JP4168625B2 - ボールねじ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転運動を直線運動に、または、直線運動を回転運動に変換するボールねじに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボールねじは、ねじ軸とナットと玉を備えている。ねじ軸の外面とこのねじ軸が挿通するナットの内面には、互いに向合う螺旋状のねじ軸溝とナット溝が設けられており、ねじ軸溝とナット溝とのそれぞれに複数の玉が転接している。そして、ねじ軸またはナットが回転運動することでねじ軸またはナットを直線運動させ、ねじ軸またはナットが直線運動することでねじ軸またはナットを回転運動させる。
【0003】
ねじ軸にトルクがかかったり、ナットにねじ軸に沿う方向の負荷がかかったりした場合にバックラッシュを少なく抑えることができることから、ねじ軸溝及びナット溝にそれぞれ直交する断面は、ゴシックアーク形状に形成されている。このゴシックアーク形状は、それぞれの溝に転接する玉の半径よりも大きい曲率半径で描かれる二つの円弧の凹側を向き合わせた形状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなボールねじは、精度よく造られた場合には、ナットにかかるねじ軸に沿う方向の荷重やねじ軸にかかるトルクに対して安定した動作特性を有する。しかしながら、実際には、ボールねじの各溝を形成する円弧の曲率半径、その曲率半径中心の偏心(オフセット)量、ねじ軸の円筒度、螺旋状に形成されたねじ軸溝及びナット溝のよろめき度やリードなどの誤差が組み合わさることで、ボールねじの転がり摩擦抵抗が変動する。そのため、ボールねじの位置決めや速度の制御性の低下や、摩擦による発熱などが生じ、ボールねじの寿命を著しく低下させる。
【0005】
特に、例えば、油圧位置決め装置や船舶の舵取り装置などのように直線運動から回転運動に運動方向を変換する場合は、ねじ軸みぞ側において滑り摩擦が生じる。また、例えば、工作機械の送り装置、検査機、半導体製造装置の搬送機、ワイヤボンダ、電動射出成形機、プレス機など、回転運動から直線運動に運動方向を変換する場合は、ナット溝側において滑り摩擦が生じる。
【0006】
また、リニアスケールやロータリーエンコーダなどのセンサを併用し、セミクローズド・フィードバック制御やフルクローズド・フィードバック制御することで、機械装置などでボールねじが使用されている可動軸の位置決めや移動速度の精度を向上させる方法がある。しかし、いずれの場合もセンサ及びそのフィードバック制御装置を取付けることで装置が大型化するだけでなく、ボールねじそのものの仕上がり精度の誤差から生じるトルク変動や発熱などは、低減することはできない。
【0007】
そこで、本発明は、運動方向の変換過程において作動効率がよく、耐久性に優れたボールねじを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のボールねじは、ねじ軸とナットと複数の玉とを備え、ねじ軸に形成されたねじ軸溝と前記ナットに形成されたナット溝とのそれぞれの溝に直交する断面が、玉の半径よりも大きい曲率半径の向かい合う二つの円弧で形成されたゴシックアーク形状であることを前提とする。そして、玉の半径をd、ねじ軸溝に直交する断面を形成す円弧の曲率半径をRs 、この曲率半径Rs の中心から玉の中心までのねじ軸溝に直交する断面に沿う方向の距離をXcs、ナット溝に直交する断面を形成する円弧の曲率半径をRn 、この曲率半径Rn の中心から玉の中心までのねじ軸溝に直交する断面に沿う方向の距離をXcnとするとき、
−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1
を満たすように各寸法を決定する。
【0009】
また、ねじ軸またはナットをねじ軸の軸線に沿う方向に直線運動させることで、ねじ軸またはナットを回転運動させる場合は、
−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}<0
を満たすように各寸法を決定する。
【0010】
また、ねじ軸またはナットを回転運動させることで、ねじ軸またはナットをねじ軸の軸線に沿う方向に直線運動させる場合は、
0<{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1
を満たすように各寸法を決定する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の第1の実施形態について、図1から図6及び図12を参照してを参照して説明する。図1に示すボールねじ1は、ねじ軸SとナットNと多数の玉2を備えている。ねじ軸Sの外面3とナットNの内面4には、互いに向かい合う螺旋状のねじ軸溝5とナット溝6が形成されている。玉2は、これらねじ軸溝5とナット溝6とにそれぞれ転接している。
【0012】
図1中のF2で指し示す部位のボールねじ1のねじ軸溝5及びナット溝6のそれぞれに直交する断面(図12中のG−G断面)を図2に示す。図2に示すようにねじ軸溝5とナット溝6は、断面がゴシックアーク形状をしている。玉の半径をd、ねじ軸溝5の断面を形成する第1の円弧5a,5bの曲率半径をRs1,Rs2、この第1の円弧5a,5bの曲率半径中心Cs1,Cs2から玉2の中心Aを通るねじ軸Sに垂直な線Bまでのねじ軸溝5に直交する断面に沿う方向の距離をXcs1,Xcs2、ナット溝6の断面を形成する第2の円弧6a,6bの曲率半径をRn1,Rn2、この第2の円弧6a,6bの曲率半径中心Cn1,Cn2から玉2の中心Aを通るねじ軸Sに垂直な線Bまでのナット溝6に直交する断面に沿う方向の距離をXcn1,Xcn2、玉2の中心Aを通るねじ軸Sに垂直な線Bに対してねじ軸溝5と玉2の接点2sa,2sbがなす中心Aの角度(接触角)をαrs1,αrs2、ナット溝6と玉の接点2na,2nbの接触角をαrn1,αrn2とすると、
sinαrs1=Xcs1/(Rs1−d)
sinαrs2=Xcs2/(Rs2−d)
sinαrn1=Xcn1/(Rn1−d)
sinαrn2=Xcn2/(Rn2−d)
このとき、
Rs1=Rs2=Rs、Xcs1=Xcs2=Xcs
Rn1=Rn2=Rn、Xcn1=Xcn2=Xcn
なので、
αrs1=αrs2、αrn1=αrn2
である。そして、
−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}<0
を満たすようにねじ軸溝5とナット溝6とが形成されている。
【0013】
以上のように形成されたボールねじ1が、ねじ軸Sに沿う方向から見た断面である図3に示すようにねじ軸Sに対してナットNが矢印P方向に移動するように外力fN をナットNに受けるとともに、この外力fNの反力であるfSをねじ軸Sに受けると、玉2のナット溝6との転接部2nbに外力fN1が作用し、玉2のねじ軸溝5との転接部2saに外力fS1がそれぞれ作用する。これら外力fN1,fS1 は、それぞれ玉2の中心Aに向かう分力fN2,fS2 と、転接部2nb,2saの接線方向の分力fN3,fS3とに分けられる。
【0014】
このとき、図4に示すようにねじ軸溝5とナット溝6とが螺旋状に形成されているので、分力fN3,fS3は、玉2を回転させる向きに作用し、ナット6に対してねじ軸Sを矢印Q方向に回転させる。つまり、分力fN3,fS3 によってナットNとねじ軸Sが相対的に回転しないようにナットNの回転を固定し、ナットNを矢印P方向に外力fNで押したときにねじ軸Sが矢印P方向に移動しないように支持すると、ナットNが矢印P方向に移動することでねじ軸Sが矢印Q方向に回転し、玉2が分力fN3 の反力fN4 と分力fS3 によってねじ軸溝5及びナット溝6に沿って矢印U方向に転動する。そして、図1に示すようにねじ軸Sが矢印Q方向に回転することで、ねじ軸溝5とナット溝6との間にT1から入った玉2は、溝5,6に沿ってねじ軸Sの周りを転動しながら矢印T2方向に移動し、循環チューブ7の中を通って矢印T3方向に移動し、再びT1から溝5,6の間に入るように1つのサーキットを循環する。
【0015】
また、図5に示すように玉2に対してねじ軸Sが矢印Q方向、ナットNが矢印Qと反対の方向にそれぞれ回転することで、転接部2sa,2nbのそれぞれに摩擦力fN5,fS5が作用する。このとき、転接部2sa,2nbが、ねじ軸SとナットNの回転中心軸と玉2の中心Aを通る縦断面Eよりも回転方向に対して下流側にあるため、摩擦力fN5,fS5は、玉2をねじ軸Sに押付ける方向の力の成分を含んでいる。これにより、玉2は、接点2sbにおけるねじ軸溝5への押付け力が大きくなり、接点2naにおけるナット溝6への押付け力が小さくなる。
【0016】
ナットNが矢印P方向に付勢されてねじ軸Sが矢印Q方向に回転するとき、玉2は、図5に示すようにねじ軸Sに垂直な断面から見て、ねじ軸Sの回転速度よりも遅い移動速度でねじ軸Sを中心に転動する。このとき、玉2は、図3に示すように転接部2nb,2saによって玉2の中心Aを通る回転軸Wを中心に自転している。この回転軸Wのねじ軸溝5との交点を5wとすると、線BのナットN側から交点5wまでの角度は、図2及び図3から、
(π+αrs1−αrn2)/2+αrn1
=(π+αrs+αrn)/2=β1
線BのナットN側から接点2sbまでの角度は、
π−αrs2=π−αrs=β2
で表すことができる。
【0017】
そして、β2>β1のとき、接点2sbは、ねじ軸溝5の移動に対して同じ方向に移動する(順転)位置にある。したがって、ねじ軸Sを中心としたねじ軸Sと玉2の回転速度の差によってねじ軸溝5と接点2sbは、摩擦を生じているが、接点2sbが順転の位置にあることで、その摩擦が軽減される。
【0018】
このとき、図5に示すように玉2は、接点2sbが縦断面Eよりも回転方向に対して上流側にあるとともに、回転軸Wを中心に自転している。したがって、接点2sbに作用する摩擦力fS6は、ねじ軸Sを中心に回転するねじ軸溝5と玉2との回転速度差によって生じる摩擦力fS7、及び玉2の自転によって生じる摩擦力fS8の合力であって、玉2をねじ軸Sから離す方向に作用する。また、図3に示すように接触角αrs,αrnがαrs<αrnのとき、転接部2sa,2nbに働く玉2の中心A方向の力fS2,fN2の合力fAは、玉2をねじ軸溝5から離す方向に作用する力の成分を含んでいる。
【0019】
そこで、玉2に作用する力が好適に作用し合う接触角の条件を求めるために、玉2のねじ軸溝5及びナット溝6との転接部2sa,2nbに生じる転がり摩擦や、接点2sbに生じる摩擦力fS6などによって生じるボールねじ1の摩擦トルクと、接触角αrs,αrnとの関係について解析を行った結果を図6に示す。数値を取り扱いやすくするために、接触角αrs,αrnをそれぞれsinαrs,sinαrnとすると、摩擦トルクは、図6のグラフに示すように(sinαrs−sinαrn)、すなわち、{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}が、
−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}<0
の範囲で小さくなっている。
【0020】
また、{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦−0.1の範囲において、摩擦トルクが急激に大きくなっている。この原因としては、接点2sbが順転から逆転に転じたり、玉2に作用する力のバランスが変化して玉が接点2naに接触したりするためであると推察される。
【0021】
また、0<{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}の範囲においては、
sinαrs=Xcs/(Rs−d)
sinαrn=Xcn/(Rn−d)
であり、このとき 0°<αrs<90°、0°<αrn<90° であるから、 αrn<αrs である。これは、玉2に作用する力fAがねじ軸S向きの力の成分を有し、接点2sbにおける摩擦抵抗を増加させることを意味している。
【0022】
(実施例1)
軸径φ16mm、リード5mm、巻き数1.5巻を2列、玉径φ3.175mm(半径d=1.5875mm)、Rs =Rn =1.715mmのボールねじについて、軸方向の外力と同じ方向にナットまたはねじ軸が移動するときの摩擦トルクを計算した。軸方向の外力(アキシアル荷重)500N、軸回転数10rpmの逆作動とし、軸側とナット側のレストアングル(初期接触角)を39°〜51°の範囲で変化させ、半径方向(ラジアル)隙間を−0.002mm,0mm,0.004mmの場合について解析を行った。
【0023】
その結果、−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}<0の範囲で摩擦トルクを3.0×10−2N・m以下に低減できることが確認できた。
【0024】
(実施例2)
軸径φ32mm、リード20mm、巻き数2.5巻を1列、玉径φ4.7625mm(半径d=2.38125mm)、Rs =Rn =2.572mmのボールねじについて、軸方向の外力と同じ方向にナットまたはねじ軸が移動するときの摩擦トルクを計算した。アキシアル荷重 1kN,軸回転数10rpmの逆作動とし、軸側とナット側のレストアングルを39°〜51°の範囲で変化させ、ラジアル隙間を−0.002mm、0mm、0.005mmの場合について解析を行った。なお、ラジアル隙間が負の値であるものは、予圧状態を意味する。
【0025】
その結果、実施例1と同様に−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}<0の範囲で摩擦トルクを11.0×10−2N・m以下に低減できることが確認できた。
【0026】
なお、第1の実施形態における条件は、ボールねじ1のリードやラジアル及びアキシアル隙間の値に関係せず、直線運動から回転運動に運動を変換するボールねじに対して有効である。
【0027】
次に、本発明の第2の実施形態について、図7から図11を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同じ構成については、同一の符号を付してその説明を省略する。この第2の実施形態のボールねじ1は、ねじ軸溝5とナット溝6に直交する断面(図12中のG−G断面に相当する断面)を示した図7における各寸法が、
0<{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1
を満たすようにねじ軸溝5とナット溝6が形成されている。
【0028】
このように構成されたボールねじ1は、図8に示すようにナットNに対してねじ軸Sが矢印Q方向に回転するように外力fS9を受けるとともに、ナットNが外力fS9と反対方向の外力fN9を受ける。玉2は、接点(転接部)2sbでねじ軸溝5と転接し、接点(転接部)2naでナット溝6と転接する。そして、転接部2sbに外力fS10が作用し、転接部2naに外力fN10が作用する。また、外力fS10,fN10は、それぞれ玉2の中心Aに向く分力fS11,fN11と、玉2の接線方向の分力fS12,fN12とに分けられる。
【0029】
また、図9に示すようにねじ軸Sが外力fS9を受けるとともに、ナットNが外力fN9を受けると、分力fS12,fN12の矢印P方向の力の成分によってねじ軸Sが、矢印P方向と反対の方向に移動し、ナットNが、矢印P方向に移動する。そこで、ナットNの矢印Q方向の動きを固定するとともに、ねじ軸Sの矢印P方向の動きを固定し、ねじ軸Sを矢印Q方向に回転させると、ナットNが矢印P方向に動く。すなわち、ねじ軸Sの回転運動が、ナットNの直線運動に変換される。
【0030】
このとき、ねじ軸溝5とナット溝6が螺旋状に形成されているので、転接部2sb,2naは、図8に示すようにねじ軸SとナットNの回転軸中心と玉2の中心Aを通る縦断面Eよりも回転方向において上流側でねじ軸溝5及びナット溝6と転接しており、外力fS10,fN10及び分力fS12,fN12は、玉2をナット溝6に押付ける方向の力の成分を含んでいる。つまり、玉2に対して相対的にねじ軸Sが矢印Q方向に回転するとともにナットNが矢印Qと反対の方向に回転すると、玉2がナット溝6の方向に付勢され、接点2saのねじ軸溝5への押付け力が小さくなり、接点2nbのナット溝6への押付け力が大きくなる。
【0031】
ねじ軸Sが矢印Q方向に外力fS9によって回転することでナットNが矢印P方向に移動するとき、図8に示すように玉2は、ねじ軸Sに垂直な断面から見て、ねじ軸Sの回転速度よりも遅い移動速度でねじ軸Sを中心にねじ軸溝5及びナット溝6の間を転動する。このとき図10に示すように玉2は、転接部2sb,2naに作用する分力fS12,fN12によって玉2の中心Aを通る回転軸Wを中心に自転している。この回転軸Wのナット溝6との交点を6wとすると、線BのナットN側から交点6wまでの角度は、図7及び図10から、
(αrn1+π−αrs1)/2−αrn1
=(π−αrs−αrn)/2=β3
で表される。また、線BのナットN側から接点2nbまでの角度は、
αrn2=αrn=β4
とする。β4<β3のとき、すなわち、(π−αrs−3αrn)/2>0のとき、接点2nbは、玉2に対してナットNが相対的に動く方向と同じ方向に移動する、いわゆる順転の位置となる。したがって、回転軸Wを中心に自転するとともに、ねじ軸Sを中心に回転運動する玉2の接点2nbは、ナット溝6との間に摩擦を生じているが、順転の位置にあるため、ナット溝6に接点2nbが擦れる相対速度が遅くなることでその摩擦は軽減される。また、図8に示すように接点2nbが縦断面Eに対して下流側にあるるとともに、図10に示す回転軸Wを中心に自転しているので、接点2nbに作用する摩擦力fN13は、ナットNとの摩擦力fN14、及び玉2の自転による摩擦力fN15の合力であって、玉2をナット溝6に押付ける方向に作用する。また、接触角αrs,αrnがαrs>αrnのとき、図10に示すように転接部2sa,2nbに働く玉2の中心A方向の力fS11,fN11の合力fA′は、玉2をナット溝6から離す方向に作用する力の成分を含んでいる。
【0032】
そこで、玉2に作用する力が好適に作用し合う接触角の条件を求めるために、玉2のねじ軸溝5及びナット溝6との転接部2sb,2naに生じる転がり摩擦や、接点2nbに生じる摩擦力fN13などによって生じるボールねじ1の摩擦トルクと、接触角αrs,αrnとの関係について解析を行った結果を図11に示す。数値を取り扱いやすくするために、接触角αrs,αrnをそれぞれsinαrs,sinαrnとすると、摩擦トルクは、図11のグラフに示すように(sinαrs−sinαrn)、すなわち、{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}が、
0<{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1
の範囲で小さくなっている。特に、{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}=0.05付近で摩擦トルクが最も小さく、好適であることが分かる。
【0033】
(実施例1)
軸径φ16mm、リード5mm、巻き数1.5巻の2列、玉径φ3.175mm(半径d=1.5875mm)、Rs =Rn =1.715mmのボールねじについて、ねじ軸またはナットの回転トルクによって、ナットまたはねじ軸が軸方向の外力に逆らって移動するときの摩擦トルクを計算した。アキシアル荷重1kNに抗して軸回転数2000rpmで回転する正作動とし、軸側とナット側のレストアングルを41°〜49°の範囲で変化させ、ラジアル隙間を0mm、−0.002mm、−0.004mmの場合について解析を行った。
【0034】
その結果、0<{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1の範囲で摩擦トルクを8.0×10−2N・m以下に低減できることが確認できた。特に、{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.05までは、ラジアル隙間の値に関わらず摩擦トルクが低減される。また、負のラジアル隙間のときは、その絶対値の小さい方が、摩擦トルクの低減を可能とする変数の範囲を広く取ることができる。
【0035】
(実施例2)
軸径φ40mm、リード10mm、巻き数2.5巻の2列、玉径φ6.35mm(半径d=3.175mm)、Rs =Rn =3.43mmのボールねじについて、ねじ軸またはナットの回転トルクによって、ナットまたはねじ軸が軸方向の外力に逆らって移動するときの摩擦トルクを計算した。アキシアル荷重5kNに抗して軸回転数1000rpmで回転する正作動とし、軸側とナット側のレストアングルを41°〜49°の範囲で変化させ、ラジアル隙間を0mm、0.008mmの場合について解析を行った。
【0036】
その結果、0<{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1の範囲で摩擦トルクを8.0×10−2N・m以下に低減できることが確認できた。特に、{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≒0.05付近では、{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}=0のときの結果と比較して、30%以上の摩擦トルクの低減が確認できた。
【0037】
なお、第2の実施形態の条件は、ボールねじ1のリードやラジアル及びアキシアル隙間の値に関係せず、回転運動から直線運動に運動方向を変換するボールねじに対して有効である。
【0038】
本発明の第3の実施形態のボールねじについて説明する。なお、第1の実施形態及び第2の実施形態において既に説明した内容についてはその説明を省略する。ボールねじのねじ軸に捲回された複数のサーキットを互いにねじ軸に沿う方向に寄せる方向、または、離す方向に荷重を加えることで、予圧を施したボールねじがある。
【0039】
このとき、
−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1
の範囲の寸法となるようにこのボールねじのねじ軸溝及びナット溝を形成する。このボールねじの使用方法として、ねじ軸またはナットに軸方向の荷重を加えて、ナットまたはねじ軸を回転させる場合と、ねじ軸またはナットに回転トルクをくわえてナットまたはねじ軸を軸方向に移動させる場合がある。
【0040】
いずれの場合においても、予圧の関係にある一対のサーキットの内の一方のサーキットは、第1の実施形態で述べた逆作動の状態になり、他方のサーキットは第2の実施形態で述べた正作動の状態になる。
【0041】
このボールねじのねじ軸溝とナット溝は、
−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1
で形成されているので、少なくともどちらか一方のサーキットの摩擦トルクが軽減されることとなる。したがって、ボールねじの作動時に生じる摩擦トルクは、総合的に評価した場合、低減されることとなるので良い。
【0042】
【発明の効果】
ねじ軸とナットと複数の玉とを備えるボールねじにおいて、ねじ軸に形成されたねじ軸溝とナットに形成されたナット溝とのそれぞれの溝に直交する断面が、玉の半径よりも大きい曲率半径の向かい合う二つの円弧で形成されたゴシックアーク形状であって、
−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1
を満たす本発明のボールねじによれば、玉とねじ軸、または玉とナットとの間に生じる摩擦が軽減する。したがって、運動方向の変換過程において作動効率がよく、耐久性に優れる。
【0043】
また、ねじ軸溝及びナット溝の各寸法が、
−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}<0
である本発明のボールねじによれば、ねじ軸の軸線に沿う方向のねじ軸またはナットの直線運動をねじ軸またはナットの回転運動に変換する場合、玉とねじ軸、または玉とナットとの間に生じる摩擦が軽減する。したがって、運動方向の変換過程において作動効率がよいので、耐久性に優れている。
【0044】
また、ねじ軸溝及びナット溝の各寸法が、
0<{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1
である本発明のボールねじによれば、ねじ軸またはナットの回転運動をねじ軸の軸線に沿う方向のねじ軸またはナットの直線運動に変換する場合、玉とねじ軸、または玉とナットとの間に生じる摩擦が軽減する。したがって、運動方向の変換過程において作動効率がよいので、耐久性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態のボールねじの一部を切欠いて示す斜視図。
【図2】図1中のF2で示す部位のねじ軸溝に直交する断面図。
【図3】図1のボールねじのねじ軸に沿う方向の断面において作用する力を示す図。
【図4】図3中のナットを省略し、図3中のF4−F4に沿って示す正面図。
【図5】図3中のF5−F5に沿って示す断面図。
【図6】本発明の第1の実施形態のボールねじの摩擦トルクと接触角との関係を示すグラフ。
【図7】本発明の第2の実施形態のボールねじのねじ軸溝に直交する断面図。
【図8】図7中のF8−F8に沿って示すボールねじのねじ軸に垂直な断面図。
【図9】図8中のナットを省略し、図8中のF9−F9に沿って示すボールねじの正面図。
【図10】図9中のF10−F10に沿って示すボールねじの断面図。
【図11】本発明の第2の実施形態のボールねじの摩擦トルクと接触角との関係を示すグラフ。
【図12】図1のねじ軸の一部を示す側面図。
【符号の説明】
1…ボールねじ
2…玉
S…ねじ軸
N…ナット
5…ねじ軸溝
6…ナット溝
5a,5b…(ねじ軸溝のゴシックアークを形成する)円弧
6a,6b…(ナット溝のゴシックアークを形成する)円弧
A…玉の中心
d…玉の半径
Rs1…(円弧5aの)曲率半径
Rs2…(円弧5bの)曲率半径
Rn1…(円弧6aの)曲率半径
Rn2…(円弧6bの)曲率半径
Cs1…曲率半径Rs1の中心
Cs2…曲率半径Rs2の中心
Cn1…曲率半径Rn1の中心
Cn2…曲率半径Rn2の中心
Xcs1…曲率半径Rs1の中心から玉の中心までのねじ軸溝に直交する断面に沿う方向の距離
Xcs2…曲率半径Rs2の中心から玉の中心までのねじ軸溝に直交する断面に沿う方向の距離
Xcn1…曲率半径Rn1の中心から玉の中心までのねじ軸溝に直交する断面に沿う方向の距離
Xcn2…曲率半径Rn2の中心から玉の中心までのねじ軸溝に直交する断面に沿う方向の距離
Claims (2)
- ねじ軸とナットと複数の玉とを備え、
前記ねじ軸または前記ナットを前記ねじ軸の軸線に沿う方向に直線運動させることで、前記ねじ軸または前記ナットを回転運動させるボールねじにおいて、
前記ねじ軸に形成されたねじ軸溝と前記ナットに形成されたナット溝とのそれぞれの溝に直交する断面が、前記玉の半径よりも大きい曲率半径の向かい合う二つの円弧で形成されたゴシックアーク形状であって、
前記玉の半径をd、前記ねじ軸溝に直交する断面を形成する円弧の曲率半径をRs、この曲率半径Rsの中心から前記玉の中心を通る前記ねじ軸に垂直な線までの前記ねじ軸溝に直交する断面に沿う方向の距離をXcs、前記ナット溝に直交する断面を形成する円弧の曲率半径をRn 、この曲率半径Rn の中心から前記玉の中心を通る前記ねじ軸に垂直な線までの前記ナット溝に直交する断面に沿う方向の距離をXcnとすると、
−0.1≦{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}<0
を満たすことを特徴とするボールねじ。 - ねじ軸とナットと複数の玉とを備え、
前記ねじ軸または前記ナットを回転運動させることで、前記ねじ軸または前記ナットを前記ねじ軸の軸線に沿う方向に直線運動させるボールねじにおいて、
前記ねじ軸に形成されたねじ軸溝と前記ナットに形成されたナット溝とのそれぞれの溝に直交する断面が、前記玉の半径よりも大きい曲率半径の向かい合う二つの円弧で形成されたゴシックアーク形状であって、
前記玉の半径をd、前記ねじ軸溝に直交する断面を形成する円弧の曲率半径をRs、この曲率半径Rsの中心から前記玉の中心を通る前記ねじ軸に垂直な線までの前記ねじ軸溝に直交する断面に沿う方向の距離をXcs、前記ナット溝に直交する断面を形成する円弧の曲率半径をRn 、この曲率半径Rn の中心から前記玉の中心を通る前記ねじ軸に垂直な線までの前記ナット溝に直交する断面に沿う方向の距離をXcnとすると、
0<{Xcs/(Rs−d)−Xcn/(Rn−d)}≦0.1
を満たすことを特徴とするボールねじ。
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