JP4132846B2 - 単結晶の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電デバイス用基板などの各種圧電材料として有用な組成式BaTaGaSi14で示される単結晶の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在までに、CaGaGe14構造(空間群P321)を持つ組成式BaTaGaSi14で示される単結晶に関しては、特開平11−171696号公報に開示されている単結晶や、B.V.Millらによる報告(Zh.Neorg.Khim.,1998,vol.43,no.8)において、粉末X線回折の結果が示されているのみであり、大型で品質のよい単結晶を育成した報告例はない。
【0003】
ところで、CaGaGe14構造を持つ多くの組成について、ルツボ内の融液に種結晶を浸し、これを回転させつつ上方に引き上げて種結晶下端に単結晶を成長させるチョクラルスキー法(CZ法)による単結晶の育成が試みられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、CaGaGe14構造を持つ一組成のBaTaGaSi14の育成を、他の組成で多くの育成例のある[001]方位の種結晶を用いて試みたところ、図1に示すように、育成開始直後に多結晶化し、良質な単結晶は得られなかった。
【0005】
本発明の目的は、圧電材料として十分な品質を有する、組成式BaTaGaSi14で示される単結晶の製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、たとえばCZ法による場合、引き上げに用いる種結晶の結晶方位面と同一の結晶方位面を有する単結晶が前記種結晶下端に成長して析出することに鑑み、どのような結晶方位に結晶の育成を行えば、圧電材料として十分な品質(たとえば音速の均一性に優れるなど)を有する特定組成の単結晶が得られるのか、について鋭意検討した。
【0007】
その結果、[001]軸から所定角度で傾いた方位に結晶の育成を行い、単結晶を成長させることで、より具体的には種結晶の[001]軸から所定角度で傾いた結晶方位面に融液を接触させて引き上げ、単結晶を成長させることで、圧電材料として十分な品質を有する特定組成の単結晶が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の観点では、
組成式BaTaGaSi14で示される単結晶を製造する方法であって、
[001]軸から74度以上90度以下(好ましくは76.1度以上90度以下、特に好ましくは90度)の角度で傾いた結晶方位に結晶の育成を行い、単結晶を成長させることを特徴とする単結晶の製造方法が提供される。
【0009】
本発明の第2の観点では、
組成式BaTaGaSi14で示される単結晶を製造する方法であって、
種結晶の[001]軸から74度以上90度以下(好ましくは76.1度以上90度以下、特に好ましくは90度)の角度で傾いた結晶方位面をルツボ内の融液に接触させて引き上げ、前記種結晶下端に単結晶を成長させることを特徴とする単結晶の製造方法が提供される。
【0010】
本発明では、[001]軸からの傾斜角度が90度に近づくほど、得られる単結晶の結晶径を大きくでき、単結晶の生産性が向上する。
【0011】
本発明において、[001]軸に垂直かつ[100]軸からθ(0≦θ≦30)度回動させた方向に延びるベクトルvに向けて、[001]軸を含む面内で[001]軸からΦ(74≦Φ≦90)度回動させた方向を、前記組成式で示される単結晶の引き上げ方向vとし、
格子定数をa,cとし、
結晶径拡大部角度をΨとしたときに、下記関係式を満足する結晶径拡大部角度(Ψ)で単結晶を成長させることが好ましい。
Ψ≦4(90−cos−1((sinΦcosθ/a+sinΦsinθ/a√3−5cosΦ/c)/((1/a)+(1/a√3)+(−5/c)1/2 )。
【0012】
本発明において、[100]方位に結晶を引き上げるときに、さらに27.8度以下の結晶径拡大部角度で結晶の育成を行うことが好ましい。
【0013】
本発明において、[120]方位に結晶を引き上げるときに、さらに32.1度以下の結晶径拡大部角度で結晶の育成を行うことが好ましい。
【0014】
本発明では、
組成式BaTaGaSi14で示され、
単結晶の引き上げ方向に対して略垂直方向に、[001]軸から74度以上90度以下(好ましくは76.1度以上90度以下、特に好ましくは90度)の角度で傾いた結晶方位面を有する種結晶が提供される。
【0015】
本発明では、
組成式BaTaGaSi14で示され、
単結晶の引き上げ方向に対して略垂直方向に、[001]軸から74度以上90度以下(好ましくは76.1度以上90度以下、特に好ましくは90度)の角度で傾いた結晶方位面を有する単結晶が提供される。
【0016】
本発明に係る単結晶は、共振器やフィルタなどの各種圧電素子の構成要素として好適に用いることができる。
【0017】
本明細書において、結晶径拡大部とは、種結晶の下端で成長する単結晶が所定の結晶径になるまで広がっていく肩部(図6における符号30に相当する)のことである。また、結晶径拡大部の角度とは、単結晶の引き上げ方向に対する結晶径拡大部の角度のことである。
【0018】
本明細書において、たとえば
【数1】
Figure 0004132846
面を表す場合には、(hkl)と略記することとする。
【0019】
本明細書において、hklと記述した面は、{hkl}と{hl}とが等価であるものとし、(hkl)、(k(h+k)l)、((h+k)hl)、(h(h+k))、((h+k)kl)、(khl)、(hl)、(k(h+k)l)、((h+k)hl)、(h(h+k)l)、((h+k)k)、(k)の全てを表すものとする。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、従来例と対比しながら、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は従来法によるBaTaGaSi14の育成例を示す写真、
図2は本発明法によるBaTaGaSi14の育成例を示す写真、
図3は本発明法によるBaTaGaSi14の育成例を示す写真、
図4は従来法により育成されたBaTaGaSi14の成長痕を模式化したものであって[001]方向(z軸またはc軸)から見た概要図、図5は本発明法によるBaTaGaSi14の結晶構造を説明するための模式斜視図、
図6はBaTaGaSi14を[120]方位に引き上げた際のファセットを[100]方向(=x軸)から見た場合の概要図、
図7は結晶の引き上げ方向を説明するための概要図、
図8は本発明を実施するために用いる単結晶引き上げ装置の一例を示す概略断面図である。
【0021】
現在までに育成報告のあるCaGaGe14構造を持つ単結晶は、現在工業化されている多くの酸化物単結晶と同様に、CZ法により[001]方位(z軸またはc軸。図7参照)に引き上げて育成されており、先に本出願人が為した特願2001−149533に示されるCaNbGaSi14やSrNbGaSi14以外の組成(たとえば、前記組成のNbをTaに置換したCaTaGaSi14やSrTaGaSi14)については、育成時の温度勾配を適当な範囲に保つ限りは多結晶化の問題は生じなかった。
【0022】
しかしながら、BaTaGaSi14組成につき、実際に、[001]方位に引き上げて結晶育成を行ったところ、図1に示すように、育成開始直後に多結晶化し、透明な結晶部分は僅かしか得られなかった。
【0023】
次に、この得られた透明な結晶部分を切り出し、これを種結晶として単結晶の育成を行ったところ、図2に示すように、[001]方向(z軸またはc軸)に垂直で、かつ[120]方向(y軸)から[100]方向(x軸またはa1軸)に向けて約15度傾いた成長方位に育成が行えた。
【0024】
この得られた結晶は、結晶径拡大部から双晶が生じており、ファセット成長モードによる内部のデンドライト成長(通常の成長とは異なる異常成長であって、結晶中に穴があいて白濁して見える現象を伴うモザイク状の成長)を生じたが、その直胴部は単一配向の単結晶として得られた。この得られた単結晶について、結晶径拡大部で生じた双晶部分を背面ラウエ法により調べたところ、CaTaGaSi14やSrTaGaSi14とは異なり、[100]軸(x軸またはa1軸)に垂直で、[001]軸(z軸またはc軸)から約16度(16.048度)のズレが双晶の前後で生じていることが確認できた。この結果から、測定値との一致の良い015([001]方向と約8.0度)を双晶面と判断した。したがって、結晶育成中に015成長を抑制すれば、双晶の問題を回避できると考えられる。
【0025】
ところで、図4に示すように、実際に、[100]方向に引き上げて育成した単結晶には、成長痕20,20が観察された。この成長痕20,20を面としてその法線ベクトルと[100]方向とのなす角度から、(100)面ファセットと、(110)面ファセットであることが分かった。
【0026】
一方、成長ファセットとしては、010が顕著であり、[100]軸(x軸またはa1軸)に垂直で、[001]軸(z軸またはc軸)から[120]軸(y軸)に向けて傾いた法線ベクトルを持つファセット(成長稜)は観察されなかった。このことは、引き上げ軸下方への結晶成長は、010ファセット成長により015成長を抑制できるが、結晶径拡大部の[001]方向(z軸またはc軸)については、015成長を抑制するファセット成長のモードがないことを意味する。しかし、双晶として生じた部分が、育成方向に対して成長するモードは、双晶による結晶ズレ角である約16度、本体と傾いた010となるはずである。したがって、この結晶ズレ角(約16度)を超える角度で径を拡大させていくと、成長時に双晶部が下方に伝播していくことになるが、片側の径の拡大角度をこの双晶と直胴部の育成方向に対する結晶方位ズレ角以下とすれば、結晶内への双晶の伝播は抑制されることになる。
【0027】
そこで、たとえばCZ法を用いて[120]方向に育成を行う場合には、図5および6に示すように、双晶化の要因となる結晶面が出ないような角度を限度として、単結晶の成長方向を制御すればよい。具体的には、結晶径拡大部の形成角度を、双晶と[120]方向とのズレ角(16.048度)の2倍である32.096度、すなわち約32.1度以下とすることで、双晶の問題が回避されると考えられる。すなわち、結晶の引き上げ方向が[120]方向である場合には、結晶径拡大部30の角度(Ψ)を32.1度以下となるように制御して結晶育成を行うことにより、双晶の問題を効果的に回避できる。なお、Ψは、32.1度以下であれば、0度に近い値であってもよいが、できる限り大きいことが好ましい。Ψ値が小さくなるほど、得られる単結晶の径が細くなり、単結晶の生産効率が低下するからである。
【0028】
以上のことから、[001]軸から[120]方向に傾いた方位に結晶の引き上げを行う場合において、[001]軸から73.952(90−16.048)度、すなわち約74度以上の角度で傾いた結晶方位面を有する種結晶を用いて結晶の引き上げを行えばよいこととなる。なお、[001]軸からの傾きは、74度以上であればよく、特に好ましくは90度である。[001]軸からの傾きが90度に近づくほど、上述した結晶径拡大部角度(Ψ)をより大きく採ることができるからである。
【0029】
また、たとえばCZ法を用いて[100]方向に育成を行う場合には、図5に示すように、(010)面に隣接する、双晶化の要因となる(110)面および(100)面が出ないような角度を限度として、単結晶の成長方向を制御すればよい。このとき、上述した双晶面と[120]方向とのズレ角(16.048度)は[100]方向に対して斜めになっているので、[100]方向に結晶を引き上げる場合、双晶面と[100]方向との角度は約6.94(6.943)度となる。したがって、双晶部分の結晶角度のズレは、13.89(6.943×2)度となる。その結果、結晶径拡大部の形成角度を、双晶と[100]方向とのズレ角(13.89度)の2倍である27.78度、すなわち約27.8度以下とすることで、双晶の問題が回避されると考えられる。すなわち、結晶の引き上げ方向が[100]方向である場合には、結晶径拡大部の角度(Ψ)を27.8度以下となるように制御して結晶育成を行うことにより、双晶の問題を効果的に回避できる。なお、Ψは、27.8度以下であれば、0度に近い値であってもよいが、できる限り大きいことが好ましい。上述した理由と同様の理由による。実際に、結晶径拡大部の角度を26度として結晶の育成を行ったところ、図3に示すように、双晶のない単結晶が得られることが確認できた。
【0030】
以上のことから、[001]軸から[100]方向に傾いた方位に結晶の引き上げを行う場合において、[001]軸から76.11(90−13.89)度、すなわち約76.1度以上の角度で傾いた結晶方位面を有する種結晶を用いて結晶の引き上げを行えばよいこととなる。なお、[001]軸からの傾きは、76.1度以上であればよく、特に好ましくは90度である。[001]軸からの傾きが90度に近づくほど、後述する結晶径拡大部角度(Ψ)をより大きく採ることができ、その結果、得られる単結晶の生産効率が向上するからである。
【0031】
結晶径拡大部の角度Ψは、たとえば、育成時の温度や、引き上げ速度、高周波発振機の出力、ヒータの出力などを制御することにより、コントロール可能である。
【0032】
以上より、組成式BaTaGaSi14で示される単結晶の結晶育成を行う場合には、結晶の引き上げ方向、換言すれば用いる種結晶の結晶方位面が重要であり、さらにこうした単結晶の結晶育成を生産性良く行う場合には、結晶径拡大部の角度が重要であることが分かる。
【0033】
なお、ここで述べた結晶の成長方向とは、CZ法における引き上げ方向に留まらず、結晶成長のプロセスにおいて実際に結晶が成長すると考えられる方向、すなわち結晶成長界面である固液界面に垂直な方向の全てを意味する。
【0034】
以下に示す説明では、こうした結晶の引き上げ方向と、肩部(図6における符号30に相当する)の拡大角度との関係について一般式を求めることとする。
【0035】
まず、CaGaGe14構造を持つ単結晶は、空間群P321に属しているためにc軸が3回対称軸、a軸が2回対称軸になっている。そのため、c軸に垂直な面内でa軸からの傾きが±30度を超える範囲については、c軸の3回対称性によりa軸からの傾きが±30度の範囲と等価となる。
【0036】
ここで、図7に示すように、[001]軸に垂直で、かつ[100]軸からθ度(−30≦θ≦30)回動させた方向に延びるベクトルvに向けて、[001]軸を含む面内で[001]軸からΦ度回動させた方向を、本発明において引き上げられる結晶の引き上げ方向ベクトルv(θ、Φ)とする。a軸における2回対称性からベクトルv(θ、Φ)は、ベクトルv(−θ、180−Φ)と等価となる。なお、本発明では、(015)面と(015)面とは等価であるため、ベクトルv(θ、Φ)は、ベクトルv(−θ、Φ)と等価とみなしている。このため、単結晶の引き上げ方向を示すベクトルは、0≦θ≦30と0≦Φ≦90との範囲のみを考えればよい。
【0037】
0≦θ≦30、0≦Φ≦90である引き上げ方向で単結晶を育成する場合、最も引き上げ方向との角度の小さい015は、(105)面となる。そこで、表記組成の単結晶を育成できる結晶径の拡大部の角度は、式(Ψ=4(90−ω))で示されるΨ以下とする必要がある。なお、角度ωは(105)面の法線ベクトルと引き上げ方向vとのなす角である。
【0038】
さて、(hkl)面の法線ベクトルは、xyz座標系では、(h/a,(2k+h)/a√3,l/c)と表されるため、(105)面の法線ベクトルは、(1/a,1/a√3,−5/c)となる。
【0039】
また、c軸(=z軸)に垂直でa1軸(=x軸)からθ度回転させたベクトルvとc軸を含む面内において、c軸からvベクトル方向にΦ度回転させた方向v(θ、Φ)(=引き上げ方向)は、
v=(sinΦcosθ,sinΦsinθ,cosΦ)で示される。
【0040】
ωは、ベクトルvと(105)の法線ベクトルとのなす角に等しいから、ωは、
ω=cos−1((sinΦcosθ/a+sinΦcosθ/a√3−5cosΦ/c)/((1/a)+(1/a√3)+(−5/c)1/2 )となる。よって、Ψは、
Ψ=4(90−cos−1((sinΦcosθ/a+sinΦsinθ/a√3−5cosΦ/c)/((1/a)+(1/a√3)+(−5/c)1/2 )となる。
【0041】
さて、BaTaGaSi14単結晶(格子定数a=8.509Å、c=5.194Å)をa1軸方向(x方向)に対して引き上げる場合、θ=0,Φ=90であるから、結晶径拡大部の角度は27.8度以下となる。またy軸方向(y方向)に引き上げる場合、θ=30,Φ=90に相当するから結晶径拡大部の角度は32.1度以下となる。
【0042】
よって、組成式BaTaGaSi14で示される単結晶の引き上げ方位vと、結晶径拡大部の角度Ψとの関係は、
Ψ=4(90−cos−1((sinΦcosθ/a+sinΦsinθ/a√3−5cosΦ/c)/((1/a)+(1/a√3)+(−5/c)1/2 )で表すことができる。ただし、式中のθは0≦θ≦30、Φは74≦Φ≦90である。
【0043】
上述した本発明に係る、組成式BaTaGaSi14で示される単結晶を製造するには、たとえば図8に示される単結晶引き上げ装置2を用いることができる。図8に示すように、本実施形態に係る単結晶引き上げ装置2は、ルツボ4を有し、このルツボ4は、断熱材6の略中心部分に形成された凹部62に配置してある。断熱材6には、ルツボ4を被覆するように耐火物円筒8が被せてあり、これら断熱材6および耐火物円筒8は、耐火物ハウジング10で被覆される。
【0044】
耐火物円筒8および耐火物ハウジング10の頂部壁略中心位置には、それぞれ開口部82,102が形成してあり、これら開口部82,102には、回転させながら上方に引き上げ自在な結晶引き上げ軸12が挿入してある。
【0045】
引き上げ軸12の下端には、種結晶122が取り付けてあり、引き上げ軸12の上端には、動力源(図示省略)が連結される。耐火物ハウジング10の外周には、高周波発振器としての高周波誘導コイル14が巻かれており、このコイル14に高周波電流を流すことにより、前記ルツボ4が誘導加熱され、その結果、前記ルツボ4中の融液42は所定温度に維持される。
【0046】
以上のような構成の単結晶引き上げ装置2を用いて、常法、たとえばCZ法により単結晶を製造する。
【0047】
まず、組成式BaTaGaSi14を構成する元素の酸化物または炭酸塩(たとえば、BaCO、Ta、Ga、SiOなど)を、粉末状で所定の原子比になるように混合し、円柱状に圧縮成形した後、大気中、1000〜1400℃で焼結して焼結体を得る。
【0048】
次いで、得られた焼結体を、気密性の保たれた単結晶引き上げ装置2のルツボ4内に収容した後、少量の酸素を含む窒素雰囲気下で、前記焼結体を融解させて融液42とする。
【0049】
次いで、結晶引き上げ軸12を下方に移動させることにより、その下端に取り付けてある種結晶122をルツボ4中の融液42に接触させる。本実施形態では、融液42に、種結晶122の[001]軸から74度以上90度以下の角度で傾いた結晶方位面を接触させる。
【0050】
次いで、この種結晶122を引き上げ軸12を回転させながら上方に引き上げることにより、付着してくる融液42を凝固させつつ結晶成長させ、単結晶124を育成する。[100]方位に結晶を引き上げる場合には、好ましくは27.8度以下の結晶径拡大部角度で結晶育成を行う。[120]方位に結晶を引き上げる場合には、好ましくは32.1度以下の結晶径拡大部角度で結晶育成を行う。単結晶の成長条件としては、特に限定されないが、結晶回転数が、通常1〜100rpm、好ましくは5〜50rpm、種結晶122の引き上げ速度が、通常0.1〜10mm/hr、好ましくは0.5〜5mm/hrである。
【0051】
このようにして製造される本発明に係る単結晶は、たとえば共振器やフィルタなどの各種圧電素子の構成要素に用いて好適である。
【0052】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0053】
【実施例】
次に、本発明の実施の形態をより具体化した実施例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。但し、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
【0054】
実施例1
【0055】
本実施例では、図8に示す単結晶引き上げ装置2を用いた。高周波発振器として周波数70kHzのものを用いた。ルツボ4としては、直径50mm、高さ50mmおよび厚さ1.5mmの白金(Pt)製ルツボを用いた。ルツボ4中には、BaTaGaSi14の融液約375gを挿入した。
そして、[100]方位のBaTaGaSi14単結晶、すなわち[001]軸とのなす角が約90度の角度で傾いた結晶方位面を有するBaTaGaSi14単結晶で構成される種結晶122を、Nに1vol%のOを混入した雰囲気で、ルツボ4内の融液に接触させ、[100]方位に約27度の結晶径拡大部の角度をもって、0.5mm/hrの速度で引き上げて結晶の育成を行った。
その結果、図3に示すように、長辺約27mm、短辺約16mm、長さ約100mmの透明で、クラックフリーなBaTaGaSi14単結晶が得られた。
【0056】
結晶の一部を粉砕して粉末X線回折による相同定を行った結果、回折ピークは全てCaGaGe14構造を有する相として指数付けでき、その他の異相ピークは全く認められず単一相であることが確認できた。結晶の表面状態は、荒れ、異物質の付着等は認められず、滑らかで光沢が認められる。結晶内に、気泡、割れ及びインクルージョンなどの巨視的な欠陥は認められず、偏光顕微鏡によるオルソスコープ像から均一な単結晶になっていることが確認できた。本実施例で得られた単結晶は、水晶とほぼ同程度の硬度であり、室温付近で化学的、物理的に安定である。また、水晶等で用いられる通常の加工条件で、クラック発生等の問題もなく、結晶切断及び研磨ができ、結晶の取り扱いが容易であることが確認できた。
【0057】
実施例2
[001]軸とのなす角が約80度の角度で傾いた結晶方位面を有する種結晶122を用いた以外は、実施例1と同様の条件で結晶育成を行った。その結果、実施例1と同様の性質を有する、長辺約20mm、短辺約12mm、長さ約110mmの透明で、クラックフリーなBaTaGaSi14単結晶が得られた。
【0058】
比較例1
[001]軸とのなす角が約60度の角度で傾いた結晶方位面を有する種結晶122を用いた以外は、実施例1と同様の条件で結晶育成を行った。その結果、約16度、本体から傾いた双晶部分の010ファセットが伝播し、結晶は多結晶となった。これにより、実施例1〜2の優位性が確認できた。
【0059】
参考例1
結晶径拡大部の角度を60度とした以外は、実施例1と同様の条件で結晶育成を行ったところ、結晶径拡大部で双晶が生じる傾向が見られた。
【0060】
【発明の効果】
以上説明してきたように、本発明によれば、圧電材料として十分な品質を有する、組成式BaTaGaSi14で示される単結晶の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は従来法によるBaTaGaSi14の育成例を示す写真である。
【図2】 図2は本発明法によるBaTaGaSi14の育成例を示す写真である。
【図3】 図3は本発明法によるBaTaGaSi14の育成例を示す写真である。
【図4】 図4は従来法により育成されたBaTaGaSi14の成長痕を模式化したものであって[001]方向(z軸またはc軸)から見た概要図である。
【図5】 図5は本発明法によるBaTaGaSi14の結晶構造を説明するための模式斜視図である。
【図6】 図6はBaTaGaSi14を[120]方位に引き上げた際のファセットを[100]方向(=x軸)から見た場合の概要図である。
【図7】 図7は結晶の引き上げ方向を説明するための概要図である。
【図8】 図8は本発明を実施するために用いる単結晶引き上げ装置の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
2… 単結晶引き上げ装置
4… ルツボ
42… 融液
6… 断熱材
62… 凹部
8… 耐火物円筒
82… 開口部
10… 耐火物ハウジング
102… 開口部
12… 結晶引き上げ軸
122… 種結晶
124… 単結晶
14… 高周波誘導コイル

Claims (5)

  1. 組成式BaTaGaSi14で示される単結晶を製造する方法であって、
    [001]軸から74度以上90度以下の角度で傾いた結晶方位に結晶の育成を行い、単結晶を成長させることを特徴とする単結晶の製造方法。
  2. 組成式BaTaGaSi14で示される単結晶を製造する方法であって、
    種結晶の[001]軸から74度以上90度以下の角度で傾いた結晶方位面をルツボ内の融液に接触させて引き上げ、前記種結晶下端に単結晶を成長させることを特徴とする単結晶の製造方法。
  3. [001]軸に垂直かつ[100]軸からθ(0≦θ≦30)度回動させた方向に延びるベクトルvに向けて、[001]軸を含む面内で[001]軸からΦ(74≦Φ≦90)度回動させた方向を、前記組成式で示される単結晶の引き上げ方向vとし、
    格子定数をa,cとし、
    結晶径拡大部角度をΨとしたときに、下記関係式を満足する結晶径拡大部角度(Ψ)で単結晶を成長させることを特徴とする請求項1または2に記載の単結晶の製造方法。
    Ψ≦4(90−cos−1((sinΦcosθ/a+sinΦsinθ/a√3−5cosΦ/c)/((1/a)+(1/a√3)+(−5/c)1/2
  4. [100]方位に結晶を引き上げるときに、さらに27.8度以下の結晶径拡大部角度で結晶の育成を行うことを特徴とする請求項3に記載の単結晶の製造方法。
  5. [120]方位に結晶を引き上げるときに、さらに32.1度以下の結晶径拡大部角度で結晶の育成を行うことを特徴とする請求項3に記載の単結晶の製造方法。
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