれる。これらの基質は、過酸化水素の存在を必要とする。p−ニトロフェニルリン酸は、一般的に使用されているアルカリホスファターゼ基質である。インキュベーション時間中に、徐々に上記酵素が基質の一部を最終産物に変換する。インキュベーション時間の終わりに、酵素活性を停止する停止試薬を添加する。シグナル強度は、通常、分光光度計を介して光学濃度を測定することによって決定する。
アルカリ性ホスファターゼ標識抗体も、蛍光分析によって測定できる。したがって、本発明のイムノアッセイでは、4−メチルウンベリフェリルリン酸(4−UMP)基質が使用できる。アルカリ性ホスファターゼは、4−UMPを脱リン酸化して、蛍光色素である4−メチルウンベリフェロン(4−MU)を形成した。入射光は365nmであり、放射光は448nmである。
反応物中に存在する色、蛍光、発光、または放射能(使用されるシグナル発生システムに応じる)の量は、試料中の、β−GPI抗原と反応する自己抗体の量に比例する。光学濃度の定量は、フローサイトメータを含めた、分光光度法または蛍光定量法を用いて行うことができる。放射標識シグナルの定量は、シンチレーション計測を用いて行うことができる。
別の例示的な実施形態では、上記アッセイが、β−GPI特異的な自己抗体と同じエピトープに結合する1つまたは複数のβ−GPI特異抗体を利用する競合イムノアッセイである。上記アッセイでは、試料中のβ−GPI特異抗体およびβ−GPI特異的自己抗体が、β−GPI抗原への結合に関して競合する。通常、β−GPI抗原に結合することが既知である一定の量の標識抗体を、様々な濃度の、患者由来の試料と共にインキュベートする。β−GPI特異抗体は、モノクローナルまたはポリクローナルでもよい。
本明細書中で上述の通り、β−GPI特異抗体は蛍光剤、酵素、化学発光剤、光増感剤、懸濁可能粒子、または放射性同位元素によって標識され得る。インキュベーションの後に、結合している標識抗体を遊離抗体から分離する。使用されるシグナル発生システムに応じて、必要な場合には、標識抗体が反応する適切な基質を添加し、インキュベートする。その後、試料によって発生したシグナルを測定する。血清試料を添加する前および後の、または実験試料と対照試料間の光学濃度または放射能の低減は、試料中の自己抗体がβ−GPI抗原に結合したことを示す。正常患者由来の対照試料と比較した場合の光学濃度または放射標識シグナルの低減は、患者におけるAPSの診断と相関している。
競合イムノアッセイの代替の例示的な実施形態では、2つの抗体を用いる間接法が提供される。β−GPI抗原特異抗体は、それらが標識されていないことを例外として、上記に記載の通り、最初に添加される。それらを、様々な濃度の、患者からの試料と共にインキュベートする。その後、試料と第1の抗体との混合物に、一定量の第2の抗体を添加する。第2の抗体は、第1の抗体の重鎖定常領域を認識する。例えば、上記第2の抗体は、β−GPI抗原と反応した、マウス免疫グロブリンの重鎖定常領域を認識する抗体(抗マウス免疫グロブリン)でよい。第2の抗体は、上述の通り、蛍光色素、ケミロフォア(chemilophore)、または放射性同位元素によって標識することができる。遊離状態の標識第2抗体を結合抗体から分離する。酵素標識抗体を使用する場合、酵素標識が反応する適切な基質を添加し、インキュベートする。対照試料との比較における、血清試料を添加する前および後の、光学濃度または放射能の低減は、血清試料中の自己抗体がβ−GPI抗原に結合したことを示す。正常患者由来の対照試料と比較した際の、光学濃度または放射能の低減は、患者におけるAPSの診断と相関している。
一部の実施形態では、自動検出アッセイが利用される。イムノアッセイの自動化の方法には、それぞれが参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,885,530号、第4,981,785号、第6,159,750号、および第5,358,691号に記載のものが含まれる。一部の実施形態では、結果の分析および提示も自動化される。例えば、一部の実施形態では、自己免疫疾患または慢性炎症性疾患のマーカーに対応する一連のタンパク質の存在または不在に基づいて、予後判定を生成するソフトウェアが利用される。
一部の実施形態では、β−GPI特異的な自己抗体のレベルは、他の生物学的マーカーと共に、心臓病を診断するためのパネルとして使用できる。上記パネルは、ASSと相関している複数のマーカーの同時解析を可能にする。例えば、パネルには、所与の治療に応答する可能性が高い患者または低い患者で、ASSと相関しているとして同定されたマーカーを含めることができる。パネルは、可能な最良の診断および予後判定を提供するために、患者に応じて、単独で分析しても、組み合わせて分析してもよい。パネル上に包含させるマーカーは、限定されるものではないが、以下の例示的な実施例に記載するものを含めた、任意の適した方法を用いた際の予測値に関するスクリーニングによって選択する。
データ分析
本発明では、検出アッセイによって生成された生データを、臨床医にとって予測値を有するデータに転換するのに、コンピューターベースの分析プログラムを使用することもできる。臨床医は、任意の適した手段を用いて、予測データに容易にアクセスすることができる。臨床医は、患者の治療を最適化するために、その後直ちに、その情報を利用することができる。
本発明は、アッセイを行う検査室、情報プロバイダー(information provides)、医療関係者および患者へ、およびそれらから、情報を受信し、処理し、かつ伝達できるいかなる方法も企図している。例えば、本発明の一部の実施形態では、試料(例えば、生検、血清または尿試料)を患者から採取して、世界の任意の地域(例えば、患者が在住する国とも、情報が最終的に使用される国とも異なる国)に所在するプロファイリングサービス(例えば、医療施設の臨床検査室、ゲノムプロファイリング会社など)に提出して、生データを作成する。上記試料が組織または他の生物試料を含む場合、患者は、試料を採取して、プロファイリングセンターに送ってもらうために医療センターに来院してもよく、または患者が自ら試料(例えば尿試料)を収集して、プロファイリングセンターに直接送ってもよい。上記試料が以前に測定した生物情報を含む場合、患者がその情報をプロフィリングサービスに直接送ってもよい(例えば上記情報を含む情報カードをコンピューターでスキャンして、電子伝達システムを用いてそのデータをプロフィリングセンターのコンピューターに送ってもよい)。ひとたびプロファイリングサービスに受信されれば、上記試料が処理され、患者にとって望ましい診断情報または予後判定情報専用のプロフィールが作成される。
その後、治療を行う臨床医が解釈するのに適した形式で、プロフィールデータを作成する。例えば、生の発現データを提供する代わりに、上記作成された形式は、特定の治療オプションの推薦と共に、患者に関する診断またはリスク評価(例えば、HCCなどの肝臓疾患が特定の治療に好ましい反応を示す可能性)を表すものでもよい。データは、いかなる適した方法で臨床医に提示してもよい。例えば、一部の実施形態では、上記プロファイリングサービスが、臨床医用に印刷できる(例えば治療地点で)か、コンピューターモニター上で臨床医に提示できる報告を作成する。
一部の実施形態では、上記情報を治療地点または地域施設で最初に分析する。その後、生データをさらに分析するため、および/または臨床医もしくは患者に有用な情報に生データを変換するために中央処理施設に送る。中央処理施設は、データ分析のプライバシー(すべてのデータが、中央施設で統一されたセキュリティプロトコルで保存される)、スピード、および均一性に関する利点を提供する。その後、中央処理施設は、患者を治療した後のデータの最終結果を制御することができる。例えば、電子伝達システムを用いて、中央施設は、データを臨床医、患者、または研究者に提供することができる。
一部の実施形態では、患者は、電子伝達システムを用いて上記データに直接アクセスすることができる。患者は、結果に基づいて、さらなる治療介入またはカウンセリングを選択することができる。一部の実施形態では、上記データが研究使用に用いられる。例えば、特定の状態または疾患の重症度の有用な指標としてのマーカーの包含または除外をさらに最適化するのに、上記データを使用できる。
β−グリコプロテインI(β−GPI)を標的とする自己抗体は、アテローム硬化斑の一成分であり、急性虚血症候群の患者で一般的に見出される。APS(抗リン脂質症候群)患者由来、および急性アテローム硬化症候群を示す心臓血管疾患の患者由来の血清試料を、抗β−GPI ELISAアッセイおよび抗カルジオリピン(aCL)ELISAアッセイの両方で、IgG抗体およびIgA抗体について分析した。使用したAPS試料のすべてが両アッセイで陽性であった。382人の心臓血管疾患の患者由来の血清試料も、同じアッセイで、IgG抗体およびIgA抗体について分析した。APS試料とは明らかに対照的に、心臓血管疾患の患者由来の試料の1%のみがIgA aCL陽性であり、1.6%がIgG aCL陽性であり、一方、35.6%がIgA抗β−GPI陽性であり、1.6%のみがIgG抗β−GPI陽性であったことが見出された。心臓血管疾患の患者から得られた29の血清試料の抗原特異性を評価した。ヒトβ−GPIの6つの異なった組換えドメイン欠失変異体(DM)および完全長ヒトβ−GPI(野生型)を競合阻害アッセイで使用して、抗β−GPI ELISAアッセイで自己抗体が結合するのを阻害した。ドメイン欠失変異体D−−345およびD−−−45は、IgA抗β−GPIアッセイにおける結合を阻害したのは、これらの自己抗体がβ−GPI分子のドメイン4を認識することを示唆している。これらの結果は、アテローム性動脈硬化症患者由来のIgA抗β−GPI自己抗体が、APS試料で見出されたIgA自己抗体とは異なることを実証した。
この実施例は、APS患者およびアテローム性動脈硬化症患者の抗体のドメイン特異性が相違しているため、APS患者が示す優勢な抗体プロフィール(カルジオリピンIgG陽性/β−GPI IgG/IgA陽性)が、急性虚血疾患を有するアテローム性動脈硬化症患者が示す優勢なプロフィール(カルジオリピンIgG/IgA陰性/β−GPI IgA陽性)とは異なっていることを実証する。一連の完全長β−GPIおよびβ−GPI Dmを用いて、これらの構築物(construct)に対するIgG、IgA、およびIgM抗体に関して、競合阻害ELISAを用いることによって、APSを有する患者および様々なアテローム性動脈硬化症集団由来の多数の血清試料を試験した。IgG、IgA、およびIgM aCL抗体に関しても、すべての標本を試験した。この実験は、アテローム性動脈硬化症患者由来の29のIgA抗β−GPI陽性試料のうち29が、β−GPIのドメイン4を特異的に認識したことを実証した。
材料および方法
組換えβ−GPI
用いた組換えβ−GPIおよびβ−GPIドメイン欠失変異体(DM)は、以前に記載されている通りである(Igarashi Mら、Blood 87(8):3262〜3270(1996年))。簡潔には、Sf9昆虫細胞内で産生された高力価ウイルスストックを、TN5昆虫細胞に感染させた。各構築物は、培養培地からのタンパク質を精製するのに使用された6hisテールを含んでいた。ドメイン欠失変異体の命名法は、ドメインの存在を示すのに数字を用い、一方、ダッシュは、そのドメインが欠失していることを表す。したがって、D−−345は、ドメイン3、4、および5を含むが、ドメイン1および2を欠失している組換えタンパク質に与えられた名称である。
患者試料の選択
記載した各症候群の診断は、臨床症状、超音波、血管造影、または血管磁気共鳴検査に従って行った。患者は、専門治療センター(tertiary center)(大学病院)で連続的に登録した。感染性心内膜炎、骨壊死、腫瘍、脳出血、HIVもしくは梅毒トレポネーマによる感染、ホモシスチン尿症もしくは第V因子(ライデン)変異などの血栓症の既知遺伝的要因の存在、以前のAPS診断、または他の結合組織病(CTD)を有する患者は除外した。対照患者は、骨折または筋肉靭帯障害で整形外科に入院した患者であって、急性心筋梗塞、発作、または他の心臓状態を患っていない患者から募集した(Ranzolin Aら、Arg Bras.Cardiol,83(2):141〜4;137〜140(2004年);Staub HLら、Arg Bras Neuropsiquiat 61(3B):757〜63(2003年))。
様々なアテローム性動脈硬化症状態の個体由来の382の血清、および抗リン脂質症候群を有する個体由来の129の血清からなる合計511の保存標本を検査した。アテローム性動脈硬化症群には、末梢動脈障害(117)、急性冠動脈症候群(117)、および急性心筋梗塞(90)の個体からの血清が含まれていた。抗β−GPI ELISAでIgGおよびIgAの両方に陽性であったAPS患者から10の試料、そして抗β−GPI ELISAでIgAに陽性であったアテローム性動脈硬化症患者から29の試料を、ランダムに選択した。
抗β−GPIおよび抗カルジオリピンELISA
APS患者および心臓血管疾患の患者両方由来のすべての試料を、抗カルジオリピン(aCL)抗体および抗β−GPI抗体の存在をELISAによって試験した。最初に、多価のaCLおよび抗β−GPIスクリーニングELISA試験を用いて、IgG、IgA、またはIgM aCL抗体およびβ−GPI抗体の存在に関して標本を試験した。この調査で使用されたすべてのELISAキットがINOVA Diagnostics社(INOVA Diagnostics社、San Diego,CA所在)で製造されたものであり、使用説明書に従って使用された。
競合阻害ELISA
試験は、INOVA Diagnostics社製の適切な(IgGおよび/またはIgA)抗β−GPI ELISAキットを用いて行った。最大結合の約80%を与えるのに必要な希釈率を決定するために、各血清を力価決定した。上記キットに提供されている試料希釈緩衝液中に試験阻害剤を希釈し、25μlの各希釈物または試料希釈液単独をウェルに添加した。血清試料を試料希釈緩衝液中に希釈し、定率の希釈物25μlをウェルに添加した。ウェルの内容物を混合し、プレートを室温で30分間インキュベートした。上記キットに提供されている洗浄緩衝液でウェルを3回洗浄し、50μlのHRP結合抗IgGまたはIgAを添加し、30分間インキュベートし、洗浄緩衝液で3回洗浄し、50μlの基質溶液を添加した。ウェルを室温で30分間インキュベートし、50μlの停止液を添加した。各ウェルのOD450をAnthos Labtec社製HT2マイクロプレートリーダー(Salzburg,Austria所在)で測定した。阻害率は、[(阻害剤なしの対照ウェルから得られた平均A450−バックグランドのA450)−(阻害剤の存在下で得られたA450−バックグランドのA450)/(阻害剤なしの対照ウェルから得られた平均A450−バックグランドのA450)]×100に従って決定した。
結果
抗β−GPIおよび抗カルジオリピン
抗β−GPIアッセイおよび抗カルジオリピン(aCL)アッセイの両方で、IgGおよびIgA自己抗体があるかどうか、APS患者および心臓血管疾患の患者からの血清試料を分析した。APS試料の約80%が、多価のIgG/IgA/lgM aCLおよびβ−GPIスクリーニングアッセイ(表1)で陽性であった。
Figure 2009544971
APS血清の特異的アイソタイプ試験は、約64%がIgG、9%がIgA ACA抗体陽性である一方、43%がIgG、48%がIgA抗β−GPI陽性であったことを明らかにした。aCLおよび抗β−GPIアッセイの両方で、総(IgG/IgA/IgM)ならびに特異的なIgG抗体およびIgA抗体について、370人の心臓血管疾患の患者由来の血清試料を同様に試験した。APS試料とは明らかに対照的に、上記標本のそれぞれ64%および43%でIgG aCL抗体およびIgG抗β−GPI抗体が見出されたが、心臓血管疾患の患者由来の試料の1%のみで、IgG aCL抗体およびIgG抗β−GPI抗体が存在していたことが見出された。さらに衝撃的であったのは、IgA aCLおよびIgA抗β−GPIの反応性のパターンはAPS患者および心臓血管疾患の患者で類似していた(両方とも、IgA aCLが低レベルであり、IgA抗β−GPIが中程度のレベルであった)一方で、IgA抗β−GPIが心臓血管疾患群に存在している唯一の主要な抗体であったという観察結果であった。対照的に、APL患者は、中程度のレベルのIgG aCL、IgG抗β−GPI、およびIgA抗β−GPI抗体を有していた(表1)。
APS患者由来のIgG抗β−GPIIおよびIgA抗β−GPIIの両方によって認識されるβ−GPIエピトープ
10人の異なったAPS患者由来のIgG自己抗体およびIgA自己抗体の両方の抗原特異性を決定するために、組換えβ−GPIおよび2つの欠失変異体を用いた。用量依存的様式で、これらの自己抗体が完全長β−GPIに結合するのを阻害する能力に関して、各組換え型のβ−GPIを試験した(表2、図1)。
Figure 2009544971
ドメインIを含む構築物のみが、IgGおよびIgA自己抗体の両方を阻害した。表2で示した通り、10人の患者全員由来のIgGおよびIgA抗β−GPI結合抗体の両方が、ドメイン1を含む両方の構築物によって阻害された。これらの試料はいずれも、ドメイン1を欠失した構築物によっては、試験された最も高い濃度でさえ、効果的に阻害されなかった。ドメイン1を含む変異体のID50値は、IgG抗体では1〜50μM、IgA抗体では13〜100μMの範囲であった。対照的に、ドメイン1を含んでいなかった変異体(D−−−45)は、IgG抗体も、IgA抗体も、効果的に阻害しなかった。
急性心臓血管疾患症候群の患者由来のIgA抗β−GPIによって認識されるβ−GPIエピトープ
APS血清および心臓血管疾患血清のβ−GPIおよびaCLプロフィール(表1)の相違は、本発明者らに、心臓血管疾患の患者のIgA抗β−GPI抗体は、APS患者体内に存在するものとは異なっている可能性があり、β−GPIタンパク質上の異なったドメインを標的としているかもしれないことを示唆した。
心臓血管疾患の患者のコホートから、IgA抗β−GPI抗体陽性であり、ならびにaCL IgG陰性、aCL IgM陰性、および1つの血清を例外としてaCL IgA陰性である29の試料を選択した。これらの血清の詳細なβ−GPIおよびaCLプロフィールを、表3に示す。
Figure 2009544971
急性心臓症候群(11)、急性心筋梗塞(6)、頸動脈疾患(8)、および末梢動脈疾患(4)を含めた様々な心臓血管疾患状態の患者由来の29の異なった試料由来のIgA β−GPI結合抗体の抗原特異性を決定するために、7つの異なった組換えβ−GPI変異体タンパク質を用いた。IgA抗体が完全長β−GPIに結合するのを阻害する能力について、各変異体の組換えβ−GPIタンパク質を用量依存的な様式で試験した(表4)。
Figure 2009544971
結果の一例を図2にグラフ表示する。完全長構築物を除けば、D−−345、およびD−−−45構築物のみがこれらのIgA抗体を阻害した。29の試料のうち4つは、はるかに少ない程度ではあるが、D1234−構築物によっても阻害された。これらの試料のうち1つのみが、D−−−−5構築物によっても阻害された。D−−345およびD−−−45変異体のID50値は、1〜55μMの範囲であった。対照的に、D12−−−およびD123−−変異体は、試験された29の試料のうちいずれの結合も効果的に阻害しなかった。
考察
APS患者で見出されるIgG自己抗体の抗原特異性は、β−GPI分子のドメイン1を認識していることが以前に示されている(Iverson,GMら、PNAS 95:15542〜15546(1998年);Iverson,GMら、J.Immunol.169:7097〜7103(2002年))。しかしながら、APS患者からのIgA自己抗体の抗原特異性は知られていなかった。本明細書で報告した阻害調査(図1、表2)は、この報告で調査された10のAPS試料からなる一群の抗原特異性が、β−GPI分子のドメイン1内に含まれているエピトープに対するものであることを明確に示している。したがって、APS患者で見出されたIgG自己抗体およびIgA自己抗体の両方の抗原特異性が、ドメイン1である。
この実験は、いくつかのタイプのASS(急性心筋梗塞、急性冠動脈症候群、「頸動脈試験」、および末梢動脈疾患)である患者由来のIgAβ−GPI結合抗体が、β−GPI分子のドメイン4上のエピトープを認識することも示している(図2および表3)。APS患者由来の自己抗体がβ−GPIのドメイン4を認識することを示したとされる以前の研究(Igarashi M.ら、Blood、87(8):3262〜70(1996年);George Jら、J.Immunol.160(8):3917〜3923(1998年))とこれを混同するべきではない。これらの研究は、IgAではなく、IgG自己抗体の抗原特異性を研究するように設計されたものである。
ドメイン4を含むDmは、試験された様々な試料間で、同一ではないが類似したパターンで阻害した。例えば、4つのみがD1234−構築物によって阻害された。これは、ドメイン4上に存在する、共通点はあるが識別可能なエピトープをこれらの抗体が認識していること示唆している。β−GPIの結晶構造から得られた最近の分子シミュレーションは、この可能性を支持している。この研究は、β−GPIのドメイン4における2つの不連続な抗原性配列の存在を示唆している(Kasahara Hら、Int.Immunol.17:1533〜1542(2005年))。ドメイン4は、異なったドメインを含む構築物内に存在している場合には、異なった立体配座状態を有している可能性がある。例えば、ドメイン5が欠失している場合には、少数の試料がドメイン4を認識したが、大多数は、ドメイン5が存在していた場合にのみ、ドメイン4を認識した。したがって、これらの抗体は、別のドメインの存在によって影響を受けるドメイン4上のエピトープを認識している可能性がある。この解釈も、上記シミュレーション実験によって支持された。
以前に、ELISAによって測定する場合、抗β−GPI自己抗体の結合にはELISAプレート上におけるβ−GPIの方向性が重要であることが示されている(George Jら、J.Immunol.160(8):3917〜3923(1998年))。これは、これらの試料が、プラスチックディッシュ表面に吸着された場合にはβ−GPIを認識するが、カルジオリピン表面に吸着された場合にはβ−GPIに結合しないのは何故か説明できるであろう。ドメイン5を介したカルジオリピンへのβ−GPIの結合は、プラスチックに結合した場合とは異なった方向性を与えている可能性がある。ドメイン5を介した結合は、ドメイン4の利用可能性もしくはドメイン4の配置のいずれか、またはこれらの両方を改変している可能性がある。しかしながら、プラスチックに吸着された場合のβ−GPI分子の方向性は、完全には理解されていない。ドメイン4が妨害されない、すなわち抗体にとって利用可能であり、かつこれらの抗体の結合を無くすほどにその立体配座を改変しない方向性で、十分な数の分子がプラスチックに吸着していると予想できる。
ドメイン4特異抗体を検出するELISAアッセイを用い、ドメイン4/5混合抗原を用い、臨床的に特性分析されている218の血清を用いて、臨床試験を行った。コホートには、健康対照個体(n=30)、心臓ステントを有する患者(無症候、n=28;症候性、n=23)、および急性発作の患者(虚血性発作および一過性脳虚血発作;脳内出血なし;n=137)が含まれていた。平均IgA抗体値は、健康対照者集団では14.1単位であり、これと比較して、ステントを有する患者では26.5単位、急性脳卒中の患者では29.5単位であった。(表5)。
Figure 2009544971
上述した実施例は、上記組成物の好ましい実施形態をどのように作製および使用するかに関する完全な開示および説明を当業者に与えるために提供するものであって、本発明者らが、本発明者らの発明と考えているものの範囲を限定するものではない。上述した様式の変更形態(当業者に明らかである、本発明を実行するための変更形態)は、以下の特許請求の範囲に包含されるものとする。本明細書で引用されているすべての出版物、特許、および特許出願を参照により本明細書に組み込む。

Claims (11)

  1. 患者の急性アテローム硬化症候群を診断する方法であって、前記患者でIgAドメイン4特異的抗ベータ2−グリコプロテインI(β−GPI)抗体の存在または不在を決定するステップを含み、前記IgA抗β−GPI抗体の存在によって、前記患者が急性アテローム硬化症候群であることが示される方法。
  2. 患者の急性アテローム硬化症候群を診断する方法であって、
    a.急性アテローム硬化症候群である疑いがある患者から試料を取得するステップと、
    b.前記試料を、ドメイン4エピトープを含むβ−GPI抗原と接触させるステップと、
    c.前記ドメイン4エピトープに結合するIgAドメイン4特異的抗β−GPI抗体の存在または不在を検出するステップと
    を含み、前記試料中の前記IgAドメイン4特異的抗β−GPI抗体の存在によって、前記患者が急性アテローム硬化症候群であることが示される方法。
  3. 患者の急性アテローム硬化症候群を診断する方法であって、
    a.急性アテローム硬化症候群である疑いがある患者由来の試料を、リンカー配列を含まない配列番号5のアミノ酸配列を含むβ−GPI抗原のドメイン4に由来するエピトープと、前記エピトープおよびIgAドメイン4特異的抗β−GPI抗体の複合体を形成するのに適した条件下で接触させるステップと、
    b.前記複合体内の前記IgAドメイン4特異的抗β−GPI抗体の存在または不在を検出し、前記患者における前記ドメイン4特異的IgA抗β−GPI抗体の存在によって、前記患者が急性アテローム硬化症候群であることが示されるステップと、
    を含む方法。
  4. 前記IgA抗β−GPI抗体が酵素結合免疫吸着アッセイで検出される、請求項2に記載の方法。
  5. 前記患者における抗カルジオリピン(aCL)抗体の存在または不在を決定するステップをさらに含み、前記患者における前記ドメイン4特異的IgA抗β−GPI抗体の存在、および抗カルジオリピン(aCL)抗体の不在によって、前記患者が急性アテローム硬化症候群であることが示される、請求項2に記載の方法。
  6. 前記IgAドメイン4特異的抗β−GPI抗体およびaCL抗体が独立した酵素結合免疫吸着アッセイで検出される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記ドメイン4エピトープが、配列番号4のドメイン3アミノ酸配列と、配列番号3のドメイン2アミノ酸配列、または配列番号4のドメイン3アミノ酸配列に隣接した配列番号3のドメイン2アミノ酸配列の部分とをさらに含む、請求項3に記載の方法。
  8. 前記ドメイン4エピトープが、配列番号6のドメイン5アミノ酸配列、または配列番号5のドメイン4アミノ酸配列に隣接した配列番号6のドメイン5アミノ酸配列の部分をさらに含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記IgAドメイン4特異的抗ベータ2−グリコプロテインI(β−GPI)抗体を、存在する場合には、配列番号5のアミノ酸配列を有するポリペプチドと反応させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  10. 前記IgAドメイン4特異的抗ベータ2−グリコプロテインI(β−GPI)抗体を、存在する場合には、配列番号5+配列番号6のアミノ酸配列を有するポリペプチドと反応させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記β−GPI抗原がドメイン1のいかなる部分も含まない、請求項2に記載の方法。
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