JP5299015B2 - 多孔質焼結体の製造方法 - Google Patents
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さらに、多孔質焼結体は、各種用途に応じて適切な通水性や通気性が求められる。通水性や通気性は、気孔率、気孔サイズの大きさだけでなく、隣接する気孔同士を接続する開口寸法(ウィンドウサイズ)の大きさによっても異なるため、ウィンドウサイズの大きさを制御することも求められている。
大したりするので、冷却温度および保持時間を設定することにより、任意の気泡サイズおよびウィンドウサイズすなわち任意の連通度を有するグリーン体を形成でき、それを真空凍結乾燥および焼結することにより、任意の気孔径およびウインドウサイズ(任意の連通度)を有する多孔質焼結体を製造することができる。
この場合、スラリーの凝固点を超える温度に保持温度を設定するのは、スラリーが凍結すると気泡核が膨張しにくくなるからである。また、沸点以下に保持温度を設定するのは、スラリーが沸騰すると添加ガスがスラリーから脱出するとともに、沸騰による気泡が形成されるため、気孔率や気孔サイズの制御が困難となるからである。スラリーをこの保持温度に保持することにより、スラリーの粘度は常温時よりも増大しており、気泡核形成工程で導入された添加ガスがスラリーの表面から脱出することが防止される。また、スラリーを脱泡した後に添加ガスを導入することにより気泡核を形成するので、スラリー中に含まれる気体量を精密に制御することができる。
この方法によれば、スラリーを脱泡した後に添加ガスを導入することにより気泡核を形成するので、スラリー中に含まれる気体量を精密に制御することができる。
スラリー製造工程は、原料粉末とバインダと水とを含有する材料を混練してスラリーを調製する混練工程と、このスラリーから気泡および溶存ガスを除去する脱泡工程と、スラリー中に気泡核を分散形成する気泡核形成工程とを含む。
グリーン体を形成する工程は、スラリー中の気泡核を膨張させる減圧膨張工程と、気泡核が膨張した状態のスラリーを保持する安置工程と、そのスラリーを凍結させる凍結固化工程と、凍結したスラリーからグリーン体を形成する真空凍結乾燥工程とを含む。
また、多孔質焼結体の表面における5〜100倍顕微鏡写真の視野中の気孔の面積を測定して算出した円相当径の算術平均を、平均気孔径と呼ぶ。
(混練工程および脱泡工程)
まず、原料粉末、バインダ、水を含む材料を混練し、スラリーSを調製する混練工程を行う。この混練を真空雰囲気で行うことにより、脱泡しながらスラリーSを作成できる。つまり、混練工程と脱泡工程とが同時に行われる。
界面活性剤をスラリーSに添加することにより、多孔質焼結体の平均気孔径を大きくすることができる。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩,α‐オレフィンスルホン酸塩,アルキル硫酸エステル塩,アルキルエーテル硫酸エステル塩,アルカンスルホン酸塩等のアニオン界面活性剤,ポリエチレングリコール誘導体,多価アルコール誘導体、アルキルベタインなどの非イオン性界面活性剤および両性界面活性剤などを使用することができる。界面活性剤を混合する場合、スラリー中の含有割合は0.05〜10質量%とすることが好ましい。
次に、この脱泡されたスラリーS中に気泡核を分散形成する気泡核形成工程を行う。この工程においては、図2に示すように、スラリーSを攪拌装置10に連続的に投入しながら、添加ガスC1をスラリーSに導入する。これらスラリーSおよび添加ガスC1は、それぞれ一定の体積流量で導入される。添加ガスC1としては、たとえば空気、酸素、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素等のように、スラリーSを変質させず、焼結後に不純物として残存しない気体が好ましい。この添加ガスC1は、脱泡されたスラリーSの体積:添加ガスの体積=10:0.1〜8となる量で導入される。
次に、任意の量の添加ガスC1を気泡核C2として含むスラリーSを、予備冷却温度に保持しながら、ポリスチレン等からなる成形型12に充填する(図3(a))。この工程においては、成形型12に充填したスラリーSに対して、打撃や超音波によって衝撃を与えたり、予備冷却温度に維持したまま1時間程度安置したりすることにより、充填されたスラリーSと成形型12との間に抱き込まれた気泡や、充填時にスラリーS中に形成された大きな空隙を取り除くことができる。
(減圧膨張工程)
次に、予備冷却温度に保持した状態でスラリーSを所定圧力に減圧して、スラリーS中の気泡核C2を膨張させて気泡C3を形成する。具体的には、スラリーSが充填された成形型12を減圧容器に入れ、0.01〜0.4atmに減圧することにより、気泡核C2を膨張させる(図3(b))。なお、スラリーSは予備冷却温度に冷却されているので、減圧容器内で減圧されても沸騰せず、気泡核C2が膨張して気泡C3となり、スラリーS全体の体積が増大する。
このように膨張したスラリーSを、圧力および温度を維持したまま、所定の保持時間(1分〜60分)安置する。この工程において、原料粉末が移動することにより気泡C3のウィンドウが拡大したり、スラリーS中で気体が移動することにより気泡C3自体が膨張・縮小したりするので、原料粉末および気体の移動を落ち着かせ、スラリーSを安定させることができる。この工程におけるスラリーSの保持時間は、短かすぎるとスラリーを安定させる効果が十分に得られず、長すぎると隣接する気泡同士が連結して一体となって気泡サイズが過剰に大きくなるおそれがあるが、適切に設定することにより気泡サイズのばらつきを小さくすることも可能である。なお、原料粉末の材質や界面活性剤の添加の有無等によってスラリーS中の気体や原料粉末の移動しやすさが異なるので、原料粉末の比重が小さい場合や界面活性剤を添加した場合等には、保持時間を比較的短く設定することが好ましい。
次に、このスラリーSを、−80℃以上凝固点以下の凍結温度に冷却し、0.1時間〜2時間保持する。この工程においては、スラリーS中の水が凝固することにより、気泡C3を含むスラリーSの形状が固定される。
次に、凍結したスラリーSを真空凍結乾燥させる。この工程において、スラリーSを真空中で水分を昇華させることにより、形状が維持されたまま原料粉末がバインダによって保持されてなるグリーン体Gを形成する(図3(c))。このグリーン体Gには、気泡核C2を成長させた気泡C3の形状をほぼ維持した状態で気孔Hが形成されている。なお、スラリーSは凍結固化工程により固化されているので、この工程は成形型12から取りだした状態で行ってもよい。グリーン体Gは、バインダの混合量が少ない場合には脆弱であり自重による崩壊のおそれがあるが、スラリーに可塑剤を混合しておくことにより、強度を向上させ崩壊を防止することができる。なお、バインダや可塑剤は多孔質焼結体には不要な不純物として残存するので、多孔質焼結体の不純物を減少させるためには、バインダや可塑剤の含有割合を減少させることが好ましい。
このグリーン体Gを焼結し、多孔質焼結体Pを形成する(図3(d))。このとき、成形型12に入れたままグリーン体Gを焼結させることができる場合には、グリーン体Gが崩壊するおそれが小さいので、バインダの含有割合を減少させ、多孔質焼結体Pに残留する不純物をさらに減少させることも可能となる。
ここで、安置工程における保持時間を変化させた場合に得られる多孔質焼結体について、実施例をあげて説明する。
原料粉末として、平均粒径8μmのステンレス鋼(SUS316)またはチタン粉末:73質量%、
バインダとして、水溶性樹脂結合剤:3質量%、
界面活性剤:0.05質量%
水:残部
を含有するものを用いた。
なお、本発明は前記実施形態の構成のものに限定されるものではなく、細部構成においては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
11 出口
C1 添加ガス
C2 気泡核
C3 気泡
G グリーン体
H 気孔
P 多孔質焼結体
S スラリー
Claims (4)
- 原料粉末、バインダ、および水を含む材料からなり気泡が分散形成されたスラリーを調製するスラリー製造工程と、このスラリーからグリーン体を形成するグリーン体形成工程と、このグリーン体を焼結する焼結工程とを有する多孔質焼結体の製造方法であって、
前記スラリー製造工程は、真空雰囲気で前記材料を混練してスラリーを調製するとともに、その混練を前記スラリーの凝固点を超え沸点未満の保持温度で行い、前記スラリーから気泡および溶存ガスを除去する混練工程および脱泡工程と、前記保持温度に維持しつつ、前記スラリーに添加ガスを導入しながら攪拌することにより、前記スラリー中に前記添加ガスからなる気泡核を分散形成する気泡核形成工程とを有し、
前記グリーン体形成工程は、前記気泡を有する前記スラリーを前記保持温度で所定の保持時間保持する安置工程と、前記スラリーを所定の凍結温度に冷却して凍結固化させる凍結固化工程と、凍結した前記スラリーを真空凍結乾燥させる真空凍結乾燥工程とを含むことを特徴とする多孔質焼結体の製造方法。 - 前記安置工程において前記スラリーを保持する前記保持時間は1分以上60分以下であることを特徴とする請求項1に記載の多孔質焼結体の製造方法。
- 前記スラリー製造工程において、前記スラリーに界面活性剤を添加することを特徴とする請求項1または2に記載の多孔質焼結体の製造方法。
- 前記気泡核を含む前記スラリーを前記保持温度に冷却した状態で所定圧力に減圧することにより前記気泡核を膨張させる減圧膨張工程を含み、
この減圧膨張工程は、前記安置工程の前に行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の多孔質焼結体の製造方法。
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