JP5459004B2 - サファイア単結晶の製造方法 - Google Patents

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本発明は、サファイア単結晶の製造方法に関し、より詳しくは、単結晶の育成中に、ルツボ材料やカーボン蒸気と原料融液との反応に起因する内包物の生成が抑制され、高品質なサファイア単結晶を得ることができる単結晶製造方法に関する。
半導体ウエハー結晶や光学結晶等に利用される大型のサファイア単結晶を製造する方法として、原料をルツボ内で融解し、その原料融液表面に種結晶を接触させて徐々に引き上げ単結晶を育成するチョクラルスキー法(Cz法)、キロプロス法またはEFG法(Edge−defined Film−fed Growth)などが知られている。これらの方法では、大型で高品質なバルク単結晶が安価に得られるように、装置材料とその構成を最適化することが工業的にきわめて重要である。
一般にサファイア単結晶を作製する場合は、サファイアの融点が高いために、ルツボ等の炉内構成材料は限られてしまい、ルツボ材として、イリジウム、モリブデン、タングステン、もしくはそれらの合金が使用される。ただし、イリジウムは非常に高価であるから、設備面で経済的に不利であり、大型のサファイア単結晶作製には、モリブデン、タングステンもしくはそれらの合金製のルツボが使用されるようになってきた。
これらのルツボを加熱するための加熱方法としては、高周波加熱方式と抵抗加熱方式が工業的に用いられている。
高周波加熱方式には、ルツボ自体が発熱するためルツボの直径方向の温度勾配が大きいという特徴がある。そのため、作製される結晶の直径がルツボ直径の50%程度となってしまい、大型の結晶を作製するためには装置サイズが大きくなり、製造コストが高額になる。また、結晶育成中の温度勾配が大きいため、温度差に起因した歪が結晶内に入り、加工時にクラックが発生してしまうため、加工前に結晶を熱処理し、歪を除去する必要があった。これにより、大型のサファイア結晶を低コストで製造することができなかった。
また、ルツボ材にモリブデンやタングステンもしくはそれらの合金を用いると、これらの材料は高温で酸化されやすく、さらに、その酸化物の蒸気圧が高いために、酸化物蒸気により結晶表面や原料融液が汚染され、ルツボ材が結晶内に混入する現象がおこり、その結果、結晶の着色や純度の低下といった問題が懸念される。これは断熱材としてジルコニア断熱材を採用すると、高温で分解し酸素を生成するため、一層増幅される。
そのためジルコニア断熱材をカーボンフェルトに置き換え、低価格のモリブデン製ルツボを用いて、安価なサファイア結晶を製造することが提案されている(特許文献1)。
また、結晶育成雰囲気を不活性ガスとし、例えば、Ar、Ar+CO、Ar+CO+CO又はAr+H+HOとし、育成炉内の酸素分圧を1E−14〜3E−5に制御することが提案されている(特許文献2)。しかしながら、雰囲気ガスの種類によっては、ルツボ材の高温酸化を防止できないことがあった。
一方、抵抗加熱方式では、ルツボ周囲に配置したヒータが発熱することで、ルツボ周囲の雰囲気が加熱されるため、高周波加熱方式と比較してルツボ内の温度勾配が小さい特徴がある。そのため、抵抗加熱方式により結晶育成を行うと、上記温度差に起因した歪が結晶内に入るという高周波加熱方式の問題は解決され、大型のサファイア結晶を安価に製造することが可能となる。
抵抗加熱方式においては、ヒータとして、カーボン製抵抗加熱ヒータやタングステン製抵抗加熱ヒータが一般的に用いられ、また、その周囲に使用する断熱材としては、カーボン製断熱材やタングステンを代表とする高融点金属もしくはそれらの合金で作製した反射板が用いられている。これら炉内構成物のうち、タングステンは脆く高価であることから、ヒータと断熱材ともにカーボン系の材料を使用することが検討されている。
このような状況下、本出願人は、抵抗加熱方式で安価に大型のサファイア結晶を作製するために、ルツボにモリブデンやタングステンもしくはそれらの合金製の物を用い、結晶育成雰囲気に特定量の不活性ガスを流通する方法を提案した(特許文献3参照)。
この方法によって、ルツボ材の高温酸化防止をある程度抑制できるようになったが、Ar雰囲気中で育成したサファイア単結晶は、無色透明で純度も5〜6N程度に止まり、この単結晶をウエハー状に加工して、ウエハー表面を鏡面に仕上げると、表面に突起状の異物が生じることがあった。
このような突起物がウエハー上に存在することは、その後の半導体素子形成にとって好ましくない。半導体素子は、単結晶ウエハー上に数nm〜数十μmの単結晶膜を積層して形成されるため、ウエハー上に突起物が存在すると、単結晶膜の積層構造が乱れ素子の不良原因となる。また、ウエハー上の突起物が起点となり、単結晶膜形成時に核形成が起こる。その結果、半導体素子膜の結晶性が悪化し、素子の特性が悪化する。そのため、ウエハー上に存在するルツボ材起因の突起物は無いことが望ましい。
特開2005−1934号公報 特開2008−31019号公報 特開2008−7354号公報
本発明の目的は、上記従来技術の課題に鑑み、サファイア単結晶の育成中に、ルツボ材料やカーボン蒸気と原料融液との反応に起因する内包物の生成が抑制され、高品質なサファイア単結晶を得ることができる単結晶製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記従来の問題点を解決するために鋭意研究を重ね、モリブデン製などの耐熱性ルツボにサファイア原料粉末を装入してカーボン製抵抗加熱ヒータを用いて加熱溶融する際に、加熱溶融する際の雰囲気を不活性ガスと一酸化炭素ガスの混合ガスからなる特定の条件とすることにより、単結晶の育成中に、ルツボ材料や又はカーボン系断熱材から発生するカーボン蒸気と原料融液との反応に起因する内包物の生成が抑制され、高品質なサファイア単結晶を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、カーボン系ヒータ又はカーボン系断熱材を用いたチャンバ内に、モリブデン、タングステン、もしくはそれらの合金製のルツボを設置し、このルツボにサファイア原料粉末を装入し、雰囲気ガスを予め不活性ガスで置換した後、ルツボを直接加熱してサファイア原料粉末を溶融し、得られた原料融液に種結晶を接触させて成長結晶を引き上げる融液成長法によるサファイア単結晶の製造方法において、
前記置換後の雰囲気ガスは、不活性ガスと一酸化炭素ガスの混合ガスであり、かつ、一酸化炭素ガスの含有量が、不活性ガスに対する体積比で100〜10000ppmであり、かつカーボン蒸気又はルツボ材料とサファイア原料融液との反応に起因する内包物の生成を抑制するのに十分な量であり、原料の融解から3時間以上経過後に、種結晶を原料融液に接触させることを特徴とするサファイア単結晶の製造方法が提供される。
また、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、不活性ガスが、アルゴンであることを特徴とするサファイア単結晶の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第の発明によれば、第1の発明において、雰囲気ガスが、二酸化炭素を含有しないことを特徴とするサファイア単結晶の製造方法が提供される。
本発明によれば、サファイア原料粉末を加熱溶融する際に、一酸化炭素ガスを含む特定の不活性ガス雰囲気に原料融液を維持するので、これにより原料とルツボの反応が制御され、結晶内のルツボ材に由来する微小な内包物が減少する。これにより、歩留まりと結晶品質が向上し安価で高品質なサファイア単結晶を得ることができる。また、ルツボが安価なモリブデン製などの耐熱性ルツボであることから、サファイア単結晶の生産コストを大幅に削減することができる。さらに、こうして得られた単結晶を用いることによって、電子部品材料、光学用部品材料を提供するのに必要な優れた特性を有するウエハーの生産効率を高めることが可能となる。
モリブデン製ルツボを使用して育成したサファイア単結晶から切り出した従来のウエハーの反射電子像結晶内部の写真である。 サファイア単結晶育成装置の一例を示す模式図である。
以下、本発明のサファイア単結晶の製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。
本発明のサファイア単結晶の製造方法は、カーボン系ヒータ又はカーボン系断熱材を用いたチャンバ内に、モリブデン、タングステン、もしくはそれらの合金製のルツボを設置し、このルツボにサファイア原料粉末を装入し、雰囲気ガスを予め不活性ガスで置換した後、ルツボを直接加熱してサファイア原料粉末を溶融し、得られた原料融液に種結晶を接触させて成長結晶を引き上げる融液成長法によるサファイア単結晶の製造方法において、
前記置換後の雰囲気ガスは、不活性ガスと一酸化炭素ガスの混合ガスであり、かつ、一酸化炭素ガスの含有量が、不活性ガスに対する体積比で100〜10000ppmであり、かつカーボン蒸気又はルツボ材料とサファイア原料融液との反応に起因する内包物の生成を抑制するのに十分な量であり、原料の融解から3時間以上経過後に、種結晶を原料融液に接触させることを特徴とする。
1.結晶育成装置
本発明の結晶育成装置は、特に限定されるものではなく公知の単結晶育成装置が利用でき、例えば、図2に示すような装置が例示される。
この装置は、原料粉末を入れるルツボ1をチャンバ内の支持軸2の上に配置し、原料粉末を融解するために、ルツボ側面に側面ヒータ3、また、ルツボの下方に円盤状のボトムヒータ4が支持軸2を貫通する形で配置されている。側面ヒータの周囲、ボトムヒータの下方には、断熱材5が炉体6の内面に沿って設けられ、チャンバの頂部と底部にはガス供給管8、ガス排出管9が取り付けられている。また、ルツボ上部に上下動可能な引き上げ軸7が、断熱材5を貫通する形で設けられている。ルツボの材質は、モリブデン、タングステンもしくはそれらの合金のいずれかであり、また、側面及びボトムヒータ、断熱材の材質は、いずれかがカーボン製とされる。ヒータはカーボン粒子あるいは炭素繊維の成形体、断熱材はカーボンフェルト断熱材が用いられる。
2.結晶育成方法
単結晶の引き上げでは、図2に示した装置の側面ヒータおよびボトムヒータを作動させて単結晶用原料を加熱して原料融液10を生成する。その後、原料融液表面に種結晶11を接触させ、引き上げながら単結晶12の育成を行う。結晶育成方法は、特に限定されるものではなく公知の技術が利用される。
本発明においては、単結晶用原料として通常のサファイア粉末を用いることができる。サファイア粉末は、実質的にAlとOの2元素からなる酸化アルミニウムである。材料純度99.95〜99.998%程度のα−アルミナ(Al)が好ましい。また、目的とするサファイア単結晶の種類に合わせて、AlとOのほかに、Ti、Cr、Si、Ca、Mgなどを含んでいてもよい。このうちSi、Ca、Mgなどは、焼結助剤の成分として不可避的に含まれうるが、その含有量は極力少ないことが望ましい。また、サファイア粉末の直径や密度は、特に制限されないが、取り扱い上、例えば、直径は、10mm以下、好ましくは5mm以下であるものがよい。また、密度は、α−アルミナの理論密度4g/cmに近い物が原料充填時に有利である。そのため、使用する原料の密度は2g/cm以上、好ましくは3g/cm以上であるものが良い。
次に、このモリブデンルツボ内のサファイア原料粉末を加熱融解させる。その際、炉内雰囲気中に酸素が存在すると、モリブデンとカーボンが酸化し、良好なサファイア単結晶の育成が困難となるため、チャンバ内は使用する雰囲気ガスに置換する。そのためには、チャンバを密封した後、又は真空引き後、チャンバ内にガス供給管8から不活性ガスを流して不活性ガス雰囲気にする。
チャンバ内に実質的に酸素が存在しない状態を維持するには、十分な量の不活性ガスを流通しなければならない。不活性ガスは、毎分チャンバ容積に対して0.2%以上、好ましくは、チャンバ容積に対して毎分0.2〜1.3%をチャンバ内に導入する。これによりチャンバ内に酸素が混入することが防止でき、熱バランスが取りやすくなる。流量がチャンバ容積に対して0.2%/分よりも少ないとチャンバ内に酸素が混入する。一方、不活性ガスがチャンバ容積に対して1.3%/分を越えて流入すると、チャンバ内の熱バランスが取りずらくなり、その結果、良好なサファイア単結晶の育成が困難となる。
チャンバ内が不活性ガス雰囲気になってからは、過加圧にならないように、ガス排出管9からガスを排出する。その後、ルツボを加熱し、原料を溶融して原料融液を得る。加熱溶融時のチャンバ内圧力は、常圧が好ましい。チャンバ内圧力が減圧ではモリブデンが昇華しやすく原料融液が汚染されやすい。また、チャンバ内圧力が加圧では、モリブデンの昇華を抑えることが出来るが、装置を耐圧設計にする必要があり、経済的に不利である。
ところが、前記のとおり、ルツボ材料としてモリブデン製のルツボを用いて、さらに雰囲気を不活性ガスのAr雰囲気として、原料粉末を加熱溶融すると、サファイア結晶内にモリブデン粒子が混入し、得られた育成結晶を加工してウエハーを製造すると、しばしばウエハー表面に突起物が出現する。本出願人は、このモリブデン粒子混入の原因は、原料融液とルツボの反応によるものであることをつきとめた。
すなわち、得られた低品位のウエハーの表面にレーザを走査し、反射光により表面の凹凸を検査すると、表面に突起状の異物が観察され、電子顕微鏡(EPMA)によりウエハー上の突起物を撮影すると、その反射電子像は、図1に示すように、この異物は10μm程度あり、ルツボで使用したモリブデンであった。これは、結晶内にあるモリブデン内包物が、ウエハー状に加工することによりウエハー表面に露出したものと考えられる。
この突起物は、その成分としてルツボ材料であるモリブデンが含まれていることから、下記のメカニズムで出現するものと推定される。
サファイアの融点は、約2040℃と高温であるため、原料融液を生成するには、ヒータ温度を少なくともサファイアの融点以上にしなければならない。ヒータとしてカーボンを用いた場合、2000℃以上の高温においてカーボン蒸気圧が無視できなくなる。実際に、サファイア結晶を1回育成するとカーボンヒータは数g減少する。このように高温で発生したカーボン蒸気によりサファイア原料融液が還元されるが、サファイア原料融液のカーボンによる還元反応は、例えば以下のように考えられる。
(1)カーボン蒸気によるサファイア原料融液の還元
Al + 3C → 2Al + 3CO
Al + 2C → AlO + 2CO
(2)生成したアルミニウムや低価数のアルミニウム酸化物とルツボとの反応
モリブデン製ルツボは、アルミナ(Al)とは反応しない。しかし、アルミニウム(Al)や低価数のアルミニウム酸化物(例えばAlO)とは容易に反応する。そのため、原料融液のカーボンによる還元反応により生成したアルミニウムや低価数のアルミニウム酸化物が、ルツボと反応する。この反応は、例えば以下のように考えられる。
Mo + Al → MoAl
3Mo + Al → MoAl
(3)反応生成物の結晶への取り込み(内包物の形成)
この様にして生成したMo−Al合金は、純Moと比較して融点が低く、化合物の形態によってはサファイアの融点よりも低い。そのため、サファイア結晶の育成雰囲気では融解する可能性がある。融解したMo−Al合金は、サファイア融液内でMoとAlに分解し、Moは融点が高いために、金属粒子として原料融液内に晶出する。このMo金属粒子は原料融液の対流により、ルツボ内を移動し、結晶と融液の固液界面で結晶内に取り込まれてしまう。そして、育成後の結晶をウエハー状に加工した時に、ウエハー表面にMo粒子が突起物として現れる。
このような機構によりサファイア結晶内にMo内包物が生成される問題は、カーボン系材料で作製したヒータを用いた場合に特有の問題である。つまり、カーボン製ヒータが高温になり、ヒータ自身が昇華しカーボン蒸気の発生源となる。これが、サファイア原料融液を還元させることの根本原因といえ、このため育成炉の構成としてカーボン系材料を用いない場合は上記の機構による問題は発生しない。
また、特許文献1で記載される装置において、断熱材にカーボンを使用しても、高周波加熱方式によりルツボを発熱させる場合は、この様な問題は発生しない。なぜならば、カーボン製抵抗加熱ヒータと比較して、高周波加熱方式の断熱材温度は低いためにカーボンの蒸気圧が低くなり、そのため、発生するカーボン蒸気の量が少ないため、原料融液の還元反応が起こりにくく、ルツボと原料融液の反応も起こりにくいからである。
なお、Moによる原料融液や結晶汚染の根本原因となる上記(1)の反応では、酸素が反応に関与していないために、特許文献2のように、酸素分圧を制御しても抑えることが出来ない。
そのため、本発明では、原料融液を生成する際、炉内雰囲気は不活性ガスと一酸化炭素のみの混合雰囲気とする。ルツボ材のMoと断熱材を構成するカーボンの酸化を防ぎ、また原料のAlの還元を防ぐためである。ここでいう不活性ガスとは、酸化・還元作用がない希ガスであれば限定されず、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)を例示できる。特に商用的には、比較的低価格で入手可能なArが好ましい。窒素は、窒素とモリブデンとが反応し、窒化モリブデンが発生するため、良好なサファイア単結晶の育成は困難である。また炉内のカーボンと反応し、シアンガスを生成するため、カーボン製の断熱材の劣化が早く、また排ガス処理などの費用がかかりコスト面から好ましくない。
上記不活性雰囲気中の不活性ガスには一酸化炭素のみを混合する必要がある。特許文献2では、一酸化炭素とともに二酸化炭素を併用しているが、二酸化炭素は高温では不安定で、酸化や還元を生じ得るから、本発明では使用されない。育成炉内に一酸化炭素を導入することで、前記カーボンによるサファイア融液の還元反応(1)の進行を抑えることが出来る。
混合する一酸化炭素の濃度は、カーボン蒸気又はルツボ材料とサファイア原料融液との反応に起因する内包物の生成を抑制するのに十分な量でなければならない。具体的には、不活性ガスに対する体積比で100〜10000ppmの範囲であり、200〜8000ppmの範囲がより好ましい。
一酸化炭素濃度が100ppm以下の場合は、不活性ガスのみの雰囲気におけるカーボン蒸気と原料融液の還元反応により発生する一酸化炭素濃度とほぼ同じ濃度となるため、原料融液の還元反応を抑制することが出来ない。よって、原料融液とルツボの反応が起こり、サファイア結晶内にMo内包物が生成されてしまう。
一方、一酸化炭素濃度が10000ppmを超えると、ルツボと一酸化炭素が直接反応するため、原料と直接接触していない部分(例えばルツボの外側)が雰囲気中の一酸化炭素と反応し、炭化モリブデンが生成される。炭化モリブデンは蒸気圧が高く、炭化モリブデン蒸気により結晶表面や原料融液が汚染され、炭化モリブデンが原料融液中に溶け込むことで、サファイア結晶中にMo内包物が生成され結晶品質が低下する。また、一酸化炭素濃度が10000ppmを超えると結晶内に多数の気泡が取り込まれる。炉内雰囲気の一酸化炭素濃度が高すぎると、原料融液中に過剰に溶解した一酸化炭素が、融液と固体の溶解度差により、結晶化するときに気泡となる。結晶内の気泡は、ウエハー状に加工し、ウエハー表面に露出した際に、凹みとなるため、突起物と同様の理由から、その後の半導体素子形成に悪影響を及ぼす。
次に、チャンバ内が不活性ガス雰囲気になったところで、耐熱性ルツボの側面、底面を直接加熱し、サファイアの融点(2040℃)以上の温度として、耐熱性ルツボ内に充填したサファイア単結晶原料を溶融する。
加熱室内のサファイア単結晶原料を加熱溶融し、Cz法で成長させると、結晶中に無数の微小な気泡が発生しやすい。気泡の原因となるガスは、サファイア単結晶原料の分解によっても発生するが、原料に吸着または内包しているガス成分が原料の融解前に完全に除去されず融液内に残り、これが結晶に取り込まれて気泡となっているものが多い。そこで、サファイア単結晶用原料をルツボ内で十分な時間加熱溶融させて気泡を排出させることが望ましい。
原料の融解から3時間以上、特に5時間以上経過後、種結晶軸を適当な回転数で回転させながら降下させ、サファイア融液に種結晶を付ける。サファイア単結晶原料の融液に付けた種結晶を適温で十分融液に馴染ませてから、引き上げを開始する。
単結晶の育成は、チャンバ内を不活性ガス雰囲気に保ち、回転数や引き上げ速度を調整してネック部および肩部を形成し、引き続き直胴部を形成する。結晶形状の調節は、育成中の結晶重量を測定し、直径や育成速度などを計算によって導き出し、回転速度や引き上げ速度を調整して行う。また、結晶重量の変化を加熱ヒータ投入電力にフィードバックして融液温度をコントロールする。
このようにして耐熱性ルツボ内でサファイア単結晶が育成され、予め設定された結晶長さに成長すると、融液から結晶を切り離す工程に移行し、その後、制御装置のシーケンスパターンにより降温する。
得られるサファイア単結晶は、アルミニウム及び酸素の2元素を含む単結晶であり、この単結晶からウエハーをスライスし、ポリッシュ研磨することで、エピ結晶ウエハーとすることができる。単結晶中にはモリブデンやカーボン由来の内包物を含まないので、優れた特性を有する電子部品材料、光学用部品材料を提供できる。
以下に、実施例を用いて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これら実施例によって限定されるものではない。
なお、育成した単結晶を検査して、気泡不良がない場合を○、気泡不良がある場合を△と評価し、また、ウエハー状に加工し、鏡面に仕上げたウエハー表面にレーザを走査し、反射光から表面の凹凸を観察して、内包物がない場合を○、内包物がある場合を△と評価した。
(実施例1)
カーボンフェルト断熱材とカーボン製ヒータを用いて、チャンバを構成し、耐熱性ルツボを設置した。耐熱性ルツボとして、モリブデン製ルツボ(直径160mm、高さ160mm、厚さ2mm)を用いた。このモリブデン製ルツボにサファイア原料(99.99%のAl)を充填しておき、炉内雰囲気をArとし、一酸化炭素濃度を体積比で100ppmとした。アルゴンガスをチャンバ容積に対して毎分0.6%の流量で流し、チャンバ内の気体を置換した。
その後、常圧において、20時間以上かけてルツボを直接加熱し、サファイア原料を融解させた。この融液に種結晶を接触させ、結晶の引上げに適当な温度になるよう融液の温度を調整し、引上げを開始した。引上げ速度は毎時1.4mm、結晶回転数は2rpmとした。その後、自動直径制御装置を用いて所望の直径になるよう結晶径を制御し、所望の長さまで結晶を引き上げた後、融液から切離し、およそ15時間かけて冷却した。
この雰囲気で育成した単結晶を光散乱トモグラフィー法により評価した。その結果、気泡に起因した散乱体は観察されなかった。また、ウエハー状に加工し、鏡面に仕上げたウエハー表面にレーザを走査し、反射光から表面の凹凸を欠陥/異物検査装置(KLA Tencor社製、商品名:candela CS10)によって検査した。その結果、10μm以上の大きさのルツボ材に起因したMo突起物は観察されなかった。この結果を表1に示す。
(実施例2)
炉内雰囲気中の一酸化炭素濃度を体積比で10000ppmとしたこと以外は、実施例1と同様にサファイア結晶の育成を行った。同様の評価を行った結果、気泡とルツボ材に起因したMo突起物は観察されなかった。この結果を表1に示す。
(比較例1)
炉内雰囲気中の一酸化炭素濃度を体積比で50ppmとしたこと以外は、実施例1と同様にサファイア結晶の育成を行った。同様の評価を行った結果、気泡による不良は観察されなかったが、電子顕微鏡(島津製作所製 EPMA−1600)で検査すると、ルツボ材に起因したMo突起物(大きさ 10μm)が観察された。この結果を表1に示す。
(比較例2)
炉内雰囲気中の一酸化炭素濃度を体積比で12000ppmとしたこと以外は、実施例1と同様にサファイア結晶の育成を行った。同様の評価を行った結果、気泡による不良と内包物(大きさ 12μm)による不良が観察された。この結果を表1に示す。
(比較例3)
炉内雰囲気の不活性ガス中に二酸化炭素濃度を体積比で100ppm含有させたこと以外は、実施例1と同様にサファイア結晶の育成を行った。同様の評価を行った結果、酸化や還元が生じて内包物(大きさ 10μm)による不良が観察された。この結果を表1に示す。
Figure 0005459004
「評価」
以上、表1の結果から明らかなように、実施例1、2では、不活性ガスに特定量の一酸化炭素濃度のみを含有させているために、気泡に起因した散乱体や10μm以上の大きさのルツボ材に起因したMo突起物が観察されなかった。
これに対して、比較例1、2では、不活性ガスへの一酸化炭素濃度の含有量が不適切であったために、気泡に起因した散乱体や10μm以上の大きさのルツボ材に起因したMo突起物が観察された。また、比較例3では、不活性ガスに二酸化炭素を存在させたために、気泡に起因した散乱体や10μm以上の大きさのルツボ材に起因したMo突起物が観察された。
本発明は、発光ダイオード(LED)などの高品質かつ安価な半導体ウエハー結晶や光学結晶等の単結晶の製造に適用することができる。
1.ルツボ
2.ルツボ軸
3.側面ヒータ
4.ボトムヒータ
5.断熱材
6.炉体
7.引き上げ軸
8.ガス供給管
9.ガス排出管
10. 原料融液
11. 種結晶
12. 単結晶

Claims (3)

  1. カーボン系ヒータ又はカーボン系断熱材を用いたチャンバ内に、モリブデン、タングステン、もしくはそれらの合金製のルツボを設置し、このルツボにサファイア原料粉末を装入し、雰囲気ガスを予め不活性ガスで置換した後、ルツボを直接加熱してサファイア原料粉末を溶融し、得られた原料融液に種結晶を接触させて成長結晶を引き上げる融液成長法によるサファイア単結晶の製造方法において、
    前記置換後の雰囲気ガスは、不活性ガスと一酸化炭素ガスの混合ガスであり、かつ、一酸化炭素ガスの含有量が、不活性ガスに対する体積比で100〜10000ppmであり、かつカーボン蒸気又はルツボ材料とサファイア原料融液との反応に起因する内包物の生成を抑制するのに十分な量であり、原料の融解から3時間以上経過後に、種結晶を原料融液に接触させることを特徴とするサファイア単結晶の製造方法。
  2. 不活性ガスが、アルゴンであることを特徴とする請求項1に記載のサファイア単結晶の製造方法。
  3. 雰囲気ガスが、二酸化炭素を含有しないことを特徴とする請求項1に記載のサファイア単結晶の製造方法。
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