JP4484208B2 - フッ化金属単結晶体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フッ化金属単結晶体の製造方法、詳しくは、光学材料を切り出した際に、その使用に大きく影響する、単結晶体内部に存在する散乱体の数が極めて少ないフッ化金属単結晶体の製造方法に関する。
フッ化カルシウムや、フッ化バリウム等のフッ化金属の単結晶体は、広範囲の波長帯にわたって高い透過率を有し、低分散で化学的安定性にも優れることから、紫外波長または真空紫外波長のレーザを用いた各種機器、カメラ、CVD装置等のレンズ、窓材等の光学材料として需要が広がってきている。とりわけ、フッ化カルシウム単結晶体は、光リソグラフィー技術において次世代の短波長光源として開発が進められているFレーザ(157nm)での投影レンズとして期待が寄せられている。
従来、こうしたフッ化金属単結晶体からなる光学材料は、坩堝降下法(ブリッジマン法)や単結晶引上げ法(チョクラルスキー法)により製造されたアズグロウン単結晶体から切り出されるのが一般的である。ここで、坩堝降下法とは、坩堝中の単結晶製造原料の溶融液を、坩堝ごと徐々に下降させながら冷却することにより、坩堝中に単結晶を育成させる方法である。一方、単結晶引上げ法とは、坩堝中の単結晶製造原料の溶融液面に、目的とする単結晶体からなる種結晶を接触させ、次いで、その種結晶を坩堝の加熱域から徐々に引上げて冷却することにより、該種結晶の下方に単結晶を育成させる方法である。
これら坩堝降下法や単結晶引上げ法等により製造されるフッ化金属の単結晶体には、集光照明下で観察を行うと、光を散乱して光っている粒として観測される内部欠陥、所謂、散乱体 (Scattering body)が多数存在している問題があった。例えば、坩堝降下法により得られるフッ化金属単結晶体の場合、最大直径が20μm以下の散乱体が1cm当たり160個以下の光学部材を得るために、そのアズグロウン単結晶体から該散乱体の少ない下部の一部分を選定して切り出さねばならないことが報告されている(特許文献1参照)。また、係る散乱体は、後述するようにその実態はほとんどが空孔であるため、坩堝中に収容された原料溶融液において、下方の液よりも上方の液が結晶化する過程で形成され易い状況があり、単結晶引上げ法により単結晶体を製造する場合には、上記坩堝降下法よりも、さらに激しく形成され易い傾向があった。
しかも、いずれの方法においても、これら散乱体は、小口径のものよりも大口径の単結晶体を製造する場合において、より顕著に発生していた。
国際公開第02/077676号パンフレット
散乱体が単結晶体中に多く存在すると、この単結晶体を光学材料に切削加工した場合には、光の散乱により透過率が低下したり、コントラストが低下したり、フレアやゴーストが発生する虞がある。したがって、単結晶体中において、該散乱体は極力減らす必要があるが、坩堝降下法や単結晶引上げ法において、該散乱体の形成を、光学材料の切り出しにおいて最も有用な箇所である直胴部や、或いはアズグロウン単結晶体全体にわたって有効に抑制する方法は知られておらず、現状では、その形成量が少ない僅かの部分を選択して切り出すしか手はなかった。よって、大口径の光学材料を切り出すことは難しく、また、小口径のものも、係る切り出し部分以外のアズグロウン単結晶体の大部分は不良品にせざるを得ず、製品の歩留まりが著しく低かった。
以上の背景にあって本発明は、これら散乱体の存在量が極めて少なく、大口径の光学材料も歩留まり良く切り出すことが可能なアズグロウン単結晶体が得られるフッ化金属単結晶体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意研究を続けてきた。その結果、前記したとおり一般的には、散乱体の形成が激しくなる単結晶引上げ法においても、原料フッ化金属の溶融液の深さを特定の浅さにして単結晶の引上げを行えば、該散乱体の形成を大きく抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、単結晶引上げ法に従い、原料フッ化金属の溶融液面に種結晶を接触させ引上げることによりフッ化金属の単結晶体を育成させるフッ化金属単結晶体の製造方法において、少なくともアズグロウン単結晶体の直胴部の引上げを行う実質的全期間を、原料フッ化金属の溶融液の深さ、アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.65倍以下の深さになる条件で製造を実施することを特徴とするフッ化金属単結晶体の製造方法である。
また、本発明は、上記方法により製造することが可能な新規なフッ化金属のアズグロウン単結晶体として、直胴部の直径が50mm以上であり、且つ該直胴部の長さが40mm以上であり、直胴部の全内部に存在する散乱体の数が0.02個/cm以下であるアズグロウン単結晶体、
および、上記と同サイズの大型単結晶体であり、アズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数が0.05個/cm以下であるアズグロウン単結晶体も提供する。
本発明の方法によれば、内部に存在する散乱体の数が極めて少ない部分を有するフッ化金属のアズグロウン単結晶体を製造することができる。したがって、この部分を切り出せば、透過率の低下やコントラストの低下の原因になる該散乱体の存在量が少ない光学部材を効率的に得ることができる。
特に、本発明では、直胴部の直径が50mm以上であり、且つ該直胴部の長さが40mm以上の大口径のアズグロウン単結晶体において、直胴部の全内部に存在する上記散乱体の数が0.02個/cm以下のもの、或いはアズグロウン単結晶体全内部に存在する上記散乱体の数が0.05個/cm以下のものを製造することも可能であり、これらにおいては、前記散乱体の存在量が少ない光学部材を多数に切り出すことができ、製品の歩留まりを大きく向上させることができる。
本発明において、フッ化金属とは、特に制限されるものではないが、具体的には、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化セリウム、およびKMgF、LiCaALF等の2種類以上のカチオン元素を含むフッ化金属、上記フッ化金属に特定の金属元素、具体的には、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属やランタン、セリウム、ガドニウム、イッテリビウムなどの希土類などをドープしたもの等が挙げられる。このうち特に、フッ化カルシウムとフッ化バリウムにおいて最も顕著に効果が発揮され、また、目的物の工業的価値も高い。
本発明において、アズグロウン単結晶体とは、単結晶製造装置の中で結晶が育成され、室温まで冷却され該装置から取り出された後、必要により種結晶部分が除去されただけの形状にある単結晶体が意味される。したがって、本発明におけるアズグロウン単結晶体には、上記装置から取り出されただけの状態の単結晶体の他、該単結晶体に対して切削加工が何も施されることなく、そのままの形状でアニール処理されたアニール処理品も包含される。単結晶引上げ法で製造されたものであれば、アズグロウン単結晶体は、種結晶から直径が徐々に大きくなっている円錐状のショルダー部、インゴットの直径がほぼ一定である円柱状の直胴部、さらに、前記直胴部から徐々に直径が小さくなっている逆円錐状のテール部から通常構成される。なお、インゴットの下端面の央部が上に窪んだ形状の単結晶体が得られることもあるが、この場合、この央部の窪んだ部分は、前記直胴部には含めないものとする。
本発明の方法は、上記フッ化金属のアズグロウン単結晶体を単結晶引上げ法により製造する。ここで、単結晶引上げ法は、後述する原料フッ化金属の溶融液の深さを特定の値にする要件以外は特に制限されるものではなく、目的とする単結晶体の性状に応じて公知の同法の条件から適宜に選定して実施すれば良い。
単結晶引上げ装置としては、図1に示した基本構造をした公知の引上げ装置が使用できる。すなわち、図1の単結晶引上げ装置では、チャンバー(1)内において、回転可能な支持軸(2)に支えられた受け台(3)上には、内部に原料フッ化金属の溶融液(10)が収容される坩堝(4)が載置されており、該坩堝(4)の周囲には、加熱ヒーター(5)が設けられ、さらに、加熱ヒーター(5)を環囲して断熱材壁(6)が設けられている。断熱材壁(6)は、坩堝(4)の下方にも設けられている。
ここで、通常、加熱ヒーター(5)の上端の高さは、坩堝(4)の上端の高さとほぼ同程度か、これを少し上回る程度の高さであるのが好ましい。また、断熱材壁(6)は、坩堝(4)の下端から上端までを環囲していればよいが、引上げられた単結晶体をゆっくり冷却する観点からは、該坩堝(4)の上方における、フッ化金属単結晶体(11)が引上げられる空間までも環囲しているのが好ましい。
一方、坩堝(4)の中心軸上には、先端に種結晶(7)の保持具(8)が取り付けられた回転可能な単結晶引上げ棒(9)が吊設されている。この種結晶(7)は、坩堝(4)内の原料フッ化金属の溶融液(10)に下端面が接触された後に引上げられ、下方に単結晶体(11)が育成する。また、上記支持軸(2)の下端は、チャンバー(1)の底壁を貫通してチャンバー外へ伸びており、図示はしていないが冷却器と接した後、坩堝を回転および上下動させるための機構に接続されている。こうした基本構造を備えた単結晶引上げ装置の中でも、本発明の方法によりフッ化金属単結晶体(11)を製造するに際しては、例えば、特開2004−182587号に記載される装置が、単結晶引上げ域における温度分布の均一性が良く、インゴットをクラックの発生なく良好に製造できるため好ましい。
本発明の最大の特徴は、上記単結晶引上げ装置を用いてフッ化金属単結晶体(11)を製造するに際して、少なくともアズグロウン単結晶体の直胴部の引上げを行う実質的全期間を、坩堝(4)中に収容される原料フッ化金属の溶融液(10)の深さ、アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.65倍以下の深さにになる条件で製造を実施する点にある。
一般に、前記単結晶引上げ装置に使用される坩堝の深さは、アズグロウン単結晶体の直胴部直径の3〜5倍程度あり、これに十分な量の原料フッ化金属の溶融液を収容させると、この溶融液の深さは該直胴部直径に対して浅くても2倍程度の値になり、この値は引上げの終了時においても該直胴部直径の0.75倍は越える液量が残存しているのが普通である。
しかして、このように溶融液の深さが深い状態で単結晶の引上げを行うと、溶融液の流動における自然対流の影響が大きくなり、単結晶体や坩堝の回転による強制対流と相まって流動も複雑化し、単結晶の育成界面近傍における温度分布が不安定になる。育成界面近傍における温度分布が不安定な状態では単結晶体の成長の際に散乱体の原因になる空孔が単結晶体中に多数形成される。これに対して、上記の如くに、溶融液の深さを、アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.65倍以下の深さに浅くすると、このような空孔の原因になる自然対流は大きく弱まり、引上げられた単結晶体中に存在する散乱体の数を著しく減少させることが可能になる。
ここで、散乱体とは、集光照明下で観察を行うと、光を散乱して光っている粒として目視により観測される内部欠陥であり、その粒の最大直径は一般的には100μm以下であり、通常は、10〜100μmのものが観察される。また、その実態は、ほとんどが空孔であり、これらは正八面体等の角張った形状をしているのが一般的である。これら散乱体は、通常は、単結晶の特定の方位に面がほぼ揃っており、レーザ光を照射すると入射光と単結晶の方位によって決定される特定の方向にのみ散乱光が観察される。
上記製造方法において、単結晶体内部への散乱体の形成を抑制する効果をより顕著に発揮させる観点からは、坩堝中に収容される原料フッ化金属の溶融液の深さは、アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.55倍以下、さらに好ましくは0.50倍以下の深さにするのがより好ましい。一般には、この原料フッ化金属の溶融液の深さは、15cm以下、より好適には12cm以下であるのが好ましい。また、単結晶引き上げ工程における、単結晶体と坩堝、あるいは単結晶体と坩堝の底で固化した原料の一部との接触の防止の観点からは、坩堝中に収容される原料フッ化金属の溶融液の深さは、アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.1倍以上の深さ、一般には3cm以上の深さに保持するのがより好ましい。
原料フッ化金属の溶融液の深さを、アズグロウン単結晶体の直胴部の引上げを行う実質的全期間において前記の特定値に浅くする方法は、単結晶体の引上げ途中で坩堝内の原料フッ化金属の溶融液を強制的に抜き出して実施しても良いが、通常は、引上げの開始時に、坩堝内に収容する該溶融液量を少な目にして、引上げの開始当初から、或いは引上げに伴う溶融液の減少により上記浅さが自然に達成されるようにして実施するのが好ましい。また、この坩堝内の溶融液が浅い状態での引上げを長期間実施して直胴部の長い単結晶体を得る場合には、引上げの途中で該坩堝中の溶融液量が不足することもあり得るが、そうした場合には、原料フッ化金属を坩堝中に随時に補充しながら、引上げを実施すればよい。斯様に、引上げの途中で、原料フッ化金属を坩堝中に補充する場合には、坩堝は、その内空部に、さらに筒状等の内坩堝を設けた二重構造坩堝を用いるのが好ましい。すなわち、こうした二重構造坩堝を用い、単結晶の引上げは内坩堝に収容された溶融液面で行い、他方、原料フッ化金属の補充は、外坩堝中の溶融液に加えることで実施するのが、引上げの安定性の観点から好ましい。
単結晶の引上げ時において、上記のごとく原料フッ化金属の溶融液の深さを浅くすれば、その期間に引上げられた単結晶体中に存在する散乱体の数は、0.02個/cm以下、好ましくは0.01個/cm以下、さらに好ましくは0.005個/cm以下に低減することが可能である。場合によっては、全く形成させないことも期待できる。したがって、こうした原料フッ化金属の溶融液の深さを浅くする期間を、アズグロウン単結晶体の直胴部の引上げを行う実質的全期間として設け、この直胴部分を切り出せば、該散乱体の存在量が少ない光学材料を得ることができる。この直胴部の引上げを行う期間は、少なくとも、光学材料が切り出せる厚み分は単結晶体の引上げが行われる期間として設けることが好ましく、通常は30mm以上、好ましくは40mm以上、最も好ましくは50mm以上の幅の単結晶体の引上げが行われる期間として設けるのが良好である
このようにして本発明の方法によれば、光学材料が主に切り出され、最も有用性が高い部位であるアズグロウン単結晶体の直胴部について、その全内部に存在する散乱体の数が0.02個/cm以下、好ましくは 0.01個/cm以下、さらに好ましくは0.005個/cm以下であるフッ化金属のアズグロウン単結晶体を製造することができる。
また、本発明の方法では、この原料フッ化金属の溶融液の深さを浅くする期間を、引上げの開始から終了までの実質的全期間として設けるのも好適な態様である。この方法によれば、上記直胴部に比べれば散乱体が多く形成され易い傾向があるショルダー部やテール部を含めた、アズグロウン単結晶体の全内部において、該散乱体の存在量が0.05個/cm以下、好ましくは0.03個/cm以下、さらに好ましくは0.01個/cm以下ほどに少ないフッ化金属のアズグロウン単結晶体が得られ、係る細部までの有効活用が期待できる。
なお、上記製造方法において、直胴部の引上げを行っている実質全期間、或いは引上げの開始から終了までの実質的全期間とは、それぞれが対象とする引上げ期間中において、単結晶体内部に存在する散乱体数の大幅な増加が起こらない程度の極僅かな期間であれば、原料フッ化金属の溶融液の深さが前記特定値を超える期間があっても許容されることを意味する。例えば、引上げの開始当初において、坩堝中への原料フッ化物の溶融液の収容量を若干多めに収容した場合や、引上げの途中において、原料フッ化金属の溶融液が不足した際にこれを補充した場合等において、極僅かな期間、前記原料フッ化金属の溶融液の深さが前記特定値を超えても、本発明では許容される。好適には、それぞれが対象とする引上げ期間中の85%以上、より好ましくは90%以上、最も好ましくは97%以上の期間が、該原料フッ化金属の溶融液の深さが前記特定値内にあるのが好ましい。
本発明の方法は、直胴部の直径が50mm以上であり、且つ該直胴部の長さが40mm以上である大口径のアズグロウン単結晶体の引上げに適用するのが好ましい。前述したように、このような大口径のフッ化金属単結晶体の育成では、単結晶体内部には多数の散乱体が形成されやすくなるのが普通であるが、本発明の製造方法では、該大口径のフッ化金属単結晶体の引上げであっても、前記した散乱体の形成に対する優れた抑制効果は同様に発揮される。したがって、本発明によれば、該大口径のフッ化金属のアズグロウン単結晶体において、直胴部の全内部に存在する散乱体の数が0.02個/cm以下、好ましくは0.01個/cm以下、さらに好ましくは0.005個/cm以下である前記アズグロウン単結晶体や、或いはアズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数が0.05個/cm以下、好ましくは0.03個/cm以下、さらに好ましくは0.01個/cm以下である前記アズグロウン単結晶体を得ることができる。



特に、アズグロウン単結晶体の直胴部の直径は、75〜400mmであるのが好ましい。なお、本発明において直胴部の直径とは、該直胴部の最も太い部分の直径をいう。また、直胴部の長さは50〜500mmであるのがより好ましい。
本発明の製造方法を実施するための坩堝の形状は、特に制限されるものではなく、十分な深さを有する通常の坩堝において、原料フッ化金属の溶融液を、本発明の方法が実施可能なように浅く収容して使用しても良い。また、これよりも深さが浅めの、本発明の方法に特有の坩堝として用いても良い。なお、引上げの途中での坩堝中への原料フッ化金属の補充が想定される場合には、二重構造坩堝を使用するのが好適であるのは前記したとおりである。直胴部の直径が50mm以上であり、且つ該直胴部の長さが40mm以上であるのアズグロウン単結晶体を引上げる場合には、坩堝は内直径が少なくとも80mmはあり、深さはその1/2倍の深さ、すなわち、40mmは少なくとも有するものを用いるのが好ましい。
坩堝の内空部において底壁面の形状は、特に制限されるものではなく、水平面の他、縦断面の形状がV字状やU字状等をした下に凸形状であっても良い。底壁面の、水平面に対する下方向への傾斜角度が5〜45度であるすり鉢状であるのが、散乱体の抑制効果のより優れたものになり好ましい。なお、このように底壁面の形状が水平面でない場合、前記した坩堝に収容した原料フッ化金属の溶融液の深さとは、溶融液の液面から、該坩堝内空部の底壁面における最も深い部分までの深さをいう。
次に、本発明の方法を実施するための単結晶引上げ法のその他の好適条件について説明する。
原料フッ化金属は、フッ化カルシウムにおける蛍石等の天然鉱物を使用しても良いが、純度の面から化学合成品を使用するのが好ましい。坩堝降下法により得られた単結晶体の破砕物を用いるのも好適な態様である。上記原料フッ化金属は、粉末を使用しても良いが、溶融したときの体積減少が激しいため、粒状物、好適には60μm以上、好適には60〜1000μmの粒径の粒状物として用いるのが好ましい。
また、単結晶引上げ法によるフッ化金属単結晶体の育成では、水分が存在すると、単結晶体中に酸化物が取り込まれて着色等が発生する原因になるため、上記原料フッ化金属は、含有水分を可能な限り除去して用いるのが望ましい。水分を除去する前処理は、原料フッ化金属を真空ポンプによる減圧下で加熱処理することにより行われるが、単に焼成するだけでは原料内部の水分までを十分に除去することは困難であるため、該加熱処理に引き続いて気体スカベンジャーとしての四フッ化炭素、三フッ化炭素、六フッ化エタン等を含有する雰囲気中で原料フッ化金属を溶融させるのがより好ましい。気体スカベンジャーとしては、四フッ化炭素を用いるのが最も好ましい。
こうした前処理を施した原料フッ化金属は、溶融状態からそのまま引上げ法による単結晶の育成を行っても良いが、好ましくは、一旦冷却固化して、その表面に存在している固体不純物を可能な限り切削除去してから用いるのが、多結晶化の低減の観点から好ましい。
上記原料フッ化金属を坩堝に収容した後、溶融させるに先立っては、減圧下での加熱処理を施し、前処理後の吸着水等を除去するのが好ましい。原料フッ化金属の溶融および単結晶の育成は、不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましく、該不活性ガスは、継続的に装置内に供給していき、それに伴ってスカベンャーと残存水分とが反応して生じた二酸化炭素を装置外に排出させるのが好ましい。
単結晶の引上げは、原料フッ化金属を坩堝底の測定温度において融点〜融点+100℃に加熱した条件、例えばフッ化金属がフッ化カルシウムであれば1420℃〜1520℃の温度で実施するのが好ましく、該温度への昇温速度は50〜500℃/Hrであるのが好ましい。単結晶の引上げを開始する前に、原料フッ化金属の融点よりも20〜150℃高めの温度で30〜180分程度保持し、その間に溶融液に浮遊する固体不純物を除去しておくのは、多結晶化の抑制に対して効果的である。
種結晶および育成中の結晶は、引上げ軸を中心として回転させることが好ましく、回転速度は5〜30回/分であることが好ましい。また、上記種結晶の回転に併せて、坩堝も反対方向に同様の回転速度で回転させても良い。好適な結晶の引上げ速度は、1〜10mm/Hrである。
こうした単結晶の引上げは、前記原料フッ化金属において前処理を経ても残留する微量の水分の影響をなくすため、スカベンジャーの存在下で行うのが好ましい。スカベンジャーとしては、前記前処理で説明した四フッ化炭素等の気体スカベンジャーを雰囲気に導入する方法を採用しても良いが、その場合、溶融液への固体不純物の発生量が多くなるため、フッ化亜鉛、フッ化鉛、ポリ四フッ化エチレン等の固体スカベンジャー、好適にはフッ化亜鉛を坩堝内に原料フッ化金属と共に仕込む方法が好ましい。固体スカベンジャーの使用量は、原料フッ化金属100重量部に対して0.01〜5重量部が好ましい。
結晶育成後の降温は、好適には0.1〜3℃/分の降温速度で適宜に実施すれば良い。
単結晶引上げ装置において、加熱ヒーター(5)は、抵抗加熱ヒーターであるのが好ましい。誘導加熱ヒーターの場合、炉内の温度分布が急峻になり易く、高品質の結晶を得る上では、上記抵抗加熱炉が有利である。
前記図1に示した基本構造の単結晶引上げ装置において、単結晶引上げ棒(9)、支持軸(2)及び覗き窓(12)等は、Oリングや磁性流体シールなどで気密化することが好ましい。原料フッ化金属の溶融工程や結晶の育成工程において、これらの部分からリークが発生すると、単結晶の着色や透明度の低下などの品質の著しい低下をもたらすおそれがある。
チャンバー(1)内を真空引きするための真空ポンプは、公知のものを用いることができるが、ロータリーポンプと油拡散ポンプ、あるいはロータリーポンプと分子ポンプの組み合わせが好ましい。
また、単結晶引上げ棒(9)または支持軸(2)に、結晶成長速度測定用のロードセルを設置し、測定値を、ヒーター出力または結晶引上げ速度にフィードバックすることにより安定した品質の単結晶を得ることができる。
坩堝(4)、支持軸(2)及び受け台(3)等の部材は、通常、黒鉛や金、白金−ロジウム合金、イリジウム等の高融点金属で製作される。他方、加熱ヒータ(5)や断熱材壁(6)は、通常、黒鉛、硝子状黒鉛、炭化珪素蒸着黒鉛等で製作される。
引上げ法に用いる種結晶は、育成するフッ化金属と同材質の単結晶体を用いるのが好ましい。種結晶の育成面は任意に選択することができるが、フッ化カルシウムの種結晶を用いる場合は、{111}面または{100}面または{110}面及びこれらの等価面を好適に用いることができる。
実施例
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、実施例および比較例において、アズグロウン単結晶体の直胴部全内部に存在する散乱体の数、およびアズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数は、それぞれ以下の方法により測定した。
・散乱体の測定
ガラス製の水槽に測定対象の単結晶体全体が浸漬できる量のマッチングオイル(フッ化カルシウム単結晶の屈折率と同程度の屈折率に調整したオイル)を満たし、その中にアズグロウン体を静置した。次に、一方向から白色のハロゲンランプ光を照射し、該単結晶体を回転させ、視点を変えながら散乱体からの散乱光が観察できる位置を探し、測定対象に存在する散乱体の個数を目視により測定した。
実施例1
図1に示される単結晶引上げ装置を用いて、フッ化カルシウム単結晶体の製造を行った。図1の単結晶引上げ装置において、チャンバー (1)内に設置された高純度グラファイト製の坩堝(4)は、内直径38cm(外直径40cm)であり、高さ30cmのものであった。坩堝(4)の底壁面は、水平面に対して下方向への傾斜角度が15度で傾斜するすり鉢状の形状であった。断熱材壁(6)は、ピッチ系グラファイト成型断熱材であり、厚み方向の放熱能力は9W/m・Kのものであり、他方、天井板(14)は、グラファイト製であり、厚み方向の放熱能力は5000W/m・Kのものであった。
上記坩堝(4)内に、十分な精製処理及び水分除去処理を施した原料フッ化カルシウム塊 25kgとスカベンジャーとして高純度フッ化亜鉛2gを投入し、チャンバー(1)内に設置した。この原料フッ化カルシウム塊の坩堝(4)に対する収容量は、溶融した場合において、溶融液の深さが 10.9cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.47倍の深さ)になる量であった。
次いで、チャンバー(1)内を真空引き(5×10-6torr以下)し、加熱ヒーター(5)に通電し原料の過熱を開始し、250℃まで昇温し、この温度に2時間保持した。上記保持後、再び昇温を開始し、600℃に達した時点で、真空排気ラインを遮断し、高純度アルゴンをチャンバー(1)内に供給し、内圧を106.4KPaに保った。
原料が完全に溶融した1480℃で40分間保持した後、ヒータ出力を低下させて1440℃で120分間保持した後、単結晶引上げ棒(9)を垂下させて、種結晶(7)の結晶面が(111)である下端面(単結晶成長面)を原料フッ化金属の溶融液(10)の表面に接触させ、単結晶の育成を開始した。種結晶(7)は、6回/分で回転させ、他方、坩堝(4)も、これと逆方向に2回/分で回転させた状態で引上げを行った。引上げ終了後、常温まで降温した。係る単結晶体の引上げにおいて、引上げ終了時の坩堝(4)に残存する原料フッ化カルシウムの溶融液(10)量は、深さが5.8cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.25倍の深さ)になる量であった。
以上により、直胴部の直径が230mmであり、且つ該直胴部の長さが100mmであるフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体16.8kg(直胴部の体積4150cm、アズグロウン単結晶体全体の体積5270cm)が得られた。このフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体について、直胴部全内部およびアズグロウン単結晶体全内部に各存在する散乱体の数を測定した。その結果は、直胴部全内部に存在する散乱体の数は13個であり、その存在割合は0.0031個/cmであった。また、アズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数は27個であり、その存在割合は0.0052個/cmであった。
なお、上記アズグロウン単結晶体は、育成方向に垂直な面で厚さ10mmにスライスし、X線トポグラフを用いて、これが単結晶体であることを確認した。
比較例1
実施例1において、坩堝(4)内に収容する原料フッ化カルシウム塊の量を60kgとする以外、実施例1と同様に実施してフッ化カルシウム単結晶体を製造した。この原料フッ化カルシウム塊の坩堝(4)に対する収容量は、溶融した場合において、溶融液の深さが21.5cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.93倍の深さ)になる量であった。なお、引上げ終了時の坩堝(4)に残存する原料フッ化カルシウムの溶融液(10)量は、深さが16.4cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.71倍の深さ)になる量であった。
以上により、直胴部の直径が230mmであり、且つ該直胴部の長さが100mmであるフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体16.8kg(直胴部の体積4150cm、アズグロウン単結晶体全体の体積5270cm)が得られた。このフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体について、直胴部全内部およびアズグロウン単結晶体全内部に各存在する散乱体の数を測定した。その結果は、直胴部全内部に存在する散乱体の数は228個であり、その存在割合は0.055個/cmであった。また、アズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数は1106個であり、その存在割合は0.21個/cmであった。
なお、上記アズグロウン単結晶体は、育成方向に垂直な面で厚さ10mmにスライスし、X線トポグラフを用いて、これが単結晶体であることを確認した。
実施例2
実施例1において、坩堝(4)内に収容する原料フッ化カルシウム塊の量を40kgとする以外、実施例1と同様に実施してフッ化カルシウム単結晶体を製造した。この原料フッ化カルシウム塊の坩堝(4)に対する収容量は、溶融した場合において、溶融液の深さが 15.4cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.70倍の深さ)になる量であった。そして、この原料フッ化カルシウム塊の溶融量は、単結晶の引上げ開始後、ショルダー部の66重量%が引上げられた時に、深さが14.3cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.65倍の深さ)になる量であった。なお、引上げ終了時の坩堝(4)に残存する原料フッ化カルシウムの溶融液(10)量は、深さが8.9cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.40倍の深さ)になる量であった。
以上により、直胴部の直径が220mmであり、且つ該直胴部の長さが150mmであるフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体21.4kg(直胴部の体積5700cm、アズグロウン単結晶体全体の体積6900cm)が得られた。このフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体について、直胴部全内部およびアズグロウン単結晶体全内部に各存在する散乱体の数を測定した。その結果は、直胴部全内部に存在する散乱体の数は22個であり、その存在割合は0.0039個/cmであった。また、アズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数は、ショルダー部の上方に多数存在するため380個であり、その存在割合は0.055個/cmであった。
なお、上記アズグロウン単結晶体は、育成方向に垂直な面で厚さ10mmにスライスし、X線トポグラフを用いて、これが単結晶体であることを確認した。
実施例3
実施例1において、種結晶(7)の結晶面が(100)である下端面(単結晶成長面)を原料フッ化金属の溶融液(10)の表面に接触させ、単結を育成させる以外は、実施例1と同様に実施してフッ化カルシウム単結晶体を製造した。なお、引上げ終了時の坩堝(4)に残存する原料フッ化カルシウムの溶融液(10)量は、深さが 5.3cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.23倍の深さ)になる量であった。
以上により、直胴部の直径が225mmであり、且つ該直胴部の長さが120mmであるフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体18.6kg(直胴部の体積4770cm、アズグロウン単結晶体全体の体積5830cm)が得られた。このフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体について、直胴部全内部およびアズグロウン単結晶体全内部に各存在する散乱体の数を測定した。その結果は、直胴部全内部に存在する散乱体の数は11個であり、その存在割合は0.0023個/cmであった。また、アズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数は30個であり、その存在割合は0.0051個/cmであった。
なお、上記アズグロウン単結晶体は、育成方向に垂直な面で厚さ10mmにスライスし、X線トポグラフを用いて、これが単結晶体であることを確認した。
実施例4
実施例1において、坩堝(4)の大きさを、内直径50cm(外直径52cm)であり、高さ35cm、底壁面が水平面に対して下方向への傾斜角度が12度で傾斜するすり鉢状の形状であるものに変更し、これに充填する原料フッ化カルシウム塊の量を45kg、高純度フッ化亜鉛4.5gとする以外は、実施例1と同様に実施してフッ化カルシウム単結晶体を製造した。この原料フッ化カルシウム塊の坩堝(4)に対する収容量は、単結晶引上げ時に溶融した場合において、溶融液の深さが11.4cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.37倍の深さ)になる量であった。なお、引上げ終了時の坩堝(4)に残存する原料フッ化カルシウムの溶融液(10)量は、深さが6.5cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.21倍の深さ)になる量であった。
以上により、直胴部の直径が310mmであり、且つ該直胴部の長さが90mmであるフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体28.1kg(直胴部の体積6790cm、アズグロウン単結晶体全体の体積8810cm)が得られた。このフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体について、直胴部全内部およびアズグロウン単結晶体全内部に各存在する散乱体の数を測定した。その結果は、直胴部全内部に存在する散乱体の数は9個であり、その存在割合は0.0013個/cmであった。また、アズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数は22個であり、その存在割合は0.0025個/cmであった。
なお、上記アズグロウン単結晶体は、育成方向に垂直な面で厚さ10mmにスライスし、X線トポグラフを用いて、これが単結晶体であることを確認した。
実施例5
実施例1において、坩堝(4)を、内直径40cm(外直径42cm)であり、高さ35cmであり、底壁面が水平面であるものに変更し、これに充填する原料フッ化カルシウム塊の量を50kg、高純度フッ化亜鉛10gとする以外は、実施例1と同様に実施してフッ化カルシウム単結晶体を製造した。
この原料フッ化カルシウム塊の坩堝(4)に対する収容量は、単結晶引上げ時に溶融した場合において、溶融液の深さが13.7cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.60倍の深さ)になる量であった。なお、引上げ終了時の坩堝(4)に残存する原料フッ化カルシウムの溶融液(10)量は、深さが7.6cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.34倍の深さ)になる量であった。
以上により、直胴部の直径が225mmであり、且つ該直胴部の長さが150mmであるフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体22.4kg(直胴部の体積5960cm、アズグロウン単結晶体全体の体積7020cm)が得られた。このフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体について、直胴部全内部およびアズグロウン単結晶体全内部に各存在する散乱体の数を測定した。その結果は、直胴部全内部に存在する散乱体の数は89個であり、その存在割合は0.015個/cmであった。また、アズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数は295個であり、その存在割合は0.042個/cmであった。
なお、上記アズグロウン単結晶体は、育成方向に垂直な面で厚さ10mmにスライスし、X線トポグラフを用いて、これが単結晶体であることを確認した。
実施例6
実施例1で用いたものと同様の単結晶引上げ装置と坩堝を用いてフッ化バリウム単結晶体の製造を行った。
上記坩堝(4)内に、十分な精製処理及び水分除去処理を施した原料フッ化バリウム塊 40kgとスカベンジャーとして高純度フッ化鉛10gを投入し、チャンバー(1)内に設置した。この原料フッ化カルシウム塊の坩堝(4)に対する収容量は、溶融した場合において、溶融液の深さが 9.8cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.49倍の深さ)になる量であった。
次いで、チャンバー(1)内を真空引き(5×10-6torr以下)し、加熱ヒーター(5)に通電し原料の過熱を開始し、250℃まで昇温し、この温度に2時間保持した。上記保持後、再び昇温を開始し、600℃に達した時点で、真空排気ラインを遮断し、高純度アルゴンをチャンバー(1)内に供給し、内圧を106.4KPaに保った。
原料が完全に溶融した1380℃で40分間保持した後、ヒータ出力を低下させて1310℃で120分間保持した後、単結晶引上げ棒(9)を垂下させて、種結晶(7)の結晶面が(111)である下端面(単結晶成長面)を原料フッ化バリウムの溶融液(10)の表面に接触させ、単結晶の育成を開始した。種結晶(7)は、8回/分で回転させ、他方、坩堝(4)も、これと逆方向に2回/分で回転させた状態で引上げを行った。引上げ終了後、常温まで降温した。係る単結晶体の引上げにおいて、引上げ終了時の坩堝(4)に残存する原料フッ化バリウムの溶融液(10)量は、深さが5.9cm(アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.29倍の深さ)になる量であった。
以上により、直胴部の直径が200mmであり、且つ該直胴部の長さが100mmであるフッ化バリウムのアズグロウン単結晶体19.2kg(直胴部の体積3140cm、アズグロウン単結晶体全体の体積3980cm)が得られた。このフッ化バリウムのアズグロウン単結晶体について、直胴部全内部およびアズグロウン単結晶体全内部に各存在する散乱体の数を測定した。その結果は、直胴部全内部に存在する散乱体の数は10個であり、その存在割合は0.0032個/cmであった。また、アズグロウン単結晶体全内部に存在する散乱体の数は34個であり、その存在割合は0.0086個/cmであった。
なお、上記アズグロウン単結晶体は、育成方向に垂直な面で厚さ10mmにスライスし、X線トポグラフを用いて、これが単結晶体であることを確認した。
図1は、本発明の単結晶引上げ装置の代表的態様を示した概略図である。
符号の説明
1;チャンバー
2;支持軸
3;受け台
4;坩堝
5;加熱ヒーター
6;断熱材壁
7;種結晶体
8;保持具
9;単結晶引上げ棒
10;原料フッ化金属の溶融液
11;フッ化金属単結晶インゴット
12;覗き窓
13;単結晶引上げ棒の挿入孔
14;天井板
15;隔離壁
16;リッド材
17;底部断熱材

Claims (3)

  1. 単結晶引上げ法に従い、原料フッ化金属の溶融液面に種結晶を接触させ引上げることによりフッ化金属の単結晶体を育成させるフッ化金属単結晶体の製造方法において、少なくともアズグロウン単結晶体の直胴部の引上げを行う実質的全期間を、原料フッ化金属の溶融液の深さ、アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.65倍以下の深さになる条件で製造を実施することを特徴とするフッ化金属単結晶体の製造方法。
  2. 請求項1記載のフッ化金属単結晶体の製造方法を、引上げの開始から終了までの実質的全期間について、原料フッ化金属の溶融液の深さ、アズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.65倍以下の深さになるように製造することで実施するフッ化金属単結晶体の製造方法。
  3. 引上げるフッ化金属のアズグロウン単結晶体が、直胴部の直径が50mm以上であり、且つ該直胴部の長さが40mm以上の大きさである請求項1または請求項2に記載のフッ化金属単結晶体の製造方法。
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