JP5638452B2 - 単結晶サファイア基板の製造方法 - Google Patents

単結晶サファイア基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、単結晶サファイア基板の製造方法に関するものである。
発光ダイオード,半導体レーザ,高電子移動度トランジスタなどの電子デバイスの作製に用いられる窒化物半導体は、単結晶サファイア基板上に原料元素を気相成長させることによって製造される。この単結晶サファイア基板は、以下に説明する方法によって製造される。すなわち、単結晶サファイア基板を製造する際は、始めに、サファイアの結晶ブールから円柱形状のインゴットを切り出し、インゴットの外周面の一部を円柱軸方向全長に亘って平面研削してオリエンテーションフラット面を形成する。オリエンテーションフラット面の位置は、X線回折装置を用いて決定する。具体的には、結晶引き上げ軸がa軸である場合、X線回折装置を用いて最も強い回折強度を示すa軸方向を特定し、特定されたa軸方向に基づいて求めた{11−20}結晶方位面をオリエンテーションフラット面に選択する。但し、a軸方向は3回対称性を有するために、最も強い回折強度を示すa軸が実際の結晶引き上げ軸であるa軸と必ずしも一致しない。このため、従来のインゴットにおいては、オリエンテーションフラット面の法線が実際の結晶引き上げ軸と一致するとは限らない。
次に、オリエンテーションフラット面を法線面として、同様にX線回折装置を用いて主面方位となる切断面を決定する。オリエンテーションフラット面がa{11−20}面であれば、この面に直交する切断面はc{0001}面となる。次に、オリエンテーションフラット面側をステーに接着してインゴットを固定し、ステーで固定された側と反対側の周面をワイヤソーに対向するように配置し、ワイヤを走行させることによってインゴットを切断することにより単結晶サファイア基板を形成する。インゴットの円柱軸方向とワイヤ走行方向は、互いに直交するように位置決めされる。ワイヤソーによる単結晶サファイア基板の切り出し厚さは、回転軸が互いに平行な一対のドラムに巻き渡されたワイヤピッチと同一となる。通常、単結晶サファイア基板の切断においては、単結晶サファイア基板の最終厚さに研磨代200〜300μmを加えた厚さで切り出される。最後に、コロイダルシリカを研磨液や有機溶剤などに分散した研磨材を供給しながら、主面の平均面粗さが数オングストロームになるまで研磨することによって、気相成長に供する単結晶サファイア基板が製造される。
ところで、上記のようにして製造された単結晶サファイア基板では、一部あるいは相当数に厚さのばらつきや形状が凸形状、凹形状、または平板が反ったような形状の鞍型形状となるなどの形状不具合が発生することが多い。その主な原因は、単結晶サファイア基板では、ワイヤソーで切断する方向によって応力集中する部位に荷重の偏りが生ずるためであると考えられている。厚さのばらつきや形状の不具合を伴う単結晶サファイア基板は、窒化物半導体を気相成長させる母材基板としては好ましくない。このため、従来のサファイア基板の製造工程は、歩留まりが低いものであった。このような背景から、特許文献1には、気相成長時の単結晶サファイア基板のそりを低減させる目的で、基板主面形状を予め凹状または凸状に反らせて加工する方法が提案されている。この方法は、予め単結晶サファイア基板の表面と裏面を物理的に異なる面粗さに加工するものであり、その後、熱処理を施すと、表面応力が表面と裏面とで異なるために「そり」を生ずる性質を利用したものである。
特開2004−168622号公報
しかしながら、特許文献1記載の方法は、言わば自然に生ずる「そり」を利用したものであり、「そり」の形状および数値を制御するものではない。このため、特許文献1記載の方法によれば、気相成長時の単結晶サファイア基板のそりを低減させる効果は期待できない。加えて、特許文献1記載の方法を、厚さのばらつきや形状の不具合を伴う単結晶サファイア基板に適用することは困難である。なお、切断時の基板形状を安定させる目的でインゴットを回転させながら切断する方法を用いることも考えられる。この方法は、適切な切断面が予め定義されているという前提に基づいた方法である。しかしながら、一般に、結晶の面方位はミラー指数表記にしたがっており、必ずしも原子オーダーで適切な原子配列を有する切断面が選ばれているわけではない。また、単結晶サファイアは、60度の積層周期を有する理想的な稠密六方晶ではなく、およそ64.3度の積層周期を示す。このため、a{11−20}面等の切断直交面を選べば自動的にc{0001}面等の切断面が決まる従来の方法では、原子オーダーで適切な原子配列を有する切断面が得られず、切断時の基板形状を安定させることができない。
また、形状の不具合を伴う従来の単結晶サファイア基板は、気相成長に適した物理形状や表面構造、原子配列やその深さ方向周期性に関して十分考慮されていない。とりわけ、バルク結晶を基板結晶に加工する切断工程では、面方位が同一でも切断方向によって異なる原子配列をとり、表面で起こる熱化学反応も異なるという問題点がある。また、サファイアは絶縁体であるから、切断によって生ずる圧電効果は原子の配列や配位の仕方によって無視できないレベルとなり、電荷の偏りを引き起こして基板表面における格子歪みの発生を増加させるおそれがあるという問題がある。一方、単結晶サファイアの結晶構造を特徴づけるイオン性結晶では、イオンが作る静電ポテンシャルによってアニオンとカチオンとのエネルギー準位が決まり、それぞれが価電子帯上端と伝導帯下端部とを形成して結晶構造が安定する。また、伝導電子の軌道成分の構成が変化することによって、結合状態および電荷移動量が変化し、微小領域における材料固有の変化が全体の材料物性に影響を及ぼす。したがって、イオン性結晶における原子配列の材料物性に与える影響は、SiやGaAsなどの共有結合性が強い半導体結晶材料と比較してはるかに大きい。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、その目的は、インゴット全域にわたって厚さが均一で平坦な表面を持つ形状の揃った単結晶サファイア基板を製造可能な単結晶サファイア基板の製造方法を提供することにある。
上記の課題を解決し、上記の目的を達成するために、本発明の発明者は鋭意検討を重ねた結果、以下に述べるような知見を得た。すなわち、結晶成長方向に対して特定の方向からカットして得られる切断面に、原子の結合状態を反映した低転位密度の原子配列面が有ることを見出した。具体的には、a軸方向に引き上げられたサファイアの結晶ブールからc面を端面とする円柱形状のサファイアインゴットの端面を見たときに、切り込み方向が、引き上げ方向であるa軸方向を0度方向とした場合に、5度±3度、110度±3度、130度±3度、170度±3度、190度±3度、230度±3度、250度±3度、355度±3度の範囲で稠密度が高いことを見出した。そして、これらの角度範囲からワイヤソーを切り込ませることにより、切断面の状態の良好な単結晶サファイア基板を、インゴット全域にわたって形状が揃った状態で切り出せることを見出した。
そこで、本発明に係る単結晶サファイア基板の製造方法は、a軸方向に引き上げてサファイアの結晶ブールを作製する工程と、該結晶ブールからc面を端面とする円柱形状のサファイアインゴットを切り出す工程と、該サファイアインゴットをc面に沿ってワイヤソーで切断し単結晶サファイア基板を切り出す工程と、を含むc面を主面とする単結晶サファイア基板の製造方法であって、該単結晶サファイア基板を切り出す工程は、該単結晶サファイアインゴットへの切り込み方向が、該サファイアインゴットの回転中心軸を通る、引き上げ方向である該a軸の方向を基準方向としたときに、該基準方向より、該回転中心軸を中心として円周方向に、5度±3度、110度±3度、130度±3度、170度±3度、190度±3度、230度±3度、250度±3度、355度±3度の範囲であることを特徴とする。
また、本発明に係る単結晶サファイア基板の製造方法は、上記の発明において、前記サファイアインゴットの周面には、引き上げ方向である前記a軸に直角をなすようにオリエンテーションフラットが形成されることを特徴とする。
また、本発明に係る単結晶サファイア基板の製造方法は、上記の発明において、前記単結晶サファイア基板の主面が一定の曲率半径を有する凹形状又は凸形状になるように研削加工する工程を含むことを特徴とする。
本発明によれば、インゴット全域に亘って厚さと形状の揃った単結晶サファイア基板を製造することができる。
図1は、本発明の実施の形態に係る単結晶サファイア基板の製造方法における適切な切断方向を示す説明図である。 図2−1は、サファイアインゴットの切断角度(0〜30度)と密度状態との関係を示す図である。 図2−2は、サファイアインゴットの切断角度(30〜90度)と密度状態との関係を示す図である。 図2−3は、サファイアインゴットの切断角度(90〜150度)と密度状態との関係を示す図である。 図2−4は、サファイアインゴットの切断角度(150〜210度)と密度状態との関係を示す図である。 図2−5は、サファイアインゴットの切断角度(210〜270度)と密度状態との関係を示す図である。 図2−6は、サファイアインゴットの切断角度(270〜330度)と密度状態との関係を示す図である。 図2−7は、サファイアインゴットの切断角度(330〜360度)と密度状態との関係を示す図である。 図3は、比較例1、2および実施例1の切断方向を示す説明図である。 図4は、比較例1、2および実施例1の切断面に直交する断面の単位格子における原子配列を示す説明図である。 図5は、サファイアインゴットの切断角度と実測した密度状態との関係を示す図である。 図6は、比較例1、2および実施例1の切断厚さを比較した図である。 図7は、比較例1、2および実施例1の面内厚さばらつき、TTV、およびそりを比較した図である。 図8は、TTVの測定位置を示す説明図である。 図9は、そりの測定位置を示す説明図である。 図10は、比較例1、2および実施例1の主面方位およびオリエンテーションフラット方位の「ずれ」を比較した図である。 図11は、基板の主面方位とオリエンテーションフラット面とa軸を示す説明図である。 図12は、比較例1、2および実施例1の切断工程におけるワイヤソーの供給側たわみ量プロファイルを比較した図である。 図13は、切断直交面側から見た配列Gのクラスタモデルを示す模式図である。 図14は、切断直交面側から見た配列Nのクラスタモデルを示す模式図である。 図15は、直交面側から見た配列Gのクラスタモデルを示す模式図である。 図16は、直交面側から見た配列Nのクラスタモデルを示す模式図である。 図17は、DV−Xα法によって求められた配列Gの切断面の状態密度を示す図である。 図18は、DV−Xα法によって求められた配列Nの切断面の状態密度を示す図である。 図19は、DV−Xα法によって求められた配列Gの直交面の状態密度を示す図である。 図20は、DV−Xα法によって求められた配列Nの直交面の状態密度を示す図である。 図21は、配列Gの切断面の結合成分と反結合成分とを示す図である。 図22は、配列Nの切断面の結合成分と反結合成分とを示す図である。 図23は、配列Gの直交面の結合成分と反結合成分とを示す図である。 図24は、配列Gの直交面の結合成分と反結合成分とを示す図である。
以下、本発明の実施の形態に係る単結晶サファイア基板の製造方法について図面を参照して説明する。
本実施の形態に係る単結晶サファイア基板の製造方法は、a軸方向に引き上げてサファイアの結晶ブールを作製する工程と、結晶ブールからc面を端面とする円柱形状のサファイアインゴットを切り出す工程と、サファイアインゴットをc面に沿って切断し単結晶サファイア基板を切り出す工程と、を含む。特に、本実施の形態においては、図1に示すように、サファイアインゴット1の周面には、引き上げ方向であるa軸に直交するようにオリエンテーションフラットOFが形成されている。
図1に示すように、単結晶サファイア基板を切り出す工程は、サファイアインゴット1への切り込み方向Cd1〜Cd8が、サファイアインゴット1の回転中心軸Cを通る、引き上げ方向であるa軸の方向を基準方向としたときに、この基準方向より、回転中心軸Cを中心として円周方向に沿って、5度±3度、110度±3度、130度±3度、170度±3度、190度±3度、230度±3度、250度±3度、355度±3度の範囲である。これらの切り込み方向Cd1〜Cd8は、サファイアインゴット1の端面から見て、回転中心軸を通る引き上げ方向のa軸を基準方向として、時計回り方向(矢印B)、反時計回り方向(矢印A)のいずれにおいても適用できる。
本実施の形態では、始めに、母結晶からインゴットを切り出すに際して、引き上げ軸a軸がインゴット外周面のどの位置となるのか、V型ノッチなどを刻印して外周面研削後も容易に識別できるようにしておく。インゴット切り出し方向は、a軸引き上げでc面を切断面とする場合、引き上げ軸a軸に直角をなす方向となる。次に、切断角度の基準位置となる正確なオリエンテーションフラットOFの位置を決める。外周面研削の完了した円柱状のサファイアインゴット1の両端面を水平に保持し、回転中心軸Cを中心に両端面が水平回転するようにホルダに固定する。ホルダを回転させながらサファイアインゴット1の外周面にX線を照射して、刻印して認識し易く設定されたa軸近傍で最大の回折強度を示す位置をオリエンテーションフラット位置(1)とする。こうして得られる回折強度は2θ角度を示しており、面間隔の大きい順に、(110)37.784度、(220)80.694度、(330)152.454度のいずれかとなる。その後、サファイアインゴット1を180度上下に回転して上下端面を逆にした状態で、上記と同様の方法を用いて最大の回折強度を示す位置をオリエンテーションフラット位置(2)とする。なお、オリエンテーションフラット位置(1)とオリエンテーションフラット位置(2)は通常わずかであるが一致しない場合がある。その場合、オリエンテーションフラットOFは、オリエンテーションフラット位置(1)とオリエンテーションフラット位置(2)との中間位置を中心として、基板サイズによって規定される所定の幅を有するオリエンテーションフラット面として形成する。
このオリエンテーションフラットOF側を、図示しないホルダに取り付けてサファイアインゴット1を固定し、ホルダで固定された側と反対側の周面を、ワイヤソーに対向するように配置させ、ワイヤソーによる切り込み方向を上記の角度範囲のいずれかとなるように設定し、ワイヤを走行させることにより表面の平坦性の高い、形状の揃った単結晶サファイア基板を製造することができる。図1に示すように、切り込み方向Cd1またはCd8からワイヤを切り込ませる場合は、ホルダをオリエンテーションフラットOFと反対側のサファイアインゴット周面に取り付けることも可能である。なお、ホルダは、サファイアインゴットにおける切り込み箇所の反対側に取り付ける。例えば、切り込み方向Cd1またはCd8からワイヤを切り込ませる場合は、ホルダをオリエンテーションフラットOFと反対側のサファイアインゴット周面に取り付ける。
最終研磨工程では、単結晶サファイア基板に対してコロイダルシリカを研磨液や有機溶剤などに分散した研磨材を供給しながら、主面の平均面粗さが数オングストロームになるまで研磨して、気相成長に供する単結晶サファイア基板とする。本実施の形態では、後述するように、表面の平坦性の高い、形状の揃った単結晶サファイア基板を製造することができるため、単結晶サファイア基板を切り出した後の研削代を予め小さくすることができる。したがって、ワイヤソーのワイヤピッチを従来のピッチよりも短くして、1つのサファイアインゴット1からより多くの単結晶サファイア基板を作製することができる。
図2−1〜図2−7は、サファイアインゴットに対する切断角度(引き上げ軸であるa軸方向を基準方向とするときの切り込み方向の角度)と、各切断角度に対応する原子配列の稠密度との関係をシミュレーションした結果を示す図である。図2−1は0〜30度の範囲、図2−2は30〜90度の範囲、図2−3は90〜150度の範囲、図2−4は150〜210度の範囲、図2−5は210〜270度の範囲、図2−6は270〜330度の範囲、図2−7は330〜360度の範囲を示し、縦軸に稠密の度合い、横軸に切断角度を示している。なお、縦軸は、数字が大きいほどより稠密の度合いが高くなることを示している。
図2−1〜図2−7から判るように、稠密度の高い面に対応する切断範囲は、5度±3度、110度±3度、130度±3度、170度±3度、190度±3度、230度±3度、250度±3度、355度±3度の範囲である。5度±3度、110度±3度、130度±3度、170度±3度、190度±3度、230度±3度、250度±3度、355度±3度の角度範囲の切り込み方向から切断すれば、切断面が格子緩和の進んだ面に相当し、この格子緩和の進んだ面で切断することで、歪み層の除去された後の原子層は構造的に表面エネルギーの低い安定した層となる。通常、このような層が得られるのは劈開面においてであり、単結晶サファイアではそのような劈開面は得られないが、本発明によれば得ることが可能となる。また、c面に直交するa面あるいはm面が切断面となる場合、これらの面はAlと酸素が混在し、極性は中性を示す。そのため、原子脱離は困難であるが、a面やm面が切断面となる場合も、上述の角度で切断することによって比較的容易に脱離が起こると考えられる。すなわち、a面を主面とする単結晶サファイア基板を切り出す場合は、a面を端面とするインゴットの引き上げ軸を基準方向として、上述の角度範囲で切り込むことが有効となり、また、m面を主面とする単結晶サファイア基板を切り出す場合は、m面を端面とするインゴットの引き上げ軸を基準方向として、上述の角度範囲で切り込むことが有効となると考えられる。
(実験例)
以下に、実験例について説明する。先ず、a軸引き上げ結晶ブールからc面を端面とする円柱形状のサファイアインゴットを切り出す。切り出す方向は引き上げ軸a軸に対して垂直方向である。サファイアインゴット外周面上の特定位置に設けるオリエンテーションフラットは引き上げ軸a軸と直角をなす方向と一致することが望ましく、インゴット加工後もa軸方向が容易に判別できる位置に例えばv型ノッチなどで刻印を付しておく。
図3に、引き上げ方向であるa軸から反時計回り方向に3つの異なる切断方向から切断する場合の位置関係を示す。比較例1、比較例2、実施例1は、順次、引き上げ方向であるa軸から反時計回り方向に150度、120度、130度をなす方向から切断した面であるa軸からのインゴット切断角度を正確に設定するために、高解像X線回折装置でロッキングカーブを測定し結晶の原子座標と比較した。なお、ロッキングカーブ測定にはBruker社の高解像X線回折装置を用いた。
図4は、これら切断面「150度切断面」、「120度切断面」、「130度切断面」に直交する断面の原子配列、すなわち、それぞれc面に直交する面の単位格子における原子配列を模式的に示す図である。図4において、原子の大きさの比率は現実のものと異なることは云うまでもない。図4に示すように、比較例1では酸素原子は図中矢印で示すc軸に対して分布配列し、Al原子はc軸に沿って直線(図中、一点鎖線で示す)上に並んでいるので、これらの集合体である単位格子より大きなメッシュ単位では、Al原子を軸に酸素終端O−Al−Alを形成すると考えられる。イオン結合の全ポテンシャルエネルギーに対するAl3+とO2−のファンデルワース力はそれぞれ−0.1eV、−1.3eVであり、Al−AlはAl−Oより弱い結合である。一方、メッシュ単位ではO−Al−Al結合は双極子モーメントの大きな結合となり、切断を瞬間的な圧電効果によるイオン性結合の破砕と見れば、O−Al−Al結合枝の破砕によるクラスタの脱離には大きなエネルギーを要することが予想される。
図4に示すように、実施例1では、酸素原子はc軸に対してほぼ平行に配列し、Al原子はc軸に対して分布配列している。上述と同様な理由で、このような配列はAl終端Al−O−Alを形成する。結合の双極子モーメントは小さく、イオン結合性の度合いが低くなるために結合エネルギーは相対的に小さくなり、イオンクラスタとして解離しやすいことが予想される。なお、比較例2は、比較例1と実施例1の中間的な配列を示す。
このように、同一の結晶方位であっても、切断方向の角度が異なると切断面の原子配列が変化する最も大きな理由は、瞬間的な圧電効果による電荷の偏りが引き起こす格子歪みと、その緩和の過程で起こる原子配列の再構成と考えられる。格子緩和はAl原子の酸素原子側への変位と、それに伴う酸素原子のボンド長保存のための外側への移動であるが、Al原子と酸素原子はそれぞれ安定したエネルギー位置に再配列する。
図5は、a軸方向を基準方向として0〜180度の角度範囲における、サファイアインゴットに対する切断角度と、各切断角度に対応する原子配列の稠密度(実測値)との関係を示す図である。このような実測値を示す結果から、5度、110度、130度、170度の範囲で稠密であり、シミュレーションに基づく図2−1〜図2−4に示した5度±3度、110度±3度、130度±3度、170度±3度の範囲で稠密度が高いことを裏付けている。このため、図2−4〜図2−7に示した、190度±3度、230度±3度、250度±3度、355度±3度の範囲で実際に稠密の度合いが高いことが推測できる。したがって、このような切断角度範囲でサファイアインゴットを切断すると、イオン性の度合い低い結合状態で単結晶サファイア基板を切り出すことができる。
次に、上記の比較例1、比較例2および実施例1で得られた単結晶サファイア基板の切断厚さの比較を図6に示す。なお、この切断厚さの比較は、比較例1、2および実施例1それぞれにおいて、1本のサファイアインゴットから60枚の単結晶サファイア基板を切り出して、切断厚さの比較を行った。この厚さの測定には、触診式表面粗さ計を用いた。図6では、比較例1、2および実施例1について、最小値−最大値、平均(算術平均)、偏差(標準偏差)を示している。図6に示すように、比較例1と比較例2の厚さの偏差が5.6、3.5であるのに対して実施例1では2.7と小さく、厚さのばらつきが小さいことが判る。このため、実施例1では、厚さの揃った単結晶サファイア基板を製造することができる。
また、面内厚さばらつき、TTV(Total Thickness Variation)、そり(表面)、そり(裏面)の測定結果の比較を図7に示す。これらの測定は、比較例1、2および実施例1のそれぞれにおいて、上記の60枚のサファイア基板のうちインゴット両端の2枚を除いた58枚について測定を行った。これらの測定には、ニデック社製フラットネステスタを用いた。
面内厚さばらつきは、単結晶サファイア基板の中心点と、円周に沿って4点との合計5点の厚さを測定し、比較例1、2および実施例1の最小値−最大値、偏差(標準偏差)を求めた。図7に示すように、基板面内5点の厚さばらつきにおいて、比較例1の偏差が1.63に対し、比較例2と実施例1の偏差が0.49であり、比較例2と実施例1で厚さのばらつきの値のばらつきが小さいことが判る。したがって、実施例1では、インゴット全域に亘って平坦度の揃った単結晶サファイア基板を製造できる。なお、図示しない触診式表面粗さ計で測定した面粗さは、比較例1、2および実施例1の3条件とも0.35−0.45μmで差はなかった。
TTVは、単結晶サファイア基板(ウェーハ)の平坦度の評価項目の一つであり、図8に示すように、単結晶サファイア基板10の裏面10bを基準面として厚み方向に測定した高さの基板全面における最大値と最小値の差Fを意味する。比較例1、2および実施例1の最小値−最大値、偏差(標準偏差)を求めた。TTVは、図7に示すように、比較例1、比較例2の偏差がそれぞれ1.59、1.44であるのに対して、実施例1が0.48であり、大幅にばらつきが小さいことが判る。したがって、TTVの観点からも、実施例1で製造された単結晶サファイア基板の平坦度が揃っていることが判る。
そりの測定では、単結晶サファイア基板を測定装置のステージ上に置いて、裏面を吸着しない状態で行う。そり(表面)は、図9に示すように、サファイア基板10の表面側のそりの基準面(Best Fit Front-Surface Plane)Oと最も高い位置との高さの差Dと、基準面Oと最も低い位置との高さの差Eと、の和を意味する。そり(裏面)も同様である。
図7に示すように、実施例1のそり(表面)の偏差は2.55であり、比較例1の13.54および比較例2の3.84に対して大幅に小さい。また、実施例1のそり(裏面)の偏差は2.29であり、比較例1の11.54および比較例2の4.84に対して大幅に小さい。これらの結果から、実施例1で切り出された単結晶サファイア基板10の表面および裏面のそりのばらつきは、比較例1および比較例2に比較して大幅に小さいことが判る。したがって、実施例1では、インゴット全域に亘って形状の揃った単結晶サファイア基板10を製造することができる。
図10は、基板結晶の主面方位とオリエンテーションフラットOF方位の目標値からの「ずれ」を周知の測定方法で求めた結果を示す。この測定は、上記の各種測定と同様に、比較例1、比較例2および実施例1のそれぞれにおいて、上記の60枚の単結晶サファイア基板のうちインゴット両端の2枚を除いた58枚の中から10枚を選んで測定を行った。
測定装置としては、切断面方位測定機(株式会社リガク社製)を用いた。単結晶サファイア基板は、切断面方位測定機から出射されるX線が基板中心に入射されるように固定する。単結晶サファイア基板のオリエンテーションフラットOFを下にして、X線を照射して回折強度を記録する。このとき、回折強度に符号、+または−を付す。これをθ1とする。次に、測定面は変えずに単結晶サファイア基板を180度回転してオリエンテーションフラットOFが上に位置するようにする。同様にX線を照射して符号付き回折強度を記録する。これをθ2とする。回折強度の平均値θは、θ=(θ1+θ2)/2で表される。この回折強度の平均値θは、主面方位の結晶学的面方位(001)からのずれの角度と結晶面の方向を示す。図11に示すように、単結晶サファイア基板10のc面(0001)に立てた法線Nに対して角度θだけ傾いた面に立てた法線nとする。Nとnのなす角度θは、単結晶サファイア基板10の面方位あるいはオリエンテーションフラット方位を測定する際、c(0001)の2θ回折角度=90.664°を基準点として+側または−側でピーク値を示す回折強度に相当する角度に等しい。このような関係から、基板結晶の主面方位とオリエンテーションフラットOF方位の目標値からの「ずれ」を求めることができる。なお、回折強度の平均値θが+の場合を正極性とし、θが−の場合を負極性とする。回折強度の平均値θの極性は、図10の備考の欄に示す。なお、正負極性混在する場合とは、格子面が不均衡な状態でサファイア基板の表面状態が好ましくない状態を指している。
図10に示すように、主面方位の「ずれ」は、比較例1、比較例2の「ずれ」の平均が0.062度、0.016度に対して、実施例1の「ずれ」の平均が0.012度と小さく、実施例1の「ずれ」が小さいことが判る。オリエンテーションフラット方位の「ずれ」の偏差は、比較例1、比較例2が0.073、0.010であるのに対し、実施例1では0.005と小さく、オリエンテーションフラット方位の「ずれ」もばらつきが小さいことが判った。したがって、実施例1のように切断角度130度で切断を行うことにより、「ずれ」が小さく形状の揃った単結晶サファイア基板を容易に作製できることが判る。本発明では、ワイヤソーによる切断角度が、5度±3度、110度±3度、130度±3度、170度±3度、190度±3度、230度±3度、250度±3度、355度±3度の範囲で表面が主面方位およびオリエンテーションフラット方位の「ずれ」の小さい単結晶サファイア基板を容易に作製することが可能である。
図12は、ワイヤソーにおけるワイヤの走行状態の安定性を表すワイヤ供給側たわみ量プロファイルを示す。たわみ量が一定であれば抵抗の少ない安定した走行が行われていることを示す。たわみ量は、比較例1が約5.5−6.6mm、比較例2が6.6mm前後、実施例1が2.2mm前後で、実施例1が変動の少ない安定したワイヤ走行を示した。すなわち、実施例1のように、サファイアインゴットに対して切断角度130度でワイヤが切り込むことで、ワイヤの撓みやその変動が抑えられ、表面の平坦な単結晶サファイア基板を作製することが可能となる。このように、ワイヤソーのワイヤ供給側のワイヤの撓み量を比較する観点からも、実施例1では、単結晶サファイア基板を無理なく揃った形状に切断できることが判る。
上述の実施の形態の説明および実験例から判るように、結晶面と原子配列、切断角度の間には明らかな相関が認められる。図4を用いて説明したように、個々のAl原子の配置と間隔、酸素原子団の稠密度が大きく影響する。Al−Alの最近接距離は原子配列によって異なり、2.654〜3.844オングストロームにおよび、第二近接距離はさらに広く分布している。一方、酸素原子配列の稠密度は、整然と並んだ緊密な配列から個々の原子が不規則に分布する粗な配列まで認められることが判る。
以上のことから、稠密度の高い面に対応する角度で切断すれば、このような面は格子緩和の進んだ面であり、歪み層の除去された後の原子層は構造的に表面エネルギーの低い安定した層となることが判る。したがって、上記の実施例1のようにより稠密度の高い面に対応する角度で切断することにより、インゴット全域にわたって主面が平坦で厚さと形状の揃った単結晶サファイア基板を作製することが容易となる。また、このように切断された単結晶サファイア基板は、表面エネルギーが低い安定した層が表面となるため、主面が所望の曲率半径を有する凹形状又は凸形状になるように研削加工することが容易となる。
本実施の形態に係る単結晶サファイア基板の製造方法では、特性の良好な成長結晶を得るために所望の曲率半径を持つ表面を形成する工程も含むものである。このように単結晶サファイア基板に所望の曲率半径を持つ表面を形成する場合、切断された単結晶サファイア基板の表面平坦性が良好で表面エネルギーが低い安定した状態であるため、研磨代も小さくてすみ、容易に研削加工できるという効果を奏する。
〔電子状態の評価〕
上述の切断角度で得られる切断面における原子配列の稠密度は、第一義的には原子間結合の最近接距離によって決まるが、原子の結合成分の割合、表面および表面から数層の深さ方向周期性、占有軌道および非占有軌道の結合成分又は反結合成分などを総合的に判断することでより明確になる。すなわち、原子配列の稠密度は、結晶材料の物性を理解する上で切断面の電子状態から得られる情報の一つであると言ってよい。そこで、本発明の発明者は、切断面の状態が良好である場合と良好でない場合との原子配列についてクラスタモデルを作成して分子軌道計算を行い、各場合についてポピュレーション解析、エネルギー準位、および状態密度を評価した。以下、各場合の評価結果について説明する。
なお、本評価においては、切断面の状態が良好である場合および良好でない場合としてそれぞれ、上述の130度切断面(以下、配列Gと表記)および150度切断面(以下、配列Nと表記)を用いた。図13および図14はそれぞれ、切断直交面側から見た配列Gおよび配列Nのクラスタモデルを示す模式図である。図15および図16はそれぞれ、直交面側から見た配列Gおよび配列Nのクラスタモデルを示す模式図である。クラスタモデルの単位セルは、各切断面の原子位置を示す座標を用いて定義した。これは、単位セルを格子定数、空間群、および原子位置で定義し、単位セルを拡張した分子クラスタを実結晶の原子とみなして挙動を再現する理論的な方法とは異なる。
原子位置を示す座標は、周期性が完全であればアルミニウムと酸素との1サイトで決まる分極座標(原子座標)を適用できるが、対象とする実際の結晶は欠陥を有し、周期性の欠如も予想されるため、1番目のアルミニウムを原点(0,0,0)とするアルミニウム原子12個および酸素原子18個からなる単位セルの直交座標を元に単位セルを拡張したクラスタ(Al{n=(3+)x+(2−)y}を作成した。以下に示す表1にクラスタの作成に用いたAl−O結合の原点からの距離と結合数を示す。また、以下に示す表2〜表5にそれぞれ、配列Gの切断面座標、配列Nの切断面座標、配列Gの切断直交面座標、および配列Nの切断直交面座標を示す。なお、表2〜表5に示す数値はそれぞれ、左から原子番号、原子の種類、および直交座標のXYZ位置を示す。
Figure 0005638452
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クラスタの作成にあたって、原子の種類分けと原子軌道との数はそれぞれ、配列Gおよび配列Nのいずれも8および36とした。また、クラスタサイズは比較的小さく、アルミニウムおよび酸素のいずれも原子数10以下としたが、その理由は、各軌道の電子数を計算の前後で等しくする自己収束性と、クラスタ周りの原子によって生じるクーロンポテンシャルを点電荷の群が補うように静電ポテンシャルにクラスタを配置して計算するため、大きなクラスタは必要でないためである。一方、バンドギャップの大きさは、クラスタのサイズに影響されるため、実験によって求められる値とは異なる。また、分子軌道計算には、配列Gと配列Nのとの直交座標をそのまま適用できる手法として、第一原理計算の一つであるDV−Xα法を用いた。
これらのクラスタモデルを用いて配列Gと配列Nとの電子状態を計算した。イオン性結晶の構造安定性は、静電ポテンシャルと軌道間の電荷移動とによるところが大きい。このため、本発明の発明者は、酸素の占有軌道である2s軌道および2p軌道と、アルミニウムの非占有軌道である3s軌道および3p軌道とに注目した。また、バルク結晶から得られる結晶の結合手の切れやすさは、配位、原子間距離、および結合角に依存し、特にAl−Oの近接距離が重要になる。また、加工の際には圧電効果が伴うため、原子配列の違いによる反応生成熱や双極子モーメントの大きさも影響する。そこで、本発明の発明者は、最近接距離と双極子モーメントの評価も行った。
図17および図18はそれぞれ、DV−Xα法によって求められた配列Gおよび配列Nの切断面の状態密度を示す図であり、図19および図20はそれぞれ、DV−Xα法によって求められた配列Gおよび配列Nの直交面の状態密度を示す図である。なお、図17〜図20において、実線は全体の状態密度を示し、破線は部分状態密度を示している。図19および図20の比較から明らかなように、配列Nにおける酸素の2s軌道(O2s)および2p軌道(O2p)は、配列Gにおける酸素の2s軌道および2p軌道と比較して、よりブロードになっている。このことから、配列Nでは、配列Gと比較して大きな電荷移動があり、酸素の空孔マイグレーションや乖離、α−Alの結晶構造の変化、β化によるアルミニウムの酸化や酸素吸着などの可能性が高くなることが予想される。
図21および図22はそれぞれ、配列Gおよび配列Nの切断面の結合成分と反結合成分とを示す図であり、図23および図24はそれぞれ、配列Gおよび配列Nの直交面の結合成分と反結合成分とを示す図である。切断面の占有軌道(エネルギー準位0(eV)以下)における結合成分と直交面の非占有軌道(エネルギー準位0(eV)以上)における結合成分とを比較すると、配列Gの結合成分の方が配列Nの結合成分より多いことが判る。以下に示す表6は、配列Gおよび配列Nの切断面と直交面とにおけるアルミニウムと酸素との有効共有結合電荷[eV]を示す表である。表6から明らかなように、切断面と直交面との両方において、配列Gの方が配列Nより有効共有結合電荷が大きい。以上のことから、配列Gは、配列Nと比較して電荷移動の少ない軌道成分から構成され、共有結合性の割合が高いと考えられる。
Figure 0005638452
以下に示す表7,8はそれぞれ、配列Gおよび配列Nの直交面における最近接距離[Å]を示す表である。表7,8から明らかなように、配列Gにおけるアルミニウムと酸素間の最近接距離は、配列Nにおけるアルミニウムと酸素間の最近接距離より25〜60%短く、配列Nの稠密度より配列Gの稠密度の方が高い。以下に示す表9は、配列Gおよび配列Nの切断面と直交面とにおける双極子モーメントおよび生成熱を示す表である。クラスタの安定性を示すクラスタ同士の結合は、クラスタの終端元素によって異なり、配列GではAl終端Al−O−Alとなり、配列Nでは酸素終端O−Al−Alとなる。表9に示すように、配列Gの切断面における双極子モーメントは、配列Nの切断面における双極子モーメントよりも小さいことから、イオン結合性の度合いが高くなることによって配列Gは配列Nより安定したクラスタになる。これは、機械加工、加熱、薬液処理、又はプラズマエッチングやイオン注入処理など外部から大きなエネルギーが加えられた場合、クラスタは安定であるが、クラスタ同士は乖離しやすいことを示す。
Figure 0005638452
Figure 0005638452
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以上のことから、配列Gは配列Nと比較してイオン性結晶として安定した構造であると言える。これらの切断面の結晶方位は、ミラー指数表記では等価であるが、原子配列が異なるために異なる物性を示す。したがって、単結晶サファイア基板を製造する際、予め適切な面配列の単結晶サファイア基板を切り出して加工することによって、インゴット全域にわたって厚さが均一で平坦な表面を持つ形状の揃った単結晶サファイア基板を製造することができる。
以上、この発明の実施の形態について説明したが、上記の実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものではない。この開示から当業者に様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。例えば、上記の実験例では、a軸方向に引き上げたサファイアの結晶ブールからc面を端面とするサファイアインゴットを切り出し、引き上げ軸であるa軸方向を0度とした場合に反時計回りに130度の方向から切断を行った実施例1を示したが、このa軸方向を0度とした場合に、周方向の時計回り方向または反時計回り方向に、5度±3度、110度±3度、130度±3度、170度±3度、190度±3度、230度±3度、250度±3度、355度±3度の範囲でワイヤソーを切り込ませることにより、インゴット全域にわたって厚さ形状の揃った単結晶サファイア基板を効率よく製造することができる。なお、ワイヤソーを切り込ませる各切断角度(5度、110度、130度、170度、190度、230度、250度、355度)の±3度の設定は、±3度を超えると稠密度が急峻に下がることを考慮して規定されている。好ましくは、上記各角度に対して±2度であり、さらに確実に形状の揃った単結晶サファイア基板を作製するには各角度に対して±1度であることが好ましい。また、上記した実施の形態では、引き上げ方向であるa軸が法線となるようにオリエンテーションフラットを形成したが、引き上げ方向であるa軸が認識できる状態であれば、これに限定されるものではない。例えば、引き上げ方向であるa軸を基準とする5度±3度の範囲の切断角度でワイヤソーで切断する場合には、オリエンテーションフラットを引き上げ方向であるa軸と異なる場所に形成してもよい。
1 サファイアインゴット
10 単結晶サファイア基板
Cd1〜Cd8 切り込み方向
OF オリエンテーションフラット

Claims (3)

  1. a軸方向に引き上げてサファイアの結晶ブールを作製する工程と、該結晶ブールからc面を端面とする円柱形状のサファイアインゴットを切り出す工程と、該サファイアインゴットをc面に沿ってワイヤソーで切断し単結晶サファイア基板を切り出す工程と、を含むc面を主面とする単結晶サファイア基板の製造方法であって、
    該単結晶サファイア基板を切り出す工程は、該サファイアインゴットへの切り込み方向が、該サファイアインゴットの回転中心軸を通る、引き上げ方向である該a軸の方向を基準方向としたときに、該基準方向より、該回転中心軸を中心として円周方向に、5度±3度、110度±3度、130度±3度、170度±3度、190度±3度、230度±3度、250度±3度、355度±3度の範囲である
    ことを特徴とする単結晶サファイア基板の製造方法。
  2. 前記サファイアインゴットの周面には、引き上げ方向である前記a軸に直角をなすようにオリエンテーションフラットが形成されることを特徴とする請求項1に記載の単結晶サファイア基板の製造方法。
  3. 前記単結晶サファイア基板の主面が一定の曲率半径を有する凹形状又は凸形状になる様に研削加工する工程を含む請求項1又は請求項2に記載の単結晶サファイア基板の製造方法。
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