JP4069772B2 - 多層回路基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、フリップチップ型の電子部品素子が搭載される多層回路基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フリップチップ型の電子部品素子が搭載される多層回路基板は、小型の半導体部品や複合電子部品等に幅広く用いられている。
【0003】
かかる従来の多層回路基板は、例えば図3に示すように、無機組成物から成る絶縁層31a、32bを複数個積層して成る積層体31の最上層に接続パッド32を形成した構造をしている。そして、積層体31上には、接続パッド32に接合される導電性接合材34を介してフリップチップ型の電子部品素子33が搭載される。接続パッド32については、最上層の絶縁層の表面に埋設されるとともに、接続パッド32の表面に窪みを有した構造のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
上述した多層回路基板30によれば、接続パッド32と、電子部品素子33に接着されている導電性接合材34とがずれて搭載されても、導電性接合材34が略球面体となっていることから、窪みの表面に沿って誘導されるので、自動的に位置決め補正される。従って、比較的実装精度の低いマウンタを用いても、高い接続信頼性が得られるものとなっている。
【0005】
このような多層回路基板30は以下の方法で製造される。
【0006】
まず、無機組成物から成る複数のグリーンシート層を用意し、次に、導体ペーストにより接続パッドを形成して、グリーンシート層を接続パッドとともに平板な金型で圧着積層する。そして、得られた積層体を加熱して焼結することにより、表面に窪みを有した接続パッドが形成された多層回路基板30が製作されることとなる。このとき、接続パッド形成用の導体ペーストに、グリーンシート層よりも収縮率の大きな材料を用いることにより、接続パッドの厚み方向の収縮量を大きくすることが可能となり、表面に窪みが形成されるようにしている。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−141646号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の製造方法によれば、接続パッドは、平板な金型によりグリーンシート層に押し込まれて埋設されるものの、加熱する前の状態において表面が完全な平面にはならず、若干の盛り上がった状態であるため、接続パッドの厚み方向の収縮量を大きなものとしていても、加熱して焼結したときに形成される窪みは形成されにくい。従って、フリップチップ型の電子部品素子が搭載されたとき、自動的な位置決め補正が不十分なものとなり、高い接続信頼性は得られなかった。
【0009】
また、グリーンシート層の弾性により、埋設された接続パッド形成用の導体ペーストが押し戻され、導体ペーストの盛り上がりが大きくなることがあり、このような状態から焼結に伴って収縮するのであれば、接続パッドの窪みは一層形成されにくいものとなる。
【0010】
本発明は上記欠点に鑑み案出されたもので、その目的は、接続パッドに窪みを形成し、フリップチップ型の電子部品素子が自動的に位置決め補正され、接続信頼性の高い多層回路基板の製造方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の多層回路基板の製造方法によれば、第1の無機組成物を含む第1グリーンシート層と、該第1グリーンシート層よりも厚みが厚く、熱の印加に伴い前記第1グリーンシート層よりも高温で焼結に伴う収縮を開始する第2の無機組成物からなる第2グリーンシート層とを、前記第1グリーンシート層を最上層に位置させて積層することにより積層体を形成するとともに、前記積層体上に、前記第1グリーンシート層よりも高温で焼結に伴う収縮を開始する接続パッド形成用の導体ペーストを最上層の第1グリーンシート層中に埋設する工程Aと、前記第2グリーンシート層、前記導体ペーストのいずれの収縮開始温度よりも低く、且つ第1グリーンシート層の収縮開始温度より高い第1の温度領域で加熱することにより、前記第1グリーンシート層をその面方向に比し厚み方向に大きく収縮させて焼結させることにより第1絶縁層を形成する工程Bと、前記積層体を前記第1の温度領域よりも高温側に位置する第2の温度領域で加熱することにより、前記第2グリーンシート層及び導体ペーストをその面方向に比して厚み方向に大きく収縮させて焼結させることにより、第2絶縁層及び表面に窪みを有した接続パッドを形成する工程Cと、を含む多層回路基板の製造方法。
【0012】
また、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、前記工程Cの後、前記積層体上にフリップチップ型の電子部品素子を前記接続パッドの窪みの内面に接合される導電性接合材を介して搭載することを特徴とする請求項1に記載の多層回路基板の製造方法。
【0013】
更に、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、前記工程Aにおける第1グリーンシート層の厚みが第2グリーンシート層の厚みの50%以下に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層回路基板の製造方法。
【0014】
本発明の多層回路基板の製造方法によれば、積層体を、第2グリーンシート層、導体ペーストのいずれの収縮開始温度よりも低く、且つ第1グリーンシート層の収縮開始温度より高い第1の温度領域で加熱することにより、第1グリーンシート層は、面方向への収縮が未焼結状態の第2グリーンシート層の剛性により抑制され、厚み方向へ大きく収縮させて焼結し、第1絶縁層が形成される。次に、積層体を、第1の温度領域よりも高温側に位置する第2の温度領域で加熱することにより、第2グリーンシート層及び導体ペーストは、面方向への収縮が第1絶縁層の剛性により抑制され、厚み方向へ大きく収縮させて焼結し、第2絶縁層と接続パッドが形成される。このとき、接続パッドは、導体ペーストで形成されるため、表面張力により、周辺部に比べて中央部の厚みが厚く形成されている。従って、周辺部に比べて、中央部が大きく収縮することとなり、接続パッドに窪みを形成することができる。
【0015】
一方、高温で収縮を開始する第2グリーンシート層の厚みが低温で収縮を開始する第1グリーンシート層の厚みよりも厚くなるようにしている。これにより、収縮開始温度の低い第1グリーンシート層は、その収縮による応力が小さくなり、収縮開始温度の高い第2グリーンシート層によって面方向への収縮が充分に抑制されるので、一層、厚み方向へ大きく収縮して焼結し、接続パッドに形成される窪みが大きなものとなる。同時に、第1グリーンシート層は第2グリーンシート層よりも厚みが薄いので、埋設された接続パッド形成用の導体ペーストを押し戻す弾性は弱く、加熱する前の導体ペーストの盛り上がりは小さくなり、接続パッドの窪みがより大きく形成される。
【0016】
また、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、第1絶縁層、第2絶縁層及び接続パッドが形成された後に、積層体上にフリップチップ型の電子部品素子を窪みの内面に接合される導電性接合材を介して搭載することにより、大きく形成された窪みの表面に沿って誘導されて自発的に位置決め補正されるので、接続信頼性の高い多層回路基板を得ることができる。
【0017】
更に、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、第1グリーンシート層の厚みが第2グリーンシート層の厚みの50%以下に設定されていることにより、収縮開始温度の低い第1グリーンシート層の面方向への収縮をより一層抑制することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の製造方法によって製作した多層回路基板の断面図であり、図中の1は積層体、2は接続パッドである。
【0020】
同図に示す積層体1は、第1絶縁層1a〜1c、第2絶縁層1e〜1fを積層した構造を有している。そして、積層体1の表層には、接続パッド2が形成されており、半導体素子や圧電素子等の電子部品素子3の搭載部として機能する。尚、図には示さないが、内部にも、内部導体及びビアホール導体が適宜形成されており、主に各回路素子を電気的に接続する配線や、インダクタやキャパシタ等の回路素子として機能する。
【0021】
第1絶縁層1a〜1cは第1の無機組成物から、また第2絶縁層1e〜1fは第2の無機組成物から成り、これら無機組成物の材料としては、例えば800℃〜1200℃の比較的低い温度で焼成が可能なガラス−セラミック材料が好適に用いられる。ガラス−セラミック材料にはガラス粉末及びセラミック粉末が含まれ、ガラス粉末は30〜100重量部含まれており、ガラス粉末を除く材料がセラミック粉末となる。
【0022】
本実施形態においては、例えば、第1絶縁層をガラス粉末が85重量部、第2絶縁層はガラス粉末を55重量部の組成から成る材料により製作した。
【0023】
ガラス粉末の具体的な組成としては、例えば、必須成分として、SiO2を20〜70重量部、Al2O3を0.5〜30重量部、MgOを3〜60重量部、また任意成分として、CaOを0〜35重量部、BaOを0〜35重量部、SrOを0〜35重量部、B2O3を0〜20重量部、ZnOを0〜30重量部、TiO2を0〜10重量部、Na2Oを0〜3重量部、Li2Oを0〜5重量部含むものが挙げられる。
【0024】
セラミック粉末としては、Al2O3、SiO2、MgTiO3、CaZrO3、CaTiO3、Mg2SiO4、BaTi4O9、ZrTiO4、SrTiO3、BaTiO3、TiO2から選ばれる1種以上が挙げられる。
【0025】
上記組成のガラス粉末とセラミック粉末との組み合わせによれば、1000℃以下での低温焼結が可能となるとともに、導体層として、銀(融点960℃)、銅(融点1083℃)、金(融点1063℃)などの低抵抗導体を用いて形成することが可能となり、低損失な回路を作成できる。また、誘電率の制御も可能であり、高誘電率化による回路の小型化、低損失化、あるいは、低誘電率化による高速伝送化に適している。しかも、上記の範囲で種々組成を制御することによって、焼成収縮挙動を容易に制御、変更することができる。
【0026】
尚、接続パッド2は銀、銅、金のいずれか一種を含む導電材料からから成り、その厚みは例えば5〜25μmに設定される。
【0027】
次に上述した多層回路基板の製造方法について、図2を用いて説明する。
【0028】
(工程A)
図2(a)に示す1a−gは、第1の無機組成物を含む第1グリーンシート層であり、1e−gは、第2の無機組成物から成る第2グリーンシート層である。これらのグリーンシート層は、例えば上述したガラス粉末とセラミック粉末とを組み合わせた粉末に、有機バインダと有機溶剤及び必要に応じて可塑剤とを混合してスラリー化し、このスラリーを用いてドクターブレード法などによりテープ成形を行い、所定寸法に切断することによって得られるセラミックグリーンシートである。このとき、第1グリーンシート層1a−gは、第2グリーンシート層1e−gに比して厚みが薄く形成されており、第1グリーンシート層1a−gの厚みは、例えば2〜150μmに設定され、第2グリーンシート層1a−gの厚みは、例えば10〜300μmに設定される。
【0029】
次に、第1グリーンシート層1a−gと第2グリーンシート層1e−gとを貼り合わせ、得られたシートの第1グリーンシート層上には接続パッド形成用の導体ペースト2−gをスクリーン印刷法などによって被着させて形成する。
【0030】
本実施形態においては、例えば、第1の無機組成物はガラス粉末が、SiO2を40重量部、Al2O3を2重量部、MgOを15重量部、CaOを1重量部、BaOを15重量部、BO3を20重量部、ZnOを1重量部、TiO2を0.5重量部、Na2Oを0.5重量部、Li2Oを5重量部と、セラミック粉末が、MgTiO3を15重量部の組成から成り、また第2の無機組成物はガラス粉末が、SiO2を40重量部、Al2O3を2重量部、MgOを15重量部、CaOを1重量部、BaOを15重量部、BO3を20重量部、ZnOを1重量部、TiO2を0.5重量部、Na2Oを0.5重量部、Li2Oを5重量部、セラミック粉末が、Al2O3を45重量部含む材料から成っている。これらの無機組成物に、有機バインダとしてアクリルバインダ、有機溶剤としてトルエンを添加してなるスラリーを調整し、それぞれ第1グリーンシート層、第2グリーンシート層を形成した。そして、接続パッド形成用の導体ペーストの材料は、例えば、銀粉末に、有機バインダとしてエチルセルロース、有機溶剤として2−2−4−トリメチル−3−3−ペンタジオールモノイソブチレートを添加して成るペーストを用いた。
【0031】
このようにして得られたシートと、第1グリーンシート層1b−g、1c−g及び第2グリーンシート層1f−gから成るシートとを、平板な金型で圧着積層して図2(b)に示す積層体1−gを形成する。このとき、第1グリーンシート層1a−gを最上層に位置させるとともに、接続パッド形成用の導体ペースト2−gは、第1グリーンシート層1a−g中に押し込み埋設した状態とする。
【0032】
(工程B)
次に、得られた積層体1−gを、第2グリーンシート層1e−g、1f−g、導体ペースト2−gのいずれの収縮開始温度よりも低く、且つ第1グリーンシート層1a−g〜1c−gの収縮開始温度より高い第1の温度領域で加熱することにより、第1絶縁層を形成する。
【0033】
(工程C)
続いて、第1の温度領域よりも高温側に位置する第2の温度領域で加熱することにより、第2絶縁層1e、1f及び表面に窪みを有した接続パッド2を形成し、図2(c)に示すような多層回路基板10を製作する。
【0034】
このように、積層体を、第2グリーンシート層1e−g、1f−g、導体ペースト2−gのいずれの収縮開始温度よりも低く、且つ第1グリーンシート層1a−g〜1c−gの収縮開始温度より高い第1の温度領域で加熱することにより、第1グリーンシート層1a−g〜1c−gは、面方向への収縮が未焼結状態の第2グリーンシート層1e−g、1f−gの剛性により抑制され、厚み方向へ大きく収縮させて焼結し、第1絶縁層1a〜1cが形成される。次に、積層体を、第1の温度領域よりも高温側に位置する第2の温度領域で加熱することにより、第2グリーンシート層1e−g、1f−g及び導体ペースト2−gは、面方向への収縮が第1絶縁層1a〜1cの剛性により抑制され、厚み方向へ大きく収縮させて焼結し、第2絶縁層1e、1fと接続パッド2が形成される。このとき、接続パッド2は、導体ペースト2−gで形成されるため、表面張力により、周辺部に比べて中央部の厚みが厚く形成されている。従って、周辺部に比べて、中央部が大きく収縮することとなり、接続パッド2に窪みを形成することができる。
【0035】
一方、高温で収縮を開始する第2グリーンシート層1e−g、1f−gの厚みが低温で収縮を開始する第1グリーンシート層1a−g〜1c−gの厚みよりも厚くなるようにしている。これにより、収縮開始温度の低い第1グリーンシート層1a−g〜1c−gは、その収縮による応力が小さくなり、収縮開始温度の高い第2グリーンシート層によって面方向への収縮が充分に抑制されるので、一層、厚み方向へ大きく収縮して焼結し、接続パッドに形成される窪みが大きなものとなる。同時に、第1グリーンシート層1a−g〜1c−gは第2グリーンシート層1e−g、1f−gよりも厚みが薄いので、埋設された接続パッド形成用の導体ペースト2−gを押し戻す弾性は弱く、加熱する前の導体ペースト2−gの盛り上がりは小さくなり、接続パッド2の窪みがより大きく形成される。
【0036】
本実施形態においては、第1グリーンシート層は収縮開始温度が690℃、第2グリーンシート層は収縮開始温度が783℃となる無機組成物により形成しており、この結果、積層体1−gの焼成収縮が終了した時の面方向の線収縮率が3%と小さく、対して、厚み方向の線収縮率は40%と大きなものとなり、接続パッド2の窪みを5〜15μmと安定して形成することができた。
【0037】
焼成における体積収縮については、上記工程Cにおいて第2グリーンシート層1e−g、1f−gが収縮を開始するまでの間に、第1グリーンシート層1a−g〜1c−gは、その全収縮量に対し90%に相当する体積収縮が完了していることが望ましく、更に望ましくは95%以上完了していることである。
【0038】
ここで収縮の開始とは、無機組成物の焼結に伴う収縮が開始されることを意味している。グリーンシート層に含まれる有機バインダは加熱により分解、除去され、この際、0〜1%程度の収縮が発生することがあるが、これはバインダの除去に伴うものであり、無機組成物の焼結による実質的な収縮とは別のものである。脱バインダ温度は使用するバインダにより異なるが、アクリルあるいはメタクリルバインダでは500℃、ブチラールバインダでは600℃程度までに終了する。焼成における収縮開始温度については、その温度の差が10℃以上であることが望ましく、更に望ましくは20℃以上である。このような工程B及びCを経て積層体は焼成収縮が終了するが、本発明において、この焼成収縮の終了とは、全体積収縮が99%以上進行した時点を意味する。
【0039】
また、第1絶縁層1a〜1c、第2絶縁層1e、1f及び接続パッド2が形成された後に、積層体1上にフリップチップ型の電子部品素子3を窪みの内面に接合される導電性接合材4を介して搭載することにより、大きく形成された窪みの表面に沿って誘導されて自発的に位置決め補正されるので、接続信頼性の高い多層回路基板10とすることができる。導電性接合材4は、略球面体となっており、材料としては半田バンプが主に用いられているが、これに限らず、金ワイヤから形成される金バンプを用いても構わない。
【0040】
更に、本実施形態において、第1グリーンシート層の厚みが第2グリーンシート層の厚みの50%以下に設定することにより、収縮開始温度の低い第1グリーンシート層の面方向への収縮をより一層抑制することができる。
【0041】
かくして上述した多層回路基板は、積層体上に形成された接続パッドにフリップチップ型の電子部品素子を搭載することにより、小型の半導体部品や複合電子部品として機能することとなる。
【0042】
尚、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変更、改良等が可能である。
【0043】
例えば上述の実施形態では、第1グリーンシート層1a〜1cの形成にセラミックグリーンシートを用い、これを第2グリーンシート層の形成に用いられるセラミックグリーンシートと貼り合わせて使用するようにしたが、これに代えて、第1グリーンシート層1a〜1cの形成にペースト状になした第1の無機組成物を用い、これを第2グリーンシート層の主面に、印刷等で塗布して直接形成するようにしても良い。この場合、厚みの薄い第1グリーンシート層がペーストの塗布等によって比較的簡単に形成されるようになり、厚みの薄い第1グリーンシート層をセラミックグリーンシート等で構成する場合に比し第1グリーンシート層を形成する際の作業性が良好となり、多層回路基板の生産性を向上させることができる利点もある。
【0044】
また、上述の実施形態においては、第1グリーンシート層と第2グリーンシート層とを交互に積層して積層体を形成するようにしたが、これに代えて、複数の第1グリーンシート層や複数の第2グリーンシート層を厚み方向に連続して積層することにより積層体を形成するようにしても構わない。
【0045】
更に、本発明における最上層の第1グリーンシート層とは、上述の実施形態では示していないが、積層体の主面側に露出する層のことを意味するものであり、例えば、一主面に形成したキャビティの底面部に露出する層をも含むものである。
【0046】
そして、焼成収縮が終了した後、接続パッドの表面にメッキ膜を形成しても良く、このとき、メッキ膜を形成することによって窪みが消失するという問題が発生することはない。
【0047】
【発明の効果】
本発明の多層回路基板の製造方法によれば、積層体を、第2グリーンシート層、導体ペーストのいずれの収縮開始温度よりも低く、且つ第1グリーンシート層の収縮開始温度より高い第1の温度領域で加熱することにより、第1グリーンシート層は、面方向への収縮が未焼結状態の第2グリーンシート層の剛性により抑制され、厚み方向へ大きく収縮させて焼結し、第1絶縁層が形成される。次に、積層体を、第1の温度領域よりも高温側に位置する第2の温度領域で加熱することにより、第2グリーンシート層及び導体ペーストは、面方向への収縮が第1絶縁層の剛性により抑制され、厚み方向へ大きく収縮させて焼結し、第2絶縁層と接続パッドが形成される。このとき、接続パッドは、導体ペーストで形成されるため、表面張力により、周辺部に比べて中央部の厚みが厚く形成されている。従って、周辺部に比べて、中央部が大きく収縮することとなり、接続パッドに窪みを形成することができる。
【0048】
一方、高温で収縮を開始する第2グリーンシート層の厚みが低温で収縮を開始する第1グリーンシート層の厚みよりも厚くなるようにしている。これにより、収縮開始温度の低い第1グリーンシート層は、その収縮による応力が小さくなり、収縮開始温度の高い第2グリーンシート層によって面方向への収縮が充分に抑制されるので、一層、厚み方向へ大きく収縮して焼結し、接続パッドに形成される窪みが大きなものとなる。同時に、第1グリーンシート層は第2グリーンシート層よりも厚みが薄いので、埋設された接続パッド形成用の導体ペーストを押し戻す弾性は弱く、加熱する前の導体ペーストの盛り上がりは小さくなり、接続パッドの窪みがより大きく形成される。
【0049】
また、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、第1絶縁層、第2絶縁層及び接続パッドが形成された後に、積層体上にフリップチップ型の電子部品素子を窪みの内面に接合される導電性接合材を介して搭載することにより、大きく形成された窪みの表面に沿って誘導されて自発的に位置決め補正されるので、接続信頼性の高い多層回路基板を得ることができる。
【0050】
更に、本発明の多層回路基板の製造方法によれば、第1グリーンシート層の厚みが第2グリーンシート層の厚みの50%以下に設定されていることにより、収縮開始温度の低い第1グリーンシート層の面方向への収縮をより一層抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法によって製作した多層回路基板の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る多層回路基板の製造工程を説明するための断面図である。
【図3】従来の多層回路基板の断面図である。
【符号の説明】
1・・・積層体
1a−g〜1c−g・・・第1グリーンシート層
1e−g、1f−g・・・第2グリーンシート層
1a〜1c・・・第1絶縁層
1e、1f・・・第2絶縁層
2−g・・・導体ペースト
2・・・接続パッド
3・・・電子部品素子
4・・・導電性接合材
10・・・多層回路基板
Claims (3)
- 第1の無機組成物を含む第1グリーンシート層と、該第1グリーンシート層よりも厚みが厚く、熱の印加に伴い前記第1グリーンシート層よりも高温で焼結に伴う収縮を開始する第2の無機組成物からなる第2グリーンシート層とを、前記第1グリーンシート層を最上層に位置させて積層することにより積層体を形成するとともに、前記積層体上に、前記第1グリーンシート層よりも高温で焼結に伴う収縮を開始する接続パッド形成用の導体ペーストを最上層の第1グリーンシート層中に埋設する工程Aと、
前記第2グリーンシート層、前記導体ペーストのいずれの収縮開始温度よりも低く、且つ第1グリーンシート層の収縮開始温度より高い第1の温度領域で加熱することにより、前記第1グリーンシート層をその面方向に比し厚み方向に大きく収縮させて焼結させることにより第1絶縁層を形成する工程Bと、
前記積層体を前記第1の温度領域よりも高温側に位置する第2の温度領域で加熱することにより、前記第2グリーンシート層及び導体ペーストをその面方向に比して厚み方向に大きく収縮させて焼結させることにより、第2絶縁層及び表面に窪みを有した接続パッドを形成する工程Cと、を含む多層回路基板の製造方法。 - 前記工程Cの後、前記積層体上にフリップチップ型の電子部品素子を前記接続パッドの窪みの内面に接合される導電性接合材を介して搭載することを特徴とする請求項1に記載の多層回路基板の製造方法。
- 前記工程Aにおける第1グリーンシート層の厚みが第2グリーンシート層の厚みの50%以下に設定されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の多層回路基板の製造方法。
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