JP4054446B2 - 局所温熱構造物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャワー中に局所を温熱処理することができる局所温熱構造物に関する。
【0002】
【従来の技術】
温水シャワーは、皮膚表面の温度を高めるとともに、放出される水の水圧によるマッサージ効果も期待でき、全身の血行を活発にして疲労回復、新陳代謝を増加させ、血行障害による様々な症状を緩和できる。しかし、この効果を一層高めるために湯温を高温にすると、交感神経が刺激され、心身が緊張して逆に効果が低下する。
【0003】
一方、水和反応を利用して皮膚表面の温度を高め、血行を促進する化粧料(特開平8−268828号、特開平6−100411号)が知られているが、これらを温水シャワーと併用すると、発熱剤が洗い流され、発熱の効果はほとんど得られない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、シャワー中に優れた温熱効果が得られる局所温熱構造物を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、水和熱によって発熱する発熱物質を特定の容器に内蔵させた局所温熱構造物を用いれば、局所及びその周辺部でシャワー中に優れた温熱効果が得られることを見出した。
【0006】
すなわち、本発明は、通水部及び接着部を有する容器に、水和反応によって発熱する発熱物質を内蔵させ、シャワーにより水を供給することによって発熱させる局所温熱構造物を提供するものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いる発熱物質は水和反応によって発熱するものであり、例えば種々の無機塩、活性化ゼオライト、アルコール類(エタノール、プロピレンアルコール、グリセリン、ポリエチレングリコール等)等が挙げられる。中でも無機塩及び活性化ゼオライトが好ましい。なお無機塩、活性化ゼオライトは無水塩、含水塩のいずれでもよい。
【0008】
無機塩及び活性化ゼオライトは、シャワー温湯の温度より高い37〜55℃の発熱体が好ましい。そこで無機塩は、水への標準溶解エンタルピー(25℃)が−400〜−5kJ/mol、特に−200〜−10kJ/molが好ましい。ここで標準溶解エンタルピーとは、液体、固体において、0.1MPaの標準状態にある純物質1molが等温的に水に溶解し、標準状態の溶液を生じた際の溶質1mol当りの溶解エンタルピーを意味し、吸熱を正、発熱を負で示す。具体的には無機塩としては、例えば硫酸マグネシウム(MgSO4 、MgSO4・H2O、MgSO4・4H2O)、硫酸アルミニウム(Al2(SO4)3)、硫酸カルシウム(CaSO4、CaSO4・1/2H2O、CaSO4・2H2O)等の硫酸塩、塩化カルシウム(CaCl2 、CaCl2・H2O、CaCl2・2H2O)、塩化マグネシウム(MgCl2 、MgCl2・2H2O、MgCl2・4H2O)、塩化アルミニウム(AlCl3 、AlCl3・6H2O)等の塩化物、その他乾燥ミョウバン、酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素ナトリウム等がある。
【0009】
また活性化ゼオライトとしては特に制限はないが、入手の容易性、経済性等からNa2O・Al2O3・2SiO2・ZH2O(Zは任意の数を示す。)で表されるゼオライトA−3、A−4、A−5が好ましい。またイオン交換、中性化処理等の特殊処理したゼオライトでもよい。
【0010】
なおこれらの発熱物質の発熱量は、その物質固有であり、一般に同一無機物では結晶水の少ないものほど発熱量は大きい。本発明では、上記発熱物質を1種以上用いる。これら発熱物質の発熱体中の含有量は、例えば5〜90重量%、特に10〜80重量%が好ましい。
【0011】
またこれらの発熱物質は、急激な水和反応防止から、水溶性高分子で常法にて表面処理するのが好ましい。ここで水溶性高分子とは、例えばポリエチレングリコール、デキストリン、キサンタンガム、デンプン、グァーガム、カラギーナン、寒天、マンナン、ゼラチン、コラーゲン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、可溶性デンプン、アルブミン、アルギン酸塩等が挙げられ、これらを1種以上用い得る。水溶性高分子の発熱体中の含有量は特に制限はないが、例えば0.01〜35重量%、特に1〜25重量%が好ましい。
【0012】
本発明では、発熱体中に更に炭酸塩及び有機酸を加え、使用時に炭酸ガスを発生させるのが好ましい。炭酸ガスを発生させることで、発熱物質の水分による凝集や水和反応の抑制を防止し、十分な温熱効果が得られる。また炭酸塩と有機酸との反応が吸熱反応である場合、局所的な発熱物質の水和反応による温度変化を穏やかにし、発熱体の温度をほぼ一定温度に制御することができる。
【0013】
炭酸塩には、例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、セスキ炭酸ナトリウム等が挙げられる。本発明では、これらの炭酸塩を1種以上用い得る。有機酸には、例えばコハク酸、フマル酸、リンゴ酸、アジピン酸、酒石酸、クエン酸、マロン酸、マレイン酸等がある。本発明では、これらの有機酸を1種以上用い得る。また、かかる炭酸塩及び有機酸は水溶性高分子で常法にて表面処理すると、保存中の反応性を低下させ安定性を向上できる。水溶性高分子には、例えばポリエチレングリコール、デキストリン、キサンタンガム、デンプン、グアーガム、カラギーナン、寒天、マンナン、ゼラチン、コラーゲン、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、アルブミン、アルギン酸塩等が挙げられ、これらを1種以上用い得る。
【0014】
かかる炭酸塩及び有機酸の発熱体中の含有量は、それぞれ5〜60重量%、特に10〜40重量%が、十分な発泡効果と発熱効果が得られるので好ましい。
【0015】
また炭酸塩及び有機酸の発熱体中の総含有量は発熱物質の種類や含有量にもよるが、一般には5〜90重量%、特に10〜75重量%が、発熱物質の凝集を十分に防止するとともに、湯熱効果が得られるので好ましい。
【0016】
本発明では、発熱体に親水性高分子を加えると、発熱物質の水和反応時の温度変化を穏やかにし、発熱体の温度をほぼ一定に制御することができる。かかる親水性高分子としては、上記の発熱物質を表面処理する場合に例示された水溶性高分子の他、例えばポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、カルボキシメチルセルロース、カチオン化ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられ、これらを1種以上用い得る。かかる親水性高分子の発熱体中の含有量は、発熱物質の表面処理に用いられる水溶性高分子以外に、例えば0.01〜20重量%、特に1〜10重量%が発熱物質の凝集を十分に防止するとともに十分な温熱効果が得られ好ましい。
【0017】
発熱体は身体に局所適用したときに37〜55℃に発熱するのが好ましく、シャワー温湯の温度より1℃以上高く発熱することが特に好ましい。また発熱体がシャワー温湯より1℃以上高く発熱する持続時間は、1〜60分間であるのが好ましく、2分間以上が特に好ましい。かかる発熱体の水和反応による発熱量は、上記の発熱物質等の含有量の調整以外に混合される水分量の調整により制御できる。
【0018】
発熱体には更に発熱体の保存安定性向上のため酸化マグネシウム、ショ糖エステル、ブドウ糖等の安定化剤、熱の放射抑制、分散安定化等のためヒドロキシプロピルセルロース、ポリペプチド、シリカ粉、タルク粉、カオリン、シリコンビーズ等の保型剤、その他ピロリドンカルボン酸塩、尿素、アミノ酸、公知の湿潤剤、防腐剤、殺菌剤、消炎剤、収斂剤、止血剤、鎮痛剤、ビタミン及びその誘導体、キレート剤、粘度調整剤、気泡剤、清涼剤、冷感剤、温感剤、動植物エキス、色素、香料等を配合できる。発熱体は上記発熱物質、炭酸塩、有機酸及び親水性高分子等を常法にて混合、撹拌、加熱、冷却等し、粉末状、クリーム状、固形状、ジェル状等任意の剤型に成形できる。
【0019】
このような発熱体は、通水部及び接着部を有する容器に内蔵される。通水部は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の通水性を有する不織布、織布、紙等からなり、接着部は、例えば身体に対して低刺激性のアクリル系樹脂等の接着剤を塗布した不織布、織布、紙等からなるのが好ましい。また、これら以外の部分は、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエチレン等の非通水性のフィルム等であるのが好ましい。容器は、その少なくとも一部に通水部及び接着部を有するものであれば制限されないが、例えば片面が、全部又は一部が通水性の通水層で、他面が接着層からなる袋状体が好ましい。
【0020】
発熱体を内蔵した容器は、粘着部を皮膚の局所に圧着又は接着して使用する。身体の局所に特に制限はないが、例えば肩こり、腰痛等の患部等が挙げられる。圧着又は接着後、シャワーにより水を供給して発熱させるが、シャワー温湯の温度は一般的に入浴する温度、33〜45℃であり、35〜43℃が好ましい。シャワーをかける部位は全身でもあるいは一部でも良い。一部とは温熱処理対象部位を含んだ例えば上肢部、下肢部、頸部、背腰部、上腕部、脚部等が挙げられる。
本発明では、33〜45℃のシャワー温湯を供給することにより、容器を圧着又は接着した身体の局所及びその周辺部を37〜55℃の該温湯より高い温度、好ましくは1℃以上高い温度で温熱処理することができる。周辺部とは、温熱処理した局所周辺部であり、表面積として、温熱処理した局所の面積の好ましくは約2倍以上、特に好ましくは約6倍以上である。
【0021】
温熱処理時間(シャワーをかけている時間)は、温湯や水蒸気雰囲気の温度、発熱物質や有機酸、炭酸塩等の種類、含有量等にもよるが、一般に1分間以上、特に2分間以上が好ましい。
【0022】
【実施例】
実施例1
表1に示す組成の発熱体を調製し、得られた各発熱体を縦5cm、横3cm、高さ3mmの直方体で、直方体を構成する縦及び横で囲まれた2つの面のうち1面は、非通水性のフィルム(EVAフィルム)に6つの直径6mmの穴が空き、そのフィルムの内側が通水性の不織布(ポリエチレン)からなり、他の1面は非通水性の粘着面(EVAフィルムにアクリル系接着剤を塗布したもの)からなり、側面は該1面の非通水性のフィルムと同一素材からなる包装袋に入れ、局所温熱構造物を得た。
【0023】
【表1】
【0024】
試験例1
実施例1で得られた局所温熱構造物(本発明品1)を前腕部に付着させ、直ちに前腕部全体に40℃のシャワーをかけ、5分間保持した(温熱処理)。温熱処理中の包装袋の皮膚接触部分の温度は44℃であった。また、同時にもう一方の前腕は室温(25℃)において44℃のコントロールヒーター(前腕接触部分縦5cm、横3cm)で5分間温熱処理した。
次いで、温熱処理前と、温熱処理終了直後、終了5分後及び30分後における包装袋付着部位及びヒーター接触部分の皮膚表面温度の差を測定した。結果を表2に示す。
尚、構造物の表面温度は熱電対温度計、皮膚表面温度はサーモグラフィーで測定した。
【0025】
【表2】
【0026】
表2より、本発明の構造物を用いて局所温熱処理することにより、局所温熱処理部分は皮膚温度が高く、またその持続性も高かった。
【0027】
試験例2
実施例1で得られた局所温熱構造物(本発明品1及び比較品1)を用い、試験例1と同様にして温熱処理をした。次いで、温熱処理前と、温熱処理終了直後、終了5分後及び終了30分後とにおける前腕の内側部全領域の皮膚平均温度の差を測定した。また40℃の温湯に10分間浸漬した場合について同様に皮膚平均温度の差を測定した(対照)。結果を表3に示す。なお温熱処理中の構造物の皮膚接触部分の温度は本発明品1は44℃、比較品1は38℃であった。また発熱体の表面温度は熱電対温度計、皮膚表面温度はサーモグラフィーで測定した。
【0028】
【表3】
【0029】
表3より、本発明の局所温熱構造物を用いて局所温熱処理すると、局所温熱処理した部位及びその周辺の比較的広い範囲で皮膚温度が高く、また、その持続性が高かった。
【0030】
試験例3
実施例1で得られた局所温熱構造物(本発明品2〜5、比較品1)を、肩こり症状を有する各10名のパネラーの片方の肩に付着し、38℃のシャワーを5分間かけた(温熱処理)。温熱処理中の構造物の皮膚接触部分の温度を試験例1と同様に測定した。対照群10名のパネラーは該構造物を肩に付着せずに、38℃のシャワーを5分間かけた。次いで、各パネラーの肩部及びその周辺の温まり感及び肩こりの緩和効果を以下の評価基準(10名の合計点)で評価した。結果を表4に示す。
(評価基準)
(1)温まり感;
3:非常に温かく気持ちがよい
2:温かく気持ちがよい
1:やや温かく気持ちがよい
0:温かさを全く感じない
(2)肩こり緩和効果;
3:肩が非常に軽くなった
2:肩が軽くなった
1:肩がやや軽くなった
0:肩こり症状が全く軽減されなかった
【0031】
【表4】
【0032】
表4より、本発明の局所温熱構造物を用いてシャワーにより温熱処理した場合には、温まり感、肩こり緩和効果とも優れていた。
【0033】
【発明の効果】
本発明の局所温熱構造物を用いれば、局所及びその周辺部でシャワー中に優れた温熱効果が得られる。
Claims (2)
- 通水部及び接着部を有する容器に、水和反応によって発熱する発熱物質、炭酸塩及び有機酸を内蔵させ、シャワーにより水を供給することによって発熱させる局所温熱構造物。
- 発熱物質が、水への標準溶解エンタルピーが−400〜−5kJ/mol(25℃)の無機塩又は活性化ゼオライトである請求項1記載の局所温熱構造物。
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