JP4164967B2 - プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、被処理物の表面に存在する有機物等の異物のクリーニング、レジストの剥離、有機フィルムの密着性の改善、金属酸化物の還元、製膜、表面改質などのプラズマ処理に利用されるプラズマを発生させるためのプラズマ処理装置、及びこれを用いたプラズマ処理方法に関するものであり、特に、精密な接合が要求される電子部品の表面のクリーニングに好適に応用されるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、大気圧下でプラズマ処理を行うことが試みられている。例えば、特開平2−15171号公報や特開平3−241739号公報や特開平1−306569号公報には、反応容器内の放電空間に一対の電極を配置すると共に電極の間に誘電体を設け、放電空間をHe(ヘリウム)やAr(アルゴン)などの希ガスを主成分とするプラズマ生成用ガスで充満し、反応容器に被処理物を入れると共に電極の間に交流電界を印加するようにしたプラズマ処理方法が開示されており、誘電体が配置された電極の間に交流電界を印加することにより安定的にグロー放電を発生させ、このグロー放電によりプラズマ生成用ガスを励起して反応容器内にプラズマを生成し、このプラズマにより被処理物の処理を行うようにしたものである。
【0003】
また、特開平4−334543号公報や特開平5−202481号公報にも大気圧下でプラズマ処理を行うことが記載されており、これら公報には、円筒状の反応管の外周に複数の電極を設け、電極間に交流電圧を印加して反応管内にプラズマを発生させ、プラズマが発生した反応管内に被処理物を導入して被処理物の処理を行うようにしたものである。
【0004】
しかし、上記のいずれの方法でも被処理物の特定の部分にのみプラズマ処理を行いにくく、また、処理時間も長くかかるという問題があった。そこで、大気圧下でグロー放電により生成したプラズマ(特にプラズマの活性種)を被処理物にジェット状に吹き出してプラズマ処理を行うことが提案されている(例えば、特開平4−358076号公報、特開平3−219082号公報、特開平4−212253号公報、特開平6−108257号公報、特願平10−344735号)。
【0005】
図10にジェット状のプラズマを吹き出してプラズマ処理を行うプラズマ処理装置Aの一例を示す。このプラズマ処理装置Aは、外側電極40を備えた筒状の反応管2、及び反応管2の内部に配置される内側電極41を具備して構成されており、反応管2に不活性ガスまたは不活性ガスと反応ガスの混合気体を導入する(矢印▲1▼で示す)と共に外側電極40と内側電極41の間に電源15から交流電界を印加することにより大気圧下で反応管2の内部にグロー放電を発生させ、反応管2の吹き出し口1から被処理物6に向かってジェット状のプラズマ5を吹き出すものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記のプラズマ処理装置Aでは、反応管2の内部に内側電極41が配設されているために、内側電極41がプラズマ5や反応ガスに直接曝されており、このために、プラズマ5によりスパッタリングを受けたり反応ガスにより腐食されたりしてダメージを受けることになり、内側電極41の寿命が短いという問題があった。しかも、スパッタリングや腐食により生じた不純物がプラズマやガス流とともに吹き出し口1から吹き出されることになり、長期間の使用によって被処理物を汚染する恐れがあった。さらに、内側電極41は反応管2の長さ方向に沿った形で配置する必要があるため、反応管2の長さと同程度の長さが必要になる。このため、内側電極41がアンテナのように作用して高周波ノイズを放射し、周辺の機器を誤動作させる恐れがあった。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、電極の寿命を長くすることができ、しかも、長期間の使用によっても被処理物の汚染が発生せず、さらには放射高周波ノイズを低減することができるプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法を提供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るプラズマ処理装置Aは、片側が吹き出し口1として開放された筒状の反応管2と一対の電極3、4とを具備して構成され、該反応管2にプラズマ生成用ガスを導入し、一対の電極3、4の間に交流電界を印加することにより、大気圧下で反応管2内にグロー状の放電を発生させ、反応管2の吹き出し口1からジェット状のプラズマ5を吹き出して、流出するプラズマ5にて被処理物6をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、反応管2の外側に一対の環状の電極3、4をプラズマ生成用ガスの導入方向と略平行方向において互いに対向させて設け、この一対の電極3、4の間隔Lを3〜20mmにし、上記一対の電極3、4の間に形成される反応管2内の放電空間7の体積を減少させるための体積減少具8を反応管2内に設けて成ることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明の請求項2に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1の構成に加えて、吹き出し口1側に近い位置に配置される一方の電極4を接地して成ることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明の請求項3に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1又は2の構成に加えて、反応管2の吹き出し口1側の端部に一方の電極4を設けて成ることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の請求項4に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1乃至3のいずれかの構成に加えて、電極3、4の少なくとも一方を冷媒で冷却することを特徴とするものである。
【0015】
また本発明の請求項5に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1乃至4のいずれかの構成に加えて、体積減少具8を反応管2とほぼ同軸に配設して成ることを特徴とするものである。
【0016】
また本発明の請求項6に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1乃至5のいずれかの構成に加えて、体積減少具8を絶縁材料で形成して成ることを特徴とするものである。
【0017】
また本発明の請求項7に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1乃至6のいずれかの構成に加えて、体積減少具8を冷媒で冷却することを特徴とするものである。
【0018】
また本発明の請求項8に係るプラズマ処理装置Aは、請求項4又は7の構成に加えて、冷媒がイオン交換水であることを特徴とするものである。
【0019】
また本発明の請求項9に係るプラズマ処理装置Aは、請求項4又は7の構成に加えて、冷媒が不凍性及び絶縁性を有することを特徴とするものである。
【0020】
また本発明の請求項10に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1乃至9のいずれかの構成に加えて、一対の電極3、4の間に印加する交流電界の周波数が1kHz〜200MHzであることを特徴とするものである。
【0021】
また本発明の請求項11に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1乃至10のいずれかの構成に加えて、電極3、4は反応管2と接触する側の表面粗度が10〜1000μmであることを特徴とするものである。
【0022】
また本発明の請求項12に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1乃至11のいずれかの構成に加えて、反応管2を吹き出し口1側に向かって絞り込んで成ることを特徴とするものである。
【0023】
また本発明の請求項13に係るプラズマ処理装置Aは、請求項1乃至12のいずれかの構成に加えて、プラズマ5を点灯させるための高電圧パルス発生器50を具備して成ることを特徴とするものである。
【0024】
本発明の請求項14に係るプラズマ処理方法は、請求項1乃至13のいずれかに記載のプラズマ処理装置Aでプラズマ処理を行うことを特徴とするものである。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0026】
図1にプラズマ処理装置Aの一例を示す。このプラズマ処理装置Aは、一対の電極3、4を反応管2の外周にそれぞれ接触させて設けると共に電極3と電極4を上下に対向させて配置することによって形成されており、反応管2の内部において電極3と電極4の間に放電空間7が形成されている。一対の電極3、4のうち、一方の電極3は高周波を発生する電源15と接続されて高電圧が印加される高圧電極として形成されており、他方の電極4は接地されて低電圧となる接地電極として形成されている。
【0027】
反応管2は高融点の絶縁材料(誘電体材料)で円筒状に形成されるものであって、その上端はガス導入口90として開放されている。また、反応管2の下部には直径が下側ほど小さくなるような先細り形状に絞り込まれたテーパー構造の集束部20が形成されていると共に反応管2の下端面である集束部20の下面には吹き出し口1が設けられている。集束部20以外の部分における反応管2の直径(内径)は10〜50mmに形成されるが、集束部20を設けないで吹き出し口1の口径を反応管2の上記の直径とほぼ同じに形成した場合、吹き出し口1から吹き出されるジェット状のプラズマ5の流速を加速するのが難しいが、上記のように反応管2の下部を小径となるように絞り込んだ集束部20として形成することによって、放電空間7の体積を小さくすることなくジェット状のプラズマ5の流速を加速することができ、短寿命のラジカルなどの反応性ガス活性粒子が消滅する前に、被処理物6にプラズマ5を到達させることができて被処理物6のプラズマ処理を効率よく行うことができるものである。被処理物6の表面のクリーニングに適したプラズマ5の流速を得るためには、集束部20の外周面と集束部20以外の反応管2の外周面との間に形成されるテーパー角αが10〜30°であることが好ましい。
【0028】
また、吹き出し口1の開口面積は直径が0.1〜5mmの真円の面積に相当する大きさに形成されている。吹き出し口1の開口面積が上記の範囲よりも小さすぎると、吹き出されるプラズマ5の処理範囲が小さくなりすぎて、被処理物6のプラズマ処理に長時間を要することになり、逆に、吹き出し口1の開口面積が上記の範囲よりも大きすぎると、吹き出されるプラズマ5の処理範囲が大きくなりすぎて、被処理物に局所的なプラズマ処理を施すことができなくなる恐れがある。
【0029】
反応管2を形成する絶縁材料の誘電率は放電空間7における低温化の重要な要素であって、具体的には絶縁材料として、石英、アルミナ、イットリア部分安定化ジルコニウムなどのガラス質材料やセラミック材料などを例示することができる。
【0030】
電極3と電極4は、その冷却効率を高くするために熱伝導性の高い金属材料、例えば、銅、アルミニウム、真鍮、耐食性の高いステンレス鋼(SUS304など)などで形成されており、図2に示すように電極3と電極4は同形であって、環状(リング状)に形成されている。電極3と電極4の略中央部には上下に貫通する挿着孔10が形成されており、挿着孔10の孔径は反応管2の外径とほぼ同一に形成されている。また、電極3と電極4の内部は冷媒が流通可能な流通部11として形成されており、電極3と電極4の外周面には流通部11と連通する供給管12と排出管13が突設されている。
【0031】
電極3と電極4の内周面(挿着孔10を構成する面)は反応管2と接触する接触面14として形成されており、接触面14の算術平均粗さで表した表面粗度は10〜1000μmに設定されている。このように接触面14の表面粗度を10〜1000μmに設定することによって、放電空間7における放電の均一化を図ることができ、グロー状の放電を発生することができる。グロー状の放電とはミクロ的に見た場合に、非常に微細なマイクロディスチャージの集合体と考えられ、電極3、4の表面に上記のような微細な凹凸を形成することによって、アークへの移行が阻害されるのである。電極3と電極4の接触面14の表面粗度が10μm未満であれば、放電しにくくなる恐れがあり、電極3と電極4の接触面14の表面粗度が1000μmを超えると、放電の不均一化が生じる恐れがある。このように電極3と電極4の接触面14を粗面化する加工としては、サンドブラストなどの物理的手段を採用することができる。尚、表面粗さをy=f(x)の形に表した場合の算術平均粗さRa(μm)はJIS B 0601で以下の式(1)で定義されている。
【0032】
【数1】
【0033】
そして、反応管2を挿着孔10に差し込むことによって、電極3と電極4を反応管2の外周に取り付けると共に電極3と電極4の内周面の接触面14を反応管2の外周面に接触させるように配置する。また、電極3は交流電界を発生させる電源15と接続されると共に電極4は接地される。電極4は電極3の下側で集束部20の上側に位置するように、すなわち、吹き出し口1と電極3の間に位置するように配置される。このことで、電極4が電極3よりも被処理物6に近くに位置することになり、すなわち、高電圧となる電極3が電極4よりも被処理物6から遠くに位置することになり、電極3から被処理物6にアーク放電が飛びにくくなって、アーク放電による被処理物6の破損を防止することができるものである。
【0034】
電極3と電極4の間隔L(電極3の下端と電極4の上端の間隔L)は3〜20mmに設定する。電極3と電極4の間隔Lが3mm未満であれば、反応管2の外部で電極3と電極4の間で短絡が起こって放電空間7で放電が起こらなくなる恐れがあり、しかも、放電空間7が狭くなって、効率よくプラズマ5を生成することが難しくなる恐れがある。また、電極3と電極4の間隔Lが20mmを超えると、放電空間7で放電が起こりにくくなって、効率よくプラズマ5を生成することが難しくなる恐れがある。
【0035】
上記の電極3と電極4は冷媒により冷却されるが、冷媒としてはイオン交換水や純水も使用することができる。イオン交換水や純水を用いることによって、冷媒中に不純物が含まれることがなく、電極3と電極4が冷媒で腐食されにくくなるものである。また、冷媒としては0℃で不凍性を有し、且つ電気絶縁性及び不燃性や化学安定性を有する液体であることが好ましく、例えば、電気絶縁性能は0.1mm間隔での耐電圧が10kV以上であることが好ましい。この範囲の絶縁性を有する冷媒を用いる理由は、高電圧が印加される電極からの漏電を防止するためである。このような性質を有する冷媒としては、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル等を例示することができ、また純水にエチレングリコールを5〜60重量%添加した混合液であってもよい。さらに冷媒は空気であってもよい。
【0036】
上記のように形成されるプラズマ処理装置Aでは、プラズマ生成用ガスとして不活性ガス(希ガス)あるいは不活性ガスと反応ガスの混合気体を用いる。不活性ガスとしては、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトンなどを使用することができるが、放電の安定性や経済性を考慮すると、アルゴンやヘリウムを用いるのが好ましい。また反応ガスの種類は処理の内容によって任意に選択することができる。例えば、被処理物の表面に存在する有機物のクリーニング、レジストの剥離、有機フィルムのエッチングなどを行う場合は、酸素、空気、CO2、N2Oなどの酸化性ガスを用いるのが好ましい。また反応ガスとしてCF4などのフッ素系ガスも適宜用いることができ、シリコンなどのエッチングを行う場合にはこのフッ素系ガスを用いるのが効果的である。また金属酸化物の還元を行う場合は、水素、アンモニアなどの還元性ガスを用いることができる。反応ガスの添加量は不活性ガスの全量に対して10重量%以下、好ましくは0.1〜5重量%の範囲である。反応ガスの添加量が0.1重量%未満であれば、処理効果が低くなる恐れがあり、反応ガスの添加量が10重量%を超えると、放電が不安定になる恐れがある。
【0037】
上記のように形成されるプラズマ処理装置Aを用いてプラズマ処理を行うにあたっては、まず、矢印▲1▼で示すようにガス導入口90から反応管2の内部にプラズマ生成用ガスを上から下に向かって流して導入すると共に電極3に電源15から高周波電圧を印加して、電極3と電極4の間の放電空間7に高周波の交流電界を印加する。この交流電界の印加により大気圧下で放電空間7にグロー放電を発生させ、グロー放電でプラズマ生成用ガスをプラズマ化してプラズマ活性種を含むプラズマ5を生成した後、プラズマ5を吹き出し口1から下方にジェット状(連続的)に流出させ、吹き出し口1の下側に配置された被処理物6の表面にプラズマ5を吹き付けるようにする。このようにして被処理物6のプラズマ処理を行うことができる。
【0038】
本発明において、印加される交流電界の周波数は1kHz〜200MHzに設定するのが好ましい。交流の周波数が1kHz未満であれば、放電空間7での放電を安定化させることができなくなり、プラズマ処理を効率よく行うことができなくなる恐れがある。交流の周波数が200MHzを超えると、放電空間7でのプラズマ5の温度上昇が著しくなり、反応管2や電極3、4の寿命が短くなる恐れがあり、しかも、プラズマ処理装置が複雑化及び大型化する恐れがある。
【0039】
また本発明において、放電空間7に印加される印加電力は20〜3500W/cm3に設定するのが好ましい。放電空間7に印加される印加電力が20W/cm3未満であれば、プラズマを充分に発生させることができなくなり、逆に、放電空間7に印加される印加電力が3500W/cm3を超えると、安定した放電を得ることができなくなる恐れがある。尚、印加電力の密度(W/cm3)は、(印加電力/放電空間体積)で定義される。
【0040】
また上記のようにプラズマ5を発生させている間、電極3と電極4は冷媒により冷却されている。つまり、矢印▲2▼で示すように供給管12を通じて電極3と電極4の内部の流通部11に冷媒を供給することによって、電極3と電極4が冷却される。流通部11に供給された冷媒は、矢印▲3▼で示すように排出管13を通じて排出される。そして、電極3と電極4を冷媒により冷却するので、大気圧下で周波数の高い交流でプラズマを生成しても、電極3と電極4の両方の温度上昇をより抑えることができ、よってプラズマ5の温度(ガス温度)がより高くならないようにすることができて被処理物6の熱的損傷をより少なくすることができるものである。また電極3と電極4の両方を冷却することによって、放電空間7の局所的な加熱をより防ぐことができ、より均質なグロー放電を生成してストリーマー放電の生成を抑えることができて被処理物6のストリーマー放電による損傷をより少なくすることができるものである。これは、電極3と電極4の両方を冷却することによって、電極3と電極4の両方からの部分的な電子の放出が抑えられるためであると考えられる。
【0041】
そして本発明では、放電空間7に交流電界を印加するための電極3と電極4の両方を反応管2の外側に設けるので、電極3と電極4の両方がプラズマ5に直接曝されることが無くなって、プラズマ5によりスパッタリングを受けないようにすることができると共に反応ガスにより腐食されないようにすることができ、電極3と電極4がダメージを受けなくなって寿命を長くすることができるものである。しかも、スパッタリングや腐食により不純物が生じないので、長期間の使用であっても被処理物6が不純物より汚染されないようにすることができるものである。
【0042】
また、電極3と電極4をプラズマ生成用ガスの導入方向と略平行に並ぶように、すなわち、電極3と電極4を上下に並べて対向させて配置するので、放電空間7に生成される交流電界の方向とプラズマ生成用ガス及びプラズマ5の流れ方向とをほぼ一致させることができ、プラズマ5の活性種を効率よく生成することができるものであり、しかも、電極3と電極4の間隔Lを変えることによって、放電空間7の大きさを簡単に変えることができ、プラズマ5の生成量を容易に調整することができるものである。
【0043】
さらに、電極3と電極4の大きさも不必要に長くしたりすることが無く放電空間7の大きさに対応した形状に設計することができるので、高周波ノイズの放射源である電極3、4をコンパクトにすることができ、その結果、放射高周波ノイズを低減することができるものであり、周辺の機器の誤動作を防止することができるものである。
【0044】
また、集束部20の絞りの度合いを変えることによって、吹き出し口1からのプラズマ5の吹き出し速度(流速)を容易に変更することができるものであり、さらに、吹き出し口1の口径を変えることによって、容易に処理面積を広げたり狭めたりすることができるものである。
【0045】
図3に他のプラズマ処理装置Aを示す。このプラズマ処理装置Aは図1に示すものにおいて、接地される電極4の形状及び電極4の配置位置を変えたものであり、その他の構成や使用方法は図1に示すものと同様である。尚、図3において電極3、4のそれぞれの供給管12と排出管13は図示省略されている。電極4は挿着孔10の直径を下側ほど小さくなるように絞り込んで形成した以外は図2に示すものと同様に形成されている。すなわち、電極4の挿着孔10の形状は集束部20の外周形状と合致させて形成されている。そして、反応管2の集束部20を電極4の挿着孔10に差し込むことによって、電極4を反応管2の集束部20の外周に取り付けると共に電極4の内周面の接触面14を反応管2の集束部20の外周面に接触させるように配置する。このようにして電極4は反応管2の吹き出し口1側の端部である下端部に設けられている。すなわち、電極4の下面が反応管2の吹き出し口1の外側開口縁部と略位置するように電極4は反応管2に取り付けられている。
【0046】
このプラズマ処理装置Aにおいて、電極3と電極4の間隔Lは図1のものと同様に形成されている。従って、電極3と電極4の間に形成される放電空間7は図1のものの放電空間よりも下側に位置して吹き出し口1に近づくことになり、放電空間7は吹き出し口1の近くで直上に形成されることになる。そして、このように電極4を反応管2の吹き出し口1側の端部に設けて放電空間7を吹き出し口1の近くで直上に形成することによって、放電空間7で生成されたプラズマ5のプラズマ活性種が反応管2内で死滅しにくなって、多くの活きたプラズマ活性種を吹き出し口1から吹き出して被処理物6に供給することができ、図1のものに比べてプラズマ処理の処理効率を向上させることができるものである。
【0047】
図4に本発明の実施の形態を示す。このプラズマ処理装置Aは図1に示すものにおいて、反応管2の内部に体積減少具8を設けて形成されている。体積減少具8の下部は放電空間7内に位置しており、体積減少具8で放電空間7の体積が図1のものよりも減少している。その他の構成は図1に示すものと同様に形成されている。このように放電空間7の体積を減少させるための体積減少具8を設けることによって、放電空間7における単位体積あたりの投入電力(交流電界)を増加させることができ、プラズマ5の生成の効率を向上させることができるものである。
【0048】
体積減少具8は中身が詰まった棒体で形成してもよいが、図5に示すように、冷媒で冷却可能な二重管構造に形成するのが好ましい。二重管構造の体積減少具8は円筒状の冷却管31と導入管32から構成されており、冷却管31の内周面と導入管32の外周面の間が冷媒の通る冷媒流路33として形成されている。そして矢印▲4▼で示すように、導入管32の上端開口から導入管32内に冷媒を供給すると共に、導入管32内の冷媒を導入管32の下端開口から吐出して冷媒流路33に冷媒を供給し、矢印▲5▼で示すように、冷媒流路33内の冷媒を冷却管31の上部に突設した導出管34から排出するようにして冷媒を流通させることによって、体積減少具8を冷却することができる。
【0049】
そしてこのように体積減少具8を冷却することによって、体積減少具8の熱による劣化を低減することができ、体積減少具8の長寿命化を図ることができるものであり、しかも、体積減少具8の周囲の放電空間7で生成されるプラズマ5の温度を低下させることができ、被処理物6の熱によるダメージを少なくすることができるものである。
【0050】
体積減少具8(特に、冷却管31)は反応管2と同様の絶縁材料で形成するのが好ましく、このことで体積減少具8からスパッタリングや腐食により不純物が生じないようにすることができ、長期間の使用であっても被処理物6が不純物より汚染されないようにすることができるものである。また、体積減少具8はステンレス鋼等の金属材料で形成することもできるが、この場合、体積減少具8(特に、冷却管31)の表面は、絶縁材料で保護膜でコーティングするのが好ましい。
【0051】
この保護膜に使用する絶縁材料としては、石英、アルミナ、イットリア部分安定化ジルコニウムなどのガラス質材料やセラミック材料などを例示することができる。さらに、アルミナ(Al2O3)、酸化チタン(チタニアでTiO2)、SiO2、AlN、Si3N、SiC、DLC(ダイヤモンド様炭素被膜)、チタン酸バリウム、PZT(チタン酸鉛ジルコネート)などの誘電体材質のものを例示することができる。またマグネシア(MgO)単体あるいはマグネシアを含む絶縁材料を用いることもできる。
【0052】
また、保護膜を形成するにあたっては、絶縁材料で円筒体(セラミック管やガラス管)を形成し、これの内側に体積減少具8を挿着して密着させる方法、及びアルミナ、チタン酸バリウム、酸化チタン、PZTなどの粉末をプラズマ中で分散させ、体積減少具8の表面に吹き付けるようにするプラズマ溶射法、及びシリカ、酸化スズ、チタニア、ジルコニア、アルミナなどの無機質粉末を溶剤などにより分散し、体積減少具8の表面にスプレーなどで吹き付けて被覆した後、600℃以上の温度で溶融させるいわゆる琺瑯被覆方法、及びゾルゲル法によるガラス質膜の形成方法などを採用することができる。さらに気相蒸着法(CVD)もしくは物理蒸着法(PVD)により体積減少具8の表面を保護膜でコーティングすることもでき、これらの方法を採用することによって、極めて緻密で平滑な吸着性の乏しい保護膜で体積減少具8の表面をコーティングすることができ、放電の安定化をより促進することができる。現実的な処理時間及びコストを考慮すると、上記の溶射法を用いるのが好ましい。
【0053】
また、保護膜の厚みは10〜500μmに設定するのが好ましい。保護膜の厚みが10μm未満であれば、体積減少具8の劣化防止の効果が小さく、体積減少具8の長寿命化を図りにくくなる恐れがあり、保護膜の厚みが500μmを超えても体積減少具8の劣化防止の効果は大きく向上せず、保護膜に使用する絶縁材料の消費量が無駄に多くなって経済的に不利になる恐れがある。
【0054】
また、体積減少具8の表面と保護膜の間には、ニッケル、クロム、アルミニウム、イットリウムを含む合金膜で形成されるアンダーコートを介在させるのが好ましい。アンダーコートは合金の溶射により形成することができ、具体的な合金としては、Ni−Cr、Ni−Al、Ni−Cr−Al−Yなどを例示することができる。体積減少具8は室温と高温のプラズマ下の繰り返しによる熱応力負荷環境に置かれることになり、この熱応力で保護膜が剥離してしまう恐れがある。そこで、保護膜にかかる熱応力負荷の衝撃を緩和させるためにアンダーコートを設けるようにする。金属である体積減少具8と合金であるアンダーコートと絶縁材料である保護膜の熱膨張率の関係は、金属の膨張率>合金の膨張率>絶縁材料の膨張率となり、体積減少具8の熱による伸縮がアンダーコートの介在によって保護膜に伝わりにくくなり、このことで、保護膜が剥離しにくくなって体積減少具8の長寿命化を図ることができるものである。
【0055】
また、保護膜には封孔処理を施すのが好ましい。封孔処理は保護膜の欠陥部分を埋める処理であって、SiO2、TiO2、Al2O3などの誘電体を含む溶液に浸漬して行う。この封孔処理を行うことによって、電極3と金属製の体積減少具8の間でアーク放電を起こりにくくすることができ、プラズマ5の加熱による体積減少具8の劣化を防止して体積減少具8の長寿命化を図ることができるものである。
【0056】
体積減少具8は反応管2の中心を上下に貫くように配置されている。つまり、反応管2の長手方向(上下方向)に長い中心線と体積減少具8の長手方向(上下方向)に長い中心線とがほぼ合致するように、反応管2と体積減少具8はほぼ同軸(同心円状)に配置されている。このように反応管2と体積減少具8をほぼ同軸に配置することによって、反応管2の内周面と体積減少具8の外周面の間に形成される放電空間7の体積を均一化することができ、放電空間7における交流電界の密度が均一化されて、プラズマ5を効率よく生成することができるものであり、しかも、生成されるプラズマ5が均質化されて高品質のプラズマ処理を行うことができるものである。
【0057】
図6に他の実施の形態を示す。このプラズマ処理装置Aは体積減少具8以外は図4のものとほぼ同様に形成されている。体積減少具8の下部は放電空間7内に位置する暴露部51として形成されていると共に体積減少具8の上部は放電空間7よりも上側に位置する非暴露部52として形成されている。非暴露部52は上記の絶縁材料で形成されている。また、暴露部51はステンレス鋼などの耐腐食(酸化)性に優れる金属材料で形成するか、もしくは上記の絶縁材料でコーティングされた金属材料(すなわち、暴露部51は上記の保護膜で覆われている)で形成されている。尚、暴露部51の金属材料としては電極3、4と同様の金属材料を用いることができる。
【0058】
このプラズマ処理装置Aでは、放電空間7内に位置する体積減少具8の暴露部51を金属材料もしくは絶縁材料でコーティングされた金属材料で形成するので、絶縁材料よりも耐熱衝撃性、耐熱繰り返し疲労性が向上し、体積減少具8の信頼性、耐久性が向上するものである。特に、体積減少具8を冷却する場合に有効である。
【0059】
図7に他のプラズマ処理装置Aを示す。このプラズマ処理装置Aは図1に示すものにおいて、反応管2を真っ直ぐな円筒状に形成すると共に反応管2の内径を0.1〜10mmに形成したものである。その他の構成や使用方法は図1に示すものと同様である。尚、図7において電極3と電極4のそれぞれの供給管12と排出管13は図示省略されている。また、電極3の幅寸法(反応管2の長手方向と平行方向の長さ)は電極4の幅寸法よりも長く形成されている。
【0060】
このプラズマ処理装置Aでは、反応管2の内径を0.1〜10mmに形成したので、放電空間7の体積が比較的小さくなって、低電力化及び少ガス流量化を図ることができるものであり、また、放電空間7の体積を小さくするための体積減少具8を用いる必要が無くなって、構造を簡素化することができるものであり、さらに、反応管2に集束部20のような絞り構造を形成するための加工が不要となって、反応管2の形成を容易にしてコストの削減を図ることができるものである。反応管2の内径が0.1mm未満であると、吹き出し口1が小さくなり過ぎてプラズマ5の吹き出し範囲が狭くなり、プラズマ処理をすることができる範囲が小さくなる恐れがあり、また、反応管2の強度が低下する恐れがある。一方、反応管2の内径が10mmより大きくなると、吹き出し口1が大きくなり過ぎて吹き出し口1から吹き出されるジェット状のプラズマ5の流速が小さくなり、プラズマ処理の速度が遅くなる恐れがあり、また、放電空間7の体積が大きくなり過ぎて放電空間7における単位体積あたりの投入電力(交流電界)が小さくなってプラズマ5の生成の効率が低下し、プラズマ処理の速度が遅くなる恐れがある。そして、これらの問題点を解決するためには、ガス流量や電力を増やすしかないが、この結果、ガス及び電力を多量に消費し、コストパフォーマンスが低下する恐れがある。従って、反応管2の内径を0.1〜10mmに形成するのである。
【0061】
図8に他のプラズマ処理装置Aを示す。このプラズマ処理装置Aは図7に示すものにおいて、接地電極である電極4の配置位置を変えたものであり、その他の構成や使用方法は図7に示すものと同様である。すなわち、電極4は反応管2の吹き出し口1側の端部である下端部に設けられており、電極4の下面が反応管2の吹き出し口1の外側開口縁部と略位置するように電極4は反応管2に取り付けられている。
【0062】
このプラズマ処理装置Aにおいて、電極3と電極4の間隔は図7のものと同様に形成されている。従って、電極3と電極4の間に形成される放電空間7は図7のものの放電空間よりも下側に位置して吹き出し口1に近づくことになり、放電空間7は吹き出し口1の近くで直上に形成されることになる。そして、このように電極4を反応管2の吹き出し口1側の端部に設けて放電空間7を吹き出し口1の近くで直上に形成することによって、放電空間7で生成されたプラズマ5のプラズマ活性種が反応管2内で死滅しにくなって、多くの活きたプラズマ活性種を吹き出し口1から吹き出して被処理物6に供給することができ、図7のものに比べてプラズマ処理の処理効率を向上させることができるものである。
【0063】
図9に他のプラズマ処理装置Aを示す。このプラズマ処理装置Aは図7のものに高電圧パルス発生器50を設けたものである。高電圧パルス発生器50は高電圧パルス発生回路を内蔵し、且つ高電圧パルス発生回路で発生させた高電圧パルスを放つ放射電極55を備えて形成されている。放射電極55としては電極3や電極4と同様の金属材料で形成される導体棒を用いることができ、放射電極55の先端は高電圧パルスが放ち易いように鋭利に形成されている。また、放射電極55の先端が吹き出し口1の真下(下流)に位置する状態と吹き出し口1の真下に位置しない状態との間で移動するように、放射電極55は移動自在に形成されている。放射電極55の移動手段としてはエアーシリンダなどを用いることができる。
【0064】
この高電圧パルス発生器50はプラズマ処理装置Aの始動時において放電空間7にプラズマ5を点灯させるために用いるものである。高電圧パルス発生器50を用いた点灯方法は、放射電極55を移動させることによって放射電極55の先端を吹き出し口1の真下に位置させると共に上記と同様に電極3と電極4の間への高周波電界の印加及び反応管2へのプラズマ生成用ガスの導入を行った後、放射電極55の先端から高電圧パルスを放つようにする。このように放射電極55の先端から高電圧パルスを放つことにより、放電空間7に予備電離プラズマが発生し、この予備電離プラズマが電極3と電極4の間に印加された電圧(本来であれば、反応管2内を絶縁破壊させることができない低い電圧)によって増幅されてプラズマ5が点灯するのである。そしてプラズマ5を点灯させた後、放射電極55の先端を吹き出し口1の真下に位置させないように、すなわち、プラズマ処理の妨げとならない位置に放射電極55を移動させ、この後、上記と同様にしてプラズマ処理を行うのである。尚、高電圧パルス発生器50で発生させる高電圧パルスの電圧や発生時間はプラズマ生成用ガスの種類などによって異なるが、高電圧パルスの電圧はプラズマ5の生成時に電源15で電極3と電極4に印加する電圧の3倍以上にするのが好ましく、また、高電圧パルスの発生時間は任意に設定することができる。
【0065】
大気圧近傍の圧力条件下で放電させる本発明のプラズマ処理装置Aでは、放電開始時に放電空間7に大きな電圧(約1kV以上)をかけてプラズマ5を点灯させる必要がある。また、放電空間7に印加する電力(電源)の周波数も13.56MHzに代表されるような高周波であるために、電源15とプラズマ5が発生する部分との間にインピーダンス整合が必要である。従って、プラズマ5を点灯させてプラズマ処理装置Aを始動させるために、高電圧を電極3に印加すると、上記のインピーダンス整合のために設けたインピーダンス整合器内の可変コンデンサ内でアークが発生してしまい、プラズマ処理装置Aを始動させることができないことがあった。そこで、電源15とは別にプラズマ5の点灯用の高電圧パルス発生器50を設けることによって、電源15で高電圧を電極3に印加することなくプラズマ5を確実に点灯させることができ、プラズマ処理装置Aを始動不良無く素早く始動させることができるものである。尚、このような高電圧パルス発生器50は図1、図3、図4、図6、図8に示すプラズマ処理装置Aに設けることができる。
【0066】
【実施例】
以下本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0067】
(実施例1)
図4に示す構造のプラズマ処理装置Aを形成した。反応管2としては石英ガラス管を用い、外径を16mm、内径を13mmに形成した。また、集束部20のテーパー角αは20°とした。電極3と電極4は銅製であって、接触面14の算術平均粗さは100μmに形成した。また、電極3と電極4を冷却する冷媒としては純水を用いた。さらに、反応管2の内部には体積減少具8として外径が8mmの石英管を挿入して設けた。
【0068】
被処理物6としては、OMPAC(Over Molded Pad Array Carrier)型BGA(Ball Grid Array)基板を使用した。これは、0.5mm厚のBT(ビスマレイミドトリアジン)基板(サイズは50×200mm)に、太陽インキ社製のレジスト(PSR−4000AUS5)を40μm厚に塗布して形成したものである。また、この被処理物6の一部には、ボンディングパッドを含む金メッキ回路が形成されていると共にICチップが搭載されている。このICチップは、プラズマ処理によるチャージアップダメージ(給電時における損傷)を評価するために、シリコン基板の上に厚み10nmのSiO2層と厚み300nmのポリシリコンを形成したものである。
【0069】
プラズマ生成用ガスはヘリウムを1リットル/分、アルゴンを3リットル/分、酸素を0.06リットル/分の割合で混合して流して反応管2に供給した。そして放電空間7に300Wで13.56MHzの高周波電界を印加してプラズマ5を発生させ、これを吹き出し口1からジェット状に吹き出して被処理物6の表面に5秒間供給してプラズマ処理(被処理物6の表面の改質処理及びクリーニング処理)を行った。
【0070】
この結果、処理の前後でレジスト部分の水の接触角が80度から8度に低下し、表面の親水性が改善された。また、金メッキ回路のボンディングパッドとICチップとをワイヤボンディングした結果、ワイヤボンディングの強度が処理前では5.1gであったのに対して、処理後では12.1gに向上し、著しい性能(ワイヤボンディングの強度)の向上が見られた。また、ボンディングパッド部をXPS分析した結果、表面における炭素原子と金原子の組成比率(C/Au)は、処理の前後で約3から約0.5にまで減少しており、ボンディングパッド部の炭素除去が行われていた。このように炭素除去が行われたために、ワイヤボンディングの強度が向上したと考えられる。また、炭素原子と金原子以外の他の不純物は検出されなかった。
【0071】
さらに、プラスコン社製の封止樹脂(SMT−B−1)を用いて被処理物6の表面に底面積1cm2のプリン状の封止樹脂を形成し、封止樹脂と被処理物6の剪断剥離強度を測定した結果、処理前では2MPaであったのに対して、処理後では10MPaと大きく強度が向上していた。また、被処理物6に搭載したICチップのチャージアップダメージも無かった。
【0072】
(参考例2)
図1に示す構造のプラズマ処理装置Aを形成した。反応管2としては石英ガラス管を用い、外径を16mm、内径を13mmに形成した。また、テーパー角は20°とした。電極3と電極4は銅製であって、接触面14の算術平均粗さは100μmに形成した。また、電極3と電極4を冷却する冷媒としては純水を用いた。
【0073】
被処理物6としては、ネガ型レジストを1μmで塗布したシリコン基板を用いた。プラズマ生成用ガスはヘリウムを0.5リットル/分、アルゴンを1.5リットル/分、酸素を0.02リットル/分の割合で混合して流して反応管2に供給した。そして放電空間7に250Wで13.56MHzの高周波電界を印加してプラズマ5を発生させ、これを吹き出し口1からジェット状に吹き出して被処理物6の表面に供給してプラズマ処理(レジストのエッチング処理)を行った。
【0074】
その結果、約7μm/分のエッチング速度が得られ、極めて均一な形状にレジストをエッチングすることができた。また、XPS分析の結果、レジスト成分以外の不純物は検出されなかった。
【0075】
(実施例3)
図4に示す構造のプラズマ処理装置Aを形成した。反応管2としては石英ガラス管を用い、外径を16mm、内径を13mmに形成した。また、テーパー角は20°とした。電極3と電極4は銅製であって、接触面14の算術平均粗さは100μmに形成した。また、電極3と電極4を冷却する冷媒としては純水を用いた。さらに、反応管2の内部には体積減少具8として外径が8mmの石英管を挿入して設けた。この体積減少具8は図7に示すような二重管構造を有するものであり、プラズマ処理中に純水を冷媒として用いて冷却した。
【0076】
被処理物6としては、アルミナ基板に銀パラジウムペーストをスクリーン印刷し、これを焼き付けしてボンディングパッド部を含む回路を形成したものを使用した。プラズマ生成用ガスはヘリウムを1リットル/分、アルゴンを3リットル/分、水素を0.03リットル/分の割合で混合して流して反応管2に供給した。そして放電空間7に250Wで13.56MHzの高周波電界を印加してプラズマ5を発生させ、これを吹き出し口1からジェット状に吹き出して被処理物6の表面に5秒間供給してプラズマ処理(被処理物6の表面の改質処理及びクリーニング処理)を行った。
【0077】
ボンディングパッド部をXPS分析した結果、処理前では酸化銀のピークが確認されたが、処理後にはこのピークは金属銀に変化しており、ボンディングパッド部に酸化銀は認められなかった。また、プラズマ処理中に吹き出し口1より5mm離れた位置でのプラズマ5の温度を測定した結果、体積減少具8を冷媒で冷却した場合は冷媒で冷却しない場合に比べて、約200℃低下していた。
【0078】
(実施例4)
放電空間7に5kHzの高周波電界を印加した以外は実施例3と同様にしてプラズマ処理を行った。ボンディングパッド部のXPS分析及びプラズマ5の温度は実施例3と同様の結果となった。
【0079】
(実施例5)
放電空間7に150MHzの高周波電界を印加した以外は実施例3と同様にしてプラズマ処理を行った。ボンディングパッド部のXPS分析及びプラズマ5の温度は実施例3と同様の結果となった。
【0080】
(参考例6)
図7に示すプラズマ処理装置Aを作製した。反応管2としては外径5mm、内径3mmの石英ガラス管を用いた。電極3と電極4は鋼製であって、金メッキが施されており、反応管2との接触面14の算術平均粗さは100μmに形成した。各電極の幅(反応管2に対して平行方向の長さ)は、高圧電極となる電極3が30mm、接地電極となる電極4が15mmとし、電極3と電極4の間隔Lを5mmに設定した。また、各電極を冷却する冷媒としては純水を用いた。
【0081】
そして上記の反応管2に、ヘリウムを0.25リットル/分、アルゴンを1.25リットル/分、酸素を0.022リットル/分の割合で混合したプラズマ生成用ガスを供給し、100Wで13.56MHzの高周波を印加し、プラズマ5を発生させ、これを吹き出し口1からジェット状に吹き出して被処理物6の表面に供給してプラズマ処理を行った。被処理物6としては、ネガ型レジストを1μm塗布したシリコン基板を用いた。その結果、約8μm/分のエッチング速度が得られた。処理面積は実施例1のプラズマ処理装置を用いてエッチングした場合の約半分となり、処理範囲を有効に絞ることができることを確認した。また、XPS分析の結果、レジスト成分以外の不純物は検出されなかった。
【0082】
(実施例7)
図6に示すプラズマ処理装置を作製した。反応管2としては外径15mm、内径13mmの石英ガラス管を用いた。また、集束部20のテーパー角αは17°とした。電極3と電極4は鋼製であって、金メッキが施されており、反応管2との接触面14の算術平均粗さは100μmに形成した。各電極の幅(反応管2の長手方向に対して平行方向の長さ)は、高圧電極となる電極3が30mm、接地電極となる電極4が15mmとし、電極3と電極4の間隔Lを5mmに設定した。また、各電極を冷却する冷媒としては純水を用いた。さらに、反応管2の内部に体積減少具8として、外径が8mmの石英の管と、外径が8mmのインコネル600(ニッケル合金)の管とから構成されたものを挿入して設けた。上記体積減少具8は、放電に曝される部分である暴露部51のみ(体積減少具8の下端部から約50mm)が上記のニッケル合金で形成されており、その表面に溶射法で80Ni−20Crが50μmの厚みでコーティングされ、さらにその上層に酸化チタンが50μmの厚みでコーティングされている。それ以外の部分は石英で構成されている。
【0083】
そして上記の反応管2に、ヘリウムを0.7リットル/分、アルゴン3.3リットル/分、酸素を0.06リットル/分の割合で混合したプラズマ生成用ガスを供給し、350Wで13.56MHzの高周波を印加し、プラズマ5を発生させ、これを吹き出し口1からジェット状に吹き出して被処理物6の表面に供給してプラズマ処理を行った。被処理物6としては、ネガ型レジストを1μm塗布したシリコン基板を用いた。その結果、約6μm/分のエッチング速度が得られた。また、高周波を印加した瞬間にプラズマ5が発生し、点灯した。また、XPS分析の結果、レジスト成分以外の不純物は検出されなかった。
【0084】
(参考例8)
図3に示すプラズマ処理装置Aを作製した。反応管2としては外径16mm、内径13mmの石英ガラス管を用いた。また、集束部20のテーパー角αは20°とした。電極3と電極4は銅製であって、金メッキが施されており、反応管2との接触面14の算術平均粗さは100μmに形成した。各電極の幅(反応管2の長手方向に対して平行方向の長さ)は、高圧電極となる電極3が15mm、接地電極となる電極4が15mmとし、電極3と電極4の間隔を5mmに設定した。さらに、電極4の挿着孔10の形状を反応管2の集束部20の外周形状と対応するように加工して、電極4を反応管2の吹き出し口1側の端部である集束部20の外周に配置した。また、各電極を冷却する冷媒としては純水を用いた。
【0085】
そして上記の反応管2に、ヘリウムを0.5リットル/分、アルゴンを1.5リットル/分、酸素を0.02リットル/分の割合で混合したガスを供給し、250Wで13.56MHzの高周波を印加し、プラズマ5を発生させ、これを吹き出し口1からジェット状に吹き出して被処理物6の表面に供給してプラズマ処理を行った。被処理物6としては、ネガ型レジストを1μm塗布したシリコン基板を用いた。その結果、約11μm/分のエッチング速度が得られた。また、XPS分析の結果、レジスト成分以外の不純物は検出されなかった。
【0086】
(参考例9)
図9に示すプラズマ処理装置Aを作製した。これは参考例6のプラズマ処理装置Aに高電圧パルス発生器50を付加したものである。高電圧パルス発生器50の高電圧を放つ部分である放射電極55は、鋭利な先端を有する金属製の棒で形成されている。また、この放射電極55は高周波を印加してプラズマ5を発生させる時のみ、反応管2の吹き出し口1の下流に移動できるように駆動系に連結されている。そして、この放射電極55の先端から約18kVの高電圧パルスが反応管2の内部を経由して接地電極である電極4に向けて短時間(0.7秒間)、放電されるようになっている。このプラズマ処理装置Aを用いて、放電を試みたところ、プラズマ5が瞬時に発生した。
【0087】
(比較例)
図10に示す従来のプラズマ処理装置Aを用いてプラズマ処理を行った。反応管2及び被処理物6及びプラズマ生成用ガスは実施例1と同様のものを用いた。また、外側電極40及び内部電極41としてはステンレス鋼製のものを用いた。そして実施例1と同様にして被処理物6をプラズマ処理した後、ボンディングパッド部のXPS分析を行ったところ、内側電極41の材質である鉄成分が微量検出された。また、放射電界強度を測定したところ、特に、150MHz〜300MHz帯域での電界強度が実施例1で用いたプラズマ処理装置に比べて、約20dBμV/m大きかった。
【0088】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1の発明は、片側が吹き出し口として開放された筒状の反応管と一対の電極とを具備して構成され、該反応管にプラズマ生成用ガスを導入し、電極の間に交流電界を印加することにより、大気圧下で反応管内にグロー状の放電を発生させ、反応管の吹き出し口からジェット状のプラズマを吹き出して、流出するプラズマにて被処理物をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、反応管の外側に一対の環状の電極をプラズマ生成用ガスの導入方向と略平行方向において互いに対向させて設け、この一対の電極の間隔を3〜20mmにしたので、両方の電極がプラズマに直接曝されることが無くなって、プラズマによりスパッタリングを受けないようにすることができると共に反応ガスにより腐食されないようにすることができ、両方の電極がダメージを受けなくなって寿命を長くすることができるものである。しかも、スパッタリングや腐食により不純物が生じないので、長期間の使用であっても被処理物が不純物より汚染されないようにすることができるものである。さらに、高周波ノイズの放射源である一対の電極を反応管の外側に設けることにより、電極を不必要に長くすることが無くコンパクトに形成することができ、放射高周波ノイズを低減することができるものである。また、交流電界の方向とプラズマ生成用ガスの流れ方向とをほぼ一致させることができ、プラズマの活性種を効率よく生成することができるものである。また、一対の電極の間に形成される反応管内の放電空間の体積を減少させるための体積減少具を反応管内に設けたので、体積減少具により放電空間の体積を減少させることによって、一対の電極の間の放電空間における単位体積あたりの投入電力(交流電界)を増加させることができ、プラズマの生成の効率を向上させることができるものである。
【0090】
また本発明の請求項2の発明は、吹き出し口側に近い位置に配置される一方の電極を接地したので、電極から被処理物にアーク放電が飛びにくくなって、アーク放電による被処理物の破損を防止することができるものである。
【0091】
また本発明の請求項3の発明は、反応管の吹き出し口側の端部に一方の電極を設けたので、一対の電極の間に形成される放電空間で生成されたプラズマのプラズマ活性種が反応管内で死滅しにくなって、多くの活きたプラズマ活性種を吹き出し口から吹き出して被処理物に供給することができ、プラズマ処理の処理効率を向上させることができるものである。
【0092】
また本発明の請求項4の発明は、電極の少なくとも一方を冷媒で冷却するので、プラズマの温度が高くならないようにすることができ、被処理物の熱的損傷を少なくすることができるものである。
【0095】
また本発明の請求項5の発明は、体積減少具を反応管とほぼ同軸に配設したので、反応管の内周面と体積減少具の外周面の間に形成される放電空間の体積を均一化することができ、放電空間における交流電界の密度が均一化されて、プラズマを効率よく生成することができるものであり、しかも、生成されるプラズマが均質化されて高品質のプラズマ処理を行うことができるものである。
【0096】
また本発明の請求項6の発明は、体積減少具を絶縁材料で形成したので、体積減少具からスパッタリングや腐食により不純物が生じないようにすることができ、長期間の使用であっても被処理物が不純物より汚染されないようにすることができるものである。
【0097】
また本発明の請求項7の発明は、体積減少具を冷媒で冷却するので、体積減少具の熱による劣化を低減することができ、体積減少具の長寿命化を図ることができるものであり、しかも、体積減少具の周囲の放電空間で生成されるプラズマの温度を低下させることができ、被処理物の熱によるダメージを少なくすることができるものである。
【0098】
また本発明の請求項8の発明は、冷媒がイオン交換水であるので、冷媒による体積減少具の劣化を少なくすることができ、体積減少具の長寿命化を図ることができるものである。
【0099】
また本発明の請求項9の発明は、冷媒が不凍性及び絶縁性を有するので、高電圧が印加される電極からの漏電を防止することができるものである。
【0100】
また本発明の請求項10の発明は、一対の電極の間に印加する交流電界の周波数が1kHz〜200MHzであるので、放電空間での放電を安定化させることができ、プラズマ処理を効率よく行うことができるものであり、しかも、放電空間でのプラズマの温度上昇を抑えることができ、反応管や高圧電極や接地電極の長寿命化を図ることができるものであり、さらに、プラズマ処理装置の複雑化及び大型化を防止することができるものである。
【0101】
また本発明の請求項11の発明は、電極は反応管と接触する側の表面粗度が10〜1000μmであるので、放電空間における放電の均一化を図ることができるものである。
【0102】
また本発明の請求項12の発明は、反応管を吹き出し口側に向かって絞り込んだので、放電空間の体積を小さくすることなくジェット状のプラズマの流速を加速することができ、短寿命のラジカルなどの反応性ガス活性粒子が消滅する前に、被処理物にプラズマを到達させることができて被処理物のプラズマ処理を効率よく行うことができるものである。
【0103】
また本発明の請求項13の発明は、プラズマを点灯させるための高電圧パルス発生器を具備するので、高電圧パルス発生器で高電圧パルスを発生してプラズマを点灯させることによって、電極に高電圧を印加せずにプラズマを点灯させることができ、始動不良無く素早く始動させることができるものである。
【0104】
本発明の請求項14の発明は、請求項1乃至13のいずれかに記載のプラズマ処理装置でプラズマ処理を行うので、高圧電極と接地電極の両方がプラズマに直接曝されることが無くなって、プラズマによりスパッタリングを受けないようにすることができると共に反応ガスにより腐食されないようにすることができ、高圧電極と接地電極がダメージを受けなくなって寿命を長くすることができるものである。しかも、スパッタリングや腐食により不純物が生じないので、長期間の使用であっても被処理物が不純物より汚染されないようにすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の参考例を示す正面図である。
【図2】 同上の高圧電極と接地電極の一例を示す斜視図である。
【図3】 同上の他の参考例を示す概略の断面図である。
【図4】 同上の実施の形態の一例を示す正面図である。
【図5】 同上の体積減少具を示す概略の断面図である。
【図6】 同上の他の実施の形態の一例を示す概略の断面図である。
【図7】 同上の他の参考例を示す概略の断面図である。
【図8】 同上の他の参考例を示す概略の断面図である。
【図9】 同上の他の参考例を示す概略の断面図である。
【図10】 従来例を示す正面図である。
【符号の説明】
1 吹き出し口
2 反応管
3 電極
4 電極
5 プラズマ
6 被処理物
7 放電空間
8 体積減少具
50 高電圧パルス発生器
A プラズマ処理装置
Claims (14)
- 片側が吹き出し口として開放された筒状の反応管と一対の電極とを具備して構成され、該反応管にプラズマ生成用ガスを導入し、電極の間に交流電界を印加することにより、大気圧下で反応管内にグロー状の放電を発生させ、反応管の吹き出し口からジェット状のプラズマを吹き出して、流出するプラズマにて被処理物をプラズマ処理するプラズマ処理装置において、反応管の外側に一対の環状の電極をプラズマ生成用ガスの導入方向と略平行方向において互いに対向させて設け、この一対の電極の間隔を3〜20mmにし、上記一対の電極の間に形成される反応管内の放電空間の体積を減少させるための体積減少具を反応管内に設けて成ることを特徴とするプラズマ処理装置。
- 吹き出し口側に近い位置に配置される一方の電極を接地して成ることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ処理装置。
- 反応管の吹き出し口側の端部に一方の電極を設けて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置。
- 電極の少なくとも一方を冷媒で冷却することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 体積減少具を反応管とほぼ同軸に配設して成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 体積減少具を絶縁材料で形成して成ることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 体積減少具を冷媒で冷却することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 冷媒がイオン交換水であることを特徴とする請求項4又は7に記載のプラズマ処理装置。
- 冷媒が不凍性及び絶縁性を有することを特徴とする請求項4又は7に記載のプラズマ処理装置。
- 一対の電極の間に印加する交流電界の周波数が1kHz〜200MHzであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 電極は反応管と接触する側の表面粗度が10〜1000μmであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 反応管を吹き出し口側に向かって絞り込んで成ることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- プラズマを点灯させるための高電圧パルス発生器を具備して成ることを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載のプラズマ処理装置。
- 請求項1乃至13のいずれかに記載のプラズマ処理装置でプラズマ処理を行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
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