JP4162305B2 - 局所温熱用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温湯中で局所を温熱処理して、当該処理部に加え、その周辺の比較的広い範囲にわたって温熱効果が得られる局所温熱用組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
皮膚表面の温度を高めて血行を促進するため、携帯用カイロやパック化粧料等が数多く知られているが、これらと接触した部分のみを昇温するだけで、皮膚の広い範囲の昇温には複数の携帯用カイロ等を要する。
【0003】
全身の皮膚表面の温度を高め、全身の血行を活発にして疲労回復、新陳代謝を増加させ、血行障害によるさまざまな症状を緩和するには入浴が有効であるが、この効果を一層高めるため、浴湯を高温にすると逆に入浴本来の効果が失せる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定の発熱物質を含有する組成物が、温湯中で身体の局所の温熱処理に用いると、当該処理部に加えその周辺の比較的広い範囲で温熱効果が得られることを見出した。
【0005】
本発明は、水和反応によって発熱する発熱物質を含有する温湯中局所温熱用組成物を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる水和反応によって発熱する発熱物質としては、例えば種々の無機塩、活性化ゼオライト及びアルコール類(エタノール、プロピルアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)が挙げられる。中でも無機塩及び活性化ゼオライトが好ましい。なお無機塩、活性化ゼオライトは無水塩、含水塩のいずれであってもよい。
【0007】
無機塩及び活性化ゼオライトは、温湯の温度より高い37〜55℃の発熱体が好ましい。そこで無機塩は、水への標準溶解エンタルピー(25℃)が−400〜−5kJ/mol、特に−200〜−10kJ/molが好ましい。ここで標準溶解エンタルピーとは、液体、固体において、0.1MPaの標準状態にある純物質1molが等温的に水に溶解し、標準状態の溶液を生じた際の溶質1mol当りの溶解エンタルピーを意味し、吸熱を正、発熱を負で示す。具体的には無機塩としては例えば、硫酸マグネシウム(MgSO4 、MgSO4・H2O、MgSO4・4H2O)、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)、硫酸カルシウム(CaSO4、CaSO4・1/2H2O、CaSO4・2H2O)等の硫酸塩、塩化カルシウム(CaCl2 、CaCl2・H2O、CaCl2・2H2O)、塩化マグネシウム(MgCl2 、MgCl2・2H2O、MgCl2・4H2O)、塩化アルミニウム(AlCl3 、AlCl3・6H2O)等の塩化物、その他乾燥ミョウバン、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム等がある。
【0008】
また活性化ゼオライトとしては特に制限はないが、入手の容易性、経済性等からNa2O・Al2O3・2SiO2・ZH2O(Zは任意の数を示す。)で表されるゼオライトA−3、A−4、A−5が好ましい。またイオン交換、中性化処理等の特殊処理したゼオライトでもよい。
【0009】
なおこれらの発熱物質の発熱量は、その物質固有であり、一般に同一無機物では結晶水の少ないものほど発熱量は大きい。本発明では、上記発熱物質を1種以上用いる。これら発熱物質の組成物中の含有量は、例えば5〜90重量%、特に10〜80重量%が好ましい。
【0010】
またこれらの発熱物質は、急激な水和反応防止から、水溶性高分子で常法にて表面処理することが好ましい。ここで水溶性高分子とは例えば、ポリエチレングリコール、デキストリン、キサンタンガム、デンプン、グァーガム、カラギーナン、寒天、マンナン、ゼラチン、コラーゲン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシセルロース、カゼイン、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、可溶性デンプン、アルブミン、アルギン酸塩等を挙げることができ、これらを1種以上用い得る。水溶性高分子の組成物中の含有量は特に制限はないが、例えば0.01〜35重量%、特に1〜25重量%が好ましい。
【0011】
本発明の局所温熱用組成物には、さらに炭酸塩及び有機酸を加え、使用時に炭酸ガスを発生させることが好ましい。炭酸ガスを発生させることで、発熱物質の水分による凝集や水和反応の抑制を防止し、十分な温熱効果が得られる。また炭酸塩と有機酸との反応が吸熱反応である場合、局所的な発熱物質の水和反応による温度変化を穏やかにし、組成物の温度をほぼ一定温度に制御することができる。
【0012】
炭酸塩には例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。本発明では、これらの炭酸塩を1種以上用い得る。有機酸には例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸等がある。本発明では、これらの有機酸を1種以上用い得る。また、かかる炭酸塩及び有機酸は水溶性高分子で常法にて表面処理すると、保存中の反応性を低下するので安定性を向上できる。水溶性高分子には、例えば、ポリエチレングリコール、デキストリン、キサンタンガム、デンプン、グアーガム、カラギーナン、寒天、マンナン、ゼラチン、コラーゲン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシセルロース、カゼイン、アルブミン、アルギン酸塩等が挙げられる。これらの水溶性高分子を1種以上用い得る。
【0013】
かかる炭酸塩及び有機酸の組成物中の含有量はそれぞれ、例えば5〜60重量%、特に10〜40重量%が、発泡効果と発熱効果とのバランスが良好であり好ましい。
【0014】
また炭酸塩及び有機酸の組成物中の総含有量は発熱物質の種類や含有量にもよるが、一般には5〜90重量%、特に10〜75重量%が、十分な発熱物質の凝集防止効果と温熱効果が得られ、好ましい。
【0015】
本発明の局所温熱用組成物には、さらに親水性高分子を加えると、発熱物質の水和反応時の温度変化を穏やかにし、組成物の温度をほぼ一定に制御することができる。かかる親水性高分子としては、上記の発熱物質を表面処理する場合に例示された水溶性高分子の他、例えばポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等を挙げ得る。これらの親水性高分子を1種以上用い得る。かかる親水性高分子の組成物中の含有量は、発熱物質の表面処理に用いられる水溶性高分子以外に例えば0.01〜20重量%、特に1〜10重量%が、十分な発熱物質の凝集防止効果と温熱効果が得られ、好ましい。
【0016】
本発明の局所温熱用組成物にはさらに、発熱体の保存安定性向上のため、酸化マグネシウム、ショ糖エステル、ブドウ糖等の安定化剤;熱の放射抑制、分散安定化等のため、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリペプチド、シリカ粉、タルク粉、カオリン、シリコンビーズ等の保型剤;その他ピロリドンカルボン酸塩、尿素、アミノ酸、公知の湿潤剤、防腐剤、殺菌剤、消炎剤、収斂剤、止血剤、鎮痛剤、ビタミン及びその誘導体、キレート剤、粘度調整剤、気泡剤、清涼剤、冷感剤、温感剤、動植物エキス、色素、香料等を含有させ得る。
本発明の局所温熱用組成物は、上記発熱物質、必要に応じて炭酸塩、有機酸、親水性高分子等を常法にて混合、撹拌、加熱、冷却等し、粉末状、クリーム状、乳液状、ローション状、パック状、プラスター状、固形状、ジェル状等任意の剤型に成形できる。
【0017】
本発明の温湯中局所温熱用組成物は、前記水和反応により発熱する発熱物質を含有する発熱体であり、温湯中、すなわち33〜45℃の温湯に身体の一部または全部を浸漬した状態で、さらに身体の局所を37〜55℃の該温湯より高い温度で温熱処理するのに好適に用いられ、この方法により、局所及びその周辺部の比較的広い範囲で温熱効果が得られる。
【0018】
ここで、「温湯に身体の一部または全部を浸漬した状態」とは、例えば浴槽、桶、タライ等に張られた温湯に温熱処理対象部位を含む少なくとも身体の一部を浸漬した状態、の意であり、全身浴、半身浴、坐浴、手浴、足浴等を含む。例えば前腕部局所の温熱処理では、前腕部全体をタライ中の温湯に浸漬することをいう。ここで温湯の温度は一般的に入浴する温度、33〜45℃であり、35〜43℃が好ましい。
身体の局所に特に制限はないが、例えば肩こり、腰痛等の患部等が挙げられる。本発明は、33〜45℃の温湯に身体を浸漬した状態で、身体の局所を37〜55℃の該温湯より高い温度、好ましくは1℃以上高い温度で温熱処理する。周辺部とは、温熱処理した局所の周辺部であり、表面積として、温熱処理した局所の面積の好ましくは約2倍以上、特に好ましくは約6倍以上である。
温熱処理の方法は、例えば、温湯の温度より高い37〜55℃の発熱体を、身体の局所に塗布、付着、圧着、または接着等することが好ましい。
【0019】
発熱体は身体に局所適用の場合に37〜55℃に発熱することが好ましく、該温湯の温度より1℃以上高く発熱することが特に好ましい。また発熱体が該温湯より1℃以上高く発熱する持続時間は、1〜60分間が好ましく、2分間以上が特に好ましい。かかる発熱体の水和反応による発熱量は、上記の発熱物質等の含有量の調整以外に、混合される水分量の調整により制御できる。
【0020】
本発明の局所温熱用組成物は、剤型に応じた態様で、このような温熱処理に用いることができる。例えば組成物がクリーム状、乳液状、ジェル状等であれば、浸漬または入浴前に皮膚局所に塗布し、そのまま浸漬または入浴して該塗布部を中心とする比較的広い範囲で温熱効果を得る。またパック状等であれば、浸漬または入浴前に皮膚局所に付着し、そのまま浸漬または入浴してもよい。また粉末状、固形状等であれば、一部または全体が通水性を有する包装袋に発熱体を入れ、これを皮膚の局所に圧接や接着すればよい。例えば全体が通水性を有する不織布、織布、または紙製等の包装袋に発熱体を入れ、浸漬または入浴中の皮膚局所に圧接してマッサージして該局所を中心とした比較的広い範囲で温熱効果を得られる。また一部が通水性を有する不織布、織布、または紙製等、及び残部が非通水性のフイルム等からなり、該非通水性のフィルム等は粘着面を有する包装袋に発熱体を入れ、該粘着面を皮膚局所に接着すると、該局所を中心とした比較的広い範囲で温熱効果を得る。
【0021】
温熱処理時間は、温湯や水蒸気雰囲気の温度、浴湯の温度、発熱物質や有機酸、炭酸塩等の種類、含有量等にもよるが、一般に1分間以上、特に2分間以上が好ましい。
【0022】
【実施例】
実施例1及び比較例1
表1に示す配合で局所温熱用組成物(局所温熱用具:発熱体)を袋状に成型した。
【0023】
【表1】
【0024】
試験例1
実施例1で得られた各発熱体2gを、縦5cm、横3cm、高さ3mmの直方体で、直方体を構成する縦及び横で囲まれた2つの面のうち1面は、非通水性のフィルムに6つの直径6mmの穴が空き、そのフィルムの内側が通水性の不織布からなり、他の1面は非通水性の粘着面からなり、側面は該1面の非通水性のフィルムと同一素材からなる包装袋に入れ、かかる包装袋を前腕部に付着させた。直ちに包装袋を付着させた前腕部全体を40℃の温湯に浸漬し、10分間保持した(温熱処理)。温熱処理中の包装袋の皮膚接触部分の温度は44℃であった。また、同時にもう一方の前腕は室温(25℃)において44℃のコントロールヒーター(前腕接触部分縦5cm、横3cm)で10分間温熱処理した。
次いで、温熱処理前と、温熱処理終了直後、終了5分後及び30分後における包装袋付着部位及びヒーター接触部分の皮膚表面温度の差を測定した。結果を表2に示す。
尚、発熱体の表面温度は熱電対温度計、皮膚表面温度はサーモグラフィーで測定した。
【0025】
【表2】
【0026】
表2より、本発明の組成物を用いて温湯中で局所温熱処理することにより、局所温熱処理部分は皮膚温度が高く、またその持続性も高かった。
【0027】
試験例2
実施例1及び比較例1で得られた各発熱体を、試験例1と同様にした包装袋にいれ、試験例1と同様にして40℃の温湯中において温熱処理をした。次いで、温熱処理前と、温熱処理終了直後、終了5分後及び終了30分後とにおける前腕の内側部全領域の皮膚平均温度の差を測定した。また40℃の温湯に10分間浸漬した場合について同様に皮膚平均温度の差を測定した(対照)。結果を表3に示す。なお温熱処理中の包装袋の皮膚接触部分の温度は実施例1は44℃、比較例1は38℃であった。また発熱体の表面温度は熱電対温度計、皮膚表面温度はサーモグラフィーで測定した。
【0028】
【表3】
【0029】
表3より、本発明の組成物を用い、温湯中で温湯より高い温度で局所温熱処理すると、局所温熱処理した部位及びその周辺の比較的広い範囲で皮膚温度が高く、また、その持続性が高かった。
【0030】
実施例2、3及び比較例2、3
表4に示す配合で常法にて粉末状の局所温熱用組成物(発熱体)を製造した。
【0031】
【表4】
【0032】
試験例3
上記で得られた各発熱体と精製水とを等量混合し、経時温度変化を測定した。結果を図1に示す。図1より、実施例2及び3で得られた発熱体は、水を混合しても急激に温度上昇せず、40〜50℃付近の温度を維持した。
【0033】
試験例4
実施例2で得られた発熱体を、試験例1と同様にして包装袋にいれた。肩こり症状を有する20名のパネラーを2群に分け、かかる包装袋を第1群10名のパネラーの片方の肩に付着し、38℃の浴湯に10分間入浴させた(温熱処理)。温熱処理中の包装袋の皮膚接触部分の温度は43℃であった。第2群10名のパネラーは該包装袋を肩に付着せずに、38℃の浴湯に浸漬し、10分間保持させた。次いで、各パネラーの肩部及びその周辺の温まり感及び肩こりの緩和効果を以下の評価基準(10名の合計点)で評価した。結果を表5に示す。
(評価基準)
温まり感
3:非常に温かく気持ちがよい
2:温かく気持ちがよい
1:やや温かく気持ちがよい
0:温かさを全く感じない
肩こり緩和効果
3:肩が非常に軽くなった
2:肩が軽くなった
1:肩がやや軽くなった
0:肩こり症状が全く軽減されなかった
【0034】
【表5】
【0035】
表5より、実施例2の発熱体を用いて、入浴時に温熱処理した場合温まり感、肩こり緩和効果ともに優れていた。
【0036】
【発明の効果】
本発明の局所温熱用組成物は、温湯中で局所を温熱処理すると、局所のみならずその周辺の比較的広い範囲で温熱効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】発熱体を精製水と等量混合した場合の発熱体の温度の経時変化を示したものである。
Claims (4)
- 水への標準溶解エンタルピーが−400〜−5kJ/mol(25℃)の無機塩または活性化ゼオライトと、炭酸塩及びフマル酸を含有する温湯中局所温熱用組成物。
- 33〜45℃の温湯に身体の一部または全部を浸漬した状態で、さらに身体の局所を該温湯の温度より1℃以上高い温度で温熱処理するのに用いる請求項1記載の温湯中局所温熱用組成物。
- 33〜45℃の温湯に身体の一部または全部を浸漬した状態で、さらに身体の局所を37〜55℃の該温湯より高い温度で温熱処理するのに用いる請求項1又は2記載の温湯中局所温熱用組成物。
- 身体の局所に圧着又は接着して用いる請求項1〜3のいずれか1項記載の温湯中局所温熱用組成物。
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