JP4835582B2 - 酸化アルミニウム単結晶の製造方法 - Google Patents

酸化アルミニウム単結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、酸化アルミニウム単結晶の製造方法に関し、より詳しくは、抵抗加熱炉を用いた溶融固化法により単結晶を成長させる際に、種付け(シーディング)後の結晶径の急成長を抑制して高品質な酸化アルミニウム単結晶を製造する方法に関する。
酸化アルミニウム単結晶は、青色LEDや白色LEDを作製する際のエピ成長基板として多く利用されている。これらのLEDは、省エネルギーの観点で照明分野への普及が拡大することが予想されており多方面から注目されている。
酸化アルミニウム単結晶の製造には様々な方法があるが、良質で大型の結晶を得るために、ほとんどの場合が溶融固化法で育成されている。特に、溶融固化法の一つであるチョクラルスキー法(Cz法)のような引き上げ法、あるいはキロプロス法のような液中成長法は、単結晶の大型化が容易であり、加えて歪の少ない良質な結晶を得やすいことから工業的に用いられてきている。
これらの育成方法によって酸化アルミニウム単結晶を製造するには、まずイリジウム、モリブデン、あるいはタングステンなど高融点金属のルツボに原料を充填し、高周波誘導加熱や抵抗加熱によりルツボを加熱し原料を溶融させ、原料が溶融した後、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ単結晶を成長させる。その後の結晶育成としては、チョクラルスキー法(Cz法)では、種結晶を所定の回転速度で回転させながら所定の速度で上方に引き上げて単結晶を育成し、キロプロス法では、回転や引き上げをせず液中での結晶成長を促進させて育成させるが、これらを組み合わせた方法もある。
溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を育成する場合、これまで高周波による誘導加熱方式を用いることが多かった。一般的には、イリジウム金属で形成されたルツボと、ルツボの周囲をアルミナ、ジルコニアなどの耐火煉瓦やジルコニア製フェルトなどで覆って保温性を高め、ルツボ上空も同様の高温材料で保温空間を構築して結晶育成に最適な温度勾配を形成している(例えば、特許文献1参照)。
結晶の大型化とともに重要なのが内部品質であるが、酸化アルミニウムは単結晶を育成すると、気泡が発生する。このため、特許文献1では、結晶用原料を加熱溶融する際に、加熱によって結晶用原料から発生するガスを除去するに十分な程度の圧力に、炉体内の圧を減圧した後、該ガスを除去しながら徐々に結晶用原料を溶融させ、引き続き、酸素および窒素または不活性ガスからなる混合ガスを導入し、十分な酸素分圧下、炉体内の圧を大気圧に戻してから成長結晶を引き上げている。
これにより気泡の発生を抑制することが可能となったが、気泡のみならず、小傾角粒界や双晶の発生が入りやすいことも知られている。この問題点を解決する方法が提案されている。種結晶の先端が著しく融解した状態で結晶育成を行った場合は、a軸育成を行なったとしても多くの粒界が発生する。また、Si濃度が高い種結晶では種結晶を融液に接触させ結晶を徐々に成長させていく(以下、シーディングという)時に種結晶表面の融解が発生し、このような表面状態のまま融液に種結晶を浸し成長させると、種結晶先端の不完全な結晶性から粒界が発生しやすくなり、これが粒界の伝播原因となる。そのため、本出願人は、種結晶として結晶中のSi濃度の低いものを用いることにより、シーディング時に種結晶先端にみられる融解が抑えられ、その結果、粒界の発生量が低減し高品質な単結晶を製造できることを見出している。
しかし、このような種結晶を用いた場合でも、シーディング温度が高い場合は種結晶から成長結晶が切り離れる。反対にシーディング時に温度が低すぎると種付け後の結晶成長が急速に行われ、これもまた気泡や粒界の発生を招くことになる。種結晶を適正なシーディング温度に調節し、しかも種結晶の表面が激しく融解しない状態に維持することが重要である。しかし、この温度範囲は最適温度の±2℃程度と範囲が狭いこと、融点が2050℃と高温のため、精度のよい温度測定が容易ではないことなどから、作業者は多くの経験を必要とし、また温度調節にも手間がかかっていた。これは、結晶の大型化において切実な問題であり、ルツボの大口径化や保温材の重量増など作業者の取り扱いが負担になってきている。
近年、カーボンやタングステン製ヒーター、あるいはグラファイト製の断熱材の特性が改善された結果、抵抗加熱炉を用いて酸化アルミニウムの単結晶を作製することが行われるようになった。
従来の高周波誘導加熱炉の熱源がルツボ自体であるのに対し、抵抗加熱炉はルツボの周りからヒーターによって加熱する。したがって、高周波誘導加熱炉では通常10℃/cm以上の温度勾配となるのに対し、抵抗加熱炉は2℃/cm以下の温度勾配とすることができる。そのため、育成された結晶内には温度差による歪が極めて小さい特徴があり、結晶の大型化や歪の小さい結晶を得るには有利である。しかしながら、抵抗加熱炉を用いた場合でも粒界や気泡の発生を抑制するために、迅速にかつ精度よくシーディングに最適な温度に調節できる酸化アルミニウム単結晶の育成方法が望まれていた。
特開2007−246320号公報
本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑み、抵抗加熱炉を用いた溶融固化法により単結晶を成長させる際に、種付け(シーディング)後の結晶径の急成長を抑制して高品質な酸化アルミニウム単結晶を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記従来の問題点を解決するために鋭意研究を重ね、単結晶を引き上げる際に、結晶周辺部からの放熱を抑制し凹界面を形成せず、かつ固液界面形状が融液に向かって凸状となり、その形状が維持されるように原料融液を加熱することにより、動径方向への結晶成長を抑制することができ、種結晶を保持中に、融液温度を低下させ、種結晶の先端が融解した温度よりも1℃から4℃低い温度を最適な種付け温度として、種結晶を原料融液表面に接触させることにより、抵抗加熱炉を用いた場合でも粒界や気泡の発生を抑制して、迅速にかつ精度よくシーディングに最適な温度に調節でき、酸化アルミニウム単結晶を育成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第の発明によれば、抵抗加熱炉を用い、その炉体内のルツボに単結晶用原料を入れて加熱溶融し、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ、所定の速度で上方に引き上げて単結晶を成長させる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、単結晶用原料が加熱溶融した後、種結晶を下降させて融液表面の上方10mm以内の位置に保持し、種結晶の先端が融解するのを確認してから、種結晶の融解温度よりも1〜4℃低い温度を種付け温度として、種結晶を原料融液表面に接触させることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第の発明において、種結晶は、主面をa面、側面をc面およびm面で形成するa軸種結晶であって、側面があらかじめ梨地状に粗雑化されていることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第の発明において、種結晶の先端が融解するのを確認した後、種結晶を迅速に融液表面の上方30〜80mmの位置に上昇させ、種結晶の先端が融解しすぎないようにすることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第2又は3の発明において、種付け温度は、種結晶の側面を観察して、梨地状に粗雑化されていた側面が融解して鏡面状態になったときとすることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第の発明によれば、第の発明において、種結晶の側面を観察する際、種結晶を0.2〜20rpmで回転させることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
本発明によれば、炉体内のルツボに単結晶用原料を入れて抵抗加熱によって溶融し、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ、所定の速度で上方に引き上げて単結晶を成長させる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、固液界面形状を融液に向かって凸に維持するように加熱することで、迅速にかつ精度よくシーディングに最適な温度に容易に調節することができ、高品質な単結晶を製造することができる。
こうして得られた単結晶を用いれば、優れた特性を有する電子部品材料、光学用部品材料を提供できる。
以下、本発明の酸化アルミニウム単結晶の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
また、本発明の酸化アルミニウム単結晶の製造方法は、抵抗加熱炉を用い、その炉体内のルツボに単結晶用原料を入れて加熱溶融し、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ、所定の速度で上方に引き上げて単結晶を成長させる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、単結晶用原料が加熱溶融した後、種結晶を下降させて融液表面の上方10mm以内の位置に保持し、種結晶の先端が融解するのを確認してから、種結晶の融解温度よりも1〜4℃低い温度を種付け温度として、種結晶を原料融液表面に接触させることを特徴とする。
1.抵抗加熱炉
本発明は、抵抗加熱方式の溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法であることから、酸化アルミニウム単結晶の育成には、貴金属で形成されたルツボと、ルツボの周囲に保温材としてグラファイトで形成された炉材と、炉材の内側にカーボンやタングステン製ヒーターの抵抗加熱炉を含む装置を用いる。炉材の上方は遮蔽板で遮蔽されている。
この装置には、必要により、炉体内を減圧する手段と、減圧度をモニターする手段と、炉体内に窒素または不活性ガスを供給する手段を設けることができる。
ルツボは、単結晶用原料であるアルミナの融点が2000℃強であるため、イリジウム製、モリブデン製など高融点金属を用いることが好ましい。保温材としては、発泡ジルコニア等を充填してもよい。保温材は、特にルツボの底部を十分に保温できるように取り付けることが望ましい。ルツボの上方には、材料融液から単結晶を回転させながら引き上げるための引き上げ装置が設けられている。装置には、融液表面を観察するための窓と、種結晶及び成長結晶をモニターするためのCCDカメラが設けられる。
種結晶は、純度が高い酸化アルミニウム結晶であれば限定されないが、チョクラルスキー法、キロプロス、HEMなどの製造方法によって得られたものが好ましく、得られる単結晶製品の用途によって適宜選択することができる。酸化アルミニウム単結晶の塊を所定の結晶方位、すなわち主面をa面、側面をc面およびm面で形成するa軸種結晶とすることが望ましい。
種結晶の側面は、あらかじめ梨地状に粗雑化(梨地加工)されているものが好ましい。梨地加工とは、種結晶の側面に微細な凹凸を均一に形成させ、つや消し面とする表面処理の一種である。梨地加工を施す方法は限定されない。例えば、加工すべき面に向かって微小砥粒を噴射するパウダーエッチング装置を使用し、微小な粒子径を持つアルミナより硬度が高いシリコンカーバイトなどのパウダーを高速で吹き付ける方法が挙げられる。前記パウダーエッチングの代わりに、酸エッチング、アルカリエッチングもしくは酸とアルカリの複合エッチングを用いてもよい。エッチング液としては、例えば酸エッチングの場合、HF/HNO系の混酸などの酸性エッチング液を採用することができ、アルカリエッチングの場合には、KOH,NaOHなどのアルカリ性エッチング液を採用できる。これにより、加工される側面が徐々に粗雑になり梨地化される。
エッチング量は、特に限定されるわけではないが、1〜10μmであればよく、2〜8μmが好ましい。エッチング量が1μm未満では、梨地面の粗さが小さすぎて、種結晶側面が融解したかどうか識別しにくい。一方、粗さが大きすぎて10μmを超えると、表面にパーティクルが付着しやすいだけでなく、融液と接触した時に、育成される結晶の品質を悪化させたりするなどの不具合が生じる。
CCDカメラは、あらかじめ梨地状に粗雑化(梨地加工)されている種結晶の側面が、どの程度融解したかを観察する撮像手段である。CCDカメラには種々のタイプがあるが、例えば、NDフィルタによって減光し断熱材に開けられた観察窓から種結晶を低倍率観察する方法が使用できる。CCDカメラには種結晶側面の画像が写し出される。CCDカメラ によって得られる像をTVなどの画像表示装置に表示すれば、結晶面の粗雑さを画面上でチェックすることが可能になる。
2.単結晶用原料
本発明においては、単結晶用原料として通常の酸化アルミニウム粉末を用いる。酸化アルミニウム粉末は、実質的にAlとOの2元素からなる酸化アルミニウムである。また、目的とする酸化アルミニウム単結晶の種類に合わせて、AlとOのほかに、Ti、Cr、Si、Ca、Mgなどを含んでいてもよい。このうちSi、Ca、Mgなどは、焼結助剤の成分として不可避的に含まれうるが、その含有量は極力少ないことが望ましい。特に、Siは10重量ppm以下であることが望ましい。また、酸化アルミニウムの直径や密度は、特に制限されないが、取り扱い上、例えば、直径は、10mm以下、好ましくは5mm以下であるものがよく、密度は、5g/cm以下、好ましくは3g/cm以下であるものがよい。
単結晶用原料が酸化アルミニウム焼結体であれば、半導体製造用の市販品を使用できるが、次に示すような方法によって製造することもできる。例えば、焼成するとαアルミナに転化するαアルミナ前駆体のゾル又はゲルにαアルミナ粒子を種として添加し、ゾルはゲル化した後、この種晶を添加されたαアルミナ前駆体のゲルを900〜1350℃の温度で焼結し、得られる焼結生成物を粉砕する。ベルヌーイ法で製造された酸化アルミニウム単結晶用原料を直径20mm以下に粉砕して得られるクラックル原料も使用できる。これは、比表面積が0.1m/g未満と非常に小さく吸着ガスは少ない。
3.単結晶用原料の溶融
まず、単結晶用原料をルツボに入れ、ヒーターによってルツボを加熱し、原料を溶融して原料融液を得る。
単結晶用原料が融点に達するまでの加熱速度は、特に制限されるわけではないが、急速に加熱せずに長時間かけて徐々に加熱するほうが、単結晶中への気泡の取り込みを抑えることができるので、例えば10時間以上、特に12時間かけて徐々に加熱することが望ましい。次に、単結晶用原料の融解後も、炉内温度を10〜20℃高くなるように3時間以上、特に5時間以上、得られた融液を加熱する。このときの温度測定はヒーター外周にあるグラファイト製の断熱材に差し込まれた熱電対を用いて行う。
この際、炉内は不活性ガス雰囲気とするが、必要により減圧してもよい。ただし、酸素を導入するとヒーターが酸化して急速に劣化するため、酸素がほとんど含まれない低酸素濃度雰囲気下で単結晶用原料を溶解することが望ましい。
4.結晶育成時の固液界面形状の制御
酸化アルミニウム単結晶を育成する工程で、結晶中に小傾角粒界や双晶が発生することがある。この要因としては、原料融液中の介在物や不純物の存在、結晶組成のずれや変動に起因するもの、結晶育成時の固液界面形状、結晶の径方向および軸方向の大きな温度勾配、融液中および融液上空での熱の不均一な流れ、結晶成長後の急激な冷却など多岐にわたる。酸化アルミニウム単結晶の育成においては、結晶育成時の固液界面形状がこのなかで最も大きな影響を及ぼす。
融液に種結晶を接触させて結晶を引き上げ、肩部の成長が終了した時点で結晶育成を中止すると、得られた結晶から界面形状を確認することができる。図1に得られた結晶の固液界面形状の一例を示す。種結晶1の主面(下部)から細長く結晶が成長し、その後、結晶の直径が大きくなり、肩部2が形成される。肩部2が形成されるときには、融液の内部では、固液界面が下に凸になった凸部3が形成されている。このような固液界面形状における凸の長さ4は、シーディングの温度が低いほど小さくなる傾向がある。
固液界面形状が融液に対し凸であれば、発生した小傾角粒界や双晶も結晶内部へは伸長せず多結晶化が生じ難いと考えられる。ところが、原料融液が結晶化し液面より上に露出すると、露出した結晶周辺部から輻射によって放出される量の方が結晶中央部からの放熱よりも多く、その結果、結晶周辺部が冷やされて固液界面は凹になり易い。この凹になりやすい傾向は、温度勾配がより小さい場合、とりわけ抵抗加熱炉で顕著であるが、これは、温度勾配が小さいためにわずかな温度の低下で急激に動径方向に結晶が成長するからである。したがって、この動径方向の成長速度を十分に抑えて、結晶周辺部からの放熱を抑制し凹界面を形成しないようにする必要がある。
そのためには、種結晶を融液に接触させ結晶を徐々に成長させていくが、このシーディング過程において、融液を適切な温度に制御することによって急激な動径方向の成長速度を抑えることが重要である。固液界面形状を凸にすることによって小傾角粒界や双晶の発生を防止することができる。
本発明においては、単結晶を引き上げる際に、固液界面の結晶が融液に向かって凸部を形成するように、低酸素濃度雰囲気下で結晶周辺部からの放熱を抑制しながら原料融液を加熱する。この低酸素濃度雰囲気下では、単結晶を引き上げる際、図2(左上)のように、固液界面の結晶が融液に向かって凸部を形成し、結晶周辺部からの放熱を抑制しながら原料融液を加熱してゆくと、成長界面は融液側に凸形状となって液中成長し、その後径方向に成長してゆく。
単結晶の育成は、常法に従い回転数や引き上げ速度を調整してネック部および肩部を形成し、引き続き直胴部を形成する。この際、放射温度計などを用いて単結晶と原料融液との界面近傍における融液表面の温度を測定することが好ましい。結晶形状の調節は、育成中の結晶重量を測定し、直径や育成速度などを計算によって導き出し、回転速度や引き上げ速度を調整して行うことができる。また、結晶重量の変化をフィードバックして融液温度をコントロールできる。
結晶成長によってルツボ内の原料融液高さがある程度低下すると、図2(左下)のように、成長界面の先端がルツボ底面付近に達する。その時点で成長界面の先端がルツボ底面と接触してしまわないように、成長界面の先端凸部の長さが60mmを超えないようにすることが望ましい。そのためには、ルツボ下部を十分に保温するとともに、ルツボ底部を十分に加熱できるようにすることが好ましい。これにより、先端凸部が径を拡大して肩部と同程度になり、最終的には図2(右下)のように、肩部の径よりも大きく成長する。
5.結晶育成時のシーディング温度の制御
酸化アルミニウム単結晶を育成する工程で、結晶中に小傾角粒界や双晶が発生するのを抑制するには、結晶育成時のシーディング温度の制御が重要である。
図3は、上記の方法で種結晶が融解した温度から融液の温度を下げてシーディングを行い、肩部が形成されたら結晶育成を終了して液界面形状がどのように変化するか、そのとき、結晶中に粒界が存在するかどうかをグラフにしたものである。
このグラフによれば、種結晶が融解した温度(シーティング温度)を0℃としたとき、これよりも1℃から4℃下げた範囲の温度で種結晶を融液に接触させて育成を開始し、肩部の成長が終了した時点で結晶育成を中止すると、得られた結晶は、凸部の長さが20mm以上となっており、そして、この条件でさらに結晶育成を継続した結晶には粒界が発生しなかった。すなわち、グラフの最も右側に位置する点では、シーティング温度を−0.3℃とした場合であるが、凸部の長さは極めて長く52mmであった。また、シーティング温度を−2℃付近、−3.5℃付近とし種結晶を融液に接触させて育成すると、凸部の長さは徐々に短くなり、それぞれ44mm、24mmとなって、20mmを超えていた。
しかし、4℃よりもさらに下げた温度で種結晶を融液に接触させて育成を開始した場合は、凸部の長さも7〜12mm程度と著しく小さくなり、さらに温度が低い場合は界面形状がフラットないし凹となった。このような低い温度でシーディングを行った結晶には、いずれにも多数の粒界が発生した。同様に、上記の方法で種結晶が融解した温度から融液の温度をさらに上げてシーディングを行った場合は、結晶は成長せずに融液から種結晶が切り離れた(グラフの左側に位置する2点)。
上記したとおり、界面を凸形状に形成するのに適したシーディングの温度の範囲は、高周波誘導加熱炉を用いた場合、±2℃以内、望ましくは±1℃以内と非常に狭いが、本発明の抵抗加熱炉を用いた方法によれば、この範囲が1〜4℃まで温度広がり調整しやすくなる。
そのため、本発明では、原料を融解した後、原料が固化しない程度まで温度を下げて、炉内温度を10〜30℃低下させておく。種結晶を徐々に下ろしながら融液の直上10mm以内で保持し、それに合わせてヒーターの出力を調整して融液の温度を1時間あたり5℃以内の速度で上昇させると、ある温度で種結晶の先端側面がわずかに融解する。このとき、種結晶を迅速に融液の直上50mmまで退避させ、それ以上種結晶が融解することを防止する。
その後、炉内温度が十分に安定したら、再度、種結晶を融液に接触するまで下降させ、次に、種結晶の先端がわずかに融解した温度よりも1〜4℃低い温度(種付け温度)となるように融液温度を下降させる。そして、この種付け温度でシーディングを行って結晶育成を開始する。種付け温度は、結晶育成に用いる種結晶の主面をa面、側面をc面およびm面で形成するいわゆるa軸種結晶であった場合には、種結晶の側面をCCDカメラで観察して、種結晶の側面(c面)が融解して鏡面となる温度を確認することができる。種結晶の側面が融解することで鏡面となる状態をより正確に確認するためは、種結晶を0.2〜20rpmで回転させるとよい。回転速度は、1〜10rpmが好ましい。
このようにして、適切な温度でシーディングした場合は、急激な結晶成長が抑えられ10時間以上の時間をかけて肩部を育成することができる。その結果、育成当初から固液界面形状が融液に向かって凸の状態を維持し続けることができる。
本発明によれば、育成当初から固液界面形状を融液に向かって凸に維持し続けることができ、迅速かつ精度よくシーディングに最適な温度に容易に調節することができ、小傾角粒界や双晶がほとんどない結晶を得ることができる。本方法を用いると、経験の浅い操作者が行っても迅速に適正のシーディング温度に制御することができ、成長結晶の小傾角粒界の生成は著しく減少する。こうして得られた単結晶を用いれば優れた特性を有する電子部品材料、光学用部品材料を提供できる。
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
〔結晶の評価〕
育成した単結晶を取り出し、得られた結晶の外観観察を行って、小傾角粒界や双晶がないかどうか確かめた。結晶をウエハーにスライスし、X線トポグラフ像を観察してウエハー小傾角粒界を測定した。小傾角粒界や双晶が少ないほど良好な単結晶が育成されていることを示している。
〔実施例1〕
抵抗加熱炉を用い、モリブデン製ルツボに4N(99.99%)のAl原料を21kg投入した。装置には、融液表面を観察するための窓と、種結晶及び成長結晶をモニターするためのCCDカメラを設置した。種結晶は、パウダーエッチング装置を使用して、あらかじめ側面を梨地状にしておいた。
この原料を融点に達するまで12時間かけて徐々に加熱した。原料融解後、さらに15℃程度高い温度に炉内温度を調節し4時間この温度で保持した後、この温度から2時間かけておよそ20℃下げた。このときの温度測定はヒーター外周にあるグラファイト製の断熱材に差し込まれた熱電対を用いた。
温度の下降とともに、種結晶を0.5rpmの速度で回転させながら融液5mm上まで2時間かけて降下させ、それとともに、炉内温度を毎時3〜5℃の速度で上昇させていき、6.5℃上昇した時点で種結晶先端がわずかに融解したのが確認された。そこで、種結晶を迅速に融液の直上50mmまで退避させ、それ以上種結晶が融解することを防止した。
その後、炉内温度を1.7℃下げて十分に安定させたら、再度、種結晶を融液に接触するまで下降させ、シーディングを行って結晶育成を開始した。その後、急激な結晶成長は抑えられ14時間で肩部が形成された。
180時間育成した後、結晶を取り出し得られた結晶の外観観察を行ったところ、小傾角粒界や双晶がない結晶を得ることができた。また、この結晶をウエハーにして、X線トポグラフ像を観察したところ、すべてのウエハー小傾角粒界は確認できなかった。
〔実施例2〕
種結晶先端がわずかに融解した温度から3.8℃下げて十分に安定させ、再度、種結晶を融液に接触するまで下降させ、シーディングを行って結晶育成を開始した以外は、実施例1と同様にして実験を行った。シーディングの後、急激な結晶成長は抑えられ6時間で肩部が形成された。
165時間育成した後、結晶を取り出し得られた結晶の外観観察を行ったところ、小傾角粒界や双晶がほとんどない結晶を得ることができた。また、この結晶をウエハーにして、X線トポグラフ像を観察したところ、190枚中3枚のウエハーで粒界が確認された。
〔比較例1〕
種結晶を融解させるまでは上記の実施例1と同様な方法をとり、種結晶先端がわずかに融解した温度から、さらに1.2℃上昇させて十分に温度を安定させた。その後、再度、種結晶を融液に接触するまで下降させシーディングを行ったが、10分後に種結晶が落下し結晶育成ができなかった。
〔比較例2〕
種結晶先端がわずかに融解した温度から6.3℃下げて十分に安定させたら、再度、種結晶を融液に接触するまで下降させ、シーディングを行って結晶育成を開始した。その後、急激に結晶が成長し2時間で肩部が形成された。
155時間育成した後、結晶を取り出し得られた結晶の外観観察を行ったところ、小傾角粒界や双晶が多数ある結晶となった。また、この結晶をウエハーにして、X線トポグラフ像を観察したところ、184枚中78枚のウエハーで粒界が確認された。
本発明の方法によって得られる単結晶の固液界面形状を示す説明図である。 結晶引き上げ時の種結晶と固液界面形状(凸部)の様子、及びルツボの中で徐々に液中成長してゆく結晶の形状変化を示す説明図である。 結晶育成時のシーディング温度と結晶の固液界面形状(凸部)の長さの関係を示したグラフである。
符号の説明
1 種結晶
2 肩部
3 結晶の固液界面形状(凸部)
4 凸部の長さ

Claims (5)

  1. 抵抗加熱炉を用い、その炉体内のルツボに単結晶用原料を入れて加熱溶融し、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ、所定の速度で上方に引き上げて単結晶を成長させる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、
    単結晶用原料が加熱溶融した後、種結晶を下降させて融液表面の上方10mm以内の位置に保持し、種結晶の先端が融解するのを確認してから、種結晶の融解温度よりも1〜4℃低い温度を種付け温度として、種結晶を原料融液表面に接触させることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
  2. 種結晶は、主面をa面、側面をc面およびm面で形成するa軸種結晶であって、側面があらかじめ梨地状に粗雑化されていることを特徴とする請求項に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
  3. 種結晶の先端が融解するのを確認した後、種結晶を迅速に融液表面の上方30〜80mmの位置に上昇させ、種結晶の先端が融解しすぎないようにすることを特徴とする請求項に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
  4. 種付け温度は、種結晶の側面を観察して、梨地状に粗雑化されていた側面が融解して鏡面状態になったときとすることを特徴とする請求項2又は3に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
  5. 種結晶の側面を観察する際、種結晶を0.2〜20rpmで回転させることを特徴とする請求項に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
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