JP4142812B2 - 化粧料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、安定性、耐水性、耐油性、耐汗性及び耐皮脂性に優れ、且つ付着性、平滑性に優れた化粧料に関する。さらに詳しくは、特定のフッ素変性シランカップリング剤で処理して得られる粉体及び環状シリコーンを配合することにより、安定性に優れ、肌上に生じた汗、皮脂による化粧崩れの防止効果及び化粧持続効果に優れ、且つ使用感、特にフィット感、平滑性に優れた化粧料に関する。
【0002】
【従来の技術】
粉体を配合する化粧料形態として、ファンデーション、ほお紅、アイブロウ、アイシャドウ、ボディパウダー、サンスクリーン等がある。近年、これらの化粧料について、化粧持続効果、日焼け止め持続効果に対する要求が非常に高まっている。それに伴って、これらの化粧料に配合される粉体に対しても、耐水性、耐油性の向上が求められていた。
【0003】
粉体に耐水性を付与する方法として、従来よりシリコーンで粉体を処理する方法が知られている。具体的には、メチルハイドロジェンポリシロキサンを粉体と混合し、加熱焼き付ける方法(特公昭45−2915)、メチルハイドロジェンポリシロキサンあるいはジメチルポリシロキサンを有機溶媒に溶解した後、架橋用触媒としてオクチル酸亜鉛等を添加して焼き付ける方法(特公昭45−18999)、粉体に金属水酸化物を被覆した後、さらにメチルハイドロジェンポリシロキサンでメカノケミカル反応により処理する方法(特公昭56−43264)等が知られている。しかし、これらの処理粉体を配合した化粧料は、耐水性、耐油性とも十分ではなく、肌上に生じた汗及び皮脂により化粧崩れを起こすという問題があった。
【0004】
そのため、粉体の耐水性、耐油性を向上させ、化粧料の汗、皮脂等による化粧崩れを防止することを目的として、近年、粉体をフッ素化合物で処理する方法が提案されている。具体的には、テフロンで処理する方法(特公昭61−55481)、フッ素化アクリレートで処理する方法(特公昭61−48803)、パーフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩で処理する方法(特公平5−86984)、パーフルオロアルキルシランで処理する方法(特開平2−218603、特開平4−193816)等が提案されている。
【0005】
これらの粉体はいずれも、極めて表面自由エネルギーの小さいフッ素化合物で被覆されているため、強い撥水撥油性を持つ。しかし、化粧料中に含まれる他の原料に対する親和性が乏しいため、これらの粉体と油剤や水が分離してしまい、経時的に安定な化粧料を得ることが困難であった。また、これらの粉体を配合した化粧料を肌上に塗布した場合、肌への付着性が低いため、汗や皮脂によって化粧料が肌上から浮き上がり化粧崩れを起こしたり、使用感の面でも平滑性が劣るという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、安定性、耐水性、耐油性、耐汗性及び耐皮脂性に優れ、且つ付着性、平滑性に優れた化粧料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこのような事情に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、表面を特定のフッ素変性シランカップリング剤で処理した粉体に環状シリコーンを加えることにより、処理粉体の化粧料中での分散性が向上し、安定性を改善するとともに、耐水性、耐油性、耐汗性及び耐皮脂性に優れ、且つ高い付着性、平滑性を有する化粧料が得られることを見出し本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、表面を化1(式中、R 1 は直鎖または分岐の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基または炭素数4〜50のパーフルオロポリエーテル基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシル基またはハロゲンであり、m、nはそれぞれ、0〜10及び1〜10の整数である。)で表されるフッ素変性シランカップリング剤で処理して得られる粉体及び環状シリコーンを配合することにより、安定性に優れ、肌上に生じた汗、皮脂による化粧崩れの防止効果及び化粧持続効果に優れ、且つ使用感、特にフィット感、平滑性に優れた化粧料を提供するものである。
【0009】
【化1】
R1(CH2)mO(CH2)nSiX3
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0011】
本発明においてフッ素変性シランカップリング剤で処理される粉体には、通常化粧料として用いられるものであれば全て適用できる。例えばタルク、マイカ、カオリン、セリサイト、ベントナイト、スメクタイト、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、ケイ酸、無水ケイ酸、アルミナ、酸化チタン、微粒子酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ハイドロキシアパタイト、窒化ホウ素、金属石鹸、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、グンジョウ、コンジョウ等の無機粉体、ナイロン末、ポリアクリル酸アルキル、ポリエチレン末、ポリスチレン、セルロース末、酢酸セルロース末、ポリウレタン、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ビニル樹脂、シルク末等の高分子、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色206号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色205号、黄色401号、青色1号、緑色3号等の有機系色素が挙げられる。また、2種以上の粉体及びこれらの複合体を用いても構わない。同様に粉体の形状、粒径に関しても、特に限定されない。
【0012】
これらの粉体は、公知の方法により事前に表面処理されていても構わない。表面処理の方法としては例えば、油剤処理、金属石鹸処理、無機化合物処理、アミノ酸処理、シリコーン処理、フッ素化合物処理、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、プラズマ処理等が挙げられる。
【0013】
本発明で用いられるフッ素変性シランカップリング剤は化1(式中、R 1 は直鎖または分岐の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基または炭素数4〜50のパーフルオロポリエーテル基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシル基またはハロゲンであり、m、nはそれぞれ、0〜10及び1〜10の整数である。)で表される構造を有する。具体的には、R1としては、CF3、C2F5、C4F9、C6F13、C8F17、C12F25、C16F33、C20F41、C2F5−O−C2F4、C3F7−O−C3F6、C3F7−(O−C3F6)6、C2F5−(O−C2F4)8(O−C3F6)8、C3F7−(O−C2F4)6(O−C3F6)10等が挙げられ、Xとしては、OCH3、OC2H5、OC3H7、OCH(CH3)2、OC4H9、OCH2CH(CH3)2、OC(CH3)3、Cl、Br等が挙げられる。
【0014】
【化1】
R1(CH2)mO(CH2)nSiX3
【0015】
表面処理において、フッ素変性シランカップリング剤は、上記化合物のうちそれぞれ1種または2種以上を混合して用いることができる。フッ素変性シランカップリング剤による処理量は、処理される粉体の重量に対して1〜50重量%が好ましい。さらに好ましくは2〜30重量%である。1重量%未満では耐水性、耐油性が十分ではなく、50重量%を越えると分散性が著しく損なわれる。
【0016】
本発明で用いられる表面処理の手法としては、液相法、気相法、メカノケミカル法等が挙げられる。フッ素変性シランカップリング剤は予め適当な溶剤に希釈して粉体に添加しても、あるいは直接添加してもよい。この時、予め粉体を溶剤に分散させておいてもよい。また、必要に応じて酸またはアルカリを添加してもよい。反応装置はホモミキサー、ディスパーミル、ブレンダー、リボンミキサー、プラネタリー、バキュームニーダー、ヘンシェルミキサー、ロッキングミキサー、ボールミル、振動ミル、ジェットミル、スーパーミキサー、V型混合機、オートクレーブ等を使用することができる。溶剤は、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトン、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール、エタノール、メタノール、水等が挙げられる。また、酸としては、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等が、アルカリとしては、アンモニア、ピリジン、アミン等を用いることができる。その他、スプレードライ法、流動造粒法等が挙げられるが、いかなる方法であれ、フッ素変性シランカップリング剤が処理される粉体表面に被覆されていれば構わない。
【0017】
化粧料中における上記処理粉体の配合量は、化粧料の形態によって異なるが、通常0.1〜99重量%であり、好ましくは0.5〜95重量%である。
【0018】
本発明で用いられる環状シリコーンとしては、通常使用される環状のポリシロキサン構造を有するシリコーンであれば特に限定しないが、好ましくは、化2(式中、R 2 はメチル基であり、aは3〜5の整数である。)で表される環状シリコーンが挙げられる。
【0019】
【化2】
【0020】
環状シリコーンは、上記化合物のうちそれぞれ1種または2種以上を混合して用いることができる。環状シリコーンの化粧料における配合量は、0.5〜50重量%が好ましい。0.5重量%未満では分散性が十分得られず、50重量%を越えても、安定性の増強は望めない。
【0021】
次に本発明の化粧料について詳述する。
【0022】
本発明の化粧料は、一般に従来の粉体を含有する化粧料であれば特に限定されない。例えば、クリームファンデーション、リクイドファンデーション、パウダーファンデーション、ほお紅、白粉、プレストパウダー、アイブロウ、アイシャドウ、アイライナー、マスカラ、口紅、ネイルカラー、化粧下地、ボディパウダー、乳液、ローション、サンスクリーン等が挙げられる。
【0023】
本発明の化粧料の該粉体及び環状シリコーン以外の成分としては、目的とする化粧料の形態に応じて、通常の化粧料に配合される成分から選択して用いることができる。これらの成分としては、例えば、ワセリン、ラノリン、各種ワックス、ロウ類、高級脂肪酸、高級アルコール、炭化水素、エステル、動植物油、シリコーン油、フッ素油、各種ポリマー、界面活性剤、多価アルコール、エタノール、無機及び有機粉体、タール色素、天然色素等の色剤、増粘剤、防腐剤、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、香料、紫外線吸収剤、殺菌剤、保湿剤、制汗剤、水等が挙げられ、本発明の目的を損なわない範囲内で配合可能である。
【0024】
本発明の化粧料は、通常の方法に従って調製することができる。
【0025】
【実施例】
次に本発明の一層の理解のために、処理粉体の製造例及び比較製造例、さらに化粧料の実施例及び比較例を挙げて更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0026】
製造例1(処理粉体)
冷却管を備えたバキュームニーダーにトルエン200gを入れ、これにセリサイト100gを分散させた後、化3に示す構造を有するフッ素変性シランカップリング剤5gを加え、80℃で2時間撹拌した。その後、トルエンを減圧留去し、乾燥、粉砕して表面処理セリサイトを得た。同様の方法で、タルク、マイカ、酸化チタン、無水ケイ酸、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄を表面処理した。
【0027】
【化3】
C8F17C2H4OC2H4Si(OC2H5)3
【0028】
比較製造例1(処理粉体)
フッ素変性シランカップリング剤量を0.5gとして、製造例1と同様の方法で各々の粉体を表面処理した。
【0029】
比較製造例2(処理粉体)
フッ素変性シランカップリング剤量を1gとして、製造例1と同様の方法で各々の粉体を表面処理した。
【0030】
比較製造例3(処理粉体)
フッ素変性シランカップリング剤量を50gとして、製造例1と同様の方法で各々の粉体を表面処理した。
【0031】
比較製造例4(処理粉体)
フッ素変性シランカップリング剤量を75gとして、製造例1と同様の方法で各々の粉体を表面処理した。
【0032】
製造例2(処理粉体)
ヘンシェルミキサーに酸化チタン100gを入れ、予めジクロロメタン10gで希釈した化4に示す構造を有するフッ素変性シランカップリング剤7gを噴霧して加え、常温で10分間撹拌した。その後、60℃で乾燥させ、粉砕して表面処理セリサイトを得た。同様の方法で、マイカ、微粒子酸化チタン、ナイロン末、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、グンジョウを表面処理した。
【0033】
【化4】
CF2(CF3)CF2[OCF(CF3)CF2]6OC3H6Si(OCH3)3
【0034】
次に、本発明の化粧料の実施例について説明する。なお、成分の配合量は重量%である。
【0035】
実施例1(クリームファンデーション)
製造例1の処理粉体及び環状シリコーンとしてオクタメチルシクロテトラシロキサンを用いて、表1に示す処方のクリームファンデーションを調製した。
【0036】
【表1】
【0037】
(製法)
ホモミキサーで成分Bを撹拌しながら、成分Aを添加して分散させる。これに予め混合しておいた成分Cを添加して乳化し、容器に充填してクリームファンデーションを得た。
【0038】
実施例2(クリームファンデーション)
実施例1で用いた環状シリコーンの代わりに、デカメチルシクロペンタシロキサンを用いて、実施例1と同様の方法でクリームファンデーションを調製した。
【0039】
比較例1(クリームファンデーション)
実施例1で用いた環状シリコーンの代わりに、軽質流動パラフィンを用いて、実施例1と同様の方法でクリームファンデーションを調製した。
【0040】
比較例2(クリームファンデーション)
実施例1で用いた表面処理粉体の代わりに、比較製造例1の表面処理粉体を用いて、実施例1と同様の方法でクリームファンデーションを調製した。
【0041】
比較例3(クリームファンデーション)
実施例1で用いた表面処理粉体の代わりに、比較製造例2の表面処理粉体を用いて、実施例1と同様の方法でクリームファンデーションを調製した。
【0042】
比較例4(クリームファンデーション)
実施例1で用いた表面処理粉体の代わりに、比較製造例3の表面処理粉体を用いて、実施例1と同様の方法でクリームファンデーションを調製した。
【0043】
比較例5(クリームファンデーション)
実施例1で用いた表面処理粉体の代わりに、比較製造例4の表面処理粉体を用いて、実施例1と同様の方法でクリームファンデーションを調製した。
【0044】
上記の実施例及び比較例の化粧料について、安定性試験、化粧持ち試験及び使用感試験を行なった。
【0045】
(安定性試験)
調製直後及び1ヶ月間における化粧料の凝集及び分離の状態を目視で観察し、次の基準で判定した。
〇:凝集及び分離がなく、良好
△:一部、凝集または分離がある
×:明らかな凝集または分離があり、不良
【0046】
(化粧持ち試験及び使用感試験)
10人の専門パネラーにより官能評価を行い、次の基準で判定した。
〇:8人以上が良いと感じた
△:4〜7人が良いと感じた
×:4人未満が良いと感じた
【0047】
結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】
表2から明らかなように、本発明のクリームファンデーションは、安定性に優れ、化粧持ち及び使用感の良好なものであった。
【0050】
実施例3(サンスクリーン)
製造例2の処理粉体及び環状シリコーンとしてオクタメチルシクロテトラシロキサンを用いて、実施例1と同様の方法で表3に示す処方のサンスクリーンを調製した。
【0051】
【表3】
【0059】
実施例4(プレストパウダー)
製造例1の処理粉体、デカメチルシクロペンタシロキサン及びドデカメチルシクロヘキサシロキサンを用いて、表7に示す処方のプレストパウダーを調製した。
(製法)
アトマイザーで粉砕した製造例1の処理粉体の成分Aを、ヘンシェルミキサーに移し、予め加熱混合しておいた成分Bを加え撹拌した後、再び粉砕してふるいに通した。これを金皿に圧縮成型してプレストパウダーを得た。
【0060】
【表4】
成分 配合量(%)
A 表面処理セリサイト 30.0
表面処理タルク 56.5
表面処理酸化チタン 3.0
表面処理黄酸化鉄 0.7
表面処理ベンガラ 0.2
表面処理黒酸化鉄 0.1
B デカメチルシクロペンタシロキサン 4.0
ドデカメチルシクロヘキサシロキサン 2.0
スクワラン 3.0
防腐剤 0.5
【0061】
実施例3、4で得られた化粧料はいずれも安定性に優れ、使用感及び化粧持ちが極めて良好なものであった。
【0062】
【発明の効果】
本発明の化粧料は、安定性に優れ、肌上に生じた汗、皮脂による化粧崩れの防止効果及び化粧持続効果に優れ、且つ使用感、特に平滑性の優れたものである。
Claims (2)
- 化1(式中、R 1 は直鎖または分岐の炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基または炭素数4〜50のパーフルオロポリエーテル基であり、Xは炭素数1〜4のアルコキシル基またはハロゲンであり、m、nはそれぞれ、0〜10及び1〜10の整数である。)で表されるフッ素変性シランカップリング剤で処理して得られる粉体及び化2(式中、R 2 はメチル基であり、aは3〜5の整数である。)で表される環状シリコーンを配合し、フッ素変性シランカップリング剤による処理量が、処理される粉体の重量に対して2〜30重量%であることを特徴とする化粧料。
- 化2で表される環状シリコーンを0.5〜50重量%配合することを特徴とする請求項1記載の化粧料。
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