JP2001006148A - 磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

磁気記録媒体およびその製造方法

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JP2001006148A
JP2001006148A JP17121499A JP17121499A JP2001006148A JP 2001006148 A JP2001006148 A JP 2001006148A JP 17121499 A JP17121499 A JP 17121499A JP 17121499 A JP17121499 A JP 17121499A JP 2001006148 A JP2001006148 A JP 2001006148A
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Kazue Goto
和重 後藤
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 磁性層厚を薄くした磁気記録媒体において、
十分な信頼性と耐久性が確保できる磁気記録媒体を提供
する。 【解決手段】 本発明に係る磁気記録媒体5の製造方法
は、以下のとおりである。最初に、非磁性支持体3の上
に、脂肪酸と脂肪酸エステルのいずれか一方または双方
を含む下地層2を形成する。つぎに、この上に膜厚が
0.35μm未満となるよう磁性層1を形成する。その
後、炭素数が2以上10以下、かつ沸点が50℃より高
く140℃より低い飽和炭化水素、不飽和炭化水素、環
状炭化水素、アルコール類、エーテル類、およびエステ
ル類から選ばれる、一種類の有機溶媒もしくは複数の有
機溶媒を、磁性層1の上に塗布し乾燥する。このとき、
潤滑剤抽出率は、25重量%より大きく85重量%より
小さい範囲にある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体およ
びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気記録は、アナログ記録からデ
ジタル記録への移行が進み、放送局等の業務用ビデオテ
ープレコーダ(以下、「VTR」という。)はもとよ
り、民生用VTR、特にカメラ一体型VTRにおいて
も、高画質を得るため、より記録密度の高い媒体が求め
られている。また、コンピューター等の情報機器分野に
おいても、膨大なデータをバックアップする必要性か
ら、テープストリーマー等に用いる媒体は、狭トラック
化によってさらなる電磁変換特性の向上が要求されてい
る。
【0003】これら磁気記録媒体の高密度記録化に対す
る要求を満たすため、磁気記録媒体の電磁変換特性の向
上が様々な手法で検討されている。例えば電磁変換特性
に優れた蒸着型磁気記録媒体が従来より検討されてい
る。しかし、生産性、信頼性の点から塗布型磁気記録媒
体、すなわち強磁性粉末を結合剤等によって分散し、得
られた塗液を非磁性支持体上に塗布して形成される磁気
記録媒体に遠く及ばないのが実状である。このため、依
然として塗布型磁気記録媒体による検討が主流となって
いる。
【0004】塗布型磁気記録媒体では、高密度記録化に
対応すべく、強磁性粉末の微細化が進められ、比表面積
の大きな強磁性粉末が使用されている。また、磁気特性
に優れた金属、例えばFe,Ni,Co等やこれらの合
金の超微粒子が強磁性粉末として使用されている。
【0005】例えば、特願平4−274676では、α
−Feを主体とした強磁性粉末の磁気特性、粒子サイズ
等を規制することで短波長の磁気記録に適した塗布型磁
気記録媒体を提案している。また、特開平6−3626
5では、Feを主体として、AlあるいはSiと、希土
類元素を含有した強磁性粉末を用いた塗布型磁気記録媒
体を提案している。さらに良好な磁気特性を有する磁気
記録媒体を有効に活用するためには、磁性層と磁気ヘッ
ドとのスペーシングを小さくすることが不可欠である。
さらにデジタル記録において記録密度を上げて、飽和記
録を行ない、またオーバーライト特性を確保するため
に、磁性層厚は薄いことが望ましい。
【0006】一方、信頼性を向上させる手段として、従
来から磁性塗料に潤滑剤を添加することにより、磁性層
に潤滑剤を含有させる方法が採られている。この場合、
用いる磁性粉末が微細化するにつれ、磁性層の表面が平
滑化されやすくなり、その結果、磁性層および下地層等
から、磁性層の表面に潤滑剤が供給されず、走行性が悪
化する。このため、磁性塗料中に多量に潤滑剤を添加す
る必要があった。しかし、この方法では磁性塗料の凝集
がおきやすく、さらに、塗膜の可塑性によって塗膜強度
が低下し、ヘッド汚れ等の問題が発生し信頼性が低下す
ることがあった。また、塗膜厚が薄いと塗膜中の潤滑剤
が少なくなり、耐久性等の問題が発生することがあっ
た。
【0007】これらの諸問題の解決手段としては、非磁
性支持体に磁性塗料を塗布した後で、平滑化工程前また
は平滑化工程後に、潤滑剤または潤滑剤を溶解した溶液
を磁性層の表面に塗布し、走行性等を改善する方法が知
られている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記解決手段
では、潤滑剤が磁性層の表面のみに吸着し、塗膜の中に
含浸しにくい。このため、磁性層の表面の潤滑剤が欠如
すると、走行性等に問題が発生しやすく、信頼性と耐久
性が十分でない。また、磁性層の表面に潤滑剤が十分存
在するよう、潤滑剤を溶解した溶液の濃度を高くした場
合には、潤滑剤が磁性層の表面に析出しやすくなり、ヘ
ッド汚れ等の問題が発生しやすくなるおそれがある。
【0009】このように、従来の潤滑剤を磁性層の表面
に塗布する方法では、高密度記録における記録再生時の
出力の向上、およびオーバーライト特性の改善のため
に、磁性層厚を薄くした磁気記録媒体において、十分な
信頼性と耐久性が確保できなかった。
【0010】本発明は、このような課題に鑑みてなされ
たものであり、磁性層厚を薄くした磁気記録媒体におい
て、十分な信頼性と耐久性が確保できる磁気記録媒体お
よびその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体
は、非磁性支持体の上に磁性粉末を含有する磁性層と無
機粉末を含有する下地層を備えた磁気記録媒体におい
て、非磁性体支持体上に、脂肪酸と脂肪酸エステルのい
ずれか一方または双方を含む前記下地層を形成し、さら
にこの上に膜厚が0.35μm未満となるよう前記磁性
層を形成し、その後炭素数が2以上10以下、かつ沸点
が50℃より高く140℃より低い飽和炭化水素、不飽
和炭化水素、環状炭化水素、アルコール類、エーテル
類、およびエステル類から選ばれる、一種類の有機溶媒
もしくは複数の有機溶媒を、前記磁性層上に塗布し乾燥
して得られるものである。
【0012】また、本発明の磁気記録媒体は、潤滑剤抽
出率が、25重量%より大きく85重量%より小さい上
述構成の磁気記録媒体である。
【0013】また、本発明の磁気記録媒体の製造方法
は、非磁性支持体上に、脂肪酸と脂肪酸エステルのいず
れか一方または双方を含む下地層を形成する工程と、さ
らにこの上に膜厚が0.35μm未満となるよう磁性層
を形成する工程と、その後炭素数が2以上10以下、か
つ沸点が50℃より高く140℃より低い飽和炭化水
素、不飽和炭化水素、環状炭化水素、アルコール類、エ
ーテル類、およびエステル類から選ばれる、一種類の有
機溶媒もしくは複数の有機溶媒を、前記磁性層上に塗布
し乾燥する工程を含むものである。
【0014】本発明の磁気記録媒体およびその製造方法
によれば、非磁性体支持体上に、脂肪酸と脂肪酸エステ
ルのいずれか一方または双方を含む下地層を形成し、さ
らにこの上に磁性層を形成し、その後炭素数が2以上1
0以下、かつ沸点が50℃より高く140℃より低い有
機溶媒を磁性層上に塗布し乾燥することにより、または
これに加えて、潤滑剤抽出率が25重量%より大きく8
5重量%より小さいものとすることにより、磁気記録媒
体の下地層に存在する潤滑剤を、磁性層を通じて、磁性
層の表面に供給することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て説明する。まず、磁気記録媒体およびその製造方法に
係る発明の実施の形態について、図1を参照しながら説
明する。
【0016】図1は、磁気記録媒体に係る発明の実施の
形態を示す断面図である。図1において、磁気記録媒体
5は、非磁性支持体3、下地層2、磁性層1、およびバ
ックコート層4から構成されている。
【0017】非磁性支持体3としては、従来より公知の
ものがいずれも使用可能であって、特にその種類は限定
されない。具体的な例を挙げると、ポリエチレンテレフ
タレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン−
2,6−ナフタレート等のポリエステル類、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン等のポリオレフィン類、セルロース
トリアセテート、セルロースジアセテート等のセルロー
ス誘電体、ポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリ塩化
ビニリデン等のビニリデン樹脂、ポリカーボネート、ポ
リアミドイミド、ポリイミド等の公知の樹脂がいずれも
使用可能である。これら非磁性支持体の表面には接着性
を向上させるために、接着層を設けても良い。
【0018】図1において、非磁性支持体3の上には、
潤滑剤、無機粉末、および結合剤等から構成される下地
層2が形成されている。ここで、潤滑剤としては、脂肪
酸および脂肪酸エステルが用いられている。添加される
脂肪酸および脂肪酸エステルは、通常この種の媒体にお
いて用いられている化合物がいずれも使用可能である
が、好ましくは以下に示す脂肪酸および脂肪酸エステル
であることが望ましい。すなわち、炭素数が10〜22
の飽和脂肪酸、炭素数が10〜22の不飽和脂肪酸、炭
素数が12〜36の飽和脂肪酸エステル、または、炭素
数が12〜36の不飽和脂肪酸エステルである。炭素数
の範囲をこのように限定した理由は、炭素数が上述の範
囲よりも少ないと、潤滑効果が期待できないおそれがあ
るからであり、炭素数が上述の範囲より多いと、脂肪酸
または脂肪酸エステルが有機溶媒に溶解しなくなるおそ
れがあるからである。なお、潤滑剤としては、脂肪酸の
みを使用しても良い。この場合、一種類の脂肪酸でも良
く、異なる脂肪酸の組み合わせでも良い。また、潤滑剤
としては、脂肪酸エステルのみを使用しても良い。この
場合、一種類の脂肪酸エステルでも良く、異なる脂肪酸
エステルの組み合わせでも良い。さらに、潤滑剤として
は、脂肪酸および脂肪酸エステル双方を混合させたもの
でも良いことは、上述したとおりである。この場合も、
脂肪酸または脂肪酸エステルの一方または双方が、一種
類の構造のものでも良く、異なる構造のものを組み合わ
せたものでも良い。
【0019】脂肪酸および脂肪酸エステルの具体的な例
としては、以下のようなものがある。脂肪酸としては、
カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン
酸、ステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、リノー
ル酸、リノレン酸等が挙げられる。また、脂肪酸エステ
ルとしては、カプリン酸ブチル、カプリル酸オクチル、
ラウリル酸エチル、ラウリル酸ブチル、ラウリル酸オク
チル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸ブチル、ミリ
スチン酸オクチル、ミリスチン酸2エチルヘキシル、パ
ルミチン酸エチル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸
オクチル、パルミチン酸2エチルヘキシル、ステアリン
酸エチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸イソブチ
ル、ステアリン酸オクチル、ステアリン酸2エチルヘキ
シル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸イソアミル、
ステアリン酸2エチルペンチル、ステアリン酸2ヘキシ
ルデシル、ステアリン酸イソトリデシル、ステアリン酸
アミド、ステアリン酸アリキルアミド、ステアリン酸ブ
トキシエチル等が挙げられる。
【0020】非磁性支持体3上に設けられる下地層2を
構成する無機粉末は、磁性粉末でも良く非磁性無機粉末
でも良い。磁性粉末としては、従来より公知のものがい
ずれも使用可能であって、酸化物磁性粉末でも良く、金
属磁性粉末でも良い。
【0021】酸化物磁性粉末としては、例えばγ−Fe
2 3 ,Co含有γ−Fe2 3 ,Fe3 4 ,Co含
有Fe3 4 ,Co被着γ−Fe2 3 ,Co被着Fe
3 4 ,CrO2 等が挙げられる。金属磁性粉末として
は、例えばFe,Co,Ni,Fe−Co,Fe−N
i,Co−Ni,Fe−Co−Ni,Fe−Co−B,
Fe−Co−V,Fe−Co−Cr−B,Mn−Bi,
Mn−Al等か挙げられ、さらにこれらの種々の特性を
改善する目的でAl,Si,Ti,Cr,Mn,Cu,
Zn等の金属成分が添加されたものであっても良い。さ
らにFe5 2 等の炭化鉄、窒化鉄等も使用可能であ
る。また非磁性無機粉末としては、従来より公知のもの
がいずれも使用可能であって、シリカ、酸化チタン、ア
ルミナ、カーボンブラック、α−酸化鉄、酸化カルシウ
ムなどが挙げられる。
【0022】さらに、下地層2には、必要に応じて各種
分散剤、各種研磨剤、カーボンブラック等の帯電防止
剤、および各種防錆剤等を加えても良い。これらの分散
剤、研磨剤、帯電防止剤、および防錆剤としては、従来
公知の材料がいずれも使用可能であり、なんら限定され
るものではない。研磨剤としては、溶融アルミナ、α−
アルミナ等の各種アルミナ、炭化珪素、酸化チタン、酸
化クロム、コランダム、人造コランダム、人造ダイモン
ド、ザクロ石、エメリー、シリカ等がいずれも使用可能
である。これらの研磨剤は、平均粒子径が、好ましくは
0.05〜1.0μm、より好ましくは0.08〜0.
5μmの範囲のものが望ましい。カーボンブラックとし
ては、サーマルカーボンでも良く、アセチレンブラッ
ク、チャンネルブラック等を用いることができる。これ
らカーボンブラックを分散剤などで表面処理したり、カ
ーボンブラックを塗料に添加する前にあらかじめ結合剤
で別分散しても良い。これらは単独で、若しくは2つ以
上を混合して使用することができる。
【0023】また下地層2は、無機粉末を結合剤中に分
散させたものであるが、使用可能な結合剤としては、通
常この種の媒体において用いられている樹脂材料がいず
れも使用可能であって、特にその種類は限定されない。
代表的な結合剤を例示すれば、塩化ビニル−酢酸ビニル
共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール
共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合
体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル
−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エステル−塩
化ビニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−塩化ビ
ニリデン共重合体、メタクリル酸エステル−スチレン共
重合体、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリフッ化ビニ
ル、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、ブタ
ジエン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル
−ブタジエン−メタクリル酸共重合体、ポリビニルブチ
ラール、ポリビニルアセタール、セルロース誘導体、ス
チレン−ブタジエン共重重合体、ポリエステル樹脂、ポ
リエステルポリウレタン共重合体、フェノール樹脂、フ
ェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリウレタン樹
脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アリキド樹脂、尿素−ホ
ルムアルデヒド樹脂などがある。これらは、単独で、も
しくは2種類以上混合して用いてもかまわない。これら
の結合剤は、少なくともその一部にスルホン酸金属塩基
(−SO3 M;MはNa,K等のアルカリ金属)または
硫酸金属塩基(−OSO3 M:MはNa,K等のアルカ
リ金属)の少なくとも一方が導入されていることが望ま
しい。これらの金属塩基は、添加する粉末の表面積1m
2 当たり0.2〜0.8μmolであることが望まし
い。
【0024】さらに、下地層2の耐久性を向上させるた
め、下地層用塗料に硬化剤を添加することも可能であ
る。具体的にはポリイソシアネート化合物、ポリエポキ
シ化合物に代表されるような熱硬化樹脂や電子線反応型
硬化樹脂などが挙げられる。これらは単独で、若しくは
2つ以上混合して使用することができる。具体的な硬化
剤としては、p−フェニレンジイソシアネート、トリレ
ンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネー
ト、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロン系ポ
リイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシア
ネート等の1分子中に2個以上のイソシアネート基を有
するイソシアネート化合物、テトラグリシジルメタキシ
レンジアミン、テトラグリシジル−1,3−ビスアミノ
メチルシクロヘキサン、テトラグリシジルアミノジフェ
ニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール等
のポリグリシジルアミン化合物、2−ジブチルアミノ−
4,6−ジメルカプト置換トリアジン等のポリチオール
化合物、トリグリシジルイソシアヌレート等のエポキシ
化合物、エポキシ化合物とイソシアネート化合物の混合
物、エポキシ化合物とオキサゾリン化合物との混合物、
イミダゾール化合物とイソシアネート化合物の混合物、
無水メチルナジン酸等が挙げられる。ただし、硬化剤
は、従来より公知のものがいずれも使用可能であり、上
述した硬化剤になんら限定されるものではない。
【0025】非磁性支持体3上に下地層2を形成するに
は、上述の潤滑剤および無機粉末等を結合剤と、結合剤
の種類等によってエーテル類、エステル類、ケトン類、
芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、有機塩素化合物系溶
媒等から選ばれる有機溶媒と共に分散して下地層用塗料
を調整する。このような有機溶媒の具体例としては、ア
セトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケト
ン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸メチル、酢酸
エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコール
モノアセテート等のエステル類、ベンゼン、トルエン、
キシレン等の芳香族炭化水素、メチレンクロライド、エ
チレンクロライド、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロ
ルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等が挙げられる。た
だし、有機溶媒は従来公知のものがいずれも使用可能で
あり、上述した有機溶媒になんら限定されるものではな
い。
【0026】また、このような下地層用塗料を得る場合
に用いる分散機や混練機は、従来公知のものが何れも使
用可能であり、その種類は特に限定されない。具体例を
挙げると、ロールミル、ボールミル、サンドミル、アジ
ター、ニーダー、エクストルーダー、ホモジナイザー、
超音波分散機等が使用可能である。
【0027】また、非磁性支持体上に塗布する方法とし
ては、従来公知のものが何れも使用可能であり、その方
法は特に限定されない。具体例を挙げると、グラビアコ
ーター、キスコーター、ワイヤーバーコーター、リバー
スコーター、ディッピングコーター、ダイコーター等が
使用可能である。
【0028】図1において、下地層2の上には、磁性粉
末および結合剤等から構成される磁性層1が形成されて
いる。磁気記録媒体5において、磁性層1を構成する磁
性粉末としては、従来より公知のものがいずれも使用可
能であって、酸化磁性粉末でも良く、金属磁性粉末でも
良い。酸化物磁性粉末としては、例えばγ−Fe
2 3 ,Co含有γ−Fe2 3 ,Fe3 4 ,Co含
有Fe3 4 ,Co被着γ−Fe2 3 ,Co被着Fe
3 4 ,CrO2 等が挙げられる。金属磁性粉末として
は、例えば、Fe,Co,Ni,Fe−Co,Fe−N
i,Co−Ni,Fe−Co−Ni,Fe−Co−B,
Fe−Co−V,Fe−Co−Cr−B,Mn−Bi,
Mn−Al等が挙げられ、さらに、これらの種々の特性
を改善する目的でAl,Si,Ti,Cr,Mn,C
u,Zn等の金属成分やYを含む希土類元素が添加され
たものであっても良い。さらにFe5 2 等の炭化鉄、
窒化鉄等も使用可能である。これら磁性層に用いる強磁
性粉末の平均長軸長は0.20μm以下であることが望
ましい。仮に強磁性粉末の平均長軸長が0.20μmを
越えるならば、短波長の磁気記録に適さない。
【0029】さらに、磁気記録媒体を構成する磁性層1
には、必要に応じてレシチンなどの分散剤、アルミナ等
の研磨剤、カーボンブラック等の帯電防止剤、および各
種防錆剤等を加えても良い。これらの分散剤、研磨剤、
帯電防止剤、および防錆剤としては、上述した下地層と
同様に、従来公知の材料がいずれも使用可能であり、な
んら限定されるものではない。
【0030】磁性層1に用いられる結合剤は、上述した
下地層と同様に、通常この種の媒体において用いられて
いる樹脂材料がいずれも使用可能であって、特にその種
類は限定されない。こうした結合剤は、少なくともその
一部にスルホン酸金属塩基(−SO3 M;MはNa,K
等のアルカリ金属)または硫酸金属塩基(−OSO
3 M;MはNa,K等のアルカリ金属)の少なくとも一
方が導入されていることが望ましい。これらの金属塩基
は、磁性粉末の表面積1m2 当たり0.2〜0.8μm
olであることが望ましい。これらは単独、または2種
類以上用いてもかまわない。
【0031】また、磁性層1の耐久性を向上させる目的
で、磁性層1を構成する磁性塗料に硬化剤を添加するこ
とも可能である。具体的には、上述した下地層と同様
に、ポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物に
代表されるような熱硬化樹脂や電子線反応型硬化樹脂な
どが挙げられる。これらは単独で、若しくは2つ以上混
合して使用することができる。
【0032】磁性層1を形成するには、上述の構成成分
を結合剤と、結合剤の種類等によってエーテル類、エス
テル類、ケトン類、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、
有機塩素化合物系溶媒等から選ばれる有機溶媒と共に分
散して磁性塗料を調整する。このような有機溶媒は、上
述した下地層と同様に、従来公知の材料がいずれも使用
可能であり、なんら限定されるものではない。
【0033】このような磁性層用塗料を得る場合に用い
る分散機や混練機は、従来公知のものが何れも使用可能
であり、その種類は特に限定されない。具体例を挙げる
と、上述した下地層と同様に、ロールミル、ボールミ
ル、サンドミル、アジター、ニーダー、エクストルーダ
ー、ホモジナイザー、超音波分散機等が使用可能であ
る。
【0034】また磁性層1を下地層2上に塗布する方法
としては、従来公知のものが何れも使用可能であり、そ
の方法は特に限定されない。具体例を挙げると、上述し
た下地層と同様に、グラビアコーター、キスコーター、
ワイヤーバーコーター、リバースコーター、ディッピン
グコーター、ダイコーター等が使用可能である。さらに
従来より公知のウェットオンウェット方式の如く下地層
が乾燥する前に磁性層を塗布しても良く、ウェットオン
ドライ方式の如く下地層が乾燥してから塗布しても良
い。
【0035】磁気記録媒体5の磁性層1の膜厚は、好ま
しくは0.35μm未満、より好ましくは0.25μm
以下であることが望ましい。磁性層厚が0.35μm以
上である場合には、有機溶媒を用いても、脂肪酸および
脂肪酸エステルを、磁性層の表面に供給しにくくなる。
その結果、走行性等に問題が発生し、信頼性が低下す
る。
【0036】本発明においては、後に実施例で詳述する
ように、上述の方法により形成された磁性層1の上に有
機溶媒を塗布し乾燥させる。ここで、塗布する有機溶媒
は、炭素数が2以上10以下で、かつ沸点が好ましくは
50℃より高く140℃より低く、より好ましくは69
℃以上110℃以下であることが望ましい。また、有機
溶媒は、飽和炭化水素、不飽和炭化水素、環状炭化水
素、アルコール類、エーテル類、またはエステル類から
選ばれる、一種類の有機溶媒もしくは複数の有機溶媒で
あることが望ましい。
【0037】有機溶媒の沸点が50℃以下の場合には、
有機溶媒が塗膜内部まで含浸するまえに揮発するため、
磁性層の表面に脂肪酸および脂肪酸エステルが供給され
にくい。このため、磁性層の表面の潤滑剤が欠如し、走
行性等に問題が発生し、信頼性が低下する。有機溶媒の
沸点が140℃以上の場合には、有機溶媒が揮発しにく
くなるため、磁性層の表面に脂肪酸および脂肪酸エステ
ルが供給されにくい。このため、塗膜強度が低下し、ヘ
ッド汚れ等の問題が発生し信頼性が低下する。
【0038】なお、磁気記録媒体5の磁性層1の表面に
有機溶媒を塗布する方法としては、従来公知のものがい
ずれも使用可能であり、その方法は特に限定されない。
具体例を挙げると、グラビアコーター、キスコーター、
ワイヤーバーコーター、リバースコーター、ディッピン
グコーター、ダイコーター等が使用可能である。このと
き、有機溶媒が塗布される原反の搬送速度は、10〜1
000m/分の範囲にあることが望ましく、また、乾燥
温度は20〜130℃の範囲にあることが望ましい。ま
た、有機溶媒の塗布量は、0.1〜1000ml/m2
の範囲にあることが望ましい。
【0039】さらに、潤滑剤抽出率は、好ましくは25
重量%より大きく85重量%より小さく、より好ましく
は45重量%以上80重量%以下であることが望まし
い。ここで、潤滑剤抽出率とは、単位面積当たりの磁性
層および下地層における脂肪酸と脂肪酸エステルの存在
量に対する、磁性層の表面における脂肪酸と脂肪酸エス
テルの存在量の割合と考えられる。
【0040】仮に、潤滑剤抽出率が、25重量%以下の
場合は、脂肪酸および脂肪酸エステルを磁性層の表面に
十分に補うことが困難になる。さらに、塗膜中における
脂肪酸および脂肪酸エステルの存在量が過剰となり、磁
気記録媒体の塗膜が可塑化するおそれがある。このた
め、塗膜強度が低下し、ヘッド汚れ等の問題が発生し、
信頼性が低下する。また、潤滑剤抽出率が、85重量以
上の場合は、表面に十分存在するものの、くり返し走行
時において、欠如した脂肪酸および脂肪酸エステルを磁
性層の表面に十分に補うことが不可能となる。その結
果、信頼性が低下する。
【0041】図1において、非磁性支持体3の2つの面
のうち、下地層2および磁性層1が設けられていない面
には、非磁性無機粉末と結合剤等とから構成されるバッ
クコート層4が形成されている。このバックコート層4
は、磁気記録媒体の走行性の向上や転写防止等を目的と
している。このバックコート層4においても、非磁性無
機粉末および結合剤等は、従来公知のバックコート層用
の各種添加成分を含有させることができる。非磁性無機
粉末は、通常この種の媒体において用いられている非磁
性無機粉末がいずれも使用可能であって、特にその種類
は限定されない。また、結合剤は、上述した磁性層およ
び下地層を形成する際と同様に、通常この種の媒体にお
いて用いられている樹脂材料がいずれも使用可能であっ
て、特にその種類は限定されない。
【0042】なお、本発明の磁気記録媒体の適用対称と
しては、塗布型磁気記録媒体であるならば、記録システ
ム(記録波長、相対速度、媒体のサイズ等)にかかわら
ず、使用可能であり、その種類は限定されない。
【0043】また、本発明は上述の実施の形態に限らず
本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採
り得ることはもちろんである。
【0044】
【実施例】次に、本発明の具体的な実施例について、表
1を参照しながら説明する。ただし、本発明はこれら実
施例に限定されるものではないことはもちろんである。
【0045】実施例1 まず、磁気記録媒体の下地層用塗料を調整した。下地層
用塗料の組成は、以下に示すとおりである。 [下地層用塗料の組成] 針状α−酸化鉄 100重量部 (長軸長0.18μm、比表面積55.1m2 /g) 結合剤:塩化ビニル系共重合体(重合度200) 15重量部 結合剤:ポリエステルポリウレタン(数平均分子量15000) 10重量部 潤滑剤:ステアリン酸 2重量部 潤滑剤:ステアリン酸ブチル 2重量部 溶媒 :メチルエチルケトン 75重量部 トルエン 75重量部 シクロヘキサノン 35重量部
【0046】下地層用塗料の調整方法はつぎのとおりで
ある。最初に、上述の材料うち、ステアリン酸およびス
テアリン酸ブチルを除く材料を、サンドミル分散した。
つぎに、上述のステアリン酸およびステアリン酸ブチル
を添加し、下地層用塗料とした。この下地層用塗料を
5.0μm厚のベースフィルム上に乾燥膜厚が1.0〜
1.2μmとなるように塗布した。
【0047】つぎに、磁性層用塗料を調整した。この磁
性層用塗料の組成は以下に示すとおりである。 [磁性層用塗料の組成] Fe−Co系微細強磁性粉末 100重量部 (長軸長0.12μm、比表面積42.7m2 /g) 結合剤 :塩化ビニル系共重合体(重合度150) 10重量部 結合剤 :ポリエステルポリウレタン(数平均分子量15000) 6重量部 無機粉末:α−アルミナ(平均粒径0.15μm) 3重量部 無機粉末:カーボンブラック 1重量部 (平均粒径0.25μm、DBP吸油量63.0cc/g) 溶媒 :メチルエチルケトン 20重量部 トルエン 10重量部 シクロヘキサノン 10重量部
【0048】磁性層用塗料の調整方法はつぎのとおりで
ある。最初に、上述の全ての材料をニーダーで混練処理
を施し、さらにメチルエチルケトン140重量部、トル
エン70重量部、およびシクロヘキサノン70重量部で
希釈した後、サンドミル分散し磁性層用塗料とした。つ
ぎに、ポリイソシアネート(商品面:コロネートL、日
本ポリウレタン社製)を4重量部添加し、攪拌後これを
先のベースフィルム上に形成された下地層上に、乾燥膜
厚が0.12μmとなるよう塗布した。その後、磁場配
向処理を行い、乾燥させて巻取りをした。さらにカレン
ダー処理を施し、熱処理をした。
【0049】つぎに、下記組成のバックコート層用塗料
にポリイソシアネート(商品名:コロネートL、日本ポ
リウレタン社製)を10重量部添加し、この塗料を、非
磁性支持体の2つの面にうち、下地層および磁性層を形
成した面とは反対側の面に塗布し、乾燥膜厚が0.5μ
mとなるようにバックコート層を形成した。
【0050】 [バックコート層用塗料の組成] 無機粉末:カーボンブラック 100重量部 (平均粒径35nm、DBP吸油量135cc/g) 結合剤:フェノキシ樹脂 13重量部 (水酸基量3.13mmol/g、平均重合度95) 結合剤:塩化ビニル系共重合体 43重量部 (エポキシ基量0.83mmol/g、硫酸カリウム基量 0.06mmol/g、水酸基量0.28mmol/g、 平均重合度280) 結合剤:ニトロセルロース樹脂 10重量部 (水酸基量3.95mmol/g、平均重合度90) 溶媒 :メチルエチルケトン 500重量部 トルエン 500重量部
【0051】つぎに、沸点が69℃の有機溶媒を磁性層
の表面に塗布し、その後に乾燥して原反を得た。このよ
うにして得られた全厚6.7〜6.9μmの広幅テープ
を6.35mm幅に裁断し、ミニDVカセットに組み込
んだものをサンプルとした。
【0052】実施例2〜5 磁性層の表面に塗布する有機溶媒を変更した以外は、実
施例1と同一の条件にしてサンプルテープを作製した。
すなわち、実施例2では沸点が110℃の有機溶媒を、
実施例3では沸点が78℃の有機溶媒を、実施例4では
沸点が82℃の有機溶媒を、そして、実施例5では沸点
が74℃の有機溶媒をそれぞれ使用した。
【0053】実施例6〜8 磁性層の膜厚を変更した以外は、実施例3と同一の条件
にしてサンプルテープを作製した。すなわち、実施例6
では磁性層の膜厚は0.08μmであり、実施例7では
磁性層の膜厚は0.18μmであり、そして、実施例8
では磁性層の膜厚は0.25μmである。
【0054】比較例1 有機溶媒を磁性層の表面に塗布しないこと以外は、実施
例1と同一の条件にしてサンプルテープを作製した。
【0055】比較例2〜3 比較例2では、沸点が140℃の有機溶媒を磁性層の表
面に塗布した。これ以外の条件は実施例1と同一にして
サンプルテープを作製した。また、比較例3では、沸点
が50℃の有機溶媒を磁性層の表面に塗布した。これ以
外の条件は実施例1と同一にしてサンプルテープを作製
した。
【0056】比較例4 磁気記録媒体の下地層にステアリン酸およびステアリン
酸ブチルを添加せず、磁性層のみにステアリン酸および
ステアリン酸ブチルを添加した以外は、実施例3と同一
の条件にしてサンプルテープを作製した。
【0057】比較例5 磁性層厚を0.35μmとした。これ以外の条件は、実
施例3と同一にしてサンプルテープを作製した。
【0058】つぎに、上述した実施例1〜8、および比
較例1〜5のサンプルテープについて、潤滑剤抽出率お
よびスチル耐久性を測定した。潤滑剤抽出率およびスチ
ル耐久性の測定方法はつぎのとおりである。
【0059】潤滑剤抽出率:最初に、測定対象のサンプ
ルテープを0.1m2 用意し、200mlのメチルエチ
ルケトン中に20時間浸した後、溶液をカラムで分離
し、示差屈折率検出器により得られたピーク面積から潤
滑剤の重量G1を求めた。つぎに、測定対象テープを
0.1m2 用意し、200mlのn−ヘキサン中に5分
間浸した後、溶液をカラムで分離しRI検出法により得
られたピーク面積から潤滑剤の重量G2を求めた。ここ
で、(潤滑剤の重量G2/潤滑剤の重量G1)×100
を潤滑剤抽出率(重量%)とした。したがって、潤滑剤
抽出率とは、下地層および磁性層の塗膜全体に存在する
脂肪酸および脂肪酸エステルの重量を100としたとき
の、磁性層の表面に存在する脂肪酸および脂肪酸エステ
ルの重量の値である。
【0060】スチル耐久性:ポーズが自動解除しないよ
う改造したコンスーマーDV用ビデオカメラ(商品名:
VX−1000、ソニー社製)を用意し、あらかじめ信
号を記録したサンプルテープをポーズ状態で再生させ、
初期出力に対して5dB落ち込むまでの時間をスチル耐
久性(分)とした。
【0061】実施例1〜8および比較例1〜5について
の、用いた有機溶媒の沸点(℃)および磁性層厚(μ
m)、並びに、潤滑剤抽出率(重量%)およびスチル耐
久性(分)の測定結果は、表1に示したとおりである。
【0062】
【表1】
【0063】まず、実施例1と比較例1をみてみる。実
施例1および比較例1ともに磁性層厚が0.12μmと
同一であるが、実施例1では、沸点が69℃の有機溶媒
を磁性層の表面に塗布したのに対して、比較例1では、
有機溶媒の塗布を行っていない点で異なる。その結果、
実施例1のスチル耐久性が、80分となったのに対し
て、比較例1のスチル耐久性は、10分となった。。ま
た、潤滑剤抽出率をみると、実施例1が、45重量%と
なった。これに対して、比較例1は、5重量%となっ
た。従って、実施例1のように、有機溶媒を磁性層の表
面に塗布した場合は、下地層に含まれるステアリン酸お
よびステアリン酸ブチルが、磁性層を通じて、磁性層の
表面に供給され、スチル耐久性が飛躍的に向上する。こ
れに対して、比較例1のように、有機溶媒を磁性層の表
面に塗布しない場合は、磁性層の表面に潤滑剤が十分に
存在せず、スチル耐久性が悪化した。
【0064】実施例1〜5においては、磁性層の表面に
塗布する有機溶媒として、炭素数が2以上10以下の飽
和炭化水素、不飽和炭化水素、環状炭化水素、アルコー
ル類、エーテル類、またはエステル類を用いた。表1に
示すように、実施例1〜5においては、有機溶媒の沸点
が69℃以上110℃以下の範囲にある。この結果、ス
チル耐久性は80〜150分となった。また、潤滑剤抽
出率は45〜80重量%となった。なお、上述した有機
溶媒は、単独で用いる場合ばかりでなく、複数のものを
用いた場合も、大きなスチル耐久性を得ることができ
る。
【0065】一方、比較例2では、有機溶媒として沸点
が140℃と高いものを用いた。この結果、スチル耐久
性は30分となり、潤滑剤抽出率も20重量%となっ
た。従って、沸点が140℃と高い有機溶媒を磁性層の
表面に塗布した場合は、有機溶媒が蒸発しにくいため、
磁気記録媒体の下地層に存在する潤滑剤を磁性層の表面
に供給する効果が小さい。その結果、磁性層の表面に潤
滑剤が十分に存在せず、スチル耐久性が悪化した。
【0066】他方、比較例3においては、有機溶媒とし
て沸点が50℃と低いものを用いた。この結果、スチル
耐久性は20分となり、潤滑剤抽出率も25重量%と小
さな値を示した。従って、沸点が50℃と低い有機溶媒
を磁性層の表面に塗布した場合は、塗布した後に有機溶
媒がすぐに蒸発してしまうため、磁気記録媒体の下地層
に存在する潤滑剤を磁性層の表面に供給する効果が小さ
い。その結果、磁性層表面に潤滑剤が十分に存在しな
い。このように、有機溶媒の蒸発速度の違いによって、
磁気記録媒体の下地層に存在する潤滑剤を磁性層の表面
に供給する量が異なることがわかる。
【0067】上述の実施例1〜5、並びに、比較例2、
3の検討結果から、磁性層の表面に塗布する有機溶媒
は、炭素数が2以上10以下の飽和炭化水素、不飽和炭
化水素、環状炭化水素、アルコール類、エーテル類、ま
たはエステル類から選ばれる、一種類の有機溶媒もしく
は複数の有機溶媒であることが望ましい。また、有機溶
媒の沸点は、好ましくは50℃より高く140℃より低
く、より好ましくは69℃以上110℃以下であること
が望ましい。
【0068】つぎに、実施例3を含めて、実施例6〜
8、並びに、比較例5をみてみる。実施例3、実施例6
〜8、並びに、比較例5においては、有機溶媒は沸点が
78℃と同一のものを使用し、磁性層厚のみを変化させ
ている。実施例3、並びに、実施例6〜8においては、
磁性層厚が0.08〜0.25μmの範囲にある。その
結果、スチル耐久性は85〜129分となった。また、
潤滑剤抽出率は52〜75重量%となった。
【0069】これに対して、比較例5においては、磁性
層厚が0.35μmと厚いものを用いた。その結果、ス
チル耐久性は50分となり、また、潤滑剤抽出率も18
重量%となった。これらのことから、磁性層厚が0.3
5μm以上と厚い場合には、有機溶媒を用いても脂肪酸
および脂肪酸エステルを磁性層の表面に供給しにくくな
り、その結果、スチル耐久性が悪化した。
【0070】上述した実施例3、実施例6〜8、並び
に、比較例5の検討結果から、磁気記録媒体の磁性層の
膜厚は、好ましくは0.35μm未満、より好ましくは
0.25μm以下であることが望ましい。
【0071】つぎに、実施例3と比較例4についてみて
みる。実施例3では、ステアリン酸およびステアリン酸
ブチルを下地層に添加したのに対して、比較例4では、
ステアリン酸およびステアリン酸ブチルを磁性層のみに
添加した。その他の条件は両者とも同一である。この結
果、実施例3のスチル耐久性は100分であるのに対し
て、比較例4は30分となった。さらに、潤滑剤抽出率
は、実施例3が61重量%であるのに対して、比較例4
は85重量%となった。
【0072】このことから、磁性層へステアリン酸およ
びステアリン酸ブチルを添加した比較例4の場合、磁性
層が薄いため、潤滑剤抽出率が85重量%以上となって
も十分な潤滑剤量が磁性層表面に存在しない。従って、
くり返し走行時において、欠如したステアリン酸および
ステアリン酸ブチルを磁性層の表面に十分に補うことが
できず、スチル耐久性が悪化した。
【0073】一方、比較例1〜3、並びに、比較例5の
検討結果から、潤滑剤抽出率が25重量%以下であると
きは、スチル耐久性の値が小さい。このことから、潤滑
剤抽出率が、25重量%以下の場合は、脂肪酸および脂
肪酸エステルが磁性層の表面に供給されにくくなってい
るとともに、塗膜中における潤滑剤の存在量が過剰とな
った。このため、磁気記録媒体の塗膜が可塑化し、スチ
ル耐久性が悪化した。他方、実施例1〜8の検討結果か
ら、潤滑剤抽出率が45〜80重量%の範囲にあるとき
は、良好なスチル耐久性を得ることができた。
【0074】上述した実施例1〜8、並びに、比較例1
〜5の検討結果から、潤滑剤抽出率は、好ましくは25
重量%より大きく85重量%より小さく、より好ましく
は45重量%以上80重量%以下であることが望まし
い。
【0075】以上のことから、本実施例によれば、非磁
性体支持体上に、脂肪酸と脂肪酸エステルのいずれか一
方または双方を含む下地層を形成し、さらにこの上に磁
性層を形成し、その後炭素数が2以上10以下、かつ沸
点が50℃より高く140℃より低い有機溶媒を磁性層
上に塗布し乾燥することにより、またはこれに加えて、
潤滑剤抽出率が25重量%より大きく85重量%より小
さいものとすることにより、磁気記録媒体の下地層に存
在する潤滑剤を、磁性層を通じて、磁性層の表面に供給
することができる。その結果、磁性層厚を薄くした磁気
記録媒体において、十分な信頼性と耐久性が確保でき
る。
【0076】すなわち、微細磁性粉末を磁性層に含有さ
せる等の原因により、磁性層の表面が平滑化された場合
においても、本発明の磁気記録媒体は、有機溶媒を塗布
することによって、潤滑剤が、下地層から、磁性層を通
じて、磁性層の表面に供給されるので、走行性が良好に
なる。また、磁性塗料中に多量の潤滑剤を添加する必要
がないため、磁性塗料の凝集が軽減され、塗膜強度の低
下が抑制され、さらに、ヘッド汚れ等が防止され、結果
として、磁気記録媒体の信頼性が向上する。また、磁性
層がきわめて薄い場合でも、潤滑剤が磁性層の表面に十
分供給されるので、磁気記録媒体の耐久性が向上する。
【0077】
【発明の効果】本発明は、以下に記載されるような効果
を奏する。非磁性体支持体上に、脂肪酸と脂肪酸エステ
ルのいずれか一方または双方を含む下地層を形成し、さ
らにこの上に磁性層を形成し、その後炭素数が2以上1
0以下、かつ沸点が50℃より高く140℃より低い有
機溶媒を磁性層上に塗布し乾燥することにより、または
これに加えて、潤滑剤抽出率が25重量%より大きく8
5重量%より小さいものとすることにより、磁性層厚を
薄くした磁気記録媒体において、十分な信頼性と耐久性
が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気記録媒体に係る発明の実施の形態を示す断
面図である。
【符号の説明】
1‥‥磁性層、2‥‥下地層、3‥‥非磁性支持体、4
‥‥バックコート層、5‥‥磁気記録媒体

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体の上に磁性粉末を含有する
    磁性層と無機粉末を含有する下地層を備えた磁気記録媒
    体において、 非磁性体支持体上に、脂肪酸と脂肪酸エステルのいずれ
    か一方または双方を含む前記下地層を形成し、さらにこ
    の上に膜厚が0.35μm未満となるよう前記磁性層を
    形成し、その後炭素数が2以上10以下、かつ沸点が5
    0℃より高く140℃より低い飽和炭化水素、不飽和炭
    化水素、環状炭化水素、アルコール類、エーテル類、お
    よびエステル類から選ばれる、一種類の有機溶媒もしく
    は複数の有機溶媒を、前記磁性層上に塗布し乾燥して得
    られることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 潤滑剤抽出率が、25重量%より大きく
    85重量%より小さいことを特徴とする請求項1記載の
    磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 非磁性支持体上に、脂肪酸と脂肪酸エス
    テルのいずれか一方または双方を含む下地層を形成する
    工程と、 さらにこの上に膜厚が0.35μm未満となるよう磁性
    層を形成する工程と、 その後炭素数が2以上10以下、かつ沸点が50℃より
    高く140℃より低い飽和炭化水素、不飽和炭化水素、
    環状炭化水素、アルコール類、エーテル類、およびエス
    テル類から選ばれる、一種類の有機溶媒もしくは複数の
    有機溶媒を、前記磁性層上に塗布し乾燥する工程を含む
    ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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Cited By (2)

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WO2023002657A1 (ja) * 2021-07-21 2023-01-26 ソニーグループ株式会社 磁気記録媒体

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