JP4155614B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気テープ等の磁気記録媒体の製造方法に関し、表面性が良好で、短波長領域における出力に優れた磁気記録媒体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、磁気記録媒体には強磁性粉末を結合剤中に分散した磁性層を非磁性支持体上に設けた磁気記録媒体が広く用いられている。そして、機器の小型化や、画質の向上、長時間記録などの要求に応えるべく、磁気記録媒体は記録密度をより一層向上させることが望まれてきた。また、オーディオやビデオ等の用途にあっては、音質の向上及び画質を向上させるためにデジタル記録方式が実用化され、従来のアナログ記録方式に比べ短波長領域での出力が要求されてきている。例えば、「DDS−3」の最短記録波長は0.3μm程度である。塗布型の磁気記録媒体の高密度記録を可能としかつ短波長における電磁変換特性を向上させるために、強磁性粉末の微細化や磁性層の薄膜化、高配向化、充填性の改良などにより磁気特性を向上させることや、ヘッドとのスペーシングロスを小さくするため表面性を上げることなどの方法が取られてきた。
【0003】
しかしながら、表面性向上の手段としてのカレンダーによる表面処理にも限界がある。磁性層表面を過度に高温、高圧の条件でカレンダー処理すると、磁性層がダメージを受けたり、磁性層表面の研磨剤等が磁性層内に入り込んで有効に機能しなくなり、走行不良や、耐久性を著しく悪化させてしまうなど信頼性に問題があり、その対策としての研磨材等の非磁性無機化合物を増量すると磁気特性が低下する要因となり、好ましくない。
【0004】
一方薄膜磁性層の製造方法として特開平3−8471には、“非ニユートン流体である複数の有機溶剤系の塗布液をエクストルージョン型の塗布へッドの複数のスリットから押し出して、直ちに連続的に走行する非磁性支持体上に塗り付ける磁気記録媒体の製造方法において、前記複数の塗布液における隣接する塗布液の前記スリット内における粘度差を、50cp以下に設定することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法”が示されており、多層同時塗布において色むらや縦すじ等が発生しない磁気記録媒体が得られるとしている。
又、特開平4−271016には、複数の有機溶剤系の分散液をエクストルージョン型の塗布ヘッドを用いて重ねあわせるように同時に多層塗布する磁気記録媒体の製造方法において、各液間のレイノルズ数と最上層の液の降伏応力を規定することにより、各層間の界面の乱れが生じず、色むらや縦すじ等のない磁気記録媒体の塗布方法が示されている。
しかし、レイノルズ数や粘度差が限られた範囲に入るように分散液を調合しなければならないため、分散液に使用できる材料や溶剤の配合量に制約が大きく、材料種や配合量の選択の幅が小さいという欠点があった。また得られた塗布後の磁気記録媒体の表面平滑性が不十分であり、カレンダー処理を磁性面に施しても平面性が良くならないために電磁変換特性が劣るという問題があった。
【0005】
又、特開平9−81935には、“搬送されるフィルム基材に対向して配置された押し出しダイから磁性塗料を押し出して該磁性塗料をフィルム基材に塗布するようにした磁気テープの製造方法において、前記押し出しダイの前記フィルム基材に対向する面にフィルム基材と平行な平坦面を形成し、フィルム基材に塗布された磁性塗料を前記平坦面に接触させて平坦面とフィルム基材との間で磁性塗料にせん断力を付与するようにしたことを特徴とする磁気テープの製造方法" が示されており、せん断速度を5sec-1 以上とすることにより、フィルム基材に接着性のプライマーコートを施すことなく磁性層とフィルム基材の接着力を向上できることが示されている。しかし、ここで検討されているせん断速度は6sec-1 以下と極めて低いものであり、実用的ではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は上記のように耐久性や磁気特性を損なうことなく、表面性が良好で、短波長領域での出力が優れた磁気記録媒体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、強磁性粉末を含有する磁性層の厚さが0.15〜0.3μmである塗布型磁気記録媒体の製造方法において、非磁性の中間層用塗料を支持体の上に塗布し、乾燥し、その上に強磁性粉末を含有する磁性塗料を236,740〜324,250sec-1のせん断速度で、この磁性塗料のウエット膜厚が2.57〜3.52μmとなるように塗布し、乾燥し、カレンダー処理することを特徴とする。本発明者らは本発明が電磁変換特性の良好な磁気記録媒体の製造方法であることを見いだした。即ち中間層用塗料を支持体の上に塗布し、乾燥し、磁性層塗布時のせん断速度を236,740〜324,250sec-1にすることによって、塗布後の磁性層の表面粗さを大幅に改善できる。磁性層を塗布乾燥後カレンダー表面加工を施す場合には、塗布後の磁性層の粗さとカレンダー表面加工後の磁性層の粗さはほぼ比例関係にあり、磁性層の塗布粗さを改善することにより、その他の表面加工条件を変えることなく磁性層の表面性が向上する。磁性層の表面の変形量が小さいために耐久性を損なわずに電磁変換特性を向上することが可能となり、上述の目的を達することができた。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の塗布方法は押し出しノズル塗布法、リバースロール塗布法、グラビアロール塗布法等に利用できるが、特に薄膜塗布時の塗膜厚制御に優れる押し出しノズル塗布法が好ましい。押し出しノズル塗布法とは、図1に示すように、搬送される支持体に対向して配置された押出ノズルから磁性塗料を押し出して支持体に塗布するものである。
【0009】
本発明の実施に用いる磁気記録媒体の磁性塗料、中間層用塗料、非磁性支持体、バックコート塗料の材料及びその製法について以下に記す。
本発明で使用する強磁性粉末としては、金属合金微粉末又は六方晶系板状微粉末を用いることが好ましい。
金属合金微粉末としては、Hcが1500〜3000Oe、σsが120〜160emu/g、平均長軸径が0.05〜0.2μm、平均短軸径が10〜20nm、アスペクト比が1. 2〜20であることが好ましい。また、作製した媒体のHcは1500〜3000Oeが好ましい。添加元素としては目的に応じて、Ni、Zn、Co、Al、Si、Y、その他希土類などを添加しても良い。
六方晶形板状微粉末としては、Hcが1000〜2000Oe、σsが50〜70emu/g、平均板粒径が30〜80nm、板比が3〜7であることが好ましい。また、作製した媒体のHcは1200〜2200Oeが好ましい。添加元素としては、目的に応じて、Ni、Co、Ti、Zn、Sn、その他希土類などを添加しても良い。
【0010】
さらにこれら強磁性合金微粉末は、粒子表面に酸化被膜あるいは、一部炭化ないし窒化された強磁性合金微粉末、又は表面に炭素質被膜がなされた強磁性合金微粉末であってもよい。
上記強磁性合金微粉末については、少量の水酸化物又は酸化物を含んでもよい。これらの強磁性合金微粉末をBET法による比表面積で表せば40〜80m2 /gであり、好ましくは45〜65m2 /gであり、40m2 /g未満ではノイズが高くなり、80m2 /gを越えると表面性が得にくく好ましくない。
このような強磁性粉末は、通常バインダー100wt%に対し100〜2000wt%程度含有され、磁性層中の強磁性粉末の含有量は、全体の50〜95wt%、好ましくは55〜90wt%とし、強磁性粉末の含有量が多すぎると磁性層中の樹脂を始めとする添加物の量が相対的に減少するため、磁性層の耐久性が低下する等の欠点が生じやすくなり、少なすぎると高い再生出力を得られない。磁性層に添加する前記無機微粉末は、強磁性粉末に対して、重量比率で0.1〜20wt%の範囲で用いることが好ましい。これらは必要に応じて、媒体に要求される耐久性とヘッド摩耗および最短記録波長における出力のバランスに応じて適宜選択すれば良く、単一系でも混合系でも良く、単独で粒度分布等を選択することもできる。
また以下に述べる中間層と同様に潤滑剤、帯電防止剤、等従来公知の材料を用いることが可能である。
【0011】
本発明に用いる中間層は、結合剤と非磁性の無機顔料を含ませることにより構成される。この無機顔料は公知のものから必要に応じて含有量、形状、サイズ、材質、表面処理などを選択することが出来るが、特に無機微粉末であることが好ましい。本発明の中間層において、無機微粉末の含有量は特に規定することなく選択できる。形状については粒状、針状、紡錘状、板状など特に規定無く選択できるが、粒状もしくは針状が好ましい。
その無機微粉末サイズとしては、粒状であれば平均粒径0. 01〜0. 05μmが好ましく、0. 02〜0. 04μmがより好ましい。針状であれば、平均長軸長が0.05〜0.30μmが好ましく、0.10〜0.20μmがより好ましい。粒状では0.01μmより、また針状では0.05μmより小さいと比表面積が増え樹脂使用量が増えるため、分散しにくくなる傾向にある。一方、粒状では0.05μmより、また針状では0.30μmより大きいと、中間層の表面平滑性が悪くなる傾向にある。また、粒状はアスペクト比が1.5以下が好ましく、針状はアスペクト比が2.4〜10が好ましい。
【0012】
具体的には、α酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、αアルミナ、酸化クロム、炭化ケイ素、酸化珪素、カーボンブラック等が挙げられる。これらの無機微粉末は中間層以外にも、磁性層、バックコート層の要求性能に合わせて適宜組合せて用いることができる。また無機微粉末は、粒径分布の整っている合成物であることが好ましい。中間層に用いる場合には材質として、α酸化鉄もしくは酸化チタンであることが好ましく、特にα酸化鉄がより好ましい。表面処理については、例えば酸、塩基吸着量を調整したり、二次粒子をほぐしやすくするなど、必要に応じて無機、有機を問わず行うことができる。
【0013】
本発明の中間層には必要に応じて潤滑剤を含有することが好ましい。潤滑剤は、飽和、不飽和に関わらず、脂肪酸あるいはエステル、糖類など公知のものを単体で、あるいは2種以上混合して用いてもよいが、融点の異なる脂肪酸やエステルを2種以上混合し用いることが好ましい。これは、磁気記録媒体の使用される、あらゆる温度環境に応じた潤滑剤を、媒体表面に持続して供給する必要があるからである。具体的には、脂肪酸としてステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、エルカ酸などの飽和直鎖や、イソセチル酸、イソステアリン酸などの飽和で側鎖のあるもの、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などの不飽和脂肪酸など、適宜使用できる。エステルとしてはブチルステアレート、ブチルパルミテートなどの直鎖の飽和脂肪酸エステル、イソセチルステアレート、イソステアリルステアレートなどの側鎖のある飽和脂肪酸エステル、イソステアリルオレエートなどの不飽和脂肪酸エステル、オレイルステアレートなどの不飽和アルコールの飽和脂肪酸エステル、オレイルオレエートなどの不飽和脂肪酸と不飽和アルコールのエステル、エチレングリコールジステアレートなどの2価アルコールのエステル、エチレングリコールモノオレエート、エチレングリコールジオレエート、ネオペンチルグリコールジオレエートなどの2価アルコールと不飽和脂肪酸のエステル、またソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエートなどの糖類と飽和及び不飽和脂肪酸とのエステルなどがある。
中間層の潤滑剤の含有量は、目的に応じ適宜調整すればよいが、無機微粉末とカーボンブラックを加えた合計重量部に対し、1〜20重量%が好ましい。
中間層の表面粗さは、良好である必要がある。中間層を設けた直後(加工処理無し)でのRaは15nm以下が好ましく、11nm以下がより好ましく、10nm以下が最も好ましい。中間層をカレンダーなどで加工した後でのRaは6nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、4. 5nm以下が最も好ましい。
【0014】
本発明の磁性層、中間層、バックコート層に使用される結合剤としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性ないし反応型樹脂、電子線感応型変性樹脂等が用いられ、その組み合わせは媒体の特性、工程条件に合わせて適宜選択使用される。
熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル系共重合体およびポリウレタン樹脂の他に、例えば(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン系共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルブチラール、ニトロセルロース、スチレン−ブタジエン系共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、アセタール樹脂、エポキシ系樹脂、フェノキシ系樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリカプロラクトン等の多官能性ポリエーテル類、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、ポリブタジエンエラストマー、塩化ゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、エポキシ変性ゴム等が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、縮重合するフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン硬化型樹脂、尿素樹脂、ブチラール樹脂、ポリマール樹脂、メラニン樹脂、アルキッド樹脂、シリコーン樹脂、アクリル系反応樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0015】
上記樹脂のなかでも、末端および/又は側鎖に水酸基を有するものが反応型樹脂として、ポリイソシアネートを使用した架橋や電子線架橋変性等が容易に利用できるため好適である。さらに末端や側鎖に極性基として−COOH、−SO3 M、−OSO3 M、−OPO3 X、−PO3 X、−PO2 X、−N+ R3 Cl- 、−NR2 等をはじめとする酸性極性基、塩基性極性基等を含有していてもよく、これらの含有は分散性の向上に好適である。これらは一種単独で使用しても、二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのうちで、好ましく用いられるものとしては、以下に示すような塩化ビニル系共重合体およびポリウレタン樹脂の組み合わせである。本発明に使用される樹脂の例としては、塩化ビニル系共重合体が挙げられ、詳しくは、塩化ビニル含有量60〜95wt%、とくに60〜90wt%のものが好ましく、その平均重合度は100〜500程度であることが好ましい。このような塩化ビニル系樹脂と併用するポリウレタン樹脂は、耐摩耗性および支持体への接着性が良い点でとくに有効である。なお、これらの樹脂に加えて、公知の各種樹脂が含有されていてもよい。
【0016】
さらに上記樹脂に公知の手法により、(メタ)アクリル系二重結合を導入して電子線感応変性を行ったものを使用することも可能である。またその電子線官能基含有量は、製造時の安定性、電子線硬化性等から水酸基成分中1〜40モル%、好ましくは10〜30モル%であり、とくに塩化ビニル系共重合体の場合1分子あたり1〜20個、好ましくは2〜10個の官能基となるようにモノマーを反応させると分散性、硬化性ともに優れた電子線硬化性樹脂を得ることができる。本発明に用いられる支持体は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリオレフイン類、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォンセルローストリアセテート、ポリカーボネート等の公知のフイルムを使用することができる。これら支持体の中心線表面粗さは0.03μm以下、好ましくは0.02μm以下、さらに好ましくは0.01μm以下のものを使用する必要があり、これらの支持体は単に中心線平均表面粗さが小さいだけではなく、0.5μm以上の粗大突起がないことが好ましい。特に支持体上に中間層を設けずに磁性層を塗布する場合は、できるだけ表面性の良い支持体を用いることが好ましい。
さらに、非磁性支持体の磁性層が設けられていない面(裏面)には、磁気記録媒体の走行性の向上、帯電防止および転写防止等を目的として、公知のバックコート層を適宜設けることが好ましい。
【0017】
次に、本発明の磁気記録媒体の製造工程について説明する。
まず、本発明の磁気記録媒体の磁性塗料を製造する工程は、少なくとも混練工程、分散工程、およびこれらの工程の前後に必要に応じて設けた混合工程からなる。個々の工程はそれぞれ2段以上に分れていてもよく、また原料を2つ以上の工程で分割して添加してもかまわない。
磁性塗料の混練にあたっては、各種の混練機を使用することができる。この混練機としては、例えば二本ロールミル、三本ロールミル、オープンニーダー、連続式二軸混練機、連続式一軸混練機、加圧ニーダー、プラネタリーミキサー等が挙げられ;高速撹拌機としては高速インペラー分散機、高速ストーンミル、ディスパー、高速ミキサー、ホモジナイザー等が挙げられ、メディア撹拌型ミルとしてはボールミル、ペプルミル、コボルミル、サンドグラインダー、ピン型ミル、ウルトラファインミル、アトライター、バスケットミル等が挙げられる。
【0018】
連続ニーダー又は加圧ニーダーを用いる場合は強磁性粉末と結合剤のすべて又はその一部(ただし全結合剤の30wt%以上が好ましい)を強磁性粉末100wt%に対し結合剤15〜500wt%の範囲で配合し混練処理される。
また、各工程において使用可能な塗料の分散においては高比重の分散メディアを用いることが望ましく、ジルコニア等のセラミック系メディアが好適である。
中間層の塗設は、グラビアロール、リバースロールなどのロールコーターや、エクストルージョン型などの押し出しノズルコーターなど、特に制限はない。磁性層の塗設は、エクストルージョン型等の押し出しノズルコーターが好ましい。これは、特に湿潤状態にて同時あるいは逐次塗布をする際は必須となる。中間層及び磁性層の塗設方法は、中間層を塗布乾燥後、必要なら加工後、磁性層を重ねて塗布させる方法(逐次塗布)、あるいは中間層を塗布後、まだ湿潤状態のうちに重ねて磁性層を塗布する方法(湿潤逐次塗布)、また中間層と磁性層を同時に重ねて塗布する方法(湿潤同時塗布)などがあるが、特に制限なく目的に応じて任意の方法を行うことができ、中間層塗料と磁性塗料の結合剤の相性や使用している溶剤の種類と量、また塗料粘度などの調整の必要がなく表面粗度の調整の出来る逐次塗布が好ましい。
【0019】
このようにして塗設後処理の行われた磁性塗料は、通常、乾燥炉等の内部に設けられた熱風、遠赤外線、電気ヒーター、真空装置等の公知の乾燥および蒸発手段によって、又は紫外線ランプや放射線照射装置等の公知の硬化装置によって乾燥・固定される。
乾燥温度は、室温から300℃程度までの範囲で、非磁性支持体の耐熱性や溶剤種、濃度等によって適宜選定すればよく、また乾燥炉内に温度勾配をもたせてもよく、乾燥炉内のガス雰囲気は、一般の空気又は不活性ガス等を用いればよい。
紫外線ランプや放射線照射装置によって乾燥を行うときは、硬化反応が起こるので後加工を考慮した場合は、可能な限り他の乾燥手段を利用する方がよい。
また、溶剤を含んだままで紫外線や放射線を照射することは、発火や発煙を伴うことがあるので、この場合にも可能な限り他の乾燥手段を併用することが好ましい。
このようにして磁性層を乾燥した後に、必要に応じて表面平滑化処理としてカレンダ処理を行うが、カレンダ処理ロールとしてはエポキシ、ポリエステル、ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の耐熱性のあるプラスチックロール(カーボン、金属やその他の無機化合物を練り込んであるものでもよい)と金属ロールの組合わせ(3ないし7段の組合わせ)、又は、金属ロール同志で処理することもでき、その処理温度は、好ましくは70℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、また線圧力は好ましくは200kg/cm、さらに好ましくは300kg/cm以上であり、速度は20m/分〜700m/分の範囲である。
カレンダー処理後、磁性層、バックコート層、中間層の硬化を促進するために、40℃〜80℃の熱硬化処理および/又は電子線照射処理を施してもかまわない。次いで、所定の形状にしその後は、必要に応じてバーニッシュ処理又はブレード処理を行った後スリッティングを行い、磁気記録媒体を作製する。
【0020】
本発明のせん断速度は次式によって算出される(図1)。
せん断速度 τ = V/2hw(sec-1)
ここで、Vは塗布速度(即ち支持体走行速度)を表わし,hwはウェット膜厚を表わす。ノズルリップと支持体との間の磁性塗料による間隙は2hwにて近似される。ウェット膜厚は下式で算出できる。
hw = Q/(d x W x V)
ここで、Qは単位時間あたりの送液量(塗料重量)を表わし、dは塗料の比重を表わし、Wは塗布幅を表わす。
せん断速度はウェット膜厚と塗布速度に依存し、ウェット膜厚は塗布された塗料体積によって決まる。ここで磁性層や中間層をウェットオンウェット法で複数層設ける場合には、ここでいうウェット膜厚はこれら複数層の合計のウェット膜厚を意味する。また塗料体積中の固形分体積が乾燥後膜厚を決定する。ここで用いる磁性層膜厚とは表面加工(カレンダー)後のテープの磁性層膜厚をいう。
【0021】
本発明は、塗料の構造性発現によるレベリング不良で塗布表面粗さが悪化するのを抑制するために、最も効果的な塗布時にせん断力を加えるようにしたものである。そのせん断速度が236,740sec-1未満であると効果が少ないが、それ以上のせん断速度では塗料の構造性発現が顕著に抑制されるのみならず、塗布直前までに発生した塗料の構造性(いわゆる塗料の凝縮)が解きほぐされ、塗料の粘性が低下することにより塗布後のレベリングが良好となり、非常に均一な塗布表面が得られる。また、塗布時のみでなく、塗布直前まで塗料の構造性発現を抑制するような手段、例えば塗料に超音波を照射する方法を組み合わせることはさらに効果的である。塗布速度としては30〜600m/分、好ましくは80〜400m/分で塗布するのが良い。この値が30m/分未満となると所望のせん断速度を得ることが困難となり、600m/分を越えると、磁性塗料の均一塗布が困難となる。
【0022】
ウエット膜厚としては、1.0〜12.0μmが好ましく、2.0〜10.0μmがより好ましい。ウエット膜厚が12.0μmを越えると本発明の範囲のせん断であっても塗布液内での速度分布が著しく不均一となり、磁性層表面付近でのせん断による効果が出にくくなる。又、1.0μm以下では均一なウエット厚の塗布が困難となる。塗布された後は、乾燥、カレンダー工程を経て磁性層が形成される。
磁性層の厚みとしては、0.05〜1.00μm、好ましくは0.10〜0.75μm、より好ましくは0.10〜0.30μmとされる。このような磁性層厚みは高密度デジタル媒体を想定した場合、媒体に要求される高周波数(短波長)での電磁変換特性を考慮して設定される。デジタル媒体で記録に必要最適な膜厚は通常1.0μm以下であり、これより厚いと反磁界の影響が大きくなり若干の出力低下が起こる。また、0.05μm以下では使用される記録波長に対して十分な塗膜厚でない。磁性層が0.2μm以下の薄膜となると塗料中の顔料サイズ(特に研磨材のサイズ)が影響してくるので、その影響低減のために中間層の上に磁性層をウェットオンドライ方式で設けてもよい。また、本発明は磁性層単層塗布及びウェットオンドライ塗布に限定されるものでなく、トータルのウェット膜厚と塗布速度に依存したもので、上記の150,000(sec−1)以上のせん断速度であれば、例えば1.0μm以下の磁性層と任意厚みの中間層とのウェットオンウェット方式でもよい。
【0023】
中心線平均表面粗度Raは、Taylor−Hobson Talystep測定器を用いてJIS−B−0601法に準じて測定した。表面粗度Raは塗布後、加工後共に小さい値ほど好ましい。
短波長領域の出力を、Panasonic製デッキAJ−D750及びPanasonic製リファレンステープAJ−P63MPを用いて測定した。その測定周波数は21MHz、記録波長は0.5μmである。テープ出力は上記測定周波数及び記録波長の単一波形を記録し、その再生出力をリファレンステープと比較し、dBで表示した。各々のリファレンステープに比べ正の値が好ましい。
【0024】
【実施例】
実施例1
磁気記録媒体を作成するために以下の磁性塗料用組成物を作成した。
強磁性金属微粉末(同和鉱業(株)製Co30%、Y含有紡錘状Fe/Co合金、長軸長0.10μm, σs140/emugHc,2400Oe)100重量部
塩化ビニル系共重合体(日本ゼオン:MR110) 7.5重量部
スルホン酸塩含有ポリエステルポリウレタン
(東洋紡:UR8200) 5重量部
燐酸エステル化合物(東邦化学ホスファノールRE610) 3重量部
αアルミナ(住友化学HIT82) 3重量部
ステアリン酸 1.2重量部
ブチルステアレート 1重量部
メチルエチルケトン 94重量部
トルエン 94重量部
シクロヘキサノン 94重量部
【0025】
上記磁性層用組成物をニーダーで混練した後、セラミックビーズを充填したサンドグラインダーミルで分散した。得られた磁性塗料に硬化剤( 日本ポリウレタン:コロネートL)を3重量部加え、フィルター(ロキテクノ:HT10)を使用して濾過したものを磁性塗料とした。この磁性塗料の粘度はB型粘度計V20で測定すると、3000cpであった。その後前記磁性層塗料を塗布直前に超音波分散機で均一に分散した状態に再分散し、フィルター(ロキテクノ:HT10)をかけ、表面粗さが4nmの支持体(帝人製ベース7AJ696(6.5μm鏡面ベースPET))に押し出しダイノズルで塗布速度150m/分にてテープの磁性層膜厚が1.0μmになるように塗布した。塗布においては、磁性層が湿潤状態にあるうちに、配向磁石(磁束密度6000ガウス)を通過させることによって長手(走行方向)に配向させ、乾燥させた。その後金属ロールと弾性ロールからなる4段ニップカレンダーで温度90℃、線圧350kg/cm、速度100m/分で表面処理し、さらに磁性層の反対側面に下記の組成のバックコート層を乾燥厚みが0.5μmになるように塗布を行ない、乾燥させ、金属ロールと弾性ロールからなる4段ニップカレンダーで温度70℃、線圧250kg/cm、速度100m/分で表面処理してウェッブ状の磁気記録媒体を得た。この磁気記録媒体を6.35mm幅にスリットし、研磨テープで表面を処理した。
【0026】
この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
バックコートは以下の組成である。
カーボンブラック−1 80.0重量部
(Scウルトラ:コロンビヤンカーボン社製)
(平均粒径21nm、BET220m2 /g)
(可溶性ナトリウムイオン17ppm含有)
(可溶性カリウムイオン9ppm含有)
カーボンブラック−2 1.0重量部
(MT−CI:コロンビヤンカーボン社製)
(平均粒径350nm、BET8m2 /g)
(可溶性ナトリウムイオン46ppm含有)
(可溶性カリウムイオン27ppm含有)
α酸化鉄(戸田工業(株)製 100ED) 1.0重量部
(平均粒径0.1μm)
塩化ビニル系共重合体A 40.0重量部
(日信化学工業(株)製、MPR−TA)
(塩ビ−酢ビ−ビニルアルコール共重合体、平均重合度420)
塩化ビニル系共重合体B 25.0重量部
(日信化学工業(株)製、MPR−ANO(L))
(塩ビ−酢ビ−ビニルアルコール共重合体、窒素原子390ppm含有、平均重合度340)
ポリエステルポリウレタン 35.0重量部
(TS9555:東洋紡(株)製)
(−SO3 Na含有、数平均分子量40000)
メチルエチルケトン 700.0重量部
トルエン 400.0重量部
シクロヘキサノン 300.0重量部
【0027】
【表1】
【0028】
実施例2
実施例1と同様に、塗布速度400m/分にてテープの磁性層膜厚が1.0μmになるように塗布した。この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
実施例3
実施例1と同様に、塗布速度100m/分にてテープの磁性層膜厚が0.5μmになるように塗布した。この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
実施例4
実施例1と同様に、塗布速度100m/分にてテープの磁性層膜厚が0.3μmになるように塗布した。この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
【0029】
実施例5
重層構成の磁気記録媒体を作成するために以下の中間層組成物を作成した。
α酸化鉄(戸田工業:DPN250BW) 100重量部
塩化ビニル系共重合体(東洋紡:TBO246) 9重量部
電子線硬化性塩化ビニル系樹脂
塩化ビニル−エポキシ含有モノマー共重合体
平均重合度 310
エポキシ含有量 3重量%
S含有量 0.6重量%
アクリル含有量 6個/1分子
Tg 60℃
ポリエステルポリウレタン(東洋紡:TBO242) 9重量部
電子線硬化性ポリウレタン樹脂
リン化合物−ヒドロキシ含有ポリエステルポリウレタン
GPC Mn 26000
アクリル含有量 6個/1分子
Tg −20℃
燐酸エステル化合物(東邦化学フォスファノールRE610) 3重量部
αアルミナ(住友化学HIT60A) 5重量部
ステアリン酸 2重量部
ブチルステアレート 1重量部
メチルエチルケトン 80重量部
トルエン 80重量部
シクロヘキサノン 80重量部
【0030】
上記中間層用組成物をニーダーで混練した後、セラミックビーズを充填したサンドグラインダーミルで分散した。
得られた中間層用塗料をフィルター(ロキテクノ:HT40)を使用して濾過した。その後前記中間層用塗料を塗布直前に超音波分散機で再分散し、フィルター(ロキテクノ:HT20)をかけ、表面粗さが4nmの支持体に押し出しダイノズルで塗布速度100m/分にてテープの中間層膜厚が1.0μmになるように塗布した。塗布乾燥後、金属ロールと弾性ロールからなる4段ニップカレンダーで温度100℃、線圧350kg/cm、速度100m/分で表面処理した後、電子線4.5Mradを照射し硬化させ中間層原反とした。中間層の表面粗さは3.8nmであった。
前記作成の中間層上に、実施例1の溶剤(メチルエチルケトン、トルエン、シクロヘキサノン)を各々161重量部に変更した磁性塗料を塗布速度100m/分でテープの磁性層膜厚が0.2μmになるように塗布した。これ以外は実施例1と同様にして磁気記録媒体を作成した。この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
【0031】
実施例6
実施例5と同様で、磁性塗料の溶剤を各々228重量部に変更したものを塗布速度100m/分にてテープの磁性層厚が0.2μmになるように塗布した。この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
実施例7
実施例6と同様で、塗布速度100m/分にてテープの磁性層厚が0.15μmになるように塗布した。この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
実施例8
実施例5と同様で、磁性塗料の溶剤を各々363重量部に変更したものを塗布速度100m/分にてテープの磁性層厚が0.15μmになるように塗布した。この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
【0032】
実施例9
実施例8と同様で、塗布速度100m/分にてテープの磁性層厚が0.075μmになるように塗布した。この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
実施例10
実施例5と同様な中間層用塗料、磁性塗料を、2スリットの押し出しダイノズルで塗布速度150m/分にて中間層用塗料の上に磁性塗料を同時に湿潤状態で(ウエットオンウエット法)、テープの磁性層膜厚0.2μm中間層膜厚1.0μmになるように塗布した。この時の中間層のhw(ウェット膜厚)は塗料塗布体積より、5.13μmであった。磁性層のhwと合計して7.70μmとなった。この実施例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表1に示す。
比較例1
実施例1と同様に、塗布速度100m/分にてテープの磁性層膜厚が1.5μmになるように塗布した。この比較例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
比較例2
実施例1と同様に、塗布速度400m/分にてテープの磁性層膜厚が1.5μmになるように塗布した。この比較例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表2に示す。
比較例3
実施例1と同様に、塗布速度100m/分にてテープの磁性層膜厚が1.0μmになるように塗布した。この比較例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表2に示す。
比較例4
実施例8と同様に、塗布速度100m/分にてテープの磁性層膜厚が0.25μmになるように塗布した。この比較例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表2に示す。
比較例5
中間層膜厚を2.0μmになるようにした他は実施例10と同様に塗布した。この時の中間層のhw(ウェット膜厚)は塗料塗布体積より、10.26μmであった。磁性層のhwと合計して12.83μmとなった。この比較例における、塗布時のせん断速度、磁性層の表面性及び磁気記録媒体の短波長領域における出力等を表2に示す。
【0035】
【発明の効果】
表1、表2に示すように、本発明の効果は明らかである。即ち、支持体上に磁性層をウエット膜厚10μm以下で直接塗布した実施例1〜4及び比較例3とを比較すると、せん断速度が150、000sec-1以上において、塗布後の表面粗さに明らかに改善が見られる。又、中間層を支持体に塗布乾燥し次いで磁性層を設けた実施例5〜9及び比較例4とを比較すると、せん断速度236,740〜324,250sec-1付近で塗布後の表面が極めて平滑となり、磁性層が薄く、より短波長記録に適した媒体においても本発明が極めて有効であることは明らかである。又、本発明のウエット膜厚及びせん断速度の範囲内であれば、実施例10(共押出の場合)と比較例5とに見られるように、ウエットオンウエット法による重層塗布においても従来には得られなかった平滑な塗布表面が得られる。即ち、強磁性粉末を含有する磁性層厚0.05〜1.0μmの塗布型磁気記録媒体の製造方法において、強磁性粉末を含有する磁性塗料を支持体又は中間層の上に236,740〜324,250sec -1 のせん断速度で塗布することで、表面性が良好で短波長出力の優れた磁気記録媒体を製造でき本発明の目的を達する。
【図面の簡単な説明】
【図1】
ノズルリップ−支持体の磁性塗料による間隙はウェット膜厚(hw)より大きくその2倍の値で近似される。これは、支持体が速度Vで移動しているため挟まれた部分の磁性塗料のせん断速度τは支持体に近い程大きくなり、このため挟まれた部分の磁性塗料にせん断力が付与され、磁性塗料にズレが生じるためである。せん断速度τはτ=V/2hw(sec-1)で表される。
ノズルリップの平坦面の長さには限定されないが、1〜10mm程度でよい。ノズルリップ通過後は、塗布された磁性塗料のせん断速度は0となり、支持体速度Vで搬送される。
Claims (2)
- 強磁性粉末を含有する磁性層の厚さが0.15〜0.3μmである塗布型磁気記録媒体の製造方法において、非磁性の中間層用塗料を支持体の上に塗布し、乾燥し、その上に強磁性粉末を含有する磁性塗料を236,740〜324,250sec-1のせん断速度で、この磁性塗料のウエット膜厚が2.57〜3.52μmとなるように塗布し、乾燥し、カレンダー処理することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
- 前記磁性塗料が強磁性粉末を均一に分散した状態で含有する請求項1に記載の方法。
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