JP6315832B2 - 非特異的間質性肺炎の診断のためのバイオマーカー - Google Patents

非特異的間質性肺炎の診断のためのバイオマーカー Download PDF

Info

Publication number
JP6315832B2
JP6315832B2 JP2015506765A JP2015506765A JP6315832B2 JP 6315832 B2 JP6315832 B2 JP 6315832B2 JP 2015506765 A JP2015506765 A JP 2015506765A JP 2015506765 A JP2015506765 A JP 2015506765A JP 6315832 B2 JP6315832 B2 JP 6315832B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antibody
hla
nsip
antigen
ninj2
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015506765A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2014148429A1 (ja
Inventor
博 木田
博 木田
淳 熊ノ郷
淳 熊ノ郷
尚 荒瀬
尚 荒瀬
井上 義一
義一 井上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Osaka University NUC
Original Assignee
Osaka University NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Osaka University NUC filed Critical Osaka University NUC
Publication of JPWO2014148429A1 publication Critical patent/JPWO2014148429A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6315832B2 publication Critical patent/JP6315832B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N33/00Investigating or analysing materials by specific methods not covered by groups G01N1/00 - G01N31/00
    • G01N33/48Biological material, e.g. blood, urine; Haemocytometers
    • G01N33/50Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing
    • G01N33/68Chemical analysis of biological material, e.g. blood, urine; Testing involving biospecific ligand binding methods; Immunological testing involving proteins, peptides or amino acids
    • G01N33/6854Immunoglobulins
    • GPHYSICS
    • G01MEASURING; TESTING
    • G01NINVESTIGATING OR ANALYSING MATERIALS BY DETERMINING THEIR CHEMICAL OR PHYSICAL PROPERTIES
    • G01N2800/00Detection or diagnosis of diseases
    • G01N2800/12Pulmonary diseases

Description

本発明は、非特異的間質性肺炎の診断を簡便且つ高精度に行うことが可能なバイオマーカーに関する。
間質性肺炎は、肺の間質を中心に炎症を来す疾患の総称である。その原因は多彩であり、薬剤、喫煙等の原因が明らかなものや、膠原病随伴性に発症する場合がある他、原因が特定できないものも包含される。原因を特定し得ない間質性肺炎を特発性間質性肺炎(Ideopathic interstitial pneumonias:IIPs)と総称する。IIPsには、予後やステロイド剤に対する反応性の良否によって分類される特発性肺線維症(IPF)/通常型間質性肺炎(UIP)と非特異的間質性肺炎(NSIP)の2疾患が含まれる。一般に、特発性肺線維症(IPF)/通常型間質性肺炎(UIP)は予後不良群とされ、非特異的間質性肺炎(NSIP)は予後良好群とされている(例えば非特許文献1を参照)。
ここで、IPFとは「Idiopathic pulmonary fibrosis」の略称であり、UIPとは「Usual interstitial pneumonia」の略称である。IPFは臨床診断名として用いられ、UIPは病理組織診断名として用いられる名称である。また、NSIPとは「Non-specific interstitial pneumonia」の略称であり、臨床診断及び病理組織診断の両方において用いられる名称である。更に、病理組織診断において前記名称が用いられる場合には、通常「UIPパターン」及び「NSIPパターン」と表わされることがある。
特発性間質性肺炎においてIPF/UIPとNSIPを鑑別することは、患者の予後を予測する上で重要な指標である。一般にIPF/UIPは進行性の予後不良疾患とされており、悪化を防ぐため長期に亘る対症療法及び薬物療法とそれによる副作用とのバランスを見極めたうえで治療計画が立てられる。これに対してNSIPは治療反応性が良く、予後は一般的に良好とされているため、積極的な治療方針がとられる。従って、IPF/UIPとNSIPを鑑別することは、投薬スケジュールや治療方針を決定する上でも重要な要素となり得る。
従来、IPF/UIPとNSIPの鑑別は外科的肺生検標本の病理組織パターン分類により行われてきた。しかし、外科的肺生検は侵襲性が高く、致死的合併症を起こす可能性があるため、実際の臨床現場では採用されにくいのが現状である(例えば非特許文献2を参照)。非侵襲的な検査方法としては胸部CT画像検査等が挙げられるが、IPF/UIPとNSIPを鑑別することは典型例を除いては不可能とされている(例えば非特許文献3を参照)。
低侵襲性であり且つ比較的簡便に疾患の罹患の有無、症状の程度を測る手段としては、患者の血液、尿等の体液試料中の特定の抗体、酵素、タンパク質等をバイオマーカーとして利用する方法が挙げられる。間質性肺炎においては、シアル化糖鎖抗原KL−6(Sialylated carbohydrate antigen KL−6)がバイオマーカーとして知られている。KL−6は間質性肺炎を発症した患者において特異性が高く、間質性肺炎の活動性とも相関するため、臨床的意義の高いマーカーとして用いられている。しかし、KL−6は間質性肺炎全般に対するマーカーであるため、当該マーカーによってIPF/UIPとNSIPを鑑別することはできない。
以上のような背景から、簡便且つ高精度にIPF/UIPとNSIPを鑑別することが可能なバイオマーカーが求められていた。
American Thoracic Society/European Respiratory Society international multidisciplinary consensus classification of the idiopathic interstitial pneumonias. Am J Respir Crit Care Med 2002; 165:277-304. Tiitto L, et al. Thoracoscopic lung biopsy is a safe procedure in diagnosing usual interstitial pneumonia. Chest 2005; 128:2375-2380. Raghu G, et al. An official ATS/ERS/JRS/ALAT statement: idiopathic pulmonary fibrosis: evidence-based guidelines for diagnosis and management. Am J Respir Crit Care Med 2011; 183:788-824. Travis WD, et al. Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia Report of an Ameican Thoracic Society Project. Am J Respir Crit Care Med 2008; 177:1338-1347.
本発明は、非特異性間質性肺炎の診断を簡便且つ高精度に行うことを可能とするバイオマーカーを提供することを目的とする。更に、本発明は、当該バイオマーカーを用いて、簡便且つ高精度に、非特異性間質性肺炎を診断するための検査方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行い、NISP患者においては抗核抗体の値が高い等の自己免疫疾患の性質が強いことに基づいて、自己抗体の中にIPF/UIPとNSIPの2群の鑑別に利用可能なバイオマーカーとなり得る抗体が存在するかどうかを網羅的に検索した。その結果、NSIP患者において特定の自己抗体の抗体価が上昇していることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて更に検討を重ねた結果完成されたものである。即ち、本発明は下記に掲げる態様のバイオマーカー、検査方法、検査用試薬、診断キット等を提供する。
項1. 抗Mx1抗体、抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体からなる群より選択される少なくとも1種の抗体からなる、非特異性間質性肺炎(NSIP)のバイオマーカー。
項2. 前記抗体が、抗Mx1抗体及び抗NINJ2抗体からなる群より選択される少なくとも1種である、項1に記載のバイオマーカー。
項3. 前記抗体が、抗Mx1抗体及び抗NINJ2抗体の組み合わせである、項1又は2に記載のバイオマーカー。
項4. 被検動物から採取された血液試料中の、抗Mx1抗体、抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体からなる群より選択される少なくとも1種の抗体を検出する工程、
を含む非特異性間質性肺炎(NSIP)の検査方法。
項5. 前記抗体が、抗Mx1抗体及び抗NINJ2抗体からなる群より選択される少なくとも1種である、項4に記載の検査方法。
項6. 前記抗体が、抗Mx1抗体及び抗NINJ2抗体の組み合わせである、項4又は5に記載の検査方法。
項7. 前記血液試料が血清である、項4〜6のいずれかに記載の検査方法。
項8. 前記抗体の検出が、Mx1、NINJ2、DCX、C10orf49、ZMAT4、CDC42SE1及びGPT2からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はその部分ペプチドからなる抗原を用いて行われる、項4〜7のいずれかに記載の検査方法。
項9. 前記検出工程がELISA法により行われる、項4〜8のいずれかに記載の検査方法。
項10. 前記抗原が、MHCクラスII分子により提示された抗原である、項4〜9のいずれかに記載の検査方法。
項11. 被検動物から採取された血液試料中の、抗Mx1抗体、抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体からなる群より選択される少なくとも1種の抗体を検出する工程、及び
前記工程で得られた検出結果に基づいてNSIPを診断するする工程、
を含む非特異性間質性肺炎(NSIP)の診断方法。
項12. Mx1、NINJ2、DCX、C10orf49、ZMAT4、CDC42SE1及びGPT2からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はこれらの部分ペプチドからなる抗原を含む、非特異性間質性肺炎(NSIP)の検査用試薬。
項13. 項12に記載の検査用試薬を含む、非特異性間質性肺炎(NSIP)の診断キット。
項14. Mx1、NINJ2、DCX、C10orf49、ZMAT4、CDC42SE1及びGPT2からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はその部分ペプチドからなる抗原の、非特異性間質性肺炎(NSIP)の検査用試薬の製造のための使用。
本発明のバイオマーカーによれば、これまで外科的肺生検のような侵襲性の高い方法でしか診断ができなかったNSIPを、より簡便且つ侵襲性の低い手法により、高精度に診断することができる。また、本発明によれば、前記バイオマーカーの検出を簡便に行うことができる検査用試薬、及び当該検査用試薬を含む診断キットが提供される。
本発明のバイオマーカーはNSIP患者の血液試料中に高い濃度で検出される一方、UIP/IPF患者においては正常対照群と有意な差がない。従って、本発明のバイオマーカーを検出することによって、UIP/IPFとNSIPの鑑別を高精度に行うことができる。UIP/IPFとNSIPでは予後に大きな差があり、一般的にNSIP患者は治療薬に対する反応が良く、予後が良好でとされている。そのため、患者がNSIPに罹患していると判断された場合に適切な治療薬を選択し、投薬スケジュールを計画することができる。
従来、NSIPの診断には外科的肺生検を要するため、NSIPを対象とした大規模臨床試験は困難であった。しかし、本発明のNSIPの検査方法によれば、低侵襲的且つ容易に採取可能な血液試料を用いてNSIPの臨床診断が可能である。従って、NSIPを対象とした大規模臨床試験が可能となり、当該分野における治療の進歩に大きく貢献すると予想される。
タンパク質アレイ法により測定した全自己抗体価の分布を疾患ごとに表すグラフである。 タンパク質アレイ法により測定した抗Mx1抗体価を疾患ごとに示すグラフである。 タンパク質アレイ法により測定した抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体の抗体価を、疾患ごとに示すグラフである。 タンパク質アレイ法により測定した抗Mx1抗体価と抗NINJ2抗体価をNSIPの患者毎に識別したグラフである。 正常肺組織及び間質性肺炎組織標本を、抗Mx1抗体を用いた免疫組織化学に供した結果を示す写真である。 ELISA法において、固相化に使用したMx1タンパク質の濃度とシグナル強度の関係を示すグラフである。 Aは、Mx1−HLA−DR複合体を提示させた細胞を用いた自己抗体(抗Mx1抗体)測定の原理を模式的に示した図である。Bは、Mx1−HLA−DR複合体を提示させた細胞を用いて自己抗体(抗Mx1抗体)を測定した結果を示すグラフである。
1.バイオマーカー
本発明の非特異性間質性肺炎(NSIP)のバイオマーカーは、抗Mx1抗体、抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体からなる群より選択される少なくとも1種の抗体からなることを特徴とする。以下、本発明のバイオマーカーについて詳述する。
ここで、用語「非特異性間質性肺炎(NSIP)」は、狭義には臨床診断名として用いられ、病理組織診断名として用いられる場合には「NSIPパターン」と表わされる。一方、単に「NSIP」と表記し、臨床診断名と病理組織診断名の双方の意味において区別されることなく使用される場合もある。本明細書において「NSIP」と表記する場合、特段の規定がない限り、臨床診断名と病理組織診断名の両方を意図するものとする。
本発明のバイオマーカーは、下記(a)〜(g)に示す抗体の少なくとも1種を特異的に認識する抗体からなる。
(a)抗Mx1抗体
抗Mx1抗体は、Mx1を特異的に認識する抗体である。Mx1(myxovirus (influenza virus) resistance 1)は、タイプ1−インターフェロンにより誘導される一群の抗ウイルスタンパク質に属し、広範囲のウイルス(インフルエンザ、麻疹、コクサッキー、HBV、トゴト等)に対して抗ウイルス活性を示す。Mx1の具体的なアミノ酸配列及び塩基配列については、アクセッション番号NM_002462.2によりNCBIデータベースに登録されている。
(b)抗NINJ2抗体
抗NINJ2抗体は、NINJ2を特異的に認識する抗体である。NINJ2(ninjurin 2)は接着分子の1種であり、末梢神経損傷後の末端側神経におけるシュワン細胞で発現が増強され、神経突起伸長を促進する可能性があるとされている。NINJ2の具体的なアミノ酸配列及び塩基配列については、アクセッション番号NM_016533.4によりNCBIデータベースに登録されている。
(c)抗DCX抗体
抗DCX抗体は、DCXを特異的に認識する抗体である。DCX(Neuronal migration protein doublecortin)は、細胞質タンパク質である。発生過程において神経細胞は、皮質から最終的に分化する部位に達するため長距離の移動をしなければならない。DCXタンパク質は、微小管の組織化と安定を調節することによって神経細胞の移動を指示すると考えられている。DCXの具体的なアミノ酸配列及び塩基配列については、アクセッション番号NM_178152.1によりNCBIデータベースに登録されている。
(d)抗C10orf49抗体
抗C10orf49抗体は、C10orf49を特異的に認識する抗体である。C10orf49(chromosome 10 open reading frame 49)は、胎児軟骨の末梢領域及び軟骨界面における骨軟骨形成前駆細胞の骨形成分化を、ネガティブに制御する可能性が示唆されている。C10orf49の具体的なアミノ酸配列及び塩基配列については、アクセッション番号NM_145314.1によりNCBIデータベースに登録されている。
(e)抗ZMAT4抗体
抗ZMAT4抗体は、ZMAT4を特異的に認識する抗体である。ZMAT4(Zinc finger matrin−type protein 4)のタンパク質としての機能は未知である。ZMAT4の具体的なアミノ酸配列及び塩基配列については、アクセッション番号BC019598.1によりNCBIデータベースに登録されている。
(f)抗CDC42SE1抗体
抗CDC42SE1抗体は、CDC42SE1を特異的に認識する抗体である。CDC42SE1(CDC42 small effector 1)はTリンパ球において重合糸状アクチンの集積に関与するタンパク質である。CDC42SE1の具体的なアミノ酸配列及び塩基配列については、アクセッション番号NM_020239.2によりNCBIデータベースに登録されている。
(g)抗GPT2抗体
抗GPT2抗体は、GPT2を特異的に認識する抗体である。GPT2(gluramic pyruvate transaminase(alanine aminotransferase)2)は、アラニンと2−オキソグルタル酸からピルビン酸とグルタミン酸を産生するアミノ基転移反応を触媒する酵素である。GPT2の具体的なアミノ酸配列及び塩基配列については、アクセッション番号NM_133443.1によりNCBIデータベースに登録されている。
本発明においては、上記(a)〜(g)の抗体のいずれをバイオマーカーとしてもよいが、NSIP患者の血液試料中における抗体価が高く、IPF/UIP患者の血液試料中の抗体量との差がより顕著であることから、抗Mx1抗体と抗NINJ2抗体は、本発明のバイオマーカーの好適な例として挙げられる。また、上記(a)〜(g)から選択されるいずれか1種の抗体をバイオマーカーとしてもよく、2種以上の抗体の組合せを用いてもよい。とりわけ、非特異性間質性肺炎(NSIP)の患者において、抗Mx1抗体陽性を示す場合と抗NINJ2抗体陽性を示す場合に重なりが少ないことが、後述する実施例において確認されており、NSIPの検査の精度をより一層高めるという観点から、抗Mx1抗体と抗NINJ2抗体の双方を組み合わせて、バイオマーカーとして使用することが好ましい。
本発明において抗体のクラスは、検出可能である限り特に限定されず、IgG(IgG1、IgG2、IgG3、IgG4等を含む)、IgD、IgE、IgA、sIgA、IgM等のいずれであってもよい。本発明において好ましい抗体のクラスとしては、IgGが例示される。また、前記抗原に対して特異的に結合する限り、抗体の結合性断片(例えば、F(ab')2、Fab'、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb)等についても本発明のバイオマーカーとして使用することができる。
2.非特異性間質性肺炎(NSIP)の検査方法
本発明は、NSIPの検査方法を提供する。本発明の検査方法は、被験動物から採取された血液試料中の、抗Mx1抗体、抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体からなる群より選択される少なくとも1種の抗体を検出する工程を含むことを特徴とする。
[検出対象]
本発明の検査方法では、前記バイオマーカー(即ち、前記抗体)が検出対象である。
[血液試料]
本発明において血液試料の由来は特に限定されず、任意の動物とすることができる。より具体的には、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類やウサギ等の実験動物;ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の家畜;イヌ、ネコ等のペット;ヒト、サル、オランウータン、チンパンジー等の霊長類が挙げられる。本発明において血液試料の由来として、好ましくは霊長類、更に好ましくはヒトである。
本発明において血液試料の種類は前記バイオマーカーを検出し得る限り特に限定されないが、例えば全血、血清、血漿等が挙げられる。簡便に調製することができ、より正確に前記バイオマーカーを検出するという観点から血清が好適な例として挙げられる。
各種血液試料の採取及び調製は公知の手法に従って行うことができる。例えば、血清であれば、採取された血液(全血)から血球と、フィブリノーゲン(I因子)、プロトロンビン(II因子)、V因子、VIII因子等の血液凝固因子を除去して調製することができ、血液を静置した後に得られる上清、あるいは血液を遠心分離に供して得られる上清として得ることができる。血液試料は、必要に応じて、適切な濃度に希釈して使用される。
[抗原]
本発明の検査方法において前記各抗体の検出は、Mx1、NINJ2、DCX、C10orf49、ZMAT4、CDC42SE1及びGPT2からなる群より選択される少なくとも1種又はその部分ペプチドを抗原として使用し、血液試料中の前記バイオマーカー(抗体)を検出することにより行われる。
本発明の検査方法において血液試料中の前記バイオマーカーを検出するために使用される抗原は、被検動物から採取された血液試料中に存在する前記バイオマーカー(抗体)によって特異的に認識され得る限り特に限定されないが、被験動物と同じ種に属する動物に由来する抗原が好ましい。例えば、被験動物がヒトである場合には、前記バイオマーカーの検出に使用する抗原はヒト由来であることが好ましい。
また、血液試料中の前記バイオマーカーを検出するために使用される抗原は、全長タンパク質であってもよく、抗体に特異的に認識され得る限りその部分ペプチドであってもよい。本発明において、抗原として使用される部分ペプチドとしては、被験動物に由来する抗体によって認識され得る抗原決定基を含むものであればその長さは特に限定されず、前記バイオマーカーとして検出される抗体の種類によって適宜設定され得る。一般に、抗原決定基を構成するアミノ酸残基数が5〜20個程度とされていることから、部分ペプチドとしては、例えば5個以上のアミノ酸残基により構成されるものが挙げられる。
前記抗原は、公知の手法によって得ることができる。例えば、前記抗原は、前記被検動物として例示されるヒト等の動物から採取することができる。採取は、組織や培養細胞からタンパク質又はペプチドを単離、精製する従来公知の方法に従って行うことができ、例えば、前記抗原を発現している組織又は細胞をホモジナイザーによって破砕した後、細胞可溶化物中の抗原をクロマトグラフィーによって単離精製する方法が挙げられる。
また、前記抗原は、前記抗原をコードする核酸を含む発現ベクターを導入した形質転換体を培養し、培養物から前記抗原を単離、精製することもできる。或いは、前記抗原のアミノ酸配列に基づいて、従来公知のペプチド合成法によりポリペプチドとして調製することもできる。ペプチド合成法としては、例えば、固相合成、液相合成が挙げられ、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
更に、抗原として使用される部分ペプチドについては、上記方法により製造される各ポリペプチドを、各抗原の種類に応じたペプチダーゼにより切断して調製してもよい。
前記抗原は、リン酸、糖又は糖鎖、リン脂質、脂質、ヌクレオチド等によって修飾されていてもよい。また、前記抗原は、精製処理等を容易に行うために、公知のタグが連結されるものであってもよい。このようなタグとしては、例えば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、FLAGタグ、Hisタグ等挙げられる。
本発明において、前記抗原は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)クラスII分子と複合体を形成させて提示させた状態で使用してもよい。前記抗原をMHCクラスII分子に提示させた状態にすることによって、より一層優れた精度で前記バイオバーカーの検出可能になる。本明細書において、前記抗原を提示させたMHCクラスII分子を「抗原/MHCクラスII」と表記することもある。以下、抗原/MHCクラスIIについて説明する。
(抗原/MHCクラスII)
前記MHCクラスII分子の由来は、特に制限されず、例えば、ヒト、マウス、ラット、イヌ、サル、ウサギ、ヒツジ、ウマ等が挙げられる。前記MHCクラスII分子の由来は、検査対象となる被検動物の由来と同じでもよいし、異なっていてもよい。
前記MHCクラスII分子は、α鎖及びβ鎖の複合体であり、それぞれの種類は特に制限されず、これらをコードする遺伝子のハロタイプについても特に制限されない。
前記MHCクラスII分子がヒト由来である場合、前記MHCクラスII分子のα鎖として、例えば、HLA−DPA遺伝子座、HLA−DQA遺伝子座又はHLA−DRA遺伝子座にコードされているMHCクラスII分子のα鎖が挙げられ、また前記MHCクラスII分子のβ鎖として、例えば、HLA−DPB遺伝子座、HLA−DQB遺伝子座又はHLA−DRB遺伝子座にコードされているMHCクラスII分子のβ鎖が挙げられる。前記各遺伝子座におけるMHCクラスα鎖及びβ鎖のハプロタイプは、特に制限されない。前記MHCクラスII分子として、好ましくはα鎖及びβ鎖の両方を含む分子が挙げられる。
前記MHCクラスII分子としては、前記抗原と複合体を形成して提示できることを限度として特に制限されないが、具体的には、HLA−DR、HLA−DP、HLA−DQ等が挙げられる。
前記HLA−DRとしては、例えば、HLA−DR1、HLA−DR2、HLA−DR3、HLA−DR4、HLA−DR5、HLA−DR6、HLA−DR7、HLA−DR8、HLA−DR9、HLA−DR10、HLA−DR11、HLA−DR12、HLA−DR13、HLA−DR14、HLA−DR15、HLA−DR52、HLA−DR53等が挙げられる。また、前記HLA−DRとしては、例えば、α鎖としてHLA−DRA1と、β鎖としてHLA−DRB1、HLA−DRB3、HLA−DRB4又はHLA−DRB5等のHLA−DRBとを含む分子が挙げられる。前記HLA−DRとして、より具体的には、α鎖として、HLA−DRA1*01等のアリル、β鎖として、例えば、HLA−DRB1*01、HLA−DRB1*03、HLA−DRB1*04、HLA−DRB1*07、HLA−DRB1*08、HLA−DRB1*09、HLA−DRB1*10、HLA−DRB1*11、HLA−DRB1*12、HLA−DRB1*13、HLA−DRB1*14、HLA−DRB1*15、HLA−DRB1*16、HLA−DRB3*01、HLA−DRB4*01、HLA−DRB5*01等のアリルが挙げられる。
前記HLA−DQとしては、例えば、HLA−DQ1、HLA−DQ2、HLA−DQ3、HLA−DQ4、HLA−DQ5、HLA−DQ6、HLA−DQ7、HLA−DQ8等が挙げられる。前記HLA−DQとしては、例えば、α鎖としてHLA−DQA1等のHLA−DQAと、β鎖としてHLA−DQB1等のHLA−DQBとを含む分子が挙げられる。具体的には、α鎖として、例えば、HLA−DQA1*01、HLA−DQA1*02、HLA−DQA1*03、HLA−DQA1*04、HLA−DQA1*05、HLA−DQA1*06等のアリル、β鎖として、例えば、HLA−DQB1*02、HLA−DQB1*03、HLA−DQB1*04、HLA−DQB1*05、HLA−DQB1*06等のアリルが挙げられる。
前記HLA−DPとしては、例えば、HLA−DP1、HLA−DP2、HLA−DP3、HLA−DP4、HLA−DP5等が挙げられる。前記HLA−DPとしては、例えば、α鎖としてHLA−DPA1等のHLA−DPAと、β鎖としてHLA−DPB1等のHLA−DPBとを含む分子が挙げられる。具体的には、α鎖として、例えば、HLA−DPA1*01、HLA−DPA1*02、HLA−DPA1*03、HLA−DPA1*04等のアリル、β鎖として、例えば、HLA−DPB1*02、HLA−DPB1*04、HLA−DPB1*05、HLA−DPB1*09等のアリルが挙げられる。
前記MHCクラスII分子は、自己免疫疾患感受性MHCクラスII分子であってもよい。前記自己免疫疾患感受性MHCクラスII分子とは、他のMHCクラスα鎖及びβ鎖のハプロタイプ(アリル)に対して、自己免疫疾患を発症する確率が相対的に高いMHCクラスα鎖及びβ鎖の少なくとも一方を含むMHCクラスII分子である。
前記MHCクラスII分子は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
前記MHCクラスII分子の種類は、提示させるべき抗原の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、Mx1を提示させるのに適したMHCクラスII分子として、好ましくはHLA−DR;更に好ましくはα鎖がHLA−DRA1*01であり、且つβ鎖がHLA−DRB1*01、HLA−DRB1*03、HLA−DRB1*04、HLA−DRB1*07、HLA−DRB1*08、HLA−DRB1*09、HLA−DRB1*10、HLA−DRB1*11、HLA−DRB1*12、HLA−DRB1*13、HLA−DRB1*14、HLA−DRB1*15、HLA−DRB1*16、HLA−DRB3*01、HLA−DRB4*01、及びHLA−DRB5*01の中の少なくとも1種であるHLA−DR;より好ましくα鎖がHLA−DRA1*01であり、且つβ鎖がHLA−DRB1*04、HLA−DRB1*03、HLA−DRB1*01、HLA−DRB1*04、HLA−DRB1*10、HLA−DRB1*14の中の少なくとも1種であるHLA−DR;更に好ましくはα鎖がHLA−DRA1*01であり、且つβ鎖がHLA−DRB1*03であるHLA−DR;特に好ましくはα鎖HLA−DRA*01:01であり、且つβ鎖がHLA−DRB1*03:04であるHLA−DRが挙げられる。
前記抗原を提示させたMHCクラスII分子は、MHCクラスII分子を発現する細胞に前記抗原又はその部分ペプチドをコードする遺伝子を導入することによって得られる。
MHCクラスII分子を発現する細胞は、前記MHCクラスII分子のコード遺伝子を、内在性遺伝子として有する細胞(以下、MHCクラスII分子内在性細胞)でもよく、また外来性遺伝子として有する細胞(以下、MHCクラスII分子非内在性細胞)でもよい。MHCクラスII分子内在性細胞を使用する場合は、例えば、前記MHCクラスII分子のコード遺伝子を、内在性遺伝子として有する宿主細胞に、前記抗原のコード遺伝子を導入すればよい。また、MHCクラスII分子非内在性細胞を使用する場合は、宿主細胞に、例えば、前記抗原のコード遺伝子と前記MHCクラスII分子のコード遺伝子とを共導入すればよい。また、遺伝子を細胞に導入する方法は、公知の形質転換法によって行うことができる。
前記MHCクラスII分子内在性細胞としては、前記免疫系細胞が挙げられる。
前記MHCクラスII分子非内在性細胞としては、特に制限されないが、例えば、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等があげられる。動物細胞として、具体的には、HeLa細胞、293細胞、293T細胞、NIH3T3細胞、COS細胞、CHO細胞等の各種培養細胞、ES細胞、造血幹細胞等の幹細胞、T細胞、B細胞、樹状細胞、マクロファージ、グリア細胞等の免疫系細胞、初代培養細胞等の生体から単離した細胞等が挙げられる。
MHCクラスII分子を発現する細胞に前記抗原をコードする遺伝子を導入することによって、当該細胞表面に抗原/MHCクラスIIを提示する細胞が得られる。本発明では、抗原/MHCクラスIIを提示する細胞をそのまま前記バイオマーカーの検出に使用してもよく、また抗原/MHCクラスIIを提示する細胞から抗原/MHCクラスIIを離して、これをバイオマーカーの測定に使用してもよい。
[バイオマーカーの検出]
本発明の検査方法は、被験動物から採取された血液試料中の前記バイオマーカーの存在の有無を検出することにより行われる。また、本発明の検査方法においては、前記バイオマーカーの検出を、血液試料中の前記バイオマーカーの量を測定することにより行ってもよい。前記バイオマーカーの量を測定することによって、正常対照群やIPF/UIPに罹患した被験者における前記バイオマーカーと量的な比較ができ、より精度の高い検査が可能となることから、本発明の検査方法は、好ましくは、血液試料中の前記バイオマーカーの量を測定することによって行われる。
前記抗原を使用して血液試料中に存在する前記バイオマーカーを検出する方法としては、具体的には、前記抗原と血液試料を接触させて、前記抗原と前記バイオマーカー(抗体)との特異的結合を直接的又は間接的に検出する方法が挙げられる。このような検出方法としては、具体的には、ELISA法、ウェスタンブロット法、免疫沈降法、ラジオイムノアッセイ(RIA)法、蛍光イムノアッセイ法等のイムノアッセイが例示される。これらのイムノアッセイにより前記バイオマーカーを検出する場合には、前記バイオマーカー(抗体)に特異的に結合する抗体に酵素標識、発色標識、放射標識又は発光標識などの標識を結合し、この標識を検出又は測定することにより行うことができる。
本発明においては、いずれの検出方法を採用しても簡便且つ高精度にNSIPの臨床診断又は病理組織診断を行うことができるが、例えばELISA法が好ましい検出方法として挙げられる。
前記イムノアッセイを実施する際の条件については、血液試料中の前記バイオマーカーと前記抗原との特異的結合を検出し得る限り特に限定されず、従来公知の条件に基づいて設定される。例えば、ELISA法により本発明のバイオマーカーを検出する場合、前記抗原又が固定されたマルチウェルプレートの各ウェルに被検動物から採取した血液試料を添加し、ウェル中の抗原と血液試料中のバイオマーカー(抗体)とを反応させる。そして、被験動物由来の抗体に特異的に結合する標識化抗体を各ウェル添加して反応させた後、酵素基質を添加して得られる反応生成物を検出及び/又は定量することによって、血液試料中の前記バイオマーカーの検出及び/又は定量を行うことができる。
ここで、被験動物由来の抗体に特異的に結合する標識化抗体としては、血液試料を採取する被検動物種に基づいて適宜選択され得るが、例えば、被検動物がヒトである場合には、ヒト抗体を特異的に結合する非ヒト標識化抗体(例えば、ウサギ由来抗ヒトIgG抗体)等が挙げられる。
また、被験動物由来の抗体に特異的に結合する標識化抗体の標識に使用される酵素についても、通常使用されるものから適宜選択して用いることができ、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、ルシフェラーゼ、エステラーゼ、グルコースオキシダーゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、β−D−グルクロニダーゼ等が挙げられる。また、酵素基質としては、酵素の種類に応じて公知の基質から適宜選択され得るが、例えば、酵素がペルオキシダーゼの場合であれば、3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMB)を基質として使用することができる。
酵素と基質の反応により生じた反応生成物の検出及び/又は定量は、反応生成物の吸光度を測定することによって行うことができ、例えば3,3',5,5'−テトラメチルベンジジン(TMB)を酵素基質として用いた場合には、450nmにおける吸光度を測定することによって実施され得る。
ラジオイムノアッセイ(RIA)であれば、前記抗原を放射性同位元素で標識し、血液試料中の前記バイオマーカーと反応させ免疫複合体を形成させ、放射性同位元素から放出される放射能に基づいて検出することができる。
蛍光イムノアッセイであれば、前記抗原をプレート等に固相化し、そこに血液試料を加えて反応させた後、被験動物の血液試料中に存在する抗体に特異的に結合する抗体を更に反応させて、蛍光発色を検出することにより行うことができる。被験動物由来の抗体に特異的に結合する抗体としては、前記ELISA法において記載される通りであり、蛍光色素により標識化されたものを用いる。蛍光色素としては、FITC、PE、APC、Cy−3、Cy−5等が例示される。
免疫沈降法であれば、前記抗原と血液試料を反応させて免疫複合体を形成させ、プロテインA、プロテインG等の活性吸着剤を用いて、不溶化物として沈降させることによって検出することができる。更に、免疫沈降法とウェスタンブロット法を組合せて検出することもできる。より具体的には、FLAG等のタグが連結された前記抗原と血液試料を反応させ、試料中に前記バイオマーカーが存在すれば免疫複合体が形成されるため、前述の活性吸着剤によって沈降させる。そして、得られた沈降物をウェスタンブロット法に供する。即ち、沈降物をSDS−PAGEによって分離展開し、ニトロセルロース膜、PVDF膜等に転写した後、タグに対する抗体と転写膜上で抗原抗体反応を行うことにより血液試料中に前記バイオマーカーが存在していた場合にはバンドとして検出することができる。
また、前記抗原/MHCクラスIIを提示する細胞を前記バイオマーカーの検出に使用する場合、当該細胞に血液試料を接触させればよい。当該細胞と血液試料の添加割合については、特に制限されないが、例えば、1000〜2000万個(例えば、約500万個)の細胞に対して、血液試料0.01〜1mlが挙げられる。また、前記抗原/MHCクラスIIを提示する細胞を使用する場合、当該細胞と血液試料を接触させてから、一定期間インキュベートすることが好ましい。インキュベートの条件は、特に制限されないが、温度は、例えば、0〜37℃、好ましくは0〜10℃、より好ましくは0〜5℃であり、pHは、例えば、pH6〜9、好ましくはpH7〜8、より好ましくはpH7.2〜7.6であり、時間は、例えば、3〜120分、好ましくは10〜90分、より好ましくは30〜60分である。血液試料にバイオマーカーが存在していれば、前記細胞が提示する抗原/MHCクラスIIの抗原に対して前記バイオマーカーが特異的に結合するので、当該特異的な結合を前述する手法に従って直接的又は間接的に測定すればよい。
[NSIPの罹患可能性の判定]
本発明の検査方法によって、被験動物から採取された血液試料中に前記バイオマーカーが検出された場合、被検動物がNSIPに罹患していると判断することができる。本発明の検査方法において、「NSIP」と表記する場合、特段の規定がない限り、臨床診断名と病理組織診断名の両方を意図する。即ち、被検動物から採取された血液試料中にバイオマーカーが検出された場合には、被験動物がNSIPに罹患している、又はNSIPパターンの組織病変を有していることを意味する。
また、従来使用されている間質性肺炎マーカーKL−6によって間質性肺炎に罹患していることが判明している被検動物(好ましくはヒト)において、本発明のバイオマーカーが検出された場合、当該被検動物は特発性間質性肺炎のNSIPに罹患していると判断することができる。
また、NSIPに罹患した動物(好ましくはヒト)では、血液試料中の本発明のバイオマーカーの量が正常対照群に比較して顕著に上昇している。従って、本発明のバイオマーカーを定量的に検出する場合には、正常対照群の血液試料中のバイオマーカーの量と被検動物の血液試料中のバイオマーカー量を比較することによって、NSIPの診断を行うことができる。更に、本発明のバイオマーカーの量は、NSIP患者の血液試料中において上昇するが、IPF/UIP患者においては正常対照群と有意な差はないことから、本発明のバイオマーカーをIPF/UIPとNSIPの鑑別に利用することもできる。
本発明において、血液試料中に含まれるバイオマーカー量が正常対照群(或いは鑑別対象疾患であるIPF/UIP群)に比較して多いとは、具体的には被験動物のバイオマーカー量が正常対照群(或いは鑑別対象疾患であるIPF/UIP群)の95パーセンタイル値をカットオフ値と設定し、当該カットオフ値以上である場合が挙げられる。当該カットオフ値以上であれば被験動物がNSIPに罹患している可能性が高い、又はNSIPの組織病変を生じている可能性が高いと判断することができる。また、カットオフ値未満であれば、被験動物がNSIPに罹患している可能性が低い、又はNSIPの組織病変を生じている可能性が低いと判断してもよい。また、血液試料中の本発明のバイオマーカーの量が多いほど、NSIPの症状が重篤であると予測され得る。
本発明のバイオマーカーが検出された場合には、特発性間質性肺炎の中でも一般に予後が良好であるとされているNSIPであると診断されることから、本発明の検査方法によって被検動物の予後を予測することができる。また、NSIPは治療反応性が良好であることに基づいて、NSIPの治療及び/又は症状の進行を抑制するための適切な投薬スケジュールや治療計画を立てることができる。
3.NSIPの検査用試薬
本発明は、Mx1、NINJ2、DCX、C10orf49、ZMAT4、CDC42SE1及びGPT2からなる群より選択される少なくとも1種又はその部分ペプチドからなる抗原を含む、非特異性間質性肺炎(NSIP)の検査用試薬を提供する。
本発明の検査用試薬に用いられる前記抗原については、前述の通りである。
本発明の検査用試薬において、抗原は、不溶化担体上に固定化され提供されてもよい。不溶化担体の素材としては、バイオマーカーの検出を妨げない限り特に限定されず、例えばポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリビニルクロライド、フッ素樹脂、架橋デキストラン、紙、シリコン、ガラス、金属、アガロース等を例示することができる。また、これらの材料を2種以上組合せて用いてもよい。不溶化担体の形状としては、例えばマイクロプレート、トレイ状、球状、繊維状、棒状、盤状、容器状、セル、試験管等のいずれの形状であってもよい。また、発明の検査用試薬において、抗原は、前述するように、抗原/MHCクラスIIとして提供されてもよく、更には抗原/MHCクラスIIを発現する細胞の状態で提供されてのよい。
不溶化担体上への前記抗原の固定化は、従来公知の方法に従って行うことができる。
不溶化担体上に固定化される抗原の量は、各抗原に対する抗体と特異的に結合するために十分な量であれば特に限定されないが、例えば、不溶化担体に固定化する際に使用される溶液中の抗原の濃度が、2〜10μg/mL、好ましくは2〜8μg/mL、より好ましくは2〜6μg/mLが挙げられる。
本発明の検査用試薬によって検出される前記バイオマーカーが複数の抗原決定基を認識し得る抗体である場合、各抗原に存在する複数の抗原決定基をそれぞれ特異的に認識する抗体(前記バイオマーカー)を網羅的に検出することによって検出感度を向上させ得るという観点から、各抗原は全長タンパク質であることが好ましい。
また、本発明の検査用試薬は、前記抗原の他に、緩衝液、安定化剤、防腐剤等を含んでいてもよく、また、従来公知の方法に従って製剤化されていてもよい。
4.NSIPの診断キット
本発明は、前記非特異性間質性肺炎(NSIP)の検査用試薬を含む、非特異性間質性肺炎(NSIP)の診断キットを提供する。
本発明の診断キットには、前記試薬の他に、抗体の検出を実施するために必要とされ得る、被験動物由来の抗体に特異的に結合する標識化抗体(例えば、被験動物がヒトであれば、ヒト抗体を特異的に結合する非ヒト標識化抗体)、標識物質の検出剤、溶解剤、洗浄剤、反応停止液、コントロール試料、検査プロトコル等を含んでいてもよい。
5.NSIPの診断方法
本発明は、NSIPの診断方法を提供する。当該診断方法は、被検動物から採取された血液試料における、抗Mx1抗体、抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体からなる群より選択される少なくとも1種の抗体を検出する工程、ならびに前記工程で得られた結果に基づいてNSIPを診断するする工程、を含むことを特徴とする。
本発明の診断方法において、抗体の測定方法、被検動物がNSIPに罹患していると判定する基準等については、上述の通りである。
以下、試験例を挙げて、本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
患者背景
血清は独立行政法人国立病院機構近畿中央胸部疾患センターに通院中の患者より文書による同意を得て採取した。IPF 10例、NSIP 8例、対象疾患として自己免疫性肺胞タンパク質症(PAP)10例、サルコイドーシス(SAR)10例及び健常人(コントロール(control)と表記する場合がある)10例より採血後、2,500rpm、10分間遠心、上清を回収し、実験に使用するまで−80℃にて保存した(表1)。本試験は厚生労働省の臨床研究に関する倫理指針に則り、大阪大学医学部附属病院及び国立病院機構近畿中央胸部疾患センターの臨床研究倫理審査委員会の承認を経て施行した。
NSIP特異的自己抗体の絞り込み
各患者から採取した血清を下記に示すタンパク質アレイ法に供し、NSIP患者において特異的に抗体価が上昇している自己抗体の検索を行った。
タンパク質アレイ法
ProtoArray(登録商標) Human Protein Microarray v5.0(Invitrogen)を購入し、取り扱い説明書に従って使用した。同アレイには昆虫細胞(Sf9)にて作成した約8,000種のグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)融合全長タンパク質が、それぞれ2点ずつスポットされている。アレイをquadriPERM培養皿(Greiner Bio One)に入れ、ブロッキング緩衝液と4℃で60分間反応させた後、1:500希釈した血清と4℃で90分間、水平振盪機上(50rpm)で反応させた。洗浄後、Alexa Fluor 647 goat anti−human IgG(Invitrogen)を1:2,000希釈し、4℃で90分間反応させた。洗浄後、遠心して乾燥させたアレイ上の各スポットの蛍光強度median値(relative fluorescence units, rfu)をGenePix Pro Software(Molecular Devices)を搭載したマイクロアレイスキャナー(Axon 4200AL)で読み取った。
計算と統計
タンパク質アレイ法によって得たデータはGnjatic S,et al.Proc Natl Acad Sci USA 2010;107:5088−5093、及びGnjatic S,et al.J Immunol Methods 2009;341:50−58に報告されている方法に従って補正、標準化を行った。偽陽性を防ぐため、各抗原タンパク質について2点のスポットの平均値ではなく、2点のうち低い値をその抗原タンパク質の蛍光強度として採用した。
抗原タンパク質の蛍光強度を、下記式(1)に従ってratio of interquartile differences (RoIQD)値に変換した。
(式(1)中、
Xは各抗原タンパク質の蛍光強度、
Q1arrayはアレイ内全抗原タンパク質の蛍光強度のうち低い方から25パーセンタイル値、
Q3arrayはアレイ内全抗原タンパク質の蛍光強度のうち低い方から75パーセンタイル値を表す)
その後、quartile normalizationを行い、血清自己抗体価を求めた。Quartile normalizationでは、アレイ毎にRoIQD値の大きさ順に抗原タンパク質を並べ、同じ順位のRoIQD値(本試験例においては48個のRoIQD値)の平均値を計算し、この平均値を各アレイで同じ順位の抗原タンパク質に対して割り当てる操作を行った。一連の操作によってアレイ間のデータのばらつきを抑えることができるため、血清自己抗体価のアレイ間での比較が可能となる。
次に各血清自己抗体のカットオフ値を、下記式(2)に従って求めた。
(式(2)中、
Q1Agは、それぞれの自己抗体の全抗体価(本研究では48個)の25パーセンタイル値、
Q3Agは、それぞれの自己抗体の全抗体価(本研究では48個)の75パーセンタイル値を表す)
血清自己抗体価がカットオフ値よりも大きい場合のみ、カットオフ値に対する自己抗体価比(s/c)を計算した。
最後に、特定の疾患に特異的な自己抗体としてのスコア値を下記式(3)に従って決定した。下記式(3)は、PAP患者の場合を例に記載したものである。ここで、疾患群としてはaPAP10例、コントロール群としてはその他の疾患群と健常人計38例を使用した。
(式(3)中、
Freqは、自己抗体価がカットオフ値より高い症例のパーセンテージ、
Internsityは、カットオフ値に対する自己抗体価比(s/c)の平均値を表す)
IPF、NSIP、SARについても同様に、他3疾患と健常人をコントロール群として、疾患特異的自己抗体としてのスコア値を計算した。
各疾患別に、疾患特異的自己抗体としてのスコア値の分布を示す(図1)。疾患に特徴的な分布はなく、類似した分布を示した。いずれの疾患でもスコア20点台にピークがあり、高スコア側に長く裾野を引く形となった。
次に疾患特異的自己抗体と判断するための、スコア値の閾値について検討した。Gnjatic S.らの報告(Proc Natl Acad Sci USA 2010;107:5088−5093、及びJ Immunol Methods 2009;341:50−58)ではスコア>5を高スコアとして採用しているが、炎症性疾患を対象とした本試験例における検討には不適であると考えられた(図1)。そこで、閾値を漸増する検討を行ったところ、スコア≧57.1を閾値として設定すると各疾患間の重なりがなくなることを見出し、結果としてNSIP 51個、IPF 40個、aPAP 57個、SAR 44個の疾患特異的自己抗体を決定することができた。そのうち、NSIP疾患に特異的な自己抗体から特に高スコアを示した7種類の抗体を選択した。下表2に当該7種類の自己抗体のスコアを示す。
また、疾患ごとに抗体価をグラフに示す(図2及び3)。タンパク質アレイによる血清抗Mx1抗体価は、従来の間質性肺炎マーカーであるKL−6と同様、肺胞タンパク質症(PAP)でも上昇した。しかし、抗Mx1抗体はIPFとNSIPを比較すると明らかにNSIP患者において抗体価が上昇し、IPFとNSIP間における鑑別マーカーとなり得ることが示された(図2)。また、図3に示されるように、抗Mx1抗体の他にも6種類の自己抗体がIPFとNSIP間における鑑別マーカーとなり得ることが示された。更に、図4に、抗Mx1抗体価と抗NINJ2抗体の抗体価をNSIPの患者毎に識別したグラフを図4に示す。図4に示されるように、NSIPは、抗Mx1抗体価が高い患者と、抗NINJ2抗体が高い患者に大別され、抗Mx1抗体陽性と抗NINJ2抗体陽性の重なりが少なかったことから、抗Mx1抗体と抗NINJ2抗体の双方を鑑別マーカーとして使用することによって、より高精度にNSIPを診断できることが明らかとなった。
免疫組織化学分析による抗Mx1抗体の検出
本発明者らは、抗Mx1抗体に着目し、解析を進めた。抗原タンパク質のMx1はInterferon−stimulated genes(ISGs)と呼ばれ、タイプ1−インターフェロンにより誘導される一群の抗ウイルスタンパク質に属する。インターフェロンシグナルと間質性肺炎の関わりについては、これまでにも報告されている。具体的な試験方法を以下に示す。
正常肺組織のホルマリン固定パラフィン包埋標本はSUPER BIO CHIPS社(Seoul,Korea)より購入した。NSIP患者の外科的肺生検標本(ホルマリン固定パラフィン包埋)は国立病院機構近畿中央胸部疾患センターより提供された。一次抗体としてウサギ抗ヒトMx1ポリクローナル抗体を使用した。また二次抗体としてヤギ抗ウサギIgG抗体を使用した。
各標本のパラフィン切片を貼付けたスライドガラスを60℃で一晩静置した後、キシレンに浸漬し(10分間(4回)た。その後100%エタノール、95%エタノール、80%エタノール、50%エタノール、水の順に段階的に脱パラフィン処理を行った。更に、クエン酸緩衝液を用いて抗原賦活化を行った後、内因性ペルオキシダーゼ阻害を行った。
その後、抗ヒトMx1抗体(4%ヤギ血清/TritonX−100加リン酸緩衝溶液(PBST)で1:425に希釈、ウサギ、ポリクローナル抗体;Sigma,St.Louis,MO)100μLを各標本に添加し、4℃で一晩インキュベートした後、PBSTで洗浄した。洗浄後の標本に、更に4%ヤギ血清/PBSTにて200倍希釈したビオチン化ヤギ抗ウサギIgG抗体(Vector Labs)100μLを添加し、室温で60分間インキュベートした。二次抗体と反応させた標本をPBSTで洗浄した後、Streptavidin-biotin-peroxidase detection system (Vector Labs Inc.)を用いて発色させた。免疫組織化学分析に供した標本の代表例を図5に示す。
図5に示されるように免疫組織化学分析の結果、正常肺組織においてMx1は気管支上皮内のクララ細胞、肺胞内のマクロファージに発現していた。一方、NSIP患者の肺組織では、II型肺胞上皮過形成及び集簇した肺胞マクロファージにおいて高い発現を認めた。即ち、NSIP患者の肺組織においてMx1の局在が変化することによって抗原として認識され、自己抗体(抗Mx1抗体)が産生されると予測される。
ELISA法による抗Mx1抗体の検出
Sf9昆虫細胞にて発現させたMx1リコンビナントタンパク質(Invitrogen,Carlsbad,CAより入手)をELISAプレート(Thermo Fisher Scientific Inc.,Waltham,MA)に固相化した。固相化は、ELISAプレートとMx1リコンビナントタンパク質を4℃にて一晩インキュベートすることにより行った。また、固相化に用いたMx1リコンビナントタンパク質の濃度を1μg/ml、2μg/ml、4μg/ml又は8μg/mlとした。
測定する血清を100倍希釈し、ELISAプレートに固相化したMx1リコンビナントタンパク質と室温にて1時間静置反応させ、リン酸緩衝食塩水で洗浄後、HRP標識抗ヒトIgG(γ chain)抗体(Goat polyclonal,MBL Co.,Ltd.,Nagoya,Japan)と室温で1時間静置反応させた。TMBを用いて発色させた後、450nmにおける吸光度をARVO MX1420 multilabel counter(PerkinElmer)にて測定した。結果を図6のグラフに示す。
NSIPの2症例においては、固相化に用いたMx1タンパク質濃度依存的にシグナルが増強し、4μg/ml以上では頭打ちとなることが示された。一方IPF2症例においては、Mx1タンパク質の濃度依存的なシグナル増加を認められなかった。NSIP患者においては、確かに抗Mx1抗体が存在することを示すと同時に、抗Mx1抗体ELISAで固相化するMx1タンパク質最適濃度は4μg/mlであることが示された。
免疫沈降法及びウェスタンブロッティングによる自己抗体(抗Mx1抗体)の確認
NSIP患者の血清中に抗Mx1抗体が確かに存在していることを証明するため、免疫沈降法による確認を行った。FLAGタグ融合Mx1タンパク質発現ベクターを作製し、293細胞にて過剰発現させ、細胞可溶化物を血清と反応させた。患者血清中にMx1に対する自己抗体が存在すれば、免疫複合体が形成され、プロテインGセファロースにて沈降させることができる。そして、この沈降物に対して抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロッティング解析を行うことによって、NSIP患者血清中の抗Mx1抗体の存在を確認することができる。具体的には以下の手順に従って試験を行った。
MTC多組織cDNAパネル(Clontech Laboratories Inc.)の脾組織cDNAライブラリーより、下記プライマーセットを用いて、Mx1cDNAを得た。
5'-TTTAAGCTTATGGTTGTTTCCGAAGTG(配列番号1)
5'-TTTTCTAGATTAACCGGGGAACTGGGCAAG(配列番号2)
Mx1 cDNAをpFLAG−CMVTM−4 Expression Vector(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)にクローニングし、発現ベクターを得た。この発現ベクターを293細胞にトランスフェクトし、16時間後に細胞可溶化物を回収した。細胞可溶化物と血清を混合し、4℃にて一晩回転(rotate)した後、免疫複合体をProtein G sepharose(GE Healthcare,Buckinghamshire,UK)を用いて沈降させた。沈降物を、SDS−PAGEにより分離し、ゲル中のタンパク質(沈降物)をニトロセルロース膜に転写した。このニトロセルロース膜を5%スキムミルク溶液中で4℃で一晩ブロッキングした。その後、TBSで洗浄し、ニトロセルロース膜を抗FLAG抗体(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)と室温℃で1時間反応させた。その後、TBSで洗浄し、更にECL Select Western Blotting Detection Reagent(GE Healthcare)により発色させた。その結果、NSIP患者の血清を用いた場合のみバンドが認められた。
MHCクラスII分子に提示させたMx1を用いた自己抗体(抗Mx1抗体)の検出
(1)Mx1提示MHCクラスII分子を細胞表面に提示する細胞の調製
まず、以下の方法で、Mx1提示MHCクラスII分子を細胞表面に提示する細胞を調製した。
(1−1)HLA−DRα発現ベクター及びHLA−DRβ発現ベクター
ヒト末梢血単核細胞(3H Biomedical社)又はヒト細胞株のcDNAから、HLA-DRのα鎖(HLA−DRA*01:01)及びβ鎖(HLA−DRB1*03:04)をコードするポリヌクレオチドを、それぞれ、pME18Sベクターにクローニングした。なお、前記HLA−DRのcDNAの配列情報は、IMGT/HLA Database(http://www.ebi.ac.uk/imgt/hla/index/html)を参照した。
(1−2)Mx1発現ベクター
ヒト脾臓cDNAライブラリーから、下記プライマーを用いてMx1cをコードするポリヌクレオチドをPCR法で増幅させ、制限酵素処理(EcoRI、XhoI)後、pME18SFL3ベクターにクローニングした。
Sense primer: 5'-AATAATGAATTCATGGTTGTTTCCGAAGTG-3'(配列番号3)
Anti-sense primer: 5'- TAATAACTCGAGTTAACCGGGGAACTGGG-3' (配列番号4)
(1−3)GFP発現ベクター
GFPをコードする配列番号5に示すポリヌクレオチドを、pME18Sベクターにクローニングした。
(1−4)発現ベクターの導入
前記HLA−DRα発現ベクター、HLA−DRβ発現ベクター、Mx1発現ベクター、及びGFP発現ベクターを、トランスフェクション試薬として、PEI max(商品名、Polyscience社製)を使用し、293T細胞(理化学研究所 バイオリソースセンター)に導入した。293T細胞への前記発現ベクターの導入は、PEI max(コスモバイオ社)を2mg/mlとなるように精製水で溶かしたPEI max溶液を使用した。具体的には、293T細胞を24穴プレートに2×105個/500μL/穴で播き、24時間培養を行った。次いで、Lipofectamine(商標) 2000(Invitrogen社)の使用説明書に従い、Lipofectamine(商標) 2000に代えて、前記PEI max溶液を用いて、前記発現ベクターの導入を行い、24時間培養後に、細胞がGFPを発現していることを、蛍光顕微鏡で確認した。
なお、上記条件によって、Mx1がHLA−DRと複合化して細胞表面に提示されていることは、標識抗Mx1抗体及び抗HLA−DR抗体を用いたフローサイトメトリーによる分析や、細胞溶解液を免疫沈降した後に、免疫沈降したサンプルに対して標識抗Mx1抗体及び抗HLA−DR抗体を用いたウェスタンブロッティングによって確認されている。
(2)Mx1提示MHCクラスII分子(Mx1−HLA−DR複合体)を細胞表面に提示する細胞を用いた血清中の自己抗体(抗Mx1抗体)の測定
前記で調整した細胞を、間質性肺炎患者3名(NSIP−1、−2及び9)の血清希釈液(100倍希釈)に再懸濁させ、37℃で20分間培養を行った。その後、細胞を洗浄し、Allophycocyanin(APC)で標識した抗ヒトIgG Fc抗体(Jackson ImmunoResearch)を用いて、Mx1−HLA−DR複合体に結合した自己抗体(抗Mx1抗体)を標識した。その後、HANKS緩衝液に再懸濁させた後に、fluorescence activated cell sorting (FACS) (FACSCalibur, BD)で、APC陽性細胞の分析を行った。
得られた結果を図7に示す。図7のAは、本試験においてAPC陽性細胞の細胞表面を模式的に示した図であり、図7のBは、FACS分析の結果(縦軸がAPC蛍光強度)を示す。図7のBには、タンパク質アレイによる血清抗Mx1抗体価を測定した結果も併せて示す。この結果から、Mx1−HLA−DR複合体を提示している細胞を用いた自己抗体(抗Mx1抗体)の測定結果は、タンパク質アレイによる血清抗Mx1抗体価とよく対応しており、Mx1−HLA−DR複合体を利用することによって自己抗体(抗Mx1抗体)を効率的且つ高精度に測定できることが確認された。
以上の結果より、抗Mx1抗体、抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体は、簡便且つ高精度にNSIPの検査を行うことが可能なバイオマーカーであり、これらのバイオマーカーはIPF/UIPとNSIPの鑑別においても有用であることが示された。また、特に抗Mx1抗体及び/又は抗NINJ2抗体をバイオマーカーとすることによって、更に高精度なNSIPの診断、IPF/UIPとNSIPの鑑別が可能であることが示された。
配列番号1は、Mx1cDNAのクローニングに使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号2は、Mx1cDNAのクローニングに使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号3は、Mx1cDNAのクローニングに使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号4は、Mx1cDNAのクローニングに使用したプライマーの塩基配列を示す。
配列番号5は、GFPcDNAの塩基配列を示す。

Claims (13)

  1. 抗Mx1抗体、抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体からなる群より選択される少なくとも1種の抗体からなる、非特異性間質性肺炎(NSIP)のバイオマーカー。
  2. 前記抗体が、抗Mx1抗体及び抗NINJ2抗体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のバイオマーカー。
  3. 前記抗体が、抗Mx1抗体及び抗NINJ2抗体の組み合わせである、請求項1又は2に記載のバイオマーカー。
  4. 被検動物から採取された血液試料中の、抗Mx1抗体、抗NINJ2抗体、抗DCX抗体、抗C10orf49抗体、抗ZMAT4抗体、抗CDC42SE1抗体及び抗GPT2抗体からなる群より選択される少なくとも1種の抗体を検出する工程、
    を含む、非特異性間質性肺炎(NSIP)を検査するために、前記抗体を測定する方法。
  5. 前記抗体が、抗Mx1抗体及び抗NINJ2抗体からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項4に記載の測定方法。
  6. 前記抗体が、抗Mx1抗体及び抗NINJ2抗体の組み合わせである、請求項4又は5に記載の測定方法。
  7. 前記血液試料が血清である、請求項4〜6のいずれか1項に記載の測定方法。
  8. 前記抗体の検出が、Mx1、NINJ2、DCX、C10orf49、ZMAT4、CDC42SE1及びGPT2からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はその部分ペプチドからなる抗原を用いて行われる、請求項4〜7のいずれか1項に記載の測定方法。
  9. 前記検出工程がELISA法により行われる、請求項4〜8のいずれか1項に記載の測定方法。
  10. 前記抗原が、MHCクラスII分子により提示された抗原である、請求項4〜9のいずれか1項に記載の測定方法。
  11. Mx1、NINJ2、DCX、C10orf49、ZMAT4、CDC42SE1及びGPT2からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はこれらの部分ペプチドからなる抗原を含む、非特異性間質性肺炎(NSIP)の検査用試薬。
  12. 請求項11に記載の検査用試薬を含む、非特異性間質性肺炎(NSIP)の診断キット。
  13. Mx1、NINJ2、DCX、C10orf49、ZMAT4、CDC42SE1及びGPT2からなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質又はその部分ペプチドからなる抗原の、非特異性間質性肺炎(NSIP)の検査用試薬の製造のための使用。
JP2015506765A 2013-03-18 2014-03-17 非特異的間質性肺炎の診断のためのバイオマーカー Active JP6315832B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013055358 2013-03-18
JP2013055358 2013-03-18
PCT/JP2014/057128 WO2014148429A1 (ja) 2013-03-18 2014-03-17 非特異的間質性肺炎の診断のためのバイオマーカー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2014148429A1 JPWO2014148429A1 (ja) 2017-02-16
JP6315832B2 true JP6315832B2 (ja) 2018-04-25

Family

ID=51580108

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015506765A Active JP6315832B2 (ja) 2013-03-18 2014-03-17 非特異的間質性肺炎の診断のためのバイオマーカー

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JP6315832B2 (ja)
WO (1) WO2014148429A1 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP7291344B2 (ja) * 2019-04-25 2023-06-15 北海道公立大学法人 札幌医科大学 間質性肺炎患者の病態に関する情報を取得する方法及びその利用
WO2021177691A1 (ko) * 2020-03-02 2021-09-10 연세대학교 산학협력단 항암제 내성 진단 또는 치료용 조성물

Also Published As

Publication number Publication date
WO2014148429A1 (ja) 2014-09-25
JPWO2014148429A1 (ja) 2017-02-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11199549B2 (en) MEl'hods and means for diagnosing spondylarthritis using autoantibody markers
JP5663723B2 (ja) 関節リウマチの診断のための方法およびキット
US20120046181A1 (en) Biomarkers for the Diagnosis of Renal Allograft and Kidney Status
CA2814023C (en) Moesin fragments and uses thereof
US20150185226A1 (en) Method for Diagnosing Scleroderma
US20150133322A1 (en) Method for the diagnosis of early rheumatoid arthritis
JP6315832B2 (ja) 非特異的間質性肺炎の診断のためのバイオマーカー
JP5924502B2 (ja) リンパ球性漏斗下垂体後葉炎のバイオマーカー及びその用途
EP2204655A1 (en) Diagnostic prediction of rheumatoid arthritis and systemic lupus erythematosus
US11460467B2 (en) Diagnosis method for lupus
US9915667B2 (en) Methods and means for diagnosing vasculitis
WO2019111797A1 (ja) 筋疾患の診断のためのバイオマーカー
WO2023275235A1 (en) Method and means for diagnosis of spondyloarthritis
JP6312054B2 (ja) 間質性肺炎のバイオマーカー
US8313917B2 (en) Methods of diagnosing latent and active malignancies

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170310

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171010

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20180109

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20180125

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180306

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180326

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6315832

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250