JP4835582B2 - 酸化アルミニウム単結晶の製造方法 - Google Patents
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これらの育成方法によって酸化アルミニウム単結晶を製造するには、まずイリジウム、モリブデン、あるいはタングステンなど高融点金属のルツボに原料を充填し、高周波誘導加熱や抵抗加熱によりルツボを加熱し原料を溶融させ、原料が溶融した後、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ単結晶を成長させる。その後の結晶育成としては、チョクラルスキー法(Cz法)では、種結晶を所定の回転速度で回転させながら所定の速度で上方に引き上げて単結晶を育成し、キロプロス法では、回転や引き上げをせず液中での結晶成長を促進させて育成させるが、これらを組み合わせた方法もある。
結晶の大型化とともに重要なのが内部品質であるが、酸化アルミニウムは単結晶を育成すると、気泡が発生する。このため、特許文献1では、結晶用原料を加熱溶融する際に、加熱によって結晶用原料から発生するガスを除去するに十分な程度の圧力に、炉体内の圧を減圧した後、該ガスを除去しながら徐々に結晶用原料を溶融させ、引き続き、酸素および窒素または不活性ガスからなる混合ガスを導入し、十分な酸素分圧下、炉体内の圧を大気圧に戻してから成長結晶を引き上げている。
従来の高周波誘導加熱炉の熱源がルツボ自体であるのに対し、抵抗加熱炉はルツボの周りからヒーターによって加熱する。したがって、高周波誘導加熱炉では通常10℃/cm以上の温度勾配となるのに対し、抵抗加熱炉は2℃/cm以下の温度勾配とすることができる。そのため、育成された結晶内には温度差による歪が極めて小さい特徴があり、結晶の大型化や歪の小さい結晶を得るには有利である。しかしながら、抵抗加熱炉を用いた場合でも粒界や気泡の発生を抑制するために、迅速にかつ精度よくシーディングに最適な温度に調節できる酸化アルミニウム単結晶の育成方法が望まれていた。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、種結晶の先端が融解するのを確認した後、種結晶を迅速に融液表面の上方30〜80mmの位置に上昇させ、種結晶の先端が融解しすぎないようにすることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第2又は3の発明において、種付け温度は、種結晶の側面を観察して、梨地状に粗雑化されていた側面が融解して鏡面状態になったときとすることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、種結晶の側面を観察する際、種結晶を0.2〜20rpmで回転させることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
こうして得られた単結晶を用いれば、優れた特性を有する電子部品材料、光学用部品材料を提供できる。
本発明は、抵抗加熱方式の溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法であることから、酸化アルミニウム単結晶の育成には、貴金属で形成されたルツボと、ルツボの周囲に保温材としてグラファイトで形成された炉材と、炉材の内側にカーボンやタングステン製ヒーターの抵抗加熱炉を含む装置を用いる。炉材の上方は遮蔽板で遮蔽されている。
ルツボは、単結晶用原料であるアルミナの融点が2000℃強であるため、イリジウム製、モリブデン製など高融点金属を用いることが好ましい。保温材としては、発泡ジルコニア等を充填してもよい。保温材は、特にルツボの底部を十分に保温できるように取り付けることが望ましい。ルツボの上方には、材料融液から単結晶を回転させながら引き上げるための引き上げ装置が設けられている。装置には、融液表面を観察するための窓と、種結晶及び成長結晶をモニターするためのCCDカメラが設けられる。
エッチング量は、特に限定されるわけではないが、1〜10μmであればよく、2〜8μmが好ましい。エッチング量が1μm未満では、梨地面の粗さが小さすぎて、種結晶側面が融解したかどうか識別しにくい。一方、粗さが大きすぎて10μmを超えると、表面にパーティクルが付着しやすいだけでなく、融液と接触した時に、育成される結晶の品質を悪化させたりするなどの不具合が生じる。
本発明においては、単結晶用原料として通常の酸化アルミニウム粉末を用いる。酸化アルミニウム粉末は、実質的にAlとOの2元素からなる酸化アルミニウムである。また、目的とする酸化アルミニウム単結晶の種類に合わせて、AlとOのほかに、Ti、Cr、Si、Ca、Mgなどを含んでいてもよい。このうちSi、Ca、Mgなどは、焼結助剤の成分として不可避的に含まれうるが、その含有量は極力少ないことが望ましい。特に、Siは10重量ppm以下であることが望ましい。また、酸化アルミニウムの直径や密度は、特に制限されないが、取り扱い上、例えば、直径は、10mm以下、好ましくは5mm以下であるものがよく、密度は、5g/cm3以下、好ましくは3g/cm3以下であるものがよい。
まず、単結晶用原料をルツボに入れ、ヒーターによってルツボを加熱し、原料を溶融して原料融液を得る。
酸化アルミニウム単結晶を育成する工程で、結晶中に小傾角粒界や双晶が発生することがある。この要因としては、原料融液中の介在物や不純物の存在、結晶組成のずれや変動に起因するもの、結晶育成時の固液界面形状、結晶の径方向および軸方向の大きな温度勾配、融液中および融液上空での熱の不均一な流れ、結晶成長後の急激な冷却など多岐にわたる。酸化アルミニウム単結晶の育成においては、結晶育成時の固液界面形状がこのなかで最も大きな影響を及ぼす。
そのためには、種結晶を融液に接触させ結晶を徐々に成長させていくが、このシーディング過程において、融液を適切な温度に制御することによって急激な動径方向の成長速度を抑えることが重要である。固液界面形状を凸にすることによって小傾角粒界や双晶の発生を防止することができる。
酸化アルミニウム単結晶を育成する工程で、結晶中に小傾角粒界や双晶が発生するのを抑制するには、結晶育成時のシーディング温度の制御が重要である。
このグラフによれば、種結晶が融解した温度(シーティング温度)を0℃としたとき、これよりも1℃から4℃下げた範囲の温度で種結晶を融液に接触させて育成を開始し、肩部の成長が終了した時点で結晶育成を中止すると、得られた結晶は、凸部の長さが20mm以上となっており、そして、この条件でさらに結晶育成を継続した結晶には粒界が発生しなかった。すなわち、グラフの最も右側に位置する点では、シーティング温度を−0.3℃とした場合であるが、凸部の長さは極めて長く52mmであった。また、シーティング温度を−2℃付近、−3.5℃付近とし種結晶を融液に接触させて育成すると、凸部の長さは徐々に短くなり、それぞれ44mm、24mmとなって、20mmを超えていた。
このようにして、適切な温度でシーディングした場合は、急激な結晶成長が抑えられ10時間以上の時間をかけて肩部を育成することができる。その結果、育成当初から固液界面形状が融液に向かって凸の状態を維持し続けることができる。
育成した単結晶を取り出し、得られた結晶の外観観察を行って、小傾角粒界や双晶がないかどうか確かめた。結晶をウエハーにスライスし、X線トポグラフ像を観察してウエハー小傾角粒界を測定した。小傾角粒界や双晶が少ないほど良好な単結晶が育成されていることを示している。
抵抗加熱炉を用い、モリブデン製ルツボに4N(99.99%)のAl2O3原料を21kg投入した。装置には、融液表面を観察するための窓と、種結晶及び成長結晶をモニターするためのCCDカメラを設置した。種結晶は、パウダーエッチング装置を使用して、あらかじめ側面を梨地状にしておいた。
この原料を融点に達するまで12時間かけて徐々に加熱した。原料融解後、さらに15℃程度高い温度に炉内温度を調節し4時間この温度で保持した後、この温度から2時間かけておよそ20℃下げた。このときの温度測定はヒーター外周にあるグラファイト製の断熱材に差し込まれた熱電対を用いた。
温度の下降とともに、種結晶を0.5rpmの速度で回転させながら融液5mm上まで2時間かけて降下させ、それとともに、炉内温度を毎時3〜5℃の速度で上昇させていき、6.5℃上昇した時点で種結晶先端がわずかに融解したのが確認された。そこで、種結晶を迅速に融液の直上50mmまで退避させ、それ以上種結晶が融解することを防止した。
その後、炉内温度を1.7℃下げて十分に安定させたら、再度、種結晶を融液に接触するまで下降させ、シーディングを行って結晶育成を開始した。その後、急激な結晶成長は抑えられ14時間で肩部が形成された。
180時間育成した後、結晶を取り出し得られた結晶の外観観察を行ったところ、小傾角粒界や双晶がない結晶を得ることができた。また、この結晶をウエハーにして、X線トポグラフ像を観察したところ、すべてのウエハー小傾角粒界は確認できなかった。
種結晶先端がわずかに融解した温度から3.8℃下げて十分に安定させ、再度、種結晶を融液に接触するまで下降させ、シーディングを行って結晶育成を開始した以外は、実施例1と同様にして実験を行った。シーディングの後、急激な結晶成長は抑えられ6時間で肩部が形成された。
165時間育成した後、結晶を取り出し得られた結晶の外観観察を行ったところ、小傾角粒界や双晶がほとんどない結晶を得ることができた。また、この結晶をウエハーにして、X線トポグラフ像を観察したところ、190枚中3枚のウエハーで粒界が確認された。
種結晶を融解させるまでは上記の実施例1と同様な方法をとり、種結晶先端がわずかに融解した温度から、さらに1.2℃上昇させて十分に温度を安定させた。その後、再度、種結晶を融液に接触するまで下降させシーディングを行ったが、10分後に種結晶が落下し結晶育成ができなかった。
種結晶先端がわずかに融解した温度から6.3℃下げて十分に安定させたら、再度、種結晶を融液に接触するまで下降させ、シーディングを行って結晶育成を開始した。その後、急激に結晶が成長し2時間で肩部が形成された。
155時間育成した後、結晶を取り出し得られた結晶の外観観察を行ったところ、小傾角粒界や双晶が多数ある結晶となった。また、この結晶をウエハーにして、X線トポグラフ像を観察したところ、184枚中78枚のウエハーで粒界が確認された。
2 肩部
3 結晶の固液界面形状(凸部)
4 凸部の長さ
Claims (5)
- 抵抗加熱炉を用い、その炉体内のルツボに単結晶用原料を入れて加熱溶融し、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ、所定の速度で上方に引き上げて単結晶を成長させる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、
単結晶用原料が加熱溶融した後、種結晶を下降させて融液表面の上方10mm以内の位置に保持し、種結晶の先端が融解するのを確認してから、種結晶の融解温度よりも1〜4℃低い温度を種付け温度として、種結晶を原料融液表面に接触させることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法。 - 種結晶は、主面をa面、側面をc面およびm面で形成するa軸種結晶であって、側面があらかじめ梨地状に粗雑化されていることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 種結晶の先端が融解するのを確認した後、種結晶を迅速に融液表面の上方30〜80mmの位置に上昇させ、種結晶の先端が融解しすぎないようにすることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 種付け温度は、種結晶の側面を観察して、梨地状に粗雑化されていた側面が融解して鏡面状態になったときとすることを特徴とする請求項2又は3に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 種結晶の側面を観察する際、種結晶を0.2〜20rpmで回転させることを特徴とする請求項4に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
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