JP4176278B2 - セラミックス多孔体及びその製造方法 - Google Patents

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    • C04B38/10Porous mortars, concrete, artificial stone or ceramic ware; Preparation thereof by using foaming agents or by using mechanical means, e.g. adding preformed foam

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、セラミックス多孔体を製造する技術に関し、詳しくは、孔部の分布形態が高度に制御され、また、新規な多孔構造が付与された、セラミックス多孔体を製造する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、セラミックス多孔体の製造方法が各種知られているが、大きく以下の4つの方法に分類することができる。
第1の方法は、セラミックス粉体(μmオーダー程度)を不完全な焼成により、粉体サイズ程度の気孔を有するセラミックス多孔体とする方法である。この方法は、緻密体の作製を目的とした焼成プロセスに対して、焼成を低温・短時間に設定するものである。この方法によれば、原料の粉体サイズで気孔径を制御でき、異なる粒径の原料を用いることにより、気孔径に分布あるいは傾斜を持た多孔体を得ることができる。しかしながら、この方法で得られる多孔体では、気孔径が大きくてもμm程度であること、および不完全な焼結により低強度であるという欠点がある。
【0003】
第2の方法は、セラミック原料あるいはセラミックススラリーに有機物を混合し、脱脂、焼成プロセスにおいて有機物を除去する方法である。この方法は、含有有機物の量で気孔率を制御し、有機物のサイズで気孔径をある程度制御できるが、気孔径分布を制御することは難しい。
第3の方法は、セラミックススラリーに起泡剤により気泡を含有させたり、あるいは、スラグやマグネシウム等の金属を反応させて水素や二酸化炭素等のガスを発生させて気泡を含有させたりする方法である。この方法では、気孔を集合させて、傾斜気孔を形成する方法が提案されており、数十μmから1000μm程度の気孔サイズの傾斜が報告されている。
第4の方法は、3次元の網目構造を有機物で形成し(一般にウレタン樹脂)セラミックススラリーをその有機物に含浸させた後、焼成して多孔体を得る方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
これらの方法によって得られるセラミックス多孔体は、いずれも、その開気孔率や機械的強度が実質的な用途においては必ずしも十分ではなかった。また、上記した方法では、孔の分布形態の制御性も不十分であった。
そこで、本発明は、新規な多孔形態を有するセラミックス多孔体を提供することにより、上記した課題を解決することを目的とする。また、本発明は、孔分布形態の制御性の良好なセラミックス多孔体を提供することをその目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記した課題を解決する手段として、本発明者らは、以下の発明を完成した。
すなわち、本発明は、
セラミックスマトリックスと、
前記セラミックスマトリックスで区画される複数の孔部と、
前記マトリックス内に形成されるセラミックス粒子間孔部、
とを備える、セラミックス多孔体を提供する。
このセラミックス多孔体によると、セラミックスマトリックスで区画される孔部(以下、マトリックス間孔部ともいう。)と、マトリックス内に形成されるセラミックス粒子間孔部(以下、マトリックス内孔部ともいう。)とを備えるため、高い気孔率が得られやすい多孔形態となっている。また、かかる多孔形態によれば、マトリックス内孔部が全体の気孔率に寄与するために、相対的にマトリックス間孔部の気孔率を多孔体の機械的強度を維持可能に調整可能となっている。
【0006】
さらに、本発明では、セラミックス多孔体であって、
表層と、この表層に連続する内層とを備え、
前記表層のかさ比重は、前記内層の2.5倍以上8.5倍以下である、セラミックス多孔体を提供する。
このセラミックス多孔体によれば、表層と内層とに異なる特性が付与される。
【0007】
さらに、本発明は、難燒結性のセラミックス粉末を有する含気泡セラミックススラリーをゲル化して得たゲル状多孔質成形体を、乾燥、脱脂、焼成して、セラミックス多孔体を得る、セラミックス多孔体の製造方法を提供する。
この方法によると、含気泡セラミックススラリー中の気泡が、ゲル化によって、ゲル中に保持され、ゲル状多孔質成形体が得られる。気泡を保持したゲル状多孔質成形体を脱型し、乾燥、脱脂、焼成することにより、ゲル状多孔質成形体によって保持された状態で気孔が分布した難焼結性のマトリックスを有するセラミックス多孔体が得られる。
この方法によると、新規な多孔形態のセラミックス多孔体が得られる。また、孔分布形態を制御するのが容易である。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の実施形態として、本発明の多孔体を図1ないし図3に示す構造を例示して詳細に説明する。また、本発明の多孔体の製造方法を、図4に示す工程を例示して詳細に説明する。
【0009】
(セラミックス多孔体)
図1に、本発明のセラミックス多孔体の断面構造を示す。
本発明のセラミックス多孔体2は、図1ないし図3に示すように、セラミックスマトリックス4と、セラミックスマトリックス4で区画される複数の孔部10と、マトリックス4内に形成されるセラミックス粒子間孔部20とを有している。
【0010】
セラミックスマトリックス4は、公知の酸化物系または非酸化物系のセラミックスや、粘土鉱物等で構成される。マトリックス4は、これらのセラミックス成分が単独であるいは2種以上が組み合わされて構成される。酸化物系セラミックスとしては、アルミナ系、ムライト系、ジルコニア系等を挙げることができ、非酸化物系セラミックスとしては、炭化ケイ素系、窒化ケイ素系、窒化アルミニウム系、窒化ホウ素系、グラファイト系等を挙げることができる。
【0011】
マトリックス4は、難焼結性のセラミックスで構成されることが好ましく、より好ましくはいわゆるガラスセラミックスで構成される。ガラスセラミックスとは、具体的には、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、及びリシア・アルミナ・シリカ系化合物から選択される酸化物系材料を含有し、難焼結性を示すセラミックスである。ガラスセラミックスでマトリックスが構成されていると、熱膨張係数が小さく、しかもマトリックス中に多数の粒子間気孔を容易に形成させることができるため、通気特性に優れた高耐熱衝撃性分離フィルターが得られるという点において好ましい。
また、マトリックス4は、耐熱衝撃性の高いセラミックスで構成されることも好ましい。例えば、炭化珪素、窒化ホウ素等を含有するセラミックスである。
【0012】
複数の孔部10がマトリックス4で区画されて存在している。換言すれば、マトリックス4に分散して孔部10が存在している。孔部10の存在形態は、他の孔部10との関係においてマトリックス4において独立して存在する場合もあり、他の孔部10と連接等することにより外部と連通する連続状として存在する場合もある。孔部10が多くなれば、連続形態の割合が増加する。本発明においては、連続状の孔部10が主として存在することが好ましい。
【0013】
孔部10の形状は、特に限定しないが、主として略球状である。
孔部10の孔径は、3000μm以下であることが好ましく、より好ましくは、10〜1000μmである。また、その孔径を均一に分布させるか傾斜分布させるかは用途に応じて設定されるが、集塵などの固液ろ過用としては、孔部10の孔径が500μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0014】
特に、本多孔体2を、集塵等の固気ろ過用、水質浄化処理等の固液ろ過用に用いる場合には、孔部10の孔径は500μm以下であることが好ましい。また、溶融金属鋳造などの固液ろ過用では、孔部10の孔径が500μm以上であることが好ましく、より好ましくは1000μm以上である。
【0015】
多孔体2における孔部10の分布は、傾斜配向されていることが好ましい。ここで傾斜配向とは、孔部10の数及び/又は孔径が方向性をもって変化していることを意味する。また、傾斜配向は、連続的あるいは不連続的(段階的)な傾斜であってもよい。特に、固気ろ過等に用いるフィルター用途には、孔径が傾斜していることが好ましい。触媒担体材料用途には、孔数の傾斜が好ましい。
【0016】
孔部10の傾斜配向の結果、多孔体2のマトリックス4には、同一マトリックス4内でありながら、形態上区別可能な異なる領域が付与される場合がある。すなわち、傾斜配向によって形態上認識できる界面がマトリックス4に形成される場合がある。ここで、形態上区別可能とは、肉眼で区別可能な場合の他、顕微鏡等を用いて区別可能な場合も包含するものである。
なお、このような異なる領域が多孔体2においてどの部位に形成されるかは問わないが、例えば、表層とそれに連続する内層に形成されていることが好ましい。
【0017】
表層と内層とは、例えば、かさ密度、孔部10の気孔率や気孔容積、孔部10の孔径のうち1種あるいは2種以上が異なる結果、異なる領域として区別される。また、これらに他の要因が付与される場合もある。かさ密度で区別される場合、表層が、内層の2.5倍以上8.5倍以下であることが好ましい。かかる範囲のかさ密度で区別される場合、適度な表面孔部傾斜構造が形成される。2.5倍未満であれば、内層の孔部が少なすぎる好ましい孔部傾斜構造が得られ難く、8.5倍を超えると、表層が緻密すぎて好ましい孔部傾斜構造がえられにくいからである。いずれの場合においても、通気性、軽量性等の多孔質体の特性が損なわれやすい。
表層はその厚みは限定しないが、100μm以上500μm以下であることが好ましい。集塵用フィルター等の分離フィルターにおいては、この範囲の表層を有していることにより、この表層をダスト側に設置することにより、ダストの払い落とし間隔を顕著に延長させることができる。また、同時に、フィルター内ダストの堆積量も顕著に低減させることができる。
一例として、図2に、表層46と内層48とを備える多孔体2の断面構造を示す。図2においては、表層46では、孔部10がほとんど存在せず、実質的にマトリックス4が占めている。
【0018】
このように形態上区別可能な領域が表層を構成する場合、当該表層を厚膜状組織あるいは緻密質組織ということもできる。
このような区別される領域は、3種以上形成されていてもよい。表層、内層、さらにその内層という3層以上に形成されていてもよいし、そのほかの形態であってもよい。
【0019】
図3に、多孔体2の孔部10の内壁におけるマトリックス4の表面を拡大して示す。
図3に示すように、マトリックス4内には、セラミックス粒子間孔部20が存在している。孔部20は、マトリックス4中のセラミックス粒子22が部分的に結合して得られるセラミックス粒子22間の間隙に相当する。多孔体2がセラミックス材料が焼結する温度で焼成されて製造される場合には、マトリックス4中のセラミックス粒子22は焼結されている。焼結の程度により、粒子22の大きさも変化し、孔部20の径や数も変化するが、セラミックス粒子22間に形成される当該孔部20の形態は維持される。
この場合、セラミックス粒子22は、その粒径が10μm以下であることが好ましい。かかる粒径以下であると、スラリー中での粉末分散性が向上するばかりでなく、焼結性も向上し、この結果、多孔構造が容易に制御されるからである。
【0020】
孔部20は、孔部10の内壁部及びそれ以外のマトリックス4において存在している。このため、孔部20により、連接しない孔部10間が連通状態となっていることが多い。
孔部20の孔径は、10μm以下であることが好ましい。マトリックスが高強度に維持されるからである。より好ましくは3μm以下である。
【0021】
多孔体2は、全体として、50%以上の気孔率(ここでは開気孔及び閉気孔を含む全気孔率を意味する。)を有していることが好ましい。より好ましくは、65%以上である。
全気孔率は、以下に示す計算式によって求められる。
すなわち、全気孔率(%)=(1−嵩密度/真密度)×100
(ただし、嵩密度=試料の重量/(試料の体積)である。)
また、真密度は、例えば、極めて微粉化した試料の任意量をピクノメータに投入し、所定の容積に至るまで水を注入して煮沸等してボイドを排除した上で、その重さと容積との関係から求めることができる。
多孔体2は、また、60%以上の開気孔率を有していることが好ましい。60%未満であると、通過圧力損失の増大が著しいからである。上限は、好ましくは90%以下である。90%を超えると機械的強度の低下が著しいからである。開気孔率は、より好ましくは、65%以上であり、また、85%以下である。
ここで開気孔率とは、試料の幾何学的(外形的)な(嵩)容積に対する開気孔容積の割合(%)である。開気孔率は、アルキメデス法、水銀ポロシメータ法等により求めることができる。
特に、マトリックス4における孔部20の気孔率は、15%以上であることが好ましい。15%未満では、粒子間孔部20の作用が不十分になるからである。また、上限は、35%以下であることが好ましい。35%を超えては、セラミックスマトリックスの強度が充分に得られないからである。より好ましくは30%以下である。
さらに、全開気孔容積に対する、孔部10の開気孔容積の割合は、70%以上98%以下であることが好ましい。
【0022】
このような気孔率を備える結果、多孔体2は軽量性が付与される。多孔体2のかさ密度は、好ましくは、1.0以下であり、より好ましくは、0.8以下である。
また、多孔体2のマトリックスがコーディエライトである場合、かさ密度は、0.6以上0.9以下であることが好ましい。
【0023】
また、多孔体2は高い機械的強度を備えている。
多孔体2の機械的強度としては、JIS R1601の曲げ強さ試験方法に基づいて測定して得られる3点曲げ強さが5MPa以上であることが好ましい。なお、当該曲げ強さ試験方法で用いる試料片を10×10×50mmとし、スパンを40mmとして測定して得られた曲げ強さであってもよい。より好ましくは、6MPa以上である。
また、熱膨張係数は、7.0×10-6/℃以下であることが好ましく、より好ましくは、3.5×10-6/℃以下である。
【0024】
多孔体2は、上記した特性を有することから、固体−気体、気体−液体、固体−液体、気体−気体等の各種相間分離、吸着、透過のための分離材料として使用することができる。特に、ミストや集塵回収に好ましく用いることができる。また、高温で使用する分離材料として使用することが好ましい。
分離材料として使用する場合、特に、多孔体2において、孔径及び孔密度が傾斜配向されている場合には、必要に応じて、緻密側(孔径が小さい及び/又は孔が少ない)あるいはその反対側のいずれかを、被分離材料側に配置することができる。
集塵、分離等を目的とする場合には、多孔体2の緻密側を被分離材料側とすることが好ましい。このようにして例えば集塵フィルターとして用いると、クリーン側(緻密側と反対側)における含塵濃度を低下させることができ、多孔体2全体におけダスト堆積量も低下させることができる。加えて、多孔体2内に堆積する粉塵による圧力損失の増大傾向も抑制される。
【0025】
また、本発明の多孔体2の、孔部10の孔径が小さい及び/又は数が少ない領域においては、気孔率が小さく、マトリックスが気孔容積に対して大きくなっており、他の部分に比べて緻密化されている。このため、緻密化側では、より強度の高い多孔体となっている。このため、緻密化側を被分離材料側に対向させると、例えば、高温集塵等で激しい応力がかかる際に亀裂の発生を防止するのに有効である。
【0026】
傾斜配向のある多孔体の中でも、特に、表層と内層とを備える多孔体を分離材料として使用することが好ましい。表層と内層とでは、大きく流体透過率等が異なり、上記した傾斜配向のある多孔体を利用した場合の有利な効果がさらに増大される。特に、ガスフィルターや集塵フィルター、水処理用フィルター等の各種フィルターとしての用途に適している。また、表層と内層とを備えることにより、耐熱伝導性にも優れており、高温での使用にも適している。
【0027】
多孔体2を分離材料として使用する場合、具体的には、多孔体2をフィルターとして備える各種分離装置を構成することが好ましい。フィルターの形態は、特に限定しないが、キャンドル型フィルター、円筒型フィルター、スター型フィルター、ハニカム型フィルター等の各種形態のフィルターに適用することができる。
かかるフィルターを備える装置は、集塵装置、濾過装置等の形態を採ることができる。また、多孔体2で構成されるフィルターによる集塵部、濾過部を備える装置として、焼却装置や、ガス(排ガス)処理装置、水(排水)処理装置、汚泥等の処理装置、脱臭装置等とすることができる。
【0028】
また、多孔体2は、触媒や触媒担体等の触媒材料として用いることができる。多孔体2の多孔構造により広い表面積と、孔径による選択性が付与された触媒材料を得ることができる。また、多孔体2は、高温で使用可能であるために、高温の液体やガスと接触される触媒材料として好適である。
さらに、多孔体2は、一般的な多孔体の用途である、充てん材、保持材、耐火物、断熱材、保温材、保冷材、建材、軽量骨材、緩衝材等として使用することができる。多孔体2は、機械的強度と軽量性を兼ね備えているため、例えば、焼成炉内に試料を出し入れ等するセッターとして用いることが好ましい形態である。
【0029】
(多孔体の製造方法)
本発明の多孔体を得るには、含気泡セラミックススラリーを、固化(ゲル化)させて保水性多孔質成形体を得る。図4に本方法の工程の概略図を示す。
(含気泡セラミックススラリーの調製)
含気泡セラミックススラリーには、少なくとも、セラミックス粉末と、ゲル化材料とを含有し、必要に応じて、架橋剤、触媒、界面活性剤を含有している。含気泡セラミックススラリーを調製するには、まず、気泡を有していない状態のスラリー(以下、単にセラミックススラリーという。)を調製するのが好ましい。
セラミックススラリーには、セラミックス粉末を含有している。
スラリーを調製するためのセラミックス粉末を構成するセラミックス成分としては、特に種類を限定せず、公知の酸化物系または非酸化物系のセラミックスや、粘土鉱物を用いることができる。これらのセラミックス成分を、1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。セラミックス成分の形態は、特に限定せず、針状、棒状であってもよいが、好ましくは、不定形あるいは略球状である。
酸化物系セラミックスとしては、アルミナ系、ムライト系、ジルコニア系等を挙げることができ、非酸化物系セラミックスとしては、炭化ケイ素系、窒化ケイ素系、窒化アルミニウム系、窒化ホウ素系、グラファイト系等を挙げることができる。
【0030】
特に、難燒結性を示すセラミックス成分を用いるのが好ましい。より好ましくは、低熱膨張性のセラミックス成分を用いることが好ましい。
例えば、ガラスセラミックス成分を用いることが好ましい。ガラスセラミックスとは、具体的には、コーディエライト、チタン酸アルミニウム、及びリシア・アルミナ・シリカ系化合物から選択される酸化物系材料を含有する組成である。リシア・アルミナ・シリカ系化合物とは、例えば、ペタライト、β−スポジューメン、ユークリプタイト、及びこれらの中間生成化合物を包含している。コーディエライト組成を用いる場合、アルミナリッチ組成でも、シリカリッチ組成でもよい。
また、耐熱衝撃性の高い燒結体を得られるセラミックス成分で構成されることも好ましい。例えば、炭化珪素、窒化ホウ素等を含有するセラミックス成分を用いることができる。
【0031】
セラミックス粉末の平均粒径は特に限定しないが、好ましくは、10μm以下である。この範囲の平均粒径のセラミックスを用いると、スラリー中での粉末分散性が向上されるとともに、焼結性も向上されるからである。平均粒径は、より好ましくは、5μm以下である。さらに好ましくは、1μm以下であり、最も好ましくは、0.6μm以下である。
【0032】
セラミックス粉末のスラリー中の体積分率は、60v/v%以下であることが好ましい。60v/v%を超えると、スラリー粘度が急激に増大するからである。より好ましくは、55v/v%以下である。また、その下限は、45v/v%以上であることが好ましい。特に、コーディエライトの場合、45v/v%以上55v/v%以下であることが好ましい。
【0033】
セラミックススラリーにおいて、セラミックス粉末を懸濁する媒体は、特に限定しないで水、有機溶媒、これらの混合溶媒等を使用することができる。好ましくは水である。
セラミックススラリー中に、セラミックス粉末を均一に含有させるためには、適当な分散剤を使用することが好ましい。分散剤として、従来公知の各種分散剤を、セラミックス成分やその他の成分を考慮して選択して用いることができる。代表的には、ポリカルボン酸系分散剤(アニオン系分散剤)を使用でき、具体的には、ポリカルボン酸アンモニウムやポリカルボン酸ナトリウムを使用できる。好ましくは、分散剤の添加量に伴うスラリー粘度変化が大きい分散剤を使用する。
分散剤の使用量は、好ましくは、セラミックス粉末の重量に対して5重量%以下であり、より好ましくは、1重量%以下である。
【0034】
セラミックススラリーには、また、公知の滑剤や増粘剤や糊剤等も加えることができる。増粘剤や糊剤等としては、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、サッカロース、糖蜜、キサンタンガム等を例示できる。増粘剤や糊剤等は、導入した気泡を安定して保持するのに適している。また、スラリーの粘度を調整することもできる。
さらに、得られるセラミックス多孔体の強度等の特性に付与するセラミックス製繊維材料や、金属製あるいはセラミックス製のチップ材料も加えることができる。
さらに、セラミックス多孔体の焼結を促進する微量の無機化合物を加えることができる。
【0035】
セラミックススラリーは、これらの材料をボールミルやポットミル等で混合、粉砕等することにより得られる。
【0036】
(セラミックススラリーへの気泡の導入工程)
セラミックススラリーに気泡を導入して含気泡セラミックススラリーとするには、各種方法を採用することができる。
起泡剤(発泡剤)をスラリーに添加して所定の発泡条件を付与することより、化学反応等により気泡を発生させることもできる。また、スラリーを攪拌したり、スラリーにガスを吹き込んだりすること等によって、外部からスラリー中にガスを導入することもできる。外部から気泡を導入する方法が、簡便性及び不純物をスラリー中に含まないという点において好ましい。
なお、気泡の導入に先だって、スラリーを脱泡しておくことが好ましい。例えば、真空チャンバー内で攪拌及び脱気することにより脱泡することができる。
また、気泡導入及びゲル化以降の工程は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。特に、気泡導入工程から、成形工程におけるゲル化完了までを窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0037】
セラミックススラリーに気泡を導入する際には、セラミックススラリー中には、スラリーをゲル化して水あるいは溶媒を保持した多孔質体を形成可能な、ゲル化のための材料を含有している。
かかるゲル化のための材料としては、通常のゲル化剤や、モノマーと重合開始剤とからなる重合性材料を挙げることができる。
ゲル化剤を使用すると、温度制御やpH制御等にりスラリーをゲル化することになる。ゲル化剤としては、ゼラチン、アガロース、寒天、アルギン酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0038】
重合性材料を用いる場合、モノマーの重合(主としてラジカル重合)により、スラリーをゲル化する。重合性材料のモノマーとしては、1官能基性あるいは2官能基性以上のモノマーを挙げることができる。具体的には、1または2以上のビニル基やアリル基等を備えたモノマーを挙げることができる。
スラリーが水あるいは水性溶媒にて構成される場合には、1または2官能基性の重合性モノマーを用いることが好ましい。また、スラリーが、有機溶媒にて構成される場合には、2官能基性の重合性モノマーであることが好ましい。
特に、スラリーを水を溶媒として調製する場合には、好ましくは、少なくとも1種の1官能基性の(メタ)アクリル酸アミドと、少なくとも1種の2官能基性の(メタ)アクリル酸アミドとを組み合わせて使用する。また、スラリーを有機溶媒で調製する場合には、好ましくは、少なくとも2種の2官能基性の(メタ)アクリル酸を組み合わせて使用する。
【0039】
なお、重合性材料を用いる場合、重合開始剤の種類や量によって重合速度が様々である。なお、重合開始剤は、通常は、室温では不活性である場合が多いが、重合開始剤は、必ずしも、モノマー材料と同時に使用してセラミックススラリーを調製する必要はない。必要に応じて、モノマーとは別に添加される。
重合開始剤としては、従来公知の各種重合剤を使用することができる。いかなる重合開始剤を使用するかは、モノマーの種類やどのようにゲル化を行うかによって選択される。1官能基性モノマーや2官能基性モノマーを使用する場合には、好ましくは、過硫酸アンモニウムや過硫化カリウム等である。また、2以上の官能基を有する官能基性モノマーを使用する場合には、好ましくは、有機過酸化物や過酸化水素化合物や、アゾあるいはジアゾ化合物を使用する。具体的には、過酸化ベンゾイルである。
【0040】
ゲル化材料のゲル化特性に応じてスラリーへの添加時期を調整することが好ましいが、ゲル化材料は、気泡導入直前にセラミックススラリーに加えるのが好ましい。一旦、気泡をスラリーに導入した後に、さらに、ゲル化材料を加えると、気泡が消失・減少等する場合もあるからである。
【0041】
導入したガスは、界面活性剤等によって気泡としてスラリー中に保持するようにするのが好ましい。界面活性剤は、当該気泡導入工程において、攪拌等による気泡の導入前にセラミックススラリーに添加することが好ましい。
界面活性剤としてはアルキルベンゼンスルホン酸等の陰イオン性界面活剤や、高級アルキルアミノ酸等の陽イオン界面活性剤を例示できる。具体的には、n−ドデシルベンゼンスルホン酸、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウリレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル及びこれらのナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩を挙げることができる。また、トリエタノールアミンラウリルエーテル等及びこれらのハロゲン化塩や、硫酸塩、酢酸塩、塩酸塩等を挙げることができる。また、ジエチルヘキシルコハク酸及びそのアルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0042】
なお、起泡剤を添加して気泡を導入する場合には、起泡剤を加えておく。起泡剤としては、タンパク質系起泡剤、界面活性剤系気泡剤等を使用することができる。
【0043】
気泡導入工程において導入される気泡の導入量や気泡の径は、界面活性剤の種類や添加量、あるいはスラリーの温度や濃度(セラミックス粉末の固形分率)、用いるセラミックス粉末の粒子径等で調整することが可能である。
得ようとする気泡の孔径は、界面気泡導入前のゲル化しない状態でのスラリーの粘度によって調整するようにするのが好ましい。
【0044】
この気泡導入工程において、ゲル化材料として重合性材料を用いる場合には、重合性材料とともに、重合開始剤、あるいは重合開始剤と重合触媒とを添加することが好ましい。
一旦、導入された気泡をそのままスラリー中に保持した状態で、スラリーを固化工程に移行させるのに都合がよいからである。
重合触媒を添加すれば、ゲル化温度やその添加量によりゲル化工程の時間を調整することができる。通常、重合触媒を添加すると、室温付近で速やかにゲル化(重合)が開始される。したがって、気泡導入方法や気泡導入量等を考慮して、重合触媒の使用や種類が選択される。重合触媒としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等を挙げることができる。
【0045】
(ゲル状多孔質成形体の作製、成形(ゲル化)工程)
このようにして調製した含気泡セラミックススラリーを、成形型等に注入して、ゲル化させ、ゲル状多孔質成形体を形成する。成形方法としては、各種成形法を用いることができる。押し出し成形にも適用可能である。
本工程におけるゲル化は、実質的に脱溶媒を伴うことなく自己硬化させることを意味する。換言すれば、スラリーの媒体として用いた水や有機溶媒を保持させた状態で固化成形するものである。したがって、成形型は、溶媒や水を透過させない型を用いるのが好ましい。
ゲル化剤を用いた場合には、温度制御及び/又はpH制御(気泡導入工程時あるいはその前に調整しておく)によりゲル化させる。ゲル化のための条件(温度、pH等)は、ゲル化剤の種類、ゲル濃度、スラリー中のイオン強度やセラミックス含量等によって異なる。これらのパラメータを考慮して温度やpHが設定され、ゲル化時間も設定される。
【0046】
また、重合性材料を用いるゲル化の場合には、モノマーの種類や重合開始剤の種類、溶媒の種類、さらには、重合触媒の有無を考慮して、重合のための温度が設定される。
水系スラリーの場合には、通常20℃以上であり、好ましくは、25℃以上80℃以下である。より好ましくは、25℃以上35℃以下である。
有機溶媒系スラリーの場合には、通常、100℃以上であり、好ましくは、100℃以上120℃以下である。
ゲル化のための時間も、温度と同様に各種パラメータを考慮して設定される。水系スラリーの場合には、通常は10分以上であり、好ましくは、20分以上数時間以内程度である。より好ましくは、1時間以上4時間以内である。
有機溶媒系スラリーの場合には、通常は5分以上であり、好ましくは、5〜30分程度である。
【0047】
(気泡径、気泡分布等の制御)
スラリーがゲル化すると、スラリー中に存在していた気泡も、ゲル状体中に保存される。この結果、ゲル状体が多孔質となり、ゲル状多孔質成形体が得られる。ゲル化が終了するまでの間、含気泡セラミックススラリーにおいては、気泡の移動や、気泡の分解や集合が生じる。これを利用して、ゲル化工程において、気泡径、気泡分布を制御することができる。気泡径及び気泡分布を制御することは、実質的に、最終的に得られる多孔体2の孔部10の孔径及び分布を制御することに等しい。
気泡径は、第1に、前述のように、気泡導入時において、例えば機械的エネルギーによって気泡を導入する場合には、使用する界面活性剤の種類と添加量によって制御される。使用する界面活性剤が、カチオン系であれば、気泡径が減少するという傾向があり、界面活性剤の量が増加すると、気泡径が増大するという傾向がある。
さらに、第2に、ゲル化工程におけるスラリー温度とゲル化時間で調整される。スラリー温度が高いほど、気泡径が増大するという傾向があり、ゲル化時間が長いほど、気泡径が増大するという傾向がある。
【0048】
また、気泡の分布は、スラリーのセラミックス固形分率で制御できる。すなわち、気泡を傾斜配向させることもできる。
スラリー中のセラミックスの配合比率が比較的高い場合、例えば、55v/v%を越える場合は、上層部に小径の気泡が分布する領域が形成できる傾向がある。
一方、固形分率が比較的低い場合、例えば、45v/v%以下である場合には、下層部(重力あるいは遠心力の作用方向)に小径の気泡が分布する領域が形成できる傾向がある。すなわち、下層部では、スラリーの圧力による気泡の分解と縮小により気泡径が小さくなり、上層部では、気泡の合体や膨張によって気泡径が大きくなる。また、下層部では、気泡が浮上するために、マトリックス部分が大きくなり緻密になり、上層部では、気泡量が大きくなる。
このような気泡径や気泡分布の制御は、含気泡セラミックススラリーを成形型に注入して放置する場合には、重力等の作用により生じているが、積極的に遠心力を利用して気泡生成を制御することも可能である。
【0049】
さらに、気泡を傾斜配向させる場合、特にスラリーの粘度により、重力あるいは遠心力の作用方向における気孔の傾斜配向を制御できる。例えば、ゲル化前のスラリーの粘度が高い場合には、重力あるいは遠心力の作用方向に、気泡径が小さい及び/又は気泡が少なくなるように、気泡が分布されて緻密化領域が形成されやすくなる。さらに、スラリーの粘度により、緻密化領域の厚みも調整することができ、スラリーを高粘度にすると、緻密化領域の厚くすることができる。
以上のような気孔分布の傾斜配向制御により、前述したような緻密質組織を表層に有する多孔体を得ることができる。
【0050】
逆に、ゲル化成形工程において重力や遠心力を特定の方向への作用を制限するか、あるいは作用させないようにすることにより、均一な気泡径分布や気孔分布形態を得ることができる。
【0051】
ゲル化を利用した成形工程では、スリップキャスティング法のように、原料のセラミックス粉粒体の配向性もなく、セラミックス粉粒体が均一に分散保持されて均一なマトリックスが得られる。このため、原料粉体の配向性もなく、均一なマトリックスが得られる。
また、本発明方法では、ゲル化温度やゲル化時間の制御により、原料粉粒体を配向させることなく均一に保持した状態で、気泡の形成制御が可能である。また、ゲル化時間やゲル化温度の制御は、容易に制御可能であるため、気泡制御の自由度も高い。
また、媒体成分を保持したまま固化させるため、表面が滑らかで亀裂や荒れの低減された成形体が得られる。
加えて、本成形体は、ゲル化剤あるいは重合体によってマトリックスが支持されているために、従来の鋳込み成形体に比して強度が高く、焼成に至るまで過程におけるハンドリングに都合がよく、破損等が生じにくい。
また、本ゲル化工程を用いることは、配向性がないこと、成形性が良好であること、ゲル状成形体の強度が高いことから、大型のものや複雑な形状を有する多孔質体を得るのに都合が良い。また、ニアネットシェイプのゲル状成形体を得ることができる。
【0052】
(乾燥工程、脱脂工程、焼成工程)
このようにして、所望の形態にゲル状多孔質成形体を得たら、これを脱型して、乾燥、脱脂、焼成する。
本発明方法では、不透水性の成形型を用いるため、離型が容易であり、しかもゲル状であるので、離型の際に成形体が損傷されにくい。
乾燥は、ゲル状多孔質成形体中に含まれている水、溶媒を蒸発させるように行う。乾燥条件(温度、湿度、時間等)は、スラリー調製に用いた溶媒の種類とゲル状多孔質成形体の骨格部分を構成する成分(ゲル化剤あるいは重合体)によって適宜調整する。
特に、本発明方法では、乾燥工程において、乾燥によって気孔の移動や、分解・集合が発生しないようにすることが好ましい。すなわち、乾燥工程においては、気孔を成形体中に保持して行うことが好ましい。
このように乾燥することにより、マトリックス中に存在するセラミックス粉粒体の配向もゲル化時の状態が保存される。
水系スラリーからの成形体の場合、通常は、20℃以上であり、好ましくは、25℃以上80℃以下であり、より好ましくは、25℃以上40℃以下である。また、通常、1時間以上である。好ましくは、8時間以上、より好ましくは24時間以上である。
また、特に、湿度(相対湿度)を徐々に低下するようにコントロールしながら、20℃以上30℃以下、好ましくは約25℃で、24時間から200時間程度かけて乾燥するのが、さらに好ましい。相対湿度は、95%R.H.から60%R.H.に減少させることが好ましい。また、5%R.H./日で減少させることが好ましい。このような乾燥は、特に、水を媒体として用いた成形体の乾燥に適している。
例えば、水を媒体とし、モノマーとしてメタクリルアミドとN,N’-メチレンビスアクリルアミドを用いたスラリーから調製したゲル状多孔質成形体の場合、25℃で、湿度をR.H.95%から60%まで、5%/日で減少させて、約1週間かけて乾燥した。
有機溶媒系スラリーからの成形体の場合、通常は、40℃以上であり、好ましくは110℃以上である。
【0053】
つぎに、乾燥体から有機分を除去するために、さらに高温で加熱する。脱脂のための温度と時間は、使用した有機分の量および種類によって調整する。
例えば、ゲル化のための材料としてメタクリルアミドとN,N-メチレンビスアクリルアミドを用いたスラリーから調製したゲル状多孔質成形体の場合、700℃で2日間脱脂する。
【0054】
脱脂後には、焼成工程を実施する。焼成のための条件は、使用したセラミックス材料の種類等を考慮して設定される。
特に、平均粒径がサブミクロン(0.1μm以上0.6μm以下)のセラミックス粉体を用いると、高温での焼成による焼結により、マトリックスを緻密化することができる。
マトリックスをコーディエライトで構成する場合には、好ましくは1250℃以上で焼成することが好ましい。また、この場合の焼成温度の上限は1350℃以下であることが好ましい。
【0055】
このような工程により、本発明のセラミックス多孔体2を得ることができる。ゲル状多孔質成形体中に形成されていた気泡が、焼成によってマトリックス4に分散、あるいは連接した孔部10を形成する。気泡が集合していた部位においては、加熱により、破膜が生じ相対的に大きな孔部10を形成する。
また、マトリックス4中においては、セラミックス粉末に由来するセラミックスの燒結粒子が部分的に結合することにより、孔部20が形成される。この結果、多孔体2は、上述の通りの特性を示すことができる。
【0056】
得られた本発明のセラミックス多孔体は、ゲル化成形工程を経ているために、均一で配向性のないマトリックスを有しているとともに、孔部を備えている。気孔径、気孔率、気孔の分布をゲル化工程等の制御により調整可能であるので、均一なマトリックスを有する一方で、孔部の分布が高度に制御された多孔体とすることができる。
【0057】
本発明方法で得られるゲル状多孔質成形体は、材料が配向していないので、焼成時における収縮も等方的に生じる。この結果、寸法精度が向上し、亀裂等の発生もない。
また、成形体において原材料の配向性がなく均一であること、成形体の離型が容易であること、及び成形体の強度が十分であることから、成形体に破損やひずみが発生しにくく、焼結体にも欠陥が発生しにくい。この結果、高い強度が得られる、製造方法となっている。また、本法では、表面が滑らかな焼結体を得ることができる。また、成形体の形状に忠実な焼結体(いわゆるニアネットシェイプの燒結体)を得ることができるので、大型のものや複雑な形状な焼結体を得るのが容易である。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、開気孔率や機械的強度が良好な多孔体を提供できる。また、本発明によれば、孔分布形態の制御性の良好なセラミックス多孔体を提供できる。
【0059】
【実施例】
以下、本発明を、実施例をあげて具体的に説明する。
本実施例では、セラミックス粉末として、コーディライト粉末(SS-600)(平均粒径2.6μm(D50))を用いた。また、多孔体を得るための各材料として、表1に示す材料をそれぞれ使用した。
【0060】
【表1】
Figure 0004176278
表1に示す配合に従い、コーディエライト粉末、蒸留水、分散剤(ポリカルボン酸ナトリウム)、各モノマー、及びジルコニアボールをポリエチレン製ポットミルに投入して、恒温水槽中で24時間湿式ボールミル混合した。
【0061】
得られたスラリーにつき、真空チャンバー内で10分間、スラリーを攪拌すると共に減圧脱気して、大気圧に復帰させた。
その後、室温、窒素雰囲気下において、表1に示した配合に従って開始剤と触媒と界面活性剤(トリエタノールアミンラウリルエーテルサルフェート)を添加し、直ちに攪拌して気泡を導入した。
【0062】
気泡導入スラリーを、そのまま窒素雰囲気下で、サイズの凹状部を備えるテフロン製成形型に注入し、20℃、3時間かけて、ゲル化させた。成形体は同条件で3体作製した。
その後、成形型から、成形体を脱型した。脱型した成形体は、濡れて滑らかな表面を有しており、しかも、容易にハンドリングするのに十分な強度と柔軟性を有していた。
【0063】
以下は、通常の空気雰囲気下で操作した。ついで、この成形体を、25℃で、95%R.H.から60%R.H.まで1日5%R.H.づつ低下させて、7日間かけて乾燥した。
その後、成形体を、34時間かけて700℃にまで昇温させ、その後700℃で8時間保持して脱脂した後、大気雰囲気中1250℃、1300℃、1350℃の3種の温度で2時間焼成した。
【0064】
得られた焼成体は、いずれも、ゲル状多孔質成形体中の気泡に対応する孔部を備え、当該孔部は、マトリックスで区画されており、10〜数百μm程度の孔径を備えていた。また、マトリックス内には、燒結した粒子が部分的に結合して形成された間隙が孔部として形成されていた。当該孔部は、おおよそ2〜3μmであった。
さらに、得られた焼成体は、いずれも、型表面に接触する下層側に緻密質の表層が形成されていた。これらの焼成体のうち、緻密質の表層を取り除いて3種の試料(試料1〜3)を調製とするとともに、1350℃の焼成体については表層を維持した1種の試料(試料4)を調製した。
【0065】
これらの試料1〜3につき、気孔率、曲げ強さ、熱膨張係数を測定した結果を表2に示す。なお、気孔率は、アルキメデス法(開気孔率)と幾何学法(全気孔率)とをそれぞれ求めた。また、曲げ強さについては、JIS R1601に準じ、試料片サイズを10mm×10mm×50mmとし、スパンを40mmとして実施した。熱膨張係数は、島津熱機械的分析装置(TMA)により測定した。
さらに、試料1〜4について、透過係数について測定した結果について表2に示す。
なお、透過係数については、ホソカワミクロン製フィルターメディアテスターを使用し、試験条件を以下のとおりとした。なお、試料のフィルターとしての厚みは、約9〜10mmとした。試料4については、緻密側をダスト側として試験した。
試験用フィルターの通過エアー風量:2.77m3/h
試験用フィルターの通過エアー速度:3m/min
テストフィルターの断面積:0.0154m2
原料ガスダスト濃度:13g/m3
クリーニング設定圧力:テスト前通気度+1000Pa
機内雰囲気温度:常温(26〜30℃)
使用流体:空気
【0066】
【表2】
Figure 0004176278
表2に示すように、いずれの試料1〜4についても、高い気孔率を得ることができた。また、曲げ強さも6MPa以上、特に、試料2及び3においては、9MPa以上の高い曲げ強さが得られた。熱膨張係数も2.1×10-6/℃以下であり、良好な結果を示した。
なお、透過係数の測定の際、試料4は、試験継続中において、他の試料1〜3に比較して圧力損失の増大が著しく抑制されているとともに、フィルター内のダスト堆積量も抑制されていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の多孔体の断面構造を示す図である。
【図2】表層と内層とを有する本発明の多孔体の断面構造を示す図である。
【図3】本発明の多孔体の孔部の内壁部を示す図である。
【図4】本発明の多孔体の製造方法の一例を示す工程図である。
【符号の説明】
2 セラミックス多孔体
4 マトリックス
10 マトリックスで区画される孔部
20 セラミックス粒子間孔部
46 表層
48 内層

Claims (6)

  1. ゲル化材料とセラミックス粉末とを含有する含気泡セラミックススラリーを不透水性の成形型に注入し、該成形型内において前記含気泡セラミックススラリーの媒体を保持させた状態でゲル化して得たゲル状多孔質成形体を、順次脱型、乾燥、脱脂、焼成し、
    前記ゲル化の際、重力あるいは遠心力の作用方向に形成される気泡径が小さく緻密な表層と、該表層に連続し気泡径の大きな内層とが一体的に形成される、セラミックス多孔体の製造方法。
  2. 気泡を有していない状態のセラミックス粉末を含有しているセラミックススラリーを調製する工程と、
    前記セラミックススラリーへ起泡剤添加する、又は前記セラミックススラリーを攪拌することで、前記セラミックススラリー気泡を導入する気泡導入工程と、
    重力あるいは遠心力の作用方向における気孔の傾斜配向を制御しながら、前記成形型内において前記ゲル状多孔質成形体を得るゲル化成形工程と、
    前記所望の形態に成形されたゲル状多孔質成形体を、前記成形型から脱型して、乾燥、脱脂、焼成する乾燥工程、脱脂工程、及び焼成工程とを有し、
    前記気泡導入工程における気泡の導入に先だってスラリーを脱泡しておき、
    前記気泡導入工程から成形工程におけるゲル化完了までを窒素雰囲気下で行う、請求項1に記載のセラミックス多孔体の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の製造方法により製造されたセラミックス多孔体であって、
    前記表層及び内層に、セラミックスマトリックスと、前記セラミックスマトリックスで区画される複数の孔部と、前記マトリックスに形成されるセラミックス粒子間孔部、とを備え、
    前記セラミックスマトリックスで区画される複数の孔部が、前記内層から表層に向けて小さくなるよう傾斜配向しており、
    前記表層のかさ比重は、前記内層の2.5倍以上8.5倍以下であり、
    全体の開気孔率が60%以上90%以下であり、
    前記セラミックス粒子間孔部の気孔率が15%以上35%以下であり、
    全開気孔容積に対する、前記セラミックスマトリックスで区画される複数の孔部の開気孔容積の割合は、70%以上98%以下である、難焼結性材料からなるセラミックス多孔体。
  4. 請求項に記載のセラミックス多孔体を用いたフィルター材料。
  5. 請求項に記載のセラミックス多孔体を用いた触媒担持材料。
  6. 請求項に記載のセラミックス多孔体をフィルターとして有する分離装置。
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