JP4674224B2 - 多層光記録媒体用シート材料、光記録媒体用多層構造体及び多層光記録媒体 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、感光材料にレーザ光を集光し、屈折率変化として三次元的にデータを書き込み、記録されたデータを反射型共焦点顕微鏡を用いて読み出す記録方法が開示されている。このような記録方法に用いられる光記録媒体としては、ニオブ酸リチウムなどのフォトリフラクティブ材料や、ジアリールエテン、スピロピランなどの光によって可逆的構造変化を起こすフォトクロミック色素、アゾベンゼンやスチルベンなどの光異性化反応を起こしうる化合物や、これらを高分子構造中に修飾したもの、2光子吸収性光酸発生剤と酸発色性色素を組み合わせたものなどを光記録層として用い、クロストークを低減させるために、光記録層の層間に光記録が行えない材料からなる非記録層を導入した多層光記録媒体が提案されている(特許文献2参照)。
さらに、本発明者らは、光記録層と、非記録層として感圧接着剤層を積層してなる感圧接着性シートを用いることにより、前記のような構造の多層光記録媒体を生産性よく作製し得ることを見出した(特許文献3参照)。
一方、このような多層光記録媒体において、三次元空間内部の位置を特定するための位置情報を光記録媒体内部に設けることが提案されているが(特許文献4参照)、光記録層と感圧接着剤層からなるシートを積層する方式では、このような位置情報を設けることが困難であった。
また、前記シート材料に、透明樹脂層を設けることにより、積層時にしわなどが入るのを防止し得ると共に、光記録層と転写層との層間における相互混入を防止し得ることを見出した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
[1]複数の光記録層が積層された繰り返し構造を有する多層光記録媒体を作製するためのシート材料であって、接着剤層と、多光子吸収性材料を含む光記録層と、透明樹脂層とエネルギー線硬化型転写層とを有し、前記透明樹脂層が、厚さ1〜100μm、ガラス転移温度50℃以上及び破断伸度300%未満であって、光記録層とエネルギー線硬化型転写層の間に介在してなり、前記エネルギー線硬化型転写層と接着剤層とが、それぞれ最外側に配設されてなり、該エネルギー線硬化型転写層が、記録ピット及び/又はグルーブとして、表面に凹凸を有するスタンパの形状を転写するための層であることを特徴とする多層光記録媒体用シート材料、
[2]接着剤層を構成する接着剤が、接着成分として(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含む上記[1]項に記載の多層光記録媒体用シート材料、
[3]上記[1]又は[2]項に記載のシート材料において、エネルギー線硬化型転写層が、表面に凹凸を有するスタンパの形状を転写後、エネルギー線照射により硬化された層であることを特徴とする多層光記録媒体用シート材料、
[4]上記[3]項に記載のシート材料が、その外側に配設された接着剤層を介して積層されてなることを特徴とする光記録媒体用多層構造体、
[5]複数の光記録層が積層された繰り返し構造を有する光記録媒体用多層構造体であって、前記繰り返し構造が、多光子吸収性材料を含む光記録層と接着剤層とを少なくとも有するユニットの複数を、該接着剤層を介して積層してなる構造を有し、かつ前記ユニット間に、上記[3]項に記載のシート材料を一つ以上介在させたことを特徴とする光記録媒体用多層構造体、
[6]上記[4]又は[5]項に記載の多層構造体を有することを特徴とする多層光記録媒体、及び
[7]接着剤層、多光子吸収性材料を含む光記録層、透明樹脂層及びエネルギー線硬化型転写層とを有するシート材料を、厚さ1〜100μm、ガラス転移温度50℃以上及び破断伸度300%未満の透明樹脂層を、光記録層とエネルギー線硬化型転写層の間に介在させて積層し、該エネルギー線硬化型転写層及び前記接着剤層を、それぞれ最外側に配設して積層するシート材料の製造方法において、該エネルギー線硬化型転写層を、エネルギー線硬化型転写層の表面に凹凸を有するスタンパの形状を転写したのち、エネルギー線照射により硬化した後に積層することを特徴とする多層光記録媒体用シート材料の製造方法、
を提供するものである。
本発明の多層光記録媒体用シート材料には、以下に示す多層光記録媒体用シート材料A及びBの2つの態様がある。
[多層光記録媒体用シート材料A]
本発明のシート材料Aは、複数の光記録層が積層された繰り返し構造を有する多層光記録媒体を作製するためのシート材料であって、多光子吸収性材料を含む光記録層と、接着剤層と、エネルギー線硬化型転写層とを有し、前記エネルギー線硬化型転写層が、記録ピット及び/又はグルーブとして、表面に凹凸を有するスタンパの形状を転写するための層であり、かつ該エネルギー線硬化型転写層と接着剤層とが、それぞれ最外側に配設された構成を有している。
本発明のシート材料Aにおいて光記録層を構成する材料については、多光子吸収性材料を含むものであればよく、特に制限されず、従来光記録媒体における光記録層の構成材料として知られている材料の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。多光子吸収性材料とは、2つ以上の光子を同時に吸収し、励起状態へと遷移する性質を有する化合物を意味する。その中でも実用に十分な記録感度を得るという観点から、二光子吸収断面積が0.1GM以上の二光子吸収性材料を含むものが好ましく、特に100GM以上の二光子吸収性材料を含むものがさらに好ましい。このような材料としては、例えば多光子吸収性材料を単独で構成したものや、例えば多光子吸収性材料と、励起された多光子吸収性材料からのエネルギー移動によって変化を起こす他の反応性化合物とで構成したもの、これらをマトリクスに配合した材料で構成してもよい。なお、前記「GM」は、10-50cm4・s・molecule-1・photon-1を意味する。
前記マトリクスを構成する材料は、無機材料であっても有機材料であってもよいが、本発明のシート材料の製造の簡便さや、材料の選択肢の多さなどの点から、有機系の高分子材料が好ましい。この高分子材料はホモポリマーであってもコポリマーであってもよく、そのモノマーの種類、分子量、重合形態などについては特に制限はない。
このような多光子吸収性化合物を用いて記録する方式としては、例えば、アゾ基やC=C基、C=N基含有化合物のように、光によって異性化する材料や、(メタ)アクリレート化合物のように、光によって重合反応を起こす材料、有機フォトクロミック材料のように、光によって可逆的な構造変化を起こす材料、光によって電荷分布が起こる有機リフラクティブ材料などを用いて屈折率変調を読み取る方式や、光によって蛍光特性が変化する材料を用いて、蛍光を読み取る方式、光によって酸を発生する材料と酸発色性色素の組み合わせや、消色剤と消色性色素を組み合わせて、吸収率変調や屈折率変調を読み取る方式などが挙げられる。これらの記録方式において、多光子吸収性化合物自身が、このような光反応性を有していても良いし、多光子吸収によって励起された多光子吸収性化合物から、他の反応性化合物へのエネルギー移動によって反応を起こしても良い。
本発明のシート材料Aにおいては、前記光記録層の厚さについては特に制限はないが、通常0.1〜50μm程度、好ましくは0.2〜10μmである。
本発明のシート材料Aにおける接着剤層を構成する接着剤に特に制限はないが、本発明の多層構造体Aを作製する際の貼り合わせ温度において感圧接着性を有しており、かつ記録ピット及び/又はグルーブが設けられた硬化転写層に対して接着性を有するものが用いられ、特に常温時に感圧接着性を有する感圧接着剤が好ましい。このような感圧接着剤としては、光学用途の面からアクリル系感圧接着剤が好ましい。
このアクリル系感圧接着剤としては、例えば(メタ)アクリル酸エステル系共重合体及び架橋剤を含むものを用いることができる。
上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、活性水素をもつ官能基を有するモノマーと、所望により用いられる他のモノマーとの共重合体を好ましく挙げることができる。
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、所望により用いられる他のモノマーの例としては酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系モノマー;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系モノマー;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
本発明においては、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
金属キレート化合物としては、特に制限はなく、アクリル系感圧接着剤における金属キレート系化合物として公知の化合物の中から任意のものを適宜選択することができる。この金属キレート系化合物には、金属原子がアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、亜鉛、鉄、スズなどのキレート化合物があるが、性能の点からアルミニウムキレート化合物が好ましい。
アルミニウムキレート化合物としては、例えばジイソプロポキシアルミニウムモノオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムビスオレイルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノオレエートモノエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノラウリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノステアリルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムモノイソステアリルアセトアセテート、モノイソプロポキシアルミニウムモノ−N−ラウロイル−β−アラネートモノラウリルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(イソブチルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(2−エチルヘキシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(ドデシルアセトアセテート)キレート、モノアセチルアセトネートアルミニウムビス(オレイルアセトアセテート)キレートなどが挙げられる。
アジリジン系化合物としては特に制限はなく、アクリル系感圧接着剤におけるアジリジン系化合物として公知の化合物の中から任意のものを適宜選択することができる。アジリジン系化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(2−メチル−1−アジリジンプロピオネート)、4,4'−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、2,2'−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4'−N,N'−ジエチレンウレアなどが挙げられる。
本発明においては、前記金属キレート化合物及びアジリジン系化合物は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その含有量は、感圧接着剤としての性能の観点から、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100質量部に対し、通常0.01〜5.0質量部、好ましくは0.05〜3.0質量部、より好ましくは0.1〜1.0質量部の範囲で選定される。
当該接着剤には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを添加することができる。
本発明のシート材料Aにおける接着剤層の厚さは特に制限はないが、通常1〜100μm程度、好ましくは2〜30μmである。
本発明のシート材料Aにおいて設けられるエネルギー線硬化型転写層は、多層光記録媒体の内部に位置情報を設けるために、記録ピット及び/又はグルーブとして、表面に凹凸を有するスタンパの形状を転写するための層である。このエネルギー線硬化型転写層は、エネルギー線硬化型高分子材料を用いて形成することができる。
本発明において、エネルギー線硬化型高分子材料とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち紫外線又は電子線などを照射することにより、架橋する高分子材料を指す。
本発明で用いる前記エネルギー線硬化型高分子材料としては、例えば(1)アクリル系重合体とエネルギー線硬化型重合性オリゴマー及び/又は重合性モノマーと所望により光重合開始剤を含む高分子材料、(2)側鎖に重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型官能基が導入されてなるアクリル系重合体と所望により光重合開始剤を含む高分子材料などを挙げることができる。
前記(1)の高分子材料において、アクリル系重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、所望により用いられる活性水素をもつ官能基を有する単量体及び他の単量体との共重合体、すなわち(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を好ましく挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステル系共重合体中、(メタ)アクリル酸エステル成分は、通常5〜100質量%程度、好ましくは50〜95質量%含有され、活性水素をもつ官能基を有する単量体成分は、通常0〜95質量%程度、好ましくは5〜50質量%含有される。また、その他単量体成分は、0〜30質量%程度含有することができる。
当該高分子材料において、アクリル系重合体として用いられる(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、その共重合形態については特に制限はなく、ランダム、ブロック、グラフト共重合体のいずれであってもよい。また、分子量は、重量平均分子量で5万以上が好ましい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。
本発明においては、この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合性オリゴマーの重量平均分子量は、GPC法で測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値で、好ましくは500〜100,000、より好ましくは1,000〜70,000、さらに好ましくは3,000〜40,000の範囲で選定される。
この重合性オリゴマーは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの重合性オリゴマーや重合性モノマーの配合量は、通常(メタ)アクリル酸エステル系共重合体の固形分100質量部に対し、3〜400質量部程度である。
配合量は、上述のエネルギー線硬化型高分子材料の固形分100質量部に対し、通常0.1〜10質量部である。
アクリル系重合体に前記活性点を導入するには、該アクリル系重合体を製造する際に、−COOH、−NCO、エポキシ基、−OH、−NH2などの官能基と、ラジカル重合性不飽和基とを有する単量体又はオリゴマーを反応系に共存させればよい。
具体的には、前述の(1)の高分子材料において説明したアクリル系重合体を製造する際に、−COOH基を導入する場合には(メタ)アクリル酸などを、−NCO基を導入する場合には、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアナートなどを、エポキシ基を導入する場合には、グリシジル(メタ)アクリレートなどを、−OH基を導入する場合には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレートなどを、−NH2基を導入する場合には、N−メチル(メタ)アクリルアミドなどを用いればよい。
2−(メタ)アクリロキシエチルイソシアナート、グリシジル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレートなどの中から、活性点の種類に応じて、適宜選択して用いることができる。
このようにして、アクリル系重合体の側鎖に、前記活性点を介してラジカル重合性不飽和基を有するエネルギー線硬化型官能基が導入されてなるアクリル系重合体、すなわち(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が得られる。
このエネルギー線硬化型官能基が導入された(メタ)アクリル酸エステル系共重合体は、重量平均分子量が100,000以上のものが好ましく、特に300,000以上のものが好ましい。なお、上記重量平均分子量は、GPC法により測定した標準ポリメチルメタクリレート換算の値である。
また、所望により用いられる光重合開始剤としては、前述の(1)の高分子材料の説明において例示した光重合開始剤を用いることができる。
本発明のシート材料Aにおいては、エネルギー線硬化型転写層の厚さは、通常2〜50μm程度、好ましくは3〜30μmである。
本発明のシート材料Aにおいては、透明樹脂層を設けることが好ましい。この透明樹脂層を設けることで、シート材料が補強され、その結果、該シート材料を積層して、本発明の多層構造体や多層光記録媒体を作製する際に、前記光記録層にしわが生じるのを抑制することができる。また、光記録層とエネルギー線硬化型転写層との間に、この透明樹脂層を介在させることで、層間における相互混入を防止することができる。
当該透明樹脂層の材料については、透明性を有し、かつ補強性を効果的に発揮し得ると共に、本発明のシート材料の光学特性を損なうことのない材料であればよく、特に制限はない。このような材料としては、例えばトリアセチルセルロース、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィン系樹脂、変性アクリル系樹脂、光重合性オリゴマーの硬化物、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルなどを挙げることができるが、これらの中で複屈折の少ないものが好ましく、具体的にはトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、シクロオレフィン系樹脂、ポリカーボネート樹脂などが好適である。
本発明においては、透明樹脂層は、前記樹脂材料をフィルム状の形態で用いて形成してもよいし、前記樹脂材料を含む塗工液を用いるコーティング法によって形成してもよい。
本発明においては、前記材料からなる透明樹脂層は、シート材料の補強効果及び光記録媒体としての信頼性の観点から、ガラス転移温度が、好ましくは50℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70〜250℃であり、また破断伸度が、好ましくは300%未満、より好ましくは250%以下、さらに好ましくは1〜200%である。厚さは、補強効果を有し、しわの発生を効果的に防止し得ると共に、実用的な記録密度を得る観点から、1〜100μmが好ましく、より好ましくは2〜90μm、さらに好ましくは2〜80μmである。
なお、前記のガラス転移温度及び破断伸度の測定方法については、後で説明する。
当該透明樹脂層は、その上に設けられる層との密着性を向上させる目的で、所望により酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施したものであってもよい。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は透明樹脂層の種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。
本発明のシート材料Aにおいては、前述のように、光記録層と接着剤層とエネルギー線硬化型転写層と所望により設けられる透明樹脂層を有し、かつ前記エネルギー線硬化型転写層と接着剤層は、それぞれ最外側に配設された構造を有している。そして、前記のエネルギー線硬化型転写層及び接着剤層には、それらを保護するために、それぞれの表面に剥離フィルムI及びIIを貼付することができる。
所望により設けられる透明樹脂層は、接着剤層と光記録層との間、又は光記録層とエネルギー線硬化型転写層との間に介在させることができるが、前述した透明樹脂層の機能を効果的に発現させる観点から、光記録層とエネルギー線硬化型転写層との間に介在させることが好ましい。
前記剥離フィルムI及びIIとしては、特に制限はないが、ポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、及びこれらのポリオレフィンフィルムやポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルム並びにグラシン紙、コート紙、ポリオレフィンラミネート紙などの紙にシリコーン樹脂などの剥離剤を塗布して剥離剤層を設けたものなどが挙げられる。これらの剥離フィルムI、IIは同じものであっても異なっていてもよい。また、これらの剥離フィルムI、IIの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
図1は、本発明の剥離フィルム付き多層光記録媒体用シート材料Aの一例の構成を示す断面図である。図1で示される剥離フィルム付きシート材料A10−aは、光記録層1の一方の面に、透明樹脂層2及びエネルギー線硬化型転写層3が順に積層されていると共に、該光記録層1の他方の面に接着剤層4が積層されてなる構造を有している。そして、エネルギー線硬化型転写層3の表面には、それを保護するための剥離フィルムI5が貼付されており、接着剤層4の表面には、それを保護するための剥離フィルムII6が貼付されている。
図2は、本発明の剥離フィルム付き多層光記録媒体用シート材料Aの一例の構成を示す断面図である。図2で示される剥離フィルム付きシート材料A10−bは、光記録層1の一方の面に、エネルギー線硬化型転写層3が積層されていると共に、該光記録層1の他方の面に接着剤層4が積層されてなる構造を有している。そして、エネルギー線硬化型転写層3の表面には、それを保護するための剥離フィルムI5が貼付されており、接着剤層4の表面には、それを保護するための剥離フィルムII6が貼付されている。
まず、エネルギー線硬化型転写層を形成するための塗工液(以下、転写層形成用塗工液と称する。)を調製する。この転写層形成用塗工液は、前述したエネルギー線硬化型高分子材料と共に、所望により、架橋剤、粘着付与剤、酸化安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、充填剤などを、適当な溶媒中に、塗工に適した濃度になるように溶解又は分散させることにより、調製することができる。
このようにして調製された転写層形成用塗工液を、剥離フィルムIの剥離剤層上に、公知の方法、例えばナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより、乾燥塗膜の厚さが所定の厚さになるように塗布、乾燥してエネルギー線硬化型転写層を形成させ、該転写層と剥離フィルムIとの積層体を作製する。
一方、剥離フィルムIIの剥離剤層上に、接着剤塗工液を、公知の方法、例えばナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより、乾燥塗膜の厚さが所定の厚さになるように塗布、乾燥して接着剤層を形成させ、接着剤層と剥離フィルムIIとの積層体を作製する。
次に、透明樹脂層となる樹脂フィルムの一方の面に、光記録層形成材料を適当な濃度で含む塗工液を、前記と同様にして、乾燥塗膜の厚さが所定の厚さになるように塗布、乾燥して光記録層を形成させ、光記録層と透明樹脂層との積層体を作製する。次いで、前記光記録層に接着剤層が接するように、接着剤層と剥離フィルムIIとの積層体を配置すると共に、透明樹脂層にエネルギー線硬化型転写層が接するように、転写層と剥離フィルムIとの積層体を配置し、ゴムローラーなどで圧着することにより、図1に示す構成の4層構造を有する剥離フィルム付きシート材料Aが得られる。
一方、前記図2に示す層構成の3層構造のシート材料Aを製造する場合には、以下の方法を用いることができる。
まず、剥離フィルムIの剥離剤層上に、前記と同様にしてエネルギー線硬化型転写層を形成させ、該転写層と剥離フィルムIとの積層体Xを作製する。別途、剥離フィルムの剥離剤層上に、前記と同様にして光記録層を形成させ、該光記録層と剥離フィルムとの積層体Yを作製する。
一方、剥離フィルムIIの剥離剤層上に、接着剤層を形成させ、該接着剤層と剥離フィルムIIとの積層体Zを作製する。
次に、前記積層体Zの接着剤層面に、前記積層体Yを、その光記録層が接するように配置させて、ゴムローラーなどで圧着して貼合し、光記録層と接着剤層の両面に剥離フィルムを有するシートを作製する。次いで、このシートから、光記録層側の剥離フィルムを剥がしとり、露出した光記録層面に、積層体Xをその転写層が接するように配置させて、ゴムローラーなどで圧着して貼合することにより、図2に示す構成の3層構造を有する剥離フィルム付きシート材料Aが得られる。
[多層光記録媒体用シート材料B]
本発明のシート材料Bは、前述した本発明のシート材料Aにおいて、エネルギー線硬化型転写層が、表面に凹凸を有するスタンパの形状を転写後、エネルギー線照射により硬化された層であることを特徴とする。
このシート材料Bは、例えば以下に示す方法により、作製することができる。
シート材料Aとして、前記図1に示す4層構造を有する剥離フィルム付きシート材料を用いた例について説明する。
まず、図1で示される剥離フィルム付きシート材料A10−aにおける剥離フィルムI5を剥離し、エネルギー線硬化型転写層3を露出させる。次いで表面に記録ピット及び/又はグルーブパターンが刻まれたスタンパの凹凸形状面が、エネルギー線硬化型転写層に接するように、ゴムローラーなどで圧着したのち、エネルギー線を照射して、該転写層を硬化させ、その後、前記スタンパを剥がして取る。
エネルギー線としては、通常紫外線又は電子線が用いられる。紫外線は、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、キセノンランプなどで得られ、一方、電子線は電子線加速器などによって得られる。このエネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。このエネルギー線の照射量としては、例えば紫外線の場合には、光量で100〜5000mJ/cm2が好ましく、電子線の場合には、10〜1000krad程度が好ましい。
このようにして、エネルギー線硬化型転写層3は、表面に記録ピット及び/又はグルーブが設けられた硬化転写層となる。
図3は、本発明の剥離フィルム付き多層光記録媒体用シート材料Bの一例の構成を示す断面図である。図3で示される剥離フィルム付きシート材料B20は、光記録層1の一方の面に、透明樹脂層2及び表面に記録ピット及び/又はグルーブ(位置情報)7aが設けられた硬化転写層7が順に積層されていると共に、該光記録層1の他方の面に接着剤層4、さらに剥離フィルムII6が積層されてなる構造を有している。
本発明の光記録媒体用多層構造体には、以下に示す光記録媒体用多層構造体A及びBの2つの態様がある。
[光記録媒体用多層構造体A]
本発明の多層構造体Aは、前述した本発明のシート材料A又はBを用いて作製することができる。この多層構造体Aは、表面に記録ピット及び/又はグルーブが設けられた硬化転写層と光記録層と接着剤層とが順に積層された3層構造のユニット、あるいは前記3層構造のユニットにおいて、硬化転写層と光記録層との間、又は光記録層と接着剤層との間に透明樹脂層を介在させてなる4層構造のユニットが、接着剤層を介して、複数積層された構造を有している。
前記4層構造のユニットにおいては、透明樹脂層は、前述の透明樹脂層についての説明において示したように、硬化転写層と光記録層との間に介在させることが好ましい。
当該多層構造体Aにおいては、ユニットの全てに記録ピット及び/又はグルーブ(位置情報)が設けられていることになる。
本発明の多層構造体Aにおける前記ユニットの積層数は特に制限はないが、通常2〜200層程度、好ましくは3〜100層である。1層では十分な記録密度が得られず、200層を超えると各層での光の吸収や層間での光の反射などによって情報の書き込みや読み込みに不具合を生じる可能性がある。
このような構造を有する多層構造体A30は、前述した本発明のシート材料A又はBを用い、例えば、以下のようにして作製することができる。まず、図1に示す剥離フィルム付きシート材料A10−aを用いて、多層構造体A30を作製する方法について説明する。
前記図1の剥離フィルム付きシート材料A10−aから、剥離フィルムII6を剥がし、露出した接着剤層4と、図4における基板8が対面するようにして、両者を接合させる。次いで、剥離フィルムI5を剥離し、エネルギー線硬化型転写層3を露出させる。次いで表面に記録ピット及び/又はグルーブパターンが刻まれたスタンパの凹凸形状面が、エネルギー線硬化型転写層に接するように、ゴムローラーなどで圧着したのち、エネルギー線を照射して、該転写層を硬化させ、その後、前記スタンパを剥がして取る。エネルギー線については、前述したとおりである。このようにして、エネルギー線硬化型転写層3は、表面に記録ピット及び/又はグルーブが設けられた硬化転写層となる。
次いで、上記で形成された表面に記録ピット及び/又はグルーブが設けられた硬化転写層上に、上記と同様の操作を繰り返し行うことにより、光記録層がn層積層された多層構造体A30が得られる。
次に、図3に示す剥離フィルム付きシート材料B20を用いて、多層構造体A30を作製する方法について説明する。
前記図3の剥離フィルム付きシート材料B20から、剥離フィルムII6を剥がし、露出した接着剤層4と、図4における基板8が対面するようにして、両者を接合させる。次いで、剥離フィルム付きシート材料B20から、剥離フィルムII6を剥がし、露出した接着剤層4と、図4における硬化転写層7−1が対面するようにして、両者を接合させる。以下、同様の手順で、順次積層を繰り返すことにより、光記録層がn層積層された多層構造体A30が得られる。
本発明の多層構造体Bは、多光子吸収性材料を含む光記録層と、接着剤層とを少なくとも有するユニットの複数を、該接着剤層を介して積層してなる繰り返し構造を有し、かつ前記ユニット間に、記録ピット及び/又はグルーブが設けられた硬化転写層を有する本発明のシート材料A'、又は前述した本発明のシート材料Bを一つ以上介在させたことを特徴とする。なお、シート材料Aにおいて、転写層が、表面に記録ピット及び/又はグルーブが設けられた硬化転写層に変換されたものをシート材料A'とする。
当該多層構造体Bにおいて、繰り返し構造を構成するユニットとして、多光子吸収性材料を含む光記録層と接着剤層とを少なくとも有する積層シートが用いられる。この積層シートとしては、例えば光記録層と接着剤層とからなる2層構造の積層シート、あるいは透明樹脂層と光記録層と接着剤層、又は光記録層と透明樹脂層と接着剤層とが順に積層された3層構造の積層シートなどを用いることができるが、多層構造体作製時において、しわが入りにくいなどの観点から、透明樹脂層を有する3層構造の積層シートを用いることが好ましい。
当該多層構造体Bは、前記ユニットが複数積層され、かつ該ユニット間に、表面に記録ピット及び/又はグルーブ(位置情報)が設けられた硬化転写層を有する本発明のシート材料A'又は本発明のシート材料Bが、少なくとも1つ介在した多層構造体である。前記シート材料A'又はBを介在させる場所に特に制限はなく、必要とする場所に適宜介在させればよく、例えば最下層(基板8に隣接するユニット)であっても、最上層にユニットのみあってもよいし、複数のユニット毎に1ユニットがシート材料A'又はBとなるようにしてもよい。
図6は、本発明の多層構造体Bの構成の一例を示す断面図であって、記録ピット及び/又はグルーブを設けられた硬化転写層を有する本発明のシート材料A'、又は本発明のシート材料Bが、ユニット間に一つ介在する例である。当該多層構造体B50は、ポリメチルメタクリレートフィルムなどの基板8上に、接着剤層と光記録層と透明樹脂層とからなる3層構造のユニットがn層積層され、接着剤層4−1、光記録層1−1、透明樹脂層2−1、接着剤層4−2、光記録層1−2、透明樹脂層2−2、接着剤層4−3、光記録層1−3、透明樹脂層2−3、・・・・・・接着剤層4−n、光記録層1−n、透明樹脂層2−nが設けられると共に、透明樹脂層2−2と接着剤層4−3との間に、接着剤層4と光記録層1と透明樹脂層2と表面に記録ピット及び/又はグルーブ7aが設けられた硬化転写層7からなるシート材料A'又はシート材料Bが介在した構造を有している。
次に、以下に示す2つの操作を実施する。
まず、第1の操作は、前記図1の剥離フィルム付きシート材料A10−aから、剥離フィルムII6を剥がし、露出した接着剤層4と、図6における透明樹脂層2−2が対面するようにして、両者を接合させる。次いで、剥離フィルムI5を剥離し、エネルギー線硬化型転写層3を露出させる。次いで表面に記録ピット及び/又はグルーブパターンが刻まれたスタンパの凹凸形状面が、エネルギー線硬化型転写層に接するように、ゴムローラーなどで圧着したのち、エネルギー線を照射して、該転写層を硬化させ、その後、前記スタンパを剥がして取る。エネルギー線については、前述したとおりである。このようにして、エネルギー線硬化型転写層3は、表面に記録ピット及び/又はグルーブ7aが設けられた硬化転写層7となる。
次いで、上記で形成された表面に記録ピット及び/又はグルーブが設けられた硬化転写層7上に、前記図5に示す剥離フィルム付き3層構造の積層シート40を用い、前記と同様の手順で順次積層を繰り返し、光記録層がn+1層積層された多層構造体B50が得られる。
次に、第2の操作は、前記図3の剥離フィルム付きシート材料B20から、剥離フィルムII6を剥がし、露出した接着剤層4と、図6における透明樹脂層2−2が対面するようにして、両者を接合させ、透明樹脂層2−2上に、接着剤層4、光記録層1、透明樹脂層2及び表面に記録ピット及び/又はグルーブ(位置情報)7aが設けられた硬化転写層7からなるシート材料Bを設ける。このシート材料Bにおける硬化転写層7の表面に設けられた記録ピット及び/又はグルーブ上に、前記図5に示す剥離フィルム付き3層構造の積層シート40を用い、前記と同様の手順で順次積層を繰り返し、光記録層がn+1層積層された多層構造体B50が得られる。
前記基板8の厚さに特に制限はないが、通常5〜100μm程度、好ましくは5〜30μmである。また、前記基板8の素材としては、例えばポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリオレフィン、ガラス類などが挙げられる。
本発明はまた、前述した多層構造体(A、B)を有することを特徴とする多層光記録媒体をも提供する。
本発明の多層光記録媒体における情報の記録・再生方法については特に制限はなく、多層光記録媒体における情報の記録・再生方法として従来公知の方法の中から、適宜選択して用いることができる。
本発明の多層光記録媒体の形態については特に制限はなく、ディスク状、ロール状のいずれであってもよい。
なお、透明樹脂層のガラス転移温度及び破断伸度は、以下に示す方法に従って測定した。
(1)透明樹脂層のガラス転移温度
JIS K 7121に準拠し、入力補償示差走査熱量測定装置[パーキンエルマー社製、装置名「Pyrisl DSG」]を、用いて−80℃から250℃の温度範囲で、捕外ガラス転移開始温度を測定し、ガラス転移温度(Tg)とした。
(2)透明樹脂層の破断伸度
JIS K 7161及びJIS K 7127に準拠して測定した試料が降伏点を持たない場合には引張り破壊ひずみを、降伏点を持つ場合には引張り破壊呼びひずみを破断伸度とした。この際、試験片として実施例と同じ厚さのフィルムを用い、試験速度は50mm/minとした。
剥離シート付き多層光記録媒体用シート材料Aの作製
n−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体(組成質量比53/20/28)を固形分濃度で35質量%含む酢酸エチル/メチルエチルケトン溶液(質量比50/50)に、2−メタクリロキシエチルイソシアナートを、上記共重合体溶液の固形分100質量部に対して、33.7質量部(共重合体中の2−ヒドロキシエチルアクリレート成分100等量に対し90等量)、さらに触媒として、ジブチルスズジラウレートを0.1質量部添加し、窒素雰囲気下、室温で48時間反応させて、エネルギー線硬化性官能基であるメタクリロイル基が側鎖に導入された、エネルギー線硬化型共重合体(重量平均分子量78万)の溶液を得た。この溶液の固形分100質量部に対し、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[チバ・スパシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」]3質量部を加え、固形分濃度が35質量%になるようにメチルエチルケトンを加えエネルギー線硬化性転写層形成用塗工液(A1)を調製した。
次に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系剥離剤層を設けてなる剥離フィルム[リンテック社製、商品名「SP−PET382010」]の剥離剤層面に、前記エネルギー線硬化性転写層形成用塗工液(A1)をナイフコーターにて塗布し、90℃で1分間乾燥して厚さ20μmのエネルギー線硬化性転写層を形成し、未硬化転写層付き剥離フィルムを作製した。
一方、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にアルキド系剥離剤層を設けてなる剥離フィルム[リンテック社製、商品名「SP−PET38AL−5」]の剥離剤層面に、多光子吸収性化合物として、ジアリールエテン系フォトクロミック色素[東京化成工業社製、商品名「B1536」]1gとマトリクス材料としてポリメチルメタクリレート[アルドリッチ社製、重量平均分子量99.6万]1gを、トルエン25g中に溶解させて得られた光記録層形成材料塗工液(B1)をグラビアコーターにて塗布し90℃で1分間乾燥して、厚さ約1μmの光記録層を形成し、光記録層付き剥離フィルムを作製した。
次いで、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系剥離剤層を設けてなる剥離フィルム[リンテック社製、商品名「SP−PET501031」]の剥離剤層面に、n−ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(組成質量比97/3)を固形分で30質量%含む酢酸エチル溶液100質量部に、固形分濃度が5質量%のアルミキレート系架橋剤[綜研化学社製、商品名「M−5A」]を4質量部加えた塗工液(C1)を、ナイフコーターを用いて塗工し、90℃で1分間乾燥して厚さ10μmの感圧接着剤層付き剥離フィルムを作製した。
次に、前記感圧接着剤層付き剥離フィルムの感圧接着剤層面に、前記光記録層をその感圧接着剤層と接するように配置させ、二本のゴムローラーで圧着して貼合し、光記録層と感圧接着剤層が積層され、その両面に剥離フィルムを有するシートを得た。
次いで前記シートから、光記録層側の剥離フィルムを剥がしとり、前記エネルギー線硬化性転写層を、光記録層と接するように配置させ、二本のゴムローラーで圧着して貼合し、エネルギー線硬化性転写層、光記録層、感圧接着剤層が積層され、エネルギー線硬化性転写層と感圧接着剤層の外側に剥離フィルムを有する多層光記録媒体用シート材料Aを得た。
実施例2
剥離フィルム付き多層光記録媒体用シート材料Aの作製
n−ブチルアクリレート/アクリル酸共重合体(組成質量比90/10、重量平均分子量約50万)を固形分濃度で35質量%含む酢酸エチル溶液に、共重合体溶液の固形分100質量部に対して、エネルギー線硬化型重合性モノマーとして、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート[共栄社化学社製、商品名「ライトアクリレートDCP−A」]50質量部、ビスフェノールA骨格を有するエポキシアクリレート[共栄社化学社製、商品名「エポキシエステル3002A」]20質量部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン[チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、商品名「イルガキュア651」]5質量部、アルミキレート系架橋剤[綜研化学社製、商品名「M−5A」]2質量部(固形分として0.1質量部)とを加え、固形分濃度が35質量%になるようにメチルエチルケトンを加えエネルギー線硬化性転写層形成用塗工液(A2)を調製した。
次に、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系剥離剤層を設けてなる剥離フィルム[リンテック社製、商品名「SP−PET381031」]の剥離剤層面に、前記エネルギー線硬化性転写層形成用塗工液(A2)をナイフコーターにて塗布し、90℃で1分間乾燥して厚さ10μmのエネルギー線硬化性転写層を形成したのち、厚さ4.5μmのPETフィルム[東レ社製、商品名「ルミラーF57」破断伸度96%、ガラス転移温度69℃]をエネルギー線硬化性転写層と接するように配置させ、二本のゴムローラーで圧着して貼合し透明樹脂層及び未硬化転写層付き剥離フィルムを作製した。
次いで、上記透明樹脂層及び未硬化転写層付き剥離フィルムのPETフィルムのもう片方の面に、参考例1で調製した光記録層形成用塗工液(B1)を、マイヤーバーコーターを用いて塗工し、90℃で1分間乾燥して厚さ約1μmの光記録層を形成した。
一方、参考例1と同様にして厚さ10μmの感圧接着剤層を形成し、感圧接着剤層と、前記光記録層とが接するように配置させ、二本のゴムローラーで圧着して貼合し、エネルギー線硬化性転写層、透明樹脂層としてのPETフィルム、光記録層、感圧接着剤層が積層され、エネルギー線硬化性転写層と感圧接着剤層の外側に剥離フィルムを有する多層光記録媒体製造用シート材料Aを得た。
実施例3
剥離フィルム付き多層光記録媒体用シート材料Aの作製
ポリビニルアルコール樹脂(PVA)[日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセノールT−350」]の水溶液(固形分濃度10質量%)を、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にアルキド系剥離剤層を設けてなる剥離フィルム[リンテック社製、商品名「SP−PET38AL−5」]の剥離剤層面に、ブレードコーターを用いて塗工し、110℃で1分間乾燥して、厚さ約5μmのPVAからなる透明樹脂層を形成した(破断伸度3.5%、ガラス転移温度85℃)。
実施例2と同様にして、厚さ38μmの剥離フィルム上に、厚さ10μmのエネルギー線硬化性転写層を形成し、上記で形成したPVAからなる透明樹脂層とエネルギー線硬化性転写層を合わせ、二本のゴムローラーで圧着、貼合した。
次いで、透明樹脂層上の剥離フィルムを剥がしとり、むき出しとなった透明樹脂層面上に、参考例1で調製した光記録層形成用塗工液(B1)を、マイヤーバーコーターを用いて塗工し、90℃で1分間乾燥して厚さ約1μmの光記録層を形成した。
他方で、n−ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート共重合体(組成質量比97/3、重量平均分子量約80万)を固形分濃度で35質量%含むトルエン溶液に、ヘキサメチレンジイソシアナート(HMDI)系架橋剤[日本ポリウレタン工業社製、商品名「コロネートHL」]を共重合体溶液100質量部に対して、0.4質量部(固形分として0.3質量部)を添加し、感圧接着剤層形成用塗工液(C2)を調製した。この塗工液(C2)を、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系剥離剤層を設けてなる剥離フィルム[リンテック社製、商品名「SP−PET501031」]の剥離剤層面に、ナイフコーターを用いて塗工し、90℃で1分間乾燥して厚さ10μmの感圧接着剤層を形成した。上記で形成した光記録層と感圧接着剤層とを合わせ、二本のゴムローラーで圧着、貼合し、エネルギー線硬化性転写層、透明樹脂層としてのPVA、光記録層、感圧接着剤層が積層され、エネルギー線硬化性転写層と感圧接着剤層の外側に剥離フィルムを有する多層光記録媒体製造用シート材料Aを得た。
多層光記録媒体の作製
参考例1、実施例2及び3で作製した剥離フィルム付き多層光記録媒体用シート材料Aをそれぞれ用い、まず該材料の剥離フィルムIIを剥がして、感圧接着剤層を露出させ、直径12cmのポリカーボネート(PC)製ディスク基板に接するようにゴムローラーで圧着した。
次いで、剥離フィルムIを剥がして、エネルギー線硬化型転写層を露出させ、この転写層に、DVD−RWのグルーブパターンが刻まれたニッケル製スタンパの凹凸形状面が接するようにゴムローラーで圧着した。その後、フージョンHランプを光源とする紫外線照射装置[フュージョン社製無電極ランプ(Hバルブ使用)]を用いて、PCディスク基板面から照度300mW/cm2、光量300mJ/cm2の紫外線を照射し、エネルギー線硬化型転写層を硬化させた。ニッケル製スタンパを剥がし取り、硬化転写層の表面を、走査型プローブ顕微鏡(SPM)[セイコーインスツルメンツ社製、機種名「SPA−300HV、SPI3800N」]のDFMモードで観察し、グルーブ形状の深さDを計測し、同様にして計測したニッケル製スタンパのグルーブ形状高さHとの比(D/H)×100を求め、90%以上を○とし、90%未満を×とした。
次に、上記で形成されたDVD−RWのグルーブパターンが設けられた硬化転写層上に、上記と同様の操作を繰り返し行い、光記録層を5層有する多層光記録媒体をそれぞれ作製した。
この多層光記録媒体について、チタンサファイアフェムト秒レーザ(波長760nm)を光源とする光学系を用いて、共焦点光学系で光記録層の位置を確認しながら5層すべての層に順次レーザ光照射を行った。レーザ光の平均強度は40(mW)とし、照射時間は1/8(秒)とした。次いで共焦点レーザ走査顕微鏡[オリンパス社製、機種名「FV1000」]を用いて633nmにおける照射箇所の観察を行い、5層すべての層において記録マークがクロストークなく観察できたものを○とし、クロストークがあるものを×とした。
これらの結果を第1表に示す。
2、2−1、2−2、2−3、2−n 透明樹脂層
3 エネルギー線硬化型転写層
4、4−1、4−2、4−3、4−n 接着剤層
5 剥離フィルムI
6 剥離フィルムII
7、7−1、7−2、7−3、7−n 硬化転写層
7a 記録ピット及び/又はグルーブ
8 基板
9 剥離フィルム
10−a、10−b 剥離フィルム付きシート材料A
20 剥離フィルム付きシート材料B
30 多層構造体A
40 剥離フィルム付き3層構造の積層シート
50 多層構造体B
Claims (7)
- 複数の光記録層が積層された繰り返し構造を有する多層光記録媒体を作製するためのシート材料であって、接着剤層と、多光子吸収性材料を含む光記録層と、透明樹脂層とエネルギー線硬化型転写層とを有し、前記透明樹脂層が、厚さ1〜100μm、ガラス転移温度50℃以上及び破断伸度300%未満であって、光記録層とエネルギー線硬化型転写層の間に介在してなり、前記エネルギー線硬化型転写層と接着剤層とが、それぞれ最外側に配設されてなり、該エネルギー線硬化型転写層が、記録ピット及び/又はグルーブとして、表面に凹凸を有するスタンパの形状を転写するための層であることを特徴とする多層光記録媒体用シート材料。
- 接着剤層を構成する接着剤が、接着成分として(メタ)アクリル酸エステル系共重合体を含む請求項1に記載の多層光記録媒体用シート材料。
- 請求項1又は2に記載のシート材料において、エネルギー線硬化型転写層が、表面に凹凸を有するスタンパの形状を転写後、エネルギー線照射により硬化された層であることを特徴とする多層光記録媒体用シート材料。
- 請求項3に記載のシート材料が、その外側に配設された接着剤層を介して積層されてなることを特徴とする光記録媒体用多層構造体。
- 複数の光記録層が積層された繰り返し構造を有する光記録媒体用多層構造体であって、前記繰り返し構造が、多光子吸収性材料を含む光記録層と接着剤層とを少なくとも有するユニットの複数を、該接着剤層を介して積層してなる構造を有し、かつ前記ユニット間に、請求項3に記載のシート材料を一つ以上介在させたことを特徴とする光記録媒体用多層構造体。
- 請求項4又は5に記載の多層構造体を有することを特徴とする多層光記録媒体。
- 接着剤層、多光子吸収性材料を含む光記録層、透明樹脂層及びエネルギー線硬化型転写層とを有するシート材料を、厚さ1〜100μm、ガラス転移温度50℃以上及び破断伸度300%未満の透明樹脂層を、光記録層とエネルギー線硬化型転写層の間に介在させて積層し、該エネルギー線硬化型転写層及び前記接着剤層を、それぞれ最外側に配設して積層するシート材料の製造方法において、該エネルギー線硬化型転写層を、エネルギー線硬化型転写層の表面に凹凸を有するスタンパの形状を転写したのち、エネルギー線照射により硬化した後に積層することを特徴とする多層光記録媒体用シート材料の製造方法。
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