JP4128249B2 - 位置制御用モータの制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ブラシレスモータやステッピングモータなどのような位置制御用モータの制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のブラシレスモータやステッピングモータの位置制御用モータの制御装置としては、ステッピングモータに代表される開ループの制御装置と、エンコーダやレゾルバなどの位置検出器を使用して制御するACサーボモータなどの閉ループの制御装置がある。
【0003】
すなわち、前記開ループ制御装置の場合、回転子位置に関係なく、位置指令によって前記モータの励磁の切り替えを行っている。
また、前記閉ループ制御装置の場合、回転子位置を前記位置検出器により検出し、これをフィードバックしている。通常、該モータの励磁電流の位相は、回転子位置に対して、電気角で90゜先の励磁安定点になるように制御されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記開ループ制御装置にあっては、該ステッピングモータに一定の電流を流したときの、回転子変位と発生トルクとの関係は、図6に示すようになる。この変位と発生トルクとの関係で、変位が90゜に達したときに、発生トルクは最大になり、±180゜以内では、もとに戻ろうとするトルクを発生するが、±180゜を超える範囲では、回転子はもとの位置に戻ろうとはせずに、異なる安定点に向かうトルクを発生し、位置ずれが発生するという問題点があった。
このため、電流の切り替えに、前記モータの回転子が追従出来ないときには、脱調し、位置制御の信頼性が劣っていた。
【0005】
他方、閉ループ制御装置にあっては、前述のように、通常、前記モータの励磁電流の位相は、回転子位置に対して、電気角で90゜先の励磁安定点になるように制御されている。このため、回転子の位置と励磁安定点とが一致していないため、完全に静止することができず、微振動を発生する。また、励磁電流の大きさは、位置、速度などのフィードバックを組んで制御しているが、フィードバック制御による遅れがあり、ループゲインの設定などが必要になる。
【0006】
この場合、(1)負荷系の変動に対して、閉ループゲインの調整が必要となる。該負荷系の変動に対して、安定な制御を行おうとすると、複雑な制御が必要となる。(2)回転子停止時に微振動(ハンチング)がある。(3)制御の遅れが発生し、指令に対する同期性に欠けるなどの問題点があった。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みなされたもので、その目的は前記問題点を解消し、指令位置に対して回転子が、脱調することなく追従し、信頼性が高く位置決めができ、かつ負荷変動に対して安定で、回転子停止時に微振動(ハンチング)がなく、指令に対する同期性がよい位置制御用モータの制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明の構成は、ブラシレスモータやステッピングモータなどの回転子の電気的位置を検出する位置検出部と、該検出部からの検出信号と指令位置信号とを比較し、その偏差により、該モータの2相巻線に流すべき電流に対応する電流指令信号を出力する制御部と、該制御部から出力する該電流指令信号により、前記モータ巻線に流すそれぞれの電流を出力する増幅部とからなり、前記指令位置信号により、前記モータの位置を制御する装置において、次のとおりである。
【0009】
(1)前記制御部は、
前記指令位置信号のパルス信号をカウントする指令位置カウンタと、
前記位置検出部からの前記位置検出信号のパルス信号をカウントする回転子位置カウンタと、
該両カウンタからのパルス信号が入力され、該両パルス信号の偏差から、2相用のふたつの正弦波テーブルのそれぞれにアドレス信号を出力する位相計算部と、
該位相計算部からのアドレス信号に対応し、それぞれ正弦波の電流指令信号を出力する前記ふたつの正弦波テーブルであって、一方の正弦波テーブルは、他方の正弦波テーブルと前記アドレス信号に対して90゜位相が異なるものからなり、
前記位相計算部は、前記偏差が、電気角で90゜以内のときは、前記指令位置パルス信号に基づく前記それぞれのアドレス信号を出力して、前記モータをステッピングモータモードで制御し、
該偏差が、電気角で90゜を超えるときは、前記モータの前記位置検出パルス信号を電気角で90゜位相補正して、該位置検出パルス信号に基づく前記それぞれのアドレス信号を出力して、前記モータをブラシレスモータモードで制御することを特徴とする。
【0010】
(2) (1)において、前記位相計算部は、前記モータの回転時における演算時間や前記モータ巻線インダクタンスに起因する時間遅れによる前記モータ巻線に流す電流の位相遅れを補正するため、該モータの回転速度に比例する速度補正を付与する機能を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明は、前記のように構成されているので、指令位置と、検出された回転子位置との偏差を監視し、その偏差量(電気角)によって、下記2つのモードを設け、前記偏差量によって、該モードのいずれかに切り替えている。すなわち、図1に示すように、回転子変位(位置)と、該回転子に発生されるトルクとの関係から、
(a)−90゜≦偏差量≦+90゜の場合は、STモード(ステッピングモータモード)にして、前記モータ巻線の励磁状態を切り替える。
(b)−90゜>偏差量、+90゜<偏差量の場合は、BLモード(ブラシレスモータモード)にして、励磁電流の位相が、回転子位置の90゜先の励磁安定点になるように励磁する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。
図2は、本発明の位置制御用モータの制御装置の一実施の形態を示すブロック構成図、図3は、該制御装置の制御部内のブロック構成図である。
【0014】
図2において、1は、ブラシレスモータの2相ハイブリッド型ステッピングモータで、その回転子の外周面に50個の回転子小歯が備えられている。該モータ1の回転軸には、該回転子の位置検出器2として、VR型レゾルバが取り付けられており、該位置検出器2は、発振回路3から100kHz程度の高周波信号が供給され、前記回転子の回転位置に伴うセンサ極のインダクタンスの変化によって、正弦波信号を出力する。この出力された正弦波信号は、同期復調器4により前記回転子の回転角度の正弦関数に変換され、制御部5にフィードバック量として入力されている。
【0015】
図3において、前記制御部5には、入力される指令位置パルス信号と、前記回転子の位置検出器2から位置デコーダ12によりパルス信号に変換された回転子位置パルス信号とを比較し、その偏差により演算して、該モータ1のA相およびB相巻線に流すべき電流に対応する信号を出力する。この出力信号により、前記モータ1のA相およびB相巻線に、それぞれ増幅器6aおよび6bから2相電力を供給して、前記指令位置パルス信号により、前記モータ1の位置を制御する。
【0016】
前記制御部5は、32ビットのCPU(central processor unit)を使用し、100μsの制御周期で、前記モータ1のA相分、B相分の電流指令としての出力信号の更新を行っている。
該制御部5は、指令位置パルス信号をカウントする指令位置カウンタ11と、前記位置検出器2から前記位置デコーダ12により変換された回転子位置パルス信号をカウントする回転子位置カウンタ13と、該両カウンタ11,13からのパルス信号が入力され、該両パルス信号の偏差から、正弦波テーブル15のアドレス信号を出力する位相計算部14と、該位相計算部14からのアドレス信号に対応し、正弦波データ信号を出力する前記正弦波テーブル15とからなる。
【0017】
前記位相計算部14は、前記両カウンタ11,13からのパルス信号の偏差が、電気角で90゜以内のときは、前記指令位置パルス信号に基づくアドレス信号を出力し、前記正弦波テーブル15から該アドレス信号に対応する正弦波データ信号を、電流指令として出力させる。
また、位相計算部14は、前記偏差が、電気角で90゜を超えるときは、前記モータ1の前記位置検出パルス信号を電気角で90゜位相補正するとともに、該位置検出パルス信号に基づくアドレス信号を出力し、前記正弦波テーブル15から該アドレス信号に対応する正弦波データ信号を、電流指令として出力させる。
【0018】
前記正弦波テーブル15には、前記モータ1のA相電流およびB相電流に対応して、図4(a)、図4(b)に示すように、0〜999の1000個のアドレスに対する正弦波データ信号を記憶させておき、前記位相計算部14から出力されるアドレス信号に対応するデータ信号を、電流指令として出力する。
A相とB相との電流の位相は、電気角で90゜ずれているので、B相の電流データ信号は、前記位相計算部14からのアドレス信号に250加えたアドレス信号にしている。
【0019】
ここで、前記正弦波テーブル15の出力データ信号として、アドレス0〜999を1周期とすると、該モータは1/50回転(機械角で7.2゜)回転する。このため、1アドレス(1番地)あたりの回転量は、0.0072゜となり、分解能は、1/50000回転となる。
【0020】
前記モータ1の回転量の指令値は、パルス信号で入力される。この入力パルス信号は、指令位置カウンタ11でカウントされ、正転時はカウントアップ、逆転時はカウントダウンを行い、0〜999のカウントを行う。回転子位置の情報は、前記位置検出器2からアナログ量としてフィードバックされ、これを前記位置デコーダ12によりデジタル量に変換されてから前記回転子位置カウンタ13によってカウントされる。カウント量の範囲は前記回転子位置カウンタ13と同様に0〜999である。
【0021】
前記位相計算部14では、前記2つのカウント値を引き算することで、指令位置と回転子位置との偏差を常に監視しており、前記指令位置カウンタ11の値、前記回転子位置カウンタ13の値、およびその偏差の値から、前記モータ1に流す電流位相を計算し、該電流位相をアドレス信号として前記正弦波テーブル15に出力する。
【0022】
電流位相の計算は、基本的には以下の手順で行われる。
前記偏差カウント値が、±250(電気角で±90゜)の範囲では、指令位置カウンタ11の値を電流位相として、直接、前記正弦波テーブル15に出力する。
前記偏差カウント値が、+250を超えるときは、回転子位置カウンタ13の値に250を加えた値が、電流位相として、前記正弦波テーブル15に出力される。また、前記偏差カウント値が、−250を超えるときは、回転子位置カウンタ13の値に250を減じた値を、電流位相として、前記正弦波テーブル15に出力する。この場合、回転子位置カウンタ13の値に250を加えた値で、電流を反転しても同じである。
【0023】
次いで、実際に、前記1モータの回転時には、演算時間や巻線インダクタンスに起因する時間的な遅れにより、該モータ1の駆動電流に位相遅れを生じるので、前記位相計算部14において、該モータ1の回転速度に比例する適当な速度の補正を付与して計算を行っている。
【0024】
図5は、前記位相計算部14および正弦波テーブル15における前記速度補正まで考慮した制御についてのフローチャートである。
【0025】
また、前記指令位置信号の1パルスあたりのカウント数を、演算によって変えることにより、分解能を変更できるようにしている。さらに、モータに流す電流を加減速時には1.5倍、停止時には0.5倍と、運転状態によって変化させることにより、位置決め運転に必要なトルクを該モータ1の温度上昇を抑えつつ発生できるようにしている。
【0026】
以上、説明したとおり、本実施の形態によれば、以下の効果が得られる。
すなわち、開ループ制御の場合、
(1)制御が単純かつ簡単であり、複雑な制御理論を用いなくても位置制御が可能になる。
(2)位置決め時のハンチングがない。
(3)制御による遅れが小さく、指令に対する追従性がよい。
(4)負荷系の変動に対して調整が不要となる。
【0027】
なお、本発明の技術は前記実施例における技術に限定されるものではなく、同様な機能を果す他の態様の手段によってもよく、また本発明の技術は前記構成の範囲内において種々の変更,付加が可能である。
【0028】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の位置制御モータの制御装置によれば、前記制御部は、前記指令位置信号のパルス信号をカウントする指令位置カウンタと、前記位置検出部からの前記位置検出信号のパルス信号をカウントする回転子位置カウンタと、該両カウンタからのパルス信号が入力され、該両パルス信号の偏差から、2相用のふたつの正弦波テーブルのそれぞれにアドレス信号を出力する位相計算部と、該位相計算部からのアドレス信号に対応し、それぞれ正弦波の電流指令信号を出力する前記ふたつの正弦波テーブルであって、一方の正弦波テーブルは、他方の正弦波テーブルと前記アドレス信号に対して90゜位相が異なるものからなり、前記位相計算部は、前記偏差が、電気角で90゜以内のときは、前記指令位置パルス信号に基づく前記それぞれのアドレス信号を出力して、前記モータをステッピングモータモードで制御し、該偏差が、電気角で90゜を超えるときは、前記モータの前記位置検出パルス信号を電気角で90゜位相補正して、該位置検出パルス信号に基づく前記それぞれのアドレス信号を出力して、前記モータをブラシレスモータモードで制御するので、指令位置に対して回転子が、脱調することなく追従し、信頼性が高く位置決めができ、かつ負荷変動に対して安定で、回転子停止時に微振動(ハンチング)がなく、指令に対する同期性がよくすることができる。
【0029】
また、通常、ステッピングモータを使用するときは、脱調の危険があるため、大きい安全率を見込んで該モータの選定を行うが、本発明によれば、脱調の危険がないため、より小さいステッピングモータを使用することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の位置制御用モータ回転子の変位と発生トルクの関係およびそのモードを示す図である。
【図2】本発明の位置制御用モータの制御装置の一実施の形態を示すブロック構成図である。
【図3】該制御装置の制御部内のブロック構成図である。
【図4】図4(a)は、正弦波テーブルにおいて、アドレス信号値に対しA相電流値に対応する正弦波データ信号値の関係を示す図、図4(b)は、正弦波テーブルにおいて、アドレス信号値に対しB相電流値に対応する正弦波データ信号値の関係を示す図である。
【図5】位相計算部および正弦波テーブルにおけるモータ速度補正まで考慮した制御についてのフローチャートである。
【図6】従来の位置制御用モータ回転子の変位と発生トルクの関係を示す図である。
【符号の説明】
1 2相ステッピングモータ
2 位置検出器
5 制御部
6a,6b 増幅器
11 指令位置カウンタ
12 位置デコーダ
13 回転子位置カウンタ
14 位相計算部
15 正弦波テーブル

Claims (2)

  1. ブラシレスモータやステッピングモータなどの回転子の電気的位置を検出する位置検出部と、該検出部からの検出信号と指令位置信号とを比較し、その偏差により、該モータの2相巻線に流すべき電流に対応する電流指令信号を出力する制御部と、該制御部から出力する該電流指令信号により、前記モータ巻線に流すそれぞれの電流を出力する増幅部とからなり、前記指令位置信号により、前記モータの位置を制御する装置において、
    前記制御部は、
    前記指令位置信号のパルス信号をカウントする指令位置カウンタと、
    前記位置検出部からの前記位置検出信号のパルス信号をカウントする回転子位置カウンタと、
    該両カウンタからのパルス信号が入力され、該両パルス信号の偏差から、2相用のふたつの正弦波テーブルのそれぞれにアドレス信号を出力する位相計算部と、
    該位相計算部からのアドレス信号に対応し、それぞれ正弦波の電流指令信号を出力する前記ふたつの正弦波テーブルであって、一方の正弦波テーブルは、他方の正弦波テーブルと前記アドレス信号に対して90゜位相が異なるものからなり、
    前記位相計算部は、前記偏差が、電気角で90゜以内のときは、前記指令位置パルス信号に基づく前記それぞれのアドレス信号を出力して、前記モータをステッピングモータモードで制御し、
    該偏差が、電気角で90゜を超えるときは、前記モータの前記位置検出パルス信号を電気角で90゜位相補正して、該位置検出パルス信号に基づく前記それぞれのアドレス信号を出力して、前記モータをブラシレスモータモードで制御することを特徴とする位置制御モータの位置制御装置。
  2. 前記位相計算部は、前記モータの回転時における演算時間や前記モータ巻線インダクタンスに起因する時間遅れによる前記モータ巻線に流す電流の位相遅れを補正するため、該モータの回転速度に比例する速度補正を付与する機能を備えることを特徴とする請求項1に記載の位置制御モータの位置制御装置。
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