JP2008050240A - セシウムホウ酸化合物結晶の製造方法及びそれにより得られたセシウムホウ酸化合物 - Google Patents

セシウムホウ酸化合物結晶の製造方法及びそれにより得られたセシウムホウ酸化合物 Download PDF

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Abstract

【課題】光散乱源の除去が可能であり、且つ、紫外線照射による新たな蛍光を発生しない、レーザー素子として有用であるセシウムホウ酸化合物結晶の製造方法を提供する。
【解決手段】内部に光散乱源を有する原料結晶、ならびに、雰囲気中にCs成分を供給するCs供給源を準備し、Cs成分を含む雰囲気下、原料結晶を加熱することによって、セシウムホウ酸化合物結晶を製造する。Cs供給源は、Cs成分を含み、そのCs成分の割合(mol%)が、原料結晶を育成するための原料組成物におけるCs成分の割合(mol%)よりも大きく設定し、加熱処理工程における加熱温度は、Cs供給源からCsが蒸発する温度であり、且つ、セシウムホウ酸化合物結晶に重量減少が発生する温度未満とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、セシウムホウ酸化合物結晶の製造方法及びそれにより得られたセシウムホウ酸化合物結晶に関する。
セシウムホウ酸化合物結晶の中で、CsB結晶(以下、「CBO結晶」ともいう)は、1993年に非線形光学特性が報告された材料であり、紫外領域への波長変換応用に優れていることが分かっている(非特許文献1)。特に、Nd:YAGレーザーなどの波長1064nm光の第3高調波発生(Third−harmonic generation:THG)素子(基本波と第2高調波との和周波混合により発生)としては、既存のLiB結晶(LBO)を大きく上回る性能を有している(非特許文献2、3)。しかしながら、CBO結晶は、結晶成長が困難であるため実用化に至らず、結晶育成に関する報告例も数件程度にとどまっている。
CBO結晶の代表的な結晶育成方法としては、セルフフラックスを用いたtop−seeded solution growth(TSSG)法があげられる。この方法は、高温で溶解したCsO−B溶液面に種子結晶を浸して回転させた状態で、溶液の温度を降下させながら液中において結晶を育成する方法である。この方法において、B濃度が73.3mol%の育成溶液を用いて種子結晶を高速回転させることで、比較的大きな結晶が得られることが、影林等により報告されている(非特許文献4)。しかし、この方法により得られた結晶は、外見上良質な単結晶に見えるものの、633nmの光照射で観察される微小な光散乱源が内部全体に分布しているため、紫外線発生時に損傷が生じるなど実用面で大きな問題を抱えている(非特許文献3)。このような光散乱源の問題は、CsLiB10結晶(以下、「CLBO結晶」ともいう)についても生じており、これを解決する方法として、CLBO結晶を800〜850℃で10時間以上処理する方法が報告されている(特許文献1)。
一方、本発明者等は、前記TSSG法において、育成溶液のB濃度を70mol%にすると、内部に光散乱源の無い結晶が得られることを見いだしている(非特許文献5)。また、本発明者等は、この条件では、結晶の品質には優れるものの、育成溶液の蒸発の影響によって結晶育成が極めて困難であることも同時に突き止めている。そして、本発明者等は、育成溶液のB濃度をCBO結晶の結晶組成である化学量論比(75mol%)近くの組成74mol%から育成した場合には、影林等の結果と同様に、大きな単結晶が得られることも確認している。ただし、このBが74mol%の条件で育成した結晶は、その内部に光散乱源が一様に分布している。
このように、本発明者等は、CBO結晶において、結晶成長の観点(難易度)から見た最適育成条件と、結晶の品質(光散乱源の有無)から見た最適育成条件とが異なることを見出している。このような、結晶の育成条件と品質(光散乱源)の問題は、CBO結晶に限らず、他のセシウムホウ酸化合物結晶においても問題になっている場合がある。
そこで、本発明者等は、結晶の育成が容易であり、且つ、得られた結晶に光散乱源が生成しても、それを除去できる新たなセシウムホウ酸化合物結晶の製造方法を提案している(特許文献2)。この製造方法は、内部に光散乱源を有するセシウムホウ酸化合物結晶を原料結晶として、前記原料結晶の融点−140℃から前記融点までの温度、もしくは、前記原料結晶の分解点−140℃から分解点までの温度で加熱処理し、さらに、前記加熱した前記原料結晶を300℃以下に冷却処理する方法である(以下、「高温加熱−急速冷却法」ともいう)。この方法により、ホウ酸化合物原料結晶から内部に含まれる前記光散乱源を除去し、光散乱源を含まないセシウムホウ酸化合物結晶を得ることが可能となった。つまり、原料結晶の育成は、前述のような育成に適した条件で行い、且つ、それによって発生した原料結晶内部の光散乱源については、前記加熱処理と冷却処理とによって除去する(消失させる)ことにより、育成および品質の両方を満足する製造方法を確立した。
Y.Wu,T.Sasaki,S.Nakai,A.Yokotani,H.Tang,and C.Chen,Appl.Phys.Lett.62,2614(1993). Y.Wu,P.Fu,J.Wang,Z.Xu,L.Zhang,Y.Kong,and C.Chen,Op.Lett.22,1840(1997). H.Kitano,T.Matsui,K.Sato,N.Ushiyama,M.Yoshimura,Y.Mori,and T.Sasaki,Opt.Lett.28,263(2003). Y.Kagebayashi,Y.Mori,and T.Sasaki,Bull.Mater.Sci.22,971(1999). T.Saji,N.Hisaminato,M.Nishioka,M.Yoshimura,Y.Mori,and T.Sasaki,J.CrystalGrowth,in press. 特開2001-166346号公報 国際公開パンフレットWO2006/064882A1
しかしながら、この製造方法により得られたセシウムホウ酸化合物結晶について、さらなる検討を行った結果、前述の製造方法によると、633nmの光照射による光散乱源の除去は可能になったものの、品質面において新たな問題が発生することがわかった。得られたセシウムホウ酸化合物結晶に紫外線(例えば、193nm)を照射すると、緑色の蛍光を発するという問題である。そして、このような新たな欠陥が生じたホウ酸化合物は、Nd:YAGレーザーの第3高波長波発生素子として使用した場合に、レーザー損傷の閾値が低下する。この製造方法によっては、CLBO結晶についても同様の問題が生じる。
そこで、本発明は、光散乱源が生成してもそれを除去可能であり、且つ、蛍光準位の生成を抑制する、育成が容易な新たなセシウムホウ酸化合物結晶の製造方法の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の製造方法は、セシウムホウ酸化合物結晶の製造方法であって、内部に光散乱源を有する原料結晶を準備する工程、雰囲気中にCs成分を供給するCs供給源を準備する工程、および、Cs成分を含む雰囲気下において、前記原料結晶を加熱する加熱処理工程を含み、前記Cs供給源におけるCs成分の割合(mol%)が、前記原料結晶を育成するための原料組成物におけるCs成分の割合(mol%)よりも大きく、前記加熱処理工程における加熱温度が、前記Cs供給源からCs成分が蒸発する温度であり、且つ、前記セシウムホウ酸化合物結晶に重量減少が発生する温度未満であることを特徴とする。
本発明の製造方法によれば、内部に光散乱源を有する原料結晶であっても、前記光散乱源を除去できるため、高品質な結晶を提供でき、さらに、容易な育成条件の選択も可能となる。また、本発明によれば、前述の高温加熱・急速冷却法のように紫外線照射による蛍光準位が発生するという問題も回避できる。特に、前記蛍光準位の発生は、セシウムホウ酸化合物結晶をTHG素子として使用する際、レーザー損傷の閾値低下の原因となるため、この点からも本発明による結晶は、より品質に優れる。したがって、本発明の製造方法は、例えば、紫外線レーザーへの波長変換素子の製造等、産業上極めて有用な方法といえる。
本発明の製造方法は、前述のように、セシウムホウ酸化合物結晶の製造方法であって、内部に光散乱源を有する原料結晶を準備する工程、雰囲気中にCs成分を供給するCs供給源を準備する工程、および、Cs成分を含む雰囲気下において、前記原料結晶を加熱する加熱処理工程を含み、前記Cs供給源におけるCs成分の割合(mol%)が、前記原料結晶を育成するための原料組成物におけるCs成分の割合(mol%)よりも大きく、前記加熱処理工程における加熱温度が、前記Cs供給源からCs成分が蒸発する温度であり、且つ、前記セシウムホウ酸化合物結晶に重量減少が発生する温度未満であることを特徴とする。本発明において、セシウムホウ酸化合物結晶とは、セシウム(Cs)、ホウ素(B)および酸素(O)を含む化合物であって、例えば、CBOやCLBOがあげられる。なお、本発明において前記「原料結晶を育成するための原料組成物」とは、本発明におけるCs供給源を特定するための基準のためのものであって、例えば、本発明における原料結晶の製造方法や条件自体を限定するものではない。
以下に、本発明の製造方法について、一例としてCBO結晶の製造方法を例にあげて説明する。なお、本発明は、下記例に限定されるものではなく、また、CLBO結晶についても、CBO結晶と同様にして実施できる。
また、本発明において、加熱処理工程や後述する冷却処理工程等、各種工程における温度は、例えば、加熱雰囲気および冷却雰囲気の温度を意味し、例えば、容器(例えば、坩堝)に前記原料結晶を入れて加熱処理や冷却処理する場合は、その容器内部の温度である。その雰囲気温度の測定は、特に制限されず、例えば、雰囲気中に配置された温度計や温度センサ等で測定できる。例えば、前記加熱処理工程および冷却処理工程において、CBO結晶の近傍の温度を測定すればよい。この測定には、例えば、熱電対などが利用できる。加熱処理工程には、例えば、抵抗加熱式のヒーターを使用することができる。
まず、内部に光散乱源を有するCBO原料結晶を準備する。本発明は、内部に光散乱源を有するCBO原料結晶の前記光散乱源を除去する方法でもあることから、このような原料結晶を使用することが好ましいが、光散乱源の有無が不明である原料結晶についても適用できる。
本発明において、前記光散乱源とは、結晶内部に可視光レーザーを照射した際に、前記光が散乱し、目視により点光源が確認できる個所をいう。本発明において処理する「光散乱源を有する結晶」というのは、特に、結晶内部の全域にわたって微小な点光源が分布する傾向を示す結晶を指す。この光散乱源の生成メカニズムは不明であるが、例えば、CBO結晶は、固溶領域を有するとの仮定に基づき、育成直後の冷却過程において、Csが、CBO結晶内部から拡散、表面から蒸散するため、結晶組成が目的の化学量論比から変化してしまい、その結果、結晶内部のCsが不足した領域に異相、すなわち光散乱源が発生したのではないかと、本発明者等は推定している。なお、この推定は、本発明を制限しない。また、本発明において、前記CBO原料結晶(またはCLBO原料結晶)の光散乱源の除去は、全部除去してもよいし、その一部の除去であってもよい。光散乱源を一部除去した場合であっても、実用上問題なく使用できる場合もあり、また、光散乱源が一部除去された結晶をカットして、光散乱源がない素子とすることも可能だからである。
本発明において、前記原料結晶は、前述のように、その内部に光散乱源を有する結晶である。育成直後の結晶は、例えば、a軸×b軸×c軸方向で30×40×40mmといったサイズを有するが、熱処理工程を施すには、熱歪みによる割れが生じないように、波長変換素子用の小さなサイズに前もって切り出しておくことが望ましい。素子の形状は、四角柱形状が一般的であり、応用面で求められるサイズは、用いるレーザーやその用途により異なるが、例えば、(3〜5)×(3〜5)mmの正方形断面を有し、長さ8〜18mmを有する素子があげられる。例えば、Nd:YAGレーザーから355nm光を発生させる場合、断面4×4mm、長さ8mmの素子を利用して高出力な波長変換を実施している。熱処理により割れない大きなサイズの例としては、6×10×12mmの四角柱状のものがあげられる。なお、本発明において、原料結晶およびこれから得られる結晶のサイズは、特に制限されない。
前記原料結晶の製造方法は、特に制限されないが、例えば、溶液成長法や融液成長法により製造できる。前記溶液成長法としては、例えば、原料結晶を育成するための原料組成物としてCsOおよびB(以下、「CsO−B」ともいう)を含むセルフフラックスを用いた方法であり、前記セルフフラックスにおけるBの割合(mol%)は、71mol%以上75mol%以下であることが好ましい。この方法によれば、CBO結晶の育成が容易になる。また、前記溶液成長法において、その溶液には、例えば、NaFやCsFなどの少量の添加剤を含ませてもよい。また、前記溶液成長法としては、例えば、top−seeded solution growth(TSSG)法、submerged−seeded solution growth法、Czochralski法等があげられ、中でもTSSG法が好ましい。前記TSSG方法において、大きな結晶が得られるという観点から、CsO−BセルフフラックスにおけるBの割合(mol%)は、例えば、71mol%以上75mol%以下であることが好ましく、より好ましくは73.5〜74.5mol%の範囲であり、CsOの割合(mol%)は、例えば、25mol%以上29mol%以下であることが好ましく、より好ましくは25.5〜26.5mol%の範囲である。以下に、TSSG法による原料結晶の製造の一例を示す。なお、前記原料結晶は、自家製造したものを使用してもよいし、第三者が製造したもの(例えば、市販品)を使用してもよい。
この例では、B濃度74mol%(例えば、CsO濃度26mol%)のセルフフラックスを用いたTSSG法による結晶製造方法を示す。育成の温度プログラムは、例えば、用いるセルフフラックスの組成比によって適宜決定できる。まず、炭酸セシウム(CsCO)と酸化ホウ素(B)とを素原料とし、所定の原料比で混合したものを、白金坩堝に充填する。なお、CBO結晶の素原料化合物としては、CsとBを供給して前記結晶組成を実現できるものであればよく、これ以外のものを用いてもよい。ここで、原料は、予め、水などの溶媒を用いて効果的に混合しておいても良い。また、混合しておいた原料を予め700℃に加熱し、固相反応を利用して結晶性の粉体としておく場合もある。この白金坩堝を、一般に用いられる抵抗加熱型の結晶育成炉(抵抗加熱式ヒーター)にセットし、850℃に加熱し、12時間程度、白金製プロペラで撹拌しながら混合する。溶液の撹拌が終了した後、結晶成長温度である830℃まで冷却し、温度が安定した後に、溶液の上空から種子結晶を溶液に浸し、その後、約0.1℃/日の温度降下速度で溶液を冷却する。種子結晶は、CBO結晶を四角柱状に切り出したもので、大きさは、例えば、3×3×5mmである。育成炉への種子結晶のセットは、例えば、結晶のa軸が、鉛直方向となるようにセットしてもよい。種子結晶は、溶液を撹拌させるために、約60rpmなどの高速で回転させておくことが好ましい。この状態で、約7日間結晶育成を実施することによって場合、例えば、図7(A)の写真に示すような大きさの結晶が成長する。その後、成長した結晶を溶液から引き上げ、冷却速度約17℃/時間で室温付近まで冷却し、結晶を取り出す。なお、得られた結晶には、図7(B)の写真に示すように、光散乱源(633nm光)を有する。その後、加熱処理工程に適した大きさ、波長変換応用に適した方位に結晶を切り出し、原料結晶とする。
つぎに、Cs供給源を準備し、Cs成分を含む雰囲気下(Cs成分雰囲気下)において、前記原料結晶を加熱処理する。
本発明者らは、光散乱源の減少のために新たな方法を確立すべく、前述の高温加熱−急速冷却法により光散乱源が減少できた理由を、以下のように推測した。すなわち、まず、光散乱源が発生した育成結晶(原料結晶)を融解温度付近で高温加熱することによって、前記光散乱源が再度融解し(固溶状態の構造はCBOとなる)、さらに、急速な冷却処理を行うことによって前記固溶状態の構造(CBO構造)が維持されたため、結果的に結晶全体に均一なCBO構造となり、育成時に発生した光散乱源が減少したと推測した。しかしながら、実際には、育成時の欠陥(光散乱源)とは異なる新たな欠陥(紫外線照射による蛍光準位)が発生している。そこで、本発明者らは、新たに、重量減少の防止、Cs補充による化学量論比の修正、高温での加熱および急冷による結晶への負担軽減等に着目して、以下のような加熱処理の条件を見出した。なお、このような推測は、本発明を何ら制限するものではない。
前記Cs供給源はCs成分を含む。このCs供給源に加熱処理を施せば、前記Cs供給源からCs成分が蒸発し、これが雰囲気中に拡散されてCs成分雰囲気となる。なお、加熱により蒸発したCs成分は、例えば、Cs元素でもよいし、Cs化合物であってもよい。
前記Cs供給源におけるCs成分の割合(mol%)は、前記原料結晶を育成するための原料組成物におけるCs成分の割合(mol%)よりも大きければよい。すなわち、目的の組成(CsB)である原料結晶を育成するための原料組成物よりも、Cs成分に富む組成物を前記Cs供給源として使用することができる。Cs成分の割合は、前述の要件を満たせば特に制限されないが、例えば、より容易にCs成分を蒸発させることができ、加熱温度を相対的に低い温度に設定できることから、相対的に高い割合であることが好ましい。
Cs供給源中のCs成分としては、特に制限されないが、例えば、炭酸セシウムや酸化セシウム等があげられる。また、Cs成分以外の他成分としては、特に制限されないが、例えば、酸化ホウ素等のB成分(ホウ素成分)があげられる。CBO結晶の製造方法に使用するCs供給源としては、例えば、CsOとBとを含むことが好ましく、その場合、CsOの割合(mol%)は、一般に、CsOとBとの全モル量に対するCsOモル量の割合として算出できる。なお、前記Cs供給源からの蒸発成分としては、少なくともCs成分が含まれていればよいが、その他の成分(例えば、B成分)が含まれてもよい。
また、Cs供給源の形態は、特に制限されず、液体でも固体でもよいが、Cs成分の蒸発効率に優れることから、液体が好ましい。なお、Cs供給源の調製は、例えば、前述の原料結晶を育成するための原料組成物(例えば、育成溶液)と同様に行うことができる。Cs供給源が、例えば、CsOとBとを含む場合、その組成とCsが蒸発する加熱温度との関係、組成と液体状態または固体状態との関係等は、図13に示すCsO−Bと状態図から理解できる。
前記原料結晶としてCBO原料結晶と育成する場合、その原料組成物は、通常、B成分(例えば、B)が71mol%〜75mol%であり、Cs成分(例えば、CsO)が25mol%〜29mol%である。さらに、加熱処理工程においては、後述するように、目的とするセシウムホウ酸化合物結晶に重量減少が発生する温度未満で加熱処理がなされ、その温度において、このCs供給源からCs成分が蒸発することが必要である。したがって、CBO結晶の製造に使用する前記Cs供給源は、例えば、Cs成分29mol%を超え(B成分71mol%未満)、好ましくはCs成分30mol%以上(B成分70mol%以下)、より好ましくはCs成分31mol%以上(B成分69mol%以下)、さらに好ましくはCs成分33.5mol%以上(B成分66.5mol%以下)、最も好ましくはCs成分36mol%(B成分64mol%)である。また、Cs成分の上限は、特に制限されないが、例えば、50mol%以下であり、より好ましくは40mol%以下であり、B成分の下限は、例えば、50mol%以上であり、好ましくは60mol%以上である。本発明において、Cs成分ならびにB成分の割合は、例えば、実際にCs供給源の調製に使用するCs成分およびB成分の種類にかかわらず、例えば、CsOおよびBとして換算することができる。
加熱処理における温度は、前記Cs供給源からCs成分が蒸発する温度であり、且つ、目的のセシウムホウ酸化合物結晶に重量減少が発生する温度未満である。CBO結晶を製造する場合、CBO結晶に重量減少が発生する温度は、通常、760℃以上、具体的には、780〜835℃の領域である。また、Cs供給源からCs成分が蒸発する温度は、そのCs成分の割合に依存するが、温度と成分割合との関係は、当業者であれば理解可能である。Cs供給源として、Cs成分25〜100mol%の組成物を使用した場合、加熱温度は、例えば、600〜835℃が好ましく、より好ましくは620〜800℃であり、さらに好ましくは620〜780℃である。Cs成分30〜50mol%の組成物を使用した場合、加熱温度は、例えば、620〜760℃が好ましく、より好ましくは620〜720℃であり、さらに好ましくは620〜700℃である。Cs成分32〜38mol%の組成物を使用した場合、加熱温度は、例えば、625〜755℃が好ましく、より好ましくは630〜700℃であり、さらに好ましくは630〜670℃である。より具体的に、Cs成分36mol%(B成分64mol%)のCs供給源を使用した場合、加熱温度は、例えば、630〜690℃であり、好ましくは630〜670℃であり、より好ましくは640〜660℃であり、さらに好ましくは650℃である。このような温度に設定することで、前記Cs供給源からCs成分が蒸発するため、Cs成分雰囲気下で、前記原料結晶の加熱処理を行うことができる。
前述の温度範囲は、大気圧(例えば、101.33kPa)条件下での温度の一例であるが、加熱処理の雰囲気が加圧状態の場合は、その圧力に応じて温度は変化する。
加熱状態で保持する時間は、下限が、例えば、2時間、好ましくは24時間であり、上限が、例えば、200時間であり、好ましくは100時間である。具体的には、例えば、2〜200時間であり、好ましくは24〜100時間である。所定の加熱温度までの昇温速度は、特に制限されないが、前記原料結晶にクラックが入らないような昇温速度が好ましく、例えば、0を超え、6℃/分以下である。この昇温の仕方は、特に制限されず、連続的な昇温でも段階的な昇温でもよく、途中で昇温速度を変化させてもよい。
加熱処理工程は、例えば、前述の原料結晶の製造(育成)に使用した抵抗加熱式ヒーターを使用することができる。このヒーターは、電流のオンオフによって加熱速度および冷却速度を制御するものである。
この加熱処理工程は、前記Cs供給源を前記原料結晶の下方に配置していることが好ましい。この状態で加熱を行うことによって、下方にある前記Cs供給源からは、蒸発したCsが雰囲気に充満する。
具体例としては、例えば、前記Cs供給源を配置した容器を準備し、前記容器内において、前記Cs供給源のCs成分を蒸発させて、前記Cs成分雰囲気で加熱処理を行う方法があげられる。また、この加熱処理は、密閉状態のCs雰囲気下で行うことが好ましく、具体的には、前記容器を密閉状態にすることが好ましい。このような密閉状態での加熱処理を行えば、蒸発したCs成分が、外部に放出されることなく、効率良く原料結晶に拡散させることができる。また、密閉状態により結晶に圧力がかかるため、前記結晶からのCsの抜けも防止することができる。密閉状態は、例えば、開閉可能な密閉容器を使用したり、容器の開口部を白金箔等で覆うことによって実現できる。前記密閉状態とは、完全密閉でなくてもよい。
なお、前記Cs供給源から蒸発したCs成分を加熱処理の雰囲気内に供給する方法は、前述のような方法には制限されず、この他にも、例えば、ガスを導入するように、外部から前記原料結晶の加熱処理を行う雰囲気内に導入してもよい。
つづいて、加熱処理を施した前記原料結晶に対して、さらに、冷却処理を施すことによって、内部の光散乱源が消失(または減少)した目的の結晶を得ることができる。
冷却後の結晶の温度は、特に制限されないが、通常、室温である。この冷却処理の条件は、特に制限されず、例えば、積極的に冷却処理を施してもよいし、加熱処理の終了後、前記原料結晶を室温程度になるまで放置してもよい。積極的に冷却処理を施す場合、その冷却速度の下限は、例えば、0.01℃/分以上であり、好ましくは、0.1℃/分以上であり、上限は、特に制限されないが、結晶におけるクラック発生防止等の観点から、例えば、50℃/分未満であり、好ましくは6℃/分以下であり、より好ましくは1℃/分以下である。具体例としては、0.01〜6℃/分であり、好ましくは0.1〜1℃/分であり、より好ましくは0.1〜0.3℃/分である。なお、冷却の仕方は、特に制限されず、連続的な冷却でも段階的な冷却でもよく、途中で冷却速度を変化させてもよい。
前記冷却処理は、例えば、前述の抵抗加熱式ヒーターで行うことができる。また、冷却を早めるために、前述の電流のオンオフに加え、若しくは代えて、結晶を炉内から外に出して外気と接触させる冷却方法や、水や空気などの冷媒を用いた冷却方法等を適用してもよい。前記加熱処理工程と同様に、この冷却処理工程も、Cs成分雰囲気で実施することが好ましく、その方法は、前述と同様である。この場合、前記加熱処理工程および前記冷却処理工程の両工程を連続して前記雰囲気下で実施することも好ましい。
このようにして、前記原料結晶中の光散乱源が除去でき、且つ、新たな欠陥(紫外線照射による蛍光準位の生成)の発生を抑制できるため、目的とするCBO非線形光学結晶が得られる。すなわち、この結晶は、前述のように光散乱源が消失し、新たな欠陥も生じないため、例えば、紫外線レーザーに使用しても、散乱がない品質に優れた素子となる。また、新たな欠損の生成を防止できることから、それが原因となるレーザー損傷の閾値の低下も回避できる。このため、本発明により得られる結晶は、高効率に長時間使用できることが期待される。なお、前述のように、CLBOについても同様である。
CLBO結晶を製造する場合にも、前述と同様に行うことができるが、例えば、以下のような条件があげられる。
Cs供給源は、前述のように、Cs成分の割合(mol%)が、CLBO原料結晶を育成するための原料組成物におけるCs成分の割合(mol%)よりも大きければよい。すなわち、目的の組成(CsLiB10)である原料結晶を育成するための原料組成物よりも、Cs成分に富む組成物を前記Cs供給源として使用することができる。Cs成分の割合は、前述の要件を満たせば特に制限されないが、例えば、より容易にCs成分を蒸発させることができ、加熱温度を相対的に低い温度に設定できることから、相対的に高い割合であることが好ましい。
Cs供給源中のCs成分としては、特に制限されず、例えば、前述と同様に炭酸セシウムや酸化セシウム等があげられる。また、Cs成分以外の他成分としては、特に制限されないが、例えば、酸化ホウ素等のB成分(ホウ素成分)や、酸化リチウム(LiO)等のLi成分があげられる。CLBO結晶の製造方法に使用するCs供給源としては、例えば、CsOとLiOとBとを含むことが好ましい。この場合、Cs供給源におけるCsOとLiOとの割合(モル比)は、例えば、1:1が好ましく、Bの割合が、75mol%以下であることが好ましく、より好ましくは70mol%以下、さらに好ましくは65mol%以下である。また、加熱処理の温度は、前述のように、前記Cs供給源からCs成分が蒸発する温度であり、且つ、目的のCLBO結晶に重量減少が発生する温度未満である。具体例としては、例えば、660〜740℃であり、好ましくは700℃、加熱処理時間は、例えば、48時間である。なお、前記Cs供給源からの蒸発成分としては、少なくともCs成分が含まれていればよいが、その他の成分(例えば、B成分、Li成分)が含まれてもよい。
つぎに、本発明の光散乱源除去方法は、光散乱源を有するセシウムホウ酸化合物結晶の前記光散乱源の除去方法であって、雰囲気中にCs成分を供給するCs供給源を準備する工程、および、Cs成分を含む雰囲気下において、前記光散乱源を有するセシウムホウ酸化合物結晶を加熱する加熱処理工程を含み、前記Cs供給源におけるCs成分の割合(mol%)が、前記セシウムホウ酸化合物結晶を育成するための原料組成物におけるCs成分の割合(mol%)よりも大きく、前記加熱処理工程における加熱温度が、前記Cs供給源からCs成分が蒸発する温度であり、且つ、前記セシウムホウ酸化合物結晶に重量減少が発生する温度未満であることを特徴とする。この方法において、前記加熱処理工程は、本発明の前記製造方法と同様にして実施可能である。
つぎに、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に制限されない。
(原料結晶の製造)
CsCOおよびBを素原料として、モル比26:74となるように純水中で混合した後、水を蒸発させ、乾燥させた粉体を調製した。これを700℃に加熱し、固相反応によりCBO結晶相を有する焼結体を作製し、育成原料として、白金製の育成坩堝に充填した。この育成原料におけるB濃度は、74mol%、CsO濃度は、26mol%とした。結晶育成は、前述のTSSG法の育成炉を用いて同方法により行った。種子結晶の方位は結晶のa軸方向、育成原料の溶液を撹拌するための種子結晶回転速度は60rpmとした。結晶成長が始まる飽和点(約830℃)に保ち、その後、炉全体の温度を0.1℃/日の速度で降下させた。その結果、7日間で31×41×41mmのCsB単結晶が得られた。この原料結晶を図7(A)の写真に示す。この原料結晶から(011)自然面を有する断片を切り出し、素子を得た((3)×(5)×(12〜20)mm)。この素子に対し、前記自然面に垂直に赤色のHe−Neレーザー(4mW、入射方向⊥(011)面、偏光方向<100>、観察方向は入射方向に対して垂直なもう1つの(011)面)を照射して光散乱を観察した。入射方向⊥(011)面の結果を、図7(B)の写真に示す。図示のように、この原料結晶の素子において、光路に沿って光散乱源が入っている様子が確認できた。ここで述べた照射、観察方位は、実験により光散乱の観察が容易にできる条件を選んだ結果である。なお、前記素子の切り出しは、as−grownのファセット面を利用して切り出しているが、本発明はこれに限定せず。その他に、位相整合方向に切り出すことも可能である。
(加熱処理工程および冷却処理工程)
つぎに、前記原料結晶素子に対し、前記加熱処理および前記冷却処理を施し、光散乱源の除去を行った。この加熱処理には、図2の断面図に示す密閉容器13を使用した。この密閉容器は、直径3cm、高さ4cmの白金坩堝132の開口部を白金箔131で覆い、内部を密閉した容器である。
まず、CsCOおよびBを素原料として、モル比30:70となるように加熱した純水中で混合した後、乾燥させてCs供給源を調製した。このCs供給源におけるB濃度は70mol%、CsO濃度は30mol%とした。そして、図2に示すように、白金坩堝132の内部に4〜5gのCs供給源11を配置した。さらに、切り出した原料結晶素子10を白金線14によりアルミナ棒12に吊るし、アルミナ棒12を白金坩堝132の縁に固定して、原料結晶素子10をCs供給源11の上方(距離5〜8cm)に配置した。なお、原料結晶素子10は、その(100)面が地面と垂直になるように前記アルミナ棒に吊るした。そして、白金坩堝132の開口部を白金箔131で覆い、内部を密閉状態とした。
つぎに、内部にCs供給源11および原料結晶素子10を配置した密閉容器13を、マッフル炉を用いて加熱した。加熱処理温度は、所定の温度とし、前記加熱処理温度までの昇温時間を2時間、前記加熱処理温度での保持時間を36時間とした。なお、加熱によってCs供給源11からCs成分が蒸発する(同図において矢印A)。そして、加熱処理を行った後、約6℃/分の速度で2時間かけて30℃にまで冷却を行い、目的のCBO結晶を得た。この結晶について、前述と同様にして、赤色のHe−Neレーザー光(出力4mW、直線偏光)を照射し、光散乱の有無を確認した。入射方向⊥(011)面の結果を、図1の写真に示す。同図において、左列は、加熱処理前の原料結晶素子に633nmのレーザーを照射した際の写真であり、右列は、加熱処理後の結晶素子に633nmのレーザーを照射した際の写真である。図示のように710℃の処理によって散乱光が弱くなり、720℃および730℃の処理で散乱光は確認できなかった。このように、Cs供給源の存在下、所定の温度で加熱処理を施すことによって、光散乱は生じておらず、光散乱源が除去できたことが分かる。
加熱処理工程において、使用するCs供給源について、CsCOとBのモル比を33:67とし、Cs供給源におけるB濃度を67mol%、CsO濃度を33mol%とした以外は、前記実施例1と同様にして、CBO結晶の製造ならびに光散乱源の確認を行った。
その結果を、図3に示す。同図において、左列は、加熱処理前の原料結晶素子に633nmのレーザーを照射した際の写真であり、右列は、加熱処理後の結晶素子に633nmのレーザーを照射した際の写真である。図示のように、この結晶では、Cs供給源の存在下、710℃で加熱処理を施すことによって、光散乱は減少または生じておらず、光散乱源が除去できた。また、前記実施例1との比較により、Cs供給源におけるCs成分の割合が高い程(実施例2)、より低い温度で散乱源を減少できることがわかった。
前記実施例1と同様にして原料結晶素子を作製し、この原料結晶素子に対して前記加熱処理および前記冷却処理を施し、光散乱源の除去を行った。この加熱処理には、図4の断面図に示す密閉容器15を使用した。この密閉容器15は、ステンレス製(SUS製)であり、直径1インチ(25.4mm)の中空筒150と、その両端の開口部を塞ぐ取り外し可能なキャップ151および152とから構成されている。
まず、CsCOおよびBを素原料として、モル比33:67となるように加熱した純水中で混合した後、乾燥させてCs供給源を調製した。このCs供給源におけるB濃度は67mol%、CsO濃度は33mol%とした。そして、図4に示すように、中空筒150の下方の開口部にキャップ152を装着し、その内部に、4〜5gのCs供給源11をいれたアルミナ坩堝16を配置した。さらに、切り出した原料結晶素子10を白金線14によりアルミナ棒(図示せず)に吊るし、前記アルミナ棒を中空筒150の内部上方に固定して、原料結晶素子10をCs供給源11の上方に配置した。なお、原料結晶素子10は、内部に配置する前に、予め400℃で1時間加熱しておき、また、その(100)面が地面と垂直になるように前記アルミナ棒に吊るした。そして、中空筒150内部をAr雰囲気に置換してから、中空筒150の上方開口部にキャップ151を装着して、密閉状態とした。
つぎに、内部にCs供給源11および原料結晶素子10を配置した密閉容器15を、マッフル炉を用いて加熱した。加熱処理温度は、所定の温度(600℃、630℃、650℃、700℃)とし、前記加熱処理温度までの昇温時間を2時間、前記加熱処理温度での保持時間を48時間とした。なお、加熱によってCs供給源11からCsが蒸発する(同図において矢印A)。そして、加熱処理を行った後、約1℃/分の速度で10時間かけて約25℃にまで冷却を行い、目的のCBO結晶を得た。
この結晶について、前述と同様にして、赤色のHe−Neレーザー光を照射し、光散乱の有無を確認した。入射方向⊥(011)面の結果を、図5の写真に示す。同図において、左列は、加熱処理前の原料結晶素子に633nmのレーザーを照射した際の写真であり、右列は、加熱処理後の結晶素子に633nmのレーザーを照射した際の写真である。図示のように、この結晶では、Cs供給源の存在下、所定の温度で加熱処理を施すことによって、光散乱は生じておらず、光散乱源が除去できたことが分かる。また、同じCs供給源を使用した実施例2と比較して、SUSチューブを使用した実施例3は、前記実施例2よりも約60℃低い650℃程度の加熱で散乱光が確認されなかった。このことから、加熱処理は密閉状態で行うことが好ましく、特に密閉度が高い程、低い加熱温度での効率良い処理が可能になるといえる。
加熱処理工程において、使用するCs供給源について、CsCOとBのモル比を36:64とし、Cs供給源におけるB濃度を64mol%、CsO濃度を36mol%とした以外は、前記実施例3と同様にして、CBO結晶の製造ならびに光散乱源の確認を行った。
その結果を、図6に示す。同図において、左列は、加熱処理前の原料結晶素子に633nmのレーザーを照射した際の写真であり、右列は、加熱処理後の結晶素子に633nmのレーザーを照射した際の写真である。図示のように、この結晶では、Cs供給源の存在下、所定の温度で加熱処理を施すことによって、光散乱は減少または生じておらず、光散乱源を十分に除去できたことが分かる。
(比較例1)
実施例1により調製した前記原料結晶に対し、加熱処理ならびに急冷処理を行って、光散乱源の除去を確認した。
前記実施例1により調製した前記原料結晶から(011)自然面を有する断片を切り出し、素子を得た。そして、前記実施例1における原料結晶の育成後、白金坩堝に残留している原料をそのまま前記育成炉に入れ、炉内の温度を加熱温度に上昇させた。この状態で炉内部の空間にはCsを含む蒸気が満たされていた。熱処理を施す原料結晶素子を支持棒に固定して前記育成炉の上蓋に開いた穴から導入し、結晶を昇温した。この時、結晶の近傍に温度を計測する熱電対を取り付け、室温から825℃まで15分かけて上昇させた。この温度で3時間保持し(加熱処理工程)、その後10分以内で、室温まで急速冷却し(冷却処理工程)、目的とするCBO結晶を得た。
この結晶について、前述と同様にして、赤色のHe−Neレーザー光を照射し、光散乱の有無を確認した。この結果を、図8(A)および(B)の写真に示す。同図において(A)は、前記加熱処理および急冷処理前の原料結晶、(B)は、加熱処理および急冷処理後のCBO結晶の写真である。さらに、前記CBO結晶に193nmの紫外線を照射して、蛍光準位の有無を確認した。193nmのレーザー光の出力は、約10mWとし、偏光方向は<100>方向に垂直、入射面は(011)面に垂直とし、観察方向は、(011)面に垂直に統一して撮影を行った。この結果を、図8(C)および(D)に示す。同図において(C)は、前記加熱処理および急冷処理前の原料結晶、(D)は、加熱処理および急冷処理後のCBO結晶の写真である。
同図(B)に示すように、加熱処理ならびに急冷処理によって、原料結晶(同図(A))に生じていた633nmの散乱光は消失したが、同図(C)に示すように、原料結晶では確認されなかった193nm励起の蛍光が、処理後のCBO結晶において確認された(同図(D))。なお、as grown結晶についても、波長193nmのレーザーを照射すると、図9(B)に示すようにわずかに青色の光が観察されるが、これと、比較例1のCBO結晶(図9(A))の色は明らかに異なっている。この図9(B)で確認された193nm入射で生じる青色の蛍光は、全てのCBO結晶で観察されるものであり、これはレーザー素子の実用面に影響ない(すなわち、レーザー損傷閾値の低下には関与しない)ことは明らかである。これに対して、図8(D)および図9(A)に示すように193nm励起の蛍光(緑)を発する結晶は、実用面において損傷閾値が低下するという問題がある。
本発明の製造方法により得られるCBO結晶が、さらに、前記比較例1のような193nmの蛍光を発しないことを確認した。
前記実施例1および実施例2で作製したCBO結晶ならびに前記実施例3および実施例4で作製したCBO結晶について、前記比較例1と同様にして193nmの蛍光を確認した。これらの結果を図10および図11に示す。図10は、白金坩堝を使用した実施例1(CsO 30mol%)および実施例2(CsO 33mol%)の結果であり、図11は、SUSチューブを使用した実施例3(CsO 33mol%)および実施例4(CsO 36mol%)の結果である。同図に示すように、実施例によれば、比較例1と比べて、193nmにおける緑色の蛍光の発生を抑制することができた。なお、図11の630℃および650℃の結果では、表面が荒れていてアモルファス状の付着物が見られ、193nmの僅かな散乱光に対しても蛍光しているが、これは素子としての実用面において問題にはならない。
CsCO、BおよびLiOを素原料として、前記実施例1の方法に準じて、CLBO原料結晶を調製した。そして、このCLBO原料結晶を用いて、前記実施例3と同様にして加熱処理および冷却処理を行った。なお、Cs供給源は、CsOとLiOとのモル比が1:1であり、B濃度が65mol%の組成物を使用し、加熱温度は700℃とした。
CLBO原料結晶および得られた処理後のCLBO結晶について、前記実施例1と同様にして、532nmレーザー光(出力30mW、直線偏光)を照射し、光散乱の有無を確認した。これらの結果を、図12の写真に示す。同図において、左の写真は、加熱処理前の原料結晶素子に532nmレーザーを照射した際の写真であり、右の写真は、加熱処理後の結晶素子に532nmのレーザーを照射した際の写真である。図示のように、Cs供給源の存在下、700℃で加熱処理を行うことによって、散乱光は弱くなったことから、光散乱源が除去できたことが分かる。
以上のように、本発明の製造方法によれば、内部に光散乱源を有する原料結晶であっても、前記光散乱源を除去できるため、高品質な結晶を提供でき、さらに、容易な育成条件の選択も可能となる。また、本発明によれば、前述の高温加熱・急速冷却法のように紫外線照射による新たな蛍光が発生するという問題も回避できる。特に、前記蛍光の発生は、セシウムホウ酸化合物結晶をTHG素子として使用する際、レーザー損傷の閾値低下の原因と考えられるため、この点からも本発明による結晶は、より品質に優れる。したがって、本発明の製造方法は、例えば、紫外線レーザーへの波長変換素子の製造等、産業上極めて有用な方法といえる。本発明を適用できるセシウムホウ酸化合物結晶としては、例えば、CBO結晶やCLBO結晶があり、これらの結晶は、例えば、紫外線レーザーへの波長変換素子として有用である。
図1は、本発明の製造方法の一実施例により得られた結晶の光散乱の状態を示す写真である。 図2は、本発明の製造方法の一実施例において使用した密閉容器の断面図である。 図3は、本発明の製造方法のその他の実施例により得られた結晶の光散乱の状態を示す写真である。 図4は、本発明の製造方法のさらにその他の実施例において使用した密閉容器の断面図である。 図5は、本発明の製造方法のさらにその他の実施例により得られた結晶の光散乱の状態を示す写真である。 図6は、本発明の製造方法のさらにその他の実施例により得られた結晶の光散乱の状態を示す写真である。 図7は、原料結晶の光散乱を示す写真である。 図8は、比較例により得られた結晶の光散乱および蛍光の状態を示す写真である。 図9は、比較例により得られた結晶の蛍光の状態を示す写真である。 図10は、本発明の製造方法のさらにその他の実施例により得られた結晶の蛍光の状態を示す写真である。 図11は、本発明の製造方法のさらにその他の実施例により得られた結晶の蛍光の状態を示す写真である。 図12は、本発明の製造方法のさらにその他の実施例により得られた結晶の光散乱の状態を示す写真である。 図13は、CsO−Bの状態図である。
符号の説明
10 原料結晶
11 Cs供給源
12 アルミナ棒
13、15 密閉容器
14 白金線
16 坩堝

Claims (19)

  1. セシウムホウ酸化合物結晶の製造方法であって、
    内部に光散乱源を有する原料結晶を準備する工程、
    雰囲気中にCs成分を供給するCs供給源を準備する工程、および、
    Cs成分を含む雰囲気下において、前記原料結晶を加熱する加熱処理工程を含み、
    前記Cs供給源におけるCs成分の割合(mol%)が、前記原料結晶を育成するための原料組成物におけるCs成分の割合(mol%)よりも大きく、
    前記加熱処理工程における加熱温度が、前記Cs供給源からCs成分が蒸発する温度であり、且つ、前記セシウムホウ酸化合物結晶に重量減少が発生する温度未満であることを特徴とする製造方法。
  2. セシウムホウ酸化合物結晶が、CsB結晶またはCsLiB10結晶である、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記Cs供給源が、液体である、請求項1または2記載の製造方法。
  4. 前記Cs供給源におけるCs成分の割合が、30mol%以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 前記加熱処理工程における加熱温度が、720℃未満である、請求項1から4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 前記加熱処理工程における加熱温度が、695℃未満である、請求項1から5のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. 密閉状態で前記原料結晶の加熱処理を行う、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. 前記Cs供給源を配置した容器を準備し、前記容器内において前記原料結晶の加熱処理を行う、請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 前記容器が密閉容器である、請求項8記載の酸化物結晶の製造方法。
  10. 前記Cs供給源から蒸発させたCs成分を、外部から前記加熱処理を行う雰囲気内に導入する、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
  11. 前記原料結晶が、溶液成長法により製造された結晶である、請求項1から10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. 前記溶液成長法が、Cs成分およびB成分を含むセルフフラックスを用いた方法であり、前記セルフフラックスにおいて、Cs成分の割合が29mol%以下、B成分の割合が71mol以上である請求項11記載の製造方法。
  13. セシウムホウ酸化合物結晶がCsB結晶であり、
    前記原料結晶を育成するための原料組成物がCsOとBとを含み、
    前記Cs供給源がCs成分としてCsOを含み、前記Cs供給源におけるCsOの割合(mol%)が、前記原料結晶を育成するための原料組成物におけるCsOの割合(mol%)よりも大きい、請求項1から12のいずれか一項に記載の製造方法。
  14. 前記CsOの割合(mol%)が、CsOとBとの全モル量に対するCsOモル量の割合である、請求項13記載の製造方法。
  15. 前記溶液成長法が、top−seeded solution growth(TSSG)法である、請求項11〜14のいずれか一項に記載の製造方法。
  16. さらに、加熱処理後の原料結晶を冷却する冷却処理工程を含む、請求項1〜15のいずれか一項に記載の製造方法。
  17. 冷却速度が、50℃/分未満である、請求項16記載の製造方法。
  18. セシウムホウ酸化合物結晶であって、請求項1から17のいずれか一項に記載の製造方法により得られたセシウムホウ酸化合物結晶。
  19. 紫外線照射による蛍光を発しない、請求項18記載のセシウムホウ酸化合物結晶。
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