JP2017002941A - ボールねじ - Google Patents

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Abstract

【課題】軸方向の一方の向きに荷重が作用する用途で使用されるボールねじとして、作動性および耐久性が良好なものを低コストで得る。
【解決手段】ねじ軸1およびナット2の螺旋溝11,21は、 溝直角断面において、溝幅方向中心線Cの両側に第一面111,211および第二面112,212を有する。第一面および第二面は、作動中に荷重を受ける負荷面111,211と荷重を受けない非負荷面112,212とに分けられる。作動中に、複数のボール3のそれぞれは、ねじ軸1の負荷面111とナット2の負荷面211とに各一点Cs, Cnで接触し、ねじ軸1の非負荷面112およびナット2の非負荷面212には接触しない。
【選択図】図3

Description

この発明は、軸方向の一方の向きに荷重が作用する用途で使用されるボールねじに関する。
ボールねじは、ねじ軸とナットと複数のボールとを有し、ねじ軸がナットを貫通し、ねじ軸の螺旋溝とナットの螺旋溝とによりボールが転動する転動路が形成され、転動路内を負荷状態で転動するボールを介して、ナットおよびねじ軸のいずれか一方が回転し他方が直線運動する装置である。
ボールねじの用途として、自動車、二輪車、船舶などのアクチュエータに直動⇔回転変換部として組み込まれる用途が例示できる。これらの用途のうち、例えば、ブレーキ液圧増圧アクチュエータやクラッチアクチュエータ用のボールねじは、荷重方向(推力)が一方向である(つまり、軸方向の一方の向きに荷重が作用する)。
特許文献1には、自動車のARSシステム等に応用される車輪操舵装置を構成するボールねじについて、ねじ軸とナットの接触角に角度差を設け、操舵軸のねじ溝の接触角をナットのねじ溝の接触角よりも大きくすることが記載されている。これにより、逆作動時の作動効率を正作動時の作動効率よりも低くすることで、車両安定性を良好にしている。また、ねじ軸およびナットの螺旋溝は共にゴシックアーク溝である。
特許文献2には、射出成形機や工作機械の縦軸用等、主荷重方向を限定出来る用途に好適なボールねじが記載されている。また、ボールねじに関する以下の記載がある。
ボール転動溝(ねじ軸およびナットの螺旋溝)にゴシックアーク溝を採用した一般のボールねじでは、ナットに荷重が作用するとボールは負荷を受けて、ねじ軸側およびナット側それぞれのボール転動溝の一方の円弧と接触し、それらの円弧(負荷円弧)での二点の接触点によって主荷重を受け持つ。主荷重とは、往復動するナットに働く軸方向での荷重のうち、相対的に大きな負荷がボールおよびボール転動溝の一方の円弧に働く軸方向での荷重のことをいう。
ボールねじのボール転動溝が形成する軌道(転動路)は、螺旋状にねじれているため、ボールねじが回転するとボール転動溝のくさび作用によって、ボール転動溝の直角断面に対して平行方向にボールが動く。そのため、軸・ナット溝の相対関係によっては、ねじ軸側またはナット側の主荷重を受け持たない円弧(非負荷円弧)にボールが三点目の接触をする。
そして、三点目の接触点となる非負荷円弧を、負荷円弧に比べて、ボールとの接触角を小さく、またはその曲率半径を大きく、若しくはその両方とすれば、三点目の接触点での摩擦を低減させることができるため、ボールねじの寿命を延ばすことができる。また、負荷円弧については、定格荷重を受け持つために必要な接触角や円弧の曲率を維持することができるから、ボールねじとして所望の性能を保つことができる。したがって、ボールねじの定格荷重を落とさないで耐久寿命を延ばすことができる。
特開2003−137112号公報 特開2005−76650号公報
特許文献1に記載されたボールねじは、ねじ軸とナットとで接触角が異なるゴシックアーク溝を有するため、螺旋溝の加工に高い加工精度が要求される。また、特許文献1に記載された発明は、逆作動時の作動効率を正作動時の作動効率よりも低くすることを目的としている。
特許文献2に記載されたボールねじは、ボールが転動路に対して三点接触になっているため、 ねじ軸およびナットの螺旋溝の非負荷円弧面も高精度に形成する必要がある。
この発明の課題は、軸方向の一方の向きに荷重が作用する用途で使用されるボールねじとして、作動性および耐久性が良好なものを低コストで得ることである。
上記課題を解決するために、この発明の一態様のボールねじは、下記の構成(1) (2) を有する。
(1) ねじ軸とナットと複数のボールとを有し、前記ねじ軸は前記ナットを貫通する。前記ねじ軸の螺旋溝と、前記ナットの螺旋溝と、により、前記ボールが転動する転動路が形成されている。前記転動路内を負荷状態で転動する前記ボールを介して、前記ナットおよび前記ねじ軸のいずれか一方が回転し他方が直線運動する。軸方向の一方の向きに荷重が作用する用途で使用される。前記ねじ軸および前記ナットの前記螺旋溝は、溝直角断面において、溝幅方向中心線の両側に第一面および第二面を有する。
(2) 前記第一面および前記第二面は、作動中に前記荷重を受ける負荷面と前記荷重を受けない非負荷面とに分けられる。作動中に、前記複数のボールのそれぞれは、前記ねじ軸の前記負荷面と前記ナットの前記負荷面とに各一点で接触し、前記ねじ軸の前記非負荷面および前記ナットの前記非負荷面には接触しない。
前記態様のボールねじは、上記構成(1) (2) に加えて、下記の構成(3) を有することができる。なお、下記の構成(3) はこの発明の必須要件ではない。
(3) 前記負荷面は円弧状に形成され、前記非負荷面は、溝底ラインおよび溝開口側ラインが直線で互いに交差する形状を有する。
この発明のボールねじは、軸方向の一方の向きに荷重が作用する用途で使用された際の作動性および耐久性が良好であって、低コストで得ることができる。
実施形態のボールねじを示す概略構成図である。 第一実施形態のボールねじについて、非作動時における転動路とボールとの関係を示す図であって、転動路を形成するねじ軸およびナットの螺旋溝が溝直角断面で示されている。 第一実施形態のボールねじについて、作動時における転動路とボールとの関係を示す図であって、転動路を形成するねじ軸およびナットの螺旋溝が溝直角断面で示されている。 第二実施形態のボールねじについて、非作動時における転動路とボールとの関係を示す図であって、転動路を形成するねじ軸およびナットの螺旋溝が溝直角断面で示されている。 第二実施形態のボールねじについて、作動時における転動路とボールとの関係を示す図であって、転動路を形成するねじ軸およびナットの螺旋溝が溝直角断面で示されている。
以下、この発明の実施形態について説明するが、この発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、この発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定はこの発明の必須要件ではない。
[第一実施形態]
<ボールねじの概要>
図1に示すボールねじ10は、ねじ軸1と、ナット2と、複数のボール3と、リターンチューブ4と、シール5とを有する。図1において、ナット2と、リターンチューブ4の一部と、シール5は、断面で示されている。
ねじ軸1はナット2を貫通している。ねじ軸1の螺旋溝11とナット2の螺旋溝21とにより、ボール3が転動する転動路30が形成されている。ナット2は、円筒部2Aと、円筒部2Aの軸方向一端に形成されたフランジ2Bとからなる。ナット2の円筒部2Aの外周面に、リターンチューブ4を設置するための平坦部23が形成されている。
リターンチューブ4は、ボール3を転動路30の終点から始点に戻すボール戻し路を形成する部材である。リターンチューブ4の両端部がナット2の平坦部23に形成された貫通穴23aに挿入され、リターンチューブ4の中間部が固定金具6を用いてナット2の平坦部23に固定されている。
ボール3は、転動路30内とリターンチューブ4内に配置されている。ボールねじ10の作動時には、転動路30内を負荷状態で転動するボール3を介して、ナット2およびねじ軸1のいずれか一方が回転し他方が直線運動する。ボールねじ10は軸方向の一方の向きに荷重が作用する用途で使用される。
<螺旋溝の詳細>
ねじ軸1の螺旋溝11は、図2に示すように、溝直角断面において、溝幅方向中心線Cの両側に第一面111および第二面112を有する。
第一面111は、OS1を中心とした半径RS1の円弧状に形成されている。第二面112は、OS2を中心とした半径RS2の円弧状に形成されている。第二面112の半径RS2は第一面111の半径RS1より大きい。
ナット2の螺旋溝21は、図2に示すように、溝直角断面において、溝幅方向中心線Cの両側に第一面211と第二面212を有する。ナット2の第一面211は、ねじ軸1の第一面111とボール3の中心を挟んで対向する面である。
第一面211は、ON1を中心とした半径RN1の円弧状に形成されている。
第二面212は、第一面211の円弧に連続する溝底ライン212aと、ナット2の内周面22に連続する溝開口側ライン212bを有する形状であり、第一面211の円弧よりも深い位置に形成されている。溝底ライン212aおよび溝開口側ライン212bは直線状で、互いに鈍角で交差し、両者の交点である角部が丸く形成されている。
また、ボールねじ10は、転動路30とボール3との間に小さな隙間を有する。
そのため、図3に示す荷重方向でのボールねじ10の作動中に、複数のボール3は、それぞれ、ねじ軸1の螺旋溝11の第一面111とナット2の螺旋溝21の第一面211とに各一点で接触し、ねじ軸1の第二面112およびナット2の第二面212には接触しない。すなわち、ボール3が転動路30に対して二点接触となる。図3には、ボール3とねじ軸1の負荷面との接触点がCsで、ボール3とナット2の負荷面との接触点がCnで、それぞれ示されている。
つまり、図3に示す荷重方向でのボールねじ10の作動中に、ねじ軸1およびナット2の螺旋溝11,21の第一面111,211が負荷面になる。また、ねじ軸1およびナット2の螺旋溝11,21の第二面112,212が非負荷面になる。
また、図3に示す作動を正作動とした時のボールねじ10の逆作動時にも、ボール3が転動路30に対して二点接触となる。
第一実施形態のボールねじ10によれば、作動時にボール3が転動路30に対して二点接触となることにより、三点接触の場合と比較して、滑り摩擦が少なくなるため、作動性および耐久性が向上する。
また、ねじ軸1およびナット2の螺旋溝11,21の第二面112,212は、非負荷面となるため、負荷面となる第一面111,211のように高い寸法精度で形成する必要がない。
つまり、ねじ軸1の第二面112は円弧面に形成されているが、第一面111の円弧面のように高い寸法精度で形成する必要はない。例えば第一面111に対して必要な最終仕上げ加工が、第二面112では不要になる。また、ナット2の第二面212についても同様である。
第二面112,212で不要になる最終仕上げ加工としては、螺旋溝を転造加工で成形する際に行う熱処理後の酸化スケール除去工程や、螺旋溝を切削加工で形成した後に研削加工で仕上げる際に行う研削工程が挙げられる。
これにより、特許文献1および2に記載されたボールねじと比較して、製造コストを低減できる。
また、ボールねじの作動性が良好になることでモータの小型化が実現できることから、第一実施形態のボールねじを採用することでアクチュエータの小型化に貢献できる。
[第二実施形態]
第二実施形態のボールねじは、第一実施形態のボールねじと螺旋溝の詳細が異なるが、それ以外の点は同じである。
<螺旋溝の詳細>
ねじ軸1の螺旋溝11Aは、図4に示すように、溝直角断面において、溝幅方向中心線Cの両側に第一面111および第二面113を有する。
第一面111は、OS1を中心とした半径RS1の円弧状に形成されている。
第二面113は、第一面111の円弧に連続する溝底ライン113aと、ねじ軸1の外周面12に連続する溝開口側ライン113bを有する形状であり、第一面111の円弧よりも深い位置に形成されている。溝底ライン113aおよび溝開口側ライン113bは直線状で、互いに鈍角で交差し、両者の交点である角部が丸く形成されている。
ナット2の螺旋溝21は、図4に示すように、溝直角断面において、溝幅方向中心線Cの両側に第一面211と第二面212を有する。ナット2の第一面211は、ねじ軸1の第一面111とボール3の中心を挟んで対向する面である。
第一面211は、ON1を中心とした半径RN1の円弧状に形成されている。
第二面212は、第一面211の円弧に連続する溝底ライン212aと、ナット2の内周面22に連続する溝開口側ライン212bを有する形状であり、第一面211の円弧よりも深い位置に形成されている。溝底ライン212aおよび溝開口側ライン212bは直線状で、互いに鈍角で交差し、両者の交点である角部が丸く形成されている。
また、ボールねじ10は、転動路30とボール3との間に小さな隙間を有する。
そのため、図5に示す荷重方向でのボールねじ10の作動中に、複数のボール3は、それぞれ、ねじ軸1の螺旋溝11Aの第一面111とナット2の螺旋溝21の第一面211とに各一点で接触し、ねじ軸1の第二面113およびナット2の第二面212には接触しない。すなわち、ボール3が転動路30に対して二点接触となる。図5には、ボール3とねじ軸1の負荷面との接触点がCsで、ボール3とナット2の負荷面との接触点がCnで、それぞれ示されている。
つまり、図5に示す荷重方向でのボールねじ10の作動中に、ねじ軸1およびナット2の螺旋溝11A,21の第一面111,211が負荷面になる。また、ねじ軸1およびナット2の螺旋溝11A,21の第二面113,212が非負荷面になる。
また、図5に示す作動を正作動とした時のボールねじ10の逆作動時にも、ボール3が転動路30に対して二点接触となる。
第二実施形態のボールねじ10によれば、作動時にボール3が転動路30に対して二点接触となることにより、三点接触の場合と比較して、滑り摩擦が少なくなるため、作動性および耐久性が向上する。
また、ねじ軸1およびナット2の螺旋溝11A,21の第二面113,212は、非負荷面となるため、負荷面となる第一面111,211のように高い寸法精度で形成する必要がない。つまり、例えば第一面111,211に対して必要な最終仕上げ加工が、ねじ軸1の第二面113およびナット2の第二面212では不要になる。
第二面113,212で不要になる最終仕上げ加工としては、螺旋溝を転造加工で成形する際に行う熱処理後の酸化スケール除去工程や、螺旋溝を切削加工で形成した後に研削加工で仕上げる際に行う研削工程が挙げられる。
これにより、特許文献1および2に記載されたボールねじと比較して、製造コストを低減できる。
また、ボールねじの作動性が良好になることでモータの小型化が実現できることから、第二実施形態のボールねじを採用することでアクチュエータの小型化に貢献できる。
[変形例]
非負荷面となる螺旋溝の面(第一実施形態の第二面112,212および第二実施形態の第二面113,212)に溝を設けて、油溜まりの機能を付与することもできる。
非負荷面となる螺旋溝の面の形状は、負荷面の円弧より径が十分大きい円弧(第一実施形態のねじ軸1の第二面112)、溝底ラインおよび溝開口側ラインが直線で互いに鈍角で交差する形状(第一および第二実施形態のナット2の第二面212および第二実施形態のねじ軸1の第二面113)以外に、溝底ラインおよび溝開口側ラインが直線で互いに直交する形状などが挙げられる。
[用途]
この発明のボールねじの用途としては、自動車用のブレーキ増圧用アクチュエータやクラッチ用アクチュエータ、ブレーキキャリパーにブレーキパッドをダイレクトに押し付けるブレーキ、4WD(Wheel Drive )の2WD・4WD切り替え機構、電動パワーステアリング装置のチルトテレスコ調整機構、電動パワーウインドウなどが挙げられる。
[その他]
この発明のボールねじは、作動中に、複数のボールのそれぞれが、ねじ軸の負荷面とナットの負荷面とに各一点で接触し、ねじ軸の非負荷面およびナットの非負荷面には接触しないものである。しかし、微小荷重が付与された際(例えば、ナットを逆回転させ、ねじ軸を突き当てる原点出しの動作などの際)には、非負荷面とされている面にボールが接触する場合もある。ただし、通常の作動時には非負荷面とされている面にボールは接触しない。
10 ボールねじ
1 ねじ軸
11 ねじ軸の螺旋溝
11A ねじ軸の螺旋溝
12 ねじ軸の外周面
111 螺旋溝の第一面(負荷面)
112 螺旋溝の第二面(非負荷面)
113 螺旋溝の第ニ面(非負荷面)
113a 溝底ライン
113b 溝開口側ライン
2 ナット
2A 円筒部
2B フランジ
21 ナットの螺旋溝
22 ナットの内周面
211 螺旋溝の第一面(負荷面)
212 螺旋溝の第二面(非負荷面)
212a 溝底ライン
212b 溝開口側ライン
23 平坦部
3 ボール
30 ボールの転動路
4 リターンチューブ
5 シール
6 固定金具
Cs ボールとねじ軸の負荷面との接触点
Cn ボールとナットの負荷面との接触点
S1 ねじ軸の円弧面(第一面)の中心
S2 ねじ軸の円弧面(第二面)の中心
N1 ナットの円弧面(第一面)の中心
S1 ねじ軸の円弧面(第一面)の半径
S2 ねじ軸の円弧面(第二面)の半径
N1 ナットの円弧面(第一面)の半径

Claims (2)

  1. ねじ軸とナットと複数のボールとを有し、前記ねじ軸は前記ナットを貫通し、前記ねじ軸の螺旋溝と前記ナットの螺旋溝とにより前記ボールが転動する転動路が形成され、前記転動路内を負荷状態で転動する前記ボールを介して、前記ナットおよび前記ねじ軸のいずれか一方が回転し他方が直線運動するボールねじであって、
    軸方向の一方の向きに荷重が作用する用途で使用され、
    前記ねじ軸および前記ナットの前記螺旋溝は、溝直角断面において、溝幅方向中心線の両側に第一面および第二面を有し、
    前記第一面および前記第二面は、作動中に前記荷重を受ける負荷面と前記荷重を受けない非負荷面とに分けられ、
    作動中に、前記複数のボールのそれぞれは、前記ねじ軸の前記負荷面と前記ナットの前記負荷面とに各一点で接触し、前記ねじ軸の前記非負荷面および前記ナットの前記非負荷面には接触しないボールねじ。
  2. 前記負荷面は円弧状に形成され、前記非負荷面は、溝底ラインおよび溝開口側ラインが直線で互いに交差する形状を有する請求項1記載のボールねじ。
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