JP4905171B2 - 酸化アルミニウム単結晶の製造方法及びこの方法を用いて得られる酸化アルミニウム単結晶 - Google Patents
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上記チョクラルスキー法による酸化物単結晶製造方法は、まずルツボに酸化物原料を充填し、高周波誘導加熱法や抵抗加熱法によりルツボを加熱し原料を溶融し、その後、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ、種結晶を所定の回転速度で回転させながら所定の速度で上方に引き上げて単結晶を成長させる。
そして、気泡の取り込みを回避するために、水素ガスや一酸化炭素ガスなどの還元性雰囲気で単結晶を育成することが提案されている(特許文献1参照)。
したがって、まず、原料に含まれるガス成分を融解前にできるだけ除去して融液中に存在する過飽和のガス成分を減少させ、融解後は対流を強化し攪拌の効果を増加させることで、単結晶育成時に結晶内に取り込まれる微小な気泡の量を少なくすれば、ピットやマイクロバブルの発生を抑えることができるものと考えられる。
ここには、酸素分圧が10−2〜10−7気圧というような低酸素濃度雰囲気下でチタンを含む酸化アルミニウム単結晶を育成すると、融液が融液表面において還元され、それに伴い表面張力の変化が生じ、表面張力流が誘起された結果、融液の自然対流と同方向の流れが著しく促進され攪拌の効果が増すと考えることができる。
融液の過剰な対流を抑制する方法として、特許文献2では、成長結晶の回転数を、例えば、20回転/分以上、特に30〜120回転/分に上昇させることを提案している。しかしながら、このような手段では、結晶収率をあげることはできても、単結晶中への微細な気泡の発生を十分に抑制できない。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、単結晶用原料が、融点に達するまで10時間以上かけて加熱溶融されることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法が提供される。
原料をルツボ内で加熱する際、窒素または不活性ガスのみの雰囲気とすることで、原料に吸着または内包しているガス成分は排除されるが、僅かに原料から融液中へのガス成分の取り込みが発生するが、原料溶融と同時に酸素および窒素または不活性ガスとの混合雰囲気にして、一定時間融液を維持することにより、残留したガス成分を排除でき、また、酸化アルミニウムの分解によるガス成分の生成が抑えられ、融液中での微小な気泡の発生を抑制できる。
また、融液中における単結晶の成長速度を制御することによって成長界面が融液側に著しく凸となる現象を抑制して結晶欠陥を低減させ、さらに凸度を低減させた結果、原料からの固化率を向上させ効率的に単結晶を製造することができる。
こうして得られた単結晶は、微小な気泡に起因するピット、マイクロバブル、結晶欠陥等が低減しており、さらにルツボ材料からのインクルージョン(内包物)がなくなるために、高品質なものとなり、この単結晶を用いれば優れた特性を有する電子部品材料、光学用部品材料を提供できる。
本発明の酸化アルミニウム単結晶の製造方法は、単結晶製造装置の炉体内のイリジウム製ルツボに単結晶用原料を入れて加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、単結晶用原料を加熱溶融する際に、まず窒素または不活性ガス雰囲気下、炉内圧力0.1MPa以上において、加熱によって単結晶用原料を溶融し、次に炉内に酸素を導入し、酸素および窒素または不活性ガスからなる酸素濃度0.01〜0.5容積%の混合ガス雰囲気下で、引き続き原料融液を5時間以上加熱してから成長結晶の引き上げを開始し、結晶成長中も引き続き酸素および窒素または不活性ガスの混合雰囲気で維持することを特徴とする。
炉体内の酸化アルミニウム原料を常圧状態で加熱溶融し、チョクラルスキー法で成長させると、結晶中に無数の微小な気泡が発生しやすい。酸化アルミニウム気泡の原因となるガスは、酸化アルミニウムの分解によっても発生するが、原料に吸着または内包しているガスが原料の溶融前に完全に除去されず融液内に残り、これが結晶に取り込まれて気泡となっているものが多い。そこで、原料をルツボ内で加熱中および溶融中に炉体内の雰囲気を窒素または不活性ガスのみとし、原料に吸着または内包しているガスを排除する。溶融した際に殆どのガス成分が放出されるが、一部のガス成分は融液に取り残される。このため、原料溶融と同時に酸素および窒素または不活性ガスとの混合雰囲気にして融液を維持させ、融液中の残留したガス成分を排除する。この工程では、融液を維持させる時間が短いと残留したガス成分の排除が不十分となるので、混合雰囲気下で5時間以上は融液を放置させる必要がある。
原料の加熱溶融段階では、前記した通り、炉体内のルツボに原料を入れて、原料を加熱する際に、炉体内の雰囲気を窒素または不活性ガスのみとし、加熱によって原料から発生するガスを排除しながら溶融する。窒素または不活性ガス雰囲気下、炉内圧力0.1MPa以上において、加熱によって単結晶用原料から発生するガスを除去するに十分な条件に設定される。炉内圧力0.1MPa以上とは、炉内をことさら減圧することはしない、ということである。原料を融点に達するまで10時間以上、好ましくは12時間以上かけて徐々に加熱することが望ましい。原料が融点に達するまでの加熱速度は、特に制限されるわけではないが、急速に加熱せずに長時間かけて徐々に加熱するほうが、融液へのガスの取り込みを抑えることができる。
原料溶融後、2050〜2150℃において加熱を続けると、融液中の微小なガス成分は融液の自然対流により徐々に排出されていくが、炉体内の酸素濃度が100ppm以下になると原料である酸化アルミニウムの分解により新たなガス成分の発生を引き起こす。一方、炉体内の酸素濃度が0.5容積%以上の雰囲気では、融液の自然対流が弱まり、融液中の微小なガス成分が排出され難くなるばかりでなく、雰囲気中の酸素とルツボ材であるイリジウムとの反応が発生し、イリジウムインクルージョンの原因となる。そのため、炉体内の酸素濃度は0.01〜0.5容積%の範囲となるよう調整し、5時間以上融液を維持させると残留した微小なガス成分を排除することができる。溶融から5時間以上、好ましくは8時間以上、より好ましくは10時間以上経過後、種子結晶を融液表面に接触させて回転させながら結晶成長を開始させる。単結晶育成中もこの酸素濃度を維持することにより、酸化アルミニウムの分解も抑制できる。5時間未満では融液中に残留した微小なガス成分を十分に排除することができない。
次に、育成された単結晶を切断し、例えば直径3インチ程度のウエハーを得、研磨してピットの発生状況を確認する。前記非表面積が異なるいずれの原料を用いた場合でも、ピットの発生状況は平均数十個、あるいはそれ以下となる。
本発明の酸化アルミニウム単結晶は、上記の製造方法により得られるアルミニウム及び酸素の2元素を含む単結晶である。すなわち、上記の製造方法によって得られ、酸化アルミニウム単結晶の側面にレーザー光を照射して、入射するレーザー光に対して90゜の方向に放射される散乱光をCCDカメラに取り込み、画像処理装置で強度を0〜255までの256階調に処理し、画像中の結晶部分40mm四方の強度平均を散乱光強度として算出したとき、散乱光強度が130以下であることを特徴とする。
育成した単結晶に取り込まれた微小な気泡は、光散乱レーザートモグラフ法に従って観察した。具体的には、図1に示したように、円筒状に加工した酸化アルミニウム単結晶の側面にレーザー光を照射して、酸化アルミニウム単結晶端面より射出される散乱光をCCDカメラに取り込み、画像処理装置で散乱光強度を算出した。すなわち、円筒状に加工した酸化アルミニウム単結晶1に波長532nm、出力500mWのレーザー光2を照射し、照射したレーザー光2の入射方向に対して90°の方向に放射される散乱光3をCCDカメラ4に取り込み、画像処理装置5で強度を0〜255までの256階調に処理し、画像中の結晶部分40mm四方の強度平均を散乱光強度として算出した。この結果、散乱光強度が130以下であれば、育成した単結晶中のマイクロバブル量は少ないと判断される。
育成した単結晶から50枚のウエハーをスライスし、ポリッシュ研磨して、ピットがどの程度あるか測定した。ピット数は少ないほど良好な単結晶が育成されていることを示している。
発振周波数12kHz、出力40kWの高周波誘導加熱方式の育成炉を用い、イリジウム製ルツボに4N(99.99%)のAl2O3原料を10kg投入した。装置には、炉体内を減圧する手段、減圧度をモニターする手段、および酸素および窒素または不活性ガスの混合ガス供給手段を設けている。Al2O3原料はクラックルとよばれるもので、これはベルヌーイ法で育成した酸化アルミニウム単結晶を20mm角程度の大きさに粉砕したものである。
原料を加熱する前に真空引きを開始し、炉内の圧力が20Paまで減圧したところで真空引きを停止して窒素ガスを導入した。炉内の圧力が0.1MPaに達した後は、窒素ガスのみ毎分3リットルの流量でフローさせ、原料の加熱を開始した。この時の炉内の酸素濃度は0.1ppmであった。この原料が融点に達するまで12時間かけて徐々に加熱し、原料が1000℃以上となったところで酸素濃度の上昇が始まり、原料溶融時、炉内の酸素濃度は200ppmから400ppmに急上昇した。原料溶融から30分後、酸素濃度が300ppmまで減少したところで炉内に酸素ガスを導入し、酸素および窒素の混合雰囲気とし、炉内の酸素濃度が0.3容積%となるよう調整した。
原料溶融から5時間後、a軸方向に切り出した酸化アルミニウム単結晶を種結晶として用い、種結晶を融液近くまで降下させた。この種結晶を毎分2回転の速度で回転させながら徐々に降下させ、種結晶の先端を融液に接触させて温度を徐々に降下させながら引上速度2mm/hで種結晶を上昇させて結晶成長を行った。
その結果、直径101mm、直胴部の長さ136mmで目視では気泡が観察されない結晶を得た。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、51mm凸であった。さらに、この結晶に波長532nmのレーザーを照射し、結晶内部の散乱光を観察したところ、ほとんど散乱はなく(散乱光強度112)、結晶内部に微小な気泡が少ないことがわかった。また、この結晶をウエハーにし、ポリッシュ研磨したところ微小な窪みは確認できなかった。
原料として粉末の酸化アルミニウム原料を用いた以外は実施例1と同様にして行った。その結果、直径99mm、直胴部の長さ118mmで目視では気泡が観察されない結晶が得られた。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、41mm凸であった。さらに、この結晶に波長532nmのレーザーを照射し結晶内部の散乱光を観察したところ、ほとんど散乱はなく(散乱光強度126)、結晶内部に微小な気泡が少ないことがわかった。また、この結晶をウエハーにしポリッシュ研磨したところ微小な窪みは確認できなかった。
粉末の酸化アルミニウム原料を用い、原料溶融後、炉内の酸素濃度が0.1容積%となるよう調整した以外は実施例1と同様にして行った。
その結果、直径99mm、直胴部の長さ123mmで目視では気泡が観察されない結晶が得られた。また、結晶底部の成長界面を測定したところ、60mm凸であった。さらに、この結晶に波長532nmのレーザーを照射し、結晶内部の散乱光を観察したところ、ほとんど散乱はなく(散乱光強度59)、結晶内部に微小な気泡が少ないことがわかった。また、この結晶をウエハーにしポリッシュ研磨したところ微小な窪みは確認できなかった。
比較のために、原料を加熱溶融する際、加熱開始から炉内に酸素を導入して酸素および窒素の混合雰囲気とし、炉内の酸素濃度が0.3容積%となるよう調整した以外は実施例1と同様にして行った。
その結果、得られた結晶は、直径119mm、直胴部の長さ120mm、結晶底部の成長界面は49mm凸であった。この結晶に波長532nmのレーザーを照射し結晶内部の散乱光を観察したところ、散乱光強度が強く(散乱光強度140)、結晶内部に微小な気泡が多いことがわかった。また、この結晶をウエハーにしポリッシュ研磨したところ微小な窪みが数多く観察された。
比較のために、加熱開始から結晶育成終了まで、炉内に酸素を導入せずに窒素のみの低酸素濃度雰囲気とした以外は実施例1と同様にして行った。
その結果、直径99mm、直胴部の長さ121mmの結晶を得たところで、ルツボ底に結晶底部が接触したので育成を中止した。結晶底部の成長界面を測定したところ、73mm凸と大きかった。この結晶に波長532nmのレーザーを照射し、結晶内部の散乱光を観察した。微小な散乱はほとんど観察されなかったが(散乱光強度49)、比較的大きな散乱体が観測され、結晶内部に微小な気泡が少ないがインクルージョン(内包物)が存在する可能性があることがわかった。
また、この結晶をウエハーにしポリッシュ研磨したところ、微小な窪みは確認できなかったが、どのウエハーにも差し渡し数μmの大きさの突起状異物が数個程度ウエハー上に観測された。これをEPMAで分析したところイリジウムであった。低酸素分圧下で育成すると、アレキサンドライトやGGGではイリジウムのインクルージョンが発生することが報告されているが、酸化アルミニウムでも同様に観測されることがわかった。
比較のために、原料溶融後の融液放置を3時間で行った以外は実施例1と同様にして行った。
その結果、得られた結晶は、直径104mm、直胴部の長さ126mm、結晶底部の成長界面は44mm凸であった。この結晶に波長532nmのレーザーを照射し結晶内部の散乱光を観察したところ、散乱光強度が強く(散乱光強度138)、結晶内部に微小な気泡が多いことがわかった。また、この結晶をウエハーにしポリッシュ研磨したところ微小な窪みが数多く観察された。
これに対して、比較例では、原料加熱、結晶育成を通して酸素を含む雰囲気で行った場合、原料に吸着または内包しているガスを十分に排除することができなかった。また、加熱中は窒素または不活性ガスのみとし、原料溶融後は酸素を含む混合雰囲気で結晶育成を行った場合でも、融液の放置時間が短いと融液内のガスを十分に排除することができなかった。炉体内の雰囲気を原料加熱から結晶育成を通して窒素または不活性ガスのみの低酸素濃度下で行った場合、イリジウムのインクルージョンが発生した。
2 レーザー光
3 散乱光
4 CCDカメラ
5 画像処理装置
Claims (4)
- 単結晶製造装置の炉体内のイリジウム製ルツボに単結晶用原料を入れて加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げる溶融固化法により酸化アルミニウム単結晶を製造する方法において、
単結晶用原料を加熱溶融する際に、まず窒素または不活性ガス雰囲気下、炉内圧力0.1MPa以上において、加熱によって単結晶用原料を溶融し、次に炉内に酸素を導入し、酸素および窒素または不活性ガスからなる酸素濃度0.01〜0.5容積%の混合ガス雰囲気下で、引き続き原料融液を5時間以上加熱してから成長結晶の引き上げを開始し、結晶成長中も引き続き酸素および窒素または不活性ガスの混合雰囲気で維持することを特徴とする酸化アルミニウム単結晶の製造方法。 - 単結晶製造装置が、発振周波数10kHz以上の高周波誘導加熱方式の装置であることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 単結晶用原料が、融点に達するまで10時間以上かけて加熱溶融されることを特徴とする請求項1に記載の酸化アルミニウム単結晶の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかの製造方法によって得られ、酸化アルミニウム単結晶の側面にレーザー光を照射して、入射するレーザー光に対して90゜の方向に放射される散乱光をCCDカメラに取り込み、画像処理装置で強度を0〜255までの256階調に処理し、画像中の結晶部分40mm四方の強度平均を散乱光強度として算出したとき、散乱光強度が130以下であることを特徴とする酸化アルミニウム単結晶。
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