JP4156098B2 - 金属積層膜の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、透過型液晶表示装置用透明電極、太陽電池用透明電極、電磁波シールド膜、あるいは反射型液晶表示装置用反射電極等に用いられる金属薄膜を形成する方法に係わり、その中でも特に、金属酸化物薄膜層にて銀系薄膜層を挟持した多層構成の金属薄膜を形成する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、建築物用の窓ガラスに形成する熱線反射膜として、金属酸化物薄膜にて銀薄膜を挟持した3層構成の熱線反射膜が知られており、金属酸化物の材質としては、酸化チタン(TiO2 )が一般的に用いられている。また、各金属層の膜厚は、TiO2 を40nm、銀薄膜を10nm程度とすることが一般的となっている。
【0003】
一方、液晶表示装置等に用いる透明電極として、ITO(酸化インジウムと酸化スズよりなる混合酸化物)を材質としたものが知られている。しかし、ITOは、電気的抵抗値が比較的高く、また光透過率は比較的低く、近年画質向上の要求が著しい表示装置に形成する透明電極の材料としては、必ずしも満足できるものではなかった。このため、上述した、金属酸化物薄膜にて銀薄膜を挟持した3層構成の金属積層膜にて電極を形成することが検討されるようになっている。この3層構成の金属積層膜で形成した電極は面積抵抗値が約3Ω/□程度のものが得られ、ITOで形成した場合の半分以下の低抵抗値が得られる。さらに、3層構成の金属積層膜で形成した電極は光透過率も高いことから、液晶表示装置に形成する透明電極の材料として適しているといえる。
【0004】
また、上記3層構成の金属積層膜は、金属酸化物薄膜とする材質を高屈折率のものとした場合、EMI(電磁波シールド)等への用途も可能であり、さらには、挟持される銀薄膜の光反射率が高く、また、ガラス等からなる基板への金属膜の密着性も高いことから、銀薄膜の膜厚を厚くすれば、反射型液晶表示装置用の反射電極への利用も可能である。
【0005】
しかし、上記3層構成の金属積層膜は劣化しやすく、耐久性が低いものであった。すなわち、使用する銀がマイグレーションを生じやすい材質であるためで、特に湿度が高い場所での使用や、金属積層膜を保持する基板中に存在するNa(ナトリウム)等のアルカリ金属により、銀は著しく劣化しやすく、銀の凝集や膜剥がれ、変色等を生じていた。
【0006】
このため、3層構成の金属積層膜の耐久性を向上させるため、銀(Ag)に金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)、Pb等の金属を添加し銀合金化することでマイグレーションを抑えることが検討されている。
【0007】
金属酸化物薄膜の材質としては、3層構成の金属積層膜を透明電極とする場合には一般的に、ITO、ZnO、SnO2 等のバンドギャップが広い低抵抗の半導体材料が用いられ、また、EMI等の用途に用いる場合には、TiO2 、ZnS、CeO2 、ZrO2 、Bi2 O3 等の高屈折率の誘電体が用いられている。
【0008】
さらに最近では、金属積層膜の耐久性を向上させるべく、金属酸化物薄膜を銀と固溶しない材質としたり、アモルファス化する試みも行われている。
また、建築物用の窓ガラスに形成する熱線反射膜では、熱線反射膜をフィルムやガラス基板等で封止し、外気と遮断させ耐久性を向上させることが構造上可能であり、実際に実用化されている。
【0009】
しかし、表示装置や太陽電池等ではその構造上、電極を構成する金属積層膜を完全に封止し外気と遮断するわけにはいかず、上述した材質の検討等により耐久性を向上させようとしたとはいえ、長期間外気にさらされたり、長期にわたり使用する場合、実用上十分な耐久性を確保できているとは言えない。例えば、銀の膜厚を薄くした上記3層構成の金属積層膜で形成した透明電極を用いた表示装置では、長期に渡り表示装置を使用した場合、銀の膜厚が薄いため銀の動きがより活性化し、銀の凝集や膜剥がれが発生し、透明電極としての機能が無くなり、画像表示を行えなくなる等の問題を生じていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した問題点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、各種の用途(例えば、透過型液晶表示装置用透明電極、太陽電池用透明電極、電磁波シールド膜、あるいは反射型液晶表示装置用反射電極等)に適用可能な十分な特性(低抵抗、高透過率もしくは高反射率等)を保持し、かつ、耐久性に優れた金属積層膜を形成する方法を提供しようとするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
先に本発明者らは、特開平8−262466号公報等で多層構成の透明電極を提案している。この透明電極は、低抵抗で高透過率であるため、液晶表示装置用電極、太陽電池用電極または、電磁波シールド膜等に好適に利用できるといえる。さらにまた、本発明者らは、特開平9−179116号公報、特開平9−305126号公報等で、反射型液晶表示装置用反射電極等に適用可能な耐久性を向上させた金属薄膜を提案している。
【0012】
しかし、上述した発明に係わる金属薄膜においても、長期に渡る使用や、使用条件等によっては、必ずしも耐久性は満足すべきものではなかった。そこで本発明者らは、上記課題を解決すべく耐久性の向上につきさらに鋭意検討を行ったものである。
その結果、本発明者らは、金属酸化物薄膜と銀系薄膜とを積層形成する際、金属酸化物薄膜と銀系薄膜との界面に光吸収層が形成され、この光吸収層が多層構成の金属積層膜の耐久性に影響を与えていることを見いだしたものである。
【0013】
すなわち、金属薄膜の形成にはスパッタリング法を用いることが一般的となっているが、スパッタリング法を用い金属酸化物薄膜および銀系薄膜を順次積層形成すると、銀系薄膜層の表面にダメージが発生し、浅い準位部(バンドギャップ部)が形成されやすいことを本発明者らは見いだした。
この浅い準位部(バンドギャップ部)が存在した場合、金属積層膜に光が入射した際に、この浅い準位部(バンドギャップ部)が可視域の光を吸収する。
すなわち、浅い準位部(バンドギャップ部)は光吸収層となるもので、この浅い準位部(バンドギャップ部)は銀の酸化還元反応(イオンマイグレーション)を発生させ、銀の凝集や膜剥がれ等の劣化現象を引き起こす要因となるものである。この劣化現象は、水分やNa(ナトリウム)等のアルカリ金属の存在によって、より進行しやすいといえる。
ちなみに、本発明者らが行った耐湿性試験では、浅い準位(光吸収層)の存在する金属積層膜を明るい場所と暗室とに置いた場合では、明るい場所に置いたほうが、2倍以上の速さで耐性劣化が進行したものである。
【0014】
図5および図6は、ダメージ(光吸収層)の有無による光吸収の相違を比較するためのグラフ図である。図5および図6の測定には、銀薄膜と金属酸化物とを積層した2層構成の金属積層膜を用いた。図5では、銀薄膜と金属酸化物との界面にダメージ(光吸収層)を有する試料Aを用い、図6では、銀薄膜と金属酸化物との界面にダメージ(光吸収層)の無い試料Bを用いた。また、ダメージの有無以外は、試料Aと試料Bとは、膜厚、組成等同様のものを用いた。図5および図6より分かるように、ダメージの発生した金属積層膜では、可視域で30%程度の光吸収があった。すなわち、ダメージの発生部位は光吸収層となっているといえる。
【0015】
本発明者らは、スパッタリング法を用い金属酸化物薄膜および銀系薄膜を順次積層形成する際、金属酸化物薄膜と銀系薄膜層との界面のダメージ(すなわち、銀系薄膜表面に生じる光吸収層)の発生を防止すれば、金属積層膜の耐久性が向上すると考えたものである。
【0016】
ダメージの発生原因につき検討を行った結果、スパッタリング法により金属薄膜を形成する際に発生するプラズマ中のイオンが影響し、その中でも特に、電子線の影響が大きいことを見いだした。また、ダメージは、銀系薄膜上に金属酸化物薄膜を積層形成する際に、金属酸化物薄膜が積層される銀系薄膜表面に発生しやすいことを見いだした。そこで本発明者らは、プラズマ中のイオンおよび電子線の影響を除いた金属積層膜の製造方法を見いだしこれを提案するものである。すなわち、請求項1に係わる発明は、スパッタリング法を用い、基板ホルダーを有するスパッタリング装置内に、基板ホルダーを介して載置した基板に、下側金属酸化物薄膜、銀系薄膜および、上側金属酸化物薄膜を順次、積層成膜した多層構成の金属積層膜を形成する方法であって、金属積層膜の支持体となる基板を基板ホルダーと電気的に絶縁する手段と、スパッタリング時にスパッタリングターゲットと基板との間に存在する電子線あるいはイオンを捕獲する手段とを設けたことで、銀系薄膜上に上側金属酸化物薄膜を成膜する際に、上側金属酸化物薄膜と接する銀系薄膜の表面における光吸収層の形成を防止したことを特徴とする金属積層膜の製造方法としたものである。
【0017】
ここで、スパッタリングターゲットと基板との間に存在する電子線あるいはイオンを捕獲する手段として、スパッタリングの際に使用されるスパッタリングターゲットの下に設置するマグネット(磁石)を、強磁場のものとすることが考えられ、また、スパッタリングターゲットと基板との間にアース電極を設置することが考えられる。さらには、スパッタリングターゲットと基板との間にプラス(+)の電位とした電極板を設け、この電極板により積極的に電子線やイオンを捕獲することであっても構わない。電極板の形状としては、基板への金属薄膜の形成を妨げないよう、金属板にスリット状、ドット状、またはメッシュ状の開口部を形成したものが考えられる。さらには、ダメージを低減するため、RF−DCスパッタリング法を用いても構わず、基板にプラズマ中のイオンをさらさぬよう、イオンビームスパッタリング法を用いることであっても構わない。また、これら設備や方法を2つ以上合わせて用いることであっても構わない。
【0018】
次いで、銀系薄膜を挟持する金属酸化物薄膜は、金属積層膜の用途に応じて透過率、反射率、あるいは電気導電性等、求められる光学的特性、電気特性が異なる。例えば、金属積層膜をEMI(電磁波シールド)等の用途として用いる場合、金属酸化物薄膜は可視域における光吸収の小さな高屈折率の酸化物で形成することが好ましい。また、金属積層膜を透明導電膜として液晶表示装置等に用いる場合、その材質はバンドギャップの広い低抵抗半導体とすることが好ましく、さらにまた、反射型液晶表示装置に反射電極として用いる場合は、低屈折率の材質が好ましい。
【0019】
また、金属酸化物薄膜は挟持する銀との固溶域の小さい元素もしくは、銀と固溶域を持たない元素とすることが好ましい。このような元素としては、Ti、Zr、Ta等の遷移金属、Ce等のランタノイド系金属、または、Bi、Ge、Si等の半金属等が挙げられる。
【0020】
すなわち請求項2に係わる発明は、下側金属酸化物薄膜、および、上側金属酸化物薄膜の材質を、Ti、Ce、Ta、Bi、Zr、In、Sn、Zn、Ga、Ge、Hf、Nb、La、Sb、W、Al、Si、およびMgの内から1種類以上選ばれた金属の酸化物とすることを特徴とする請求項1に記載の金属積層膜の製造方法としたものである。
【0021】
次いで、スパッタリング法にて金属薄膜を形成する際、スパッタリング雰囲気中にガス(気体)を導入することが一般的である。導入ガスはAr(アルゴン)を主成分とすることが一般的であるが、スパッタリング雰囲気中で欠損した酸素を補うため、金属酸化物薄膜を形成する際に少量の酸素を導入することがある。なお、導入する酸素の量は、成膜する金属薄膜の材質により異なる。
【0022】
本発明者らは、銀系薄膜上に金属酸化物薄膜を形成する際、導入ガス中に含まれる酸素が、上述した銀系薄膜表面に生じるダメージの生成に影響を与えることを見いだし、また、導入ガス中に含まれる酸素量が少ない程、ダメージの生成を低減できることを見いだした。そこで本発明者らは、導入ガス中に含める酸素量を少なくできる金属酸化物薄膜の材質につき検討したものであり、その結果、金属酸化物薄膜の材質を、酸化インジウムに少なくとも酸化セリウムを混合した混合酸化物とすることに想達したものである。
【0023】
すなわち、請求項3においては、上側金属酸化物薄膜の材質を、酸化インジウムに少なくとも酸化セリウムを混合した混合酸化物とすることを特徴とする請求項1または2に記載の金属積層膜の製造方法としたものである。酸化インジウムに少なくとも酸化セリウムを混合した混合酸化物にて金属酸化物薄膜を形成すると、導入ガス中に含めるべき酸素量は、ITOにて金属酸化物薄膜を形成したときの1/2程度の量で済むことになり、銀系薄膜表面に生じるダメージの形成を低減することが可能となる。また、金属酸化物薄膜の材質を、酸化インジウムに少なくとも酸化セリウムを混合した混合酸化物とすると、金属酸化物薄膜は結晶粒界の無いアモルファス状(非晶質)となり、金属酸化物薄膜と界面を接する粒界拡散を起こしやすい銀の移動を抑制させるため、金属積層膜の耐久性向上につながるといえる。
【0024】
次いで、金属酸化物薄膜で挟持される銀はマイグレーションを生じやすい材料といえる。例えば、銀を厚さ10nm程度の薄膜とすると、より活性化し劣化を生じやすい。
【0025】
このため、銀に少量の元素を添加した銀合金とすることがマイグレーションの発生防止に有効といえる。
銀への添加元素は、移動しやすい銀の動きを抑制する観点から、金(Au)等の重い元素が好ましく、銀合金にて金属積層膜を形成した際の導電性、透過率の観点からは、金もしくは銅(Cu)のいずれか一方を添加することが好ましい。また、銀への添加量を3at%(原子パーセント)より多くすると、金属積層膜を電極とした場合に抵抗値が上昇し、また、透過率も低下する等の理由のため、銀への元素の添加量は3at%(原子パーセント)以下とすることが好ましい。請求項4に係わる発明はこれに基づきなされたものである。すなわち、銀系薄膜の材質を、金もしくは銅の少なくとも一方を含有させた銀合金とし、含有量を3at%(原子パーセント)以下としたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の金属積層膜の製造方法としたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態の一例につき、図面に基づいて説明する。
<実施例1>
図3に示すように、本実施例1に係わる金属積層膜15は、SiO2 (酸化珪素)を表面コートしたソーダガラス基板10上に形成した。なお、本実施例1においては、ソーダガラス基板10から金属積層膜15へのNa(ナトリウム)金属等の析出防止を完全とするため、SiO2 (酸化珪素)を表面コートしたソーダガラス基板10上にさらに膜厚50nmのSiO2 (酸化珪素)層11をスパッタリング成膜している。
金属積層膜15は、金属酸化物薄膜にて銀系薄膜を挟持した3層構成であり、ソーダガラス基板10と対向する金属酸化物薄膜を下側金属酸化物薄膜12とし、銀系薄膜13上に形成する金属酸化物薄膜を上側金属酸化物薄膜14としている。
また、各薄膜の膜厚は、下側金属酸化物薄膜12を34nm、銀系薄膜13を15nm、上側金属酸化物薄膜14を34nmとした。
【0027】
金属酸化物薄膜(下側金属酸化物薄膜12および上側金属酸化物薄膜14)は、酸化インジウムと酸化セリウムからなる混合酸化物にて形成したものであり、混合酸化物の組成は、酸素原子を数に含めない金属原子のみのat%(原子パーセント)にて、酸化インジウムを66.7at%(原子パーセント)、酸化セリウムを33.3at%(原子パーセント)とした。次いで、銀系薄膜13は、銀に金および銅を添加した銀合金にて形成したもので、銀合金の組成は、銀98.5at%(原子パーセント)、金 1.0at%(原子パーセント)、銅 0.5at%(原子パーセント)とした。
【0028】
本実施例1に係わる金属積層膜15は、以下のように形成した。
すなわち、まず、SiO2 (酸化珪素)を表面コートしたソーダガラス基板10上に、RF(高周波)スパッタリング法にて膜厚50nmのSiO2 層11を成膜した。なお、SiO2 層11の成膜時、ガラス基板10は無加熱とした。次いで、ガラス基板10に温度 300℃のベーキングを行った。
上述したように、SiO2 層11は、ガラス基板10からのアルカリ金属の溶出を防止する膜となるものである。
【0029】
次いで、SiO2 層11を成膜したガラス基板10に脱脂、洗浄、乾燥処理を行った後、ガラス基板10をスパッタリング装置内に投入、載置した。
【0030】
スパッタリング装置内に載置されるガラス基板10は、図2に示すように、基板ホルダー31にて保持され、次いで図1に示すように、スパッタリング装置内で基板ホルダー31は基板トレー38にて保持させている。ここで、本発明の特徴の一つとして、ガラス基板10はスパッタリング装置内では電気的に他と絶縁するものである。そこで本実施例1においては、ガラス基板10を、導電性を持たないテフロン製の治具32(すなわち、絶縁体)を介して、基板ホルダー31に保持させている。
なお、テフロン製の治具32は真空中で気体(ガス)を発生させスパッタリング装置内を汚染する可能性があるため、テフロン製治具32の体積が極力最小となるよう、その形状を工夫した。
【0031】
また、図1に示すように、載置された基板10とスパッタリングターゲット33との間に、スパッタリング放電中に発生する二次電子、イオン等を捕獲するための電極板35を設置している。電極板35はメッシュ状とし、また、電極板35はアースを取っている。また、電極板35の設置位置は極力基板10に近づけた。さらに、メッシュの形状はスパッタリングターゲット33より放出され基板10に蒸着する金属蒸気の分布を変えないよう工夫したものであり、蒸着される金属膜の膜厚分布が良くなるようメッシュ開口部の形状を調整したものである。
なお、電極板35の材質は、Al、SUS、Cu等が考えられ、本実施例ではSUSを用いた。
【0032】
上記スパッタリング装置内にガラス基板10を投入、載置した後、スパッタリング装置内を真空排気した。スパッタリング装置内の真空度が5×10-4Paとなった段階でAr(アルゴン)ガスおよびO2 (酸素)ガスを導入し、スパッタリング装置内のガス圧を 0.4Paに調整した。このとき、導入ガス中のO2 (酸素)は、導入ガス中のO2 %で0.75%(例えば、導入Arガス 100SCCMに対し、導入O2 ガスを0.75SCCMの割合)とするよう調整した。
次いで、上記ガスを導入後、上記組成とした混合酸化物ターゲットに電圧を印加し、基板10に下側金属酸化物薄膜12を形成した。
【0033】
下側金属酸化物薄膜12の形成が終了した段階で放電およびガスの導入を停止し、スパッタリング装置内を真空度5×10-4Paまで排気した。
次いで、スパッタリング装置内にArガスを導入し、ガス圧を 0.4Paとなるよう調整し、上記組成の銀系ターゲットに電圧を印加し、銀系薄膜13を形成した。
【0034】
銀系薄膜13の形成が終了した段階で放電およびガスの導入を停止し、スパッタリング装置内を真空度5×10-4Paまで排気した。
次いで、Ar(アルゴン)ガスおよびO2 (酸素)ガスを導入し、スパッタリング装置内のガス圧を 0.4Paに調整した。このとき、導入ガス中のO2 (酸素)ガス量を0.75%とするよう調整した。
次いで、上記ガスを導入後、上記組成とした混合酸化物ターゲットに電圧を印加し、上側金属酸化物薄膜14を形成し、3層構成の金属積層膜15を形成した。
【0035】
なお、上述した成膜処理中、基板への加熱は行わず、成膜は真空を保ったまま連続して行った。
【0036】
本実施例1で得られた金属積層膜15の透過率は、可視域の波長範囲( 400〜 700nm)で85%以上となり、抵抗値も2.8Ω/□と、低抵抗であった。
また、銀系薄膜13と上側金属酸化物薄膜14との界面には、ダメージ(すなわち、銀系薄膜13表面に生じる光吸収層)の発生は認められなかった。
このため、本実施例1で得られた金属積層膜15においては、銀系薄膜13と上側金属酸化物薄膜14との界面における光吸収が無く、耐湿性においても、通常のスパッタリング処理(ガラス基板10を基板ホルダー31で直接に保持し、電極板35を設置せずに処理)で得られた金属積層膜の2倍以上の耐湿性が得られた。
【0037】
<実施例2>
本実施例2に係わる金属積層膜25は、図3に示すように、SiO2 (酸化珪素)を表面コートしたソーダガラス基板10上に形成した。なお、本実施例2においても、金属積層膜25へのNa(ナトリウム)金属等の析出防止を完全とするため、SiO2 (酸化珪素)を表面コートしたソーダガラス基板10上にさらに膜厚50nmのSiO2 層11をスパッタリング成膜している。
金属積層膜25は、金属酸化物薄膜にて銀系薄膜を挟持した3層構成であり、ソーダガラス基板10と対向する金属酸化物薄膜を下側金属酸化物薄膜22とし、銀系薄膜23上に形成する金属酸化物薄膜を上側金属酸化物薄膜24としている。
また、各薄膜の膜厚は、下側金属酸化物薄膜22を15nm、銀系薄膜23を 150nm、上側金属酸化物薄膜24を 8.5nmとした。
【0038】
また、金属酸化物薄膜(下側金属酸化物薄膜22および上側金属酸化物薄膜24)は、酸化インジウムと酸化セリウムからなる混合酸化物にて形成したものであり、混合酸化物の組成は、酸素原子を数に含めない金属原子のみのat%(原子パーセント)にて、酸化インジウムを66.7at%(原子パーセント)、酸化セリウムを33.3at%(原子パーセント)とした。次いで、銀系薄膜23は、銀に金および銅を添加した銀合金にて形成したもので、銀合金の組成は、銀98.5at%(原子パーセント)、金 1.0at%(原子パーセント)、銅 0.5at%(原子パーセント)とした。
【0039】
本実施例2に係わる金属積層膜25は、以下のように形成した。
すなわち、まず、SiO2 (酸化珪素)を表面コートしたソーダガラス基板10上に、雰囲気温度 350℃としたRF(高周波)スパッタリング法にて膜厚50nmのSiO2 層11を成膜した。上述したように、SiO2 層11は、ガラス基板10からのアルカリ金属の溶出を防止する膜となるものである。
【0040】
次いで、SiO2 層11を成膜したガラス基板10に脱脂、洗浄、乾燥処理を行った後、ガラス基板10をスパッタリング装置内に投入、載置した。
本実施例2で用いたスパッタリング装置内は水平方向に連続した3部屋に分割されている。後述する成膜中の汚染が隣接した部屋での処理に影響を及ぼさないよう、各部屋は所定の間隔をもって配置され、また、シールドおよび排気の工夫も行っている。また、ガラス基板10を投入後、スパッタリング装置内は真空排気し、真空度が5×10-4Paに達した段階でArガスを導入し、スパッタリング装置内が 0.4Paとなるよう調整した。
【0041】
スパッタリング装置内に載置されるガラス基板10は、図2に示すように、基板ホルダー31にて保持され、また図1に示すように、スパッタリング装置内で基板ホルダー31は搬送用トレー48にて保持される。搬送用トレー48はスパッタリング装置内を所定の速度で水平移動し、スパッタリング装置内の各部屋を移動する。その際、各部屋で順次、下側金属酸化物薄膜22、銀系薄膜23、上側金属酸化物薄膜24が形成される。
本実施例2においても、ガラス基板10は、導電性を持たないテフロン製の治具32を介して基板ホルダー31に保持させた。
なお、テフロン製の治具32は真空中で気体(ガス)を発生させスパッタリング装置内を汚染する可能性があるため、テフロン製の治具32の体積が極力最小となるよう、その形状を工夫した。
【0042】
スパッタリング装置内の第一部屋内を基板10が通過する際、第一部屋内に設置した上記組成の混合酸化物ターゲットに電圧を印加し、下側金属酸化物薄膜22を形成した。同様に第二部屋内を基板10が通過する際、上記組成とした銀系ターゲットに電圧を印加し銀系薄膜23を、また、第三部屋内を基板10が通過する際、上記組成とした混合酸化物ターゲットに電圧を印加し上側金属酸化物薄膜24を、順次成膜した。なお、金属酸化物薄膜を成膜する際、第一部屋内および第三部屋内には、導入ガス中のO2 %で0.75%(例えば、導入Arガス 100SCCMに対し、導入O2 ガスを0.75SCCMの割合)となるようO2 (酸素)ガスを導入した。なお、基板10への成膜中、基板10は無加熱とした。
【0043】
上述した積層成膜を行った後、基板10に 200℃、1時間のベークを行い金属積層膜25を形成した。
【0044】
ここで、本実施例2においては、図1で示したと同様に、スパッタリングターゲットと基板10との間に、スパッタリング放電中に発生する二次電子、イオン等を捕獲するための電極板を設置している。この電極板の位置は基板10になるべく近づけて設置したものであり、本実施例2においては、電極板にプラス30Vの電圧をかけた。 また、形成する金属酸化物薄膜の膜厚が非常に薄いため、電極板にはスリット状に絞り込んだ開口部を設け、10nm程度の成膜を可能とした。さらに、開口部にメッシュ状の金網を取り付け、二次電子の捕獲をより確実なものとした。
【0045】
本実施例2で得られた金属積層膜25の透過率は、可視域の波長範囲( 400〜 700nm)で88%以上となり、抵抗値も0.27Ω/□と、低抵抗であった。また、銀系薄膜23と上側金属酸化物薄膜24との界面には、ダメージ(すなわち、銀系薄膜表面に生じる光吸収層)の発生は認められなかった。
このため、本実施例2で得られた金属積層膜25においては、銀系薄膜23と上側金属酸化物薄膜24との界面における光吸収が無く、耐湿性においても、通常のスパッタリング処理(ガラス基板10を基板ホルダー31で直接に保持し、電極板を設置せずに処理)で得られた金属積層膜の2倍以上の耐湿性が得られた。
【0046】
以上、本発明の実施の形態例につき説明したが、本発明の実施の形態は上述した説明および図面に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形を行っても構わないことはいうまでもない。
例えば、上述した説明では、金属酸化物薄膜にて銀系薄膜を挟持した3層構成の金属積層膜の形成につき説明したが、金属酸化物薄膜と銀系薄膜との界面に銀の動きを抑制するための酸化物薄膜を別途形成する5層構成の金属積層膜の形成に本発明を用いても構わない。
【0047】
【発明の効果】
上述したように、液晶表示装置用透明電極、電磁波シールド膜、熱線反射膜、反射電極等に用いられていた、金属酸化物で銀薄膜を挟持した従来の多層構成の金属積層膜は、成膜中に銀薄膜表面にダメージ(光吸収層)が形成されており、耐久性の低いものであった。しかるに、本発明の形成方法で得られる多層構成の金属積層膜は、銀薄膜表面のダメージ(光吸収層)の形成を低減したものであり、ダメージ(光吸収層)が銀のマイグレーションを発生させ、銀の凝集や膜剥がれ等の劣化現象を引き起こすという問題を解決している。
すなわち、本発明の形成方法で得られた多層構成の金属積層膜は、各種用途に適合する優れた特性(低抵抗、高透過率もしくは高反射率等)を有したまま、耐久性が向上しているものであり、従来の多層構成の金属積層膜と比較して例えば2倍以上の耐久性を持つことが可能となる。
【0048】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の要部を示す断面説明図。
【図2】本発明に係わる基板ホルダーの一例の要部を示す断面説明図。
【図3】本発明で得られた金属積層膜の一例の要部を示す断面説明図。
【図4】本発明で得られた金属積層膜の他の例の要部を示す断面説明図。
【図5】ダメージを有する金属積層膜の光学特性の一例を示すグラフ図。
【図6】ダメージの無い金属積層膜の光学特性の一例を示すグラフ図。
【符号の説明】
10 基板
11 SiO2 層
12、22 下側金属酸化物薄膜
13、23 銀系薄膜
14、24 上側金属酸化物薄膜
15、25 金属積層膜
31 ホルダー
32 治具
33 ターゲット
35 電極板
38、48 トレー
Claims (4)
- スパッタリング法を用い、基板ホルダーを有するスパッタリング装置内に、基板ホルダーを介して載置した基板に、下側金属酸化物薄膜、銀系薄膜および、上側金属酸化物薄膜を順次、積層成膜した構成の金属積層膜を形成する方法であって、金属積層膜の支持体となる基板を基板ホルダーと電気的に絶縁する手段と、スパッタリング時にスパッタリングターゲットと基板との間に存在する電子線あるいはイオンを捕獲する手段とを設けたことで、銀系薄膜上に上側金属酸化物薄膜を成膜する際に、上側金属酸化物薄膜と接する銀系薄膜の表面における光吸収層の形成を防止したことを特徴とする金属積層膜の製造方法。
- 下側金属酸化物薄膜、および、上側金属酸化物薄膜の材質を、Ti、Ce、Ta、Bi、Zr、In、Sn、Zn、Ga、Ge、Hf、Nb、La、Sb、W、Al、Si、およびMgの内から1種類以上選ばれた金属の酸化物とすることを特徴とする請求項1に記載の金属積層膜の製造方法。
- 上側金属酸化物薄膜の材質を、酸化インジウムに少なくとも酸化セリウムを混合した混合酸化物とすることを特徴とする請求項1または2に記載の金属積層膜の製造方法。
- 銀系薄膜の材質を、金もしくは銅の少なくとも一方を含有させた銀合金とし、含有量を3at%(原子パーセント)以下としたことを特徴とする請求項1、2または3に記載の金属積層膜の製造方法。
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