JP4138066B2 - タイヤの滑り止め装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、雪道や凍結した道路における車両のスリップを防止するタイヤの滑り止め装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、氷雪路面におけるタイヤの滑り止め用具としてタイヤチェーンが広く普及している。しかし、タイヤチェーンは、着脱が面倒であるばかりでなく、車両の乗り心地を低下させる。このため、各種のタイヤの滑り止め装置が提案されている。
【0003】
例えば、実開昭62−151105号公報や特開平6一312608号公報または特開平7一89308号公報には、タイヤのトレッド面を周回する周方向のトレッド溝を利用してタイヤに装着する滑り止め装置が記載されている。これらの滑り装置は、無端状の取付け部材にスパイクを取り付けた構造となっていて、特にスタッドレスタイヤとの組み合わせで使用すると効果的であり、雪道走行時に本来のトレッド面をそのまま有効に利用し、スタッドレスタイヤの苦手なアイスバーンでの性能を補うことを目的としている。また、特開平7一186634号公報、特開平9−220915号公報には、無端状の取付け部材を有しないタイプの滑り止め装置が提案されている。
【0004】
これらの公報に記載されている滑り止め装置は、いずれも滑り止め性能と取り付け性を通常のチェーンとは違った形で追及したもので、特長として乗り心地性に優れていることと、タイヤ裏側で車のサスペンションとタイヤとの隙間を気にせずに取り付けられるという大きな利点を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、実開昭62−151105号公報、特開平6−312608号公報または特開平7−89308号公報に記載された無端状の取付け部材を有する滑り止め装置は、タイヤの銘柄や摩耗度の違いを吸収し、走行時に外れないようにタイヤの細い溝の中や、タイヤトレッド表面上で規定の張力をもって無端状に接続するのは困難をきわめる。また、エンドレス(無端状)の部材を有するものは、タイヤの周面を周回させるエンドレス部材を一旦タイヤの外径よりも大きな径にしておき、締付機構によって締め付けて取り付けられないなど、簡便に使うための実用化は達成されていない。
【0006】
一方、滑り止め装置には、タイヤが駆動方向に回転すると、その反力としてタイヤ回転と反対の方向にずれる力が働く。また、タイヤトレッド表面の周長と滑り止めの厚み中心での周長とには差がある。そして、タイヤと滑り止め装置は、一般的にタイヤと永久的な一体状態には接合されていないため、無端状の例のようにタイヤトレッド面上でタイヤ周方向にトレッド面と平行に連続した状態で滑り止めが配置されると、先程説明したずれる力によりタイヤ周長と滑り止め周長の差に起因したたるみが特に発生しやすくなる。このたるみやたるみによるずれる力が滑り止め装置の無端状部材を順次伝わって行くと、滑り止め装置をかなり強くタイヤトレッド面に密着させたとしても、滑り止め装置のタイヤの溝との引っかかり部が浮いてしまう。そして、滑り止め装置の一部がタイヤ溝から外れると、タイヤ横方向への押さえがなくなり、滑り止め装置全体がタイヤから外れてしまう。
【0007】
このたるみ現象は、特開平7一186634号公報に記載された滑り止め装置のように、滑り止め装置を相互に連結させずに単独して配置するタイプでは発生しないが、特開平7一186634号公報に記載のものはタイヤの溝に圧入して取り付けるだけであるため、タイヤの銘柄や摩耗度の違いにより溝巾や溝深さが変化すると、規定の取り付け強度を維持することができず、しかも溝の深さの差で滑り止めの突出量も変わってしまうので滑り止め性能にも悪影響を及ぼす。
【0008】
一方、特開平9−220915号公報に記載されたものは、無端状でも単独配置状態でもないある程度長さを有する取付け部材に複数のスパイク(滑り止め本体)を配置したものであるが、接地時にスパイク部のみが路面に接触するとしても、隣同士のスパイクは取付け部材を介して剛体状態で繋がっているため、タイヤ回転に伴うタイヤ回転と反対方向への滑り止めのずれの力が取付け部材を介して順次隣のスパイク部へと伝わっていく。このため、タイヤ溝への圧入だけに頼っている状態では、ずれが発生すればタイヤの溝から外れてしまうし、上記で述べた溝利用での間題点は解消されていない。
【0009】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消するためになされたもので、取付けが簡単で路面からの力によって容易に外れることがない滑り止め装置を提供することを目的としている。
また、本発明は、タイヤの摩耗度の変化や銘柄の違いに左右されずに安定して取り付けられるようにすることを目的としている。
【0010】
【問題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明に係るタイヤの滑り止め装置は、固定板の一側面に突設した滑り止め本体と、前記固定板に設けられて他側の面から突出し、タイヤのトレッド面に刺し込む脚部とを有し、更に前記固定板にはタイヤのトレッド溝に挿入する挿入凸部が形成され、前記挿入凸部を介して複数の前記固定板を連結する連結部材とを有し、前記連結部材には、複数の前記固定板間の間隔を保持する位置決め部材が装着してあることを特徴とする。
また、固定板の一側面に突設した滑り止め本体と、前記固定板に設けられて他側の面から突出し、タイヤのトレッド面に刺し込む脚部とを有し、前記脚部の位置が、タイヤのトレッド面に形成した専用の凹部や溝の位置であり、更に前記固定板にはタイヤのトレッド溝に挿入する挿入凸部を形成するようにしている。
更に、固定板の一側面に突設した滑り止め本体と、前記固定板に設けられて他側の面から突出し、タイヤのトレッド面に刺し込む脚部とを有し、前記脚部の位置が、タイヤのトレッド面に形成した専用の凹部や溝の位置であり、更に前記固定板にはタイヤのトレッド溝に挿入する挿入凸部が形成され、前記挿入凸部を介して複数の前記固定板を連結する連結部材とを有することを特徴としている。
【0011】
【作用】
上記のごとく構成した本発明は、脚部をタイヤのトレッド面に刺し込むだけでタイヤに装着することができ、タイヤへの取り付けが非常に容易となる。そして、タイヤに装着する際には、タイヤのゆっくりした回転によってもトレッド面から脱落しないように脚部を軽く押込んだのち、タイヤをゆっくり回転させると、車両の重量により脚部が深く刺し込まれて確実に装着されるため、取付け時の労力も軽減される。また、脚部をトレッド面に刺し込んで装着するため、タイヤの摩耗状態や銘柄などの影響を受けることがなく、任意のサイズのタイヤにも容易に取り付けることができ、滑り止め性能も安定させることができる。しかも、脚部をトレッド面に刺し込んであるため、タイヤとの結合が強固となって、車両の走行時にタイヤが回転して路面からの反力が作用したとしても、タイヤから脱落することがない。また、取り外す際には、脚部をタイヤに刺し込んであるだけであるため、ドライバなどの工具を固定板とタイヤとの間に挿し込むことにより、容易に取り外すことができる。そして、脚部に抜け止め用の突起を設ければ、走行中における脱落などをより確実に防止することができる。
【0012】
固定板にトレッド溝に挿入する挿入凸部を設けるとともに、トレッド溝内に配置した挿入凸部を介して連結部材によって複数の固定板を連結すると、滑り止め本体を有する固定板を順次手際よくタイヤに取り付けることができるとともに、取り外す際には連結部材を引っ張ることにより、固定板を芋蔓式にタイヤから離脱させることができ、迅速な装着、取り外しを行なうことができる。従って、氷雪が融解したのちも装着されているような、永続的な取り付け状態を防ぐことができ、粉塵公害を生ずるようなおそれもない。しかも、連結部材は、トレッド溝内に配置されるため、タイヤの回転に伴う路面との接触による摩耗や破損が防止され、またタイヤの回転に伴うたるみの発生を防止でき、ずれや外れに対して高い保持性を得ることができる。そして、連結部材と固定板とは、相対移動可能となっているため、タイヤの回転によって任意の固定板に路面からの力が作用したとしても、その力が連結部材に作用せず、他の固定板に影響することがなく、固定板がタイヤから離脱することがない。
【0013】
また、連結部材に位置決め部材を装着して複数の固定板の間隔を保持できるようにすると、滑り止め本体を有する固定板が連結部材の長手方向にずれるのを防止でき、タイヤの周方向に容易に均等配置することができる。さらに、位置決め部材を変形可能な、例えばプラスチックのチューブなどによって形成すると、路面からの力の作用により任意の固定板の動きが他の固定板に伝達するのを防止でき、固定板がタイヤから脱落するのを防止することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に係るタイヤの滑り止め装置の好ましい実施の形態を添付図面に従って詳細に説明する。
図1は、本発明の参考例に係るタイヤの滑り止め装置の説明図であって、(1)は平面図、(2)は正面図、(3)は底面図、(4)は(2)のA−A線に沿った断面図であり、(5)は抜け止め用突起の他の例を示したものである。
【0015】
図1において、滑り止め装置10は、滑り止め本体であるスパイクチップ12と、スパイクチップ12を固定した固定板14とを有している。固定板14は、例えば厚さ1mm程度の鋼板によってほぼ正方形に形成してあって、各辺の中央部に脚部16がプレス加工により一体に設けてある。そして、スパイクチップ12は、固定板12の中央部にろう付けなどによって固定され、同図(2)に示してあるように、一側面である表面から突出している。また、各脚部16は、他側の面となる裏面側から突起するように形成され、脚本体18が先端に向けて漸次細くなっていて、容易にタイヤに刺し込むことができるようにしてある。また、脚本体18には、幅方向の両側に抜け止め用の突起20が形成してある。
【0016】
一方、スパイクチップ12は、超硬合金などの摩耗しにくい部材からなっていて、図1(4)に示してあるように、リング状に形成してある。そして、スパイクチップ12は、固定板14の表面中央に形成された凸部22に嵌合した状態で固定され、タイヤが回転して路面に与える推進力の反力によっても、容易に固定板14から分離しないようにしてある。
【0017】
上記のごとく構成した滑り止め装置10は、図2に示したように、脚部16をタイヤ24のトレッド面26に刺し入れることにより、トレッド面26に装着される。すなわち、滑り止め10をタイヤ24に取り付ける場合、脚部16の先端をタイヤ24のトレッド面26に押し込んで滑り止め装置10をタイヤ24に保持させる。この押し込み量は、タイヤ24をゆっくり回転させた際に、滑り止め装置10がタイヤ24から脱落しない程度でよい。そして、滑り止め装置10をタイヤ24に保持させた状態で車両を動かしてタイヤ24を回転させる。これにより、車両の重量が滑り止め装置10に作用し、図3に示したように、脚部16がトレッド面26に深く刺し込まれ、滑り止め装置10が完全にタイヤ24に装着されて脱落が防止される。
【0018】
なお、滑り止め装置10をタイヤ24から取り外す場合、固定板14とタイヤ24との間にドライバなどの工具を挿し込むことにより、容易に取り外すことができる。
このように、参考例に係る滑り止め装置10は、脚部16をトレッド面26に刺し込むだけでタイヤ24に取り付けることができ、無端状の取付け部材を締結したり、締め付けたりする必要がないため、容易に取付けることができる。しかも、脚部16をトレッド面26に刺し入れるだけであるため、タイヤ24のサイズや摩耗の状態、さらには銘柄の相違などに影響を受けることがなく、任意もタイヤに容易に装着することができる。そして、脚部16をトレッド面26に刺し入れて装着してあるため、タイヤ24が摩耗した場合でも脱落することがない。
【0019】
また、トレッド面26に配置された複数の滑り止め装置10は、相互に独立しているため、任意の滑り止め装置10に作用する路面からの力が他の滑り止め装置に影響を与え、他の滑り止め装置10がタイヤ24から脱落するなどの不都合をなくすことができる。そして、滑り止め装置10が摩耗した場合には、摩耗したものだけを交換すればよく、経済的である。また、脚部16には、抜け止め用の突起20が形成されているために、タイヤ24からす脱落するのを確実に防止することができる。
【0020】
なお、前記参考例では、抜け止め用の突起20を脚部16の幅方向両側に設けた場合について説明したが、図1(5)に示したように、例えば脚部16の裏面側から突起20を部分的に押出す等により、脚部16の厚さ方向に形成してもよい。また、前記参考例においては、脚部16が板状である場合について説明したが、脚部16を円柱状に形成してもよい。この場合、抜け止め用突起は、銛状に形成してもよい。さらに、前記参考例においては、脚部16が固定板14と一体に形成した場合について説明したが、両者を別体に形成して相互に固着してもよく、セラミックなどの成形品や金属と非金属との複合品であってもよい。そして、前記参考例においては、固定板14に1つのスパイクチップ12を設けた場合について説明したが、スパイクチップ12を複数設けてもよいし、固定板14によってスパイクチップを一体に形成してもよい。
【0021】
図4は第2の参考例に係る滑り止め装置の説明図であり、図5はそのスパイクユニットの説明図であって、(1)はスパイクユニットの平面図であり、(2)はスパイクユニットの一部を断面にした正面図であり、(3)はスパイクユニットの底面図であり、(4)は(1)のB方向矢視図である。
【0022】
これらの図において、滑り止め装置28は、連結部材29によって複数のスパイクユニット30を移動可能に連結された構造をなしている。そして、連結部材29は、この実施形態の場合、可撓性のあるワイヤによって形成してあって、両端にスパイクユニット30が脱落するのを防止する止め具31が装着してある。一方、スパイクユニット30は、参考例に係る滑り止め装置10の2つを一体化させたような構成となっており、図5(1)に示したように、固定板32a、32bを有し、各固定板32a、32bのそれぞれにスパイクチップ12が設けてある。また、固定板32a、32bのそれぞれには、3本の脚部16が一体に形成してある。
【0023】
固定板32a、32bの間には、図5(2)に示したように、タイヤのトレッド溝に挿入する一対の挿入凸部34が裏面側に突出させて固定板32a、32bと一体にプレス加工により形成してある。挿入凸部34は、スパイクユニット30の幅方向の両縁部に設けてあって、これらの挿入凸部34の間に作用を後述する挿入間隙36が形成されている。そして、挿入凸部34は、滑り止め装置28をスタッドレスタイヤに使用するのが効果的であるため、この実施形態の場合、スタッドレスタイヤの溝に合わせて形成してあるが、これに限定されるものではない。
【0024】
すなわち、スタッドレスタイヤには、一般にトレッド面に幅が7mm、深さが10mm程度の溝(トレッド溝)が設けられている。このトレッド溝の形状寸法は、タイヤが新しい状態のときのものであって、50%程度摩耗して冬タイヤとしての機能がなくなった状態においては、溝幅が6mm、深さが5mm程度に変化する。そこで、実施の形態の場合、挿入凸部34は、図5(2)の左右方向の外形が5mm、長さ(固定板32の裏面からの突出量)が5mmに形成してあって、摩耗したスタッドレスタイヤにも確実に装着できるようにしてある。また、連結部材29は、直径約2mmのワイヤによって形成してある。
【0025】
挿入凸部34は、連結部材29を配置するための凹部38を有するU字状に形成されていて、凹部38に配置した連結部材29がタイヤのトレッド面より突出しないようにしてある。また、各固定板32a、32bの挿入間隙36に対応した端部は、図5(2)に示したように、裏面側に折り曲げて形成した係止片40となっていて、図6に示した蓋体42を係止できるようになっている。
【0026】
蓋体42は、摩耗しにくいプラスチックによって形成してあり、ほぼ小判型をした蓋部44の下方に挿入間隙36に挿入可能な脚46が設けてある。また、脚46の両側には、係止凸部48が形成してあって、係止凸部48をスパイクユニット30の係止片40と係合することにより、蓋体42をスパイクユニット30に装着できるようになっている(図7参照)。また、脚46の下部には、切込み50が形成してあって、係止凸部48を側方に押圧することにより、係止凸部48の先端側を下方に傾斜させ、係止片40との係合を解除できるようにしてある。そして、蓋体42は、スパイクユニット30に装着した状態において、固定板32の表面からの高さがスパイクチップ12より低くなるようにしてあって、容易に摩耗しないようにしてある。
【0027】
この第2の参考例においては、図7に示したように、複数のスパイクユニット30の各挿入凸部34により形成した凹部38に連結部材29を配置する。そして、蓋体42の脚46をスパイクユニット30の挿入空間36に挿入し、スパイクユニット30の係止片40と蓋体42の係止凸部48とを係合させ、蓋体42をスパイクユニット30に装着する。これにより、スパイクユニット30は、連結部材29を配置した凹部38の上部開口部が蓋体42によって塞がれ、凹部38を通る連結部材29と相対移動可能に連結され、連結部材29から離脱するのを防止される。そして、複数のスパイクユニット30を連結した滑り止め装置28は、スパイクユニット30の挿入凸部34が図7に示したようにタイヤ24のトレッド溝52に挿入され、脚部16がトレッド面26に刺し込まれてタイヤ24に装着される。
【0028】
このように形成した滑り止め装置28は、スパイクチップ12を有する複数のスパイクユニット30を連結部材29によって連結したことにより、複数のスパイクユニット30の取り付けを容易に行なうことができる。しかも、連結部材29とスパイクユニット30とは、相対移動可能に連結してあるため、路面からの反力が任意のスパイクユニット30に作用してタイヤ24の周方向に動きを生じたとしても、他のスパイクユニット30に伝達されることがなく、他のスパイクユニット30がトレッド溝52から抜けるなどの事態を生ずることがない。
【0029】
なお、滑り止め装置28をタイヤ24から取り外す場合には、例えば連結部材29の端部に位置するスパイクユニット30を前記参考例と同様にドライバ等の工具を用いて取り外したのち、連結部材29をタイヤ24から離間する方向に引くことにより、残りの各スパイクユニット30を芋蔓式に取り外すことができる。このため、滑り止め装置28の取外しが容易なため、氷雪が融解したのちにも装着されたままであるような永続的な取付けをされることがなく、永続的な装着による粉塵公害の発生を防止することができる。
【0030】
また、複数のスパイクユニット30の一部に摩耗や破損を生じた場合には、当該スパイクユニット30に装着した蓋体42の係止凸部48を側方に押圧することにより、係止凸部48と係止爪40との係合を解除することができて、スパイクユニット30を連結部材29から容易に離脱させることができる。従って、滑り止め装置28は、摩耗または損傷したスパイクユニット30のみを交換すればよく、コストの低減を図ることができる。そして、この実施の形態においては、挿入凸部34がU字状に形成してあるためにプレス加工のよって容易に形成することができるとともに、連結部材29の凹部38への配置を容易に行なうことができる。
【0031】
前記実施の形態においては、連結部材29がワイヤである場合について説明したが、連結部材29はある程度の柔軟性があってあまり伸びを生じず、しかも引張ってスパイクユニット30をタイヤ24から取り外す力に耐えることができる強度を有するものであれば、プラスチックや繊維状のものなどであってもよい。
【0032】
なお、タイヤ24のトレッド溝52内には、スリップサイン用のプラットホームが数箇所に設けられており、タイヤ24の摩耗が基準以下に達すると、スリップサイン用プラットホームの上面がトレッド面26と同一になり、摩耗を検知できるようになっている。このため、挿入凸部34は、トレッド溝52内に配置する場合、プラットホームを避けるようにする。さらに、タイヤ24の摩耗度によっては連結部材29もプラットホームを避けて配置する必要がある。そこで、滑り止め装置28は、タイヤ24のトレッド溝52の周長より短くし、複数を装着することが望ましい。また、トレッド溝52は、タイヤ24の全周にわたってストレートであってもよいし、ジグザグ状であってもよい。そして、トレッド溝52がジグザグ状である場合、連結部材29の長さを溝の長さに応じて設定すればよい。
【0033】
図8は、実施の形態に係る滑り止め装置の一部平面図である。この実施の形態に係る滑り止め装置54は、第2参考例と同様に、複数のスパイクユニット30がワイヤからなる連結部材29によって、連結部材29に対して相対移動可能に連結してある。そして、各スパイクユニット30間の連結部材29には、位置決め部材56が装着してある。この位置決め部材56は、例えばウレタン樹脂や塩化ビニール樹脂などの柔軟性のある部材によって圧縮方向に変形可能なチューブ状に形成してあって、連結部材29に被覆してある。この実施の形態の場合、位置決め部材56は、内径が2.5mm、外形が4mmの薄肉チューブとなっていて、連結部材29に対して移動可能となっている。さらに、位置決め部材56は、隣接するスパイクユニット30間の距離より短く形成してあり、スパイクユニット30との間に間隙δが形成されるようになっている。
【0034】
このように構成した実施の形態においては、各スパイクユニット30が位置決め部材56によって連結部材29の長手方向における位置をほぼ決められているため、スパイクユニット30をタイヤ24の周方向に容易に等間隔で配置することができる。また、位置決め部材56を変形可能な部材によって形成するとともに、位置決め部材56とスパイクユニット30との間に間隙δを形成しているため、走行に伴うタイヤ24の変形や路面からの力の作用によって、任意のスパイクユニット30がタイヤ24の周方向に動くようなことがあっても、この動きが隣接したスパイクユニット30に影響を与えることがなく、隣接したスパイクユニット30がタイヤから外れるなどの不都合を生ずることがない。
【0035】
図9は、スパイクユニットの他の実施形態を示したものである。この実施の形態に係るスパイクユニット58は、タイヤ24のトレッド溝52に挿入する挿入凸部60がループ状になっていて、連結部材29を配置する配置空間62が閉空間となっている。そして、連結部材29にスパイクユニット58を連結する場合、連結部材29の端部を配置空間62に通すことにより行なわれる。また、位置決め部材56を連結部材29に装着する場合には、連結部材29の端部をスパイクユニット58の配置空間62と位置決め部材56とを交互に通す。
このような実施の形態においては、連結部材29を配置する空間62が閉空間となっているため、スパイクユニット58が連結部材29から離脱を防止するための蓋体42を省略することができ、部品点数の削減を図ることができる。
【0036】
なお、前記実施の形態においては、タイヤ24のトレッド面26に単に脚部16を刺し込んでスパイクユニット30をタイヤに取付ける装着する場合について説明したが、図10に示したように、タイヤ24のトレッド面26に脚部16の位置や形状に合わせて専用の凹部64や溝66を形成し、これらの凹部64や溝66を利用してスパイクユニット30を取り付けるようにすると、滑り止め装置の装着がより容易となる。また、タイヤ24のトレッドパターンの設計を滑り止め装置の取り付けを前提としたものとすることにより、滑り止め装置の性能の信頼性を向上できるため、専用タイヤとの組合わせであってもよい。
【0037】
【発明の効果】
上記に説明したように、本発明によれば、脚部をタイヤのトレッド面に刺し込むだけでタイヤに装着することができ、タイヤへの取り付けが非常に容易となる。また、脚部をトレッド面に刺し込んで装着するため、タイヤの摩耗状態や銘柄などの影響を受けることがなく、任意のサイズのタイヤにも容易に取り付けることができ、滑り止め性能も安定させることができる。しかも、脚部をトレッド面に刺し込んであるため、タイヤとの結合が強固となって、車両の走行時にタイヤが回転して路面からの反力が作用したとしても、タイヤから脱落することがない。また、取り外す際には、脚部をタイヤに刺し込んであるだけであるため、ドライバなどの工具を固定板とタイヤとの間に挿し込むことにより、容易に取り外すことができる。そして、脚部に抜け止め用の突起を設ければ、走行中における脱落などをより確実に防止することができる。
【0038】
固定板にトレッド溝に挿入する挿入凸部を設けるとともに、トレッド溝内に配置した挿入凸部を介して連結部材によって複数の固定板を連結すると、滑り止め本体を有する固定板を順次手際よくタイヤに取り付けることができるとともに、取り外す際には連結部材を引っ張ることにより、固定板を芋蔓式にタイヤから離脱させることができ、迅速な装着、取り外しを行なうことができる。従って、氷雪が融解したのちも装着されているような、永続的な取り付け状態を防ぐことができ、粉塵公害を生ずるようなおそれもない。しかも、連結部材は、トレッド溝内に配置されるため、タイヤの回転に伴う路面との接触による摩耗や破損が防止され、またタイヤの回転に伴うたるみの発生を防止でき、ずれや外れに対して高い保持性を得ることができる。そして、連結部材と固定板とは、相対移動可能となっているため、タイヤの回転によって任意の固定板に路面からの力が作用したとしても、その力が連結部材に作用せず、他の固定板に影響することがなく、固定板がタイヤから離脱することがない。
【0039】
また、連結部材に位置決め部材を装着して複数の固定板の間隔を保持できるようにすると、滑り止め本体を有する固定板が連結部材の長手方向にずれるのを防止でき、タイヤの周方向に容易に均等配置することができる。さらに、位置決め部材を変形可能な、例えばプラスチックのチューブなどによって形成したことにより、路面からの力の作用により任意の固定板の動きが他の固定板に伝達するのを防止でき、固定板がタイヤから脱落するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例に係るタイヤの滑り止め装置の説明図であって、(1)は平面図、(2)は一部を断面にした正面図、(3)は底面図、(4)は(2)のA−A線に沿った断面図であり、(5)は抜け止め用突起の他の例を示したものである。
【図2】 参考例に係るタイヤの滑り止め装置をタイヤに装着した状態の斜視図である。
【図3】 参考例に係るタイヤの滑り止め装置をタイヤに装着した状態を示す詳細図である。
【図4】 第2参考例に係るタイヤの滑り止め装置の平面図である。
【図5】 第2参考例に係るスパイクユニットの詳細説明図であって、(1)は平面図、(2)は一部を断面にした正面図、(3)は底面図、(4)は(1)のB方向矢視図である。
【図6】 第2参考例に係る蓋体の詳細説明図である。
【図7】 第2参考例に係るタイヤの滑り止め装置のタイヤへの装着状態を示す図である。
【図8】 本発明の実施の形態に係るタイヤの滑り止め装置の説明図である。
【図9】 他の実施形態に係るスパイクユニットの説明図である。
【図10】 実施の形態に係る滑り止め装置を装着するための凹部や溝を設けたタイヤの一部を示す斜視図である。

Claims (3)

  1. 固定板の一側面に突設した滑り止め本体と、前記固定板に設けられて他側の面から突出し、タイヤのトレッド面に刺し込む脚部とを有し、更に前記固定板にはタイヤのトレッド溝に挿入する挿入凸部が形成され、前記挿入凸部を介して複数の前記固定板を連結する連結部材とを有し、前記連結部材には、複数の前記固定板間の間隔を保持する位置決め部材が装着してあることを特徴とするタイヤの滑り止め装置。
  2. 固定板の一側面に突設した滑り止め本体と、前記固定板に設けられて他側の面から突出し、タイヤのトレッド面に刺し込む脚部とを有し、 この脚部の位置が、タイヤのトレッド面に形成した専用の凹部や溝の位置であり、更に前記固定板にはタイヤのトレッド溝に挿入する挿入凸部を形成したことを特徴とするタイヤの滑り止め装置。
  3. 固定板の一側面に突設した滑り止め本体と、前記固定板に設けられて他側の面から突出し、タイヤのトレッド面に刺し込む脚部とを有し、この脚部の位置が、タイヤのトレッド面に形成した専用の凹部や溝の位置であり、
    更に前記固定板にはタイヤのトレッド溝に挿入する挿入凸部が形成され、前記挿入凸部を介して複数の前記固定板を連結する連結部材とを有することを特徴とするタイヤの滑り止め装置。
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