JP6023496B2 - 炎症性動脈瘤の診断方法 - Google Patents

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Description

本発明は、炎症性動脈瘤形成症候群の診断方法等に関する。
炎症性動脈瘤は多くは小児の川崎病等の有熱性疾患に合併し、筋性動脈特に冠動脈の血管炎と構造破壊による不可逆的拡張、すなわち動脈瘤を形成し、生命予後に直結する重篤な疾患である。経過中に動脈瘤形成を予知する血中マーカーは確立しておらず、血中CRP、好中球数、血小板数の組み合わせにより病勢が評価されている。
小児川崎病等血管炎に対して免疫グロブリン治療が行われるが、免疫グロブリン不応性例や、免疫グロブリンに反応しても動脈瘤が形成される症例が存在し、いったん動脈瘤が形成されると、根治療法はないため、初回治療導入時に、免疫グロブリン不応性および動脈瘤形成を予知し、適切な治療法を選択するための診断法が必要であるが、現在のところ存在していない。
虚血状態を検出する虚血マーカータンパク質として、テネイシンC(以下、「TnC」又は「TNC」という)を用いる発明が開示されている(特許文献1)。
特開2011−242402
よって、本発明は、冠動脈瘤を形成する全身性血管炎患者の病勢を評価し、動脈瘤形成を予知するバイオマーカーの探索を目的とする。本発明者らは、新しい病態マーカーとして、細胞外マトリックス分子であるTnCに注目した。TnCは正常では発現せず活動性炎症に伴って特異的に発現し、その血中濃度は心筋梗塞や心筋炎・拡張型心筋症の予後予測に有用な炎症マーカーである。本発明者らは、TnCの有用性を評価するため、川崎病を含む小児有熱疾患(以下、「炎症性動脈瘤形成症候群」という)患者の過去の症例の血清、病理サンプルを用いた後ろ向き研究、新規患者登録による前向き研究、および理論的裏付けのために動物モデルを用いたシミュレーション実験を行った。これにより、本発明者らは「炎症性動脈瘤形成症候群」という新たな疾患概念を導入して、診断基準を策定し、新しい病勢マーカーおよび治療効果判定マーカーの開発とそれに基づいた個別最適化治療法を可能とした。本発明により、患者の予後が改善され、特に小児医療の質が向上するものである。
具体的には、川崎病患者について血中TnC値を測定した結果、血中濃度は急性期に有意に高値を示し、回復期に低下した。他のバイオマーカーであるCRP、WBC、好中球、及びBNPとの相関の解析を行った結果、これらのバイオマーカーとTnCとの間には有意な相関は認められず、従来のバイオマーカーとは異なる指標として利用可能であることが示された。また、TnC値の冠動脈病変と関係を評価した結果、治療前、初回治療後(第9−15病日)、回復期、いずれの時期においても、冠動脈拡大および瘤を認めた症例では冠動脈拡大および瘤を認めなかった症例よりもTnC値が高い傾向を示した。更に、大量免疫グロブリン療法不応例では、反応した症例に比べて初回治療前のTnC値が高い傾向を示した。
よって、本発明者らは、被験者の体液中(好ましくは血中)のTnC値が川崎病に伴う冠動脈拡大および瘤の形成等の炎症性動脈瘤形成症候群の診断マーカーとして利用可能であることを見出した。即ち、本発明者らは、体液中(好ましくは血中)のTnC値が高い被験者は、川崎病に伴う冠動脈拡大および瘤の形成等の炎症性動脈瘤形成症候群であると診断することができることを見出した。また、本発明者らは、被験者の体液中(好ましくは血中)のTnC値が大量免疫グロブリン療法の応答性の奏功性マーカーとして利用可能であることを見出した。即ち、本発明者らは、体液中(好ましくは血中)のTnC値が高い被験者は、大量免疫グロブリン療法に対する応答性が悪いと判定することができることを見出した。
具体的には、一例において本発明は、以下の(1)〜(13)に記載の発明に関する。
(1) 炎症性動脈瘤形成症候群を診断するための情報を得る方法、又は炎症性動脈瘤形成症候群を診断する方法であって、被験者由来の体液中のTnCを測定するステップを備える方法。
(2) 炎症性動脈瘤形成症候群を診断するための情報を得る方法であって:
(a)被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;及び、
(b)TnCのレベルが高い場合、該被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していると評価することに基づき情報を得るステップを備える、請求項1に記載の方法、あるいは、
炎症性動脈瘤形成症候群を診断する方法であって:
(a)被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;及び、
(b)TnCのレベルが高い場合、該被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していると診断するステップを備える、(1)に記載の方法。
(3) 炎症性動脈瘤形成症候群を診断するための情報を得る方法であって、以下のステップを備える方法:
(a)少なくとも1つのTnCと特異的に結合する抗体に被験者由来の体液を接触させるステップ;
(b)被験者由来の体液中のTnCの前記抗体への結合を検出して被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;
(c)被験者由来の体液中のTnCのレベルから被験者の炎症性動脈瘤形成症候群発症に関する情報を得るステップ、
ここで、TnCレベルが高いことは、被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していることを示す方法、あるいは、
炎症性動脈瘤形成症候群を診断する方法であって、以下のステップを備える方法:
(a)少なくとも1つのTnCと特異的に結合する抗体に被験者由来の体液を接触させるステップ;
(b)被験者由来の体液中のTnCの前記抗体への結合を検出して被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;
(c)被験者由来の体液中のTnCのレベルから被験者の炎症性動脈瘤形成症候群発症を診断するステップ、
ここで、TnCレベルが高いことは、被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していることを示す方法。
(4) 患者由来の体液が、血液、血漿、血清、又は尿である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載の方法。
(5) TnCと特異的に結合する抗体を含有する、炎症性動脈瘤形成症候群の診断薬。
(6)TnCと特異的に結合する抗体を含有する、炎症性動脈瘤形成症候群の診断用キット。
(7) 炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって、該患者由来の体液中のTnCを測定するステップを備える方法。
(8) 炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって:
(a)被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;及び、
(b)TnCのレベルが高い場合、該被験者が大量免疫グロブリン療法に不応であると予測するステップを備える、(7)に記載の方法。
(9) 炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって:
(a)被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;
(b)TnCのレベルから、大量免疫グロブリン療法反応クラスのうち一つのクラスに分類するステップ、ここで、当該分類結果はTnCのレベルに依存しており、TnCのレベルが高いクラスは、被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性が低いことを示す;及び
(c)当該大量免疫グロブリン療法反応クラスの一つに属する患者に特異的な既知の性質から被験者の大量免疫グロブリン療法への反応を予測するステップを含む方法。
(10) 被験者由来の体液中のTnCを測定するステップが、
(i)少なくとも1つのTnCと特異的に結合する抗体に被験者由来の体液を接触させるステップ;
(ii)被験者由来の体液中のTnCの前記抗体への結合を検出して被験者由来の体液中のTnCを測定するステップを含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。
(11) 被験者由来の体液が、血液、血漿、血清、又は尿である、(7)〜(10)のいずれか1項に記載の方法。
(12) TnCと特異的に結合する抗体を含有する、炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性予測用薬剤。
(13) TnCと特異的に結合する抗体を含有する、炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性予測キット。
上述の通り、本発明は、被験者由来の体液中のTnCを測定することによる炎症性動脈瘤形成症候群の診断方法及び大量免疫グロブリン療法への反応性予測方法に関する。本明細書において、「テネイシンC」、「TnC」及び「TNC」とは、ヒトテネイシンC(tenascin C)のことであり、代表的には配列番号1で表されるアミノ酸配列からなるタンパク質のことである。本発明の診断目的を達成できる限り、配列番号1で表されるアミノ酸配列に置換、挿入、削除、追加等の変異が入ったタンパク質又はペプチドも本発明のテネイシンCに含まれる。
また、本明細書において、「炎症性動脈瘤形成症候群」とは、多くは小児の川崎病等の有熱性疾患に合併し、筋性動脈特に冠動脈の血管炎と構造破壊による不可逆的拡張、すなわち動脈瘤を形成する疾患である。
本明細書において、TnCと特異的に結合する抗体は、TnCと特異的に結合する抗体及びその断片を含む。本明細書における抗体は、TnCと特異的に結合する限りその構造、大きさ、イムノグロブリンクラス、由来等を問わない。また、本明細書における抗体は、モノクローナルであってもよいし、ポリクローナルであってもよい。更に、本明細書における抗体は、マウス抗体、ウサギ抗体、ヒト抗体等の哺乳動物の抗体の他、キメラ抗体、ヒト化抗体などの異種に由来する配列が融合した抗体をも含む。本明細書において、TnCと特異的に結合するとは、TnCと結合することができるが、他のタンパク質とは結合しないか又は結合が弱いことを意味する。ここで、結合が弱いとは、被検抗体のTnCへの結合に比較して、他のタンパク質への結合が十分区別可能な場合を含む。
本明細書において、抗体の断片とは、抗体の一部分(部分断片)又は抗体の一部分を含むペプチドであって、抗体の抗原への結合作用を保持するもののことである。このような抗体の断片としては、例えば、F(ab’)、Fab’、Fab、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)若しくはこれらの重合体、二量体化V領域(Diabody)、又は、CDRを含むペプチドを挙げることができる。ここで、CDRとは、Kabatら(“Sequences of Proteins of Immunological Interest”,Kabat,E.ら,U.S.Department of Health and Human Services,1983)又はChothiaら(Chothia&Lesk,J.Mol.Biol.,196,901−917,1987)の定義によるものである。
また、別の態様において、本発明は、TnCと特異的に結合する抗体を含有する、炎症性動脈瘤形成症候群の診断薬、及び、TnCと特異的に結合する抗体を含有する、炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性予測用薬剤に関する。本発明の薬剤は、TnCと特異的に結合する抗体以外の物質を含まない薬剤であってもよいし、必要に応じて溶媒、安定化剤、保存料などを含有していてもよい。
更に、別の態様において、本発明は、TnCと特異的に結合する抗体を含有する、炎症性動脈瘤形成症候群の診断用キット、及び、炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性予測キットに関する。本発明のキットは、TnCと特異的に結合する抗体に加えて、好ましくは、固相、ハプテン、及び不溶性担体からなる群より選択される担体を含む。本発明の測定キットは、抗体分子を用いた公知の方法に基づくことができる。このような方法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA法)、簡易EIA法、酵素結合イムノソルベントアッセイ法(ELISA法)、ラジオイムノアッセイ法(RIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)等の標識化免疫測定法;ウェスタンブロッティング法等のイムノブロッティング法;金コロイド凝集法等のイムノクロマト法;イオン交換クロマトグラフィ法、アフィニティクロマトグラフィ法等のクロマトグラフィ法;比濁法(TIA法);比ろう法(NIA法);比色法;ラテックス凝集法(LIA法);粒子計数法(CIA法);化学発光測定法(CLIA法、CLEIA法);沈降反応法;表面プラズモン共鳴法(SPR法);レゾナントミラーディテクター法(RMD法);比較干渉法等を挙げることができる。本発明のキットが、所望の測定を実施することが可能であるか否かは、当該サンプル又は当該濃度のサンプルを用いて、各測定法を当業者周知の方法により実施することにより、検出可能であるか否かを測定することにより確認することができる。
例えば、本発明のキットは、(i)TnCと特異的に結合する第一抗体が固定化した固相又はハプテン、及び(ii)TnC特異的に結合する標識化された第二抗体を含む免疫化学測定のキットとすることができる。また、本発明のキットがハプテンを含む場合、更にハプテンと特異的に結合する物質が固定化した固相をさらに含んでいてもよい。好ましくは、前記第一抗体と前記第二抗体はTnCの異なる部位を認識する。
または、本発明のキットは、(i)TnCと特異的に結合する第一抗体が固定化した固相、及び、(ii)TnCと特異的に結合する第二抗体が固定化したハプテンを含む免疫化学測定のキットとすることができる。また、当該キットは更に、ハプテンと特異的に結合する、標識された物質を含んでいてもよい。
あるいは、本発明のキットは、(i)TnCと特異的に結合する第一抗体が固定化した不溶性担体、及び、(ii)TnCと特異的に結合する第二抗体が固定化した不溶性担体を含む免疫化学測定のキットとすることができる。上記のいずれのキットの例においても、第一抗体をモノクローナル抗体とし、第二抗体をポリクローナル抗体としてもよいし、第一抗体をポリクローナル抗体とし、第二抗体をモノクローナル抗体としてもよいし、あるいは、第一及び第二の両方の抗体をモノクローナル抗体としてもよい。
本発明のキットにおいて、固相は免疫化学測定に使用できる固相であれば特に限定されないが、例えば、ニトロセルロース、セファロース、ナイロン、ビニロン、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、レーヨン、ポリノジック、キュプラ、リヨセル、アセテート、ポリビニリデンジフルオリド、シリコンラバー、ラテックス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、フッ素加工樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、アクリル樹脂、ポリマーアロイ、ガラス繊維、炭素繊維、ガラス、ゼラチン、ポリアミノ酸及び/又は磁気感応性素材等を含有する、プレート、チューブ、チップ(例えば、プロテインチップ、ラボチップ等)、ビーズ、膜、吸収体及び/又は粒子等を挙げることができ、好ましくは、プレート及び磁気ビーズである。本明細書において不溶性担体とは、ビーズ等の懸濁可能な不溶性の固相を意味し、例えば、ラテックスビーズや磁気ビーズを挙げることができる。
本発明のキットは、必要に応じて、発色試薬、反応停止用試薬、標準抗原試薬、サンプル前処理用試薬、ブロッキング試薬等を含んでいてもよい。また、本発明のキットが標識化された抗体を含む場合、更に標識と反応する基質を含んでいてもよい。更に、本発明のキットは、添付文書、説明書、及びキットを格納する容器等を適宜含んでいてもよい。
例えば、本発明のキットは、抗TnCモノクローナル抗体固相化プレート、ビオチン標識抗TnCポリクローナル抗体溶液、ストレプトアビジンPOD溶液、洗浄液、TMB試薬、2M HCl、標準物質(TnC)を備えていてもよい。また、別の例として、本発明のキットは、抗TnCモノクローナル抗体、抗TnC抗体結合金コロイド、ウサギ免疫グロブリン結合金コロイド、及び、テストプレートを備えていてもよい。当該キットにおいて、テストプレートは、検体を挿入する検体採取部、抗TnCモノクローナル抗体結合金コロイドを含む感作金コロイド塗布部、抗TnCモノクローナル抗体を含む判定部(テストライン)、抗ウサギ免疫グロブリンポリクローナル抗体を含む判定部(リファレンスライン)、吸収剤、及び、メンブレンフィルターを備えていてもよい。
本発明の薬剤又はキットに用いる検体としては、本明細書における、「被験者由来の体液」又は「患者由来の体液」と同様のサンプルを使用することができる。
本発明は、TnCを血中マーカーとして利用することにより、炎症性動脈瘤形成を診断することを可能とする。これにより、従来のマーカー(血中CRP、好中球数、血小板数の組み合わせ)とは異なる病勢の評価を行うことを可能とするものである。また、本発明のTnCを測定することを備える、炎症性動脈瘤形成症候群を診断するための情報を得る方法、又は炎症性動脈瘤形成症候群を診断する方法は、「炎症性動脈瘤形成症候群」という新たな疾患概念の導入及びそれに基づく診断基準の策定を可能とするものである。更に、本発明は、これまで予測方法が存在していなかった小児川崎病等血管炎の免疫グロブリン不応性を予測することを可能とする。これにより、小児川崎病等血管炎の適切な治療法の選択を可能とするものである。
川崎病患者140症例(439検体)の初回治療前、9〜15病日、回復期の血中TnCを測定した結果を示すグラフである。縦軸はTnCの濃度(ng/mL)を示す。 川崎病患者140症例(439検体)の血中TnC濃度とCRP濃度の相関を示すグラフである。縦軸はTnCの濃度(ng/mL)を示し、横軸はCRPの濃度(ng/mL)を示す。 川崎病患者140症例(439検体)の血中TnC濃度とWBCとの相関を示すグラフである。縦軸はTnCの濃度(ng/mL)を示し、横軸は全白血球数(×10個/μL)を示す。 川崎病患者140症例(439検体)の血中TnC濃度と好中球の割合との相関を示すグラフである。縦軸はTnCの濃度(ng/mL)を示し、横軸は全白血球数に対する好中球の割合(%)を示す。 川崎病患者140症例(439検体)の血中TnC濃度とBNP濃度の相関を示すグラフである。縦軸はTnCの濃度(ng/mL)を示し、横軸はBNPの濃度(pg/mL)を示す。 川崎病患者140症例(439検体)について、冠動脈病変の有り又は無しの患者の血中TnC濃度を示すグラフである。縦軸はTnCの濃度(ng/mL)を示す。 川崎病患者140症例(439検体)について、免疫グロブリン治療応答性の有り又は無しの患者の血中TnC濃度を示すグラフである。縦軸はTnCの濃度(ng/mL)を示す。 川崎病患者140症例(439検体)について、免疫グロブリン治療有効例、無効例の患者の血中TnC濃度の推移を表すグラフである。縦軸はTnCの濃度(ng/mL)を示す。 症例登録のフォローチャートを示す。 a:モデルマウスの血管病変の肉眼所見を示す。多発性に動脈瘤が形成されている(矢印)。b:動脈炎/動脈瘤マウスモデルの大動脈及び冠動脈のパラフィン標本のElastica Van Gieson染色により、血管壁が破壊され動脈瘤が形成されていることを示す写真である。矢印は中膜弾性線維の断裂を示す。 動脈炎/動脈瘤マウスモデルの大動脈及び心臓のパラフィン標本について、免疫染色した結果を示す写真である。写真中、矢印は血管壁、血管外膜周囲結合織の活動性炎症変部におけるTnCの著明な発現、沈着を示す。 従来使用されている群馬スコア単独、及び、群馬スコアに初回治療前のTnC値を組み合わせた場合の標準治療(大量免疫グロブリン療法+アスピリン内服)への不応性の予測精度を検討した結果を示すグラフである。縦軸は「感度」を、横軸は「1−特異度」を示す。
一の態様において、本発明は、炎症性動脈瘤形成症候群を診断するための情報を得る方法、又は炎症性動脈瘤形成症候群を診断する方法であって、被験者由来の体液中のTnCを測定するステップを備える方法に関する。なお、本明細書の全体に亘って、「炎症性動脈瘤形成症候群を診断するための情報を得る方法」と、「炎症性動脈瘤形成症候群を診断する方法」とは、互いに読み替えてもよい。
具体的には、本発明は炎症性動脈瘤形成症候群を診断するための情報を得る方法であって:
(a)被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;及び、
(b)TnCのレベルが高い場合、該被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していると評価することに基づき情報を得るステップを備える方法、あるいは、
炎症性動脈瘤形成症候群を診断する方法であって:
(a)被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;及び、
(b)TnCのレベルが高い場合、該被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していると診断するステップを備える方法、に関する。
より具体的には、本発明は、炎症性動脈瘤形成症候群を診断するための情報を得る方法であって、以下のステップを備える方法:
(a)少なくとも1つのTnCと特異的に結合する抗体に被験者由来の体液を接触させるステップ;
(b)被験者由来の体液中のTnCの前記抗体への結合を検出して被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;
(c)被験者由来の体液中のTnCのレベルから被験者の炎症性動脈瘤形成症候群発症に関する情報を得るステップ、
ここで、TnCレベルが高いことは、被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していることを示す方法、あるいは、
炎症性動脈瘤形成症候群を診断する方法であって、以下のステップを備える方法:
(a)少なくとも1つのTnCと特異的に結合する抗体に被験者由来の体液を接触させるステップ;
(b)被験者由来の体液中のTnCの前記抗体への結合を検出して被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;
(c)被験者由来の体液中のTnCのレベルから被験者の炎症性動脈瘤形成症候群発症を診断するステップ、
ここで、TnCレベルが高いことは、被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していることを示す方法、
に関する。
本明細書において、診断するために、測定されたTnCレベル及び/又は群馬スコア(本明細書全体に亘って、「TnCレベル等」という。)と炎症性動脈瘤形成症候群の発症との関連付けは、被験者におけるTnCレベル等を、炎症性動脈瘤形成症候群患者又は炎症性動脈瘤形成症候群であろうことが知られている患者と比較することにより行われてもよい。あるいは、被験者におけるTnCレベル等を、炎症性動脈瘤形成症候群ではなかった患者又は炎症性動脈瘤形成症候群ではないと信じられている患者におけるTnCレベル等と比較することにより行われてもよい。比較対象となる患者におけるTnCレベル等は、例えば、本発明の開示により、又は、既に炎症性動脈瘤形成症候群の発症が判明している患者由来の検体におけるTnCレベル等を測定することにより知ることができる。あるいは、他の炎症性動脈瘤形成症候群の指標による評価と組み合わせて評価することにより知ることができる。TnCレベル等を利用して、患者が炎症性動脈瘤形成症候群に罹患している可能性又は罹患の程度を判定することができる。TnCレベル等と炎症性動脈瘤形成症候群との関連付けは、統計的分析により行うことができる。統計学的有意性は、2以上の集団を比較し、信頼区間及び/又はp値を決定することにより決定される(Dowdy and Wearden, Statistics for Research,John Wiely&Sons,NewYord,1983)。本発明の信頼区間は、例えば、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.9%又は99.99%であってもよい。また、本発明のp値は、例えば、0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0002又は0.0001であってもよい。
好ましくは、TnCレベル等について炎症性動脈瘤形成症候群への罹患の指標としての閾値レベル又は当該疾患への罹患の程度の指標として各程度に対する閾値レベルを設定し、患者由来の試料におけるTnCレベル等を、閾値レベルと比較することにより関連付けてもよい。このような閾値レベルは、例えば、感度が、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、又は、98%以上となるように設定することができる。また、閾値レベルは、特異度が、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、又は、98%以上となるように設定することができる。
別の態様において、本発明は、炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって、該患者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップを備える方法に関する。
具体的には、本発明は炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって:
(a)被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ;及び、
(b)テネイシンCのレベルが高い場合、該被験者が大量免疫グロブリン療法に不応であると予測するステップを備える方法、に関する。
より具体的には、本発明は、炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって、以下のステップを備える方法を含む:
(a)少なくとも1つのTnCと特異的に結合する抗体に被験者由来の体液を接触させるステップ;
(b)被験者由来の体液中のTnCの前記抗体への結合を検出して被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;
(c)被験者由来の体液中のTnCのレベルから被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測するステップ、
ここで、TnCレベルが高いことは、大量免疫グロブリン療法への反応性が低いことを示す。
本明細書において、大量免疫グロブリン療法への反応性を予測するために行われる、測定されたTnCレベル等と患者の反応性との関連付けは、被験者におけるTnCレベル等を、大量免疫グロブリン療法に応答した患者又は応答することが知られている患者(ポジティブコントロール)、並びに/あるいは、大量免疫グロブリン療法に応答しなかった患者又は応答しないと信じられている患者(ネガティブコントロール)におけるTnCレベル等と比較することにより行われる。比較対象となる患者におけるTnCレベル等は、例えば、本発明の開示により、又は、既に応答性が判明している患者由来のサンプルにおけるTnCレベル等を測定することにより、あるいは、他の指標による評価と組み合わせて評価することにより知ることができる。関連付けは、統計的分析により行うことができる。統計学的有意性は、2以上の集団を比較し、信頼区間及び/又はp値を決定することにより決定される(Dowdy and Wearden、 Statistics for Research、 John Wiely & Sons、 NewYord、 1983)。本発明の信頼区間は、例えば、90%、95%、98%、99%、99.5%、99.9%又は99.99%であってもよい。また、本発明のp値は、例えば、0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001、0.0005、0.0002又は0.0001であってもよい。
あるいは、TnCレベル等について大量免疫グロブリン療法への応答性の指標としての閾値レベル又は大量免疫グロブリン療法への応答性の程度の指標として各程度に対する閾値レベルを設定し、患者由来の試料におけるTnCレベル等を、閾値レベルと比較することにより関連付けてもよい。このような閾値レベルは、例えば、感度が、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、又は、98%以上となるように設定することができる。また、閾値レベルは、特異度が、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、又は、98%以上となるように設定することができる。
あるいは、関連付けは、大量免疫グロブリン療法への反応性の程度に関するいくつかのグループ群(クラス)を設定し、患者由来のサンプルにおけるTnCのレベルから、当該クラスのうち一つのクラスに分類し、分類されたクラスに属する患者に特異的な大量免疫グロブリン療法への反応性に関する既知の性質から当該患者の大量免疫グロブリン療法への反応性の可能性を予測することにより関連付けてもよい。
よって、より具体的には、本発明は以下の方法を含む:炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって:
(a)被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ;
(b)テネイシンCのレベルから、大量免疫グロブリン療法反応クラスのうち一つのクラスに分類するステップ、ここで、当該分類結果はテネイシンCのレベルに依存しており、テネイシンCのレベルが高いクラスは、被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性が低いことを示す;及び
(c)当該大量免疫グロブリン療法反応クラスの一つに属する患者に特異的な既知の性質から被験者の大量免疫グロブリン療法への反応を予測するステップを含む方法。
また、本発明の方法は、以上に記載した患者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップに加えて、既に炎症性動脈瘤形成症候群の診断、及び/又は大量免疫グロブリン療法への反応性予測に利用されている方法を組み合わせた方法をも包含する。例えば、血中マーカーである、血中CRP、好中球数、血小板数の他、群馬スコアなどを挙げることができる。群馬スコアは、5項目の血液検査結果、2項目の患者背景の7つの変数からなる予測モデルである。各変数は以下のようなしきい値によって二分化され、変数毎の重みづけがされる:Na(133mmol/L以下、2点)、AST(100IU/L以上、2点)、治療開始(診断)病日(4病日以前、2点)、好中球(80%以上、2点)、CRP(10mg/dL以上、1点)、血小板数(300,000/μL以下、1点)、月齢(12か月以下、1点)。各項目の総和をリスクスコアの点数とする。登録前に複数回血液検査が施行されていた場合、Na及び血小板数は最低値を、AST、好中球(%)及びCRPは最高値を代表値としてリスクスコアに組み込む。群馬スコアではリスクスコア5点以上を高リスク患者(免疫グロブリン不応例)と予測する。
よって、本発明は以下の方法を含む;
炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって、該患者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ、群馬スコアの変数を測定又は判定するステップを備える方法に関する。
具体的には、本発明は炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって:
(a)被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ;
(b)被験者由来の血液中のNa濃度を測定するステップ;
(c)被験者由来の血液中のAST濃度(IU/L)を測定するステップ;
(d)被験者由来の血液中の好中球(%)を測定するステップ;
(e)被験者由来の血液中のCRP濃度を測定するステップ;
(f)被験者由来の血液中の血小板数(/μL)を測定するステップ:
(g)Naが133mmol/L以下である場合を2点とし、ASTが100IU/L以上である場合を2点とし、好中球が80%以上である場合を2点とし、CRPが10mg/dL以上である場合を1点とし、血小板数が300,000/μL以下である場合を1点とし、更に、被験者の治療開始(診断)病日が4病日以前である場合を2点とし、被験者の月齢が12か月以下である場合を1点として、これらの点数の総和として群馬スコア(点)を計算するステップ;
(h)テネイシンCのレベルが高く、かつ、群馬スコアが5点以上である場合、該被験者が大量免疫グロブリン療法に不応であると予測するステップを備える方法に関する。
より具体的には、本発明は、炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって、以下のステップを備える方法を含む:
(a)少なくとも1つのTnCと特異的に結合する抗体に被験者由来の体液を接触させるステップ;
(b)被験者由来の体液中のTnCの前記抗体への結合を検出して被験者由来の体液中のTnCを測定するステップ;
(c)被験者由来の血液中のNa濃度を測定するステップ;
(d)被験者由来の血液中のAST濃度(IU/L)を測定するステップ;
(e)被験者由来の血液中の好中球(%)を測定するステップ;
(f)被験者由来の血液中のCRP濃度を測定するステップ;
(g)被験者由来の血液中の血小板数(/μL)を測定するステップ:
(h)Naが133mmol/L以下である場合を2点とし、ASTが100IU/L以上である場合を2点とし、好中球が80%以上である場合を2点とし、CRPが10mg/dL以上である場合を1点とし、血小板数が300,000/μL以下である場合を1点とし、更に、被験者の治療開始(診断)病日が4病日以前である場合を2点とし、被験者の月齢が12か月以下である場合を1点として、これらの点数の総和として群馬スコア(点)を計算するステップ;
(i)テネイシンCのレベルが高く、かつ、群馬スコアが5点以上である場合、該被験者が大量免疫グロブリン療法に不応であると予測するステップを備える方法。
あるいは、本発明は、炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって:
(a)被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ;
(c)被験者由来の血液中のNa濃度を測定するステップ;
(d)被験者由来の血液中のAST濃度(IU/L)を測定するステップ;
(e)被験者由来の血液中の好中球(%)を測定するステップ;
(f)被験者由来の血液中のCRP濃度を測定するステップ;
(g)被験者由来の血液中の血小板数(/μL)を測定するステップ:
(h)Naが133mmol/L以下である場合を2点とし、ASTが100IU/L以上である場合を2点とし、好中球が80%以上である場合を2点とし、CRPが10mg/dL以上である場合を1点とし、血小板数が300,000/μL以下である場合を1点とし、更に、被験者の治療開始(診断)病日が4病日以前である場合を2点とし、被験者の月齢が12か月以下である場合を1点として、これらの点数の総和として群馬スコア(点)を計算するステップ;
(i)テネイシンCのレベル及び群馬スコアから、大量免疫グロブリン療法反応クラスのうち一つのクラスに分類するステップ、ここで、当該分類結果はテネイシンCのレベル及び群馬スコアの点数に依存しており、テネイシンCのレベルが高いクラス、及び、群馬スコアの点数が高いクラスは、被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性が低いことを示す;及び
(j)当該大量免疫グロブリン療法反応クラスの一つに属する患者に特異的な既知の性質から被験者の大量免疫グロブリン療法への反応を予測するステップを含む方法に関する。
本明細書において、「大量免疫グロブリン療法反応クラスのうち一つのクラスに分類する」とは、被験患者由来の試料におけるTnCレベル等に応じて当該被験患者をグループ分けすることを意味する。当該グループ分けは、絶対的又は相対的な指標により振り分けることができる。例えば、対象患者のTnCや群馬スコアの定量値から、当該患者を予め決められたTnCや群馬スコアの定量値を示すグループに振り分けることにより行ってもよいし、又は、対象患者を含む不特定の患者群におけるTnCレベル等を定量した上で、相対的な定量レベルの差から、患者を2以上のグループに分けてもよい。また、クラス分けは、炎症性動脈瘤形成症候群を罹患していない対象におけるTnCレベル等との差の大小を指標として行ってもよい。好ましくは、比較した場合にTnCの定量値が多い(レベルが高い)、又は群馬スコアが高いほど大量免疫グロブリン療法への反応性が低いの可能性が高いクラスに分類される。
大量免疫グロブリン療法への反応性の判定は、それにより大量免疫グロブリン療法の適用による患者の状態の経過又は転帰を予測することを意味し、当該適用による患者の状態の経過又は転帰を100%の正確さで予測可能であることを意味するものではない。大量免疫グロブリン療法への反応性の判定は、当該大量免疫グロブリン療法の適用により、ある経過又は転帰が起こる可能性が増大しているか否かを意味するものであり、当該経過又は転帰が起こらない場合を基準として起こりやすいことを意味するものではない。即ち、大量免疫グロブリン療法への反応性の判定結果は、TnCレベルが減少している患者において、そのような特徴を示さない患者に比較して、大量免疫グロブリン療法の適用により特定の経過又は転帰がより生じにくいということを意味する。また、本発明の予測方法における分析は、定性的、定量的または半定量的に行うことができる。
本発明の方法において、TnCの測定は、抗体分子を用いた公知の方法に基づき行うことができる。このような方法としては、例えば、酵素免疫測定法(EIA法)、簡易EIA法、酵素結合イムノソルベントアッセイ法(ELISA法)、ラジオイムノアッセイ法(RIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)等の標識化免疫測定法;ウェスタンブロッティング法等のイムノブロッティング法;金コロイド凝集法等のイムノクロマト法;イオン交換クロマトグラフィ法、アフィニティクロマトグラフィ法等のクロマトグラフィ法;比濁法(TIA法);比ろう法(NIA法);比色法;ラテックス凝集法(LIA法);粒子計数法(CIA法);化学発光測定法(CLIA法、CLEIA法);沈降反応法;表面プラズモン共鳴法(SPR法);レゾナントミラーディテクター法(RMD法);比較干渉法等を挙げることができる。
本発明の方法をサンドイッチELISAにより実施する場合には、例えば、固相に固定化されたTnCに特異的に結合する抗体に被験試料を接触させ、洗浄後、TnCに特異的に結合する標識抗体を添加して非結合抗体を洗浄により除去した後、当該抗体の標識を検出又は定量することにより行うことができる。また、イムノクロマトにより行う場合には、固定化されていないTnCに特異的に結合する標識抗体に被験試料を接触させた後、当該混合物をTnCに特異的に結合する別の抗体が特定部位に固定化された担体と接触させ、当該部位における標識抗体の集積を検出又は定量することにより行うことができる。
これらの方法においては、予め適宜既知の濃度に段階希釈されたTnC標準物質を用いて検量線を作成し、検体中の測定値から当該検量線を基にTnCの濃度を計算して求めてもよい。また、必要に応じて、被験者由来の体液に加えて、発症しなかった患者由来の体液又は発症しないと信じられている患者由来の体液をネガティブコントロールとして、同様にTnCの濃度を測定してもよいし、かつ/あるいは、発症した患者又は発症することが知られている患者由来の体液をポジティブコントロールとして、同様にTnCの濃度を測定してもよい。検出又は定量は、レベルにより行われるのが一般的であるが、炎症性動脈瘤形成症候群との関連付けが発症指標としてのTnCの閾値レベルを超えるか否かに依存する場合には、閾値レベルを超えるか否かを検出してもよい。なお、本明細書において、レベルとは、数値化される指標を意味し、例えば、濃度あるいはその代わりとして用いることができる指標を意味する。よって、レベルは蛍光等の測定値そのものであってもよいし、濃度に換算された値であってもよい。
本明細書において「被験者由来の体液」又は「患者由来の体液」は、TnCが検出できる体液であれば特に限定されないが、例えば、血液、血漿、血清、リンパ液、尿、漿液、髄液、関節液、眼房水、涙液、唾液またはそれらの分画物若しくは処理物等を挙げることができる。検出用検体は、患者から採取した検体の種類及び検出方法に応じて適宜調製することができる。例えば、そのまま検出に使用する場合、適宜遠心分離、希釈等により検出用検体を調整してもよい。また、血液のように患者から採取した検体中に検出を阻害する物質が含まれる場合には、前処理(例えば、プロテインGカラムによるイムノグロブリン除去)によって阻害物質を除去/不活化して検出用検体を調整してもよい。
(抗体)
本発明の抗体は、以下の方法により得ることができる。まず、本発明の抗体の作製に使用する免疫原は、当業者周知の方法に従い、TnCの全部、又はその一部を有するポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクター(例えば、pGEX(大腸菌用)、pcDNA3.1(動物細胞発現用)等)を大腸菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞等に形質転換し、形質転換した大腸菌等の宿主微生物・培養細胞を適切な培地(例えば、LB培地等)で培養して発現させることにより得ることができる。また、当該配列を有するペプチドを化学合成したものを用いることも可能である。ポリクローナル抗体は、十分な抗体価を示す免疫感作動物の血清から精製することにより得ることができる。モノクローナル抗体の作製は、上記方法により免疫した免疫感作動物の脾臓等から得た抗体産生細胞と、骨髄腫系細胞(ミエローマ細胞)を融合することにより得られるハイブリドーマを培養することにより得ることができる。当該融合方法としては、例えば、ミルステインらの方法(Galfre、G.&Milstein、C.、Methods Enzymol.73:3−46、1981)を挙げることができる。
(抗体断片の作製)
F(ab’)断片(分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片)は、本発明のIgG抗体をペプシンで処理することにより、H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断して得ることができる。Fab’断片は、上述の方法により得られたF(ab’)をジチオスレイトール処理して得ることができる。また、本発明のFab’断片は、本発明の抗体のFab’をコードするDNAから得ることができる。Fab断片(H鎖のN末端側の約半分の領域とL鎖の全領域がジスルフィド結合により結合された分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片)は、本発明の抗体をパパインで処理することにより、H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断して得ることができる。また、本発明のFab断片は、本発明の抗体のFabをコードするDNAから得ることができる。scFvは、本発明の抗体のVH及びVLをコードするcDNAの間にリンカー配列をコードするDNAを挿入して、scFvをコードするDNAを構築することにより得ることができる。リンカーの長さは、VHとVLが会合することができる長さであれば特に限定は無いが、好ましくは10〜20残基であり、より好ましくは15残基である。また、リンカーの配列は、VHとVLの二つのドメインのポリペプチド鎖の折りたたみを阻害しないものであれば特に限定は無いが、好ましくは、グリシン及び/又はセリンからなるリンカーであり、より好ましくは、GGGGS(G:グリシン、S:セリン)又はその繰り返し配列である。dsFvは、VH及びVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換し、当該システイン残基間をジスルフィド結合により結合させることにより得ることができる。Diabodyは、上述のscFvをコードするDNAにおいて、リンカーのアミノ酸配列が8残基以下(好ましくは5残基)となるように構築することにより得ることができる。バイスペシフィックなDiabodyは、異なる2種類のscFvのVH及びVLのDNAを組み合わせてscFvを作製することにより得ることができる。本発明のCDRを含むペプチドは、本発明の抗体のVH又はVLのCDRのアミノ酸配列を有するペプチドとして設計することにより得ることができる。
(標識)
本発明の抗体は、必要に応じて標識化されていてもよい。当該標識としては、放射能標識、酵素、蛍光標識、生物発光標識、化学発光標識金属等の検出可能な標識を用いることができる。このような標識としては、これに限定されるものではないが例として、32P、H、125I、14C等の放射能標識;βガラクトシダーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、グルコースオキシダーゼ、乳酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、モノアミンオキシダーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ等の酵素;FAD、FMN、ATP、ビオチン、ヘム等の補酵素又は補欠分子族;フルオレセイン誘導体(フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、フルオレセインチオフルバミル等)、ローダミン誘導体(テトラメチルローダミン、トリメチルローダミン(RITC)、テキサスレッド、ローダミン110等)、Cy色素(Cy3、Cy5、Cy5.5、Cy7)、Cy−クロム、スペクトラムグリーン、スペクトラムオレンジ、プロピジウムイオダイド、アロフィコシアニン(APC)、R−フィコエリスリン(R−PE)等の蛍光標識;ルシフェラーゼ等の生物発光標識;あるいは、ルミノール、イソルミノール、N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノースエステル等のルミノール誘導体、N−メチルアクリジニウムエステル、N−メチルアクリジニウムアシルスルホンアミドエステル等のアクリジニウム誘導体、ルシゲニン、アダマンチルジオキセタン、インドキシル誘導体、ルテニウム錯体等の化学発光標識;金コロイド等の金属等の検出可能な標識を挙げることができる。
抗体又はその断片への標識の結合は当分野において一般的な方法により行うことができる。例えば、タンパク質又はペプチドを蛍光標識する場合、タンパク質又はペプチドをリン酸緩衝液で洗浄した後、DMSO、緩衝液等で調整した色素を加え、混合した後室温で10分間静置することにより結合させることができる。また、市販の標識キットとして、ビオチン標識キット(Biotin Labeling Kit−NH2、Biotin Labeling Kit−SH:株式会社同仁化学研究所)、アルカリフォスファターゼ標識用キット(Alkaline Phosphatase Labeling Kit−NH2、Alkaline Phosphatase Labeling Kit−SH:株式会社同仁化学研究所)、ペルオキシダーゼ標識キット(Peroxidase Labering Kit−NH2、Peroxidase Labering Kit−NH2:株式会社同仁化学研究所)、フィコビリプロテイン標識キット(Allophycocyanin Labeling Kit−NH2、Allophycocyanin Labeling Kit−SH、B−Phycoerythrin Labeling Kit−NH2、B−Phycoerythrin Labeling Kit−SH、R−Phycoerythrin Labeling Kit−NH2、R−Phycoerythrin Labeling Kit−SH:株式会社同仁化学研究所)、蛍光標識キット(Fluorescein Labeling Kit−NH2、HiLyte Fluor(登録商標)555 Labeling Kit−NH2、HiLyte Fluor(登録商標)647 Labeling Kit−NH2:株式会社同仁化学研究所)、DyLight547、DyLight647(テクノケミカル株式会社)、Zenon(登録商標)Alexa Fluor(登録商標)抗体標識キット、Qdot(登録商標)抗体標識キット(インビトロゲン社)、EZ−Label Protein Labeling Kit(フナコシ株式会社)等を用いて標識することもできる。また、標識した抗体又はその断片の検出は、適宜標識に適した機器を使用することにより行うことができる。
また、本明細書のTnCと特異的に結合する抗体において、抗体とTnCとの結合は、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、免疫組織化学染色、及びELISAのいずれの方法により確認されるものであってもよいが、好ましくは、免疫沈降又はELISAであり、最も好ましくはELISAである。よって、本明細書のTnCと特異的に結合する抗体として、好ましくは、免疫沈降又はELISAによりTnCを検出可能な抗体である。より、好ましくは、本明細書のTnCと特異的に結合する抗体は、ヒト体液(好ましくは血液、血漿、血清又は尿中のTnCを免疫沈降又はELISAにより検出可能な抗体である。
本明細書において、ウェスタンブロッティングは、TnCのcDNAが導入されたCHO細胞、及びその培養液を、2% SDS、10% グリセロール、50mM Tris−HCl(pH6.8)、100mM ジチオスレイトール溶液中に溶解し、煮沸して抗His抗体及び抗体(被験抗体、TnCと特異的に結合する抗体等)によりウェスタンブロット分析を行うことにより確認することができる。
本明細書において、免疫沈降は、免疫沈降ウェスタンブロッティング分析により行うことができる。具体的には、TnCトランスフェクタントの上清を抗体(被験抗体、TnCと特異的に結合する抗体等)と共にインキュベートし、共にプロテインG セファロース(GEヘルスケアジャパン)を添加する、更にインキュベートした後、遠心分離を行い、得られたペレットを三回洗浄する。次いでペレットを溶解し、別の抗TnC抗体を用いてウェスタンブロット分析を行うことにより、確認することができる。
本明細書において、免疫組織化学染色は以下の方法により行うことができる。血管を含む組織を4%パラホルムアルデヒド中で3〜5日間固定化し、パラフィンに包埋し、常法に従ってミクロトーム上で5μm厚に切断する。組織切片からパラフィンを除去し、水和させ、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄後、ギ酸で短時間処理する。内因性の過酸化を防ぐため、3%過酸化水素含有メタノール中で静置後、10%正常ヤギ血清含有PBSで切片をブロックし、抗体(被験抗体、TnCと特異的に結合する抗体等)と共に4℃で一晩静置する。その後、ビオチン化第二抗体と共に室温で30分間静置する。免疫反応性は、ABC Eliteキット(Vector Laboratories社)などを用いて製造者のプロトコルに従って可視化する。3、3’−ジアミノベンジジンを色原体として使用し、切片はヘマトキシリンで対比染色することにより確認することができる。
(キット)
本発明のキットは、上述の方法に従って作製した抗体(又は標識化した抗体)を用いて、酵素免疫測定法(EIA法)、簡易EIA法、酵素結合イムノソルベントアッセイ法(ELISA法)、ラジオイムノアッセイ法(RIA法)、蛍光免疫測定法(FIA法)等の標識化免疫測定法;ウェスタンブロッティング法等のイムノブロッティング法;金コロイド凝集法等のイムノクロマト法;イオン交換クロマトグラフィ法、アフィニティクロマトグラフィ法等のクロマトグラフィ法;比濁法(TIA法);比ろう法(NIA法);比色法;ラテックス凝集法(LIA法);粒子計数法(CIA法);化学発光測定法(CLIA法、CLEIA法);沈降反応法;表面プラズモン共鳴法(SPR法);レゾナントミラーディテクター法(RMD法);比較干渉法用のキットとして当業者に慣用の技術を用いて製造することができる。
以下、本発明をより詳細に説明するため実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本願全体を通して引用される全文献は参照によりそのまま本願に組み込まれる。
以下の実施例においては、臨床試験の実施に際し、患者および家族に対して説明資料を参考に説明し、自由意思による同意を文書で得た。なお、同意書は保管し、同意年月日を症例記録に記載した。本試験は「ヘルシンキ宣言に基づく倫理的原則」および「臨床研究に関する倫理指針−厚生労働省告示」の精神に基づき、被験者の人権および福祉を守り、試験の科学的な質と信頼性および安全性を確保するためにGCP基準を遵守のうえ実施した。三重大学、国立国際医療研究センター、福岡大学、久留米大学、富山大学は厚生省倫理規定に基づき所属施設内に倫理委員会がすでに設置されており、かつ、本研究は事前に各施設での倫理委員会で倫理面からの審査を受けた。血液検体のセキュリテイに関しては、識別コード記載した連絡表と採血管により連結可能な匿名化するシステムを構築した。マウス実験は、福岡大学、山口大学、三重大学の指定された管理区域内で行うこととしており、生命倫理・安全対策に対する取り組みが確保されている。本実験計画は、指針に基づき各大学動物実験委員会で承認された。
以下の実験において、サンプル中のTnC値は、Human Tenascin−C Large(FNIII−C)Assay Kit−IBL(タカラバイオ Takara Code IB3062)を用いてELISA法で測定した。また、サンプル中のCRP値は、ニットーボーメディカル株式会社、N−アッセイ LA CRP−Sニットーボーを用いて、ラテックス比濁法により測定した。また、サンプル中のBNP値は、東ソー株式会社、Eテスト「TOSOH」II(BNP)を用いて、EIA(ワンステップサンドイッチ)法により測定した。WBC及び好中球は、自動血球計を用いて測定した。
(実施例1)後ろ向き研究−血中バイオマーカー測定
三重大学、国立国際医療研究センター、久留米大学、富山大学に入院した発熱症例のうち、倫理申請で利用の承認が得られ、臨床経過、画像診断による血液サンプルが保存されている川崎病患者140症例(439検体)が登録された。患者の血中バイオマーカーの測定には、患者から採血後、血清分離し、−80度で凍結保存したサンプルを使用した。
測定されたTnCの血中濃度について、経時的変化、投薬歴、治療反応性、冠動脈瘤形成との相関の解析を行った。冠動脈拡大および瘤を認めた症例を冠動脈病変(Coronary Artery Lesion:CAL)(+)群とし、CAL(―)群は冠動脈病変を認めなかった症例と30日以内に系の正常化を認める一過性拡大の症例とした。また、初回治療で超大量免疫グロブリン療法(IVIG)を行ったが、不応もしくは再燃のため追加治療を必要とした症例をIVIG不応群とした。初回治療において標準治療であるIVIG+アスピリンにステロイドなどを追加した症例は除いた。相関の有無はStudentのt検定、Mann−Whitneyの検定、χ2乗検定を行い、p<0.05の場合に統計学的有意差ありとした。
患者背景を表1に示す。7例が30日以内に正常化する冠動脈の一過性拡大を示した。また、107例は大量免疫グロブリン療法IVIG反応群、25例が不応群に分類された。血中TnC値の測定結果を図1に示す。血中濃度は急性期に有意に高値を示し、回復期に低下した(図1A)。他のバイオマーカーとの比較としてTnCとCRP、WBC、好中球、及びBNPとの相関の解析を行った。それぞれの結果を図1B〜図1Eに示す。TnCとCRP、WBC、好中球、及びBNPとの間には有意な相関は認めなかった(図1B)従って、TnCは、従来のバイオマーカーとは異なる指標であると考えられる。
冠動脈病変とTnC値との関係を図2Aに示す。治療前、初回治療後(第9−15病日)、回復期、いずれの時期においても、CAL(+)群ではCAL(−)群よりもTnC値が高い傾向を示した。CALを形成した症例のうち2例は、初回治療前、9〜15病日、回復期の3点で全てTnCを測定できたが、経時変化の特徴は明らかではなかった。大量免疫グロブリン療法不応性の予測とTnC値の関係を図2Bに示す。IVIG不応例では、反応した症例に比べて初回治療前のTnC値が高い傾向を示した。IVIG不応群のうち12例でTnC値を3点で測定できた。10例はIVIG反応群同様、回復期にかけて減少したが、2例で9〜15病日あるいは回復期にTnC値が上昇を認めた。IVIG有効例と無効例の各患者のTnC値の経時変化を図2Cに示す。IVIG有効例・無効例ともに多くの症例においてTnC値は急性期に高値を示し、経過とともに低下した。一部の症例では第9〜15病日にTnC値が一過性に上昇した。
(実施例2)後ろ向き研究−ヒト冠動脈瘤病変組織
国立循環器病研究センターおよび東京女子医大で保存している冠動脈拡張、瘤形成のみられた川崎病剖検標本で、HE、Elastica Vangieson染色および、TnC、MMP−9、CD68、a−平滑筋アクチンを免疫組織染色し、炎症細胞浸潤、エラスチン線維破壊などの組織像と対比した。
ヒト冠動脈瘤病変組織川崎病発症79日あるいは1年3ヶ月後に急性心筋梗塞で死亡した1才の患者2症例の剖検標本で、冠動脈組織変化およびTnCの組織発現を解析した。冠動脈は径約1cmに拡張し、中膜に平滑筋の残存はみられたが、弾性線維の断裂、消失が顕著であり、1年3ヶ月後に死亡した症例では、膠原線維が形成され瘢痕化していた。内腔には、新生内膜が形成され、器質化を伴う比較的古い血栓、および、死因の急性心筋梗塞簿原因となった新鮮血栓形成がみられた。しかし、いずれも、血管壁にはマクロファージ、リンパ球など炎症細胞浸潤、MMP9の発現はほとんどみられなかった。TnCは血栓の器質化に伴う血管新生に伴って発現が確認された。
(実施例3)動脈炎/動脈瘤マウスモデル
カンジダ・アルビカンス標準株保存菌液を培養、集菌、0.5N KOH溶液で煮沸してアルカリ抽出液とし、PBSにて100mg/mLに調整した。4週令のC57BL/6系オスマウスにカンジダ抽出液2mg、4mgを腹腔内5日間連続投与、4週おきに2クール行い、初回投与後8週後に犠牲死させ、大動脈とその主要分枝、心臓、冠動脈を肉眼観察した後、4%パラホルムアルデヒドを定圧還流固定した。大動脈、心臓を摘出し、パラフィン標本を作製した。炎症細胞浸潤(HE染色)、エラスチン線維破壊の解析、TnCの発現を検討した。
結果を図4に示す。カンジダ抽出液4mg投与群では6例中4例で大動脈病変、総腸骨動脈、頸動脈に肉眼的に瘤様病変を認めた(図4a)。組織所見では、強い血管周囲結合織炎および血管壁全層に強い炎症細胞浸潤、中膜弾性線維の断裂、破壊像がみられたが、この時期には内腔の拡大はみられなかった。投与量2mg(6匹)ではモデル作成中に1匹が死亡し、残り5匹は大動脈に肉眼的に著変を認めなかったが、組織学的には3例に大動脈に汎血管炎を認め、2例で冠動脈起始部に血管周囲結合織炎、新生内膜形成を伴う汎血管炎、中膜弾性線維の断裂、破壊を認めた(図4b)。免疫染色の結果を図5に示す。血管壁、血管外膜周囲結合織の活動性炎症変部にTnCの著明な発現、沈着が認められた(図5、矢印)。
(実施例4)群馬スコアと初回治療前のTnC値を組み合わせた予測
川崎病において患者背景および初回治療前の検査データから標準治療(大量免疫グロブリン療法+アスピリン内服)への不応性を予測する場合、従来使用されている群馬スコア単独よりも、群馬スコアに初回治療前のTnC値を組み合わせた方が予測精度が向上するか否かについて、検討するため、川崎病患者140症例のうち、初回治療として標準治療が行われ、かつ初回治療前のTnC値および群馬スコアを調べ得た58症例について検討した。
結果を図6に示す。川崎病において患者背景および初回治療前の検査データから標準治療(大量免疫グロブリン療法+アスピリン内服)への不応性を予測する場合、従来使用されている群馬スコア単独よりも、群馬スコアに初回治療前のTnC値を組み合わせた方が予測精度が向上した。
血中TnC濃度は、川崎病急性期に高値を示し、回復期に低下したが、CRPとの相関は認められなかった。従って、TnCは単なる炎症マーカー以上の新たな病態マーカーと考えられた。興味深いことに、冠動脈瘤を形成する症例や、超大量免疫グロブリン療法不応例は、TnC値が高い傾向にあった。また、血管病変部位でのTnCの発現は動物モデルでは認められたが、今回入手できたヒト剖検症例で認められなかったのは、すでに組織学的には回復期にあり、TnCの発現がすでに消失していたためと考えられる。

Claims (14)

  1. 炎症性動脈瘤形成症候群を判定するための情報を得る方法であって、採取された被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップを備える方法。
  2. 炎症性動脈瘤形成症候群を判定するための情報を得る方法であって:
    (a)採取された被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ;及び、
    (b)テネイシンCのレベルが高い場合、該被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していると評価することに基づき情報を得るステップを備える、請求項1に記載の方法。
  3. 炎症性動脈瘤形成症候群を判定するための情報を得る方法であって、以下のステップを備える方法:
    (a)少なくとも1つのテネイシンCと特異的に結合する抗体に、採取された被験者由来の体液を接触させるステップ;
    (b)被験者由来の体液中のテネイシンCの前記抗体への結合を検出して採取された被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ;
    (c)被験者由来の体液中のテネイシンCのレベルから被験者の炎症性動脈瘤形成症候群発症に関する情報を得るステップ、
    ここで、テネイシンCレベルが高いことは、被験者が炎症性動脈瘤形成症候群を発症していることを示す方法。
  4. 採取された被験者由来の体液が、血液、血漿、血清、又は尿である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の方法。
  5. テネイシンCと特異的に結合する抗体又は該抗体の断片を含有し、前記抗体の断片がF(ab’) 、Fab’、Fab、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)若しくはこれらの重合体、二量体化V領域(Diabody)、及びCDRを含むペプチドから選択された断片である、炎症性動脈瘤形成症候群の判定薬。
  6. テネイシンCと特異的に結合する抗体を含有し、(i)テネイシンCと特異的に結合する第一抗体が固定化した固相又はハプテン、及び(ii)テネイシンCと特異的に結合する標識化された第二抗体を含む、炎症性動脈瘤形成症候群の診断用キット。
  7. 炎症性動脈瘤形成症候群患者である被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測するための情報を得る方法であって、採取された被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップを備える方法。
  8. 炎症性動脈瘤形成症候群患者である被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測するための情報を得る方法であって:
    (a)被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ;及び、
    (b)テネイシンCのレベルが高い場合、該被験者が大量免疫グロブリン療法に不応であると予測するための情報を得るステップを備える、請求項7に記載の方法。
  9. 炎症性動脈瘤形成症候群患者である被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測するための情報を得る方法であって:
    (a)採取された被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ;
    (b)テネイシンCのレベルから、大量免疫グロブリン療法反応クラスのうち一つのクラスに分類するステップ、ここで、当該分類結果はテネイシンCのレベルに依存しており、テネイシンCのレベルが高いクラスは、被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性が低いことを示す;及び
    (c)当該大量免疫グロブリン療法反応クラスの一つに属する患者に特異的な既知の性質から被験者の大量免疫グロブリン療法への反応を予測するステップを含む方法。
  10. 採取された被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップが、
    (i)少なくとも1つのテネイシンCと特異的に結合する抗体に採取された被験者由来の体液を接触させるステップ;
    (ii)採取された被験者由来の体液中のテネイシンCの前記抗体への結合を検出して被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップを含む、請求項8又は請求項9に記載の方法。
  11. 被験者由来の体液が、血液、血漿、血清、又は尿である、請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の方法。
  12. テネイシンCと特異的に結合する抗体又は該抗体の断片を含有し、前記抗体の断片がF(ab’) 、Fab’、Fab、一本鎖Fv(scFv)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)若しくはこれらの重合体、二量体化V領域(Diabody)、及びCDRを含むペプチドから選択された断片である、炎症性動脈瘤形成症候群患者である被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性予測用薬剤。
  13. テネイシンCと特異的に結合する抗体を含有し、(i)テネイシンCと特異的に結合する第一抗体が固定化した固相又はハプテン、及び(ii)テネイシンCと特異的に結合する標識化された第二抗体を含む、炎症性動脈瘤形成症候群患者の大量免疫グロブリン療法への反応性予測キット。
  14. 炎症性動脈瘤形成症候群患者である被験者の大量免疫グロブリン療法への反応性を予測する方法であって:
    (a)被験者由来の体液中のテネイシンCを測定するステップ;
    (b)被験者由来の血液中のNa濃度を測定するステップ;
    (c)被験者由来の血液中のAST濃度(IU/L)を測定するステップ;
    (d)被験者由来の血液中の好中球(%)を測定するステップ;
    (e)被験者由来の血液中のCRP濃度を測定するステップ;
    (f)被験者由来の血液中の血小板数(/μL)を測定するステップ:
    (g)上記Na、AST、好中球、CRP、血小板数、被験者の治療開始(診断)病日が4病日以前であるか否か、被験者の月齢が12か月以下であるか否かを群馬スコアにしたがって点数化して群馬スコア(点)を計算するステップ;
    (h)テネイシンCのレベルが高く、かつ、群馬スコアが一定以上である場合、該被験者が大量免疫グロブリン療法に不応であると予測するステップを備える方法。
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