JP2007297222A - フッ化金属単結晶体の引上げ装置およびフッ化金属単結晶体の製造方法 - Google Patents

フッ化金属単結晶体の引上げ装置およびフッ化金属単結晶体の製造方法 Download PDF

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俊朗 真淵
Takeshi Yasumura
健 安村
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Abstract

【課題】散乱体の形成が抑制される溶融液が浅い状態を維持しながら、引上げられる単結晶体への輻射状態の変動を抑制することにより安定的な育成が可能なフッ化金属単結晶体の引上げ装置および製造方法を提供する。
【解決手段】外坩堝(4)と内坩堝(5)とからなる二重構造坩堝を用いて、その下端部が内坩堝(5)の上端部よりも下方に位置するように配置された円筒部材(25)によりフッ化金属単結晶体(10)がその上端部まで囲まれた状態を維持しながら単結晶体(10)を引き上げてゆき、内坩堝(5)内に収容された原料フッ化金属の溶融液(7)の育成に伴う減少に応じて、外坩堝(4)に対する内坩堝(5)の収納深さを深くしてゆき、これにより、内坩堝(5)内の溶融液の液量が一定範囲に維持されるように、外坩堝内(4)に収容された溶融液(7)を内坩堝(5)内に補給する。
【選択図】図1

Description

本発明は、光学材料等に用いられるフッ化金属単結晶体を製造するために用いる引上げ装置およびフッ化金属単結晶体の製造方法に関する。
フッ化カルシウムやフッ化バリウム等のフッ化金属の単結晶体は、広範囲の波長帯域にわたって高い透過率を有し、低分散で化学的安定性にも優れることから、紫外波長または真空紫外波長のレーザを用いた各種機器、カメラ、CVD装置等のレンズ、窓材等の光学材料として需要が広がってきている。とりわけ、フッ化カルシウム単結晶体は、光リソグラフィー技術において次世代の短波長光源として開発が進められているArFレーザ(193nm)やF2レーザ(157nm)における光源の窓材、光源系レンズ、投影系レン
ズとして期待が寄せられている。
従来、こうしたフッ化金属の単結晶体は、坩堝降下法(ブリッジマン法)や単結晶引上げ法(チョクラルスキー法)により製造するのが一般的である。ここで、坩堝降下法とは、坩堝中の単結晶製造原料の溶融液を、坩堝ごと徐々に下降させながら冷却することにより、坩堝中に単結晶を成長させる方法である。一方、単結晶引上げ法とは、坩堝中の単結晶製造原料の溶融液面に、目的とする単結晶からなる種結晶を接触させ、次いで、その種結晶を坩堝の加熱域から徐々に引上げて冷却することにより、該種結晶の下方に単結晶を成長させる方法である。
これら坩堝降下法や単結晶引上げ法等により製造されるフッ化金属のアズグロウン単結晶体には、集光照明下で観察を行うと、光を散乱して光っている粒として観測される内部欠陥、いわゆる散乱体(Scattering body)が多数存在している問題があ
った。例えば、坩堝降下法により得られるフッ化金属単結晶体の場合、最大直径が20μm以下の散乱体が1cm3当たり160個以下の光学部材を得るために、そのアズグロウ
ン単結晶体全体から該散乱体の少ない単結晶体下部の一部分を選定して切り出さねばならないことが報告されている(特許文献1)。また、係る散乱体は、その実態はほとんどが空孔であるため、坩堝中に収容された原料溶融液において、下方の液よりも上方の液が結晶化する過程で形成され易い状況があり、単結晶引上げ法により単結晶体を製造する場合には、上記坩堝降下法よりも、さらに激しく形成され易い傾向があった。
散乱体が単結晶体中に多く存在すると、この単結晶体を光学材料に加工した場合には、光の散乱により透過率が低下したり、コントラストが低下したり、フレアやゴーストが発生する虞があるため、該散乱体の形成を有効に抑制する必要があるが、一般的には散乱体の形成がより激しくなるはずである単結晶引上げ法においても、原料フッ化金属の溶融液の深さを単結晶体の直胴部直径の0.65倍以下の深さにして引上げを行えば、該散乱体の形成を大きく抑制でき、この発明について本出願人は既に特許出願している(特願2004−309430号)。
上記方法によれば、散乱体形成の原因になる坩堝中での溶融液の自然対流を大きく弱めることができ、その結果、該散乱体の存在量が少ない大口径のフッ化金属のアズグロウン単結晶体を効率的に製造することができる。
さらに、外坩堝と、該外坩堝内に収納された内坩堝とからなる二重構造坩堝を用いることによって、引上げの開始から終了まで、散乱体の形成が高度に抑制される溶融液が浅い状態で、安定的に単結晶の育成を行うことができ、この技術について本出願人は既に特許
出願している(特許文献4)。
この二重構造坩堝を用いた技術では、最初に図4(a)に示すように、外坩堝(4)および内坩堝(5)の各内空部に原料フッ化金属の溶融液(7)を収容し、単結晶引上げ棒(13)の先端に装着した種結晶体(11)が、内坩堝(5)内に収容された溶融液(7)の液面に接触するまで単結晶引上げ棒(13)を下降させる。
その後、図4(b)および図4(c)に示すように、単結晶引上げ棒(13)を徐々に引上げてフッ化金属単結晶体(10)を育成すると共に、内坩堝(5)内に収容された溶融液(7)のフッ化金属単結晶体(10)の育成に伴う減少に応じて、外坩堝(4)に対する内坩堝(5)の収納深さを深くしてゆく。内坩堝(5)の坩堝壁には連通孔が形成されており、内坩堝(5)の収納深さを深くしてゆくことによって、内坩堝(5)内の溶融液(7)の液量が一定範囲に維持されるように、外坩堝(4)内に収容された溶融液(7)が当該連通孔を通じて内坩堝(5)内に補給される。
上記の方法によれば、フッ化金属単結晶体の引上げ開始時から引上げ終了時まで溶融液(7)の深さが一定の浅い範囲内に維持されるので、溶融液の自然対流が十分に抑制され、安定的に単結晶の育成を行うことができる。その結果、前記散乱体の形成が大幅に抑制される。
なお、単結晶体の引上げ装置としては、不純物をドーパントしたシリコン等の半導体単結晶体の製造用として、不純物濃度の均一性を高めるために、外坩堝と内坩堝とからなる二重構造をした坩堝を用いることが知られている(特許文献2および特許文献3)。しかしながら、これらの文献に記載された二重構造坩堝を備える引上げ装置は、半導体材料の単結晶成長を用途としており、不純物のドーパントなどは行わないフッ化金属単結晶体の製造には使用する動機がなく、事実、使用した例は全く知られていない。
国際公開第02/077676号パンフレット 特開昭61−261288号公開 特開昭62−87489号公開 特願2005−367481号
しかし、上記の二重構造坩堝を用いた引上げ装置によってフッ化金属単結晶体を製造する際に、次の現象が起こる場合があった。すなわち、図4(a)のように単結晶引上げ棒(13)の先端部に装着した種結晶体(11)が内坩堝(5)内の溶融液(7)の液面に接触した状態から、単結晶引上げ棒(13)を徐々に引上げて、図4(c)の状態までフッ化金属単結晶体(10)を成長させる際に、引上げられるフッ化金属単結晶体(10)が内坩堝(5)の上端部を超える図4(b)の付近から、安定な結晶成長が阻害されるようになる場合があった。
具体的には、当該付近を境として、亜粒界構造の乱れによる結晶性の悪化、結晶ねじれ、結晶切れ、単結晶体中への気泡混入、溶融液が坩堝壁において固化した石筍の発生、散乱体の増加等が起こり始める場合がある。
上記結晶切れ、結晶への気泡混入、石筍の発生等は、結晶引上げを減圧下にて行う場合に特に顕著である。
なお、上記結晶切れとは、特に単結晶体の直径が大きい場合において、その引上げ中に、目的とする長さになる前に結晶成長が止まってしまう現象である。
また、単結晶体中に混入する気泡とは、上記散乱体よりもさらに巨大な空孔であり、該散乱体が多くの場合に負結晶であって、その形状は角張った多面体であるのに対し、該気泡は、結晶成長中に結晶成長界面の乱れによって雰囲気ガス等をかみこんでしまったものと推測され、角張ったところの少ない滑らかな輪郭を描く形状をしている場合が多い。該気泡は、集光照明を用いずとも、蛍光灯程度の明るさの下で肉眼にて観察できることが多く、通常、その大きさは100μm〜数cmにも及ぶ。
また、上記のように坩堝底や坩堝壁において石筍状に溶融液が固化してしまうと、このような石筍が大きなものとなった場合には、成長を行わせている単結晶体とぶつかるなどしてしまう。
以上のような現象が起きると、結晶引上げの中止、結晶の再溶解、結晶を繋ぐ作業等が必要となる。また、再び結晶引上げを行っても、必ずしもきれいに結晶が繋がるとは限らない。
本発明者らは、上記現象の原因を検討し、引上げられる単結晶体(10)の高さが内坩堝(5)の上端部を超える付近を境として、単結晶体(10)が受ける輻射の状態が大きく変化することに着目した。すなわち、単結晶体(10)の引上げを開始してから、単結晶体(10)の全体が内坩堝(5)の側壁に囲まれている間は、内坩堝(5)の側壁によって、輻射状態がある程度均一に維持される。
ところが、単結晶体(10)の上端部が内坩堝(5)の上端部を超えると、単結晶体(10)は、内坩堝(5)よりも外側からの輻射の影響、例えば、二重構造坩堝の外周に配置したヒーター(8)、隔離壁(18)、外坩堝(4)などの影響を強く受けるようになり、単結晶体(10)に対する輻射の状態は大きく変化する。
この輻射状態の変化は、単結晶体(10)を通じた熱伝導により結晶成長界面の温度勾配の変動をもたらし、結果として結晶成長界面が不安定になる。また、結晶成長界面の温度勾配の変動は、内坩堝(5)中の溶融液(7)の対流の変動をもたらす。これらの影響によって、上述した結晶乱れ等の各現象が発生すると考えられる。この知見に基づき、単結晶体への輻射伝熱状態の変化を抑制し、常に均一な輻射環境を維持しながら単結晶体を育成することを検討した。
本発明は、引上げの開始から終了まで、散乱体の形成が高度に抑制される溶融液が浅い状態で単結晶体の育成を行うことができ、さらに、引上げられる単結晶体への輻射状態の変動を抑制して安定的に単結晶体の育成を行うことができるフッ化金属単結晶体の引上げ装置およびフッ化金属単結晶体の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した。その結果、引上げられるフッ化金属単結晶体の周囲を、二重構造坩堝における内坩堝の内空部にその下端部が入り込むように配置した黒鉛等を材質とする円筒状の部材で囲むことで、単結晶体への輻射状態の引上げに伴う変動が抑制され、結晶成長界面が安定になることを見出した。
さらに、上記円筒状の部材を設置することで、その内側において引上げられるフッ化金属単結晶体の結晶成長界面の近傍における温度勾配がより急峻になり、結晶成長界面が安定になることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明のフッ化金属単結晶体の引上げ装置は、単結晶育成炉を形成するチャンバー内に、外坩堝と、該外坩堝内に収納された内坩堝とからなる二重構造坩堝が設けられ、
該二重構造坩堝における外坩堝と内坩堝の両内空部は一部連通しており、
該二重構造坩堝は、外坩堝に対する内坩堝の収納深さを連続的に変化させることが可能であり、
チャンバー内における内坩堝の内空部直上には、先端に種結晶体を装着して使用され、上下動可能に垂下された単結晶引上げ棒が設けられ、
単結晶引上げ棒によって引上げられるフッ化金属単結晶体の周囲を囲み、その下端部が内坩堝の上端部よりも下方に位置するように配置された円筒部材が設けられていることを特徴とする。
上記の発明において、前記円筒部材は、その上端部が、引上げ終了時におけるフッ化金属単結晶体の上端部よりも上に位置することが好ましい。
本発明のフッ化金属単結晶体の製造方法は、外坩堝および該外坩堝内に収納された内坩堝からなり、単結晶育成炉を形成するチャンバー内に設けられた二重構造坩堝における、互いに連通した外坩堝および内坩堝の各内空部に原料フッ化金属の溶融液を収容し、
単結晶引上げ棒の先端に装着した種結晶体が、内坩堝内に収容された前記溶融液の液面に接触するまで該単結晶引上げ棒を下降させた後、該単結晶引上げ棒を徐々に引上げることによって、その下端部が内坩堝の上端部よりも下方に位置するように配置された略円筒状の部材によりフッ化金属単結晶体がその上端部まで囲まれた状態を維持しながらフッ化金属単結晶体を育成し、
該育成時において、内坩堝内に収容された前記溶融液のフッ化金属単結晶体の育成に伴う減少に応じて、外坩堝に対する内坩堝の収納深さを深くしてゆき、これにより、内坩堝内の前記溶融液の液量が一定範囲に維持されるように、外坩堝内に収容された前記溶融液を内坩堝内に補給することを特徴とする。
本発明の装置および方法によれば、坩堝を二重構造としたので、引上げの開始から終了まで、散乱体の形成が高度に抑制される溶融液が浅い状態で、安定的に単結晶の育成を行うことができる。
さらに、引上げられるフッ化金属単結晶体の周囲に円筒状の部材を配置したので、引上げられるフッ化金属単結晶体への輻射状態の変動が抑制され、安定的に単結晶体の育成を行うことができる。
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。図1は、本発明の一実施形態におけるフッ化金属単結晶体の引上げ装置を示す断面図である。図示したように、本実施形態の引上げ装置は、単結晶育成炉を形成するチャンバー(1)内に、外坩堝(4)と、外坩堝(4)内に収納された内坩堝(5)とからなる二重構造坩堝が設けられている。これらの各坩堝の内空部は内坩堝(5)に形成された連通孔(14)によって互いに連通しており、外坩堝(4)および内坩堝(5)の内部には、原料フッ化金属の溶融液(7)が収容される。
外坩堝(4)は、上下動および回転可能な支持軸(2)上の受け台(3)に載置されている。内坩堝(5)は、リッド部材(19)に一端が固定された連結部材(17)によって吊り下げられ、その位置が固定されている。なお、連結部材(17)は円筒壁状のものではなく、内坩堝(5)の側壁に沿った円周上に互いに空間をあけて複数の連結部分が配置されたものであるので、円筒壁をもつ部材と区別するため点線で示している。
外坩堝(4)の周囲には、加熱ヒーター(8)が設けられ、さらに、加熱ヒーター(8)を環囲する断熱材壁(9)が設けられている。
加熱ヒーター(8)の上端部の高さは、外坩堝(4)の上端部の高さと同程度か、これを少し上回る程度が好ましい。
断熱材壁(9)は、外坩堝(4)の下端部から上端部までを少なくとも環囲する必要があるが、本実施形態では、断熱材壁(9)を二重構造坩堝の下方まで延出させ、また、引上げられた単結晶体(10)をゆっくり冷却するために、断熱材壁(9)によって外坩堝(4)の上方における単結晶体(10)が引上げられる空間まで環囲している。
加熱ヒーター(8)と外坩堝(4)との間には、加熱ヒーター(8)からの輻射熱を均一化する目的で、隔離壁(18)が周設されている。
加熱ヒーター(8)の熱が上方に逃失することを防止するために、隔離壁(18)の上端部を加熱ヒーター(8)の上端部よりも高くし、該上端部と断熱材壁(9)との間に、隔離壁(18)と断熱材壁(9)との隙間を閉塞するリッド部材(19)を横架し、この隙間を閉塞させている。また、チャンバー(1)の底部にも断熱材(23)が敷設されている。
内坩堝(5)の中心軸上には、先端に種結晶体(11)の保持具(12)が取り付けられた回転可能な単結晶引上げ棒(13)が吊設されている。保持具(12)によって固定された種結晶体(11)は、内坩堝(5)内の原料フッ化金属の溶融液(7)に下端面を接触させた後、徐々に引上げられ、種結晶体(11)の下方には単結晶体(10)が成長する。
支持軸(2)の下端部は、チャンバー(1)の底壁を貫通してチャンバー(1)外へ延びており、不図示の冷却器と接していると共に、その先で坩堝を回転させるための機構に接続されている。
二重構造坩堝の上には、黒鉛からなる円筒部材(25)が配置されている。円筒部材(25)は、内坩堝(5)の内側に配置され、単結晶引上げ棒(13)によって引上げられるフッ化金属単結晶体(10)の周囲を囲んでいる。円筒部材(25)の下端部は、内坩堝(5)の上端部よりも下方に位置している。
以上の構造を備えた引上げ装置を用いてフッ化金属単結晶体(10)を製造する際には、最初に、先端に種結晶体(12)を装着した単結晶引上げ棒(13)を下降させ、内坩堝(5)内に収容された原料フッ化金属の溶融液(7)の液面に種結晶体(12)を接触させる。
その後、単結晶引上げ棒(13)を徐々に引上げてフッ化金属単結晶体(10)を育成してゆく。このとき、単結晶体(10)の成長に伴って内坩堝(5)内に収容された溶融液(7)が減少すると、その減少量に応じて、支持軸(2)を上昇させて外坩堝(4)を移動させ、外坩堝(4)に対する内坩堝(5)の収納深さを連続的に深くしてゆく。これにより、連通孔(14)を通じて外坩堝(4)から内坩堝(5)内に溶融液(7)が補給される。
その結果、単結晶引上げの開始から終了までにおいて、溶融液(7)の深さを内坩堝(5)内において前記散乱体の形成を高度に抑制可能な浅い一定の範囲内に保ちながら単結晶の育成が行われる。
フッ化金属単結晶体(10)は、周囲を円筒部材(25)によって囲まれながら引上げられる。円筒部材(25)は、引上げによる単結晶体(10)への輻射状態の変動を抑制する均熱作用をもつ。
引上げられる単結晶体(10)は、上に向かって温度が小さくなる温度勾配を有しているが、引上げに伴って単結晶体(10)への輻射状態が変動すると、この温度勾配が変化し、結晶成長界面が不安定になったり、内坩堝(5)中の溶融液(7)の対流変化を生じたり
する。これにより、前述したように、亜粒界構造の乱れによる結晶性の悪化、結晶ねじれ、目的とする長さになる前に結晶成長が止まってしまう結晶切れ、得られた単結晶体中への気泡混入、溶融液が坩堝壁において固化した石筍の発生、散乱体の増加等が起こり易くなる。
しかし、引上げられる単結晶体(10)の側面近傍に黒鉛製の円筒部材(25)を配置することで、その外側からの輻射が遮蔽され、成長に伴って単結晶体(10)が引上げられても単結晶体(10)への輻射状態は常に均一に保たれるので、結晶成長界面が安定化し、上記の現象を抑制できる。
図3(a)〜図3(c)に、本発明の別の実施形態における引上げ装置を用いたフッ化金属単結晶体の製造過程における結晶引上げ開始から引上げ終了までの状態を示す。引上げに伴う単結晶体(10)への輻射状態の変動は、図3(a)のように単結晶引上げ棒(13)の先端部に装着した種結晶体(11)が内坩堝(5)内の溶融液(7)の液面に接触した状態から、単結晶引上げ棒(13)を徐々に引上げていった後、引上げられるフッ化金属単結晶体(10)の上端部が、水平方向における輻射環境が変化する位置、特に図3(b)のような内坩堝(5)の上端部、その他、外坩堝(4)の上端部、隔離壁(18)の上端部などに単結晶体(10)が到達した際に起こり易く、このような位置よりも上まで円筒部材(25)で囲むことが好ましい。また、単結晶引上げの開始から終了までの間、均一な輻射環境下で結晶成長させるためには、円筒部材(25)は、図4(c)の育成終了状態に示すように、その上端部が、引上げられるフッ化金属単結晶体(10)の上端部よりも上に位置することが好ましい。
円筒部材(25)はさらに、単結晶体(10)の温度勾配をより急峻にして結晶成長界面をフラットにする作用をもつ。すなわち、円筒部材(25)は、外側からの輻射熱を遮断すると共に、その下端部近傍が冷却起点となり、単結晶体(10)からのフラックス(熱の逃げ)を早めるように作用する。
これにより、成長界面近傍の温度勾配が急峻になり、結晶成長界面がフラットになるので、当該界面が安定化する。円筒部材(25)を配置することによる上記のような温度分布の変化は、コンピュータによるシミュレーションでも明らかな変化として確認できる。
以上に、図1の実施形態について説明したが、以下に、本発明についてさらに詳述する。
本発明において、フッ化金属とは、特に制限されるものではないが、その具体例としては、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化セリウム、および、BaLiF3、KMg
3、LiCaALF6等の2種類以上のカチオン元素を含むフッ化金属、上記フッ化金属に特定の金属元素、具体的には、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属元素やランタン、セリウム、ガドニウム、イッテリビウムなどの希土類元素などをドープしたもの等が挙げられる。このうち特に、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウムおよびフッ化バリウム等のフッ化アルカリ土類金属において最も顕著に効果が発揮され、また、目的物の工業的価値も高い。
本発明において、円筒部材(25)の材料としては、外側からの輻射を遮蔽可能な材料が用いられる。その具体例としては、黒鉛、硝子状黒鉛、炭化珪素蒸着黒鉛等の炭素系材料や、金、白金−ロジウム合金、イリジウム等の高融点金属が挙げられる。これらの中でも、炭素系材料が好ましい。
円筒部材(25)の垂直軸に対する側壁の角度は−10°〜+10°の範囲内である。当該
角度がこの範囲内のものを使用することが好ましいが、当該角度がこの範囲を超える円錐筒状、逆円錐筒状の部材を使用してもよい(本明細書では、円筒部材(25)と、円錐筒状または逆円錐筒状の部材とを含めて「円筒状の部材」ということにする)。
本発明において、内坩堝(5)内に収容する原料フッ化金属の溶融液(7)の深さは、引上げるアズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.65倍以下の深さにするのが好ましい。そして、引上げの開始から終了までの可能な限りの多くの期間、好適には全期間中、上記深さが保たれるように、外坩堝(4)から内坩堝(5)への溶融液(7)の補給を行えばよい。なお、内坩堝(5)の底壁面の形状が図2のように下凸形状である場合、内坩堝(5)に収容した原料フッ化金属の溶融液(7)の深さとは、溶融液の液面から、内坩堝(5)の内空部の底壁(15)面における最も深い部分までの深さをいう。
このようにすることで、空孔の原因になる自然対流は大きく弱まり、引上げられた単結晶体中に存在する散乱体の数を著しく減少させることが可能になる。
なお、上記散乱体とは、集光照明下で観察を行うと、光を散乱して光っている粒として目視により観測される内部欠陥であり、その粒の最大直径は一般的には100μm以下であり、通常は、10〜100μmのものが観察される。また、その実態は、ほとんどが空孔であり、これらは八面体等の角張った形状をしているのが一般的である。これらの散乱体は、通常は、単結晶の特定の方位に面がほぼ揃っており、レーザ光を照射すると入射光と単結晶の方位によって決定される特定の方向にのみ散乱光が観察される。なお、これらの結果から、該空孔は負結晶であると推測される。
内坩堝(5)の大きさは製造するフッ化金属単結晶体の大きさに応じて決定すればよく、内坩堝(5)の内直径は、製造されるフッ化金属単結晶体の直径の最大値よりも大きく、単結晶体の直胴部側面と内坩堝(5)の側壁内面との間に円筒部材(25)が収まる幅があればよい。しかし、内坩堝(5)の内直径があまりに大き過ぎると、後述する遮蔽部材(21)を設けた際のフッ化金属の揮発抑制効果が低減する。
内坩堝(5)の深さは、例えば、引上げるアズグロウン単結晶体の直胴部直径の0.65倍を若干上回る程度の深さとされる。
内坩堝(5)において、底壁(15)面の形状は特に制限されるものではなく、図1の引上げ装置に設けられている内坩堝のように水平面であってもよいが、縦断面の形状がV字状、U字状等である、すり鉢状や逆円錐台状等の下凸形状であってもよい。図2の二重構造坩堝(6)は、内坩堝(5)の底壁(15)面が、縦断面の形状がV字状をしたものである。
内坩堝(5)の壁部に設ける連通孔(14)は、場合に応じて、底壁(15)および側壁(16)における任意の箇所に設けてよく、複数の小孔、例えば直径2〜8mmの小孔を4〜100個の数で、内坩堝(5)の中心から対称的に設けることが、内坩堝(5)に収容される溶融液面の安定性の点から好ましい。連通孔(14)は、内坩堝(5)のできるだけ下方の壁部に設けることが、内坩堝(5)に収容される溶融液の液面の安定性の点から効果的である。
場合によっては、内坩堝(5)の側壁(16)の上端に切欠部を設け、この切欠部によって外坩堝(4)と内坩堝(5)の両内空部を連通させてもよい。この場合、外坩堝(4)内に収容された溶融液(7)は、外坩堝(4)に対する内坩堝(5)の収納深さを深くすることにより、該切欠部をオーバーフローして内坩堝(5)内に補給される。
外坩堝(4)は、引上げる単結晶体の大きさに応じた口径と、引上げに必要な原料フッ化金属の溶融液(7)を収容するのに十分な深さを有するものが使用される。外坩堝(4
)の深さは、内坩堝(5)内への溶融液(7)の補給の円滑性を考慮すると、内坩堝(5)の深さの1.3〜3倍が好ましい。なお、内坩堝(5)の底壁(15)面の形状が図2のように下凸形状である場合、当該深さは、坩堝の上端から底壁(15)面における最も深い部分までの深さのことである。
なお、外坩堝(4)および内坩堝(5)の各内空部に原料フッ化金属の溶融液(7)を収容させた後、単結晶引上げ開始前に、一旦、外坩堝(4)に対する内坩堝(5)の収納深さを浅くして、内坩堝(5)内に収容された溶融液(7)を外坩堝(4)内に流出させ、その後再度、外坩堝(4)に対する内坩堝(5)の収納深さを深くして、外坩堝(4)内の原料フッ化金属の溶融液(7)を内坩堝(5)内に送給する前操作を少なくとも一度行うのが好ましい。
この前操作を行うことで、内坩堝(5)に収容された溶融液(7)に浮遊性の固体不純物が含有されている場合であっても、この固体不純物は、内坩堝(5)内の溶融液(7)を一旦外坩堝(5)内に流出させた際に、その液流に同伴して外坩堝(5)側に排出される。
そして、この固体不純物は、外坩堝(4)内に収容される溶融液(7)面に浮上するため、再度外坩堝(4)に対する内坩堝(5)の収納深さを深くすることにより溶融液(7)を内坩堝(5)内に送給しても、内坩堝(5)内に固体不純物が再進入することはない。
よって、単結晶体の引上げに際して、上記の前操作を少なくとも1回、あるいはその固体不純物の除去効果に応じて複数回繰り返して行うことにより、内坩堝(5)内に収容された溶融液(7)に固体不純物が浮遊しない状態で単結晶の引上げを実施できる。その結果、製造されるアズグロウン単結晶体には、固体不純物が取り込まれていないので、該固体不純物に起因した部分的な多結晶化も発生しない。
原料フッ化金属の溶融液(7)に含有される固体不純物の上記の除去効果を考慮すると、外坩堝(4)の口径は、図2の開口部(20)において、外坩堝(4)の側壁内面と内坩堝(5)の側壁外面との間隔が、好ましくは外坩堝(4)の内直径の1/10〜1/3、より好ましくは1/8〜1/4となる大きさとされる。ここで、開口部(20)は、外坩堝(4)の側壁内面と内坩堝(5)の側壁外面との間に形成され、外坩堝(4)の外面と内坩堝(5)の内面とにより形成される間隙空間を上方へ開放する環状の開放面である。また、外坩堝(4)の内直径とは、該坩堝における内径の最も大きな部分の直径である。
二重構造坩堝(6)において、外坩堝(4)に対する内坩堝(5)の収納深さを連続的に変化させる際には、外坩堝(4)および内坩堝(5)のいずれか一方の坩堝をチャンバー(1)に対して位置固定し、他方の坩堝を連続的に上下動させればよい。外坩堝(4)をチャンバーに対して位置固定し、内坩堝(5)をチャンバー内で連続的に上下動させることが可能な構造とした場合、原料フッ化金属の溶融液(7)の深さを前述した一定範囲に保ちながら単結晶の育成を行おうとすると、単結晶の引上げ界面が経時的に低下していくことになり、加熱ヒーター(8)からの加熱環境が微妙に変化する虞がある。
したがって、安定的に単結晶を成長させる(育成を行う)という点からは、内坩堝(5)をチャンバー(1)に対して位置固定し、外坩堝(4)をチャンバー内において連続的に上下動させる構造とするのが好ましい。
内坩堝(5)をチャンバー(1)に対して位置固定する連結部材(17)は、チャンバー(1)内の上方部材から懸架させてもよく、チャンバー(1)内の側方部材から横架させて
もよい。後者の場合、連結部材(17)は、外坩堝(4)の上下動の妨げにならないように、その上方では十分な高さとなるように設けられる。
また、上記開口部(20)の位置または、開口部(20)よりも下方における外坩堝(4)の側壁内面と内坩堝(5)の側壁外面との間の位置に、外坩堝(4)の側壁内面と内坩堝(5)の側壁外面との間の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部材(21)を設けることが好ましい。
図2の実施形態においては、遮蔽部材(21)は、内坩堝(5)の側壁外面から外坩堝(4)側へ延びる板状部材からなり、内坩堝(5)の側壁外面に固定されている。図示しないが、遮蔽部材(21)は上方から見ると円環リング状の板形状を有している。
この他、遮蔽部材(21)は、図1に示したように外坩堝(4)の側壁内面に固定してもよく、あるいは、遮蔽部材(21)を外坩堝(4)および内坩堝(5)のいずれにも固定せずに、溶融液(7)上に浮遊させておく、いわゆる落し蓋のような態様としてもよい。
遮蔽部材(21)を坩堝に固定する場合、坩堝を上下動させた場合の温度環境の変化を抑制できるという点からは、上下動させない方の坩堝に固定することが好ましい。
フッ化金属は他の金属化合物(例えば酸化物)に比べて揮発性が高く、溶融液の表面から比較的多量に揮発し、揮発したフッ化金属は、該装置内の低温の部材に接触すると凝結、固化する。この固化したフッ化金属が坩堝内の溶融液に落下、混入すると、単結晶体の成長に悪影響を与え、結晶が途中で切れたり、気泡が生じたりして、安定した結晶成長が困難となる場合がある。しかし遮蔽部材(21)を設けることで、外坩堝(4)の内空部に収容されたフッ化金属が開口部(20)から揮発することが抑制され、また、固化したフッ化金属等の落下物があっても、開口部(20)から溶融液(7)中へ当該落下物が落ちることを防止できるため、安定した結晶成長が可能になる。
また、通常は、製造される単結晶体の真空紫外光透過率を向上させるために、坩堝内に原料フッ化金属と共にスカベンジャーと呼ばれる酸素除去剤を入れ、結晶引上げ開始に先立ち、減圧排気しつつ原料フッ化金属とスカベンジャーを加熱し、酸化物を揮発性物質に変換して除去する方法が用いられているが、遮蔽部材(21)を設けることにより、スカベンジャーの揮発が抑制され、より少量のスカベンジャーでもその使用効果を高めることができる。特に、フッ化金属等の固体スカベンジャーを用いる際にその効果が顕著になる。
本発明において、引上げ装置における坩堝および円筒部材以外の基本構成としては、例えば、特開2004−182587号に記載される装置の構成を適用できる。
本発明において、加熱ヒーター(8)としては、抵抗加熱ヒーターが好ましい。誘導加熱ヒーターの場合、炉内の温度分布が急峻になり易く、高品質の結晶を得る上では、抵抗加熱ヒーターが有利である。
単結晶引上げ棒(13)、支持軸(2)、覗き窓(22)等は、Oリングや磁性流体シールなどで気密化することが好ましい。原料フッ化金属の溶融工程や結晶の育成工程において、これらの部分からリークが発生すると、単結晶の着色や透明度の低下など、品質の著しい低下をもたらすおそれがある。
本発明の引上げ装置を用いてフッ化金属単結晶体の成長を行う際には、単結晶成長炉内の圧力や雰囲気を各工程において変更することが好ましく、そのため、本発明の引上げ装置には通常、真空ポンプ等の排気装置、および該排気装置と炉とを接続する配管等のガスの導入・排出系が設置される。
チャンバー(1)内を真空引きするための真空ポンプとしては、公知のものを用いるこ
とができるが、ロータリーポンプと油拡散ポンプ、あるいはロータリーポンプと分子ポンプの組み合わせが好ましい。
また、単結晶引上げ棒(13)または支持軸(2)に、結晶成長速度測定用のロードセルを設置し、ヒーター出力または結晶引上げ速度に測定値をフィードバックすることにより、安定した品質の単結晶を得ることができる。
二重構造坩堝(6)、支持軸(2)、受け台(3)、および遮蔽部材(21)等の部材は、通常、黒鉛、硝子状黒鉛、炭化珪素蒸着黒鉛等の炭素系材料や、金、白金−ロジウム合金、イリジウム等の高融点金属で作製される。これらの部材は、炭素系材料で作製することが特に好ましい。
一方、加熱ヒーター(8)、断熱材壁(9)等は、通常、黒鉛、硝子状黒鉛、炭化珪素蒸着黒鉛等の炭素系材料で作製される。
本発明において、フッ化金属単結晶体の好ましい製造条件は、以下のとおりである。
原料フッ化金属として、天然鉱物、例えばフッ化カルシウムにおける蛍石等を使用してもよいが、純度の面からは化学合成品を使用するのが好ましい。坩堝降下法により得られた単結晶体の破砕物を用いるのも好適な態様である。
原料フッ化金属として、粉末を使用してもよいが、溶融したときの体積減少が激しいため、粒径が好ましくは60μm以上、より好ましくは60〜1000μmである粒状物が用いられる。
単結晶引上げ法によるフッ化金属単結晶体の育成では、水分が存在すると、単結晶体中に酸化物が取り込まれて着色等が発生する原因になるため、原料フッ化金属は、含有水分を可能な限り除去して用いるのが望ましい。
水分を除去する前処理は、原料フッ化金属を真空ポンプによる減圧下で加熱処理することにより行われるが、単に焼成するだけでは原料内部の水分までを十分に除去することは困難であるため、該加熱処理に引き続いて気体スカベンジャーとしての四フッ化炭素、三フッ化炭素、六フッ化エタン等を含有する雰囲気中で原料フッ化金属を溶融させるのが好ましい。気体スカベンジャーとしては、四フッ化炭素を用いるのが最も好ましい。
こうした前処理を施した原料フッ化金属は、溶融状態からそのまま引上げ法による単結晶の育成を行ってもよいが、好ましくは、一旦冷却固化して、その表面に存在している固体不純物を可能な限り切削除去してから用いるのが、多結晶化を低減する点から好ましい。
また、単結晶引上げ装置も、原料フッ化金属の投入に先立って、フッ化亜鉛、フッ化鉛などのフッ化物の存在下に、結晶成長を行う際の温度よりも高い温度に加熱して清浄化しておくことが好ましい。該フッ化物としては、前述したスカベンジャーと同じものを用いればよい。
原料フッ化金属の溶融は、不活性ガスの雰囲気下で行うのが好ましい。該不活性ガスは、継続的に装置内に供給してゆき、それに伴ってスカベンャーと残存水分とが反応して生じた二酸化炭素を装置外に排出させるのが好ましい。
単結晶の引上げは、フッ化金属の結晶成長界面の温度がほぼ該フッ化金属の融点となる温度で行われる。しかしながら、該界面の温度を直接測定することは困難であるため、坩
堝底の温度で制御する手法が好適に用いられる。
この場合、原料フッ化金属を、坩堝底の測定温度において融点〜融点+150℃に加熱した条件、例えばフッ化金属がフッ化カルシウムであれば1420℃〜1570℃程度の温度で単結晶の引上げを行うのが好ましい。また、当該温度への昇温速度は、好ましくは50〜500℃/Hrである。
なお、単結晶の引上げを開始する前に溶融液に浮遊する固体不純物を除去するに際しては、単結晶引上げを行う温度よりもさらに20〜150℃高めの温度で30〜180分程度保持し、その間に行うことも効果的である。
結晶引上げ中の雰囲気ガスとしては、アルゴンなどの不活性ガスが好ましいが、必要に応じて、CF4、HFなどのフッ素系ガス雰囲気下で結晶引上げを行ってもよい。結晶引
上げ中は、新たなガスの供給をできるだけ行わない方が好ましく、常圧下で結晶引上げを行う場合には、温度変化に伴う圧力変化を補う程度のガスの導入・排出をさせる程度でよい。減圧下で結晶引上げを行う場合には、単結晶成長炉を密閉、気密化した状態で行うことが好ましい。
種結晶および成長中の結晶は、引上げ軸を中心として回転させることが好ましく、回転速度は5〜30回/分であることが好ましい。また、種結晶の回転に併せて、坩堝も反対方向に同様の回転速度で回転させてもよい。結晶の引上げ速度は、好ましくは1〜10mm/時間である。
結晶引上げの終了後、単結晶体を炉から取り出すまでの冷却は通常、10℃/分以下の降温速度で行われるが、得られたアズグロウン単結晶体を加工する際にクラックが入ったり欠けたりすることを防止し易い点から、好ましくは0.5℃/分以下、より好ましくは0.1〜0.3℃/分程度の降温速度で冷却を行う。
また、負結晶の発生を抑制し易い点から、炉内圧が10-3〜10-5Pa程度となる真空排気下で降温を行うことも好ましい。
単結晶引上げに用いる種結晶としては、成長させるフッ化金属と同材質の単結晶体を用いるのが好ましい。種結晶の成長面は任意に選択することができるが、フッ化カルシウムの種結晶を用いる場合は、{111}面、{100}面、{110}面、およびこれらの等価面を好適に用いることができる。
以上の本発明によれば、例えば、直胴部の直径が50mm以上であり、かつ直胴部の長さが40mm以上である大型のアズグロウン単結晶体、さらには直胴部の直径が150mm以上のもの、直胴部の長さが100mm以上のもの、あるいは、このような直胴部の直径および長さを両方満足する超大型のアズグロウン単結晶体も良好に製造可能である。このような大型のフッ化金属単結晶体の育成では、単結晶体内部に多数の散乱体が形成され易くなるが、本発明によれば、散乱体の形成に対する優れた抑制効果は、このような大型のフッ化金属単結晶体の育成においても同様に発揮される。
実施例
以下、具体的な実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
二重構造坩堝(6)として、図2に示した構造であるものを用い、また、特開2004-182587号公報に記載されているように、フッ化金属単結晶体(10)が引上げられる空間まで環囲
した断熱材壁(9)と天井板とを有するものである以外は、図1に示した構造である単結晶体引上げ装置を用いて、フッ化カルシウム単結晶体の製造を行った。
この単結晶体引上げ装置において、チャンバー(1)内に設置された高純度グラファイト製の外坩堝(4)は、内直径38cm(外直径40cm)であり、高さ30cmのものであった。
この外坩堝(4)内に、連結部材(17)によりチャンバーのリッド部材(19)に固定された状態で収納される内坩堝(5)は、内直径25cm(外直径26cm)であり、高さ14cmのものであった。
内坩堝(5)の底壁は、水平面に対して下方向への傾斜角度が15度で傾斜する、縦断面がV字状(すり鉢状)の形状であった。当該底壁には、その下端部(中心部)に1個と、中心部から底壁面に沿って上方へ25mm離れた位置の円周上に均等間隔で8個、計9個の口径が4mmである円筒状の連通孔(14)を形成した。
この内坩堝の外壁には、上端から2cmの位置に、厚さ6mmで、外坩堝内壁との間隙が1.5mmとなる円環リング形状である板状の遮蔽部材(21)を取り付けた。
この内坩堝の内側に、高純度グラファイト製の円筒部材(25)を設置した。円筒部材(25)は、内直径22cm(外直径22.6cm)であり、高さ28cmのものであった。円筒部材(25)はその上端部の4箇所でカーボン製の連結部材(17)でリッド(19)に接続することにより、円筒部材(25)の下端部が内坩堝(5)の上端部よりも5cm下方に位置するように固定した。
外坩堝(4)および内坩堝(5)内に、十分な精製処理および水分除去処理を施した原料フッ化カルシウム塊を計40kg投入し、さらに、内坩堝(5)内にスカベンジャーとして高純度フッ化亜鉛4gを投入し、チャンバー(1)内に設置した。そして、チャンバー(1)内を真空引き(5×10-6torr以下)し、加熱ヒーター(8)に通電して原料の加熱を開始し、250℃まで昇温し、この温度に2時間保持した。その後、再び昇温を開始し、1200℃に達した時点で、真空排気ラインを遮断した後、内圧が若干減圧状態になる程度まで高純度アルゴンをチャンバー(1)内に供給した。
原料を完全に溶融させ、外坩堝(4)および内坩堝(5)内に原料フッ化カルシウムの溶融液(7)が収容された状態とした。このとき、外坩堝(4)に対する内坩堝(5)の収納深さは、内坩堝(5)内において、原料フッ化カルシウムの溶融液(7)の深さが6cmになる深さであった。
次いで、単結晶引上げ棒(13)を下降させて、結晶面が{111}である種結晶(11)の下端面(単結晶成長面)を原料フッ化カルシウムの溶融液(7)の表面に接触させ、単結晶の育成を開始した。
種結晶(11)は、6回/分で回転させ、他方、外坩堝(4)も、これとは逆方向に2回/分で回転させた状態で引上げを行った。引上げ中において、内坩堝(5)内の溶融液(7)の深さが6cmに維持されるように支持軸(2)を連続的に上昇させた。引上げ終了後、常温まで降温した。
このようにして、直胴部の直径が18cmであり、かつ直胴部の長さが15cmであるフッ化カルシウムのアズグロウン単結晶体15.2kgが得られた。
[比較例1]
円筒部材(25)を設置しなかった以外は実施例1と同様にしてフッ化カルシウム単結晶体の製造を行った。引上げ中に直胴部を8cm形成した付近、即ち、直胴部の上端が内坩堝の上端とほぼ同じ高さとなる位置において、溶融液が坩堝底において固化した石筍が引
き上げ中の結晶と接触する不具合が発生した。そのため、育成の継続が困難になり、引上げを終了した。
図1は、本発明の一実施形態におけるフッ化金属単結晶体の引上げ装置を示す断面図である。 図2(a)は、本発明の別の実施形態におけるフッ化金属単結晶体の引上げ装置の二重構造坩堝および円筒部材を示す拡大断面図、図2(b)はそのA−A線断面図である。 図3(a)〜図3(c)は、本発明の別の実施形態におけるフッ化金属単結晶体の引上げ装置を用いたフッ化金属単結晶体の製造過程における結晶引上げ開始から引上げ終了までの状態を示した図である。 図4(a)〜図4(c)は、二重構造坩堝を備えるフッ化金属単結晶体の引上げ装置を用いたフッ化金属単結晶体の製造過程における結晶引上げ開始から引上げ終了までの状態を示した図である。
符号の説明
1 チャンバー
2 支持軸
3 受け台
4 外坩堝
5 内坩堝
6 二重構造坩堝
7 原料フッ化金属の溶融液
8 加熱ヒーター
9 断熱材壁
10 フッ化金属単結晶体
11 種結晶体
12 保持具
13 単結晶引上げ棒
14 連通孔
15 内坩堝の底壁
16 内坩堝の側壁
17 連結部材
18 隔離壁
19 リッド部材
20 開口部
21 遮蔽部材
22 覗き窓
23 断熱材
24 単結晶引上げ棒の挿入孔
25 円筒部材

Claims (3)

  1. 単結晶育成炉を形成するチャンバー内に、外坩堝と、該外坩堝内に収納された内坩堝とからなる二重構造坩堝が設けられ、
    該二重構造坩堝における外坩堝と内坩堝の両内空部は一部連通しており、
    該二重構造坩堝は、外坩堝に対する内坩堝の収納深さを連続的に変化させることが可能であり、
    チャンバー内における内坩堝の内空部直上には、先端に種結晶体を装着して使用され、上下動可能に垂下された単結晶引上げ棒が設けられ、
    単結晶引上げ棒によって引上げられるフッ化金属単結晶体の周囲を囲み、その下端部が内坩堝の上端部よりも下方に位置するように配置された円筒部材が設けられていることを特徴とするフッ化金属単結晶体の引上げ装置。
  2. 前記円筒部材は、その上端部が、引上げ終了時におけるフッ化金属単結晶体の上端部よりも上に位置することを特徴とする請求項1に記載のフッ化金属単結晶体の引上げ装置。
  3. 外坩堝および該外坩堝内に収納された内坩堝からなり、単結晶育成炉を形成するチャンバー内に設けられた二重構造坩堝における、互いに連通した外坩堝および内坩堝の各内空部に原料フッ化金属の溶融液を収容し、
    単結晶引上げ棒の先端に装着した種結晶体が、内坩堝内に収容された前記溶融液の液面に接触するまで該単結晶引上げ棒を下降させた後、該単結晶引上げ棒を徐々に引上げることによって、その下端部が内坩堝の上端部よりも下方に位置するように配置された略円筒状の部材によりフッ化金属単結晶体がその上端部まで囲まれた状態を維持しながらフッ化金属単結晶体を育成し、
    該育成時において、内坩堝内に収容された前記溶融液のフッ化金属単結晶体の育成に伴う減少に応じて、外坩堝に対する内坩堝の収納深さを深くしてゆき、これにより、内坩堝内の前記溶融液の液量が一定範囲に維持されるように、外坩堝内に収容された前記溶融液を内坩堝内に補給することを特徴とするフッ化金属単結晶体の製造方法。

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