JP4166368B2 - 鉄道車両留置用スコッチ - Google Patents

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    • B61K7/20Positive wheel stops

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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Refuge Islands, Traffic Blockers, Or Guard Fence (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の構内留置などにおいて、勾配、風等により車両が移動することを防止するために、車輪を支保するためのスコッチ(手歯止め)に関する。さらに詳しくは、種々の大きさの車輪に対しても充分な転動防止効果を有するとともに、スコッチを除去せずに誤発進した場合にも脱線事故を誘発しないスコッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に鉄道車両の車輪は,図7に示すようにレール29上を転動する転動面27を有する車輪本体26と、車輪の軸方向への移動を規制するため車輪本体の外周縁に突出して設けられた脱輪防止用フランジ28とからなっている。車輪径やフランジ突出巾は、電車、気動車、電気機関車、デイーゼル機関車,客車、新幹線電車などその種類によって異なり、例えば車輪径が730〜1250mmの範囲でフランジ突出巾が25〜35mmの範囲のものが一般的である。
【0003】
このような鉄道車両を構内などで留置する場合,勾配や風等により車両が移動しないように、種々の形状及び材質のスコッチが使用されてきた。例えばもっとも単純なものとして、金属製もしくは木製であって、レール上に載置される載置面と、載置面の一端から立ち上がり車輪の転動面に対峙する傾斜面を備えたブロック状のものが知られている。しかしながら金属製のものは、転動防止効果は優れるものの、スコッチを除去せずに車両を誤発進させ、車輪がスコッチ上に乗り上げた際にスコッチが破断され難く、フランジ突出巾以上の高さに乗り上げる結果、脱輪する恐れがあった。木製のものは車輪が乗り上げた場合、スコッチが破損し易く上記傾向は少なくなるが、材質差があるので脱輪の恐れは全くないとはいえなかった。また木製のものは耐久性が悪いので、長期の使用に耐えなかった。さらにこれら材質のものは、車輪径に合わせた各種サイズのものを用意する必要があった。
【0004】
このような欠点を改良するものとして、レールに載置される載置面を有する基台部と、該基台部に設けられ、該基台部の一端部から立ち上がり車輪の転動面に対峙する傾斜面を有する支持部とを備えて全体をプラスチックで形成し、車輪が乗り上げたときに支持部が圧壊するように基台部と支持部の間に空洞部を設けた車両用スコッチが、特開平10−35942号公報で提案されている。
【0005】
この提案のスコッチによれば、確かに特定の車両に対しては充分な転動防止効果が得られるとともに脱輪防止を可能とするものであったが、車輪の大きさや荷重の大きさ等による使用上の制約があった。例えば、大径の車輪にこの提案のスコッチを使用すると、強度不足でスコッチが破損し易く、充分な転動防止効果が得られなかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような現状においては、いずれのスコッチにおいても性能上の信頼性が欠けている上に各種のスコッチを準備しておく必要があり、その製造が煩雑となり、また使用現場では混乱をきたす恐れもあった。そこで本発明者らは製作上、使用上の上記欠点乃至難点を改善するため、種々の異なる径の車輪に対しても充分な転動防止効果を示すとともに、車輪がスコッチ上に乗り上げたとしても脱輪する恐れのないスコッチについて検討を行った。その結果、後記するような構造のスコッチを見出すに至り本発明に到達したものである。
【0007】
したがって本発明の目的は、種々の径の車輪を有する鉄道用車両に対し、少数の装着でも、また少々の悪条件においても、例えば5/1000程度の勾配でかつ35m/s程度の風速においても転動を防止することができるスコッチを提供することにある。本発明の他の目的は、上記車輪径の異なる鉄道用車両においても、スコッチ上に乗り上げた場合にその構造が破壊し、脱線事故を起こす恐れのないスコッチを提供することにある。本発明のさらに他の目的は、長期間の屋外使用によっても,性能低下を起こさないスコッチを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明においては、レール上を転動する転動面を有する車輪本体と車輪の軸方向への移動を規制するため車輪本体の外周縁に突出して設けられたフランジとを有する車輪をレール上に支保するための鉄道車両留置用スコッチにおいて、対面する二つのスコッチブロックが分離止め手段により一体化されてなるスコッチ本体と、上部に山型傾斜部を有するくさび状スコッチヘッドとからなり、上記スコッチ本体は、レール上に載置される載置面と、車輪の転動面に対峙し車輪の転動を防止するため載置面端部方向から中心方向に向って載置面上方に斜設された傾斜支持面と、上記スコッチヘッドのくさび部を嵌合させるため傾斜支持面の山頂部に凹設された嵌合部とを備え、上記スコッチヘッドは、そのくさび部がスコッチ本体の上記嵌合部に嵌合するとともに、嵌合位置に設けられたヘッド支持手段によりスコッチ本体に固着されて一体化しており、車輪が上記傾斜支持面を越えスコッチヘッド上に乗り上げたときに、くさび効果によって上記ヘッド支持手段及び分離止め手段を破壊させ、スコッチ本体を分解させるようにしたことを特徴としている。
【0009】
上記対面するスコッチブロックの分離止め手段の1例として、一方のスコッチブロックに設けられた分離止めフックを他方のスコッチブロックに設けられた係合孔に挿着係合する手段を挙げることができる。
【0010】
また上記嵌合位置に設けられるヘッド支持手段の1例として、スコッチヘッドくさび部にヘッド支持棒を一体的に設けておき、これをスコッチ本体の嵌合部壁に設けられた支持孔へ嵌挿する手段を挙げることができる。
【0011】
また好ましくは、上記ヘッド支持手段と分離止め手段の破壊強度を、車輪のフランジの突出巾より低い乗り上げ高さで破壊するように調整している。
【0012】
本発明ではまた、好ましくは対面する二つのスコッチブロックを同一形状のものとすることにより、スコッチ製作上のコスト削減を図り、またスコッチ使用時の方向性をなくすことができる。
【0013】
本発明では又、好ましくはスコッチ本体の少なくとも一部をリブで補強することにより、充分な強度をもたしている。
【0014】
さらに好ましくは、スコッチ本体の載置面、その傾斜支持面及びスコッチヘッドの山型傾斜部の少なくとも一部に鋸歯上の凹凸を設けることにより、レール上でのスコッチのすべりを防止し、あるいは車輪とスコッチとの間の滑りを防止している。
【0015】
上記スコッチは、好ましくはエンジニアリングプラスチックで構成することにより、充分な強度のものを簡単に得られるように工夫されている。
【0016】
本発明のスコッチは、滑りを効果的に防止するため、好ましくはスコッチ本体の載置面及び又は傾斜支持面の一部をゴム状滑り止め面としている。
【0017】
本発明のスコッチは、確実にレールに固定するために、好ましくはスコッチ本体側部に、スコッチをレールに拘持するためのスコッチサイドを設けて使用される。
【0018】
【発明の実施の態様】
以下、図面により本発明を詳細に説明する。
【0019】
図7に示すように、本発明のスコッチSは傾斜支持面3を有するブロック状に形成されたものであり、フランジ28を有する車輪26の転動面27に対峙してレール29上に載置し、その傾斜支持面3により車輪を支保するものである。
【0020】
図1〜4は,スコッチ本体を形成する二つのスコッチブロックとして同一形状のものを使用すると共に、載置面2及び傾斜支持面3の一部にゴム状滑り止め材21を装着して使用するスコッチの実施例であって、図1はそのスコッチブロックBLを、図2はスコッチヘッドHを、図3〜4は、図1のスコッチブロックBL二つと、図2のスコッチヘッドHと、図5で示す滑り止め材21とを組み立てて形成されたスコッチSを、それぞれ示す図面である。
【0021】
図1のスコッチブロックBLにおいて、(イ)はスコッチ本体の外面となる正面図、(ロ)は上面図、(ハ)は二つのスコッチブロックの対峙面となる背面図、(ニ)は底面図、(ホ)は側面図、(ヘ)はA−A断面図、(ト)はB−B断面図、(チ)はC−C断面図である。
【0022】
スコッチブロックBLは、スコッチをレール上に載置するための載置面2と、載置面の両端からの立ち上がり部32を経て設けられた車輪の転動面に対峙するための傾斜支持面3と、スコッチヘッドのくさび部の嵌合部を形成するため傾斜支持面の山頂部1から斜め下方に向って形成された嵌合部壁6を備えている。載置面2と傾斜支持面3の表面は、滑り防止のためほぼ前面にわたって鋸歯上の凹凸が設けられており、またそれぞれには、滑り止め材を装着するための取付部4及び5が設けられている。両側の傾斜支持面は、載置面中央近傍から傾斜支持面方向に向かって斜め方向に伸びる補強リブ7で補強されており、また嵌合部下部にも補強リブ30、31が設けられており、車輪を支保するに充分な強度を保っている。とくに斜め方向の補強リブ7は、スコッチに車輪の荷重に耐えるに充分な強度を与えるのに非常に効果的である。
【0023】
スコッチブロックの対峙面には、二つのスコッチブロックの分離止め手段となる二つの分離止めフック8と、対面する他ブロックの二つのフックを挿着係合するための二つの係合孔9とが設けられており、互いにフックを対面するブロックの係合孔に挿着係合することにより、二つのブロックが結合されるようになっている。結合に際しては、二つの面合わせピン10と、これに対応する二つの嵌合孔11が設けられており、ピン10を浅溝の嵌合孔11に嵌合させることにより、面合わせを容易に行うことができるようになっている。一般に車輪の転動面はフラットではなく若干の傾斜が付けられている。このため片側のスコッチブロックに大きな力が働き、横ずれによってスコッチブロックの結合をねじるように破壊する力が働くが、この面合わせピンを太めにしておくことにより、このような横ずれを防止し破壊に対する抵抗力を保有させることができる。
【0024】
スコッチブロックの嵌合部壁面6には、スコッチヘッド支持棒20を嵌挿するための二つの支持孔12が設けられており、支持孔12には、該支持棒を固持するため、嵌合部壁面と同一の傾斜角で上部から斜め下方に伸び、かつ先端に返し部を有する押さえ舌片13が設けられている。
【0025】
スコッチブロックBLにはまた、スコッチをレールに拘持するためのスコッチサイド22を着脱可能に取り付けるための取り付け孔15、16や把手25を着脱可能に取りつけるためのボルトを装着するための取り付け口14がそれぞれ設けられている。
【0026】
図2のくさび状スコッチヘッドHにおいて、(イ)は上面図、(ロ)は正面図、(ハ)は側面図である。スコッチヘッドHは、くさび部18と、ほぼ全面に鋸歯状凹凸を設けた山型傾斜部17とを有し、くさび部18には、中央部に補強リブ19と、下部に両横方向に伸びるスコッチヘッド支持棒20とが一体的に設けられている。
【0027】
図3〜4は、図1のスコッチブロックBL二つと、図2のスコッチヘッドHと、図5の滑り止め具21を組み立てて形成されるスコッチSを示す図面であって、図3の(イ)は正面図、(ロ)は上面図、(ハ)はB−B断面図、(ニ)はC−C断面図、図4の(イ)は図3(ニ)のD−D断面図、(ロ)は底面図、(ハ)は側面図、(ニ)はA−A断面図である。尚、図3及び図4においては、滑り止め具21の滑り止め面の鋸歯状凹凸は表示していない。
【0028】
図4(ニ)で示されるようにスコッチ本体は、二つのブロックがそれぞれ、片方のスコッチブロックの面合わせピン10が、他方のスコッチブロックの嵌合孔11に嵌合されると共に、片方のスコッチブロックの分離止めフック8が他方のスコッチブロックの係合孔9に挿着係合されることにより結合されて形成されており、これにより両ブロックの嵌合部壁6によりスコッチヘッドのくさび部を嵌合することができるくさび状凹窩の嵌合部も形成される。またブロック底面の載置面に穿設された取付部4には、図5で示す滑り止め材21が差し込まれ、スコッチの滑り止め機能を強化すると共に、両ブロックの底面部での結合を確実なものとしている。
【0029】
図3(イ)、図4(イ)に示すように、滑り止め材21の載置面は、スコッチブロックの載置面より下方に盛り上がった状態となっているが、勿論、スコッチブロックの載置面と同一面となるような形状のものを使用してもよい。滑り止め材21の載置面が、図3、図4に示すようにスコッチブロックの載置面より盛り上がっていても、滑り止め材がゴム質であると、使用状態では車輪の荷重によりスコッチブロックの載置面と同一となる程度まで圧縮される。図5に示すように、滑り止め材21の載置面には、鋸歯状の凹凸を設けると、一層の滑り止め効果が期待できる。
【0030】
さらに傾斜支持面の滑り止め材取付部5にも同様の滑り止め材21が装着され、車輪とスコッチの間の滑りを防止すると共に、上方での二つのブロックの結合を補助している。図3、図4に示すように、滑り止め材の傾斜支持面がスコッチ本体の傾斜支持面より盛り上がった状態となっていることについては、滑り止め材をゴム質のものを使用すれば、使用時には車輪の荷重によりスコッチ本体の傾斜支持面と同一面となる程度まで圧縮されるし、また勿論、最初からスコッチ本体の傾斜支持面と同一面となるような滑り止め材を使用することもできる。
【0031】
図3の(イ)、(ハ)、(ニ)で明らかなように、スコッチヘッドHのくさび部18は、スコッチ本体の嵌合部6に嵌合されるとともに、ヘッド支持棒20がスコッチ本体の支持孔12に嵌挿され,押さえ舌片13の返し部により固着されることにより、スコッチヘッドとスコッチ本体が一体化されている。
【0032】
スコッチブロック及びスコッチヘッドは比較的複雑な形状をしているが、高分子材料、とりわけ熱可塑性樹脂を用い、所定の金型を使用して射出成形すれば、寸法精度良好な成形品を容易に得ることができるし,一定品質のものを量産することが可能である。とくに図示するような構造のものであると、極端に肉厚の部分がないので、射出成形により成形歪の少ない成形品を得ることが可能である。
【0033】
スコッチは種々の車両の転動を防止するためには、一定以上の強度を有することが必要であり、スコッチの構造とそれを構成する高分子材料を適当に選択する必要がある。このための高分子材料としては、成形歪が少なく圧縮強度に優れ、また長期間の使用が求められるところから耐候性、耐薬品性等に優れた材料が好ましい。一方、車両がスコッチに乗り上げた際に、ヘッド支持棒や分離止めフックが比較的容易に破断するものが望ましい。
【0034】
かかる観点から、熱可塑性樹脂として好ましいものは、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ABS樹脂などのエンジニアリングプラスチックと称せられているもの、あるいはこれらの繊維強化物などである。例えば、ナイロン6、ナイロン66などの脂肪族系ナイロンは好適な材料ではあるが、若干吸水性があって吸水すると若干物性変化を起こす恐れがあるが、部分芳香族ナイロン、例えばナイロン6T、ナイロン6TIなどはより強度が優れ、成形歪や吸水性も小さく,一層好適な材料といえる。これら熱可塑性樹脂には、当然のことながら酸化防止剤や光安定剤などの添加剤が配合されていてもよい。
【0035】
また、スコッチの滑り止め材21として使用されるゴム材料としては、摩擦係数の大きいものが効果的である。ところがスコッチ載置面に使用するものは、その取り付け面積にも依存するが、硬度が過度に小さいゴム材料を用いると大きな荷重が掛かった場合にスコッチが変形し、スコッチ本来の性能が損なわれる可能性が生じるので、硬度が比較的大きく、また強度の大きい材料を選択するのが望ましい。例えばJISA硬度が60〜98程度、好ましくは80〜95程度のもので、ポリウレタンエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリエステルエラストマー、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、SBRなどが好適な材料である。
【0036】
スコッチを使用する場合には、図7に示すように、必要に応じ、スコッチSの把手取り付け孔14に把手25を装着し、この把手を持ってスコッチの傾斜支持面3がフランジ28を有する車輪26の転動面27に当接するように、車輪26とレール29の間に差し込むようにして載置する。あるいは予めスコッチSをレール上の所定位置に載置しておき、車両を移動させて車輪の転動面をスコッチの傾斜支持面と対峙するようにする。スコッチSに把手25を装着するには、スコッチブロックを結合する際に、スコッチブロックの対峙面から外方向に向う長手のボルト(図示しない)を取り付け孔14に設けておき、先端部にねじ孔を有する把手を螺合すればよい。
【0037】
スコッチSをレール上に取り付けるに際して,図6に示すような嵌合突起23を有するスコッチサイド22二つを、スコッチ本体の両側の取り付け孔15に突起23を嵌合させ、さらにねじ孔24とスコッチブロックのねじ孔16を通してねじ止めしてスコッチに装着しておくことにより、二つのスコッチサイドによりスコッチがレールに拘持され、スコッチの移動やレールからの転落を防止することができる。
【0038】
スコッチの載置面巾は、レール頭部巾に近似したものかこれより若干狭めに設計しておけばよく、これにより充分な転動防止効果を得ることが可能である。したがってレール巾が少し異なるようなレールにおいても、二枚のスコッチサイド間の距離を調整することにより、1種類のスコッチで対応することが可能である。またスコッチ本体の高さ及び傾斜支持面の傾斜角は、車輪径や車輪のフランジの突出巾などにより定められるべきものであるが、これを適正なものとすることにより、径がかなり異なる車輪に対しても充分な転動防止効果を得ることが可能である。
【0039】
スコッチは,車両を移動させるときには取り外されるが、取り外しを失念して車両を発車させた場合、車両がスコッチ上に乗り上げることがある。この場合、乗り上げ高さがフランジ28の突出巾を越えると脱輪の恐れが生じるが、本発明のスコッチにおいては、スコッチヘッド上への乗り上げが開始されるとスコッチヘッドHに力がかかり、そのくさび部分18が下方に押され、スコッチヘッド支持棒20及び分離止めフック8などを破損させ、同時に面合わせピンが嵌合孔から外れると共に傾斜支持面の強度の小さいゴム状滑り止め材は引き裂かれ、上方における二つのスコッチブロックの結合が解除される。そしてさらにスコッチヘッドが下方に押し下げられ、くさび効果によって二つのスコッチブロックは両側に分解させられる。この際、強度の小さい載置面のゴム状滑り止め材も引き裂かれる。これらは瞬時に起こるので、スコッチ本体の高さ及びスコッチヘッドのスイッチ機能を適正なものとしておけば、車輪の乗り上げ高さは低く押さえられる。
【0040】
このスイッチ機能があまり速く働きすぎると、転動防止能力に不安が残るので、わずかの移動では作動しないようにするには、スコッチヘッドの山型傾斜部の傾斜をブロック本体の傾斜支持部の傾斜より若干緩めにしたり、スコッチヘッド高さを若干低くしたりしておくのが効果的である。その一方でスイッチ機能の働きが遅くなりすぎると、乗り上げ高さが大きくなりすぎるので好ましくなく、この時間を一定範囲に保つためには、スコッチヘッドの高さや山型傾斜部の傾斜の選定が重要であるが、同時にヘッド支持棒や分離防止用フックの取り付け位置及びその破断強度により微調整することが可能である。このようにすれば、乗り上げ高さを車輪のフランジの突出高さ以下に調整することが可能となり、脱輪の恐れがなくなる。
【0041】
例えば、スコッチの載置面長さ約190mm、横巾約50mm、スコッチ本体高さ約60mm、載置面の立ち上がり部高さ約30mm、傾斜支持面の傾斜角度を載置面から約33度としたスコッチ本体と、高さ約60mm、巾約50×60mm、くさび部高さ約30mmのスコッチヘッドを、ガラス繊維強化ナイロン6Tで作製し、高さ約90mmのスコッチを組み立てた。その際、載置面や傾斜支持面にJISA硬度88のポリウレタンエラストマー製の滑り止め材を装着した。このスコッチを使用し、巾63.8mm及び65.0mmのレール上で、フランジ突出巾が25mm、径が730〜1250mmの車輪を有する各種車両に対してテストした結果、勾配が5/1000で、風速が35m/sの条件においても充分な転動防止効果を示すと共に、乗り上げ試験においてもスイッチ機構が適正に働き、スコッチが分解して脱輪を起こさないことが確認された。
【0042】
本発明のスコッチには、種々の変形が可能である。例えば上記実施例においては、材料節約のため傾斜支持面は載置面両端からの立ち上がり部を経てその上端から形成されているが、このような立ち上がり部を設けず、載置面を長く取って、その両端から直接傾斜支持面を設けるようにすることもできる。また上記実施例において、載置面のみを長くした構造とすることもできる。また既述の実施例において滑り止め材は、二つのスコッチブロックの結合を補助するように形成させていたが、その結合が強すぎてスコッチの分解を遅らせる場合には、一部又は全部の滑り止め材は、各スコッチブロックを連結することなく独立して設けるようにすればよい。
【0043】
【発明の効果】
本発明のスコッチは、種々の径の車輪に対して優れた転動防止効果を発揮するとともに、スコッチを除去せずに誤発進した場合にも、わずかな乗り上げ高さでスコッチが分解する構造となっているので、脱輪を誘発する恐れがない。そして1種類のスコッチで多種の車両の転動防止に使用できるので、製造コストの点で有利であるばかりか、使用現場での混乱を防ぐことができる。
【0044】
また二つのスコッチブロックを同一のものとし、スコッチを対称形に製作することにより、製造面で一層有利であるばかりか、使用時において載置の方向を考慮する必要がなく、作業上も有利である。さらに耐久性に優れたプラスチック材料を使用することができるので、品質安定性に優れた製品を量産することができるとともに、5年以上という長期にわたる使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】スコッチ本体を形成するスコッチブロックを示す図面であり、(イ)は正面図、(ロ)は上面図、(ハ)は二つのスコッチブロックの対峙面となる背面図、(ニ)は底面図、(ホ)は側面図、(ヘ)はA−A断面図、(ト)はB−B断面図、(チ)はC−C断面図である。
【図2】くさび状スコッチヘッドを示す図面であり,(イ)は上面図、(ロ)は正面図、(ハ)は側面図である。
【図3】二つのスコッチブロックと、くさび状スコッチヘッドと、滑り止め材とを結合して形成される本発明のスコッチの1例を示す図面であり、(イ)は正面図、(ロ)は上面図、(ハ)はB−B断面図、(ニ)はC−C断面図である。
【図4】図3のスコッチを示す他の図面であり、(イ)は図3(ニ)のD−D断面図、(ロ)は底面図、(ハ)は側面図、(ニ)はA−A断面図である。
【図5】滑り止め具の例を示す図面であり、(イ)は上面図、(ロ)は正面図、(ハ)は側面図である。
【図6】スコッチサイドの斜視図である。
【図7】スコッチの使用状態を示す図面である。
【符号の説明】
S スコッチ
BL スコッチブロック
H スコッチヘッド
1 山頂部
2 載置面
3 傾斜支持面
4 滑り止め取付部
5 滑り止め取付部
6 嵌合部
7 補強リブ
8 分離止めフック
9 係合孔
10 面合わせピン
11 嵌合孔
12 支持孔
13 押さえ舌片
17 山型傾斜部
18 くさび部
20 スコッチヘッド支持棒
21 滑り止め
22 スコッチサイド
25 把手
26 車輪
27 転動面
28 フランジ
29 レール

Claims (10)

  1. レール上を転動する転動面を有する車輪本体と車輪の軸方向への移動を規制するため車輪本体の外周縁に突出して設けられたフランジとを有する車輪をレール上に支保するための鉄道車両留置用スコッチにおいて、対面する二つのスコッチブロックが分離止め手段により一体化されてなるスコッチ本体と、上部に山型傾斜部を有するくさび状スコッチヘッドとからなり、上記スコッチ本体は、レール上に載置される載置面と、車輪の転動面に対峙し車輪の転動を防止するため載置面の端部方向から中心方向に向って載置面上方に斜設された傾斜支持面と、上記スコッチヘッドのくさび部を嵌合させるため傾斜支持面の山頂部に凹設された嵌合部とを備え、上記スコッチヘッドは、そのくさび部が上記嵌合部に嵌合するとともに、嵌合位置に設けられたヘッド支持手段によりスコッチ本体に固着されて一体化しており、車輪が上記傾斜支持面を越えスコッチヘッド上に乗り上げたときに、くさび効果によって上記ヘッド支持手段及び分離止め手段を破壊させ、スコッチ本体を分解させるようにしたことを特徴とする鉄道車両留置用スコッチ。
  2. 対面する二つのスコッチブロックの分離止め手段が、一方のスコッチブロックに設けられた分離止めフックを他方のスコッチブロックに設けられた係合孔に挿着係合するものである請求項1記載の鉄道車両留置用スコッチ。
  3. 嵌合位置に設けられたヘッド支持手段が、スコッチヘッドくさび部に一体的に設けられたヘッド支持棒をスコッチ本体の嵌合部壁に設けられた支持孔へ嵌挿するものである請求項1記載の鉄道車両留置用スコッチ。
  4. ヘッド支持手段及び分離止め手段の破壊強度を、車輪のフランジの突出巾より低い乗り上げ高さで破壊するように調整されていることを特徴とする請求項1〜3記載の鉄道車両留置用スコッチ。
  5. 対面する二つのスコッチブロックが同一形状をなしていることを特徴とする請求項1〜4記載の鉄道車両留置用スコッチ。
  6. スコッチ本体の少なくとも一部がリブで補強されていることを特徴とする請求項1〜5記載の鉄道車両留置用スコッチ。
  7. スコッチ本体の載置面、その傾斜支持面及びスコッチヘッドの山型傾斜部の少なくとも一部に鋸歯上の凹凸を設けたことを特徴とする請求項1〜6記載の鉄道車両留置用スコッチ。
  8. エンジニアリングプラスチックで構成したことを特徴とする請求項1〜7記載の鉄道車両留置用スコッチ。
  9. スコッチ本体の載置面及び又は傾斜支持面の一部をゴム状滑り止め面とすることを特徴とる請求項1〜8記載の鉄道車両留置用スコッチ。
  10. スコッチ本体側部に、スコッチをレールに拘持するためのスコッチサイドを設けたことを特徴とする請求項1〜9記載の鉄道車両留置用スコッチ。
JP14867099A 1999-05-27 1999-05-27 鉄道車両留置用スコッチ Expired - Lifetime JP4166368B2 (ja)

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