JP4134364B2 - 車両用シート構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用シート構造に係り、特にフロアに対して脱着可能な車両用シート構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車等の車両用シート構造においては、フロアに対して脱着可能とされた車両用シートが知られており、その一例が特開昭63−137054号公報に記載されている。
【0003】
図20に示される如く、この車両用シート構造では、車両用シート100の後下部側方に設けられた操作レバー102を回動操作することによって、図21に示される軸102Aの回動が連結軸103によって、前ロック機構104に伝達される。この結果、前ロック機構104の前ロックプレート106がロック解除方向(図21の矢印X方向)回動し、車体側に配設された前フロアピン108との係止が解除されるようになっている。また、軸102Aが回動すると、サポートレバー110がロック解除方向(図21の矢印Y方向)へ回動して、後ロック機構112の後ロックプレート114と、サポートレバー110の係合部110Aとの係合状態が反転され、スプリング116により、後ロックプレート114は車体側に配設された後フロアピン118との係止が解除されるようになっている。
【0004】
さらに、操作レバー102を回動操作すると、図20に示される車両用シート100が、前フロアピン108を中心として上方へ回動し始め、これにより、車両用シート100がフロアから容易に取り外し可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この車両用シート構造では、車両用シート100の前ロック機構104と後ロック機構112との双方を作動させるために、前ロック機構104と、シート100の後下部側方に設けられた操作レバー102の軸102Aとをシート前後方向に沿って延びる長めの連結軸103によって連結している。この結果、装置が複雑になりシート重量が重くなっていた。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、シート重量を低減でき、車体に対するシートの位置変更作業性を向上できる車両用シート構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明の車両用シート構造は、車体側に取付られたシート固定部材と、
シート下部の前後の何方か一方に設けられ、前記シート固定部材に対してロック状態とアンロック状態とに選択可能なロック機構と、
シート下部の前後の何方か他方に設けられ、前記ロック機構のアンロック状態において前記シート固定部材に対して前後方向へ揺動可能とされた脚部と、
前記脚部に揺動可能に軸支され、前記シート固定部材と係合する係合溝を有する係合部材と、
前記脚部に形成され、前記脚部の揺動により前記シート固定部材に対して前記係合部材をロック状態とするロック位置と、前記シート固定部材に対して前記係合部材を着脱可能とするアンロック位置とへ移動するロック制御部と、
前記脚部に揺動可能に軸支され、前記脚部の揺動に伴う前記ロック制御部の前記アンロック位置への移動状態において前記係合部材と前記脚部との揺動を規制する揺動規制手段と、
を備え、
前記脚部は、前記揺動規制手段による非規制状態にあっては前記係合部材の軸支部位を中心として揺動する一方、前記揺動規制手段による規制状態にあっては前記係合部材における車体との接触部位を中心として揺動することにより、前記係合溝から前記シート固定部材を離間させることを特徴としている。
【0008】
従って、シート固定時には、シート下部の前後の何方か一方に設けられたロック機構が車体側に取付られたシート固定部材に対してロック状態にあり、且つシート下部の前後の何方か他方に設けられた脚部に形成されたロック制御部が、シート固定部材に対して係合部材を係合溝においてロック状態に保持する。
【0009】
また、シートを脱着する場合には、係合部材は揺動規制手段による非規制状態にあって、脚部が係合部材の軸支部位を中心として揺動するため、シートとともに脚部を揺動すると、係合部材に対して脚部が揺動し、脚部に形成されたロック制御部が、シート固定部材に対して係合部材を係合溝において着脱可能とするアンロック位置へ移動し、その後、係合部材と揺動規制手段とが係合して、係合部材と脚部との揺動が規制される。このため、シートとともに脚部をさらに揺動すると、脚部が係合部材における車体との接触部位を中心として揺動することにより、係合溝からシート固定部材が離間する。
【0010】
また、シートを格納状態(タンブル状態)とする場合には、係合部材と揺動規制手段との係合を解除し、シートとともに脚部を更に揺動させる。この結果、係合部材に対して脚部が揺動し、脚部に形成されたロック制御部が、シート固定部材に対して係合部材を係合溝においてロック状態に保持する。
【0011】
従って、従来構造の様にシート前後方向に沿って延びる連結軸を使用しないため、シート重量を低減でき、車体に対するシートの位置変更作業性を向上できる。
【0012】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の車両用シート構造において、前記ロック制御部は、前記脚部の揺動方向に沿って円弧状に延設された切欠であり、該切欠の開口部の両端部には前記シート固定部材をロック状態に保持するフック部が形成されていることを特徴としている。
【0013】
従って、請求項1記載の内容に加えて、シート固定時には、ロック機構が車体側に取付られたシート固定部材に対してロック状態にあり、且つ脚部に、その揺動方向に沿って円弧状に延設された切欠の開口部の両端部に形成されたフック部の一方が、シート固定部材に対して係合部材を係合溝においてロック状態に保持する。
【0014】
また、シートを脱着する場合には、シートとともに脚部を揺動して、脚部に形成された切欠の開口部が係合部材の係合溝と重なり、シート固定部材に対して係合部材を係合溝において着脱可能とする。
【0015】
また、シートを格納状態(タンブル状態)とする場合には、係合部材と揺動規制手段との係合を解除し、シートとともに脚部を更に揺動させる。この結果、係合部材に対して脚部が揺動し、脚部に、その揺動方向に沿って円弧状に延設された切欠の開口部の両端部に形成されたフック部の他方が、シート固定部材に対して係合部材を係合溝においてロック状態に保持する。
【0016】
請求項3記載の本発明は、請求項1または請求項2記載の車両用シート構造において、前記脚部の揺動により前記係合溝から前記シート固定部材を離間させた状態においてシートを車体に対して所定方向へ移動自在とする移動手段を、前記係合部材における前記車体との接触部位に備えることを特徴としている。
【0017】
従って、請求項1または請求項2記載の内容に加えて、脚部の揺動により係合溝からシート固定部材を離間させた状態において、シートを車体に対して所定方向へ移動する場合には、アンロック状態でシートをさらに揺動させると、揺動規制手段により、係合部材と脚部との揺動が規制されているため、脚部及びシートは、移動手段と車体との接触部位を揺動中心として揺動し、係合部とシート固定部材との係合が完全に解除する。この状態でシートは、移動手段よって車体に対して所定方向へ容易に移動させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の車両用シート構造の第1実施形態を図1〜図9に従って説明する。
【0019】
なお、図中矢印FRは車両前方方向を、矢印UPは車両上方方向を、矢印INは車幅内側方向を示す。
【0020】
図6に示される如く、本実施形態の車両用シート構造では、自動車のリヤシート10が、車体のフロアに車両前後方向に沿って延設された2本のレール12に沿って、車両前後方向へ移動可能となっている。なお、レール12には、前後方向に所定の間隔を開けてシート固定部材としてのピン36が車幅方向に沿って配設されている。
【0021】
図1に示される如く、シートクッションフレームの側壁部14(図1には右側の側壁部14のみが示されている)の後部には、後脚部16がボルト、ナット等の連結手段18によって前後方向へ揺動可能に取付けられており、後脚部16は必要に応じてシートクッションフレームの側壁部14の内側方向へ折り畳み可能となっている。
【0022】
左右の後脚部16には、ピン36に対してロック状態(取り外しできない状態)とアンロック状態(取り外し可能な状態)とに選択可能なロック機構19が配設されている。
【0023】
次に、このロック機構19を詳細に説明する。
左右の後脚部16の間にはレバー20が架設されており、レバー20の両端部20Aは、それぞれ略直角に屈曲され後脚部16の内側面に沿って延設されている。レバー20の両端部20Aの中間部は、ピン22によって後脚部16に軸支されており、レバー20は、ピン22を回転中心にして略後方(図1の矢印A方向)及び前方(図1の矢印Aと反対方向)へ揺動可能となっている。
【0024】
レバー20の両端部20Aには、カム24の上端部24Aが、ピン26によって揺動可能に連結されている。カム24の下端部24Bは、ピン28によって、後脚部16に軸支されており、カム24は、ピン28を回転中心にして略前後方向へ揺動可能となっている。
【0025】
従って、レバー20の中間部20Bが図1の矢印A方向へ操作されると、レバー20の両端部20Aに連結された、カム24がピン28を回転中心にして略前方向へ揺動するようになっている。
【0026】
カム24の後部には係合凸部24Cが形成されており、この係合凸部24にラチェット30の凹部30Aが係合可能となっている。ラチェット30は、略中央部がピン32によって、後脚部16に軸支されており、ラチェット30は、ピン32を回転中心にして略前後方向へ揺動可能となっている。
【0027】
後脚部16の下端部には、U字状の溝34が形成されており、この溝34に、レール12内に設けたピン36が挿入するようになっている。ラチェット30の下部に形成されたフック部30Cは、溝34の底部に達したピン36の下方へ潜り込み、後脚部16とピン36とをロック状態に保持するようになっている。
【0028】
ラチェット30の上部に形成されたスプリング係合部30Bと、カム24の上部に形成されたスプリング係合部24Dとの間には、コイルスプリング38が架設されている。このため、カム24がピン28を回転中心にして略前方向へ揺動し、カム24の係合凸部24Cとラチェット30の凹部30Aとの係合が解除されると、コイルスプリング38の張力により、ラチェット30の上部が、ピン32を回転中心にして略前方向へ揺動するため、フック部30Cが略後方へ揺動し、フック部30Cとピン36とがアンロック状態になり、後脚部16がピン36から離脱可能となる。
【0029】
次に、シートクッションフレームの側壁部14の前部左右に形成された前脚部40について説明する。
【0030】
シートクッションフレームの側壁部14の前部左右には、シートの前脚部40がシート下方へ向けて突出形成されており、前脚部40の下端部にはロック制御部としての切欠42が形成されている。この切欠42は、開口部に比べ底部42Aが略前後方向へ下方を凸側とした円弧状に広げられており、切欠42の両端部にはピン36をロック状態に保持する凹部が形成されている。即ち、切欠42の開口部の前部と後部には、フック部40Aとフック部40Bがそれぞれ形成されている。
【0031】
前脚部40には揺動規制手段としてのカム46の上部が、ピン48によって揺動可能に連結されている。カム46の下部前側には係合凸部46Aが形成されており、この係合凸部46Aには、係合部材としてのベースフック50の後部上側に形成された凸部50Aが係合可能となっている。また、カム46には、ピン48に捲着されたスプリング49が係合されており、スプリング49はカム46を、係合凸部46Aがベースフック50と当接する方向へ付勢している。なお、左右のカム46の下部はレバー52によって互いに連結されている。また、ベースフック50の後端部には、ピン53がレバー52と略平行に立設されており、図2に示される如く、ピン53がレール12のフランジ部12Bに当接することによって、ベースフック50のレール12内への落ち込みを防止し、ベースフック50を前脚部40に対して図2に示すロック位置に保持できるようになっている。
【0032】
ベースフック50は、略中央部がピン54によって、前脚部40に軸支されており、ベースフック50は、ピン54を回転中心にして略前後方向へ揺動可能となっている。ベースフック50の下部には、U字状の係合溝56が形成されており、この係合溝56に、レール12内に設けたピン36が挿入するようになっている。従って、この係合溝56の底部に達したピン36の下方へ、前脚部40のフック部40Aとフック部40Bとの何方か一方が潜り込むことによって、シート10とピン36とが外れないようになっている(ロック状態)。
【0033】
ベースフック50の前端部には、移動手段としてのローラ58が軸60によって支持されている。なお、レール12の車両前後方向から見た断面形状は開口部を上方へ向けたハット状とされており、後述する移動時には、レール12の開口部に設けられたフランジ部12Aと、フランジ部12Bのうちシート内側のフランジ部12B上をローラ58が移動するようになっている。
【0034】
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態の車両用シート構造では、シート使用状態、即ち、シートクッションフレームが着座可能状態にある場合には、ロック機構19により後脚部16とピン36とをロック状態に保持されていると共に、図2に示される如く、前脚部40のベースフック50に設けられた係合溝56の底部に達したピン36の下方へ、前脚部40のフック部40Bが潜り込んでおり、前脚部40とピン36とがロック状態になっている。
【0035】
また、シート10を移動する場合には、先ず、後脚部16に設けられたロック機構19のレバー20の中間部20Bを略後方(図1の矢印A方向)へ操作する。この操作によって、レバー20の両端部20Aがピン22を回転中心にして略前方(図1の矢印B方向)へ揺動するため、カム24がピン28を回転中心にして略前方向(図1の矢印B方向)へ揺動する。この結果、カム24の係合凸部24Cとラチェット30の凹部30Aとの係合が解除され、コイルスプリング38の張力により、ラチェット30の上部が、ピン32を回転中心にして略前方向へ揺動するため、フック部30Cが略後方へ揺動し、フック部30Cとピン36との離脱が可能になる。
【0036】
次に、シート10の後部を上方へ引き上げると、図3に示される如く、切欠42の底部とピン36とが摺動し、前脚部40が矢印C方向へ揺動する。この結果、切欠42の開口部へピン36が移動し、ピン36の下方から前脚部40のフック部40Bが抜け出るため、ベースフック50に設けられた係合溝56とピン36との係合が解除可能となる。
【0037】
更に、シート10の後部を上方へ引き上げると、図4に示される如く、カム46の係合凸部46Aが、ベースフック50の凸部50Aに係合する。この結果、前脚部40とベースフック50との揺動が規制され、前脚部40とベースフック50とが一体となって、ローラ58とレール12との接点Pを中心に矢印D方向へ回転する。この結果、ベースフック50に設けられた係合溝56からピン36が抜け出し、両者の係合が解除される。
【0038】
従って、この状態でシート10を前後方向へ移動すると、ローラ58がレール12上を転がるため、容易にシート10を移動することができる。
【0039】
また、図3及び図4の状態でレバー52を略後方(図3及び図4の矢印E方向)へ操作すると、カム46が、スプリング49の付勢力に抗してピン48を中心に矢印E方向へ揺動して、カム46の係合凸部46Aとベースフック50の凸部50Aとの係合が解除する。
【0040】
図5に示される如く、この係合解除状態で、シート10の後部を前方へ倒すと、切欠42の底部42Aがピン36と摺動し、前脚部40が矢印F方向へ揺動する。この結果、ベースフック50に設けられた係合溝56の底部に達しているピン36の下方へ、前脚部40のフック部40Aが潜り込んで、ベースフック50とピン36とがロック状態になる。なお、このロック状態で、図9に示される如く、シート10は折り畳まれた状態、所謂タンブル状態に保持される。
【0041】
なお、タンブル状態(図5、図9の状態)、移動状態(図4、図8の状態)、脱着可能状態(図3の状態)から、シート使用状態(図2、図7の状態)に戻す際に、前脚部40とともにベースフック50が後方へ揺動した場合には、図2に示される如く、ピン53がレール12のフランジ部12Bに当接することによって、ベースフック50の回転が規制されるため、ベースフック50に設けられた係合溝56の底部に達したピン36の下方へ、前脚部40のフック部40Bが潜り込んでロック状態となる。
【0042】
従って、本実施形態の車両用シート構造では、後脚部16に設けられたロック機構19のレバー20を手動操作により解除状態にし、その後シート10を揺動するだけで、前脚部40のロック解除を行える。この結果、従来構造の様にシート前後方向に沿って延びる長めの連結軸を使用しないため、シート重量を低減でき、フロアに対するシートの位置変更作業性を向上できる。
【0043】
次に、本発明の車両用シート構造の第2実施形態を図10及び図11に従って説明する。
【0044】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図10に示される如く、本第2実施形態では、移動手段としてのローラ58が2個が軸60によって支持されており、これらのローラ58がレール12の開口部に設けられたフランジ部12A、12B上をそれぞれ移動するようになっている。
【0046】
図11に示される如く、レール12のフランジ部12A、12Bには、凹部62が形成されており、ローラ58がこれらの凹部62内にある状態で、シート10を下方へ移動すると、ベースフック50の係合溝56内にピン36が入るようになっている。
【0047】
従って、シート10を所定の位置に固定する際の、位置決めがこれらの凹部62を設けることによって極めて容易になる。
【0048】
次に、本発明の車両用シート構造の第3実施形態を図12〜図14に従って説明する。
【0049】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図12に示される如く、本実施形態では、係合部材としてのベースフック64の下部に、2本のU字状の係合溝66、68が前後方向に所定の間隔を開けて形成されており、これらの係合溝66、68の双方が、車体側に設けたピン36にそれぞれ係合するようになっている。また、ベースフック64の上部には、シート後方側が立ち上がった壁部64Aが形成されており、この壁部64Aには、前脚部40にピン48によって揺動可能に連結されている揺動規制手段としてのカム72の端部72Aが係合可能となっている。
【0051】
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態の車両用シート構造では、シート使用状態、即ち、シートクッションフレームが着座可能状態にある場合には、ロック機構19により後脚部16とピン36とをロック状態に保持されていると共に、図12に示される如く、ベースフック50に設けられた係合溝66、68の双方の底部にピン36が当接しており、後側の係合溝68の底部に達したピン36の下方へ、前脚部40のフック部40Bが潜り込むことによって、前脚部40とピン36とがロック状態になっている。
【0052】
また、シート10を車体から取り外す場合には、第1実施形態と同様に後脚部16のロック機構19をロック解除状態とし、シート10の後部を上方へ引き上げる。この時、切欠42の底部とピン36とが摺動し、前脚部40が矢印C方向へ揺動する。この結果、切欠42の開口部へ後側のピン36が移動し、後側のピン36の下方から前脚部40のフック部40Bが抜け出るため、ベースフック64に設けられた係合溝68とピン36との係合が解除可能となる。
【0053】
この状態で、シート10を上方へ引き上げると、図13に示される如く、ベースフック64に設けられた係合溝66、68からピン36が抜け出し、両者の係合が解除され、シート10を車体から取り外せる。
【0054】
また、図12の状態から、シート10の後部を前方へ揺動させると、図14に示される如く、ベースフック64に設けられた係合溝66、68の双方の底部にピン36が当接した状態で、前側の係合溝66の底部に達したピン36の下方へ、前脚部40のフック部40Aが潜り込み、前脚部40とピン36とがロック状態になっている。
【0055】
さらに、この状態では、カム72が、スプリング49の付勢力によりピン48を中心に略下方(図14の矢印G方向)へ揺動し、カム72の端部72Aがベースフック64の壁部64Aとが係合し、フック64と前脚部40との揺動を規制するため、シート10は、このタンブル状態に保持される。
【0056】
なお、このタンブル状態を解除する場合には、レバー52を操作して、カム72を、スプリング49の付勢力に抗してピン48を中心に略上方(図14の矢印H方向)へ揺動することによって、カム72の端部72Aとベースフック64の壁部64Aとの係合を解除すれば良い。
【0057】
従って、本実施形態の車両用シート構造においても、第1実施形態と同様に、シート前後方向に沿って延びる長めの連結軸を使用しないため、シート重量を低減でき、フロアに対するシートの位置変更作業性を向上できる。
【0058】
なお、本実施形態では、ベースフック64に移動手段としてのローラを配設しない構成としたが、図15に示される如く、第1実施形態と同様に、ベースフック64に移動手段としてのローラ58を有するローラユニット74を配設し、図15に二点鎖線で示される如く、シート10を移動する場合には、レール12のフランジ部12A、12B上をローラ58が移動する構成としても良い。
【0059】
次に、本発明の車両用シート構造の第4実施形態を図16〜図19に従って説明する。
【0060】
なお、第1実施形態と同一部材に付いては、同一符号を付してその説明を省略する。
【0061】
図17に示される如く、本実施形態では、車体の床部75にローラガイド76が配設されている。このローラガイド76は樹脂材により構成されており、フロアパネル77に形成された凹部77A上に配設されている。
【0062】
フロアパネル77の凹部77Aの底部には、シート固定部材としてのストライカ79が配設されており、このストライカ79と対向するローラガイド76の部位には、スリット76Aが形成されている。
【0063】
図19に示される如く、ローラガイド76の前端部に形成されたスリット76Aの前部には、タンブル状態保持用凹部92が連続して形成されている。
【0064】
図16に示される如く、本実施形態では、前脚部40の下端部にロック制御部としてのU字状の切欠78が形成されており、この切欠78の下側がフック部40Cとなっている。前脚部40には、係合部材としてのレバー80の中間部がピン82によって揺動可能に連結されており、レバー80の前方下部にはU字状の係合溝84が形成されている。従って、レバー80の係合溝84に挿入されたストライカ79の下方へ、前脚部40のフック部40Cが潜り込むことによって、シート10とストライカ79とが外れないようになっている。
【0065】
また、レバー80の後部には操作ノブ86が設けられている。レバー80には、ピン82に捲着されたスプリング88が係合されており、スプリング88はレバー80を、係合溝84内にストライカ79が入り込む方向(図16の矢印H方向)へ付勢している。従って、操作ノブ86を操作することで、レバー80がスプリング88の付勢力に抗して係合溝84からストライカ79が抜け出す方向(図16の矢印J方向)へ揺動可能になっている。
【0066】
レバー80の前方上部には、シート内側方向にピン90が立設されており、このピン90がローラガイド76の上面76Bに当接している。
【0067】
次に、本実施形態の作用を説明する。
本実施形態では、第1実施形態と同様に、図示を省略した後脚部のロック機構を解除し、シート10の後部を前方へ揺動させると、前脚部40がストライカ79を中心にして略前方(図16の矢印K方向)へ揺動する。この時、レバー80のピン90がローラガイド76の上面76Bに当接しているため、レバー80の揺動が規制される。この結果、前脚部40に対して、レバー80がピン90を中心として図16の矢印J方向に揺動し、図16に二点鎖線で示される如く、レバー80の係合溝84に挿入されたストライカ79の下方から、前脚部40のフック部40Cが抜け出す。
【0068】
この状態で、さらにシート10の後部を前方へ揺動させると、ローラ58がローラガイド76に当接し、前脚部40とレバー80とが、ローラ58とローラガイド76との接点Pを中心に略前方(図16の矢印L方向)へ揺動する。この結果、前脚部40の切欠78からストライカ79が抜け出し両者の係合が解除され、シート10を取り外せる。
【0069】
また、この解除状態で、シート10を前後方向へ移動すると、ローラ58がローラガイド76上を転がるため、容易にシート10を移動することができる。
【0070】
次に、シート10をタンブル状態とする場合には、シート10を前方へ移動し、図18に示される如く、ローラ58をローラガイド76に形成されたタンブル状態保持用凹部92に落とし込む。この状態では、前脚部40が下方へ移動し、前脚部40の切欠78にストライカ79が係合する。また、レバー80のピン90もタンブル状態保持用凹部92に落ち込むため、前脚部40に対して、レバー80が略後方(図18の矢印M方向)に揺動し、前脚部40の切欠78に挿入されたストライカ79の下方に、レバー80の下端部80Aが潜り込み、ロック状態となって、シート10を、このタンブル状態に保持する。
【0071】
従って、本実施形態の車両用シート構造においても、第1実施形態と同様に、シート前後方向に沿って延びる連結軸を使用しないため、シートの重量を低減しつつ、フロアに対するシートの位置変更作業性、つまりシートのスライド、脱着、タンブル状態への変更作業性を向上させることができる。
【0072】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、本実施形態では、移動手段としてローラ58を使用したが、ローラ58に代えて、摺動部材等の他の移動手段を使用しても良い。また、本実施形態では、シート10の後部を引き上げて脱着する構成としたが、これに代えて、本実施形態の構成を前後の脚部を入れ換え且つ前後逆向きに配設し、シート10の前部を引き上げて脱着する構成とても良い。
【0073】
【発明の効果】
請求項1記載の本発明の車両用シート構造は、車体側に取付られたシート固定部材と、シート下部の前後の何方か一方に設けられ、シート固定部材に対してロック状態とアンロック状態とに選択可能なロック機構と、シート下部の前後の何方か他方に設けられ、ロック機構のアンロック状態においてシート固定部材に対して前後方向へ揺動可能とされた脚部と、脚部に揺動可能に軸支され、シート固定部材と係合する係合溝を有する係合部材と、脚部に形成され、脚部の揺動によりシート固定部材に対して係合部材をロック状態とするロック位置と、シート固定部材に対して係合部材を着脱可能とするアンロック位置とへ移動するロック制御部と、脚部に揺動可能に軸支され、脚部の揺動に伴うロック制御部のアンロック位置への移動状態において係合部材と脚部との揺動を規制する揺動規制手段と、を備え、脚部は、揺動規制手段による非規制状態にあっては係合部材の軸支部位を中心として揺動する一方、揺動規制手段による規制状態にあっては係合部材における車体との接触部位を中心として揺動することにより、係合溝からシート固定部材を離間させるため、シート重量を低減でき、車体に対するシートの位置変更作業性を向上できるという優れた効果を有する。
【0074】
請求項2記載の本発明は、請求項1記載の車両用シート構造において、ロック制御部は、脚部の揺動方向に沿って円弧状に延設された切欠であり、切欠の開口部の両端部にはシート固定部材をロック状態に保持するフック部が形成されているため、請求項1記載の効果に加えて、構成が簡単となり、低コスト化が図れるという優れた効果を有する。
【0075】
請求項3記載の本発明は、請求項1または請求項2記載の車両用シート構造において、脚部の揺動により係合溝からシート固定部材を離間させた状態においてシートを車体に対して所定方向へ移動自在とする移動手段を、係合部材における車体との接触部位に備えるため、請求項1または請求項2記載の効果に加えて、シートを円滑に移動することができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態に係る車両用シート構造の要部を示す車両前方内側から見た斜視図である。
【図2】 本発明の第1実施形態に係る車両用シート構造の要部のシート使用状態を示す側面図である。
【図3】 本発明の第1実施形態に係る車両用シート構造の要部のシート脱着可能状態を示す側面図である。
【図4】 本発明の第1実施形態に係る車両用シート構造の要部のシート移動状態を示す側面図である。
【図5】 本発明の第1実施形態に係る車両用シート構造の要部のタンブル状態を示す側面図である。
【図6】 本発明の第1実施形態に係る車両用シート構造を示す車両前方内側から見た斜視図である。
【図7】 本発明の第1実施形態に係る車両用シート構造のシート使用状態を示す側面図である。
【図8】 本発明の第1実施形態に係る車両用シート構造のシート移動状態を示す側面図である。
【図9】 本発明の第1実施形態に係る車両用シート構造のタンブル状態を示す側面図である。
【図10】 本発明の第2実施形態に係る車両用シート構造の要部を示す車両前方内側から見た斜視図である。
【図11】 本発明の第2実施形態に係る車両用シート構造の要部を示す車両前方から見た断面図である。
【図12】 本発明の第3実施形態に係る車両用シート構造の要部のシート使用状態を示す側面図である。
【図13】 本発明の第3実施形態に係る車両用シート構造の要部のシート脱着可能状態を示す側面図である。
【図14】 本発明の第3実施形態に係る車両用シート構造の要部のタンブル状態を示す側面図である。
【図15】 本発明の第3実施形態の変形例に係る車両用シート構造の要部を示す側面図である。
【図16】 本発明の第4実施形態に係る車両用シート構造の要部のシート使用状態を示す側面図である。
【図17】 本発明の第4実施形態に係る車両用シート構造の要部を示す車両前方から見た断面図である。
【図18】 本発明の第4実施形態に係る車両用シート構造の要部のタンブル状態を示す側面図である。
【図19】 本発明の第4実施形態に係る車両用シート構造の要部を示す車両前方内側から見た斜視図である。
【図20】 従来の実施形態に係る車両用シート構造を示す車両斜め前方から見た斜視図である。
【図21】 従来の実施形態に係る車両用シート構造の要部のシート使用状態を示す側面図である。
【符号の説明】
10 シート
14 シートクッションフレームの側壁部
16 後脚部
19 ロック機構
36 ピン(シート固定部材)
40 前脚部
40A フック部
40B フック部
42 切欠(ロック制御部)
46 カム(揺動規制手段)
50 ベースフック(係合部材)
56 係合溝
58 ローラ(移動手段)
62 凹部
64 ベースフック(係合部材)
66 係合溝
68 係合溝
72 カム(揺動規制手段)
76 ローラガイド
79 ストライカ(シート固定部材)
78 切欠(ロック制御部)
80 レバー(係合部材)
84 係合溝
86 操作ノブ
92 タンブル状態保持用凹部

Claims (3)

  1. 車体側に取付られたシート固定部材と、
    シート下部の前後の何方か一方に設けられ、前記シート固定部材に対してロック状態とアンロック状態とに選択可能なロック機構と、
    シート下部の前後の何方か他方に設けられ、前記ロック機構のアンロック状態において前記シート固定部材に対して前後方向へ揺動可能とされた脚部と、
    前記脚部に揺動可能に軸支され、前記シート固定部材と係合する係合溝を有する係合部材と、
    前記脚部に形成され、前記脚部の揺動により前記シート固定部材に対して前記係合部材をロック状態とするロック位置と、前記シート固定部材に対して前記係合部材を着脱可能とするアンロック位置とへ移動するロック制御部と、
    前記脚部に揺動可能に軸支され、前記脚部の揺動に伴う前記ロック制御部の前記アンロック位置への移動状態において前記係合部材と前記脚部との揺動を規制する揺動規制手段と、
    を備え、
    前記脚部は、前記揺動規制手段による非規制状態にあっては前記係合部材の軸支部位を中心として揺動する一方、前記揺動規制手段による規制状態にあっては前記係合部材における車体との接触部位を中心として揺動することにより、前記係合溝から前記シート固定部材を離間させることを特徴とする車両用シート構造。
  2. 前記ロック制御部は、前記脚部の揺動方向に沿って円弧状に延設された切欠であり、該切欠の開口部の両端部には前記シート固定部材をロック状態に保持するフック部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用シート構造。
  3. 前記脚部の揺動により前記係合溝から前記シート固定部材を離間させた状態においてシートを車体に対して所定方向へ移動自在とする移動手段を、前記係合部材における前記車体との接触部位に備えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の車両用シート構造。
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