しかしながら、上記従来の形成プロセスに従って光ディスクを形成すると、光ディスクの平坦性を維持できなくなるという問題と、精度よく層間の間隔を制御することができないという問題とが発生する。
通常、第1の紫外線硬化樹脂層103と第2の紫外線硬化樹脂層110とは、記録再生時に発生する層間クロスライトや層間クロストークを排除するため、10μm程度以上の層厚が必要である。
第1の紫外線硬化樹脂層103を形成する場合について説明する。液状の紫外線硬化樹脂を第1の基板100と原盤104との間に充填し、紫外線を照射して、紫外線硬化樹脂の硬化を行い、第1の紫外線硬化樹脂層103を形成することになる。ここで、紫外線硬化樹脂は、紫外線照射による硬化されるので、収縮が発生する。そのため、例えば、紫外線硬化樹脂を20μmの層厚とした場合、その収縮力がさらに大きくなり、第1の基板100の平坦性を維持することができなくなる。そのため、第1の基板100に大きなチルト(基板の傾き)が発生してしまうことになる。複数の紫外線硬化樹脂層103を形成すると、その収縮力がさらに大きくなり、第1の基板100のチルトも積層数に従って大きくなるという問題点を有している。つまり、光ディスクの平坦性を維持することができない。
上記チルトの増大は、記録再生を行う光ビームのコマ収差増大を招き、良好な光ビームスポット形状が得られなくなり、記録再生特性の悪化の原因となる。チルトが発生すると光ビームが基板に対して斜めから入射することになり、基板に対して垂直入射した光ビームはきれいな円形スポットに集光されるが、斜めから入射するとコマ収差が発生し、スポット形状が円形でなくなり、サイドスポット等が発生するからである。
また、第1の基板100と原盤104との間に10μm程度以上の紫外線硬化樹脂を充填する必要があるので、原盤104と第1の基板100とを、10μm程度以上の間隔を開けて配置しなければならない。これにともない原盤104および基板100に、部分的な歪が発生し易くなる。この部分的な歪は、原盤104と基板100との間隔、すなわち、紫外線照射後第1の紫外線硬化樹脂層103の層厚にばらつきが発生してしまう。このような層厚のばらつきは、記録再生のための光ビームに球面収差を発生させる原因となり、集光スポット径を増大させ、記録再生特性の悪化の原因となる。
次に、図17(d)の貼り合わせプロセスにおいては、図17(b)とは異なる状態で、第2の紫外線硬化樹脂層110の硬化が行なわれる。すなわち、図17(b)においては、第1の基板100と、原盤104との間に充填した紫外線硬化樹脂を紫外線照射により硬化させるのに対して、図17(d)においては、第1の基板100と、第2の基板107との間に充填した紫外線硬化樹脂を硬化させることになる。ここで、一般には、第1の基板100、第2の基板107にはプラスチックが用いられ、原盤104には金属板もしくはガラス板が用いられる。このように異なる状態で、紫外線照射により紫外線硬化樹脂の硬化が行なわれると、プラスチック、金属板、ガラス板では硬化時の温度上昇等の硬化条件が変化し、等しい層厚を得ることが困難となる。
以上のように、従来のプロセスにおいては、精度良く記録面の間隔を制御することができないという問題点があった。
また、第1のピット101と第2のピット105と第3のピット108とは、それぞれ、光ディスクの基板100上にスパイラル状または同心円状に形成され、記録トラックを構成する。各層のスパイラル中心または同心円中心の位置がずれると、記録トラックの偏心が発生し、記録再生時におけるトラッキングの乱れが大きくなる。
多層の記録面を有する光ディスクにおいて、良好な記録再生特性を実現するため、コマ収差や球面収差が発生しない、平坦であり、かつ、精度良く記録面の間隔が制御された、多層光ディスクを提供することが必要である。
このような多層光ディスクを提供するため、本願出願人は、ディスク基板上に複数のディスクシートを積層するという内容の先願発明を提案した(特許文献2)。
しかしながら、上記先願発明は、多層光ディスクにおいてディスク基板の内外周径とディスクシートの内外周径とが等しいため、内外周のディスクエッジにおいて、ディスク基板とディスクシートとが剥離するという課題と、隣接するディスクシート同士が剥離するという課題とが存在する。
そこで、本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、ディスク基板上にディスクシートを積層した多層の記録面を有する光ディスクにおいて、ディスクシートのディスク基板からの剥離、および、隣接するディスクシート同士の剥離を抑制する機械的強度の高い光ディスクを実現することにある。
本発明に係る光ディスクおよび光ディスク駆動装置は上記課題を解決するために、以下のような特徴を有している。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、ディスク基板と、記録面を有するディスクシートが上記ディスク基板上に複数積層されてなるディスクシート層とを備え、上記ディスクシート層の内径が上記ディスク基板の内径よりも大きいことを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、ディスク基板と、記録面を有するディスクシートが上記ディスク基板上に複数積層されてなるディスクシート層とを備え、上記ディスクシート層の外径が上記ディスク基板の内径よりも小さいことを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記ディスクシートは上記記録面を一方の面のみに有していて他方の面は平面となっており、複数の上記ディスクシートは、互いに隣接する各ディスクシートの上記記録面と上記平面とが対向するように、上記ディスク基板上に積層されていることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、各上記ディスクシートの厚さがそれぞれ等しいことを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記ディスク基板の厚さが上記ディスクシートの厚さよりも大きいことを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記ディスクシートは、ディスクシート基板と、上記ディスクシート基板上に設けられた紫外線硬化樹脂層とを備えており、上記記録面は上記紫外線硬化樹脂層の表面に形成された凹凸パターンにより構成されていることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記ディスクシートはディスクシート基板を備えており、上記記録面は、上記ディスクシート基板の表面に形成された凹凸パターンにより構成されていることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記ディスクシート層は、上記ディスク基板から積層方向に遠ざかるにつれ、上記ディスクシートの内径が順次大きくなっていることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記ディスクシート層は、上記ディスク基板から積層方向に遠ざかるにつれ、上記ディスクシートの外径が順次小さくなっていることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記ディスク基板から積層方向に最も大きく離れた上記ディスクシートの厚みが、それ以外の上記ディスクシートの厚みよりも厚いことを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記ディスク基板から積層方向に最も大きく離れた上記ディスクシートのシート面外側に、保護層が設けられていることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記保護層は、上記ディスクシート層のディスク径方向端部を覆うように設けられていることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記保護層は、紫外線硬化樹脂層であることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記保護層は、上記ディスク基板から積層方向に最も大きく離れた上記ディスクシートのシート面外側に接着された保護シートであることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記ディスク基板から積層方向に最も大きく離れた上記ディスクシートと上記保護層との光ビームに対する屈折率が等しいことを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、ディスク基板と、記録面を有するディスクシートが上記ディスク基板上に複数積層されてなるディスクシート層とを備え、上記ディスク基板上で所定の半径より内側となる内周領域、または、上記ディスク基板上で所定の半径より外側となる外周領域、または、上記ディスク基板上で所定の第1半径より内側となる内周領域と上記第1半径よりも大きい所定の第2半径よりも外側となる外周領域との両方の板厚が、上記ディスク基板上のその他の領域の板厚よりも厚くなされていることを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、上記の課題を解決するために、上記内周領域と上記ディスクシート層との空隙部分、または、上記外周領域と上記ディスクシート層との空隙部分、または、前二者の空隙領域の両方が埋め込まれていることを特徴としている。
本発明に係る光ディスク駆動装置は、上記の課題を解決するために、請求項1または請求項2に記載の光ディスクにおける複数の上記ディスクシートのそれぞれの上記記録面に対して、光ビームを集光照射し、情報の記録または再生を行なうことを特徴としている。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスクシート層の内径が該ディスク基板の内径よりも大きいので、光ディスクの中心孔におけるディスクシート層のディスク基板からの剥離、および互いに隣接するディスクシート同士の剥離が抑制され、信頼性の高い光ディスクを提供することができるという効果を奏する。つまり、光ディスクを固定保持する際にディスクシート層の内径とディスク基板の内径とが一致している場合や、ディスクシート層の内径がディスク基板の内径よりも小さい場合は、ディスクシート層の中心孔に治具が接触するので剥離が生じるが、上記のようにディスクシート層の内径をディスク基板の内径より大きい場合はディスク基板の中心孔にのみ治具が接触し、ディスクシート層の中心孔には治具が接触せず剥離が抑制される。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスクシート層の外径が該ディスク基板の外径よりも小さいので、光ディスク外周端におけるディスクシート層のディスク基板からの剥離、および互いに隣接するディスクシート同士の剥離が抑制され、信頼性の高い光ディスクを提供することができるという効果を奏する。つまり、光ディスクの外周端を固定保持する際にディスクシート層の外径とディスク基板の外径とが一致している場合や、ディスクシート層の外径がディスク基板の外径よりも大きい場合は、ディスクシート層が治具に接触するので剥離が生じるが、上記のようにディスクシート層の外径がディスク基板の外径よりも小さい場合はディスク基板の外周端のみ治具に接触し、ディスクシート層の外周端には治具が接触せず剥離が抑制される。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、複数の上記ディスクシートが、互いに隣接するディスクシートの記録面と平面とが対向するように、積層されたことを特徴としているので、記録再生に用いる光ビームのコマ収差や球面収差の変動が抑制され、良好な記録再生特性を実現することができるという効果を奏する。つまり、等しい厚さのディスクシートを用いることにより、それぞれのディスクシ−ト面を平坦なものとし、かつ、互いに隣接する複数の記録面の間隔を等しくすることができる。その結果それぞれの記録面の平坦性が改善されるとともに、隣接する記録面のばらつきが抑制され、記録再生に用いる光ビームのコマ収差や球面収差の変動が抑制され、良好な記録再生特性を実現することができる。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスクシートの厚さがそれぞれ等しいので、光ビームが通過する透過樹脂層の厚さの変動が抑制され記録再生に用いる光ビームのコマ収差や球面収差の変動が抑制され、良好な記録特性を実現することができるという効果を奏する。つまり、これに対して、集光される光ビームが通過する透過樹脂層の厚さが変動すると、その変動に応じて、コマ収差や球面収差が変動することになり良好な記録再生特性を実現することができない。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスクシートを積層するディスク基板の厚さをディスクシートと比較して厚くしているので、光ディスクの平坦性を維持し相対的に機械的強度の強い光ディスクを形成することができ、また相対的にディスクシートの厚さが薄くなるので、ディスクシートを複数積層することにより、大きな記録容量を有する光ディスクを実現することができるという効果を奏する。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、記録面がディスクシート基板上に設けられた紫外線硬化樹脂層の表面に形成された凹凸パターンにより構成されているので、多層光ディスクの生産性が高くなり、低コスト化を実現することができるという効果を奏する。つまり、ディスクシート基板上に紫外線硬化樹脂を塗布した凹凸状のパターンを有する原盤を貼り合わせ、その後紫外線硬化樹脂に対して紫外線を照射することにより、ディスク基板上に凹凸パターンを転写することができる。それゆえ、ディスク基板上に凹凸パターンを有するトラッキングのための凹凸パターンを短時間で形成することができる。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、記録面がディスクシート基板の表面に形成された凹凸パターンにより構成されているので多層光ディスクの生産性をさらに高めることが可能となり、さらなる低コスト化を実現することができるという効果を奏する。つまり、ディスク基板上にトラッキングのための凹凸パターンを直接形成することにより上記紫外線硬化樹脂のような付加的な層を設ける必要がなくなり、生産性を高めることができ、低コスト化を図ることができる。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスクシートの内径が、ディスク基板から積層方向に離れるにつれ、順次大きくなるので、ディスクシート層の内周エッジへの不特定物の引っ掛かりが抑制される。よって、ディスクシート層のディスク基板からの剥離、および互いに隣接するディスクシート同士の剥離がさらに抑制され、より信頼性の高い光ディスクを提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスクシートの外径が、ディスク基板から積層方向に離れるにつれ、順次小さくなるので、ディスクシート層の外周エッジへの不特定物の引っ掛かりが抑制され、ディスクシート層のディスク基板からの剥離、および互いに隣接するディスクシート同士の剥離がさらに抑制され、機械的強度が強く、より信頼性の高い光ディスクを提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスク基板から積層方向に最も大きく離れたディスクシートの厚みが、それ以外のディスクシートの厚みよりも厚いので、ディスクシート層の最表面に保護膜や保護シートを設けなくても、表面の損傷による記録再生特性への悪影響を低減することができる。また保護膜を成膜すると層厚変動により光ビームのコマ収差や球面収差の増大を招くが、該手段によりこうした層厚変動が抑制され、良好な記録特性または再生特性を維持することができるという効果を奏する。
また、本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスク基板から積層方向に最も大きく離れた上記ディスクシートのシート面外側に保護層が設けられているので、外部との衝突等により、ディスクシート及びディスクシート記録面に損傷が発生することを防ぐことが可能となり、機械的強度が強く、より信頼性の高い光ディスクを提供することができるという効果を奏する。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、保護層が、ディスクシート層のディスク径方向端部を覆うように設けられているので、ディスクシート層のディスク基板からの剥離、および互いに隣接するディスクシート同士の剥離がさらに抑制された信頼性の高い光ディスクを提供することが可能となるという効果を奏する。つまり、ディスクシート層のディスク径方向端部が保護層で覆われていることにより、不特定物の端部への衝突等により該不特定物が保護層にひっかかっても剥離が発生しない。
また、本発明に係る光ディスクは、以上のように、保護層が紫外線硬化樹脂層であるので、上記保護層を簡単なプロセスで、かつ、低コストで形成することが可能となるという効果を併せて奏する。つまり、ディスク基板上にディスクシートを積層し、ディスクシート上にスピンコート法等の簡便な方法で紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射することにより均一な膜厚を有する紫外線硬化樹脂を形成することができ低コストで保護層を形成することができる。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、保護層が、ディスク基板から積層方向に最も大きく離れたディスクシートのシート面外側に接着された保護シートであるので、上記保護層の層厚を、さらに均一なものとすることが可能となり、良好な記録再生特性を実現することができるという効果を奏する。つまり、保護層側から光ビームを入射して記録再生を行なう場合保護層の層厚がばらつくことにより光ビームにコマ収差や球面収差が発生し記録再生特性が悪化するが、該特徴のように均一な厚さの保護シートをディスクシート上に貼り合わせることにより保護層の層厚が抑制され、良好な記録再生特性を実現することができる。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスク基板から積層方向に最も大きく離れたディスクシートと保護層との光ビームに対する屈折率が等しいので、これによりディスクシート層の最表面に位置するディスクシートと保護層との界面における光ビームの反射を抑制することができ、従って、反射を抑制することができることより光ビームを記録面に集光させることができ、記録再生特性が良好な光ディスクを実現することができるという効果を奏する。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、ディスク基板上の内周領域、または外周領域、または内周領域と外周領域の両方の板厚が、ディスク基板上のその他の領域の板厚よりも厚く成されているので、光ディスクの機械的強度を高めることが可能になるとともに、ディスクシート層のディスク基板からの剥離、および互いに隣接するディスクシート同士の剥離を抑制することが可能となるという効果を奏する。つまり、ディスク基板の上記その他の領域にディスクシートを積層すれば、厚くなされた内周領域、または外周領域、または内周領域と外周領域との両方によってディスクシート層が保護され、落下や記録再生装置への装着に際してディスク基板の損傷を抑制することが可能となる。
本発明に係る光ディスクは、以上のように、上記内周領域と上記ディスクシート層との空隙部分、または、上記外周領域と上記ディスクシート層との空隙部分、または、前二者の空隙領域の両方が埋め込まれているので、光ディスクの機械的強度をさらに高めることが可能になるとともに、ディスクシート層のディスク基板からの剥離、および互いに隣接するディスクシート同士の剥離をさらに抑制することが可能となるという効果を奏する。
本発明に係る光ディスク駆動装置は、以上のように、複数の上記ディスクシートのそれぞれの記録面に対して、光ビームを集光照射し、情報の記録または再生を行なうので、複数の記録面を有する光ディスクに対して、それぞれの記録面に光ビームを集光照射して、該記録面における情報の記録または再生を行なうことが可能であり、良好な記録再生特性を実現することが可能な光ディスク駆動装置を提供することができるという効果を奏する。
上記の通り、ディスク基板上のそれぞれのディスクシートは記録面と平面とが対向しているので、隣接する記録面の間隔が等しくなりディスクに対する記録、再生を行なう際にコマ収差や球面収差が少ない照射を行なうことが可能であり良好な記録再生特性を実現することが可能な光ディスク駆動装置を提供することができる。
また、記録面の間隔が均一であるので、光ビームが集中照射されている記録面から、それとは異なる記録面までの距離を性格に予測することが可能であり、目的とする記録面までの予測距離に基づいた層間アクセスジャンプを行なうことも可能である。
なお、以上の各発明に記載した構成を、必要に応じて任意に組み合わせてもよい。
以下、本発明の光ディスクおよび光ディスク駆動装置についての実施形態について、図面に基づいて説明する。以下、本発明の光ディスクの構成と光ディスクの駆動装置、記録面の構成例、多層光ディスクの他の構成、積層構造の他の構成について説明し、その後実施例について説明する。
(本発明の光ディスクの構成とその形成方法)
本発明の光ディスク1は、例えば光ディスク1の斜視断面図である図1に示すように、ディスク基板3の上に、ディスクシート層2が配置された構成を有している。また、図2は、図1の断面を厚さ方向のみに拡大表示した断面図であり、この図に示すように、ディスクシート層2は複数のディスクシート7…が接着剤8を介して積層された構造である。各ディスクシート7の一方の面である記録面には、凹凸パターンからなる記録情報が、スパイラル状または同心円状に設けられている。また、ディスク基板3は、光ディスク1を回転駆動する際のセンタリング用の内周穴4を有してもよい。
ここで、ディスクシート層2は、内径5がディスク基板3の内径5’よりも大きくなるように形成されており、また、外径6がディスク基板3の外径6’よりも小さくなるように形成されている。なお、以下の説明では内径5の上記条件と外径6の上記条件とが両方満たされるものを挙げているが、いずれか一方の条件を満たすものも考えられる。
次に、図3と図4は、ディスクシート7の斜視断面図を示している。ディスクシート7は、ディスクシート基板14と上記凹凸パターンが形成された紫外線硬化樹脂層15とで構成されている。
このようなディスクシート7は以下のようにして形成する。まず、凹状または凸状のピットパターンを有する図示しない原盤の上に、液状の紫外線硬化樹脂を塗布する。次にその紫外線硬化樹脂の上にディスクシート基板14を配置する。次にその紫外線硬化樹脂に対して紫外線照射して紫外線硬化樹脂を硬化させる。その後原盤を取り除くことにより、凹凸パターンを有する紫外線硬化樹脂層15がディスクシート基板14上に形成される、すなわち図3に示すようなディスクシート7が形成される。それゆえ、多層光ディスクの生産性が高くなり、低コスト化を実現することができる。具体的には、ディスクシート基板14上に紫外線硬化樹脂を塗布した凹凸状のパターンを有する原盤を貼り合わせる。その後、該紫外線硬化樹脂に紫外線を照射し、原盤を取り除くことにより、ディスク基板上に凹凸パターンを転写することが可能となる。それゆえ、ディスク基板3上にトラッキングのための凹凸パターンを短時間で形成することができる。従って、多層光ディスクの生産性が高くなり、低コスト化を実現することができる。
該ディスクシート7の表面(紫外線硬化樹脂層15の凹凸パターンを有する側の表面)には、それぞれ、凹状または凸状の凹凸ピット9、もしくは、凹状の凹凸トラック12または凸状の凹凸トラック13が、スパイラル状もしくは同心円状に設けられている。以下、上記凹凸ピット9、もしくは、凹凸トラック12,13が設けられた側のディスクシート7面を、ディスクシート7の記録面10と呼び、該記録面10と反対側の面を、ディスクシート7の平面11と呼ぶことにする。ここで、凹凸ピット9、もしくは、凹凸トラック12,13の凹凸段差は、正確なトラッキングをおこなうために、20nm〜100nmの範囲とすることが望ましい。また、凹凸ピット9の幅、及び、凹凸トラック12,13の幅は、記録または再生をおこなうための光ビームスポットの大きさにより決定されるべきであり、光ビームスポット直径の半分程度の幅であることが望ましい。
ここでは、ディスクシート基板14と紫外線硬化樹脂層15とを用いたディスクシート7の形成方法について説明したが、ディスクシート7の形成プロセスはこれに限られるものではない。例えば、図5に示すように、ディスクシート基板14の表面に、直接凹凸パターンを形成することにより形成することも可能である。すなわち、上記記録面10に対応する表面に凹凸パターンを有する原盤をディスクシート基板14に対して押圧し、ディスクシート基板14の表面に直接凹凸パターンを形成することが可能である。具体的には、ディスクシート基板14の表面に、トラッキングのための凹凸パターンを直接形成する。これにより、上記紫外線硬化樹脂層15のような付加的な層を設ける必要がなくなり、多層光ディスクの生産性をさらに高めることが可能となり、さらなる低コスト化を実現することができる。この場合、紫外線硬化樹脂を用いることなく、記録面10を形成することが可能であり、ディスクシート7形成プロセスが簡略化され、低コストで多層光ディスクを形成することができる。
以上のようにして形成されたディスクシート7の貼り合わせは、各ディスクシート7の間に設けた接着剤8を硬化することにより行なわれる。接着剤8としては、紫外線照射により硬化可能な紫外線硬化樹脂からなる接着剤8を用いることにより、紫外線照射におより硬化させることにより短時間でディスクシート7間の接着が可能となる。また、感圧性接着フィルム等をディスクシート7の表面に積層し、ディスクシート7を積層した後、圧力を加えることにより、ディスクシート7を貼り合わせることも可能である。この場合、圧力を加えるのみで、ディスクシート7の貼り合わせを実施することが可能であり、短時間での接着が可能になるとともに、紫外線光源のような硬化のための装置が不要となる。従って、貼り合わせプロセスを簡略化することができ、ディスク製造コストを低減することができる。ここで、感圧性接着フィルムの代わりにディスクシートの軟化よりも低い温度で接着を行なうことのできる感熱性接着フィルムを用いることも可能である。
以上の方法のようにディスクシート7、それを積層したディスクシート層2を基板上に貼り合わせることにより光ディスク1を形成することができる。光ディスク1は、図6に示すように、等しい厚さのディスクシート7が、互いに隣接するディスクシート7の記録面10と平面11とが対向するように積層されている。それゆえ、記録再生特性に用いる光ビームのコマ収差や球面収差の変動が抑制され、良好な記録再生特性を実現することができる。
具体的には、上記の構成により、複数の記録面の間隔が、概ねディスクシート7の厚みと等しくなる。従って、それぞれのディスクシート7として、等しい厚さのディスクシート7を用いることにより、それぞれのディスクシート7面を平坦なものとし、かつ、互いに隣接する複数の記録面10の間隔を等しくすることが可能となる。すなわち、それぞれの記録面10の平坦性が改善されるとともに、隣接する記録面10の間隔のばらつきを抑制される。その結果、記録再生の際に用いる光ビームのコマ収差や球面収差の変動が抑制され、良好な記録再生特性を実現することができる。集光される光ビームが通過する透過樹脂層(基板)の厚さが変動すると、その変動に応じて、コマ収差や球面収差が変動することになる。従って、記録面10の間隔を等しくし、記録面10の間隔のばらつきを抑制することにより、光ビームが通過する透過樹脂層の変動が抑制され、記録再生に用いる光ビームのコマ収差や球面収差の変動が抑制され、良好な記録特性を実現することができる。
また、各ディスクシート7を接着する接着剤8として紫外線硬化樹脂を用いることにより、接着剤8の層厚を薄くすることができる。例えば、30μmの間隔で記録面を形成しようとした場合、[従来技術]において、硬化された紫外線硬化樹脂層の層厚を30μmとすることが必要となる。これに対して、本願においては29μmの厚さのディスクシートと、1μmの厚さの紫外線硬化樹脂とで、30μmの層間隔を実現することが可能である。従って、ある程度の厚さを有するディスクシートが存在することにより接着剤8の層厚を薄くすることができる。従って、隣接する上記記録面10の間隔が常に等しく保たれ、記録再生に用いる光ビームのコマ収差や球面収差の変動が抑制され、良好な記録再生特性を実現することができる。
(本発明の光ディスクの記録装置または再生装置)
図6は、本発明の光ディスク1を、拡大表示した断面図を示している。一方の面が記録面10であり、他方の面が平面11であるいくつかのディスクシート7を平らな表面を有するディスク基板3上に貼り合わせる。このとき、ディスク基板3の表面とディスクシート7の記録面10とが対向し、かつ、互いに隣接するディスクシート7の該記録面10と該平面11とが対向するように、ディスク基板3といくつかのディスクシート7とが、接着剤8により貼り合わされた構成となっている。
光ビーム16は、それぞれのディスクシート7の記録面10に対して、対物レンズ17により集光照射され、常に光ビームの集光位置が記録面10となるようにフォーカシングが行われる。また、集光照射された該光ビーム16は、光ディスク1の回転に伴って、ピット9もしくはトラック12,13(図3や図4参照)に沿って、記録または再生を行なうためのトラッキングが行なわれる。
図7は、上記光ディスク1に対して記録再生を行なうための、光ディスク駆動装置としての記録装置または再生装置の概略図を示す図面である。
光ディスク1は、内周穴4によりセンタリングが行なわれた状態で、スピンドル18にチャッキングされ、回転駆動される。この際、ディスクシート面が記録装置または再生装置と向かい合うように光ディスクを装着する。一方、光ビーム19は、光ピックアップ21により制御が行なわれる。光ピックアップ21は、光ビーム光源と、光検出器と、フォーカシング光学系と、トラッキング光学系と、光ビームを集光するための対物レンズ20とを有する。すなわち、ディスク基板3に積層されたディスクシート層2の中にある特定のディスクシート7の記録面10に対してフォーカシングが行われ、さらに、ピット9またはトラック12,13に対してトラッキングが行なわれる。また、上記記録装置または再生装置は、回転駆動と光ピックアップ21のアクセス制御、フォーカシング制御、トラッキング制御を行なうための駆動制御回路22と、光ビーム強度制御、再生信号検出または記録信号制御を行なうための記録制御回路23または再生制御回路23とを有している。
以上に記載した光ディスク1と、光ディスク再生装置または光ディスク記録装置とを用いることにより、複数の記録面10…を有する光ディスク1に対する再生または記録を行なうことが可能となり、大容量の光ディスク装置を実現することができる。
ここで、本発明の光ディスク1は、図1に示したようにディスクシート層2の内径5がディスク基板3の内径5’よりも大きくなるように形成されている。従って、図7に示すように、光ディスク1をスピンドル18にチャッキングする際、ディスク基板3がスピンドル18に対して接触することになり、ディスクシート層2はどこにも接触せず、スピンドル18にも接触することがない。
ここで、本発明の光ディスク1においては、ディスクシート7が光ディスク記録装置または再生装置に接触しないように装着されることが望ましい。なぜなら、光ディスク内周におけるディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制されるからである。以上述べたように、本願発明に係る光ディスク1はディスクシート層2の内径5がディスク基板3の内径5’よりも大きいので、光ディスク1の中心孔におけるディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制される。例えば、光ディスク1をハンドリング(評価)のため、光ディスク1の中心孔に冶具を挿入し、光ディスク1の固定保持を行なう際、ディスクシート層2の内径5とディスク基板3の内径5’とが一致していると、ディスク基板3と一緒にディスクシート層2も冶具により固定保持されることになる。この場合、ディスクシート層2の中心孔に冶具が接触することにより、ディスクシート層2がディスク基板3から剥離する可能性、および、互いに隣接するディスクシート7同士が剥離する可能性が高くなる。
これに対して、ディスクシート層2の内径5をディスク基板3の内径5’よりも大きくした場合、光ディスク1をハンドリングするための冶具は、ディスク基板3の中心孔のみを固定保持し、ディスクシート層2の中心孔に対する冶具の接触は発生しない。従って、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制され、信頼性の高い光ディスク1を提供することができる。また、光ディスク1を記録再生装置に装着する場合、光ディスク1の中心孔が回転スピンドル18に対して固定保持される。このため、ディスクシート層2の内径5をディスク基板3の内径5’よりも大きくすることにより、上記同様に、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制され、信頼性の高い光ディスク1を提供することができる。
また、本発明の光ディスク1は、ディスクシート層2の外径6がディスク基板3の外径6’よりも小さくなるように形成されている。従って、図7に示す光ディスクの再生装置または記録装置に対する光ディスク1の着脱を行なうために、光ディスク1の外周エッジをハンドリングする際、ディスク基板3の外周エッジがハンドリングされ、ディスクシート層2はどこにも接触しない(ディスクシートがハンドリングされることはない)。ここで本発明の光ディスク1においては、ディスクシート7が光ディスクの再生装置または記録装置への着脱の際ハンドリングされないことが望ましい。なぜなら、光ディスク外周におけるディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制されるからである。
以上述べたように、本願発明の光ディスク1はディスクシートの外径6がディスク基板3の外径6’よりも小さいのでディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制され、さらに信頼性の高い光ディスク1を提供することができる。具体的には上記構成により、光ディスク1の外周端におけるディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離を抑制することができる。例えば、光ディスク1をハンドリングするために、光ディスク1の外周端を冶具で固定保持する際、ディスクシート層2の外径6とディスク基板3の外径6’とが一致していると、ディスク基板3と一緒にディスクシート層2も冶具により固定保持されることになる。この場合、ディスクシート層2に冶具が接触することにより、ディスクシート層2がディスク基板3から剥離する可能性、および、互いに隣接するディスクシート7同士が剥離する可能性が高くなる。これに対して、ディスクシート層2の外径6をディスク基板3の外径6’よりも小さくした場合、光ディスク1をハンドリングするための冶具は、ディスク基板3の外周端のみを固定保持し、ディスクシート層2に対する冶具の接触は発生しない。従って、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制され、信頼性の高い光ディスク1を提供することができる。
また、図7においては、ディスクシート層2の側から光ビームが入射する構成について記載しているが、ディスク基板3の側から光ビームを入射して、記録または再生を行なうことも可能である。しかしながら、高NA(Numerical Aperture:開口)の対物レンズ20を用いて、光ビーム19の集光スポット径を小さくして、より高密度な光ディスクを実現する場合、僅かな光ディスクの傾きにより、光ビームに大きなコマ収差を発生させることになり、ディスク基板3と比較して相対的に厚さの薄いディスクシート7側から光ビームを照射して再生または記録を行なうことが望ましい。例えば、0.70以上のNAを有する対物レンズ20を用いた場合、このコマ収差の影響が極めて顕著となった。
本発明の構成によれば、ディスク基板3の厚さがディスクシート7の厚さよりも厚くなるようにしている。それゆえ、光ディスク基板3の厚さが相対的に厚くなり、さらに相対的に機械的強度の強いディスク基板3を用いることにより、光ディスク1の平坦性を維持し、相対的に厚さの薄いディスクシート7を複数積層することにより、大きな記憶容量を有する光ディスク1を実現することが可能である。
(記録面の構成)
上記光ディスク1の記録方式として、再生のみ可能なROM(Read Only Memory)方式と、記録と再生とが可能なWO(Write Once)方式と、記録、消去と再生が可能なRE(Re-Write able)方式とを適用することが可能である。
〔ROM方式の光ディスクの構成例〕
ROM方式の光ディスク1の場合、図3に示すように、ディスクシート7上には、凹状または凸状ピット9が設けられており、ピット9に情報が記録されている。該ピット9に光ビームを集光照射し、その反射光量を検出することにより、情報の再生が行われる。
図6に示すように、光ビーム16は、ディスクシート7と接着剤8との界面に位置する記録面10に集光照射される。ここで、ディスクシート7の屈折率と接着剤8の屈折率とが異なれば、それらの界面(二層間の境界面)である記録面10に照射された光ビームの一部は、記録面10に反射され、反射光が発生する。該反射光は、光ピックアップ21内の光検出器により検出され、ピット9の凹凸の有無による反射光量の変化を読み取ることにより、情報の再生が行われる。
例えば、ディスクシート7の屈折率をn1とし、接着剤8の屈折率をn2とすると、ディスクシート7と接着剤8との界面における光反射率Rは、
R=((n1−n2)/(n1+n2))2
により求められる。
例えば、ディスクシート7として、屈折率n1が1.58のポリカーボネート(polycarbonate)樹脂からなるポリカーボネ―ト樹脂シートを用い、接着剤8として、屈折率n2が1.33のフッ素樹脂含有アクリル系紫外線硬化樹脂を用いた場合、ディスクシート7と接着剤8との界面における反射率Rは、0.74%となる。
ここで、30mWの強度のレーザ光を、光入射側の記録面10に入射させた場合、該記録面10からの反射光強度は221μWになる。ただし、この場合、複数のディスクシートにより構成される上記界面が複数存在しており、該界面を通過する度に、光ビーム強度が弱くなる。従って、光入射側から離れたディスクシートの記録面10からの反射光強度は弱くなり、記録面10によって反射光強度が変化することになる。
ここで、該反射光強度に従って、光ピックアップ21の光検出器により検出される再生信号の増幅率等を変化させることにより、常に同一レベルの再生信号を再生制御回路23に送出することができる。
ここでは、ポリカーボネート樹脂シートとアクリル系紫外線硬化樹脂とを用いた構成例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ディスクシート7としては、ポリエチレンテレフテレート(PET:polyethylene terephthalate)フィルムやポリエチレンナフタレート(PEN:polyethylene naphthalete )フィルム等のポリエチレン系樹脂シート、ポリプロピレン(polipropylene)系樹脂シート、オレフィン系樹脂シート等を使用することが可能である。
上記した実施の形態においては、ディスクシート7と接着剤8との屈折率差を大きくすることにより、それらの界面に位置する記録面からの反射光量を大きくして、十分な強度の再生信号を得ることが可能である。しかしながら、上記光ディスク1において、各記録面10に反射膜を設けることにより、記録面からの反射光量を増大させ、再生信号品質の改善を実現することが可能である。
該反射膜の膜厚(反射率)は、設けられる記録面10の数によって決められるべきものであり、光入射側の記録面10に形成する反射膜をより薄くして、光入射側と反対側の記録面10へ向かって、徐々に反射膜の膜厚を厚くして、各記録面からの反射光量が等しくなるように、各記録面10上に形成する反射膜の膜厚を制御する。
ここで、反射膜の材質としては、再生のための光ビームに対して、高い反射率を有する材料が望ましい。反射膜の反射率が低い場合、所望の反射光量を得るために、反射膜の膜厚をより厚くすることが必要となり、反射膜の膜厚増加にともなう光吸収の増大により、反射膜を透過する透過光量が減少し、記録面10の積層数の低下を招くことになる。例えば、反射膜としては、Al,Au,Pt,Ti,Ag等の金属薄膜、もしくは、それらの金属を含む合金であることが望ましい。
また、上記反射膜を用いた構成の光ディスク1においては、ディスクシート7の屈折率と接着剤8の屈折率とが異なっていると、光の反射が発生するのは反射膜が形成された記録面10だけではなく、ディスクシート7の平面11と接着剤8との界面でも光の反射が発生する。この場合、該界面で光ビームが反射されることにより、再生されるべき反射光量が減少することになる。従って、ディスクシート7の屈折率と接着剤8の屈折率とを、概ね等しくすることが望ましい。
〔WO方式の光ディスクの構成例〕
WO方式の光ディスク1の場合、図6に示すように、ディスクシート7上には、凹状または凸状のトラック12,13(図4参照)が形成されており、該トラック12,13上に、WO方式に対応した記録膜が形成され、集光照射された光ビーム16は、該トラック12,13に沿ってトラッキングが行なわれる。そして、相対的に強い強度のパルス状光ビーム(以下、「光ビームパルス」と呼ぶ)を照射することにより、情報の記録が行われる。また、相対的に弱い強度の光ビームパルスを連続照射し、その反射光量を検出することにより、情報の再生が行われる。上記記録および再生は、トラック12とトラック13とのいずれかに行なわれる場合もあり、また、トラック12とトラック13との両方に行なわれる場合もある。
WO方式の光ディスク1の構成は、基本的には、ROM方式の光ディスク1と同様である。ROM方式の光ディスク1と異なる点は、反射膜の代わりに記録膜が設けられている点である。また、WO方式の光ディスクにおいては、記録膜に光ビームが集光照射されることによる温度上昇により、記録膜の変質もしくは記録膜近傍の樹脂変形が発生することにより、記録が行われる。従って、該記録膜は、所望の温度上昇を発生させるべく、適度に光ビームを吸収することが必要である。
記録膜としては、ROM方式の光ディスク1において用いた反射膜と比較して、相対的に反射率が低く、(光ビーム)吸収係数の高い材料が使用される。WO方式の光ディスク1の記録膜としては、Sb,Te,In,Ag,Geの群から選ばれた少なくとも2種以上の元素を主成分とする相変化材料を用いることが可能である。該相変化材料からなる非晶質の記録膜に、光ビームパルスを照射することにより、部分的に多結晶へと相変化させることにより、情報の記録が行われ、非晶質状態と多結晶状態とでの反射率差を検出することにより、情報の再生が行われる。
また、WO方式の光ディスク1の記録膜として、他にTaやSi等の金属膜、もしくは、それらを主成分とする合金膜を用いることが可能である。これらの金属膜および合金膜に、光ビームパルスを照射すると、照射位置において温度上昇が発生し、その近傍において樹脂の変形が起る。該樹脂変形による反射率変化を検出することにより、記録された情報の再生が行なわれる。
〔RE方式の光ディスクの構成例〕
RE方式の光ディスク1の構成は、WO方式の光ディスク1と同じである。記録膜としても、WO方式の光ディスク1と同様に、Sb,Te,In.Ag,Geの群から選ばれた少なくとも2種以上の元素を主成分とする相変化材料を用いることが可能である。該相変化材料からなる非晶質の記録膜に、相対的に強い強度の光ビームパルスを照射することにより、部分的に非晶質から多結晶へと相変化させることにより、情報の記録が行われる。また、相対的に弱い強度の光ビームパルスを照射することにより、多結晶から非晶質へと相変化させることにより、情報の消去が行なわれる。ここで、該相変化材料の組成は、非晶質から多結晶への相変化と、多結晶から非晶質への相変化とが起るべく最適化されていることが望ましい。また、記録情報の再生は、非晶質状態と多結晶状態とでの反射率差を検出することにより行われる。
(多層光ディスクの他の構成)
図8は、光ディスク1の他の構成例を示す断面の拡大図である。
図8に示す光ディスク1は、図6に示す光ディスク1と同様に、ディスクシート7の記録面10の側が、ディスク基板3の表面に対向するように、接着剤8により貼り合わされた構成の多層光ディスクにおいて、最表面(ディスク基板3とは反対側)に位置するディスクシート24の上に、すなわち、ディスク基板3から積層方向に最も大きく離れたディスクシート7であるディスクシート24のシート面外側に、保護層25が設けられた構成となっている。
光ディスク1の記憶容量を高めるためには、各ディスクシート7の層厚を薄くして、できるだけ多くのディスクシート7を積層することが望ましい。しかしながら、図6に示す構成においては、ディスクシート層2の最表面に位置するディスクシート24の厚さも薄くなる。このため、ディスク落下等のアクシデントにより、最表面に位置するディスクシート24の表面に発生した損傷が、最表面に位置するディスクシート24の記録面10に達する可能性が高い。その結果、記録面上のピット9が損傷することにより情報が失われてしまう危険が極めて高くなる。
また、光ビーム16をディスクシート24の側から集光する場合、最表面に位置するディスクシート24の厚さが薄いと、ディスクシート24の最表面に照射される光ビーム16のスポット径が小さくなり、僅かな損傷や小さな塵埃付着により、光ビーム16の光路が妨げられ、情報の記録または再生が困難となる。
そこで、図8に示す光ディスク1の場合、ディスクシート層2の保護層として、最表面に位置するディスクシート24の上に、保護層25を設ける。これにより、ディスクの落下等による損傷等が記録面10に達することを防ぐことが可能となる。また、保護層25があることにより記録面10と光ディスク1の光入射面との距離が大きくなり、光入射面に照射される光ビーム16のスポット径が、保護層25を設けない場合と比べて相対的に大きくなる。その結果、光ビーム16をディスクシート24の側から集光し、記録または再生を行なう場合において、光入射面が保護層25上にあるときとディスクシート24上にあるときとでは、同じ損傷や塵埃等が発生しても、保護層25上にあるときの方が記録再生特性への悪影響が低減される。
上記保護層25としては、アクリル系の紫外線硬化樹脂層やエポキシ系の紫外線硬化樹脂層を用いることが可能である。保護層25として紫外線硬化樹脂層を用いた場合、保護層25を簡単なプロセスでかつ低コストで形成することができる。すなわち、ディスク基板3上に、複数の上記ディスクシート7…を積層した後、該ディスクシート7…上に、スピンコート法もしくはスクリーン印刷法等の簡便な方法で紫外線硬化樹脂を塗布し、紫外線を照射することにより、均一な層厚を有する紫外線硬化樹脂層を形成することが可能であり、低コストで保護層25を形成することができる。
また、0.8以上の高NA(開口)の対物レンズを用いて、保護層25側から光ビームを入射し、情報の記録または再生を行なう場合、上記紫外線硬化樹脂層として、記録再生を行なう光ビームに対して透明な紫外線硬化樹脂層を用いることにより、高NA対物レンズに対応した保護層25とすることも可能である。また、保護層25として、接着剤8と同じものを用いることも可能であるが、最表面に位置するディスクシート24と保護層25との界面における光ビームの反射を抑制するためには、該保護層25の屈折率を、ディスクシート24と等しくすることがより望ましい。
上記の構成の光ディスク1においても、図2と同様な構成(ディスクシート層2の内径をディスク基板3の内径より大きくする、ディスクシート層2の外径をディスク基板3の外径より小さく、ディスクシート7が接着剤を用いて複数積層されている。)とすることにより、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制され、精度よく形成された信頼性の高い多層光ディスクが提供される。
次に、図9は、光ディスク1のさらに他の構成例を示す断面の拡大図である。
図9に示す光ディスク1は、ディスクシート層2の保護層として、図8に示す保護層25の代わりに、保護シート27を接着剤26で貼りあわせた構成となっている。図8に示す構成例の場合と同様に、保護シート27を設けることにより、記録面10の破損を防ぐことが可能になるとともに、光ディスク1の光入射面に発生する損傷や、塵埃等による記録再生特性への悪影響を低減することができる。ディスクシート層2の保護層として保護シート27を用いた場合、該保護層の膜厚をさらに均一なものとすることができ、良好な記録特性を実現することができる。該保護層側から光ビームを入射して記録再生を行なう光ディスク記録再生装置を用いる場合、保護層25の場合には保護層25の層厚がばらつくことにより、光ビームにコマ収差や球面収差が発生し、記録再生特性が悪化する。ここで、均一な厚さを有する保護シート27を、ディスクシート上に貼りあわせることにより、ディスクシート層2の保護層の層厚のばらつきが抑制され、良好な記録再生特性を実現することができる。
また、図8に示す保護層25は、液状の紫外線硬化樹脂をスピンコート法により塗布し、紫外線光を照射して硬化させることにより形成されるが、この方法ではディスク内外周で保護層25の層厚の違いが発生しやすい。これに対して、均一な層厚を有する保護シート27を、薄い層厚の接着剤26で貼りあわせることにより、層厚の変動が低減される。
保護層25もしくは保護シート27の側から光ビームを集光照射して記録または再生を行なう場合、保護層25もしくは保護シート27の層厚変動は、光ビームのコマ収差や球面収差の増大を招くことになる。従って、保護シート27を用いた方が、保護膜25を用いた場合よりも層厚変動が抑制されることにより、より良好な光ビームの集光状態が維持され、より良好な記録特性または再生特性が得られる。
図9に示す構成の光ディスク1においても、図2と同様な構成(ディスクシート層2の内径5をディスク基板3の内径5’より大きくする、ディスクシート層2の外径6をディスク基板3の外径6’より小さく、ディスクシート7が接着剤を用いて複数積層されている。)とすることにより、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、互いに隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制され、精度よく形成された信頼性の高い多層光ディスクが提供される。
以上の説明(図8、図9)においては、ディスク基板3の表面と、ディスクシート7の記録面10とが対向する構成の多層光ディスクについて説明したが、全てのディスクシート7…の上下を反転させる構成とすることも可能である。この場合、最表面のディスクシート24の記録面10が露出する構成となるため、該記録面10を保護する保護層25、もしくは、保護シート27を設けることが望ましい。
また、保護層25、保護シート27ともに設けなかった場合には、記録面10が損傷するおそれがあるが、次のようにして当該欠点を補うこともできる。すなわち、図6の構成において、最表面に位置するディスクシート24の厚さを、それ以外のディスクシート7の厚さよりも厚くすることができる。これにより、保護層25や保護シート27を設ける必要が無くなり、多層光ディスクの構成を簡略化し、コストを低減しながら、最表面に位置するディスクシート24の記録面10の情報を保護することのできる機械的強度の強い光ディスクを提供することができる。
(積層構造の他の構成)
図1と図2に示す光ディスク1においては、ディスク基板3上に積層された各ディスクシート7の内径もしくは外径が全て等しいものである場合について説明した。しかし、この場合、ディスク基板とディスク基板3上に積層されたディスクシート7の内周端もしくは外周端の段差が大きなものとなる。その結果、光ディスクの落下等の事態において、該垂直段差部分に対して不特定物の衝突が発生した場合、該垂直段差部分に対する不特定物が引っ掛かり、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が発生する原因となる。
図10と図11とは、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離を抑制することができる光ディスク1の斜視断面図と断面拡大図とを示している。
この光ディスク1は、図11に示すように、ディスクシート層2において、ディスク基板3から積層方向に遠ざかるにつれ、ディスクシート7の内径が順次大きくなるように設定されている。これにより、上記のような垂直段差は発生せず、ディスクシート層2の内周端がなだらかな斜面となる。従って、上記不特定物の引っ掛かりが抑制され、それに伴い、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離がさらに抑制され、信頼性の高い光ディスクが提供される。
具体的には、ディスクシート層2の内径がディスク基板3からの距離に関わらず等しくなるように設定されている場合、ディスク基板3上に積層されたディスクシート7…の内周端の垂直段差が大きなものとなる。例えば、39μm厚のディスクシート7を10枚積層すると、1μm厚の接着層を考慮すると、内周端の段差は、400μmの垂直な段差となる。このように大きな垂直段差が存在すると、落下等の予期せぬ事態において、該垂直段差部分に対する不特定物の衝突が発生した場合、該垂直段差部分に対して不特定物が引っ掛かり、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が発生する原因となる。これに対して、ディスクシート7の内径を、ディスク基板3側から順次大きくすることにより、上記のような垂直段差は発生せず、ディスクシート7の内周端がなだらかな斜面となる。従って、上記不特定物の引っ掛かりが抑制され、それに伴い、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離がさらに抑制され、より信頼性の高い光ディスクを提供することができる。
また、光ディスク1は、図11に示すように、ディスクシート層2において、ディスク基板3から積層方向に遠ざかるにつれ、ディスクシート7の外径が順次小さくなるように設定されている。これにより、上記のような垂直段差は発生せず、ディスクシート層2の外周端がなだらかな斜面となる。従って、上記不特定物の引っ掛かりが抑制され、それに伴い、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制され、信頼性の高い光ディスクが提供される。
ディスクシート層2の外径がディスク基板3からの距離に関わらず等しくなるように設定されている場合、ディスク基板3上に積層されたディスクシート7の外周端の段差が大きな垂直段差となる。この場合、内周端の場合と同様に、該垂直段差部分に対する不特定物が引っ掛かり、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が発生する原因となる。これに対して、ディスクシート7の外径を、ディスク基板3側から遠ざかるにつれ順次小さくすることにより、上記のような垂直段差は発生せず、ディスクシート層2の外周端がなだらかな斜面となる。従って、上記不特定物の引っ掛かりが抑制され、それに伴い、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離がさらに抑制され、信頼性の高い光ディスクを提供することができる。
次に、図12と図13とは、それぞれ、図1と図10に示す構成の光ディスク1の表面に、ディスクシート層2のディスク径方向端部である内周端または外周端を覆うように、保護層28を設けた構成について示している。保護層28は、ディスクシート層2の内周端または外周端を覆っていればよいが、ここでは、ディスクシート層2の内周端および外周端および上面を覆っている。
これらの構成においては、ディスクシート層2の内周端または外周端が、保護層28により完全に覆われている。従って、光ディスク1の落下等の事態において、ディスクシート層2の内周端または外周端に対して、不特定物の衝突が発生した場合においても、不特定物が保護層28に衝突するため、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離は発生しない。従って、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が完全に抑制された信頼性の高い光ディスク1が提供される。すなわち、ディスクシート7の端部が保護層28に覆われていることにより、落下等の予期せぬ事態において、ディスクシート7の端部に対して、不特定物の衝突が発生した場合、不特定物が保護層28に衝突するため、たとえ引っ掛かりが発生したとしても、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離は発生しない。従って、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が完全に抑制された信頼性の高い光ディスクを提供することが可能となる。
ここで、上記保護層28は、図8において示した保護層25を形成する際に、ディスクシート層2の内周端または外周端を覆うように形成されたものであっても良い。また、図9において示した保護シート27を積層する際、ディスクシート層2の内周端または外周端を覆うように形成されたものであっても良い。すなわち、図8の保護層25、図9の保護シート27をディスクシート24の最表面を覆うだけでなく、内周端または外周端を覆うように形成してもよい。
次に、図14は、ディスク基板3の内周領域29の板厚と外周領域30の板厚とが、ディスクシート7が積層されている領域の板厚よりも厚くなされた構成の多層光ディスクの断面図を示している。
内周領域29は、ディスク基板3上で定められた所定の第1半径より内側となる領域であり、外周領域30は、ディスク基板3上で定められた第1半径より大きい所定の第2半径より外側となる領域である。ディスクシート層2は、内周領域29と外周領域30との両者以外の領域、すなわち、第1半径より外側で第2半径より内側の領域に設けられている。
図14からわかるように、ディスクシート層2は、ディスク基板3に埋め込まれたような構成となり、ディスクシート層2の外周端と内周端とが、板厚が厚くなされたディスク基板3の内周領域29と外周領域30とにより保護されることになる。なお、ディスク基板上で所定の半径より内側となる内周領域のみがその他の領域よりも板厚が厚くなされている場合や、ディスク基板上で所定の半径より外側となる外周領域のみがその他の領域よりも板厚が厚くなされている場合も、その他の領域にディスクシート層2を設けることで、ディスクシート層2が板厚の厚い内周領域あるいは外周領域に保護される効果は得られる。
このようにして、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制され、光ディスクの機械的強度をさらに高めることができる。例えば、39μm厚のディスクシート7を15枚積層すると、1μm厚の接着層を考慮すれば、ディスク基板3上に積層されるディスクシート7のトータル厚さは、600μmの厚さとなる。従来の光ディスク(厚さ1.2mm)との互換性を考慮すると、ディスク基板3の厚さを600μmとすることが望ましい。しかしながら、この場合、ディスク基板3の厚さの減少が、光ディスクの機械的強度の低下を招くことになる。
また、例えば、落下等により、600μm厚のディスク基板3の外周端に衝撃が加わった場合、ディスク基板3の外周端においては、容易に破損が発生する。また、ディスク基板3の内周端(中心孔)を固定保持して、記録再生装置へと装着する場合、装着と取り外しとを繰り返すことにより、ディスク基板3の内周端が徐々に変形破損することになる。
ここで、ディスク基板3の内周領域29、または、外周領域30、または、内周領域29と外周領域30との両方の板厚を、ディスクシート7が積層されている領域の板厚よりも厚くすることにより、ディスク基板3の内周領域29、または、外周領域30、または、内周領域29と外周領域30との両方の機械的強度を高めることが可能となり、落下や記録再生装置への装着によるディスク基板3の破損を抑制することが可能となる。
また、ディスク基板3の内周領域29と外周領域30とが、厚くなされることにより、多層光ディスクの機械的強度を高めることが可能になり、落下や記録再生装置への装着によるディスク基板3の破損が抑制される。
次に、図15は、図14に記載の多層光ディスクにおいて、内周領域29とディスクシート層2との空隙部分31、および、外周領域30とディスクシート層2との空隙部分32に、接着剤が埋め込まれた構成の多層光ディスクの断面図を示している。
図15に示す多層光ディスクにおいては、内周領域29との空隙部分31、外周領域30との空隙部分32に接着剤が埋め込まれることにより、ディスクシート層2の端部が、埋め込まれた接着剤により、完全にディスク基板3に固定される。従って、図14に示す多層光ディスクに比較して、機械的強度がさらに高くなり、かつ、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離がさらに増して抑制される。ディスク基板3の内周領域29、または、外周領域30、または、内周領域29と外周領域30との両方の板厚を、ディスクシート7が積層されている領域の板厚よりも厚くした場合、ディスク基板3の内周領域29と外周領域30との機械的強度を高めることが可能となる。ここでは、さらに、上記内周領域29とディスクシート層2との空隙部分31、または、上記外周領域30とディスクシート層2との空隙部分32、または、該空隙領域31,32の両方に、接着剤を埋め込むことにより、光ディスクの厚さの薄くなっている部分を減少させることが可能となる。従って、光ディスクの機械的強度がさらに高いものとなる。また、ディスクシート層2の端部が、埋め込まれた接着剤により、完全にディスク基板3に固定されるため、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離をよりいっそう抑制することが可能となる。
これまでに説明した光ディスクは、隣接するディスクシート7の記録面10と平面11とが対向するように、ディスクシート層2がディスク基板3上に設けられており、隣接する記録面10の間隔が均一となっている。したがって、該光ディスクに対する記録または再生を行なう光ディスク装置は、コマ収差や球面収差の少ない光ビームを、記録面に集光照射することが可能であり、良好な記録再生特性を実現することが可能な光ディスク記録装置または光ディスク再生装置を提供することができる。
さらに、上記光ディスクにおいて、記録面10の間隔が均一であることにより、光ビームが集光照射されている記録面10から、それとは異なる記録面10へと、光ビームの集光照射点を移動する際、目的とする記録面10までの距離を、正確に予測することが可能である。また、目的とする記録面10までの予測距離に基づいた層間アクセスジャンプを行なうことが可能である。
さらに、上記光ディスクの機械的強度が高められていることにより、記録再生時における光ディスクの面振れが低減され、良好な記録再生特性を実現することが可能な光ディスク記録装置または光ディスク再生装置を提供することができる。
(実施例1)
本発明の実施例1として、図3に示すディスクシート7をディスク基板3上に複数積層し、図1および図2に示す光ディスク1を形成した。
ディスクシート7は、30μm厚のポリカーボネートフィルムからなるディスクシート基板14の上に、層厚3μm厚の紫外線硬化樹脂層15が積層され、該紫外線硬化樹脂層15の表面には、深さ20nm、幅0.3μmの凹状ピット9を、0.5μmピッチでスパイラル状に形成した。
ここで、異なる情報が記録されたピットパターンを有する4種類の原盤を用いて、それぞれの原盤に対応した4種類のディスクシート7を形成した。
次に、4種類のディスクシート7の記録面10に、AlTi合金からなる反射膜を形成した。各ディスクシート7の反射膜膜厚は、再生のための光ビームの各層からの反射光強度が、ほぼ一致するように決定した。各層の反射率を、光入射側から、10%、18%、38%、95%となるように、膜厚を調整することにより、ディスクシート7を積層した際、各層からの光ビームの反射光強度を、全て概ね10%とすることができた。
次に、上記4種類のディスクシート7を貼り合わせ、厚さ1.0mmのポリカーボネート樹脂からなるディスク基板3上に、アクリル系紫外線硬化樹脂からなる接着剤8を用いて、4種類のディスクシート7を貼り合わせた。
ここで、ディスク基板3の形状は、内径5’を15mmφ、外径6’を120mmφとし、ディスクシート7の形状は、全て、内径5を25mmφ、外径6を115mmφとした。
また、各ディスクシート7の記録面10の向きは、図6に示す向き(ディスク基板3とディスクシート7の記録面10とが対向した向き)として、ディスク基板3上に、4枚のディスクシート7が貼り合わされたROM方式の4層光ディスクを形成した。
上記方法に従って形成した4層光ディスクを、図7に示す光ディスク再生装置に取り付け、ディスクシート7側から光ビーム19を入射させ、それぞれの記録面10に光ビーム19を集光照射し、凹凸ピットパターンとして記録された情報を再生した。その結果、光入射側の記録面10において、1.5×10−4のビットエラーレート(BER:Bit Error Rate)が得られ、それ以外の記録面10において、1×10−5〜2×10−5のBERが得られ、上記4層光ディスクのいずれの記録面10においても、実用可能なBERを実現することができた。
また、同様にして、ディスク基板3とディスクシート層2との内径および外径を等しくした4層光ディスクを本実施例の比較例として形成し、実施例1の4層光ディスクと比較例の4層光ディスクとについて、市販のCDディスクケースへの着脱を繰り返した。ここで、該CDディスクケースは、上記ディスク基板3の中心孔4に対応する内周突起を有しており、該内周突起により中心孔4が機械的に押圧支持される構成となっている。
100回の着脱試験後、ディスク基板3とディスクシート層2との状態、及び、隣接するディスクシート7同士の状態を確認した結果、実施例1の4層光ディスクにおいては、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が発生していないのに対して、比較例の4層光ディスクは、内周と外周の両方で、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が発生した。
比較例の場合、内周における剥離は、CDディスクケースの内周突起が、ディスク基板3とディスクシート7とに接触することにより発生したものである。また、外周における剥離は、着脱を行なうためのハンドリングにより発生したものである。
一方、実施例1においては、これらの着脱において、ディスクシート7への接触が発生しないため、ディスクシート7のディスク基板3からの剥離が発生しなかったものと考えられる。
(実施例2)
実施例1に記載の4層光ディスクに対して、最表面に位置するディスクシート24の表面に、アクリル系紫外線硬化樹脂をスピンコートした後、紫外線光を照射し、層厚20μmの紫外線硬化樹脂層からなる保護層25を形成し、図8に示す構造の4層光ディスクを形成した。ここで、上記保護層25は、図13に示す保護層28のように、23mmφの位置から外側へ向けて、ディスクシート層2の表面と内周端と外周端とを覆うように設けた。
保護層25を有する上記4層光ディスクを、実施例1と同様に再生した結果、全ての記録面10において、4×10−5〜7×10−5のBERが得られることを確認した。この結果は、光入射面が、保護層25の表面となることにより、光入射面における光ビームスポットが拡大し、光入射面に存在する傷や塵埃の影響によるエラー発生が抑制されたことによるものである。
また、実施例1および実施例2の4層光ディスクを平面上に配置し、ディスクシート層2の内周端に、直径1cmの鋼鉄製剛球を高さ50cmから落下させ、衝撃にともなうディスクシートの剥離テストを行なった結果、実施例1の4層光ディスクにおいては、10回の落下テストにより、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が発生したのに対して、保護層25を設けた実施例2の4層光ディスクの場合、55回の落下テストの後、僅かな剥離が観測され、保護層25により、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制されることを確認した。
また、本実施例は保護膜25の代わりに保護シート27を用いても同様の結果を得ることができた。
(実施例3)
次に、実施例3の多層光ディスクとして、図10および図11に示す構成の光ディスクを形成した。
実施例1に記載の4層光ディスクは、ディスクシート7を、全て、内径5を25mmφ、外径6を115mmφとした。実施例3では、多層光ディスクにおいて、ディスク基板3に最も近い側のディスクシート7の内径5を25.0mmφ、外径6を116.0mmφとし、その上に貼り合わせるディスクシート7の内径・外径を順次、内径24.5mmφ・外径115.5mmφ、内径25.0mmφ・外径115.0mmφ、内径25.5mmφ・外径114.5mmφと内径は0.5mmずつ大きくし、外径は0,5mmずつ小さくした。実施例3の4層光ディスクにおいては、ディスクシート7の大きさ以外は、実施例1と同じものとした。
ここで、実施例3の4層光ディスクは、ディスク基板3上に積層された複数のディスクシート7…の内径が、該ディスク基板3側から遠ざかるにつれ、順次大きくなるように設定され、ディスク基板3上に積層された複数のディスクシート7…の外径が、該ディスク基板3側から遠ざかるにつれ、順次小さくなるように設定された構成を有している。従って、実施例1に比較して、ディスクシート層2の内外周端(エッジ)部分での段差がなだらかになり、該エッジ部分における引っ掛かりが抑制される。従って、ディスクシート7の剥離がさらに抑制され、より信頼性の高い4層光ディスクとすることができる。
上記方法に従って形成した4層光ディスクを、図7に示す光ディスク再生装置に取り付け、ディスクシート7側から光ビーム19を入射させ、それぞれの記録面10に光ビーム19を集光照射し、凹凸ピットパターンとして記録された情報を再生した。その結果、光入射側の記録面10において、1.7×10−4のビットエラーレート(BER)が得られ、それ以外の記録面10において、1×10−5〜2×10−5のBERが得られ、上記4層光ディスクのいずれの記録面10においても、実用可能なBERを実現することができた。
次に、実施例1および実施例3の4層光ディスクを平面上に配置し、ディスク基板3が露出した面の上に、先端が半球状(曲率半径0.06mm)である引っ掻き針を一定の圧力で垂直に押圧させた状態で、4層光ディスクを平行移動させ、上記引っ掻き針を、ディスク基板3の表面から、ディスクシート7の方向へと相対的に移動させて、実施例1の4層光ディスクと実施例3の4層光ディスクとの違いを調査した。
その結果、実施例1の4層光ディスクにおいては、ディスクシート層2のエッジ部分に、およそ0.13mmの垂直段差が存在するため、先端曲率半径が0.06mmである引っ掻き針が、該エッジの垂直段差に引っ掛かった。その結果、4層光ディスクが平行移動し、これに伴い、該エッジ部分において、ディスクシート層2がディスク基板3から剥離し、また、隣接するディスクシート7同士も剥離した。これに対して、実施例3の4層光ディスクにおいては、ディスクシート層2のエッジ部分が傾斜状に形成されており、各ディスクシート7のエッジ部分の段差は0.033mm程度となる。該段差が引っ掻き針の先端曲率半径よりも小さいため、引っ掻き針は、ディスクシート7の段差で引っかかることなく、該傾斜面を徐々に移動し、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離は観察されなかった。
以上のように、実施例3に記載の4層光ディスクにおいては、落下等の不測の事態において、ディスクシートエッジ部分に衝撃等が加わっても、ディスクシートエッジ部分の垂直段差が小さいため、衝突物等に引っ掛かりディスクシート7が剥離するという問題を回避することができる。
(実施例4)
実施例3に記載の4層光ディスクに対して、最表面に位置するディスクシート24の表面に、アクリル系紫外線硬化樹脂からなる接着剤26を用いて、ポリカーボネート樹脂からなる厚さ30μmの保護シート27を貼り合わせ、図9に示す構成の4層光ディスクを形成した。ここで、該紫外線硬化樹脂からなる接着剤層26の層厚は2μmであった。また、上記保護シート27は、図13に示す保護層28のように、ディスクシート層2の内周端と外周端とを覆うように設けた。
保護シート27を有する上記4層光ディスクを、実施例3と同様に再生した結果、全ての記録面10において、1×10−5〜3×10−5のBERが得られることを確認した。この結果は、光入射面が、保護シート27の表面となることにより、光入射面における光ビームスポットが拡大し、光入射面に存在する傷や塵埃の影響によるエラー発生が抑制されたことによるものである。
また、実施例3および実施例4の4層光ディスクを平面上に配置し、ディスクシート層2の内周端に、直径1cmの鋼鉄製剛球を高さ50cmから落下させ、衝撃にともなうディスクシートの剥離テストを行なった結果、実施例3の4層光ディスクにおいては、20回の落下テストにより、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が発生したのに対して、保護シート27を設けた実施形態4の4層光ディスクの場合、150回の落下テストの後、僅かな剥離が観測され、保護シート27により、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が抑制されることを確認した。
(実施例5)
実施例5の多層光ディスクとして、図16に記載の構成の光ディスクを作製した。ポリカーボネートからなるディスク基板3は、内周領域の幅5mmと外周領域の幅2mmの部分の厚さが、ディスクシート7が積層されている領域の板厚よりも厚く成されており、内周領域と外周領域の厚さが1.15mmであり、ディスクシート7が積層されている領域の厚さが1.0mmである。
実施例1と同様にして形成された4種類のディスクシート7は、それぞれ、内径が27mmφ、外径が114mmφであり、ディスク基板3の板厚の薄い領域に、アクリル系紫外線硬化樹脂からなる接着剤8を用いて、貼り合わせられている。
実施例5の4層光ディスクの記録再生特性を調査した結果、実施例1と同様に良好な記録再生特性が得られた。また、実施例1と同様に、CDディスクケースへの着脱テストを行なった結果、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離は発生せず、本構成の多層ディスクにおいても、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離を防止できることが確認された。
(実施例6)
図15に示すように、実施例5に記載の4層光ディスクにおいて、ディスクシート層2とディスク基板3の内周領域または外周領域との空隙部分にアクリル系紫外線硬化樹脂を塗布した。その後、紫外線を照射して、該アクリル系紫外線硬化樹脂を硬化させた構成の光ディスクを作製した。
実施例5および実施例6の4層光ディスクに対して、実施例2と同様な剛球落下テストを行なった結果、実施例5の4層光ディスクにおいては、15回の剛球落下により、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が発生したのに対して、実施例6の4層光ディスクにおいては、150回の剛球落下テストを行なってもディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離が発生しなかった。
以上のように、ディスク基板3とディスクシート層2との空隙部分に接着剤を埋め込むことにより、ディスクシート層2のディスク基板3からの剥離、および、隣接するディスクシート7同士の剥離をさらに抑制することができる。
また、実施例5および実施例6の構成の多層光ディスクに対して、保護層25もしくは保護シート27を設けることにより、記録再生特性を改善することが可能になるとともに、ディスクシート7の剥離をさらに抑制することが可能となる。