JP4167517B2 - 多層回路基板の製造方法 - Google Patents
多層回路基板の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4167517B2 JP4167517B2 JP2003076345A JP2003076345A JP4167517B2 JP 4167517 B2 JP4167517 B2 JP 4167517B2 JP 2003076345 A JP2003076345 A JP 2003076345A JP 2003076345 A JP2003076345 A JP 2003076345A JP 4167517 B2 JP4167517 B2 JP 4167517B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- green sheet
- organic binder
- circuit board
- multilayer circuit
- temperature
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
- Production Of Multi-Layered Print Wiring Board (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体装置や複合電子部品に用いられる多層回路基板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
多層回路基板は、半導体装置や複合電子部品等に幅広く用いられている。
【0003】
従来の多層回路基板として、例えば図3に示すように、第1の無機組成物から成る複数個の第1絶縁層31a、31c、31eと、第2の無機組成物から成る複数個の第2絶縁層31b、31dとが交互に積層された積層体の内部及び表面に導体層32を配設してなる構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上述した多層回路基板を製作するにあっては、まず、図4に示すように複数個の第1グリーンシート41a、41c、41e及び第2グリーンシート41b、41dを用意し、次に、それぞれのグリーンシートに導体層42やビアホール導体43を設け、第1グリーンシートと第2グリーンシートとが交互になるようにして積層する。そして、得られた積層体を、グリーンシート41a、41c、41eを焼結させる第1の温度領域と、グリーンシート41b、41dを焼結させる第2の温度領域とを経て、一体焼成することにより、多層回路基板30が製作される。
【0005】
従来の多層回路基板の製造方法によれば、第1の温度領域と、第2の温度領域とが相互に異なるものとしているので、例えば、第1の温度領域が第2の温度領域よりも低く設定してある場合、第1の温度領域においては、第2グリーンシートが未焼結状態で第1グリーンシートに隣接しているので、第1グリーンシートは、焼結に伴って収縮する際、面方向における焼結に伴う収縮が抑制され、厚み方向に大きく収縮して焼結し、第1絶縁層として形成される。一方、第2の温度領域においては、すでに第1グリーンシートの焼結が完了して形成されている第1絶縁層が第2グリーンシートに隣接しているので、第2グリーンシートは、焼結に伴って収縮する際、面方向における収縮が抑制され、厚み方向に大きく収縮して焼結し、第2絶縁層として形成される。
【0006】
このように、積層体の焼成時に、焼結に伴う収縮を、面方向に抑制するとともに厚み方向に大きくすることにより、多層回路基板の寸法精度を高くなす試みがなされている。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−15875号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来例では、第1の温度領域において、第1グリーンシートが焼結に伴って収縮を開始した際、第1グリーンシートの焼結に伴って収縮するときの第2グリーンシートに及ぼす応力が大きい場合や、応力を受ける側の第2グリーンシートの剛性が不足する場合がある。このようなとき、第2グリーンシートが面方向の収縮が大きくなるので、製作された多層回路基板は、寸法精度のばらつきが大きくなりやすい。
【0009】
また、グリーンシート中に含まれる有機バインダや可塑剤は、焼成時の温度上昇に伴い蒸発及び熱分解されて消失していくが、上述した従来の製造方法によれば、2つの温度領域で積層体を焼結させるため、焼結が比較的低い温度から開始することとなり、有機バインダや可塑剤が無機組成物の焼結の前に充分に消失されず、残存してしまうことがある。このような場合、残存した炭化物により絶縁層の絶縁性が劣化し、更には絶縁層間に集中的に残存することによって層間剥離が発生することもある。
【0010】
更に、上述した従来の製造方法によれば、積層体の最上層及び最下層は、収縮の抑制が一方面に限られてしまうため、特にその端部において面方向への収縮の応力が集中し、うねりや反り等の変形が発生しやすくなる。このような変形が発生すると、特に積層体の端部付近において電子部品素子の搭載性が劣化することとなる。
【0011】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、面方向への収縮を充分に抑制するとともに、有機バインダや可塑剤を効率よく消失させ、高い寸法精度と絶縁性を実現し、層間剥離の発生や変形を低減することが可能な多層回路基板の製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層回路基板の製造方法は、第1の無機組成物を含む第1グリーンシートの焼成により形成される複数個の第1絶縁層と、該第1絶縁層よりも厚みが厚く、第2の無機組成物を含む第2グリーンシートの焼成によって形成される複数個の第2絶縁層とが交互に積層された積層体の内部及び表面に導体層を配設してなる多層回路基板であって、前記第1グリーンシートを焼結させる第1の温度領域が、前記第2グリーンシートを焼結させる第2の温度領域よりも低く設定されており、かつ、前記第1グリーンシート中に含まれる可塑剤の蒸発温度T1、前記第1グリーンシート中に含まれる第1の有機バインダの熱分解温度T2、前記第2グリーンシート中に含まれる第2の有機バインダの熱分解温度T3が下記関係式▲1▼を満たすことを特徴とするものである。
【0013】
T1<T3≦T2・・・▲1▼
また、本発明の多層回路基板の製造方法は、前記第1グリーンシート及び第2グリーンシートの熱処理に伴ない前記可塑剤、第1の有機バインダ及び第2の有機バインダが段階的温度上昇に伴って順次消失されることを特徴とするものである。
【0014】
更に、本発明の多層回路基板の製造方法は、前記導体層が導電材料と第3の有機バインダを含む導電性ペーストの焼成によって形成され、かつ前記第3の有機バインダの熱分解温度T4が前記第2の有機バインダの熱分解温度T3以上であることを特徴とするものである。
【0015】
また更に、本発明の多層回路基板の製造方法は、前記第1絶縁層の厚みが前記第2絶縁層の厚みの50%以下に設定されていることを特徴とするものである。
【0016】
更にまた、本発明の多層回路基板の製造方法は、前記第1絶縁層が前記積層体の最上層及び最下層を構成していることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の多層回路基板の製造方法によれば、第1グリーンシートを焼結させる第1の温度領域が、前記第2グリーンシートを焼結させる第2の温度領域よりも低く設定されているので、第1グリーンシートは、焼結に伴って収縮する際、面方向への焼結に伴う収縮が隣接する第2グリーンシートの剛性により抑制される。一方、第2グリーンシートが焼結する際、第2グリーンシートは、面方向への焼結に伴う収縮が隣接する第1絶縁層の剛性により抑制される。同時に、第2グリーンシートの厚みを第1グリーンシートよりも厚くしているので、第1グリーンシートは、焼結に伴う収縮が隣接する第2グリーンシートに及ぼす応力が小さくなり、第2グリーンシートによって面方向への収縮がより効果的に抑制されるので、積層体全体としても面方向への収縮がより強く働き、寸法精度の高い多層回路基板を得られることとなる。
【0018】
加えて、前記第1グリーンシート中に含まれる可塑剤の蒸発温度T1、前記第1グリーンシート中に含まれる第1の有機バインダの熱分解温度T2、前記第2グリーンシート中に含まれる第2の有機バインダの熱分解温度T3が関係式「T1<T3≦T2」を満たすようにしている。
【0019】
これにより、可塑剤が蒸発して積層体から外部へ導かれて消失した後に、積層体に含まれる第1の有機バインダ及び第2の有機バインダが熱分解するので、分解した有機バインダは、可塑剤が消失してできた経路を通ることで積層体の外部へ導かれやすくなり、炭化物として積層体内に残存しにくくなり、絶縁性を高くするとともに、層間剥離の発生しにくい多層回路基板を提供することが可能となる。
【0020】
また、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、前記第1グリーンシート及び第2グリーンシートの熱処理に伴い前記可塑剤、第1の有機バインダ及び第2の有機バインダが段階的温度上昇に伴って順次消失されるようにしている。これにより、可塑剤が蒸発して積層体の表面全体から外部へ導かれて消失した後に、厚みの厚い第2グリーンシートの有機バインダが熱分解して、可塑剤が消失してできた経路を通り、同じく積層体の表面全体から外部へと導かれる。そして次に、第1グリーンシートの有機バインダが熱分解して、可塑剤が消失してできた経路と、隣接する第2グリーンシートの有機バインダが消失してできた経路とを通り、積層体の端面から外部へと導かれる。このとき、第1グリーンシートは、第2グリーンシートに比して厚みが薄く、有機バインダの総量も少ない。従って、上述した経路により短時間で外部へと導かれ消失することが可能となるので、炭化物が残存しにくくなり、絶縁層の絶縁性がより高いものとすることができる。
【0021】
更に、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、前記導体層が導電材料と第3の有機バインダを含む導電性ペーストの焼成によって形成され、かつ前記第3の有機バインダの熱分解温度T4が前記第2の有機バインダの熱分解温度T3以上であることにより、熱分解した第3の有機バインダは、隣接する第2グリーンシートの第2の有機バインダが消失してできた経路を通り、積層体の端面から外部へと導かれる。このとき、導電性ペーストは、各グリーンシートに比して厚みが薄く、且つ面積も少ないので、熱分解した第3の有機バインダの総量も少なく、上述した経路から充分に外部へと導かれることが可能である。
【0022】
また更に、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、前記第1絶縁層の厚みが前記第2絶縁層の厚みの50%以下に設定されていることにより、第1絶縁層の面方向への収縮がいっそう抑制されるとともに、第1の有機バインダは、熱分解したときの外部へと導かれる経路が充分なものとなる。
【0023】
更にまた、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、収縮の抑制が一方の面に限られる前記積層体の最上層及び最下層は、第2絶縁層に比して厚みの薄い前記第1絶縁層で構成していることにより、収縮の抑制が一方面に限られていても、面方向への収縮が充分に発生するので、うねりや反り等の変形が低減され、電子部品素子の搭載性が安定することとなる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0025】
図1は本発明の製造方法によって製作した多層回路基板の断面図であり、図中の1a〜1fは第1絶縁層、1g〜1kは第2絶縁層、2は導体層、3はビアホール導体である。
【0026】
同図に示す多層回路基板10は、第1絶縁層1a〜1f、第2絶縁層1g〜1kを積層した構造を有している。多層回路基板10の内部及び表層には、導体層2が形成されており、表層の導体層は、主に電子部品素子の搭載部となる接続パッドとして機能し、内部の導体層及びビアホール導体は、主に各回路素子を電気的に接続する配線や、インダクタやキャパシタ等の回路素子として機能する。
【0027】
第1絶縁層1a〜1fは第1の無機組成物から、また第2絶縁層1g〜1kは第2の無機組成物から成り、これら無機組成物の材料としては、例えば800℃〜1200℃の比較的低い温度で焼成が可能なガラス−セラミック材料が好適に用いられる。ガラス−セラミック材料にはガラス粉末及びセラミック粉末が含まれ、ガラス粉末は30〜100重量部含まれており、ガラス粉末を除く材料がセラミック粉末となる。
【0028】
本実施形態においては、例えば、第1絶縁層をガラス粉末が85重量部、第2絶縁層はガラス粉末を55重量部の組成から成る材料により製作した。
【0029】
ガラス粉末の具体的な組成としては、例えば、必須成分として、SiO2を20〜70重量部、Al2O3を0.5〜30重量部、MgOを3〜60重量部、また任意成分として、CaOを0〜35重量部、BaOを0〜35重量部、SrOを0〜35重量部、B2O3を0〜20重量部、ZnOを0〜30重量部、TiO2を0〜10重量部、Na2Oを0〜3重量部、Li2Oを0〜5重量部含むものが挙げられる。
【0030】
セラミック粉末としては、Al2O3、SiO2、MgTiO3、CaZrO3、CaTiO3、Mg2SiO4、BaTi4O9、ZrTiO4、SrTiO3、BaTiO3、TiO2から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0031】
上記組成のガラス粉末とセラミック粉末との組み合わせによれば、1000℃以下での低温焼結が可能となるとともに、導体層として、銀(融点960℃)、銅(融点1083℃)、金(融点1063℃)などの低抵抗導体を用いて形成することが可能となり、低損失な回路を作成できる。また、誘電率の制御も可能であり、高誘電率化による回路の小型化、低損失化、あるいは、低誘電率化による高速伝送化に適している。しかも、上記の範囲で種々組成を制御することによって、焼成収縮挙動を容易に制御、変更することができる。
【0032】
尚、導体層2やビアホール導体3は銀、銅、金のいずれか一種を含む導電材料からから成り、その厚みは例えば5〜25μmに設定される。
【0033】
また、ビアホール導体3の直径は任意に設定することができ、ビアホール導体3が埋設される絶縁層の厚みが10〜300μmの場合、ビアホール導体3の直径は例えば50〜300μmに設定される。
【0034】
次に上述した多層配線基板の製造方法について、図を用いて説明する。
【0035】
(工程1)
図2に示す21a〜21fは、第1の無機組成物、第1の有機バインダ及び可塑剤を含む第1グリーンシートであり、21g〜21kは、第2の無機組成物、第2の有機バインダを含む第2グリーンシートである。第1グリーンシート21a〜21fは、例えば上述したガラス粉末とセラミック粉末とを組み合わせた粉末に、有機バインダと有機溶剤とを混合してペースト化し、このペーストを用いて、第1グリーンシート21a〜21f上にスクリーン印刷法などによって被着させて形成されるグリーンシート層である。また、第2グリーンシート21g〜21kは、例えば上述したガラス粉末とセラミック粉末とを組み合わせた粉末に、有機バインダと有機溶剤及び可塑剤とを混合してスラリー化し、このスラリーを用いてドクターブレード法などによりテープ成形を行い、所定寸法に切断することによって得られるテープ上のグリーンシートである。このとき、第1グリーンシート21a〜21fは、第2グリーンシート21g〜21kに比して厚みが薄く形成されており、第1グリーンシート21a〜21fの各々の厚みは、例えば2〜150μmに設定され、第2グリーンシート21g〜21kの各々の厚みは、例えば10〜300μmに設定される。
【0036】
次に、第1グリーンシート21a〜21fと第2グリーンシート21g〜21kとにより構成されるシートにパンチングなどによって貫通孔を形成し、その貫通孔内に銀粉末、第3の有機バインダ及び有機溶剤とを混合して成る導電性ペーストを充填してビアホール導体23を形成し、シートの主面には導電性ペーストをスクリーン印刷法などによって被着させて導体層22を形成する。
【0037】
本実施形態においては、例えば、第1の無機組成物はガラス粉末が、SiO2を40重量部、Al2O3を2重量部、MgOを15重量部、CaOを1重量部、BaOを15重量部、BO3を20重量部、ZnOを1重量部、TiO2を0.5重量部、Na2Oを0.5重量部、Li2Oを5重量部と、セラミック粉末が、MgTiO3を15重量部の組成から成り、また第2の無機組成物はガラス粉末が、SiO2を40重量部、Al2O3を2重量部、MgOを15重量部、CaOを1重量部、BaOを15重量部、BO3を20重量部、ZnOを1重量部、TiO2を0.5重量部、Na2Oを0.5重量部、Li2Oを5重量部、セラミック粉末が、Al2O3を45重量部含む材料から成っている。また、第1の有機バインダにエチルセルロース、第2の有機バインダにアクリルバインダ、可塑剤にフタル酸ジ−2エチルヘキシル、第3の有機バインダにエチルセルロースを用いている。尚、有機溶剤として、第1グリーンシート21a〜21fを形成するスラリーには、トルエンを用い、第2グリーンシート21g〜21kを形成するペースト及び導電性ペーストには、第12−2−4−トリメチル−3−3−ペンタジオールモノイソブチレートを添加して成るペーストを用いた。
【0038】
このようにして得られた各シートを、所定の積層順序に応じて積層して積層体を形成する。
【0039】
(工程2)
次に、得られた積層体を、第1グリーンシート21a〜21fを焼結させる第1の温度領域と、第2グリーンシート21g〜21kを焼結させる第2の温度領域とを経て、一体焼成することにより、図1に示すような多層回路基板10が製作される。
【0040】
このとき本実施形態では、第1グリーンシート21a〜21fを焼結させる第1の温度領域が、第2グリーンシート21g〜21kを焼結させる第2の温度領域よりも低く設定されているので、第1グリーンシート21a〜21fは、焼結に伴って収縮する際、面方向への焼結に伴う収縮が隣接する第2グリーンシート21g〜21kの剛性により抑制される。一方、第2グリーンシート21g〜21kが焼結する際、第2グリーンシート21g〜21kは、面方向への焼結に伴う収縮が隣接する第1絶縁層1a〜1fの剛性により抑制される。同時に、第2グリーンシート21g〜21kの厚みを第1グリーンシート21a〜21fよりも厚くしているので、第1グリーンシート21a〜21fは、焼結に伴う収縮が隣接する第2グリーンシートに及ぼす応力が小さくなり、第2グリーンシート21g〜21kによって面方向への収縮がより効果的に抑制されるので、積層体全体としても面方向への収縮がより強く働き、寸法精度の高い多層回路基板10を得られることとなる。
【0041】
ここで、グリーンシートを焼結させる温度領域とは、グリーンシートの焼結に伴って収縮が開始する温度から、収縮による体積収縮が全収縮量に対し90%に相当する量が完了する温度までの領域のことをいう。本実施形態においては、第1グリーンシート21a〜21fは収縮が開始する温度が690℃、第2グリーンシート21g〜21kは収縮が開始する温度が783℃となる無機組成物により形成しており、この結果、積層体の焼成収縮が終了した時の面方向の先収縮率が3%と小さく、反りや変形の少ない多層回路基板10を得ることができた。
【0042】
また、グリーンシートの焼結に伴う収縮の開始とは、無機組成物の焼結に伴う収縮が開始されることを意味している。グリーンシートに含まれる有機バインダは加熱により分解、除去され、この際、0〜1%程度の収縮が発生することがあるが、これはバインダの除去に伴うものであり、無機組成物の焼結による実質的な収縮とは別のものである。第1の温度領域と第2の温度領域については、その温度の差が10℃以上であることが望ましく、更に望ましくは20℃以上である。このような工程を経て積層体は焼成収縮が終了するが、本発明において、この焼成収縮の終了とは、全体積収縮が99%以上進行した時点を意味する。
【0043】
加えて、第1グリーンシート21a〜21f中に含まれる可塑剤の蒸発温度T1、第1グリーンシート21a〜21f中に含まれる第1の有機バインダの熱分解温度T2、第2グリーンシート21g〜21k中に含まれる第2の有機バインダの熱分解温度T3が関係式「T1<T3≦T2」を満たすようにしている。
【0044】
これにより、可塑剤が蒸発して積層体から外部へ導かれて消失した後に、積層体に含まれる第1の有機バインダ及び第2の有機バインダが熱分解するので、分解した有機バインダは、可塑剤が消失してできた経路を通ることで積層体の外部へ導かれやすくなり、炭化物として積層体内に残存しにくくなり、絶縁性を高くするとともに、層間剥離の発生しにくい多層回路基板を提供することが可能となる。
【0045】
ここで可塑剤の蒸発温度とは、グリーンシートから実質的に蒸発が始まる温度のことをいい、有機バインダの熱分解温度とは、熱分解が活性化して実質的に消失が始まる温度のことをいう。本実施形態では、可塑剤の蒸発温度が230℃、第1グリーンシート21a〜21f中に含まれる第1の有機バインダの熱分解温度が370℃、第2グリーンシート21g〜21k中に含まれる第2の有機バインダの熱分解温度が300℃となる有機材料をそれぞれ用いており、この結果、絶縁不良や層間剥離のない多層回路基板を得ることができた。
【0046】
また、第1グリーンシート21a〜21f及び第2グリーンシート21g〜21kの熱処理に伴い可塑剤、第1の有機バインダ及び第2の有機バインダが段階的温度上昇に伴って順次消失されるようにしている。これにより、可塑剤が蒸発して積層体の表面全体から外部へ導かれて消失した後に、厚みの厚い第2グリーンシート21g〜21kの有機バインダが熱分解して、可塑剤が消失してできた経路を通り、同じく積層体の表面全体から外部へと導かれる。そして次に、第1グリーンシート21a〜21fの有機バインダが熱分解して、可塑剤が消失してできた経路と、隣接する第2グリーンシート21g〜21kの有機バインダが消失してできた経路とを通り、積層体の端面から外部へと導かれる。このとき、第1グリーンシート21a〜21fは、第2グリーンシート21g〜21kに比して厚みが薄く、有機バインダの総量も少ない。従って、上述した経路により短時間で外部へと導かれ消失することが可能となるので、炭化物が残存しにくくなり、絶縁層の絶縁性がより高いものとすることができる。
【0047】
更に、導体層2が導電材料と第3の有機バインダを含む導電性ペーストの焼成によって形成され、かつ第3の有機バインダの熱分解温度T4が第2の有機バインダの熱分解温度T3以上であることにより、熱分解した第3の有機バインダは、隣接する第2グリーンシート21g〜21kの第2の有機バインダが消失してできた経路を通り、積層体の端面から外部へと導かれる。このとき、導電性ペーストは、各グリーンシートに比して厚みが薄く、且つ面積も少ないので、熱分解した第3の有機バインダの総量も少なく、上述した経路から充分に外部へと導かれることが可能である。
【0048】
本実施形態では、第3の有機バインダに第2の有機バインダと同じエチルセルロースを用い、更に、その重合度を増やすことにより、熱分解温度を高くしており、有機バインダの消失が効率よく行われるようにしている。
【0049】
また、第1絶縁層1a〜1fの厚みが第2絶縁層1g〜1kの厚みの50%以下に設定されていることにより、第1絶縁層1a〜1fの面方向への収縮がいっそう抑制されるとともに、第1の有機バインダは、熱分解したときの外部へと導かれる経路が充分なものとなる。
【0050】
更に、収縮の抑制が一方の面に限られる積層体の最上層及び最下層は、第2絶縁層1g〜1kに比して厚みの薄い第1絶縁層1a〜1fで構成していることにより、収縮の抑制が一方面に限られていても、面方向への収縮が充分に発生するので、うねりや反り等の変形が低減され、電子部品素子の搭載性が安定することとなる。
【0051】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更、改良等が可能である。
【0052】
例えば上述の実施形態では、第1グリーンシート21a〜21fの形成にペースト状になした第1の無機組成物を用い、これを第2グリーンシート21g〜21kの主面に、印刷等で塗布して直接形成するようにしたが、これに代えて、第1グリーンシート21a〜21fをセラミックグリーンシートとして形成し、これを第2グリーンシート21g〜21kと貼り合わせて使用するようにしても良い。この場合、第1グリーンシート21a〜21fの厚みが比較的精度良く形成されるようになり、多層回路基板10の厚み精度を向上させることができる利点もある。このとき、第1グリーンシート21a〜21fに可塑剤を含むようにしても構わない。第1グリーンシート21a〜21fに含まれる可塑剤の材料としては、第2グリーンシート21g〜21kに含まれる可塑剤の蒸発温度T1と同じ温度範囲に入る材料を用いれば構わないものである。尚、第2グリーンシート21g〜21kに含まれる可塑剤と同じ材料を用いても構わない。
【0053】
また、本実施形態においては、有機バインダの消失が熱分解によりおこなわれるとしているが、酸素雰囲気中での燃焼についても、同じ定義とする。
【0054】
更に、上述の実施形態においては、第1絶縁層1a〜1fと第2絶縁層1g〜1kとを交互に積層して積層体を形成するようにしたが、これに代えて、複数の第1絶縁層や複数の第2絶縁層を厚み方向に連続して積層することにより積層体を形成するようにしても構わない。
【0055】
また更に、本発明における積層体の最上層及び最下層とは、上述の実施形態では示していないが、積層体の主面側に露出する層のことを意味するものであり、例えば、一方主面に形成したキャビティの底面部に露出する層をも含むものである。
【0056】
そして、焼成収縮が終了した後、導体層の表面にメッキ処理等の表面処理を行っても良く、本発明においては、低温の焼成でも緻密に焼結した多層回路基板が得られるので、メッキ液等が積層体に浸食することが少なく、表面処理の工程を効率化することができる。
【0057】
【発明の効果】
本発明の多層回路基板の製造方法によれば、第1グリーンシートを焼結させる第1の温度領域が、前記第2グリーンシートを焼結させる第2の温度領域よりも低く設定されているので、第1グリーンシートは、焼結に伴って収縮する際、面方向への焼結に伴う収縮が隣接する第2グリーンシートの剛性により抑制される。一方、第2グリーンシートが焼結する際、第2グリーンシートは、面方向への焼結に伴う収縮が隣接する第1絶縁層の剛性により抑制される。同時に、第2グリーンシートの厚みを第1グリーンシートよりも厚くしているので、第1グリーンシートは、焼結に伴う収縮が隣接する第2グリーンシートに及ぼす応力が小さくなり、第2グリーンシートによって面方向への収縮がより効果的に抑制されるので、積層体全体としても面方向への収縮がより強く働き、寸法精度の高い多層回路基板を得られることとなる。
【0058】
加えて、前記第1グリーンシート中に含まれる可塑剤の蒸発温度T1、前記第1グリーンシート中に含まれる第1の有機バインダの熱分解温度T2、前記第2グリーンシート中に含まれる第2の有機バインダの熱分解温度T3が関係式「T1<T3≦T2」を満たすようにしている。
【0059】
これにより、可塑剤が蒸発して積層体から外部へ導かれて消失した後に、積層体に含まれる第1の有機バインダ及び第2の有機バインダが熱分解するので、分解した有機バインダは、可塑剤が消失してできた経路を通ることで積層体の外部へ導かれやすくなり、炭化物として積層体内に残存しにくくなり、絶縁性を高くするとともに、層間剥離の発生しにくい多層回路基板を提供することが可能となる。
【0060】
また、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、前記第1グリーンシート及び第2グリーンシートの熱処理に伴い前記可塑剤、第1の有機バインダ及び第2の有機バインダが段階的温度上昇に伴って順次消失されるようにしている。これにより、可塑剤が蒸発して積層体の表面全体から外部へ導かれて消失した後に、厚みの厚い第2グリーンシートの有機バインダが熱分解して、可塑剤が消失してできた経路を通り、同じく積層体の表面全体から外部へと導かれる。そして次に、第1グリーンシートの有機バインダが熱分解して、可塑剤が消失してできた経路と、隣接する第2グリーンシートの有機バインダが消失してできた経路とを通り、積層体の端面から外部へと導かれる。このとき、第1グリーンシートは、第2グリーンシートに比して厚みが薄く、有機バインダの総量も少ない。従って、上述した経路により短時間で外部へと導かれ消失することが可能となるので、炭化物が残存しにくくなり、絶縁層の絶縁性がより高いものとすることができる。
【0061】
更に、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、前記導体層が導電材料と第3の有機バインダを含む導電性ペーストの焼成によって形成され、かつ前記第3の有機バインダの熱分解温度T4が前記第2の有機バインダの熱分解温度T3以上であることにより、熱分解した第3の有機バインダは、隣接する第2グリーンシートの第2の有機バインダが消失してできた経路を通り、積層体の端面から外部へと導かれる。このとき、導電性ペーストは、各グリーンシートに比して厚みが薄く、且つ面積も少ないので、熱分解した第3の有機バインダの総量も少なく、上述した経路から充分に外部へと導かれることが可能である。
【0062】
また更に、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、前記第1絶縁層の厚みが前記第2絶縁層の厚みの50%以下に設定されていることにより、第1絶縁層の面方向への収縮がいっそう抑制されるとともに、第1の有機バインダは、熱分解したときの外部へと導かれる経路が充分なものとなる。
【0063】
更にまた、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、収縮の抑制が一方の面に限られる前記積層体の最上層及び最下層は、第2絶縁層に比して厚みの薄い前記第1絶縁層で構成していることにより、収縮の抑制が一方面に限られていても、面方向への収縮が充分に発生するので、うねりや反り等の変形が低減され、電子部品素子の搭載性が安定することとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法によって製作した多層回路基板の断面図である。
【図2】本発明の製造方法を説明するための断面図である。
【図3】従来の多層回路基板の断面図である。
【図4】従来の製造方法を説明するための断面図である。
【符号の説明】
1a〜1f・・・第1絶縁層
1g〜1k・・・第2絶縁層
2・・・導体層
3・・・ビアホール導体
10・・・多層回路基板
21a〜21f・・・第1グリーンシート
21g〜21k・・・第2グリーンシート
Claims (5)
- 第1の無機組成物を含む第1グリーンシートの焼成により形成される複数個の第1絶縁層と、該第1絶縁層よりも厚みが厚く、第2の無機組成物を含む第2グリーンシートの焼成によって形成される複数個の第2絶縁層とが交互に積層された積層体の内部及び表面に導体層を配設してなる多層回路基板であって、
前記第1グリーンシートを焼結させる第1の温度領域が、前記第2グリーンシートを焼結させる第2の温度領域よりも低く設定されており、かつ、前記第1グリーンシート中に含まれる可塑剤の蒸発温度T1、前記第1グリーンシート中に含まれる第1の有機バインダの熱分解温度T2、前記第2グリーンシート中に含まれる第2の有機バインダの熱分解温度T3が下記関係式▲1▼を満たすことを特徴とする多層回路基板の製造方法。
T1<T3≦T2・・・▲1▼ - 前記第1グリーンシート及び第2グリーンシートの熱処理に伴ない前記可塑剤、第1の有機バインダ及び第2の有機バインダが段階的温度上昇に伴って順次消失されることを特徴とする請求項1に記載の多層回路基板の製造方法。
- 前記導体層が導電材料と第3の有機バインダを含む導電性ペーストの焼成によって形成され、かつ前記第3の有機バインダの熱分解温度T4が前記第2の有機バインダの熱分解温度T3以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層回路基板の製造方法。
- 前記第1絶縁層の厚みが前記第2絶縁層の厚みの50%以下に設定されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の多層回路基板の製造方法。
- 前記第1絶縁層が前記積層体の最上層及び最下層を構成していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の多層回路基板の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003076345A JP4167517B2 (ja) | 2003-03-19 | 2003-03-19 | 多層回路基板の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003076345A JP4167517B2 (ja) | 2003-03-19 | 2003-03-19 | 多層回路基板の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004288739A JP2004288739A (ja) | 2004-10-14 |
JP4167517B2 true JP4167517B2 (ja) | 2008-10-15 |
Family
ID=33291428
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2003076345A Expired - Fee Related JP4167517B2 (ja) | 2003-03-19 | 2003-03-19 | 多層回路基板の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4167517B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4957117B2 (ja) * | 2006-08-09 | 2012-06-20 | 株式会社村田製作所 | 多層セラミック基板の製造方法および多層セラミック基板作製用複合グリーンシート |
JP5011066B2 (ja) * | 2007-05-28 | 2012-08-29 | 日本碍子株式会社 | 結晶配向セラミックスの製造方法 |
JP5285589B2 (ja) * | 2009-12-16 | 2013-09-11 | 日本特殊陶業株式会社 | セラミックヒータの製造方法及びセラミックヒータ |
-
2003
- 2003-03-19 JP JP2003076345A patent/JP4167517B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2004288739A (ja) | 2004-10-14 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JPWO2009014017A1 (ja) | 多層セラミック基板およびその製造方法 | |
WO2009139272A1 (ja) | 多層セラミック基板およびその製造方法 | |
JP4788544B2 (ja) | 多層セラミック基板およびその製造方法 | |
JP4107437B2 (ja) | 多層セラミックス基板及びその製造方法 | |
JP4167517B2 (ja) | 多層回路基板の製造方法 | |
JP2008109063A (ja) | セラミック多層基板 | |
JP4097276B2 (ja) | 多層セラミックス基板及びその製造方法 | |
JP5015550B2 (ja) | ガラスセラミック回路基板およびその製造方法 | |
JP4261949B2 (ja) | セラミック多層基板 | |
JP2004200679A (ja) | 多層回路基板の製造方法 | |
JP4077752B2 (ja) | 複数個取り用大型基板 | |
JP2008135523A (ja) | 多層基板およびその製造方法 | |
JP4797534B2 (ja) | 多層セラミックス基板 | |
JP2008030995A (ja) | 多層セラミック基板およびその製造方法ならびに多層セラミック基板作製用複合グリーンシート | |
JP2005285968A (ja) | コンデンサ内蔵ガラスセラミック多層配線基板 | |
JP5300527B2 (ja) | 多層基板およびその製造方法 | |
JP4018898B2 (ja) | 積層セラミック電子部品 | |
JP2004235374A (ja) | コンデンサ内蔵基板及びチップ状コンデンサ | |
JP2006270083A (ja) | 集合基板及びその製造方法 | |
JP4069772B2 (ja) | 多層回路基板の製造方法 | |
JP4466863B2 (ja) | 多層セラミックス基板 | |
JP4841448B2 (ja) | 分割溝付き配線基板およびその製造方法 | |
KR100724228B1 (ko) | 다층 세라믹 기판 및 그 제조 방법 | |
JP4869005B2 (ja) | 多層基板の製造方法 | |
JP2005191316A (ja) | 多層回路基板及びその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20060307 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080708 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080801 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110808 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110808 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120808 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130808 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |