JP4904862B2 - 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及び得られる酸化アルミニウム単結晶 - Google Patents

酸化アルミニウム単結晶の製造方法及び得られる酸化アルミニウム単結晶 Download PDF

Info

Publication number
JP4904862B2
JP4904862B2 JP2006070465A JP2006070465A JP4904862B2 JP 4904862 B2 JP4904862 B2 JP 4904862B2 JP 2006070465 A JP2006070465 A JP 2006070465A JP 2006070465 A JP2006070465 A JP 2006070465A JP 4904862 B2 JP4904862 B2 JP 4904862B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
crystal
raw material
aluminum oxide
single crystal
melt
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2006070465A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007246320A (ja
Inventor
彰 寺島
憲治 村下
利行 小見
英章 寒河江
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2006070465A priority Critical patent/JP4904862B2/ja
Publication of JP2007246320A publication Critical patent/JP2007246320A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4904862B2 publication Critical patent/JP4904862B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Crystals, And After-Treatments Of Crystals (AREA)

Description

本発明は、酸化アルミニウム単結晶の製造方法と得られる酸化アルミニウム単結晶に関し、より詳しくは、ピットとマイクロバブルおよびインクルージョン(内包物)の発生を抑制して効率的に酸化アルミニウム単結晶を製造する方法、およびこの方法で得られ電子部品材料や光学用部品材料に適した高品質な酸化アルミニウム単結晶に関するものである。
酸化アルミニウム単結晶は、青色LEDや白色LEDを作製する際のエピ成長基板として多く利用されている。これらのLEDは、省エネルギーの観点で照明分野への普及が拡大することが予想されており多方面から注目されている。
酸化物単結晶の育成方法は様々あるが、LN、LT、YAGや酸化アルミニウムなどの酸化物単結晶材料の大部分は、その結晶特性や大きな結晶径のものが得られることから溶融固化法で育成されている。特に、溶融固化法の一つであるチョクラルスキー法(Cz法)は、汎用性があり技術的完成度が高いことから最も広く用いられている。
チョクラルスキー法によって酸化物単結晶を製造するには、まずルツボに酸化物原料を充填し、高周波誘導加熱法や抵抗加熱法によりルツボを加熱し原料を溶融する。原料が溶融した後、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ、種結晶を所定の回転速度で回転させながら所定の速度で上方に引き上げて単結晶を成長させる。
しかし、酸化アルミニウム単結晶をチョクラルスキー法で成長させると、結晶中に無数の微小な気泡が発生しやすい。気泡には光散乱レーザートモグラフ法(非特許文献1参照)に従い、レーザー光を照射したときに雲状に確認できるマイクロバブルといわれるものがある。この微小な気泡には、エピ成長基板となるウエハーをポリッシュ研磨したときに、ピット(直径数μmの微小な窪み)を発現させ、LED特性に悪影響を与えると言われている。
また、ピットほど数は多くないが、エピ成長基板となるウエハーをポリッシュ研磨したときに、直径数μmの微小な突起を発現させる場合がある。突起部分はエピ膜を成長させても影響して凸状に盛り上がっており、LED特性に悪影響を与えている。
これまで酸化アルミニウム単結晶を育成する際には、高温で原料が分解して生成した酸素原子(O)や酸素分子(O)が融液中に過飽和に存在し、これが育成した単結晶に取り込まれ、単結晶中の気泡となることが知られている。そして、これを回避するために、水素ガスや一酸化炭素ガスなどの還元性雰囲気で単結晶を育成することが提案されている(特許文献1参照)。これにより融液中に存在する酸素原子(O)や酸素分子(O)が水素ガスや一酸化炭素ガスと反応して除去されるため、育成した単結晶中への気泡の取り込み量は確かに減少する。しかしながら、育成された単結晶からウエハーを切り出し、ポリッシュ研磨したときに、ウエハー表面には多数のピットが存在しており、前記気泡の取り込み量を十分に抑制することはできていない。
また、融液に平衡固溶しているガス成分は、結晶化する固液界面で融液より排出される傾向にあり、界面近傍の融液はガス成分が過飽和となって気泡が生成されやすい。しかし、融液の対流を強化することによって界面付近で生じるガス成分の過飽和を抑制し、結晶内へのガス成分の取り込み量を減少させることができるとしている(非特許文献2参照)。
したがって、まず、原料に含まれるガス成分を融解前にできるだけ除去して融液中に存在する過飽和のガス成分を減少させることで、単結晶育成時に結晶内に取り込まれる微小な気泡の量を少なくすれば、ピットやマイクロバブルの発生を抑えることができるものと考えられる。
ところで、チタンを含む酸化アルミニウム単結晶の製造方法ではあるが、低酸素濃度雰囲気下で単結晶を育成すると融液の対流が強化でき攪拌の効果を増加させることができるとされている(特許文献2参照)。ここには、酸素分圧が10−2〜10−7気圧のような低酸素濃度雰囲気下でチタンを含む酸化アルミニウム単結晶を育成すると、融液が融液表面において還元され、それに伴い表面張力の変化が生じ、表面張力流が誘起された結果、融液の自然対流と同方向の流れが著しく促進されると説明されている。融液の対流が促進されたことによって攪拌の効果が増すと考えることができる。
ところが、低酸素濃度雰囲気下で酸化アルミニウム単結晶を育成すると、成長界面は融液側に著しく凸形状となる傾向がある。このような状況の中で結晶育成を行った場合、結晶成長によってルツボ内の融液高さがある程度低下すると、成長界面の先端とルツボ底面とが接触する。このため、それ以上結晶成長を継続することが不可能となり、ルツボに充填した原料の量に対して得られる結晶がそれほど大きくできない不具合が生じる。また、融液の自然対流と同方向の流れが著しく促進された結果、融液中の単結晶成長速度が早くなり、得られた結晶に結晶欠陥が発生しやすい。
一方、非特許文献3に記載されているように、高酸素濃度で酸化アルミニウムを加熱すると原料である酸化アルミニウムが下記の式(1)または(2)のように分解しやすくなり、これによって生じた酸素と、イリジウムなどのルツボ材料が酸化され、これが融液に溶け込んで結晶中に取り込まれる現象、いわゆるインクルージョン(内包物)が発生するものと考えられる。インクルージョンは、エピ成長基板となるウエハーをポリッシュ研磨したときに、直径数μmの微小な突起として発現する場合がある。
Al → AlO(gas)+ O(gas) (1)
Al → 2AlO(gas)+ 1/2O(gas) (2)
こうした問題を解消するために、前記特許文献2では、成長結晶の回転数を、例えば、20回転/分以上、特に30〜120回転/分に上昇させることで融液の過剰な対流を抑制することを提案している。しかしながら、このような手段では、結晶収率をあげることができても、単結晶中への微細な気泡の発生を十分に抑制することはできない。
特開平04−132695 特開平09−278592 応用物理 第55巻 第6号 1986 P542−5 第28回結晶成長国内会議予稿集,22pA2 1997 P15 Cryst. Res. Technol. Vol.30 1995 P185−188
本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑み、電子部品材料や光学部品材料に適した高品質な酸化アルミニウム単結晶、及びピット、マイクロバブル、突起の発生を抑制して効率的に酸化アルミニウム単結晶を製造する方法を提供することにある。
本発明者らは、上記従来の問題点を解決するために鋭意研究を重ね、酸化アルミニウム単結晶中に含まれる気泡、インクルージョンの原因となるガス成分の発生機構およびルツボの酸化機構を詳細に調べた結果、ガス成分は酸化アルミニウムが分解する際にも発生するが、それだけでなく、結晶用原料である酸化アルミニウムには、もともと吸着または内包してガス成分が存在し、これが融液内に残り、結晶に取り込まれてピットやマイクロバブルとなることを突き止めた。そして、減圧下で原料が融解するまで加熱するとともに、原料融解後は適切な酸素分圧の常圧下で単結晶を育成すると、単結晶へのガス成分の取り込み量が抑えられ、ピットやマイクロバブルの発生量を低減でき、ルツボ材料の酸化を防ぎ結晶内に取り込まれるインクルージョンも低減され、かつ育成した結晶の成長界面が融液側に著しく凸形状となることを抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、炉体内のルツボに結晶用原料である比表面積1m/g以下の酸化アルミニウム焼結体を入れて加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、結晶用原料を加熱溶融する際に、10kPa以下の圧力に、炉体内の圧を減圧した後、加熱によって結晶用原料から発生するガスを除去しながら徐々に結晶用原料を溶融させ、引き続き、酸素および窒素または不活性ガスからなる混合ガスを導入し、10〜500Paの酸素分圧下、炉体内の圧を大気圧に戻してから成長結晶を引き上げることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、前記結晶用原料が、10時間以上かけて加熱溶融されることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第発明によれば、第1の発明において、前記ルツボの材料がイリジウムであることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
本発明によれば、結晶用原料を減圧下で加熱融解するので、原料に吸着または内包しているガス成分が除去されて、単結晶へのガス成分の取り込み量が抑えられ、ピットやマイクロバブルの発生量を低減できる。加えて、このような減圧下では、雰囲気ガスによる熱伝導が低下するため、特にルツボが発熱し原料を融解させる高周波誘導加熱方式では、発生した熱がルツボ周辺に逃げ難い状態となり、常圧下で融解させる場合に必要とされていたルツボの加熱が不要となる。このため、ルツボの酸化や変形、再結晶化による劣化が抑制される。
原料融解後は特定の酸素分圧下で単結晶を育成するので、イリジウムなどのルツボ材料が酸化されにくくなってインクルージョンが少なくなり、また、育成した結晶の成長界面が融液側に著しく凸形状となることも抑えられ良質の単結晶を得ることができる。
こうして得られた単結晶は、微小な気泡に起因するピットやマイクロバブル、融液内外の温度環境に起因する結晶欠陥、ルツボの酸化に起因するインクルージョンが低減して高品質なものとなり、優れた特性を有する電子部品材料、光学部品材料を提供できる。
以下、本発明の酸化アルミニウム単結晶の製造方法について詳細に説明する。
1.酸化アルミニウム単結晶の製造方法
本発明の酸化アルミニウム単結晶の製造方法は、炉体内のルツボに結晶用原料である比表面積1m/g以下の酸化アルミニウム焼結体を入れて加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、結晶用原料を加熱溶融する際に、10kPa以下の圧力に、炉体内の圧を減圧した後、加熱によって結晶用原料から発生するガスを除去しながら徐々に結晶用原料を溶融させ、引き続き、酸素および窒素または不活性ガスからなる混合ガスを導入し、10〜500Paの酸素分圧下、炉体内の圧を大気圧に戻してから成長結晶を引き上げることを特徴とする。
すなわち、本発明では、単結晶中のピットとマイクロバブルを少なくするという観点より、炉体内の圧力を減圧しながら結晶用原料を融解温度まで十分な時間をかけて徐々に加熱溶融するとともに、原料の分解、ルツボ材料の酸化の抑制、結晶の成長界面が融液側に著しく凸形状となることを抑えるために、単結晶を育成する際には減圧を停止して酸素および窒素または不活性ガスの混合気体を導入し、常圧で炉体内雰囲気中の酸素濃度を特定の分圧に設定することを意図している。
本発明において用いられる結晶用原料は、実質的にAlとOの2元素からなる酸化アルミニウムである。また、目的とする酸化アルミニウム単結晶の種類に合わせて、AlとOのほかに、Ti、Cr、Si、Ca、Mgなどを含んでいてもよい。このうちSi、Ca、Mgなどは、焼結助剤の成分として不可避的に含まれうるが、その含有量は極力少ないことが望ましい。また、酸化アルミニウムの直径や密度は、特に制限されないが、取り扱い上、例えば、直径は、10mm以下、好ましくは5mm以下であるものがよく、密度は、5g/cm以下、好ましくは3g/cm以下であるものがよい。
酸化アルミニウムの原料形態としては、粉末、焼結体、ベルヌーイ法によって育成した単結晶などさまざまなものが存在するが、本発明においては比表面積が1m/g以下の焼結体を用いる。この形態であれば原料に吸着または内包してガス成分が最も少ないからである。
酸化アルミニウム焼結体としては、半導体製造用の市販品を使用できるが、次に示すような方法によって製造することもできる。例えば、焼成するとαアルミナに転化するαアルミナ前駆体のゾル又はゲルにαアルミナ粒子を種として添加し、ゾルはゲル化した後、この種晶を添加されたαアルミナ前駆体のゲルを900〜1350℃の温度で焼結し、得られる焼結生成物を粉砕する。
結晶用原料として通常の酸化アルミニウム粉末を用いた場合には、比表面積が5〜10m/g程度と大きいので、酸化アルミニウム粉末に多くのガス成分が吸着または内包されており、原料の融解前に完全に除去されず融液内に残り、結晶に取り込まれてピットやマイクロバルブとなることがある。また、酸化アルミニウム焼結体であっても、比表面積が1m/gを超えるものでは、同様に吸着または内包しているガス成分が多くなるので好ましくない。
ベルヌーイ法で製造された酸化アルミニウム単結晶を直径20mm以下に粉砕して得たクラックル原料の比表面積は、0.1m/g未満と非常に小さく吸着ガスは少ないが、酸化アルミニウム粉末を溶解し、得られた融液より作成された単結晶を粉砕したものであるため、その内部に無数の泡を内包していることが多い。クラックル原料では、融解した時点で内包しているガス成分を放出しようとするが、酸化アルミニウム融液の粘性が高いことや表面張力が大きいことから、微小な気泡となって融液に溶解してしまい、容易には融液から抜けにくいので結晶用原料として好ましくない。
本発明において、酸化アルミニウム単結晶を育成するには、従来のチョクラルスキー法による酸化物結晶育成装置を使用できる。例えば、貴金属で形成されたルツボと、ルツボの周囲に保温材としてアルミナなどで形成された炉材と、炉材の外側に加熱装置としての高周波コイルが配置された装置が挙げられる。図1は、従来の装置を本発明に適用するために改造した例である。チャンバー20内に高周波誘導コイル1、耐火性ルツボ2、溶融ルツボ3、断熱材4、耐火性ルツボ支持筒5が設けられている。結晶原料であるアルミナの融点が2000℃強であるため、溶融ルツボ3としてイリジウム製のものを用いることが好ましい。断熱材4としては、発泡ジルコニア等を充填してもよい。ルツボの上方には、材料融液から単結晶を回転させながら引き上げるための引き上げ装置が設けられ、炉材の上方は遮蔽板で遮蔽されている。装置には、炉体内を減圧する手段21と、減圧度をモニターする手段(図示せず)と、炉体内に酸素および窒素または不活性ガスの混合ガスを供給する手段22が設けられる。これにより炉体内は、酸素および窒素または不活性ガスの混合雰囲気とすることができる。
まず、ルツボに結晶用原料を入れ、高周波コイルによってルツボを加熱するが、炉体内の圧力を減圧しながら上記結晶用原料を融解温度まで加熱する。
ルツボに入れられた原料が常温であるうちに真空引きを行ってもよいが、加熱後、原料が1000℃以上になってから真空引きを開始することが好ましい。すなわち、前記圧力は、結晶用原料を加熱し、その温度が1000℃に達した後に、減圧する操作により維持されるようにする。原料が1000℃未満ではガスの発生が極めて少ないからである。
真空引きは、炉内の圧力が10kPa以下になるまで継続して行う。このような減圧下では、雰囲気ガスによる熱伝導が低下するが、発熱した熱がルツボ周辺に逃げ難い状態となるため、ルツボの酸化や変形、再結晶化による劣化が抑制され、インクルージョンも低減される。
原料を融点に達するまでの加熱速度は、特に制限されるわけではないが、急速に加熱せずに長時間かけて徐々に加熱するほうが、単結晶中への気泡の取り込みを抑えることができる。例えば10時間以上、特に12時間かけて徐々に加熱することが望ましい。
次に、原料融解後は酸素および窒素または不活性ガスの混合気体を炉内に導入し、酸素濃度を酸素分圧で10〜500Paの常圧とする。
融液を酸素および窒素または不活性ガスの混合雰囲気で加熱を続けるのは、全く酸素がない状態で育成すると原料である酸化アルミニウムが分解しやすくなり、これによって生じた酸素によってイリジウムなどのルツボ材料が酸化され、これが融液に溶け込んで結晶中に取り込まれ、インクルージョンが発生するためである。
そのため、酸素濃度を酸素分圧で10〜500Pa、好ましくは100〜300Paの常圧とする。酸素分圧が10Pa未満では、イリジウムなどのルツボ材料が酸化され、これが融液に溶け込んで結晶中に取り込まれインクルージョンが多くなる。一方、500Paを超えて酸素が過剰となっても、炉内の酸素によってルツボ材料が酸化されインクルージョンが発生する。
その後も結晶用原料の融液を加熱し続け、原料の融解から3時間以上、特に5時間以上経過後、得られた融液に種結晶を接触させ、種結晶を引き上げ装置で回転させながら引き上げる。単結晶の育成は、炉内雰囲気を低酸素濃度雰囲気とする以外は常法に従い回転数や引き上げ速度を調整してネック部および肩部を形成し、引き続き直胴部を形成する。このとき、放射温度計などを用いて単結晶と原料融液との界面近傍における融液表面の温度を測定することが好ましい。結晶形状の調節は、育成中の結晶重量を測定し、直径や育成速度などを計算によって導き出し、回転速度や引き上げ速度を調整して行う。また、結晶重量の変化を高周波誘導コイル投入電力にフィードバックして融液温度をコントロールできる。
ところで、前記特許文献2に記載されているように、低酸素濃度雰囲気下で酸化アルミニウム単結晶を育成すると、成長界面は融液側に著しく凸形状となる傾向がある。このような状況の中で結晶育成を行った場合、結晶成長によってルツボ内の原料融液高さがある程度低下すると、成長界面の先端とルツボ底面とが接触してしまう。このため、それ以上結晶成長を継続することが不可能となり、ルツボに充填した原料の量に対して得られる結晶がそれほど大きくできないという不具合が生じる。また、融液の自然対流と同方向の流れが著しく促進された結果、融液中の単結晶成長速度が早くなり、得られた結晶に結晶欠陥が発生しやすい。
こうした問題は、特許文献2に記載のように例えば育成中の結晶の回転数を大きく上げて結晶成長速度を調節することにより解決でき、また例えば、本出願人による特開2005−231958に開示されている装置を本発明に適用するために改造して使用することができる。図1に示した装置において、溶融ルツボ3底部に筒状ヒーター7を有する育成炉を用いて融液の対流を調節すれば、回転数を大きく上げることなく解決できる。
すなわち、高周波誘導により筒状ヒーターを発熱させ、これによりイリジウム製の溶融ルツボ内の融液を底から加熱すれば、融液内の温度分布を均一化でき、この融液温度の均一化度により、得られる単結晶底部の逆円錐状部の高さ(凸度)が変化する。従って、筒状ヒーターより伝達される熱量を制御することにより結晶底部がルツボ底部に向かって育成することを抑制し、所望の凸度を有した結晶を得ることができる。本発明では、特定の酸素分圧下で単結晶を育成することから、結晶と融液の成長界面は、融液側に10mm凸となる程度で著しい凸形状にはならない。
このようにして、結晶用原料として比表面積が小さい酸化アルミニウムの焼結体を選択し、しかも特定の減圧条件下で原料を加熱溶融させて、その後特定の酸素分圧下の常圧で単結晶を育成することにより、原料に吸着または内包しているガスが容易に排除でき、その結果、融液中に含まれる過剰なガスを減少させることができ、単結晶育成時に結晶内に取り込まれる微小な気泡やインクルージョンなどを少なくすることができる。
2.酸化アルミニウム単結晶
本発明によれば、上記の製造方法により電子部品材料又は光学部品材料用の酸化アルミニウム単結晶を得ることができる
そして、この単結晶は、ウエハーに加工したときにピットやマイクロバブルが少なく、またインクルージョンに起因する突起も少ない高品質なものとなる。具体的には、直径3インチウエハーを50枚スライスし、ポリッシュ研磨してから、ピットと突起の数を測定すると、直径数μmの微小な窪みであるピットは、平均1個以下、直径数μmの微小な突起が観察されるウエハーは5枚以下(全体の1割以下)となる。これにより、エピ膜を成長させたとき凹状や凸状の起伏を形成することなく、LED特性への悪影響を与えることがないので、優れた特性を有する電子部品材料、光学部品材料としてのエピ結晶基板とすることができる。
以下に、本発明の実施例を用いて、さらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
〔ピット及び突起の評価〕
育成した単結晶から50枚の3インチウエハーをスライスし、ポリッシュ研磨して、いずれも直径数μmのピットと微小な突起がどの程度あるか測定した。ピット数及び突起は少ないほど良好な単結晶が育成されていることを示している。
〔実施例1〕
イリジウム製ルツボに出発原料として4N(99.99%)の酸化アルミニウム原料を10kg投入した。原料は比表面積0.8〜0.9m/gの焼結体である。高周波誘導加熱炉を用い、炉体内の圧力を5kPaに減圧しながら結晶用原料を融点に達するまで12時間かけて徐々に加熱し、原料融解後は速やかに酸素および窒素ガスの混合気体を炉内に導入し、酸素濃度を酸素分圧で300Paの常圧とし、ガスをフローさせた。
原料の融解から6時間経過後、a軸方向に切り出した酸化アルミニウム単結晶を種結晶として用い、種結晶を融液近くまで降下させた。この種結晶を毎分2回転の速度で回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を融液に接触させて温度を徐々に降下させながら、引上速度2mm/hrの速度で種結晶を上昇させて結晶成長を行った。
その結果、直径102mm、直胴部の長さ118mmの結晶が得られた。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、10mm凸であった。さらに、この結晶から3インチウエハーを50枚切り出して研磨しピットおよび突起の数を測定したところ、ピットは3インチウエハー内に平均0.8個であり突起が観察されたウエハーは4枚であった。
〔実施例2〕
育成時の酸素分圧を100Paとした以外は、上記実施例1と同様にして結晶成長を行った。その結果、直径105mm、直胴部の長さ120mmの結晶を得た。
また、結晶底部の成長界面を測定したところ、16mm凸であった。さらに、この結晶から3インチウエハーを50枚切り出して研磨しピットおよび突起の数を測定したところ、ピットは3インチウエハー内に平均0.6個であり突起が観察されたウエハーは2枚であった。
〔比較例1〕
育成時の酸素分圧を600Paとした以外は、上記実施例1と同様にして結晶成長を行った。その結果、直径101mm、直胴部の長さ100mmの結晶を得たが、炉体の内壁に酸化イリジウムが大量に付着した。
また、結晶底部の成長界面を測定したところ、11mm凸であった。さらに、この結晶から3インチウエハーを50枚切り出して研磨しピットおよび突起の数を測定したところ、ピットは3インチウエハー内に平均6個であり、全てのウエハーで突起が観察された。
〔比較例2〕
イリジウム製ルツボに出発原料として4N(99.99%)の酸化アルミニウム原料を10kg投入した。原料は実施例1と同様の焼結体である。酸素分圧300Paでこの原料を融点に達するまで6時間かけて徐々に加熱し、原料の融解から1時間経過後、a軸方向に切り出した酸化アルミニウム単結晶を種結晶として用い、種結晶を融液近くまで降下させた。この種結晶を毎分2回転の速度で回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を融液に接触させて温度を徐々に降下させながら引上速度2mm/hの速度で種結晶を上昇させて結晶成長を行った。
その結果、直径103mm、直胴部の長さ112mmの結晶を得た。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、14mm凸であった。この結晶から3インチウエハーを50枚切り出して研磨しピットおよび突起の数を測定したところ、ピットは3インチウエハー内に平均4323個であり、全てのウエハーで突起が観察された。
〔比較例3〕
育成時の酸素分圧を1Pa以下とした以外は、上記実施例1と同様にして結晶成長を行った。直径103mm、直胴部の長さ95mmの結晶を得たところでルツボ底に結晶底部が接触したので育成を中止した。結晶底部の成長界面を測定したところ88mm凸と大きかった。この結晶から3インチウエハーを50枚切り出して研磨しピットおよび突起の数を測定したところ、ピットは3インチウエハー内に平均0.2個であったが、45枚のウエハーで突起が観察された。この突起をEPMAで分析したところイリジウムであった。
〔比較例4〕
出発原料として5N(99.999%)である酸化アルミニウムの粉末原料(比表面積5m/g)とした以外は、実施例1と同様にして結晶成長を行った。直径103mm、直胴部の長さ121mmの結晶を得た。この結晶から3インチウエハーを50枚切り出して研磨しピットおよび突起の数を測定したところ、ピット数を測定したところ3インチウエハー内に平均69個、突起が観察されたウエハーは5枚であった。
上記実施例では、原料をルツボ内で加熱中および溶融中に、炉体を減圧し原料に吸着または内包しているガスを強制的に排除し、その後、結晶成長を開始させる際は、酸素および窒素または不活性ガスの混合雰囲気とし、炉体内の圧を常圧に戻して、特定の酸素分圧とし、その後、結晶育成中もこの酸素分圧としているため、融液に含まれる過剰なガスが減少した結果、単結晶へのガスの取り込みを抑えることができ、また、インクルージョンの発生を抑制することができた。さらには成長界面が融液側に著しく凸となる現象を抑制して結晶欠陥を低減させ、また、凸度を低減させたことで原料からの固化率を増加でき、効率的に単結晶を製造することができた。
これに対して、比較例では、原料およびその加熱条件が適切ではなかったので、原料に吸着または内包しているガスを強制的に排除できず、ピットが増加した。また、酸素分圧が適切ではなかったのでインクルージョンの発生を抑制することができず、突起が増加した。
本発明において用いられる装置の一例であり、チョクラルスキー法で結晶を育成し、引き上げる様子を示した概略図である。
符号の説明
1 高周波誘導コイル
2 耐火性ルツボ
3 溶融ルツボ
4 断熱材
5 耐火性ルツボ支持筒
6 ルツボ台
7 筒状ヒーター
8 融液
9 サファイア単結晶
10 結晶引き上げ軸
20 チャンバー
21 減圧手段
22 混合気体供給手段

Claims (3)

  1. 炉体内のルツボに結晶用原料である比表面積1m/g以下の酸化アルミニウム焼結体を入れて加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、
    結晶用原料を加熱溶融する際に、10kPa以下の圧力に、炉体内の圧を減圧した後、加熱によって結晶用原料から発生するガスを除去しながら徐々に結晶用原料を溶融させ、引き続き、酸素および窒素または不活性ガスからなる混合ガスを導入し、10〜500Paの酸素分圧下、炉体内の圧を大気圧に戻してから成長結晶を引き上げることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
  2. 前記結晶用原料が、10時間以上かけて加熱溶融されることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
  3. 前記ルツボの材料がイリジウムであることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
JP2006070465A 2006-03-15 2006-03-15 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及び得られる酸化アルミニウム単結晶 Expired - Fee Related JP4904862B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006070465A JP4904862B2 (ja) 2006-03-15 2006-03-15 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及び得られる酸化アルミニウム単結晶

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006070465A JP4904862B2 (ja) 2006-03-15 2006-03-15 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及び得られる酸化アルミニウム単結晶

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007246320A JP2007246320A (ja) 2007-09-27
JP4904862B2 true JP4904862B2 (ja) 2012-03-28

Family

ID=38591003

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006070465A Expired - Fee Related JP4904862B2 (ja) 2006-03-15 2006-03-15 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及び得られる酸化アルミニウム単結晶

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4904862B2 (ja)

Families Citing this family (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4905138B2 (ja) * 2007-01-11 2012-03-28 住友金属鉱山株式会社 酸化アルミニウム単結晶の製造方法
JP2010150056A (ja) * 2008-12-24 2010-07-08 Showa Denko Kk サファイア単結晶の製造方法
CN102061522B (zh) * 2010-11-05 2013-01-16 北京工业大学 大尺寸Al2O3基晶体的二步法制备方法
JP6302192B2 (ja) * 2013-09-04 2018-03-28 株式会社福田結晶技術研究所 単結晶の育成装置及び育成方法
JP6400438B2 (ja) * 2014-11-07 2018-10-03 株式会社フルヤ金属 単結晶製造方法及び単結晶製造装置

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004083407A (ja) * 2002-08-24 2004-03-18 Carl Zeiss Stiftung コランダム単結晶を成長させる方法および装置
JP5011734B2 (ja) * 2006-01-24 2012-08-29 住友金属鉱山株式会社 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及びこの方法を用いて得られる酸化アルミニウム単結晶
JP4735334B2 (ja) * 2006-03-02 2011-07-27 住友金属鉱山株式会社 酸化アルミニウム単結晶の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007246320A (ja) 2007-09-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6606638B2 (ja) Fe−Ga基合金単結晶の育成方法及び育成装置
JP5459004B2 (ja) サファイア単結晶の製造方法
JP2008007353A (ja) サファイア単結晶育成装置およびそれを用いた育成方法
JP5011734B2 (ja) 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及びこの方法を用いて得られる酸化アルミニウム単結晶
JP4810346B2 (ja) サファイア単結晶の製造方法
JP2008007354A (ja) サファイア単結晶の育成方法
JP4905138B2 (ja) 酸化アルミニウム単結晶の製造方法
JP4904862B2 (ja) 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及び得られる酸化アルミニウム単結晶
JP4844428B2 (ja) サファイア単結晶の製造方法
JP4735334B2 (ja) 酸化アルミニウム単結晶の製造方法
JP4835582B2 (ja) 酸化アルミニウム単結晶の製造方法
JP4905171B2 (ja) 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及びこの方法を用いて得られる酸化アルミニウム単結晶
JP2010059031A (ja) 酸化アルミニウム単結晶、及び、その製造方法
JP4930166B2 (ja) 酸化アルミニウム単結晶の製造方法
JP2010150052A (ja) サファイア単結晶育成装置
JP4844429B2 (ja) サファイア単結晶の製造方法
JP2014162673A (ja) サファイア単結晶コアおよびその製造方法
JP2007022865A (ja) シリコン単結晶の製造方法
JP2009203499A (ja) ターゲット材およびその製造方法
JP5489064B2 (ja) シリコン単結晶の育成方法
JP2006151745A (ja) 単結晶の製造方法及びそれらを用いた酸化物単結晶
JP2016130205A (ja) サファイア単結晶の製造方法
JP7318884B2 (ja) 鉄ガリウム合金の単結晶育成方法
JP4930165B2 (ja) 酸化アルミニウム単結晶の製造方法
JP4200690B2 (ja) GaAsウェハの製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20090227

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20101117

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20101130

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110124

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110322

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110426

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20111213

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20111226

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150120

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4904862

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees