JP4172488B2 - テストステロン増加剤、およびネギ属植物処理物の製造方法 - Google Patents

テストステロン増加剤、およびネギ属植物処理物の製造方法 Download PDF

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Description

本発明はテストステロン増加剤等に関し、詳しくは男性の性的機能老化の改善に有用なテストステロン増加剤、ネギ属植物処理物、およびこれらを含有する食品添加物に関する。
男性の性的機能改善薬としては、バイアグラ(登録商標)が良く知られているが、この薬には、高血圧症患者に対しては不適であるとの指摘がある。
一方、ネギ属(Allium属)植物(タマネギ、ニンニク、ギョウジャニンニク、ネギ、ニラ等)は、数多くの野菜の中でも最も多く消費されているものの一つであり、このネギ属植物が有する生理作用についての多数の研究がなされている。
たとえば特開平9−169661号公報(特許文献1)には、タマネギ、またはオニオンジュースやオニオンヴィネガー等の加工品も、男性の性的機能老化の改善に役立つテストステロン(ステロイドホルモンの1種)増加剤として作用することが記載されており、上述したような高血圧症患者を含む、幅広い患者に対しての適用が期待される。
しかし、タマネギまたはその加工品に含まれる、テストステロン増加剤としての有効成分は特定されていなかった。
特開平9-169661号公報
本発明はテストステロン増加剤としての有効成分を特定し、この有効成分を含有するテストステロン増加剤、ネギ属植物処理物および食品添加物を提供することを目的とする。
また本発明は、ネギ属植物からテストステロン増加剤としての有効成分を効率よく抽出し、この有効成分を含有するテストステロン増加剤、ネギ属植物処理物および食品添加物を提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究したところ、ネギ属植物中に含まれている特定のL-システインスルホキシド誘導体がテストステロンを増加させる効果を奏す
ることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のテストステロン増加剤は、
S−メチル−L-システインスルホキシド、S−プロピル−L-システインスルホキシド、S−アリル−L-システインスルホキシドおよびS−1−プロペニル−L-システインスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有することを特徴としている
本発明のネギ属植物処理物の製造方法は、
S−メチル−L-システインスルホキシド、S−プロピル−L-システインスルホキシド
、S−アリル−L-システインスルホキシドおよびS−1−プロペニル−L-システインスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をテストステロンの増加に有効な量で含有するネギ属植物処理物の製造方法であって、
圧力を1〜5気圧とし、温度を40〜150℃とし、かつ時間を5〜120分として切断されてい
ないネギ属植物を加熱することにより該ネギ属植物中のC-Sリアーゼを失活させ
ことを特徴としている
本発明の食品添加物は、前記テストステロン増加剤または前記ネギ属植物処理物を含有することを特徴としている。
本発明のテストステロン増加剤、ネギ属植物処理物および食品添加物によれば、テストステロンを増加させることができる。したがって本発明のテストステロン増加剤、ネギ属植物処理物および食品添加物は、男性の性的機能老化防止のほか、テストステロンが有効とされる乳癌、子宮体癌、卵巣癌、甲状腺癌、閉経期機能障害等、女性に特有の疾病予防および治療に有用である。
次に本発明のテストステロン増加剤、ネギ属植物処理物および食品添加物についてより詳細に説明する。
<L-システインスルホキシド誘導体>
本発明のテストステロン増加剤は、下記式(1)で表されるL-システインスルホキシ
ド誘導体を有効成分として含有している。
Figure 0004172488
〔式(1)において、Rは炭素原子数1〜7のアルキル基、炭素原子数2〜7のアルケニ
ル基、炭素原子数6〜12のアリール基、炭素原子数7〜12のアリールアルキル基または炭素原子数8〜10のアリールアルケニル基である。アルキル基およびアルケニル基は直鎖状または分岐状のいずれであってもよく、またアリール基は置換基を有していても良い。〕。
このL-システインスルホキシド誘導体としては、下記式(1A)で表される化合物が好ましく;
Figure 0004172488
〔式(1A)において、RはCH3、CH2CH3、CH2CH2CH3、CH(CH3)2、CH2(CH2)nCH3(nは2〜
5の整数である。)、CH2CH=CH2、CH=CHCH3、Ph、CH2-PhまたはCH2CH=CH-Ph(ただし、Phはフェニル基である。)である。〕、
S−メチル−L-システインスルホキシド、S−プロピル−L-システインスルホキシド、S−アリル−L-システインスルホキシドまたはS−1−プロペニル−L-システインスルホキシドが、タマネギやニンニク等のネギ属植物に含まれる成分であって経口摂取に対する安全性が高いという観点から、特に好ましい。
本発明のテストステロン増加剤には、上記式(1)(または式(1A)もしくは式(1B))で表されるL-システインスルホキシド誘導体が、1種単独でまたは2種以上含まれ
ていてもよい。
なお本明細書中では、「L-システインスルホキシド誘導体」は、特に断りのない限り
「式(1)で表されるL-システインスルホキシド誘導体」を意味する。
またL-システインスルホキシド誘導体は、人工的に合成されたL-システインスルホキシド誘導体であってもよく、天然由来の(すなわち、植物等から得られた)L-システイ
ンスルホキシド誘導体であってもよい。
L-システインスルホキシド誘導体は、du Vigneaud,V., Dyer,H.M. and Harmon,J., J.Biol.Chem. 101, 719 (1933).やHiguchi,O., Tateshita,K. and Nishimura,H., J.Agric.Food Chem. 51, 7208-7214 (2003).などに記載された方法により合成することができ、具体的には以下のスキーム1に示す手順により合成することができる。
Figure 0004172488
〔上記スキーム1においてXはBr又はIであり、Rは上記式(1)におけるRと同様である。

上記スキーム1を参照しながらL-システインスルホキシド誘導体(1)の合成方法の一例をより詳細に説明する。
L−システインとR-Xとを、2規定水酸化ナトリウム/エタノール中で、室温で約15分間攪拌し、さらに1〜2時間還流加熱して反応させ、再結晶法によって純粋な(A)を得る。次に、(A)を30%−H22/氷酢酸中または水中で、0〜5℃で反応させ、(
A)が完全に消滅したことを薄層クロマトグラフィーで確認して反応を停止し、再結晶法により、L-システインスルホキシド誘導体(1)を得ることができる。
一方、このL-システインスルホキシド誘導体の一部は、タマネギ、ニンニク、ギョウ
ジャニンニク、ネギ、ニラ等のネギ属植物(Allium属)にも含まれている。ネギ属植物からのL-システインスルホキシド誘導体の好ましい抽出方法については、後述する。
<テストステロン増加剤>
本発明のテストステロン増加剤は、前記L-システインスルホキシド誘導体を有効成分
として含有している。
本発明のテストステロン増加剤は、前記L-システインスルホキシド誘導体のほか、賦
形剤、保存料、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、着香料、浸透圧変化用の塩、緩衝化剤、コーティング剤等をさらに含んでいてもよい。
本発明のテストステロン増加剤の形態としては、L-システインスルホキシド誘導体を
含有するエキス、乾燥粉末、顆粒、錠剤、カプセル、乳剤、軟膏剤、注射用薬剤等が挙げられる。また前記テストステロン増加剤を食品添加物としてドリンク、タレ、ドレッシング等の各種調味料に加えてもよい。他にはL-システインスルホキシド誘導体を原料にし
た医薬品の用途がある。
<ネギ属植物からのL-システインスルホキシド誘導体の抽出>
〔ネギ属植物〕
前述したように、本発明のテストステロン増加剤に用いるL-システインスルホキシド
誘導体は、ネギ属植物から抽出されてもよい。
ネギ属植物は、前記L-システインスルホキシド誘導体を多量に含んでいるため、また
安価に大量に入手できるため、L-システインスルホキシド誘導体の供給源として好まし
い。該ネギ属植物としては、タマネギ、ニンニク、ギョウジャニンニク、ネギ、ニラ、ラッキョウ、エシャロット、アサツキ、ノビル等を用いることができるが、中でも、タマネギ、ニンニク、ネギ、ラッキョウが、L-システインスルホキシド誘導体を多く含有し、
しかも国内外での消費が多く安価であるため、特に好ましい。
〔C-Sリアーゼの加熱処理による失活〕
ネギ属植物からL-システインスルホキシド誘導体を抽出する際には、ネギ属植物を切
断する前に予めネギ属植物中に含まれるC-Sリアーゼを失活させておく必要がある。
なお、ここで「ネギ属植物を切断する」とは、ネギ属植物の可食部(たとえば、タマネギにおけるリン茎)を切断(分断することの他、単に傷をつけることも含む。)することを意味する。ただし、以下に述べるL-システインスルホキシド誘導体の分解が僅かに引
き起こされる程度であれば、切断されていてもよい。
このC-Sリアーゼとはネギ属植物中に含まれるネギ属酵素の一つであってアリナーゼ
とも呼ばれ、抽出されたL-システインスルホキシド誘導体中に混在していると、特開2
003−210132号公報の[0024]〜[0025]に記載されているように、C-Sリアーゼの作用によって、L-システインスルホキシド誘導体は分解され、R−S−S(→O)−R(Rはメチル基、プロピル基、アリル基またはプロペニル基である。)揮発性ジスルフィドやトリスルフィド、プロパンチアールS−オキシド(催涙成分)等が生じてしまう。
したがって、このようにC−Sリアーゼの作用を失活させることによって、上記式(1)で表されるL-システインスルホキシド誘導体を、揮発性含硫化合物に変化させること
なく抽出することができ、このL-システインスルホキシド誘導体によって、血清中のテ
ストステロンを増加させることができる。
C-Sリアーゼを失活させるための手段としては、特に限定されないが、コストの面か
ら、ネギ属植物を加熱する方法(以下「加熱処理」ともいう。)が好ましい。
ネギ属植物の加熱処理(以下単に「加熱処理」ともいう。)の具体的な条件としては、圧力が1〜5気圧の範囲であり、温度が40〜150℃の範囲であり、且つ時間が5〜120分の範囲であることが好ましく、圧力が1〜2気圧の範囲であり、温度が100〜120℃の範囲であり、且つ時間が20〜40分の範囲であることがより好ましい。上記条
件を満たすと、C-Sリアーゼを効率的に失活させて、L-システインスルホキシド誘導体の分解を避けることができる。
またネギ属植物の外皮を除去せずに、あるいは可食部(たとえば、タマネギにおけるリン茎)に傷を与えないように外皮を除去して加熱処理を行なうと、L-システインスルホ
キシド誘導体の一部または全部の分解が避けられる点で好ましい。
〔L-システインスルホキシド誘導体の抽出〕
上記C-Sリアーゼの加熱処理等による失活の後にL-システインスルホキシド誘導体を抽出することにより、このL-システインスルホキシド誘導体をテストステロン増加剤の
有効成分として用いることができる。
抽出法としては、従来公知の方法を採用することができ、たとえば、前記の加熱処理によりC-Sリアーゼを失活させた後にネギ属植物をミキサー等で磨砕処理し、70%エタ
ノール水溶液でL-システインスルホキシド誘導体を抽出した後、さらにその濾液からロ
ータリーエバポレーターでエタノールを除去し、L-システインスルホキシド誘導体を含
む抽出液が得られる。
この抽出液は、さらに減圧濃縮して濃縮エキスに加工してもよい。
<ネギ属植物処理物>
本発明のネギ属植物処理物は、圧力を1〜5気圧とし、温度を40〜150℃とし、かつ時間
を5〜120分としてネギ属植物を切断前に加熱することにより該ネギ属植物中のC-Sリア
ーゼを失活させることにより得られ、式(1B);
Figure 0004172488
〔式(1B)において、Rは炭素原子数1〜3のアルキル基、または炭素原子数2〜3の
アルケニル基である。〕。
で表されるL-システインスルホキシド誘導体をテストステロンの増加に有効な量で含有
している。L-システインスルホキシド誘導体の好ましい態様、C-Sリアーゼを失活させる際の好ましい条件等は前記同様である。また、このネギ属植物処理物中のL-システイ
ンスルホキシド誘導体の、テストステロンの増加に有効な量とは、マウス(体重30g)の場合、たとえば、タマネギの乾燥重量換算で、0.2g以上、好ましくは0.4〜0.8gである。
このネギ属植物処理物自体がテストステロンを増加させる成分を含有することから、本発明のテストステロン増加剤の好ましい態様の1つとしては、このネギ属植物処理物を含有するテストステロン増加剤が挙げられる。
このネギ属植物処理物は、単独であるいは他の食品と混合して、食品として供することが好ましい。この食品の態様としては、該ネギ属植物処理物からなる粉末の他、ペースト、ドリンク剤、菓子等の食品加工物等、特開2003-210132号公報の[0023]に記載される
態様が挙げられる。
〔実施例〕
次に本発明の好適な態様について実施例を示してさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
タマネギ濃縮エキスの製造:
タマネギ(北海道産の規格外タマネギ(学術名:Allium cepa)札幌黄)10kgを、
外皮の除去をせずに圧力釜に入れ、圧力を1.2気圧、温度を120℃として、30分間加熱処理した。この加熱処理されたタマネギを、外皮を除去した後にミキサーにかけ、タマネギペーストを得た。このタマネギペーストに70%エタノール水溶液を加え攪拌後、セライトおよび濾紙を用いた吸引濾過によって固形物を除き、タマネギ濾液を得た。このタマネギ濾液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、抽出物の濃度が834mg/mlのタマネギ濃縮エキスを得た。
なお、このタマネギ濃縮エキス中のS−プロピル−L-システインスルホキシドおよび
S−メチル−L-システインスルホキシドの存在は、これらを各種クロマトグラフィーで
単離後、核磁気共鳴(NMR)スペクトルの解析ならびに化学合成品とのスペクトルの一致によって確認し、濃度の定量は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により行った。
血清テストステロン量の変化:
このタマネギ濃縮エキスを30倍に希釈して27.8mg/ml溶液とし、4ヶ月間、老化
促進モデルマウスSAMP1(20匹、摂取開始の時点で6ヶ月齢、平均体重31g)に自由に
飲ませた後、このマウスの血清中のテストステロン量(ng/dl)を測定した。その結
果を図1に示す。なお、上記希釈液を低温で貯蔵することにより、その変質を防いだ。
あわせて、水道水を4ヶ月間自由に飲ませた区分(コントロール)のテストステロン量
を図1に示す。
図1に示すように、タマネギ濃縮エキス(希釈液)を自由に飲ませたマウスにおいては
、水道水を自由に飲ませた区分(コントロール)と比較して明らかに血清中のテストステロン量が増加した。
タマネギ中に多く含まれるS-プロピル-L-システインスルホキシド(以下「PCSO」と
も記す。)を、上記スキーム1に記載の方法で合成した。
合成されたPCSOから調製された水溶液(PCSO濃度=0.31mg/ml)を、4ヶ月間、老化促進モデルマウスSAMP1(20匹、摂取開始の時点で6ヶ月齢、平均体重34g)に自由に
飲ませた後、このマウスの血清中のテストステロン量(ng/dl)を測定した。その結
果を、図2に示す。
あわせて、水道水を4ヶ月間自由に飲ませた区分(コントロール)のテストステロン量
を図2に示す。
図2に示すように、PCSO水溶液を自由に飲ませたマウスにおいては、水道水を自由に飲
ませた区分(コントロール)と比較して明らかに血清中のテストステロン量が増加した。
ニンニクやギョウジャニンニク中に多く含まれるS-アリル-L-システインスルホキシ
ド(以下「ACSO」とも記す。)を上記スキーム1に記載の方法で合成した。
合成されたACSOから調製された水溶液(ACSO濃度=0.31mg/ml)を、4ヶ月間、老化促進モデルマウスSAMP8(20匹、摂取開始の時点で6ヶ月齢、平均体重33g)に自由に
飲ませた後、このマウスの血清中のテストステロン量(ng/dl)を測定した。その結
果を図3に示す。
あわせて、水道水を4ヶ月間自由に飲ませた区分(コントロール)のテストステロン量
を図3に示す。
図3に示すように、ACSO水溶液を自由に飲ませたマウスにおいては、水道水を自由に飲
ませた区分(コントロール)と比較して明らかに血清中のテストステロン量が増加した。
本発明のテストステロン増加剤、ネギ属植物処理物および食品添加物には、テストステロンを増加させることによる男性の性的機能老化防止のほか、テストステロンが有効とされる乳癌、子宮体癌、卵巣癌、甲状腺癌、閉経期機能障害等、女性に特有の疾病予防および治療に対する効果も期待される。
図1は、タマネギ濃縮エキス(希釈液)によるマウスの血清テストステロン量の変化を示す。 図2は、PCSO水溶液によるマウスの血清テストステロン量の変化を示す。 図3は、ACSO水溶液によるマウスの血清テストステロン量の変化を示す。

Claims (2)

  1. S−メチル−L-システインスルホキシド、S−プロピル−L-システインスルホキシド、S−アリル−L-システインスルホキシドおよびS−1−プロペニル−L-システインスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を有効成分として含有することを特徴とするテストステロン増加剤。
  2. S−メチル−L-システインスルホキシド、S−プロピル−L-システインスルホキシド、S−アリル−L-システインスルホキシドおよびS−1−プロペニル−L-システインスルホキシドからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をテストステロンの増加に有効な量で含有するネギ属植物処理物の製造方法であって、
    圧力を1〜5気圧とし、温度を40〜150℃とし、かつ時間を5〜120分として切断されてい
    ないネギ属植物を加熱することにより該ネギ属植物中のC-Sリアーゼを失活させること
    を特徴とするネギ属植物処理物の製造方法。
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