JP4159757B2 - 強度安定性および耐熱性に優れた銅合金 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気・電子分野や機械分野等の産業分野で広く利用される、機械的強度等の特性のばらつきが小さく、かつ歪み取り焼鈍等の熱処理を行った場合にも、強度の低下がほとんど生じることのない耐熱性に優れた銅合金に関するものである。尚、本発明の銅合金は、上述の通り様々な分野で使用されるものであるが、以下では、代表的な用途例として、半導体部品であるリードフレームに使用する場合を中心に説明を進める。
【0002】
【従来の技術】
近年、電子機器の軽薄短小化に伴い、前記電子機器を構成するリードフレーム、端子、コネクタ等に用いられる銅合金部品も、小型・軽量化が進められている。
【0003】
半導体リードフレーム用銅合金としては、従来よりFeを含有する銅合金が一般に用いられており、特にFe:2.1〜2.6%、P:0.015〜0.15%、Zn:0.05〜0.20%を含有する銅合金(CDA194合金)は、銅合金の中でも、強度、導電性および熱伝導性に優れていることから、国際標準合金として汎用されている。
【0004】
リードフレームの加工に際しては、上記の様な化学成分組成の銅合金板をスタンピングして多ピン形状とするのが一般的であるが、近年では、上述の様に電気・電子部品の軽薄短小化に対応すべく、原材料である銅合金板の薄肉化や多ピン化が進んでおり、上記スタンピング後の材料に歪み応力が残留してピンが不揃いになりやすい。従って通常は、スタンピングして得られた多ピン形状の銅合金板に、熱処理(歪み取り焼鈍)を施して歪みを除去することが行われている。しかしこの様な熱処理を行うと材料が軟化され易く、熱処理前の機械的強度を維持することが困難となる。また製造工程においては、生産性向上の観点から、さらに高温・短時間で前記熱処理を行うことが求められている。従って、高温での熱処理に耐えて強度を維持することのできる優れた耐熱性を確保することが強く要求されている。
【0005】
この様な課題に対し、これまでにFe,P,Zn等の主成分を規定したり、その他のSn,Mg,Ca等の微量添加元素を制御する技術が提案されてきた。しかしこの様な成分制御のみでは、上述した様な銅合金部品の小型・軽量化や強度等の特性確保に十分対応しきれないことから、近年では、銅合金の内部組織や析出物の析出状態を制御した技術が提案されつつある。
【0006】
例えば特開平10−324935号には、銅合金中の析出粒子の粒径100Å以上のものの粒子個数と100Å未満の粒子個数との比を規定することによって、強度と導電性を向上させた技術が開示されており、特開平11−80862号には、直径40nm以下の微細Fe粒子の体積分率を特定して耐熱性の改善を図る技術が開示されている。
【0007】
上記技術は、微細な析出物の粒径を制御するものであるが、この様な微細な析出物の粒径は、前記熱処理により析出物が固溶する場合もあり、敏感に変化し易いことから制御することが難しく、転位の移動・消滅およびピン止め効果にばらつきが生じるため、得られる銅合金の特性もばらつきやすいといった問題がある。
【0008】
また特開平4−272161号には、機械的強度等の特性ばらつきの安定化を図った銅合金材の製造方法について開示されているが、熱間圧延後に更に800〜930℃以上に加熱したり、酸化皮膜を除去する工程が必要であり、コストおよび生産性の観点から更なる検討を要するものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、安定した強度を確保することができ、かつ歪み取り焼鈍等の熱処理を行った場合にも、強度の低下が生じ難いといった優れた耐熱性を発揮する銅合金を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る強度安定性および耐熱性に優れた銅合金は、Fe:1.0〜3.0%(化学成分の場合は質量%を意味する)を満たすと共に、平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物が、体積分率で0.5%以上、10%以下であることを要旨とするものであり、更には、前記平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の個数が、1000個/mm2以上となるようにすることを好ましい形態とする。
【0011】
また、強度安定性や耐熱性等の特性をより高めるには、P:0.01〜0.1%、Zn:0.01〜1.0%を満たすようにし、更に、Sn、Al、Cr、Ti、Mg、MnおよびCaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を各々0.01%以上で且ついずれも0.5%以下の範囲内で含有させることが有効である。
【0012】
尚、上記「晶・析出物」とは、銅合金中に晶出あるいは析出する、晶出物または析出物、若しくはこれらの混合物をいうのであって、その化学成分組成は限定されるものではなく、Fe単体、Fe−P系のものの他、Fe−Ti系、Mn−P系、Cr−P系等の多種多様な化学成分組成の晶・析出物を指すものとする。また、上記「平均粒径」とは、各晶・析出物の重心直径の平均値をいうものとする。
【0013】
銅合金中の晶・析出物の形態が上記要件を満たすよう制御するにあたっては、熱間圧延工程における入り側の温度を900〜1000℃とし、最終パス出側温度を600〜850℃とし、入り側から最終パス出側までの平均降温速度を0.1〜5℃/秒とすることが大変有効である。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述した様な状況の下で、強度安定性に優れ、かつ歪み取り焼鈍等の熱処理を行ったとしても強度低下のほとんど生じない銅合金の実現を目指し、様々な角度から検討した。その結果、銅合金中のFe含有量を規定するとともに、特定サイズの晶・析出物の密度を適切に制御すれば、上記目的が見事に達成されることを見出し、本発明に想到したのである。
【0015】
まず、本発明にて銅合金中の晶・析出物を制御するにあたって、そのサイズおよび密度を規定した理由について詳述する。
【0016】
本発明では、平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物を対象とするが、この様な粒径サイズのものを対象とするのは、平均粒径の小さすぎる晶・析出物は、歪み取り焼鈍等の熱処理時に再固溶する場合があり制御が難しく、強度等特性の安定化を図るのに有効でないからである。また、10μm以下の晶・析出物を制御するのは、このサイズの晶・析出物が、歪み取り焼鈍等の熱処理時に結晶の回復や再結晶を抑制して、硬さの低減、即ち耐熱性の確保に有効に作用する他、加工性やワイヤボンディング性の確保にも有効だからである。
【0017】
この様な平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物が銅合金中に占める割合が少ないと、転位の移動・消滅ならびにピン止め効果が十分に発揮されないため再結晶の核生成・粒成長が進み、強度が低下するなど特性の経時劣化を招き易い。また、歪み取り焼鈍等の熱処理の際に生ずる結晶の回復および再結晶を有効に抑制することもできないので、耐熱性の確保が困難となる。従って本発明では、上記平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物を、体積分率で0.5%以上、好ましくは0.6%以上存在させることとした。
【0018】
しかし、銅合金中に占める上記平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の割合が大きすぎても、歪み取り焼鈍等の熱処理の際に再結晶の核となる起点が多数存在することとなり、再結晶を促進させて、却って熱処理後の硬さを低減させることとなる。従って、上記平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物は、体積分率で10%以下、好ましくは9%以下に抑えるのがよいのである。
【0019】
また、銅合金の強度安定性および耐熱性をより確実に発揮させるには、平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の粒子密度が、1000個/mm2以上となるように制御するのがよい。
【0020】
上記平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物は、化合物中に均一に分散している状態が好ましいが、均一に分散している状態であっても、上記サイズ粒子の密度がより密である方が、転位の移動・消滅およびピン止め効果が十分に発揮されて再結晶粒の成長を抑制することができ、また、歪み取り焼鈍等の熱処理を行った場合にも、回復および再結晶を十分に抑制することができるのである。従って本発明では、平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の粒子密度を1000個/mm2以上となるように制御することが好ましく、より好ましくは1100個/mm2以上である。
【0021】
晶・析出物の上記晶出・析出状態は、FE−SEMにて1000〜10000倍の倍率で観察し、得られた像を画像解析して調べたものである。晶・析出物の平均粒径は、各晶・析出物の重心直径の平均値を求めたものであり、平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の体積分率は、100μm×100μmの視野で測定し、また、上記平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の1mm2に占める個数は、100μm×100μmを1視野として10視野を観察し、そこから得られた個数を10倍して求めたものである。
【0022】
次に、本発明で銅合金中の化学成分を規定した理由について詳述する。
【0023】
Feは、銅合金中に析出して強度を向上させるのに必要な元素であり、この様な効果を有効に発揮させるには、1.0%以上、好ましくは1.2%以上の添加を要する。しかしながら過剰に含有させると、鋳塊製造時に粗大な晶・析出物を多量に生成して銅合金の延性を劣化させるとともに、導電性を低下させることになる。また、鋳塊から薄板への熱間圧延加工に際して行われる加熱あるいは中間焼鈍において、Feの巨大析出物が生成して熱間圧延加工性が劣化したり、Feの巨大晶・析出物が最終製品に残存して、歪み取り焼鈍後の強度低下、即ち耐熱性の劣化を招くこととなる。従って、Fe量は、3.0%以下、好ましくは2.8%以下に抑える必要がある。
【0024】
本発明では、PおよびZnについてもその含有量を規定することで、銅合金の強度安定性および耐熱性を更に高め、かつはんだ密着性等の特性を確保することができるのである。
【0025】
即ちPは、脱酸作用を有する他、Feと晶・析出物を形成して銅合金の析出強化を図るのに有効な元素であり、この様な効果を有効に発揮させるには、上述の如く適量のFeを存在させた上で、更にPを0.01%以上、好ましくは0.02%以上含有させるのがよいのである。しかしP量が多すぎても、Feの固溶限が低下して鋳塊製造時に粗大な晶・析出物が多量に生成し、焼鈍時の結晶回復の核が多数存在して回復が促進され、その結果、焼鈍後の強度が低下してしまうこととなる。また導電性の低下を引き起こす原因ともなる。従って、P量は0.1%以下に抑えることが好ましく、より好ましくは0.09%以下である。
【0026】
Znは、電子部品の接合に用いるすずやはんだの剥離を抑制するのに有効な元素であり、この様な効果を有効に発揮させるには、0.01%以上添加することが好ましい。より好ましくは0.1%以上である。しかし過剰に添加しても、その効果は飽和し、却って溶融すずやはんだの濡れ広がり性を劣化させるので、1.0%以下に抑えることが好ましく、より好ましくは0.9%以下である。
【0027】
またSn、Al、Cr、Ti、Mg、MnおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種を適量含有させることによって、次の様な改善効果を得ることも有効である。
【0028】
即ち、上記Sn、Al、Cr、Ti、Mg、MnおよびCaは、いずれも銅合金中に固溶して耐熱性に寄与する元素であり、焼鈍等の熱処理を行った場合にも、強度の低下を最低限に抑える効果を有する。しかし過剰に添加すると、鋳造時にマクロ偏析が生じて粗大な晶・析出物が生成し易くなる他、導電率の低下も引き起こし易くなる。従って、Sn、Al、Cr、Ti、Mg、MnおよびCaよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を各々0.01%以上で且ついずれも0.5%以下の範囲内で添加することが好ましく、より好ましい各々の下限は0.05%で、上限は0.45%である。
【0029】
その他、銅合金中に微量に含まれているPb、Ni、Si、Be、ZrおよびInを合計で0.1%未満に抑えることにより、上記の如く化学成分を規定することで得られる本発明の効果をより有効に発揮させることができるのである。
【0030】
尚、本発明の銅合金中に含まれる元素については、上記説明したものの他、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる不可避的不純物、更には、本発明の課題達成に悪影響を与えないS等の許容元素が含まれる場合も、本発明の技術的範囲に包含される。
【0031】
本発明にて晶・析出物が上述のような晶出・析出形態となるよう制御するには、製造にあたって下記の条件で熱間圧延を行うことが有効である。
【0032】
即ち、熱間圧延における入り側温度を900℃以上、好ましくは910℃以上とすることで、熱間圧延前の均熱による晶・析出物の再固溶を促進させ、鋳塊に表れた偏析の影響を消去して晶・析出物を良好に分散させることができるのである。しかし前記入り側温度が高すぎても、熱間圧延前の均熱中に粗大なFe−P系析出物が多量に生成してしまい、強度等の特性が劣化する原因となるので、熱間圧延における入り側温度は1000℃以下、好ましくは990℃以下とする。
【0033】
また、熱間圧延における最終パス出側温度を600℃以上とすることで、熱間圧延で生成した析出物が成長して粗大となるのを抑制できるだけでなく、焼鈍工程で生成する微細なFe系析出物量を維持して強度や耐熱性を確保することができるのであり、好ましくは610℃以上である。しかし前記最終パス出側温度が高すぎても、本発明で規定するサイズの晶・析出物の生成が不十分となり、強度等の特性の安定化が十分に図れないので、熱間圧延における最終パス出側温度は、850℃以下、好ましくは840℃以下とする。
【0034】
また、入り側から最終パス出側までの平均降温速度を0.1〜5℃/sに制御することによって、平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物量を適切に制御することができる。
【0035】
前記平均降温速度が遅すぎると、晶・析出物が粗大なサイズにまで成長してしまい、分散度も不均一となるため好ましくない。よって、入り側から最終パス出側までの平均降温速度は0.1℃/s以上、好ましくは0.2℃/s以上となるようにする。一方、前記平均降温速度が速すぎると熱間圧延時間が短くなり、本発明で規定するサイズの晶・析出物の生成が不十分となる。その結果、強度等の特性が安定しなくなるので、入り側から最終パス出側までの平均降温速度は、5℃/s以下、好ましくは4℃/s以下となるようにする。
【0036】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0037】
表1に示す化学成分の銅合金をそれぞれコアレス炉にて溶製した後、半連続鋳造法で造塊して厚さ50mm×幅200mm×長さ500mmの鋳塊を得た。各鋳塊を加熱後、表2に示す条件(入り側温度、出側温度、入り側から最終パス出側までの平均降温速度)で熱間圧延を行って厚さ16mmとし、面削後、冷間圧延および中間焼鈍を繰り返して厚さ約0.15mmの銅合金板を得た。
【0038】
尚、表2における入り側から最終パス出側までの平均降温速度は、▲1▼冷却水の水量/噴出速度のコントロール、▲2▼ロール速度制御、および▲3▼パス中における板厚変更などにより適宜調節したものである。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】
上記の様にして得られた銅合金板から任意に試験片を取り出して、導電率を測定した。導電率は、ミーリングにより短冊状の試験片を加工し、ダブルブリッジ式抵抗測定装置により測定した。
【0042】
また各銅合金板から、1試料につき4枚の50mm角板材を任意に採取し、硬さ、硬さのばらつき、焼鈍後の硬さ、および焼鈍後の硬さ低下量を求めた。
【0043】
上記硬さの測定は、前記4枚の50mm角板材それぞれについて、マイクロビッカース硬度計にて0.5kgの荷重を加えて行い、硬さのばらつきは、これら4枚の硬さ測定値間の最高値と最低値の差とした。また、上記4枚の50mm角板材を450℃で3分間加熱した後、再度、荷重0.5kgでマイクロビッカース硬さを測定し、前記加熱前の硬さとの差より硬さ低下量を求めた。
【0044】
平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の形態は、走査型電子顕微鏡で観察した像を用い、画像解析を行って評価した。詳細には、走査型電子顕微鏡として日立製作所製 S4500型FE−SEM(電界放出型走査電子顕微鏡 Field Emission Scanning Electron Microscopy)を用い、倍率1000〜20000倍で100μm×100μmの視野を観察して行った。
【0045】
尚、上記電界放出型走査電子顕微鏡では、反射電子による観察を行えば、本発明で対象とする0.05μmレベルの晶・析出物の存在状態も明瞭に把握することができるので好ましい。また、観察倍率を高めすぎると、微細な晶・析出物を良好に観察できるものの、銅合金中の晶・析出物の分布が疎である試料については晶出・析出形態を十分に把握することができず、一方、観察倍率が低すぎると、サブミクロンレベルの微細な化合物を検出することができない。従って、1000倍程度の倍率で数μmレベルの晶・析出物の体積分率を求め、10000倍程度の倍率でサブミクロンレベルの微細な晶・析出物の体積分率を求めるなど、異なる倍率での観察を併用することが望ましい。
【0046】
本発明の銅合金中に存在する晶・析出物は、上述の如く化学成分組成も様々で、またそのサイズも数nmレベルから数μmレベルと多様であるが、本願発明では、課題達成に有効な平均粒径が0.05μm以上で10μm以下のサイズの晶・析出物を対象に画像解析を行った。
【0047】
上記方法で観察された像の画像解析を行って、平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物のサイズ、体積分率および粒子密度を求めた。画像解析のソフトウェアには、MEDIA CYBERNETICS社製Image−Pro Plusを用いた。
【0048】
各晶・析出物のサイズ(平均粒径)は、晶・析出物の重心直径の平均値を求めたものである。また、平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の体積分率は、各々の50mm角板材にて1視野(100μm×100μm)に占める上記サイズの晶・析出物の面積率を求め、5視野以上の平均値を求めたものである。平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の粒子密度は、100μm×100μmを1視野とした場合の総計10視野にて上記サイズの晶・析出物の個数を求め、得られた値を10倍にして1mm2に存在する上記サイズの晶・析出物の個数を求めたものである。これらの測定結果を表3〜5に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
【表4】
【0051】
【表5】
【0052】
表3、表4および表5より、本発明の要件を満たすNo.1〜15では、硬さのばらつきが小さく安定した強度を確保することができている。また、歪み取り焼鈍等の熱処理を加えた場合にも、硬さの低下量が小さく耐熱性にも優れており、更には導電性も確保することができている。
【0053】
これに対しNo.16〜34では、本発明で規定するいずれかの要件を満たさないため、得られる強度にばらつきが生じたり、熱処理後に著しく強度が低下したり、または導電性の好ましくない結果となっている。
【0054】
即ちNo.16〜21は、製造条件が本発明で規定する要件を満たさないものであり、得られた銅合金は、硬さのばらつきが大きく、かつ焼鈍後の硬さも低下する結果となった。この様な結果となった原因として、No.16では、入り側温度が低すぎて過剰に晶・析出物が生成したこと、No.17では、入り側温度が高すぎたために、生成する晶・析出物の粒子密度が本発明範囲に満たなかったこと、No.18では、最終パス出側温度が低すぎたため、晶・析出物が粗大なサイズにまで成長して本発明で規定するサイズの晶・析出物の個数を確保することができなかったこと、No.19では、最終パス出側温度が高すぎて、本発明で規定する晶・析出物の個数を十分確保できなかったことが挙げられる。また、No.20では、熱間圧延の入り側から出側までの平均降温速度が速すぎたために、本発明で規定するサイズの晶・析出物の個数を十分確保することができなかったこと、No.21では、前記平均降温速度が遅すぎたために、晶・析出物が粗大なサイズにまで成長してしまい体積分率が規定範囲を超えたことが挙げられる。
【0055】
No.22は、Fe量が規定範囲を下回るものであるため、十分な晶・析出物を生成することができず、所望の強度を安定して得ることができなかった。No.23は、Fe量が多すぎたために過剰の晶・析出物が生成し、耐熱性および導電性に劣る結果となった。
【0056】
No.24は、P量が少なすぎたために十分な量の晶・析出物が生成されず、所望の強度を安定して得ることができなかった。No.25は、P量が多すぎたために耐熱性および導電性に劣る結果となった。また、No.26は、Zn量が少なすぎたために、はんだ付けした場合に剥離が生じる結果となった。また、No.27では、Zn量が多すぎたことから、却ってはんだ付け不良を示す結果となった。
【0057】
No.28〜34では、Sn、Al、Cr、Ti、Mg、Mn或いはCaの添加量が多すぎたことから、導電性が劣化する結果となった。
【0058】
尚、歪み取り焼鈍を行った後の硬さのばらつきは、焼鈍前の硬さのばらつきが小さければ、歪み取り焼鈍を行った後の硬さについてもばらつきが小さいことが分かる。
【0059】
【発明の効果】
本発明は、以上の様に構成されており、銅合金中に晶出・析出する晶・析出物のサイズおよび密度を本発明の如く制御することによって、安定した強度を確保することができ、かつ歪み取り焼鈍等の熱処理を行った場合にも、硬さの低下が生じにくい優れた耐熱性を発揮する銅合金を得ることができた。そして、この様な銅合金の実現によって、より軽量で品質に優れたリードフレーム等の電子部品を供給できることとなったのである。
Claims (4)
- Fe:1.0〜3.0%(化学成分の場合は質量%を意味する。以下同じ)、P:0.01〜0.1%、Zn:0.01〜1.0%を満たし、残部Cu及び不可避的不純物からなると共に、平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の銅合金に占める割合が体積分率で0.5%以上、10%以下であることを特徴とする強度安定性および耐熱性に優れた銅合金。
- 前記平均粒径が0.05μm以上で10μm以下の晶・析出物の個数が1000個/mm2以上である請求項1に記載の銅合金。
- 更にSn、Al、Cr、Ti、Mg、MnおよびCaよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を各々0.01%以上で且ついずれも0.5%以下の範囲内で含有する請求項1または2に記載の銅合金。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の銅合金を製造する方法であって、熱間圧延工程における入り側の温度を900〜1000℃とし、最終パス出側温度を600〜850℃とし、入り側から最終パス出側までの平均降温速度を0.1〜5℃/秒とすることを特徴とする強度安定性および耐熱性に優れた銅合金の製造方法。
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