JP2011079430A - ラック軸支持装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本ラック軸支持装置28は、ハウジング30の保持孔31内にその深さ方向に摺動可能に収容され且つラック軸を摺動可能に支持するラック軸支持部材と、保持孔31に固定された封止部材35と、封止部材35によって支持されラック軸支持部材をラック軸側に付勢する付勢部材とを有している。ラック軸支持部材の後面の環状の領域および封止部材35の前面352の環状の領域356が互いに対向している。ラック軸支持部材の後面および封止部材35の前面352の少なくとも一方に、環状の領域間の摩擦を低減するための潤滑剤を収容した潤滑剤収容凹部としての潤滑剤収容溝40を有する。
【効果】操舵感が向上する。
【選択図】図4
Description
このような課題に対して、特許文献1では、ラック軸支持部材の外周面に形成した溝に、潤滑油を溜め、これにより、保持孔の内面に対するラック軸支持部材の摺動抵抗を抑制するようにしている。
また、特許文献4では、封止部材に固定した軸状のガイド部を、ラック軸支持部材の後面に形成したガイド孔に嵌合させている。これにより、保持孔の深さ方向へのラック軸支持部材の移動を案内するようにしている。
また、特許文献4の技術を利用することが考えられるが、この場合には、ラック軸支持部材および封止部材の大きな変更が必要となる。従って、製造コストが高くなる。
そこで、本発明の目的は、異音を抑制できる安価なラック軸支持装置を提供することである。
この場合、複数の潤滑剤収容溝が放射状に形成されたので、保持孔の周方向および径方向の両方向に関して広範囲にわたって、潤滑剤を環状の領域内に供給できる。また、放射状の溝であれば、保持孔内でのラック軸支持部材の傾きを戻すように、ラック軸支持部材の後面と封止部材の前面との環状の領域同士がスムーズに相対摺動できる。また、例えば、組立時に保持孔への封止部材のねじ込み量を調整することによりラック軸支持部材の移動可能量を調整する場合には、封止部材の前面とラック軸支持部材の後面との環状の領域同士を互いに近接させて相対回転させることになる。このときに、潤滑剤を、環状の領域内の広い範囲に供給することができる。
図1は、本発明の第1の実施形態のラック軸支持装置を有する車両用操舵装置の概略構成の模式図である。図1を参照して、車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7に設けられたピニオン8に噛み合うラック9を有して車両の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸10とを有している。
ステアリングシャフト3は、操舵部材2に連なる入力軸17と、ピニオン軸7に連なる出力軸18とに分割されている。これら入力軸17および出力軸18はトーションバー19を介して同一の軸線上で互いに連結されている。入力軸17に操舵トルクが入力されたときに、トーションバー19が弾性ねじり変形し、これにより、入力軸17および出力軸18が相対回転するようになっている。
ラック軸10は、図2の紙面垂直方向に延びている。ラック9は、はすばラックからなる。このはすばラックが、はすば歯車からなるピニオン8と互いに噛み合っている。ラック軸10は、断面D字形形状をなす。ラック軸10は、ラック9とは反対側に円筒面の一部からなる背面を有している。
また、ラック軸支持装置28は、保持孔31の入口311に固定されておりこの入口311を封止する封止部材35と、封止部材35によって支持されラック軸支持部材34をラック軸10側に付勢する付勢部材36とを有している。
封止部材35は、筒形状をなしており、アルミニウム合金により形成されている。封止部材35の外周に、雄ねじ351が形成されている。雄ねじ351は、右ねじにより形成されており、保持孔31の雌ねじ313にねじ嵌合されている。また、雄ねじ351には、ロックナット37がねじ嵌合されている。ロックナット37がハウジング30の端面に押圧されることにより、封止部材35がハウジング30に止定されている。封止部材35の後面353には、多角形形状の孔からなる工具係合孔354が設けられている。
ラック軸支持部材34は、保持孔31内に収容されており、この保持孔31の深さ方向Z3に進退可能に保持孔31に保持されている。ラック軸支持部材34は、アルミニウム合金により形成されており、略円柱形状をなしている。この略円柱形状の中心軸線が、保持孔31の中心軸線に沿うように配置されている。
図3は、図2の要部A1の拡大図であり、保持孔31の中心線が左右に延びるように図示するとともに、保持孔31の中心線に対して半断面表示されている。図2および図3を参照して、ラック軸支持部材34の外周面は、円筒面により形成されており、複数(例えば2個)の周溝348を有している。複数の周溝348は、深さ方向Z3に互いに離隔して配置されている。各周溝348には、環状の弾性部材、例えばOリング38が装着されている。Oリング38は、保持孔31の径方向に弾性圧縮変形した状態で、周溝348の底と保持孔31の内周との間に介在している。これにより、ラック軸支持部材34は、保持孔31に弾性支持されている。また、ラック軸支持部材34の外周面と保持孔31の内周面との間の所定量の隙間に、潤滑剤(図示せず)が保持されている。
ラック軸支持部材34の環状の領域346と、封止部材35の前面352の環状の領域356とが、深さ方向Z3に沿って互いに対向している。環状の領域346,356の間隔は、所定の距離に設定されている。環状の領域346,356が互いに当接することにより、深さ方向Z3に関してラック軸支持部材34の移動量が規制されている。
図2と図10(a)を参照して、一方で、ラック軸支持部材34の中心軸線が保持孔31の中心軸線に対して傾いた状態で、ラック軸支持部材34の後面343の外縁の一部P1と封止部材35の前面352の一部P2とが互いに局部的に接触する場合がある。この場合、噛み合い反力がラック軸支持部材34に作用することにより、傾いたラック軸支持部材34の後面343の外縁の一部P1が封止部材35の前面352に沿って摺動し、その結果、ラック軸支持部材34の後面343が封止部材35の前面352に面当たりした上述の通常の状態になる。
潤滑剤収容凹部としての潤滑剤収容溝40に収容された潤滑剤39により、ラック軸支持部材34および封止部材35の環状の領域346,356間を潤滑できるので、この間の摩擦を低減することができる。例えば、環状の領域346,356間の静止摩擦係数を、ひいては静止摩擦力を小さくすることができる。
また、ラック軸支持部材34の後面343の環状の領域346と封止部材35の前面352の環状の領域356の耐久性が向上する。
図3および図4(a)を参照して、ラック軸支持部材34の後面343と封止部材35の前面352との環状の領域346,356においては、潤滑剤収容溝40以外の部分が、互いに当接可能な当接可能部として機能する。これら当接可能部同士が互いに当接することにより、ラック軸支持部材34の移動量が規制される。
また、本実施形態では、後述するように、組立時に保持孔31への封止部材35のねじ込み量を調整することによりラック軸支持部材34の移動可能量を調整するようにしている。この場合には、封止部材35の前面352とラック軸支持部材34の後面343との環状の領域346,356同士を互いに近接させて相対回転させることになる。このときに、放射状の複数の潤滑剤収容溝40は、潤滑剤39を、環状の領域346,356内の広い範囲に供給することができる。
内端401は、径方向内方に向けて閉塞されている。外端402は、径方向外方に向けて閉塞されている。保持孔31の径方向に関する潤滑剤収容溝40の内端401および外端402が閉じられることにより、重力により潤滑剤39が下方に落下することを防止でき、その結果、潤滑不良の発生を防止できる。
図2および図3を参照して、ラック軸支持装置28は、例えば、下記のように組み立てることができる。
ピニオンハウジング29にピニオン軸7を組み付け、ラックハウジング13にラック軸10を組みつける。次に、ハウジング30にラック軸支持部材34および付勢部材36を組み込む。ハウジング30に封止部材35を組み付ける。
これに対して、従来は、封止部材の前面の環状の領域の全面とラック軸支持部材の後面の環状の領域の全面とがそれぞれ平面により形成されていたので、互いに当接したときに、潤滑剤が押し出され、潤滑不良が生じる虞があった。
また、本実施形態について、以下のような変形例を考えることができる。以下の説明では、上述の実施形態と異なる点を中心に説明する。なお、他の構成については、上述の実施形態と同様である。
ラック軸支持装置28Aは、ラック軸支持部材34Aを有している。ラック軸支持部材34Aの後面343Aの環状の領域346A(図6には一部のみ図示。)は、放射状の複数の突条42(図6には一点鎖線で図示。)を有している。各突条42は、ラック軸支持部材34Aの径方向に対して斜めに交差する方向に沿って真直に所定長で延びている。この点を除いて、環状の領域346Aでの放射状の複数の突条42の配置は、環状の領域356での複数の潤滑剤収容溝40の配置と同様に設定されている。例えば、突条42の数は、潤滑剤収容溝40の数と等しくされている。複数の突条42の内端は、周方向に均等に配置されている。複数の突条42の外端は、周方向に均等に配置されている。
なお、潤滑剤39を突条42が延びる方向に拡げることができる効果は、突条42が保持孔31の径方向に対して斜めに傾斜していればよく、潤滑剤収容凹部の形状や突条42の傾斜方向および傾斜角度に関係なく得られる(第3の実施形態参照。)。
ラック軸支持部材34Aの後面343Aの環状の領域346Aの突条42と、封止部材35の前面352の環状の領域356の潤滑剤収容溝40以外の部分とは、少なくとも3箇所で接触できるようになっている。
図7を参照して、ラック軸支持装置28Bは、突条42Bを有している。突条42Bの傾斜方向は、図6の突条42の傾斜方向とは逆向きに、保持孔31の径方向に対して傾斜している。保持孔31への封止部材35のねじ嵌合に伴って、第2の実施形態で説明したのと逆方向に、潤滑剤39が移動することになる。
ラック軸支持装置28Cは、ラック軸支持部材34Cを有している。ラック軸支持部材34Cの後面343Cの環状の領域346Cは、潤滑剤収容凹部としての放射状に形成された複数の潤滑剤収容溝43を含んでいる。ラック軸支持部材34Cの複数の潤滑剤収容溝43は、第2の実施形態の突条42と同様の角度で径方向に対して傾斜して延びていてもよいし、第3の実施形態の突条42と同様の角度で径方向に対して傾斜して延びていてもよい。上述の点を除いて、各潤滑剤収容溝43は、潤滑剤収容溝40と同様に形成されている。
図9は、本発明の第5の実施形態のラック軸支持装置28Dの要部およびラック軸10Dの断面図である。図9を参照して、本実施形態のラック軸10Dとラック軸支持装置28Dは、図2に示す第1の実施形態のラック軸10とラック軸支持装置28に代えて用いられ、以下の点で異なり、他の構成については同じとされている。
また、第2の実施形態では、潤滑剤収容溝40が、封止部材35の前面352に形成され、突条42が、ラック軸支持部材34Aの後面343Aに形成されていたが、これに代えて、潤滑剤収容溝40が、ラック軸支持部材34Aの後面343Aに形成され、突条42が、封止部材35の前面352に形成されることも考えられる。第3の実施形態についても同様の変形例が考えられる。
また、上述の実施形態では、いわゆるコラムアシスト式の電動パワーステアリング装置に本発明が適用された例について説明したが、これに限らず、いわゆるピニオンアシスト式の電動パワーステアリング装置や、いわゆるラックアシスト式の電動パワーステアリング装置に、本発明を適用してもよい。その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内で種々の変更を施すことができる。
Claims (4)
- ハウジングに形成された保持孔内に上記保持孔の深さ方向に摺動可能に収容され且つラック軸を摺動可能に支持するラック軸支持部材と、
上記保持孔の入口に固定された封止部材と、
上記封止部材によって支持され上記ラック軸支持部材を上記ラック軸側に付勢する付勢部材と、を備え、
上記ラック軸支持部材の後面およびこれに対向する上記封止部材の前面が、互いに対向する環状の領域をそれぞれ含み、
上記ラック軸支持部材の上記後面および上記封止部材の上記前面の少なくとも一方に、上記ラック軸支持部材および上記封止部材の上記環状の領域間の摩擦を低減するための潤滑剤を収容した潤滑剤収容凹部を備えることを特徴とするラック軸支持装置。 - 請求項1において、
上記潤滑剤収容凹部は、上記ラック軸支持部材の上記後面および上記封止部材の上記前面の少なくとも一方に放射状に形成された複数の潤滑剤収容溝を含むことを特徴とするラック軸支持装置。 - 請求項2において、
上記潤滑剤収容溝は、上記封止部材の上記前面に形成され、
上記ラック軸支持部材の上記後面に放射状に形成された複数の突条を備え、
上記深さ方向に沿って見たときに、各上記潤滑剤収容溝とこれに対応する上記突条が互いに交差していることを特徴とするラック軸支持装置。 - 請求項2または3において、
上記潤滑剤収容溝の内端が、上記付勢部材の端部に対向していることを特徴とするラック軸支持装置。
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