JP4163879B2 - クレーンのフック水平移動制御装置 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、伸縮ブームの伸縮動と起伏動の連動駆動により伸縮ブーム先端部から吊下げたフックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるよう構成したクレーンのフック水平移動制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
まず、図3に基づきフック水平移動制御装置が装備されるクレーンの構成を、トラックの運転室後部位置に搭載され荷台等への荷物の積降し作業に用いられる車輌搭載型クレーンを例に説明する。
【0003】
当該車輌搭載型クレーンAは、図3に示す如くトラックの車輌フレーム(図示せず)上に搭載された基台1、当該基台1上に旋回自在に搭載した旋回ポスト2、当該旋回ポスト2の上部に起伏自在に枢支され基端側ブームセクション3a内に順次先端側ブームセクション3b,3cを伸縮自在に嵌挿した伸縮ブーム3、前記旋回ポスト2あるいは伸縮ブーム3基端部に取付けたウインチ装置4から繰出したワイヤロープ5によって当該伸縮ブーム先端部3dから巻上げ巻下げ自在に吊下げたフックブロック6、伸縮ブーム3の基端側ブームセクション3aと先端側ブームセクション3b間に介装され伸縮制御弁7からの制御油で駆動されて伸縮ブーム3を伸縮駆動する伸縮シリンダ8、及び起伏制御弁9からの制御油で駆動されて伸縮ブーム3を起伏駆動する起伏シリンダ10とで構成されている。なお、11は前記ウインチ装置4に圧油を給排して巻上げ巻下げ駆動するウインチ制御弁である。また、12は圧油を発生する油圧ポンプ、13は駆動圧を規制するリリーフ弁である。
【0004】
このように構成した車輌搭載型クレーンAは、フックブロック6に荷物を吊持した状態で旋回ポスト2を旋回駆動し、伸縮制御弁7を切換制御して伸縮ブーム3を伸縮駆動すると共に起伏制御弁9を切換制御して伸縮ブーム3を起伏駆動し、更にウインチ制御弁11を切換制御してウインチ装置4を巻上げ巻下げ駆動することで、フックフロック6を任意な位置に移動させ荷物の積降し作業を行うようになっている。
【0005】
ところで、この種のクレーンを用いた荷役作業の1つに、フックブロック6に吊持した荷物を伸縮ブーム3の伸縮あるいは起伏動により作業半径増減方向に移動させる作業がある。通常伸縮ブーム3を伸縮あるいは起伏動させた場合、ブーム先端部3dの変移に伴ってフックブロック6が昇降動(伸縮動の場合は図3一点鎖線図示、起伏動の場合は二点鎖線図示)する。この際フックブロック6が必要以上に上昇すれば周辺の作業者が危険となり、必要以上に下降すれば荷物が地面等に接触して損傷する恐れがある。このため、この種の荷役作業ではフックブロック6の吊下げ高さHをあまり変化させずに地面等に沿って略水平方向に移動させるのが望ましい(図3実線図示)。そして、このようなフックブロック6の移動制御を、一般にフック水平移動制御と呼んでいる。
【0006】
しかしながら、このように伸縮ブーム3の駆動に連動してフックブロック6を地面等に沿って略水平方向に移動させるためには、作業者が伸縮ブーム3の伸縮あるいは起伏駆動に連動してフックブロック6が略水平方向に移動するようウインチ装置4を駆動制御する必要があり、熟練した高度な操作技術が必要であった。このため、このような高度な操作技術を必要とする制御を自動化して一般の作業者でも容易に制御可能にしたフック水平移動制御装置が開発されていた。
【0007】
従来のフック水平移動制御装置は、例えば伸縮ブーム3の伸縮動に連動したフック水平移動制御を行う制御装置の場合、図3に示す如く作業者が手動操作する伸縮制御弁7からの制御油で伸縮シリンダ8を駆動し伸縮ブーム3を伸縮動させると共に、当該伸縮制御弁7の弁切換量a、伸縮ブーム3のブーム起伏角Θ、ウインチ装置4から繰出したワイヤロープ5の繰出長さWに基づき、当該ブーム姿勢における伸縮ブーム3が伸縮制御弁7からの制御油で伸縮駆動(例えばLo1からLo2に伸縮駆動)した際にフックブロック6が地面等に沿って略水平方向に移動し得る如きウインチ制御弁11の弁切換量を求め、ウインチ制御弁11を当該弁切換量に切換制御するための連動ウインチ弁切換制御信号を生成してウインチ制御弁11に出力し、ウインチ装置4を伸縮ブーム3の伸縮動に連動して巻下げ巻上げ駆動することでフックブロック6を水平方向に移動制御するよう構成していた。このため、従来のフック水平移動制御装置は、熟練していない一般の作業者でも伸縮制御弁7を操作して伸縮ブーム3を伸縮駆動するだけで簡単にフック水平移動制御を行うことができ、操作性の向上に大きく貢献するものであった。また、伸縮ブーム3の起伏動に連動したフック水平移動制御を行う制御装置も、略同様に構成されていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のフック水平移動制御装置は、伸縮ブーム3を伸縮あるいは起伏動させた際に生じるフックブロック6の上下方向変移をウインチ装置4で補正制御することでフック水平移動制御を行うよう構成されていたため、次のような問題があった。すなわち、例えば図3においてフック水平移動制御により荷物をC1からC2に移動させようとした場合、従来のものは伸縮ブーム3の伸縮あるいは起伏動のみで荷物を水平方向に変移させる必要があるため、伸縮連動制御の場合には伸縮ブーム3の伸縮駆動量(Lo1からLo2への駆動)が、また起伏連動制御の場合には伸縮ブーム3の起伏駆動量(Θo1からΘo2への駆動)が大きく、更にこの伸縮ブーム3の駆動に伴い発生するブーム先端部3dの上下方向変移を相殺するためのウインチ装置4の修正駆動量(伸縮連動制御の場合はWo1からWo2への駆動、起伏連動制御の場合はWo3からWo2への駆動)も大きくなるため、油圧ポンプ12の吐出油量に余裕の少ないこの種の車輌搭載型クレーンAでは、制御速度が遅くなり迅速な作業が行えないという問題である。
【0009】
また、従来のフック水平移動制御装置は、ウインチ装置4を高精度に駆動制御する必要があり、ワイヤロープ5の繰出し長さWを検出するワイヤ繰出し長さ検出手段を設けてフイードバック制御を行っていた。このため、ロータリーエンコーダや複数の近接スイッチ等で構成したワイヤ繰出し長さ検出手段が必要となり、その分コストが高くなるという問題である。
【0010】
本発明は、上記従来のフック水平移動制御装置の持つ問題点を解決することを目的とし、フック水平移動制御を伸縮ブームの伸縮動と起伏動の連動制御により行うよう構成して制御全体の駆動量を減らし、これにより制御を高速化して迅速な作業を可能にすると共に、高精度な制御が可能なものでありながらワイヤ繰出し長さ検出手段を不要にしてコストを低減したクレーンのフック水平移動制御装置を提供することを目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、次の如き構成を有している。
【0012】
すなわち、本発明のクレーンのフック水平移動制御装置は、基台上に旋回自在に搭載した旋回ポスト、当該旋回ポストの上部に起伏自在に枢支した伸縮ブーム、前記旋回ポストあるいは伸縮ブーム基端部に取付けたウインチ装置から繰出したワイヤロープによって当該伸縮ブーム先端部から吊下げたフックブロック、伸縮制御弁からの制御油で駆動され伸縮ブームを伸縮駆動する伸縮シリンダ、起伏制御弁からの制御油で駆動され伸縮ブームを起伏駆動する起伏シリンダとで構成したクレーンのフック水平移動制御装置を対象にしている。
【0013】
そして、本発明の請求項1におけるフック水平移動制御装置は、
伸縮制御弁の弁切換量を指示する伸縮操作信号を出力する伸縮操作手段、
伸縮ブームのブーム長さを検出してブーム長さ信号を出力するブーム長さ検出手段、
伸縮ブームのブーム起伏角を検出してブーム起伏角信号を出力するブーム起伏角検出手段、
及びこれら各手段からの伸縮操作信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号を受取り、前記伸縮制御弁と起伏制御弁を切換制御するための弁切換制御信号を生成して各制御弁に出力するコントローラとを備え、
当該コントローラは、前記伸縮操作信号に基づき伸縮制御弁を当該伸縮操作信号が指示する弁切換量に切換制御するための伸縮弁切換制御信号を生成して伸縮制御弁に出力すると共に、当該伸縮弁切換制御信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号に基づき伸縮弁切換制御信号で伸縮制御弁を切換制御して伸縮ブームを伸縮動させた際に当該伸縮動により生じる前記フックブロックの上下方向変移を相殺しつつ当該フックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な起伏制御弁の弁切換量を求め、起伏制御弁を当該弁切換量に切換制御するための連動起伏弁切換制御信号を生成して起伏制御弁に出力するよう構成している。
【0014】
このように構成したことにより、コントローラは、まず伸縮操作手段からの伸縮操作信号に基づき伸縮制御弁を当該伸縮操作信号が指示する弁切換量に切換制御するための伸縮弁切換制御信号を生成して当該制御弁に出力するようになっている。これにより、伸縮制御弁が切換えられて制御油が伸縮シリンダに供給され、伸縮ブームが伸縮駆動するようになっている。
【0015】
一方、コントローラは、前記伸縮制御弁への伸縮弁切換制御信号の出力と同時に、次の如き連動起伏弁切換制御信号を出力して起伏制御弁を切換制御するようになっている。すなわち、コントローラは、前記伸縮弁切換制御信号、ブーム長さ検出手段からのブーム長さ信号、ブーム起伏角検出手段からのブーム起伏角信号に基づき伸縮弁切換制御信号で伸縮制御弁を切換制御して伸縮ブームを伸縮動させた際に当該伸縮動により生じるフックブロックの上下方向変移を相殺しつつ当該フックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な起伏制御弁の弁切換量を求め、起伏制御弁を当該弁切換量に切換制御するための連動起伏弁切換制御信号を生成して当該制御弁に出力するようになっている。これにより、起伏制御弁がフックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動、すなわちフック水平移動制御を達成し得る弁切換量に切換制御され、伸縮ブームの伸縮動に連動したフックブロックの水平移動制御が行えるのである(図1参照)。
【0016】
そして、この連動制御における伸縮ブームの駆動量、すなわち伸縮駆動量(L1からL2への駆動)とこれに連動する起伏駆動量(Θ1からΘ2への駆動)の合計値は、従来のフック水平移動制御における駆動量、すなわち伸縮駆動量(Lo1からLo2への駆動)とこれに連動するウインチ駆動量(Wo1からWo2への駆動)の合計値より大幅に少なくなり、このため制御が高速化され迅速な作業が可能になるのである。また、この連動制御は、図1に示す如く伸縮ブーム先端部の上下方向変移が少なく建物内での荷役作業の如く障害物の多い作業環境でも障害物に邪魔されないで効率的な作業を行うことができるのである。更に、この連動制御は、伸縮ブームの伸縮動と起伏動のみで行われるので、ワイヤロープの繰出し長さを検出するワイヤ繰出し長さ検出手段が不要となり、その分コストを低減することができるのである。
【0017】
また、本発明の請求項2におけるフック水平移動制御装置は、
起伏制御弁の弁切換量を指示する起伏操作信号を出力する起伏操作手段、
伸縮ブームのブーム長さを検出してブーム長さ信号を出力するブーム長さ検出手段、
伸縮ブームのブーム起伏角を検出してブーム起伏角信号を出力するブーム起伏角検出手段、
及びこれら各手段からの起伏操作信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号を受取り、前記起伏制御弁と伸縮制御弁を切換制御するための弁切換制御信号を生成して各制御弁に出力するコントローラとを備え、
当該コントローラは、前記起伏操作信号に基づき起伏制御弁を当該起伏操作信号が指示する弁切換量に切換制御するための起伏弁切換制御信号を生成して起伏制御弁に出力すると共に、当該起伏弁切換制御信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号に基づき起伏弁切換制御信号で起伏制御弁を切換制御して伸縮ブームを起伏動させた際に当該起伏動に連動して制御される伸縮ブームの伸縮動により生じる前記フックブロックの上下方向変移を相殺しつつ当該フックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁の弁切換量を求め、伸縮制御弁を当該弁切換量に切換制御するための連動伸縮弁切換制御信号を生成して伸縮制御弁に出力するよう構成している。
【0018】
このように構成したことにより、コントローラは、まず起伏操作手段からの起伏操作信号に基づき起伏制御弁を当該起伏操作信号が指示する弁切換量に切換制御するための起伏弁切換制御信号を生成して当該制御弁に出力するようになっている。これにより、起伏制御弁が切換えられて制御油が起伏シリンダに供給され、伸縮ブームが起伏駆動するようになっている。
【0019】
一方、コントローラは、前記起伏制御弁への起伏弁切換制御信号の出力と同時に、次の如き連動伸縮弁切換制御信号を出力して伸縮制御弁を切換制御するようになっている。すなわち、コントローラは、前記起伏弁切換制御信号、ブーム長さ検出手段からのブーム長さ信号、ブーム起伏角検出手段からのブーム起伏角信号に基づき起伏弁切換制御信号で起伏制御弁を切換制御して伸縮ブームを起伏動させた際に当該起伏動に連動して制御される伸縮ブームの伸縮動により生じるフックブロックの上下方向変移を相殺しつつ当該フックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁の弁切換量を求め、伸縮制御弁を当該弁切換量に切換制御するための連動伸縮弁切換制御信号を生成して当該制御弁に出力するようになっている。これにより、伸縮制御弁がフックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動、すなわちフック水平移動制御を達成し得る弁切換量に切換制御され、伸縮ブームの起伏動に連動したフックブロックの水平移動制御が行えるのである(図1参照)。
【0020】
そして、この連動制御における伸縮ブームの駆動量、すなわち起伏駆動量(Θ1からΘ2への駆動)とこれに連動する伸縮駆動量(L1からL2への駆動)の合計値は、従来のフック水平移動制御における駆動量、すなわち起伏駆動量(Θo1からΘo2への駆動)とこれに連動するウインチ駆動量(Wo3からWo2への駆動)の合計値より大幅に少なくなり、このため制御が高速化され迅速な作業が可能になるのである。また、この連動制御は、図1に示す如く伸縮ブーム先端部の上下方向変移が少なく建物内での荷役作業の如く障害物の多い作業環境でも障害物に邪魔されないで効率的な作業を行うことができるのである。更に、この連動制御は、伸縮ブームの伸縮動と起伏動のみで行われるので、ワイヤロープの繰出し長さを検出するワイヤ繰出し長さ検出手段が不要となり、その分コストを低減することができるのである。
【0021】
また、本発明の請求項3おけるフック水平移動制御装置は、
フックブロックの作業半径増減方向への駆動速度を指示するフック水平操作信号を出力するフック水平操作手段、
伸縮ブームのブーム長さを検出してブーム長さ信号を出力するブーム長さ検出手段、
伸縮ブームのブーム起伏角を検出してブーム起伏角信号を出力するブーム起伏角検出手段、
及びこれら各手段からのフック水平操作信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号を受取り、前記伸縮制御弁と起伏制御弁を切換制御するための弁切換制御信号を生成して各制御弁に出力するコントローラとを備え、
当該コントローラは、前記フック水平操作信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号に基づき伸縮ブームの伸縮動により生じる前記フックブロックの上下方向変移を相殺しつつ当該フックブロックを前記フック水平操作信号が指示する駆動速度でブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁の弁切換量と起伏制御弁の弁切換量を求め、伸縮制御弁と起伏制御弁を対応する弁切換量に切換制御するための伸縮弁切換制御信号と起伏弁切換制御信号を生成して各制御弁に出力するよう構成している。
【0022】
このように構成したことにより、コントローラは、まずフック水平操作信号、ブーム長さ検出手段からのブーム長さ信号、ブーム起伏角検出手段からのブーム起伏角信号に基づき伸縮ブームの伸縮動により生じるフックブロックの上下方向変移を相殺しつつ当該フックブロックを前記フック水平操作信号が指示する駆動速度でブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁の弁切換量と起伏制御弁の弁切換量を求め、次に伸縮制御弁と起伏制御弁を対応する弁切換量に切換制御するための伸縮弁切換制御信号と起伏弁切換制御信号を生成して各制御弁に出力するようになっている。これにより、伸縮制御弁と起伏制御弁がフックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動、すなわちフック水平移動制御を達成し得る弁切換量に切換制御され、フックブロックの水平移動制御が行えるのである(図2参照)。
【0023】
そして、この連動制御における伸縮ブームの駆動量、すなわち伸縮駆動量(L1からL2への駆動)と起伏駆動量(Θ1からΘ2への駆動)の合計値は、従来のフック水平移動制御における駆動量、すなわち伸縮駆動量(Lo1からLo2への駆動)とこれに連動するウインチ駆動量(Wo1からWo2への駆動)の合計値、あるいは起伏駆動量(Θo1からΘo2への駆動)とこれに連動するウインチ駆動量(Wo3からWo2への駆動)の合計値より大幅に少なくなり、このため制御が高速化され迅速な作業が可能になるのである。また、この連動制御は、図2に示す如く伸縮ブーム先端部の上下方向変移が少なく建物内での荷役作業の如く障害物の多い作業環境でも障害物に邪魔されないで効率的な作業を行うことができるのである。更に、この連動制御は、伸縮ブームの伸縮動と起伏動のみで行われるので、ワイヤロープの繰出し長さを検出するワイヤ繰出し長さ検出手段が不要となり、その分コストを低減することができるのである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、図1及び図2に基づき本発明の具体的な実施形態について説明する。
図1は、第1の実施形態におけるフック水平移動制御装置の説明図、図2は第2の実施形態におけるフック水平移動制御装置の説明図である。
なお、本発明のフック水平移動制御装置は、伸縮制御弁と起伏制御弁の連動切換制御によりフックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるよう構成したものであり、以下の説明ではこの連動切換機構の構成を中心に説明するものとする。このため、従来技術の説明で用いたA及び1〜13の各符号は、以下の説明でも同義のものとして援用するものとする。
【0025】
(第1の実施形態)
まず、図1に基づき第1の実施形態について説明する。伸縮制御弁7・起伏制御弁9・ウインチ制御弁11の各制御弁は、励磁信号に応じて弁切換量が連続的に制御される従来公知の3位置電磁比例制御弁で構成されている。
【0026】
16は、作業者が携帯して無線あるいは有線等の通信手段を介して遠隔操作、あるいは作業者が切換操作可能な操作装置である。当該操作装置16には、伸側あるいは縮側への操作により前記伸縮制御弁7の弁切換方向を含む弁切換量を指示する伸縮操作信号tを出力する伸縮操作手段17と、起側あるいは倒側への操作により前記起伏制御弁9の弁切換方向を含む弁切換量を指示する起伏操作信号eを出力する起伏操作手段18、巻上側あるいは巻下側への操作により前記ウインチ制御弁11の弁切換方向を含む弁切換量を指示するウインチ操作信号wを出力するウインチ操作手段19が取付けられている。そして、これら各手段17,18,19からの操作信号t,e,wは、コントローラ15に出力されるようになっている。
【0027】
なお、これら各操作手段17,18,19は、上記の構成の他に各制御弁7,9,11の弁切換方向を指示する各駆動方向指示スイッチと、各制御弁7,9,11の弁切換量を指示する共通の弁切換量指示手段とを設け、これら駆動方向指示スイッチと共通の弁切換量指示手段からの各信号に基づき各制御弁7,9,11の操作信号t,e,wを生成する公知の遠隔操作装置で構成してもよい。この場合には、遠隔操作装置をコンパクトに構成でき、小型化の要望が強い車輌搭載型クレーンの遠隔操作装置として適したものとなる。
【0028】
21は、伸縮ブーム3のブーム長さLを検出するブーム長さ検出手段である。当該ブーム長さ検出手段21は、例えば基端側ブームセクション3aに検出用コードを巻取った繰出長さ検出機構付きのコード巻取器を取付け、当該コードの先端部を最先端側ブームセクション3cに止着して伸縮ブーム3を伸縮動させた際に生じる検出用コードの繰出長さを当該繰出長さ検出機構で検出してブーム長さ信号Lとしてコントローラ15に出力するよう構成されている。なお、当該ブーム長さ検出手段21は超音波式の測長手段等で構成してもよい。
【0029】
また、22は伸縮ブーム3のブーム起伏角Θを検出するブーム起伏角検出手段である。当該ブーム起伏角検出手段22は、伸縮ブーム3の対地角度を基端側ブームセクション3aに取付けた振り子式の対地角度検出機構で検出して、ブーム起伏角信号Θとしてコントローラ15に出力するよう構成されている。
【0030】
23は、伸縮ブーム3を単独で駆動制御する単独駆動モードと、伸縮ブーム3の駆動時にフックブロック6を水平方向に移動制御するフック水平移動モードを選択可能なモード選択手段である。当該モード選択手段23は、操作の度に単独駆動モードとフック水平移動モードを交互に切換可能な押しボタンスイッチ、あるいは傾動操作により両モードを切換可能なトグルスイッチ等で構成されている。
【0031】
15は、コントローラである。当該コントローラ15は、伸縮駆動信号出力手段24、起伏駆動信号出力手段25、ウインチ駆動信号出力手段26、起伏連動伸縮駆動信号出力手段27、伸縮連動起伏駆動信号出力手段28、及び連動規制手段29とで構成されており、前記操作手段17,18,19からの各操作信号、ブーム長さ検出手段21からのブーム長さ信号L、ブーム起伏角検出手段22からのブーム起伏角信号Θ、モード選択手段23からの操作信号を受取り、前記各制御弁7,9,11を切換制御するための弁切換制御信号を生成して各制御弁7,9,11に出力するようになっている。
【0032】
伸縮駆動信号出力手段24は、前記伸縮操作手段17からの伸縮操作信号tを受けて伸縮制御弁7を当該操作信号tが指示する弁切換量に切換制御するための伸縮弁切換制御信号Vtを生成して、当該制御信号Vtを伸縮制御弁7に出力するよう構成している。これにより、当該伸縮制御弁7は、伸縮操作手段17の操作量、すなわち伸縮操作信号tに対応した弁切換量に切換制御され、制御油が伸縮シリンダ8に供給されて伸縮ブーム3が伸縮駆動されるようになっている。また、起伏駆動信号出力手段25は、前記起伏操作手段18からの起伏操作信号eを受けて起伏制御弁9を当該操作信号eが指示する弁切換量に切換制御するための起伏弁切換制御信号Veを生成して、当該制御信号Veを起伏制御弁9に出力するよう構成している。これにより、当該起伏制御弁9は、起伏操作手段18の操作量、すなわち起伏操作信号eに対応した弁切換量に切換制御され、制御油が起伏シリンダ10に供給されて伸縮ブーム3が起伏駆動されるようになっている。また、ウインチ駆動信号出力手段26は、前記ウインチ操作手段19からのウインチ操作信号wを受けてウインチ制御弁11を当該操作信号wが指示する弁切換量に切換制御するためのウインチ弁切換制御信号Vwを生成して、当該制御信号Vwをウインチ制御弁11に出力するよう構成している。これにより、当該ウインチ制御弁11は、ウインチ操作手段19の操作量、すなわちウインチ操作信号wに対応した弁切換量に切換制御され、制御油がウインチ装置4に供給されてフックブロック6が巻上げ巻下げ駆動されるようになっている。
【0033】
また、起伏連動伸縮駆動信号出力手段27は、前記起伏駆動信号出力手段25からの起伏弁切換制御信号Veと、ブーム長さ検出手段21からのブーム長さ信号L、ブーム起伏角検出手段22からのブーム起伏角信号Θを受取り、これら各信号Ve,L,Θに基づき、まず起伏弁切換制御信号Veで起伏制御弁9を切換制御して伸縮ブーム3を起伏動(例えば、図1において伸縮ブーム3をΘ1からΘ2に倒伏動)させた際に当該起伏動に連動して制御される伸縮ブーム3の伸縮動(L1からL2への伸長動)により生じる前記フックブロック6の上下方向変移h(当該変移hは、伸縮ブーム3を伸縮させた際に繰出し量が変化しないワイヤロープ5との間で生じる相対的位置変化に起因したフックブロック6の上下方向変移であり、h=(L2−L1)/Nで算出される。但し、(L2−L1)は伸縮ブーム3のブーム長さ変化量、Nはフックブロック6のワイヤ掛け数である)を相殺しつつ当該フックブロック6をブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁7の連動伸縮弁切換量を求め、次に伸縮制御弁7を当該弁切換量に切換制御するための連動伸縮弁切換制御信号Vtrを生成して連動規制手段29を介し伸縮制御弁7に出力するよう構成している。具体的には、伸縮ブーム3のブーム基準面fとブーム先端滑車3eとのオフセット量gを便宜上0と仮定した場合、
L1×sinΘ1=L2×sinΘ2+(L2−L1)/N
但し、L1;制御開始時のブーム長さ
Θ1;制御開始時のブーム起伏角
L2;制御後のブーム長さ
Θ2;制御後のブーム起伏角
N ;フックブロック6のワイヤ掛け数
の演算式を満足する如き伸縮ブーム3のブーム起伏角変移量に対する必要伸縮駆動量を求め、伸縮ブーム3を当該必要伸縮駆動量で駆動するために必要な伸縮制御弁7の連動伸縮弁切換制御信号Vtrを生成して伸縮制御弁7に出力するよう構成すればよい。このように構成した起伏連動伸縮駆動信号出力手段27は、前記起伏駆動信号出力手段25から出力される起伏弁切換制御信号Veで起伏制御弁9が切換制御されて伸縮ブーム3が起伏動した際に、フックブロック6がブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に連動して移動する如き伸縮制御弁7の連動伸縮弁切換制御信号Vtrを生成して当該制御弁7に出力するので、伸縮ブーム3は例えばΘ1からΘ2への倒伏動に連動してL1からL2に伸長駆動され、これによりブーム先端部3dが図1の移動軌跡Iに沿って移動するよう連動制御されるのである。なお、この移動軌跡Iは、伸縮ブーム3を伸縮動させた際に生じるフックブロック6の上下方向変移hを相殺し得る量だけ水平面Sから偏寄させた移動軌跡となっており、このためブーム先端部3dを当該移動軌跡Iに沿うよう移動制御すれば、結果としてフックブロック6がブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動し、起伏連動のフック水平移動制御が行えるのである。
【0034】
また、伸縮連動起伏駆動信号出力手段28は、前記伸縮駆動信号出力手段24からの伸縮弁切換制御信号Vtと、ブーム長さ検出手段21からのブーム長さ信号L、ブーム起伏角検出手段22からのブーム起伏角信号Θを受取り、これら各信号Vt,L,Θに基づき、まず伸縮弁切換制御信号Vtで伸縮制御弁7を切換制御して伸縮ブーム3を伸縮動(例えば、図1において伸縮ブーム3をL1からL2に伸長動)させた際に当該伸縮動により生じる前記フックブロック6の上下方向変移h(当該変移hは、伸縮ブーム3を伸縮させた際に繰出し量が変化しないワイヤロープ5との間で生じる相対的位置変化に起因したフックブロック6の上下方向変移であり、h=(L2−L1)/Nで算出される。但し、(L2−L1)は伸縮ブーム3のブーム長さ変化量、Nはフックブロック6のワイヤ掛け数である)を相殺しつつ当該フックブロック6をブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な起伏制御弁9の連動起伏弁切換量を求め、次に起伏制御弁9を当該弁切換量に切換制御するための連動起伏弁切換制御信号Verを生成して連動規制手段29を介し起伏制御弁9に出力するよう構成している。具体的には、伸縮ブーム3のブーム基準面fとブーム先端滑車3eとのオフセット量gを便宜上0と仮定した場合、
L1×sinΘ1=L2×sinΘ2+(L2−L1)/N
但し、L1;制御開始時のブーム長さ
Θ1;制御開始時のブーム起伏角
L2;制御後のブーム長さ
Θ2;制御後のブーム起伏角
N ;フックブロック6のワイヤ掛け数
の演算式を満足する如き伸縮ブーム3のブーム長さ変移量に対する必要起伏駆動量を求め、伸縮ブーム3を当該必要起伏駆動量で駆動するために必要な起伏制御弁9の連動起伏弁切換制御信号Verを生成して起伏制御弁9に出力するよう構成すればよい。このように構成した伸縮連動起伏駆動信号出力手段28は、前記伸縮駆動信号出力手段24から出力される伸縮弁切換制御信号Vtで伸縮制御弁7が切換制御されて伸縮ブーム3が伸縮動した際に、フックブロック6がブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に連動して移動する如き起伏制御弁9の連動起伏弁切換制御信号Verを生成して当該制御弁9に出力するので、伸縮ブーム3は例えばL1からL2への伸長動に連動してΘ1からΘ2に倒伏駆動され、これによりブーム先端部3dが図1の移動軌跡Iに沿って移動するよう連動制御されるのである。なお、この移動軌跡Iは、伸縮ブーム3を伸縮動させた際に生じるフックブロック6の上下方向変移hを相殺し得る量だけ水平面Sから偏寄させた移動軌跡となっており、このためブーム先端部3dを当該移動軌跡Iに沿うよう移動制御すれば、結果としてフックブロック6がブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動し、伸縮連動のフック水平移動制御が行えるのである。
【0035】
また、連動規制手段29は、前記モード選択手段23からの信号によって次の如く切換制御されるようになっている。すなわち、当該連動規制手段29は、常に連動伸縮弁切換制御信号Vtrと連動起伏弁切換制御信号Verを対応する制御弁7,9に出力するよう構成されており、モード選択手段23が単独駆動モードに切換えられた時に連動伸縮弁切換制御信号Vtrと連動起伏弁切換制御信号Verを遮断して伸縮ブーム3を単独で駆動するようになっている。そして、伸縮操作手段17と起伏操作手段18が同時に操作された時、あるいは当該両操作手段17,18のいずれかとウインチ操作手段19が同時に操作された時には、作業者自らの意志に基づく連動駆動が要求されていると判断して両弁切換制御信号Vtr,Verを遮断し、フック水平移動制御を規制するのが望ましい。なお、前記操作手段17,18が駆動方向指示スイッチと共通の弁切換量指示手段で構成されている場合には、駆動方向指示スイッチの「伸」と「伏」、あるいは「縮」と「起」が同時に操作された時に作業者がフック水平移動制御を望んでいると判断して伸縮弁切換制御信号Vtと連動起伏弁切換制御信号Ver、あるいは起伏弁切換制御信号Veと連動伸縮弁切換制御信号Vtrを対として対応する各制御弁7,9に出力するよう構成してもよい。この場合には、特にモード選択手段23を設ける必要がなく、操作装置の小型化が図れるものである。また、伸縮ブーム3の単独駆動が必要ない場合には、当該連動規制手段29とモード選択手段23を設けなくてもよいこと勿論である。
【0036】
また、前記伸縮駆動信号出力手段24と起伏駆動信号出力手段25は、フック水平移動制御における必要駆動油量、すなわち伸縮駆動必要油量と起伏駆動必要油量の合計値がポンプ吐出油量を上回った場合に、必要駆動油量がポンプ吐出油量になるよう流量低減係数K=(ポンプ吐出油量/必要駆動油量)で低減補正した伸縮弁切換制御信号Vtあるいは起伏弁切換制御信号Veを出力する制御信号低減機能を備えたものとするのが良い。このように構成すれば、ポンプ吐出油量が不足してフック水平移動制御が達成できないという不具合を未然に防止することができるのである。
【0037】
次に、作動について説明する。
まず、伸縮ブーム3を単独で伸縮あるいは起伏駆動する場合について説明する。
この場合は、モード選択手段23を単独駆動モードに選択して、伸縮操作手段17あるいは起伏操作手段18を操作すればよい。モード選択手段23を単独駆動モードにすれば、連動規制手段29が連動伸縮弁切換制御信号Vtrと連動起伏弁切換制御信号Verの各制御弁7,9への出力を規制するので、伸縮操作手段17を操作すれば伸縮駆動信号出力手段24から伸縮弁切換制御信号Vtが出力されて伸縮制御弁7が切換わり伸縮ブーム3を単独で伸縮駆動することができ、また起伏操作手段18を操作すれば起伏駆動信号出力手段25から起伏弁切換制御信号Veが出力されて起伏制御弁9が切換わり伸縮ブーム3を単独で起伏駆動することができるのである。
【0038】
次に、伸縮ブーム3の伸縮あるいは起伏動に連動してフックブロック6を水平移動制御する場合について説明する。
この場合は、モード選択手段23をフック水平移動モードに選択して、伸縮操作手段17あるいは起伏操作手段18を操作すればよい。モード選択手段23をフック水平移動モードにすれば、連動規制手段29が連動伸縮弁切換制御信号Vtrと連動起伏弁切換制御信号Verを夫々伸縮制御弁7と起伏制御弁9に出力するよう切換わるので、次の如くフック水平移動制御が可能になるのである。すなわち、伸縮操作手段17を操作すれば、伸縮駆動信号出力手段24が伸縮操作信号tに対応した伸縮弁切換制御信号Vtを生成して伸縮制御弁7に出力し、当該伸縮制御弁7からの制御油が伸縮シリンダ8に供給されて伸縮ブーム3が伸縮駆動するのである。それと同時に伸縮連動起伏駆動信号出力手段28が伸縮弁切換制御信号Vtとブーム長さ信号L、ブーム起伏角信号Θに基づき当該伸縮弁切換制御信号Vtで伸縮制御弁7を切換制御して伸縮ブーム3を伸縮動させた際に当該伸縮動により生じるフックブロック6の上下方向変移hを相殺しつつ当該フックブロック6をブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な起伏制御弁9の連動起伏弁切換制御信号Verを生成して起伏制御弁9に出力し、当該起伏制御弁9からの制御油が起伏シリンダ10に供給されて伸縮ブーム3が起伏駆動するようになっている。これにより、伸縮ブーム3は、ブーム先端部3dが移動軌跡Iに沿って移動するよう伸縮動と起伏動が連動制御され、結果としてフックブロック6がブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動する伸縮連動のフック水平移動制御が行えるのである。
【0039】
また、起伏操作手段18を操作すれば、起伏駆動信号出力手段25が起伏操作信号eに対応した起伏弁切換制御信号Veを生成して起伏制御弁9に出力し、当該起伏制御弁9からの制御油が起伏シリンダ10に供給されて伸縮ブーム3が起伏駆動するのである。それと同時に起伏連動伸縮駆動信号出力手段27が起伏弁切換制御信号Veとブーム長さ信号L、ブーム起伏角信号Θに基づき当該起伏弁切換制御信号Veで起伏制御弁9を切換制御して伸縮ブーム3を起伏動させた際に当該起伏動に連動して制御される伸縮ブーム3の伸縮動により生じるフックブロック6の上下方向変移hを相殺しつつ当該フックブロック6をブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁7の連動伸縮弁切換制御信号Vtrを生成して伸縮制御弁7に出力し、当該伸縮制御弁7からの制御油が伸縮シリンダ8に供給されて伸縮ブーム3が伸縮駆動するようになっている。これにより、伸縮ブーム3は、ブーム先端部3dが移動軌跡Iに沿って移動するよう起伏動と伸縮動が連動制御され、結果としてフックブロック6がブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動する起伏連動のフック水平移動制御が行えるのである。
【0040】
なお、このフック水平移動制御時における伸縮ブーム3の駆動量、すなわち伸縮駆動量(L1からL2への駆動)と起伏駆動量(Θ1からΘ2への駆動)の合計値は、従来のフック水平移動制御における駆動量、すなわち伸縮駆動量(Lo1からLo2への駆動)とこれに連動するウインチ駆動量(Wo1からWo2への駆動)あるいは起伏駆動量(Θo1からΘo2への駆動)とこれに連動するウインチ駆動量(Wo3からWo2への駆動)の合計値より大幅に少なくなり、このため制御が高速化され迅速な作業が可能になるのである。また、この連動制御は、図1に示す如く伸縮ブーム先端部3dの上下方向変移が少なく建物内での荷役作業の如く障害物の多い作業環境でも障害物に邪魔されないで効率的な作業を行うことができるのである。更に、この連動制御は、伸縮ブームの伸縮動と起伏動のみで行われるので、ワイヤロープの繰出し長さを検出するワイヤ繰出し長さ検出手段が不要となり、その分コストを低減することができるのである。
【0041】
(第2の実施形態)
次に、請求項3に対応した第2の実施形態について、図2に基づき説明する。この実施形態におけるフック水平移動制御装置は、前述した第1の実施形態におけるフック水平移動制御装置に比し、フック水平操作手段が付加され、起伏連動伸縮駆動信号出力手段27と伸縮連動起伏駆動信号出力手段28の代わりに連動駆動信号出力手段が設けられている。このため、以下の説明ではこの変更点を中心に説明するものとする。
【0042】
30は、操作装置16に取付けられたフック水平操作手段であり、遠側あるいは近側への操作によりフックブロック6の作業半径増減方向への駆動速度、すなわち遠側への操作により作業半径増大方向への駆動速度を、また近側への操作により作業半径減少方向への駆動速度を指示するフック水平操作信号cを出力するよう構成されている。
【0043】
また、コントローラ15には、前記第1実施形態のものと同様に伸縮駆動信号出力手段24、起伏駆動信号出力手段25、ウインチ駆動信号出力手段26、連動規制手段29が設けられている。そして、起伏連動伸縮駆動信号出力手段27と伸縮連動起伏駆動信号出力手段28の代わりに連動駆動信号出力手段31が設けられている。
【0044】
当該連動駆動信号出力手段31は、前記フック水平操作手段30からのフック水平操作信号cと、ブーム長さ検出手段21からのブーム長さ信号L、ブーム起伏角検出手段22からのブーム起伏角信号Θを受取り、これら各信号c,L,Θに基づき制御の結果発生する伸縮ブーム3の伸縮動(例えば、図2においてL1からL2への伸長動)により生じる前記フックブロック6の上下方向変移h(当該変移hは、伸縮ブーム3を伸縮させた際に繰出し量が変化しないワイヤロープ5との間で生じる相対的位置変化に起因したフックブロック6の上下方向変移であり、h=(L2−L1)/Nで算出される。但し、(L2−L1)は伸縮ブーム3のブーム長さ変化量、Nはフックブロック6のワイヤ掛け数である)を相殺しつつ当該フックブロック6をフック水平操作信号cが指示する駆動速度でブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁7の伸縮弁切換量trと起伏制御弁9の起伏弁切換量erを求め、次に伸縮制御弁7を対応する弁切換量trに切換制御するための連動伸縮弁切換制御信号Vtrと起伏制御弁9を対応する弁切換量erに切換制御するための連動起伏弁切換制御信号Verを夫々生成して、当該両弁切換制御信号Vtr,Verを連動規制手段29を介して両制御弁7,9に出力するよう構成している。具体的には、伸縮ブーム3のブーム基準面fとブーム先端滑車3eとのオフセット量gを便宜上0と仮定した場合、
L1×sinΘ1=L2×sinΘ2+(L2−L1)/N
但し、L1;制御開始時のブーム長さ
Θ1;制御開始時のブーム起伏角
L2;制御後のブーム長さ
Θ2;制御後のブーム起伏角
N ;フックブロック6のワイヤ掛け数
の演算式を満足する如き伸縮ブーム3の必要伸縮駆動量と必要起伏駆動量を求め、次に伸縮ブーム3を当該必要伸縮駆動量で駆動するために必要な伸縮制御弁7の連動伸縮弁切換制御信号Vtrと必要起伏駆動量で駆動するために必要な起伏制御弁9の連動起伏弁切換制御信号Verを生成して各制御弁7,9に出力するよう構成すればよい。このように構成した連動駆動信号出力手段31は、フック水平操作手段30からのフック水平操作信号cを受けてフックブロック6がブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動する如き伸縮制御弁7の連動伸縮弁切換制御信号Vtrと起伏制御弁9の連動起伏弁切換制御信号Verを生成して各制御弁7,9に出力するので、伸縮ブーム3は例えばL1からL2への伸長動とΘ1からΘ2への倒伏動が連動して駆動され、これによりブーム先端部3dが図2の移動軌跡Iに沿って移動するよう連動制御されるのである。なお、この移動軌跡Iは、伸縮ブーム3を伸縮動させた際に生じるフックブロック6の上下方向変移hを相殺し得る量だけ水平面Sから偏寄させた移動軌跡となっており、このためブーム先端部3dを当該移動軌跡Iに沿うよう移動制御すれば、結果としてフックブロック6がブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動し、フック水平移動制御が行えるのである。
【0045】
このように構成された第2の実施形態におけるフック水平移動制御装置は、フック水平操作手段30を遠側あるいは近側に操作すれば、当該操作手段30からのフック水平操作信号cを受けた連動駆動信号出力手段31が、フックブロック6をブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁7の連動伸縮弁切換制御信号Vtrと起伏制御弁9の連動起伏弁切換制御信号Verを生成して各制御弁7,9に出力するので、伸縮ブーム3の伸縮動と起伏動が連動して駆動され、結果としてフックブロック6がブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動してフック水平移動制御が行えるのである。
【0046】
【発明の効果】
以上の如く構成した本発明のクレーンのフック水平移動制御装置は、フック水平移動制御を伸縮ブーム3の伸縮動と起伏動の連動制御により行うよう構成したので、従来のフック水平移動制御に比して連動制御時における伸縮ブーム3の駆動量を少なくすることができ、このため制御が高速化されて迅速な作業が可能になるのである。また、連動制御中の伸縮ブーム先端部3dは上下方向変位が少なく障害物の多い作業環境でも障害物に邪魔されないで効率的な作業を行うことができるのである。更に、ワイヤロープ5の繰出し長さを検出するワイヤ繰出し長さ検出手段が不要となり、その分コストを低減することができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるクレーンのフック水平移動制御装置の説明図である。
【図2】同、第2の実施形態におけるクレーンのフック水平移動制御装置の説明図である。
【図3】従来のクレーンのフック水平移動制御装置の説明図である。
【符号の説明】
A;車輌搭載型クレーン、
1;基台、
2;旋回ポスト、
3;伸縮ブーム、
3d;ブーム先端部、
4;ウインチ装置、
5;ワイヤロープ、
6;フックブロック、
7;伸縮制御弁、
8;伸縮シリンダ、
9;起伏制御弁、
10;起伏シリンダ、
11;ウインチ制御弁、
12;油圧ポンプ、
13;リリーフ弁、
15;コントローラ、
16;操作装置、
17;伸縮操作手段、
18;起伏操作手段、
19;ウインチ操作手段、
21;ブーム長さ検出手段、
22;ブーム起伏角検出手段、
23;モード選択手段、
24;伸縮駆動信号出力手段、
25;起伏駆動信号出力手段、
26;ウインチ駆動信号出力手段、
27;起伏連動伸縮駆動信号出力手段、
28;伸縮連動起伏駆動信号出力手段、
29;連動規制手段、
30;フック水平操作手段、
31;連動駆動信号出力手段、
Claims (3)
- 基台上に旋回自在に搭載した旋回ポスト、当該旋回ポストの上部に起伏自在に枢支した伸縮ブーム、前記旋回ポストあるいは伸縮ブーム基端部に取付けたウインチ装置から繰出したワイヤロープによって当該伸縮ブーム先端部から吊下げたフックブロック、伸縮制御弁からの制御油で駆動され伸縮ブームを伸縮駆動する伸縮シリンダ、起伏制御弁からの制御油で駆動され伸縮ブームを起伏駆動する起伏シリンダとで構成したクレーンのフック水平移動制御装置であって、
前記伸縮制御弁の弁切換量を指示する伸縮操作信号を出力する伸縮操作手段、伸縮ブームのブーム長さを検出してブーム長さ信号を出力するブーム長さ検出手段、
伸縮ブームのブーム起伏角を検出してブーム起伏角信号を出力するブーム起伏角検出手段、
及びこれら各手段からの伸縮操作信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号を受取り、前記伸縮制御弁と起伏制御弁を切換制御するための弁切換制御信号を生成して各制御弁に出力するコントローラとを備え、
当該コントローラは、前記伸縮操作信号に基づき伸縮制御弁を当該伸縮操作信号が指示する弁切換量に切換制御するための伸縮弁切換制御信号を生成して伸縮制御弁に出力すると共に、当該伸縮弁切換制御信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号に基づき伸縮弁切換制御信号で伸縮制御弁を切換制御して伸縮ブームを伸縮動させた際に当該伸縮動により生じる前記フックブロックの上下方向変移を相殺しつつ当該フックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な起伏制御弁の弁切換量を求め、起伏制御弁を当該弁切換量に切換制御するための連動起伏弁切換制御信号を生成して起伏制御弁に出力するよう構成したことを特徴とするクレーンのフック水平移動制御装置。 - 基台上に旋回自在に搭載した旋回ポスト、当該旋回ポストの上部に起伏自在に枢支した伸縮ブーム、前記旋回ポストあるいは伸縮ブーム基端部に取付けたウインチ装置から繰出したワイヤロープによって当該伸縮ブーム先端部から吊下げたフックブロック、伸縮制御弁からの制御油で駆動され伸縮ブームを伸縮駆動する伸縮シリンダ、起伏制御弁からの制御油で駆動され伸縮ブームを起伏駆動する起伏シリンダとで構成したクレーンのフック水平移動制御装置であって、
前記起伏制御弁の弁切換量を指示する起伏操作信号を出力する起伏操作手段、
伸縮ブームのブーム長さを検出してブーム長さ信号を出力するブーム長さ検出手段、
伸縮ブームのブーム起伏角を検出してブーム起伏角信号を出力するブーム起伏角検出手段、
及びこれら各手段からの起伏操作信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号を受取り、前記起伏制御弁と伸縮制御弁を切換制御するための弁切換制御信号を生成して各制御弁に出力するコントローラとを備え、
当該コントローラは、前記起伏操作信号に基づき起伏制御弁を当該起伏操作信号が指示する弁切換量に切換制御するための起伏弁切換制御信号を生成して起伏制御弁に出力すると共に、当該起伏弁切換制御信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号に基づき起伏弁切換制御信号で起伏制御弁を切換制御して伸縮ブームを起伏動させた際に当該起伏動に連動して制御される伸縮ブームの伸縮動により生じる前記フックブロックの上下方向変移を相殺しつつ当該フックブロックをブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁の弁切換量を求め、伸縮制御弁を当該弁切換量に切換制御するための連動伸縮弁切換制御信号を生成して伸縮制御弁に出力するよう構成したことを特徴とするクレーンのフック水平移動制御装置。 - 基台上に旋回自在に搭載した旋回ポスト、当該旋回ポストの上部に起伏自在に枢支した伸縮ブーム、前記旋回ポストあるいは伸縮ブーム基端部に取付けたウインチ装置から繰出したワイヤロープによって当該伸縮ブーム先端部から吊下げたフックブロック、伸縮制御弁からの制御油で駆動され伸縮ブームを伸縮駆動する伸縮シリンダ、起伏制御弁からの制御油で駆動され伸縮ブームを起伏駆動する起伏シリンダとで構成したクレーンのフック水平移動制御装置であって、
前記フックブロックの作業半径増減方向への駆動速度を指示するフック水平操作信号を出力するフック水平操作手段、
伸縮ブームのブーム長さを検出してブーム長さ信号を出力するブーム長さ検出手段、
伸縮ブームのブーム起伏角を検出してブーム起伏角信号を出力するブーム起伏角検出手段、
及びこれら各手段からのフック水平操作信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号を受取り、前記伸縮制御弁と起伏制御弁を切換制御するための弁切換制御信号を生成して各制御弁に出力するコントローラとを備え、
当該コントローラは、前記フック水平操作信号、ブーム長さ信号、ブーム起伏角信号に基づき伸縮ブームの伸縮動により生じる前記フックブロックの上下方向変移を相殺しつつ当該フックブロックを前記フック水平操作信号が指示する駆動速度でブーム起伏軌跡面に沿って略水平方向に移動させるために必要な伸縮制御弁の弁切換量と起伏制御弁の弁切換量を求め、伸縮制御弁と起伏制御弁を対応する弁切換量に切換制御するための伸縮弁切換制御信号と起伏弁切換制御信号を生成して各制御弁に出力するよう構成したことを特徴とするクレーンのフック水平移動制御装置。
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