JP4121957B2 - 藍調製物、ならびにそのヒト免疫不全ウイルスの感染予防または治療における用途 - Google Patents
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Description
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)の感染予防、ならびに、感染者の体内におけるHIV感染細胞の増大に起因する後天性免疫不全症候群(AIDS)発症抑制治療に有効な抗HIV作用を示す「藍調製物」または「藍組成物」に関する。より具体的には、本発明は、藍原料植物であるタデ科植物の「蓼藍」(Polygonum tinctrium Aiton)、キツネノマゴ科植物の「琉球藍」(Strobilanthes flaccidifolium Nees)、トウダイグサ科植物の「山藍」(Mercurialis leiocarpa Siebold)の三種のなかでも、タデ科植物の「蓼藍」から調製される「藍調製物」、特に、蓼藍由来の「すくも」より抽出溶媒として水を用いて抽出される「すくも」水抽出物、ないしは、該「すくも」水抽出物中に含有される抗HIV活性成分の、ヒト免疫不全ウイルスの感染予防または治療における用途に関する。
背 景 技 術
HIV(Human Immunodeficiency Virus:エイズ(AIDS)病原体ウイルス)の感染者および患者数は、今日、世界全体では、3,600万人を超えたと報告されている。感染の汎用的な診断キットの確立とともに、これらHIV感染者および患者は、先進国ばかりでなく、全世界に広く分布していることが確認され、その感染者数の急速な増加は、アフリカ、東南アジア、東ヨーロッパなどの発展途上国において、深刻な社会的な脅威となっている。このHIV感染症に対する予防方法や治療方法の研究は急速な発展を遂げているが、まだまだ充分ではない。
例えば、HIV感染の予防を目的とするワクチン開発については、病原性レトロウイルスの中でも、HIVは特殊なウイルスの一つであり、臨床的に分離される種々の変異株における、そのゲノム遺伝子変異は極めて多様である。従って、これら多様なゲノム遺伝子変異を示す種々の変異株全般に対して、その感染を防護可能な、的確なワクチンの開発は未だ見通しさえつかない状況である。
一方、治療薬剤については、レトロウイルスである本HIVウイルスの増殖過程の特徴、すなわち、宿主細胞への感染に際し、ウイルス・ゲノムRNAを鋳型として、ウイルス由来の逆転写酵素によって、宿主内で対応するDNA鎖を複製する過程、すなわち、HIVウイルスに特異的な逆転写過程を阻害する逆転写酵素阻害剤が開発され、複数種が実用に供されている。しかしながら、この逆転写酵素阻害剤に利用されている、ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤あるいは非ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤は、重大な副作用、例えば、白血球や赤血球の産生を低下させたり、末梢神経障害を誘起したりするなどの副作用を示し、加えて、患者内におけるウイルス自体の遺伝子変異に伴い、これら逆転写を阻害する薬剤に対する耐性が、比較的容易に出現するということが判明してきた。
また、一旦、逆転写過程を介して、宿主細胞のゲノム遺伝子DNA内に組み込まれたウイルス遺伝子から、宿主細胞の転写・翻訳機構を利用して産生されるウイルス由来のポリ・タンパク質は、ウイルス由来のHIVプロテアーゼによる切断過程を経て、成熟した種々のウイルス・タンパク質となる。例えば、HIVプロテアーゼによる切断過程を阻害すると、上記ウイルス由来の逆転写酵素の成熟、あるいは、ウイルスの外殻タンパク質の成熟を抑制し、結果的に、逆転写過程、あるいは、宿主内でのウイルス分子の産生が抑制される。このHIVプロテアーゼを標的としたHIVプロテアーゼ阻害剤も開発され、複数種が実用に供されている。しかしながら、HIVプロテアーゼ阻害剤は、精神障害や痙攣、腎結石などの副作用を示すことが報告されており、また、単独使用では、ウイルス自体の遺伝子変異に伴い、耐性の獲得が早く、治療効果が減弱される。
これらHIV治療薬に対する耐性の出現、副作用などの欠点を緩和するために、カクテル療法という投与方法が開発された。具体的には、HIV治療薬の2種類以上、例えば、逆転写酵素阻害剤とHIVプロテアーゼ阻害剤とを同時投与する方法である。標準的には、プリン塩基タイプとピリミジン塩基タイプの異なる種類のヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤の組み合わせなど、逆転写酵素阻害剤2剤に加えて、HIVプロテアーゼ阻害剤1剤を併用投与し、異なる過程を同時に阻害する方法である。このカクテル療法では、利用されるHIV治療薬それぞれに対する耐性が獲得されるメカニズムが異なるため、個々の薬剤に対する耐性株の感染を相互に抑制し合うことで、上述する単剤投与における欠点を補うことができる。
しかしながら、このカクテル療法をもってしても、早晩、薬剤耐性変異ウイルスの出現が避けられないことも現実の問題として存在する。さらには、従来のHIV治療薬を利用する治療方法には、その利用を拡大する際、大きな障害ともなる、重大な問題を有している。その一つは、現段階では、依然として、薬剤価格が高く、治療費が嵩むことである。上記のHIV治療薬は、HIV感染後、体内でのウイルス感染細胞の増加を抑制し、AIDS症状の発症を防止する治療効果を発揮するものであり、必然的に、長期間の薬剤服用が必要であり、その治療費負担に耐えられる患者は、極めて少数になるということである。もう一つの問題は、多種の薬剤を併用することに伴い、全体の薬服用量が多量となり、また、個々の薬剤に適合する服用方法に従って、服用の手順も複雑となる。結果として、長期間にわたって、決められた手順に従って、患者が多種の薬剤を規則正しく服用を継続することは、しばしば困難となるということである。一般的に、服用手順が煩雑であると、アドヒアランスの維持、すなわち患者が積極的に治療方針の決定に参加し、自らの決定にたがって治療を実行することを目指すことが困難になり、目標とする治療が継続できなくなることである。
一方、このカクテル療法は、臨床応用は始まったばかりであり、現段階では、長期間実施したという実績がない。また、多くの薬剤を長期間投与することにより、血糖値が上昇した状態が長く続き、糖尿病の発症が危惧されたり、あるいは、総コレステロール値が異常に上昇し、高脂血症状態が長く続いたりといった、将来的には、重大な、慢性的な病気の発症を予測されることが懸念されている。確かに、このカクテル療法が開始されて以来、始めて、薬物加療を継続しているHIV患者において、AIDS発症に伴う死亡数は一時的に減少しているように見える。しかしながら、現時点では、これらの薬物療法は、HIV感染症の治療法として、未だ、十分にして、且つ安心できる状態であると、確認するには達していない。
発明の開示
HIV感染症に対する予防ならびに治療法について、上述するように種々の試みがなされ、ある程度の効果は達成されはいるものの、その感染経路の多くは、例えば、性的な接触に伴い、HIV感染者の体液中に存在するがHIVの侵入によっている。この性的な接触に伴う感染経路は、「性」という人間の種保存本能に関係するものであり、その感染予防は、必ずしも容易ではない。現段階では、感染予防に有効な手段としては、物理的な手段によって、HIV感染者の体液との接触を回避すること程度しか、提唱がなされていない。
一方、現在のHIV感染症治療は、高価な薬剤を多数服用し、かつ長期間にわたり継続投与しなくてはならず、しかも、その効果は、現段階では、例えば、AIDS発症の遅延には有効であるものの、HIV感染症を治癒せしめる段階に至るにはほど遠く、加えて、治療効果以外にも、様々な問題を抱えている状態である。
すなわち、現状実施されている、HIV感染症治療における一般的な原則は、
1:強力な抗HIV療法を感染初期に開始する、
2:血漿中のウイルス量を検出限界以下に抑えつづける、
3:治療の中断は許されない、
4:アドヒアランスの維持を図る、
5:抗HIV薬剤3剤以上の多剤併用療法を行うなどであるが、
これらの一般原則は、HIV感染症における実際の治療に対して、上述するように、極めて困難な問題を提起している。
本発明は、HIVの感染予防、ならびに感染後のAIDS発症抑制やHIV感染症の治療に、極めて明瞭な効果を発揮し、しかも、長期間投与においても、副作用の発現がなく、同時に耐性の獲得率も低く、かつ、安価に入手でき、長期間の服用に耐えられる新規な抗HIV作用を有する活性成分として、藍調製物ならびにその組成物を提供する。
本発明者らは、古くから解熱・解毒などの薬用に供されていたタデ科植物の「蓼藍」(Polygonum tinctrium Aiton)、ならびに、キツネノマゴ科植物の「琉球藍」(Strobilanthes flaccidifolium Nees)、トウダイグサ科植物の「山藍」(Mercurialis leiocarpa Siebold)の三種の植物に着目し、それらのHIV感染症の予防、治療への応用の可能性について研究を重ねた。その結果、前記三種の藍のなかでも、タデ科植物の「蓼藍」を原料とする藍調製物、特に、蓼藍より調製される「すくも」より水で抽出される成分に顕著な抗HIV作用のあることを見出した。また、かかる「すくも」の水抽出物である藍調製物ならびにそれに含有される有効成分は、極めて毒性が低く、HIVの感染予防ならびに治療において、ヒトに対しても、安心して使用することができることを確認した。
すなわち、本発明の第一の形態は、藍調製物に関し、
本発明にかかる藍調製物は、タデ科植物に属する蓼藍(Polygonum tinctorium Aiton)由来の藍調製物であって、
前記蓼藍の葉・茎から藍製造工程で調製される「すくも」の水抽出物であることを特徴とする藍調製物である。
加えて、本発明の第二の形態は、上述するタデ科植物に属する蓼藍(Polygonum tinctorium Aiton)由来の藍調製物の示す抗HIV活性を与える有効成分に関し、従って、本発明にかかる抗HIV作用を有する成分は、
タデ科植物に属する蓼藍由来の藍製造工程で調製される「すくも」の水抽出物中に含まれる、
分子量10,000以上の成分であり、熱に安定であり、
水、アルカリには易溶で、酸には溶けにくく、
有機溶媒に難溶解性である、抗HIV作用を有する成分である。なお、かかる「すくも」の水抽出物中の抗HIV作用を有する成分には、三価の鉄イオンによって、青色沈澱を生成し、還元性を有する、フェノール性水酸基が含有されている。
一方、本発明の第三の形態は、前記藍調製物のヒト免疫不全ウイルスの感染予防または治療における用途に関し、
本発明にかかる藍調製物の使用の第一は、藍調製物の健康食品の製造における、有効成分の一つとしての使用であって、
前記健康食品は、本発明にかかる、上述するタデ科植物に属する蓼藍由来の藍調製物を、有効成分の一つとして配合してなることを特徴とする藍調製物の使用である。また、本発明にかかる藍調製物の使用の第二は、
藍調製物の抗HIV作用を有する医薬組成物の製造における、有効成分の一つとしての使用であって、
前記医薬組成物は、本発明にかかる、上述するタデ科植物に属する蓼藍由来の藍調製物を、抗HIV作用を有する有効成分の一つとして配合してなることを特徴とする藍調製物の使用である。
発明を実施するための最良の形態
タデ属タデ科の藍(Polygonum tinctrium Lour)に関しては、漢方医学において、幾つかの薬効を有することが報告されている。例えば、生藍の葉や乾燥葉、種子の生汁や煎じ液は、内服、外用において、消炎、解毒、解熱、止血、虫さされ、痔疾、扁桃腺炎、喉頭炎などに効果を示すことが報告されている。また、藍には、生理活性物質として、体内の活性酸素を除去する作用を示す、没食子酸(galloyl acid)、カフェ酸(caffeic acid)、ケンベロール(Kaempferol)、抗癌作用、抗アレルギー作用を示す、トリプタンスリン(tryotanthrin)、インディルビン(indirubin)、更には、血小板凝集抑制作用を有するフラボノイド類が含有されていると報告がある。
本発明者らは、上述する既に報告されている薬効以外に、新規な医学的に有用な効果を探索すべく、古くから解熱・解毒などの薬用に供されていたタデ科植物の「蓼藍」(Polygonum tinctrium Aiton)、キツネノマゴ科植物の「琉球藍」(Strobilanthes flaccidifolium Nees)ならびに、トウダイグサ科植物の「山藍」(Mercurialis leiocarpa Siebold)の三種の植物に着目し、それらから作製される「藍調製物」が、HIV感染症においても、何らかの有用な薬理的効果を示すが否かを研究した。
本発明者らの研究によって、藍、すなわち「すくも」の水抽出物に関する抗HIV作用について、詳しくは、後述の実験例で述べるが、藍、特に、タデ科植物の「蓼藍」から得られる「すくも」水抽出物には、HIV:ヒト免疫不全ウイルスが、健常なリンパ球細胞に侵入する過程、具体的には、HIVがその表面抗原(gp120)を介して、T細胞表面に発現されているCD4抗原分子とケモカイン・レセプターに結合して、T細胞内へ侵入する過程において、このCD4抗原分子との結合過程を阻害する作用があること、また、HIVは、感染細胞内で変異を起こしつつ、ウイルス粒子の複製と、別の細胞への感染を繰り返して、感染者の体内において増殖・感染の拡大を進めるものであるが、この感染者の体内における感染の拡大・増殖の過程をも阻止する可能性が有することが判明した。
従って、「すくも」水抽出物は、強力な抗HIV作用を持ち、HIVの感染予防、治療に対して、重要な役割を果すことが期待される。
以下に、本発明をより詳しく説明する。
本発明における「藍調製物」とは、通常、タデ科植物「蓼藍」(Polygonum tinctrium Aiton)、場合によっては、
キツネノマゴ科植物「琉球藍」(Strobilanthes flaccidifolium Nees)、ならびに
トウダイグサ科植物「山藍」(Mercurialis leiocarpa Siebold)
の植物体・組織に対して、物理的または化学的処理を施した加工物全般を包含し、その際、原料として使用する部位、ならびに、その調製に利用する処理方法は問わない。
従って、藍染料の製造工程で作られる「すくも」と呼ばれる藍発酵物、すなわち、藍の葉・茎を収穫し、きざみ、乾燥した後、水をかけて2−3ヶ月間発酵させると、赤黒い腐葉土のような形状の発酵物となり、これは「すくも」と称される。この「すくも」は、本発明において、藍調製物として利用可能である。
本発明で用いる「藍調製物」ならびに「藍組成物」の調製方法の概略は、以下のごとくである。
「藍生素材」
前記「すくも」を、精製水あるいは海洋深層水中に2日間浸漬した後、遠心分離し、「すくも」中に含まれる可溶性成分を上清として採取する。この上清をミリポアフィルターで濾過して、除菌する。この除菌処理済みの濾液を、「すくも溶液」(すくも水抽出物)と称する。
「藍加熱素材」
前記「すくも溶液」に、更に、121℃で15分間加熱処理して、殺菌する。この加熱殺菌処理済みの「すくも溶液」を、特に、「加熱すくも溶液」と称す。
藍生葉を、精製水あるいは深層海洋水中に浸漬し、20分間加熱沸騰させた後、冷却・放置して、可溶性成分を溶出させる。次いで、遠心分離し、加熱沸騰処理により溶出される可溶性成分を上清として採取する。該上清をミリポアフィルターで濾過したものを、「加熱生藍溶液」と称する。
藍乾燥「葉・茎・根・種子・果実粉末」
収穫された藍の葉・茎・根・種子・果実を一旦乾燥した後、微粉末に粉砕し、加圧・加熱滅菌する。かかる加圧・加熱による滅菌処理済みの乾燥微粉末を、藍乾燥「葉・茎・根・種子・果実粉末」と称する。
「藍組成物」
抗HIV作用を有する植物由来の化合物が既に報告されているが、かかる抗HIV作用を有する化合物を含有する植物など、HIVの感染予防・治療に若干効果のあることが既に示されている他種植物と、例えば、上述する「藍の葉・茎・根・種子・果実の乾燥物」と混合した組成物を、本発明では、「藍組成物」と称する。
具体的には、本発明にかかるタデ科植物「蓼藍」由来の抗HIV作用を示す活性成分は、通常、「すくも」と呼ばれる藍発酵物から水抽出処理によって、「すくも溶液」(すくも抽出物)として分離されるが、場合によっては、発酵処理を施していない植物体を乾燥、粉砕した後、含有される水溶性成分の水抽出処理によって、採取する方法を適用してもよい。
以下に、具体例を利用して、本発明をより具体的に説明する。
なお、下記の各実験例には、タデ科植物「蓼藍」(Polygonum tinctrium Aiton)を用いて調製される「すくも溶液」(すくも水抽出物)の例を示す。
実験例1
「加熱生藍溶液」の調製
収穫した藍の生葉50gを、海洋深層水1リットル中に浸漬し、20分間加熱沸騰させた後、10℃以下に冷却し、時々かき混ぜながら2日間放置する。次いで、この浸漬物より、上澄み液を採取し、10,000rpmで、30分間遠心分離し、上清を分取する。更に、0.2ミリミクロンのミリポアフィルターにより濾過を施し、濾液 約900mlを得る。この濾液を、「加熱藍生溶液」と称する。
実験例2
「すくも溶液」ならびに「加熱すくも溶液」の調製
藍の葉・茎混合物を適宜の大きさに裁断・粉末化した後、3ヶ月間発酵させて「すくも」に調製する。調製された「すくも」:50gを、海洋深層水1リットル中に浸漬した後、10,000rpmで、30分間遠心分離し、上清を分取する。この上清を、0.2ミリミクロンのミリポアフィルターにより濾過して、発酵工程で増殖した菌を除菌した濾液を得る。この除菌処理済みの濾液を、更に、121℃で15分間加熱処理し、殺菌する。
前記除菌処理済みの濾液を、「すくも溶液」と称し、通常、この加熱殺菌処理済みの「すくも溶液」として利用されるが、特に、加熱殺菌処理前のものと区別する際には、「加熱すくも溶液」と称する。
なお、前記の「すくも溶液」ならびに「加熱すくも溶液」について、凍結乾燥処理を施し、その抽出物乾燥重量の測定を行った結果、「すくも溶液」ならびに「加熱すくも溶液」中の抽出物含有濃度は、8mg/mlであった。
実験例3
「藍乾燥葉・茎・根・種子・果実粉末」の調製
収穫された藍の葉・茎・根・種子・果実を一旦乾燥し、乾燥物を粒子径約50ミクロン以下の微粉末に粉砕し、121℃で15分間加圧・加熱処理を施し、滅菌する。この加圧・加熱により滅菌処理済みの乾燥微粉末を、その部位に応じて、「藍乾燥葉・茎・根・種子・果実粉末」と称する。
下記する抗HIV活性の検証実験において、利用する検証方法に関して、以下に説明する。
(1)宿主細胞
下記の検証実験において、HIVを感染させる宿主細胞として、ヒト・リンパ球由来のMT−4細胞(HTLV−I transformed T4−cell line)を用いた。
MT−4細胞の標準的培養条件として、37℃、5%CO2の条件下で、10%ウシ胎児血清、100μg/ml ストレプトマイシンと100U/mlのペニシリンGを添加したPRMI−1640培地での培養を利用した。
(2)HIV−1ウイルス液
感染に利用するHIV−1源として、HTLV−IIIBが持続感染したMOLT−4細胞(MOLT−4/IIIB)の培養上清液から、HIV−1ウイルス液を取得した。かかるHIV−1ウイルス液中のウイルス量は、指標TCID50により、予め定量評価した。
(3)抗HIV活性の評価法
被験物の有する抗HIV活性の評価は、MT−4細胞におけるHIV−1による細胞病原性効果を指標として、その抑制効果を評価した。
MT−4細胞におけるHIV−1による細胞病原性効果は、文献:Harada,Koyanagi & Yamamoto,Science,Vol.229 p.563−566(1985)に記載の方法に従って測定した。
MT−4細胞を、HIV−1を含む液(0.001/ウエルのTCID50)に1時間接触させ、感染させた後、未吸着ウイルスを洗浄し、除去した。次いで、前記感染処理を施したMT−4細胞を、RPMI−1640培地中に1.5×105cell/mlの濃度で再び懸濁した。96穴の培養プレート上で、200μl/ウエルの細胞懸濁液に被検物を各種濃度で添加した状態で、5日間培養した。コントロールには、培地に被検物を添加せず、HIV−1感染細胞(陽性対照)あるいは未感染細胞(陰性対照)を同様に培養したものを用いた。5日間の培養後、光学顕微鏡を用いて、HIV−1誘発によるCPE(細胞変性効果:巨細胞形成)を観察し、前記各種濃度添加群の観察結果に基づき、該CPEを完全に阻害する被検物の添加濃度を、IC100として決定した。
また、被検物自体の細胞毒性評価として、別途、被検物を各種濃度で添加した培地における細胞増殖試験により、MT−4細胞の生存率を減少させる添加濃度を求めた。なお、培養細胞の生存率の評価は、3−(4,5−dimethylthiazol−2−yl)−2,5−diphenyltetrazolium bromide(MTT)に対する生存細胞による還元反応を利用するMTT−アッセイ法に従って行う(J.Virol.Methods 20(4),p.309−21(1988))。
実験例4
実験例2に記載の調製法に従って、作製した蓼藍由来の「すくも溶液」について、その抗HIV活性を検証した。
先ず、培地に対する「すくも溶液」の添加比率は、「すくも溶液」自体を添加比率100%、「すくも溶液」無添加の培地を添加比率0%とし、体積比率により、その添加比率を定義し、以下の実験に用いた。抗HIV活性の評価実験に先立ち、この「すくも溶液」自体に、細胞毒性があるか否か予め検討した。すなわち、種々の比率で「すくも溶液」を添加した培養液中で、MT−4細胞、ならびに、HIV−1ウイルスを感染させたMT−4細胞を培養し、MTT Assayによりその生存率を評価する。その結果、HIV−1ウイルスを感染させたMT−4細胞におけるMTT Assay:moi=0.01(multiplicity of infection)において、「すくも溶液」の添加比率20%においても、細胞毒性のないことが確認された。
ついで、前記細胞毒性を示さないことが確認されている「すくも溶液」の添加比率範囲において、抗HIV活性の検証を行った。培地中への「すくも溶液」の添加による、MT−4細胞におけるHIV−1による細胞病原性効果に対する抑制作用を評価した。
MT−4細胞にHIV−1液(MOLT−4/IIIB cellの上清)を接触させ、感染させた後(MOI(multiplicity of infection)=0.01)、HIVウイルスを洗浄後、種々の比率で「すくも溶液」を添加する培養液中で5日間培養した。この後、感染細胞内でのHIV−1増殖に引き続き、増殖したウイルス粒子の細胞膜表面への表出に付随する細胞の形態変化(CPE(細胞変性効果):巨細胞形成)を光学顕微鏡にて観察した。表1に、CPE(細胞変性効果)の有無の評価結果を示す。「すくも溶液」の添加比率1.25%でも、CPE(細胞変性効果)は見出されず、また、完全に細胞融合を阻止していることが示された。
同時に、前記の5日間培養後、その培養上清中に存在するP24抗原タンパク質濃度を測定した。図1に、その測定結果を示す。前記CPEの抑制効果と対応するように、「すくも溶液」の添加比率1.25%でも、感染細胞において産生されるHIV−1ウイルスの培養上清への放出に相当する、P24抗原タンパク質濃度の上昇は抑制されていることが極めて明確に判る。
実験例5
P24抗原試験:MOLT−4/IIIB細胞に対して、種々の添加比率で「すくも溶液」を添加した培養液中で培養処理して、4日後に培養上清中のp24抗原タンパク質濃度を測定した。図2に、その測定結果を示す。
HTLV−IIIBが持続感染したMOLT−4細胞(MOLT−4/IIIB)を培養すると、培養液中に高濃度のHIV−1ウイルスを産生しつつ、一方で、分裂増殖を行って、持続感染細胞群の維持がなされる。このMOLT−4/IIIB細胞を、種々の比率で「すくも溶液」を添加した培養液中において4日間培養した後、培養液中に含有されるHIV−1ウイルス濃度に相当する、培養上清中のP24抗原タンパク質濃度を測定した。「すくも溶液」の添加比率ai0.6%、1.25%、2.5%の条件では、コントロール(「すくも溶液」無添加)と比較して、培養上清中のP24抗原タンパク質濃度に有意な変化は認められない。「すくも溶液」の添加比率ai20%の条件では、培養上清中のP24抗原タンパク質濃度は、コントロールと比較して、明らかに減少しており、その低減比率は、約57%であった。
実験例6
ヘパリン採血後、分離された末梢血単核細胞(PBMC:Peripheral bloodmonocytes)を植物性血球凝集素(PHA:phytohemagglutinin)で3日間刺激し、リンパ球が増殖していることを確認した。増殖を確認した上で、HIV−1ウイルス(MOLT−4/IIIB cellsの培養上清)を、該PMBCに2時間吸着させ、感染処理を行った(moi=0.1)。その後、この感染処理済みPMBCを、種々の比率で「すくも溶液」を添加した培養液中において、T細胞増殖因子IL−2存在下12日間培養した後、培養上清中のP24抗原タンパク質濃度を測定した。
図3に、培養上清中のP24抗原タンパク質濃度の測定結果を示す。培養液中に添加される「すくも溶液」の添加比率aiとともに、培養上清中のP24抗原タンパク質濃度は低下し、「すくも溶液」の添加比率ai0.2%でも、抑制作用は明らかであり、ai2%では、培養上清中において、P24抗原はほとんど検出されず、ほぼ100%抑制されていた。特に、「すくも溶液」の添加比率ai20%の条件では、12日間培養後の培養上清中には、P24抗原は全く認められなかった。
実験例7
HIVのウイルス外殻表面に存在する糖タンパク質gp120には、ヒト・T−リンパ球の白血球分化抗原であるCD4表面抗原分子との複合体形成能(レセプター機能)が存在する。また、HIVのgp120と複合体を形成するCD4分子は、HIVのT細胞への感染過程において、受容体の役割を果している。一方、培養液に添加する「すくも溶液」は、濃度(添加比率)依存的に、MOLT−4細胞において、HIV−1に対する受容体であるCD4抗原分子の表面発現を低下させた。図4に、種々の比率で「すくも溶液」を添加した培養液中において、MOLT−4細胞を24時間培養し、細胞表面にCD4抗原分子を発現している細胞数比率を評価した結果を示す。「すくも溶液」を無添加の培養におけるCD4抗原を発現発現している細胞数比率を基準(100%)として、相対評価を行ったところ、「すくも溶液」の添加比率ai2.5%では、92%に、ai5%では、42%に、ai10%では、26%に、ai20%では、10%になっており、濃度(添加比率)依存的にCD4抗原分子の表面発現が抑制されている。
さらに、前記「すくも溶液」を添加する培養液中で24時間処理した後、洗浄し、「すくも溶液」無添加の新しい培養液でMOLT−4細胞を培養すると、培養開始の6時間後には、CD4抗原の表面発現比率が再び上昇してくることも確認した。
実験例8
「すくも溶液」を添加した培養液中において、24時間の培養処理した後、かかる「すくも溶液」による処理を施したMOLT−4細胞にHIV−1ウイルス(MOLT−4/IIIB cellsの培養上清)を感染させる処理を施した。次いで、新しい培養液中で培養し、培養細胞内で産生されたP24抗原タンパク質に由来する、培養液中のP24抗原タンパク質濃度を観察した。なお、この実験では、「すくも溶液」を比率20%で添加した培養液を使用した。
具体的には、「すくも溶液」を4種準備し、それぞれ「すくも溶液」を比率20%で添加した培養液に調製し、前記「すくも溶液」添加培地中での24時間培養処理を施したMOLT−4細胞にHIV−1ウイルスを感染させる処理を施した。次いで、新しい培養液中で培養し、細胞内で複製・産生されたHIV−1ウイルスに由来する、培養上清中のP24抗原タンパク質濃度を測定した。図5に、P24抗原タンパク質濃度の測定結果を示す。「すくも溶液」無添加の培養液で前段の培養処理を行う陽性対照(positive control)において測定される、P24抗原タンパク質濃度を基準(100%)として、相対評価すると、上記4種の「すくも溶液」添加群において測定された、P24抗原タンパク質濃度は、最大のものでも数%以内であった。従って、上記4種の「すくも溶液」添加群においては、HIV−1ウイルスの感染と、感染後におけるウイルス由来のP24抗原タンパク質の産生に起因する、培養液中のP24抗原タンパク質濃度上昇は、ほぼ100%抑制されている。
実験例9
「すくも溶液」が示す抗HIV活性に関与する活性成分を見極めるために、さらに幾つかの実験を行った。
先ず、藍に含まれていることが既に知られている成分について、抗HIV活性の有無を調べた。例えば、アイ(Persicaria tinctria)などの含有されるindican(インドキシルのグリコシド)、このindicanを含む植物を発酵することで製造される天然藍染料の主成分indigo、その誘導体indigo carmine(5,5’−インジゴチン・ジスルホン酸二ナトリウム塩)などには、上述する抗HIV活性が全くないこと、具体的には、上述するHIV−1感染の抑制作用、あるいは、感染後におけるHIVウイルス粒子表出の抑制効果などに関して、上述のMTT assay法の利用、MOLT−4,MOLT−4/IIIB cocultureにおけるcell−fusion(Syncytium formation)assay法などの試験系により確認した。
「すくも溶液」が示す抗HIV活性に関与する活性成分については、下記する特徴的な性質を示す成分であることが判明した。
限外濾過膜により分画される、分子量10,000以上の可水溶性成分であること;
「すくも」の調製時になされる加熱処理を施した際、少なくとも、水中に浸漬し、100℃、1時間の加熱沸騰処理、「すくも」の調製における延べ3ヶ月間の発酵工程における加熱(60−70℃)などの熱的処理では、抗HIV活性は失われないこと、さらには、「すくも溶液」に対する、121℃、15分間の加熱滅菌処理、加えて、100℃、1時間の加熱処理、水溶媒の蒸発による乾固処理によっても、抗HIV活性は失われないこと;
「すくも溶液」は、0.5N HCl添加処理によって、沈澱を生成し、この沈澱には抗HIV活性あり、一方、上清には、活性がないこと;
「すくも溶液」は、0.5N NaOH添加処理では変化無く、溶液は、抗HIV活性を保持していること;
有機溶媒には、溶けにくく、「すくも溶液」にエタノールを添加すると、沈澱を生成し、この沈澱には抗HIV活性があるが、上清には活性はないこと;
「すくも溶液」は、三価の鉄イオンを含む、1%FeCl3,1%フェリシアン化カリウム(ヘキサシアノ鉄(III)酸カリウム)水溶液の添加によって、青色沈澱を生成し、還元性を有する、フェノール性OH基の存在を示す。
例えば、「すくも溶液」を蒸発・乾固処理し、得られる乾燥物は、有機溶媒(メタノール、ピリジン、アセトニトリル)では再溶解できず、0.1N NaHCO3水溶液、0.5N NaOH水溶液、あるいは水により再溶解できる。さらには、上述する実験例2に記載の「加熱すくも溶液」は、その製造工程において、121℃、15分間の加熱滅菌処理が施されているが、さらに100℃、1時間の加熱処理を施しても、抗HIV活性は相当な範囲で残されていた。また、該「加熱すくも溶液」に、0.5N NaOH水溶液による処理を施しても、沈澱等の生成はなく、抗HIV活性は保持されていた。一方、該「加熱すくも溶液」に、0.5N HCl水溶液による処理を施すと、沈澱を生成した。この上清を分離し、透析により中性に復し、その抗HIV活性を評価したところ、抗HIV活性は見出されなかった。分離した該沈澱は、水や有機溶媒には再溶解せず、0.1N NaHCO3水溶液あるいは、0.5N NaOH水溶液を添加すると、再溶解した。この沈澱分の再溶解液を、透析により中性に復し、その抗HIV活性を評価したところ、抗HIV活性が見出された。
該「加熱すくも溶液」を、分子量カット1万の限外濾過膜により、分子量10,000未満の可水溶性成分と、限外濾過膜上に残る分子量10,000以上の可水溶性成分とに分画すると、限外濾過膜を透過する分子量10,000未満の可水溶性成分の濾液には、抗HIV活性は見出されなかった。限外濾過膜上に残る分子量10,000以上の可水溶性成分を再溶解した液にのみ、抗HIV活性が見出された。
上述の各種の処理を施した際の抗HIV活性の評価は、MOLT−4,MOLT−4/IIIB cocultureにおけるcell−fusion(Syncytium formation)assay法における、50%阻害を与える添加比率(IC50)の測定によった。なお、別途、各被験水溶液中に含まれる成分合計を、乾燥重量として測定し、前記IC50は、培地単位体積当たりに添加される、かかる乾燥物重量(乾燥物重量/ml単位)で表記した。以下の表2に、抗HIV活性の評価結果を示す。
加えて、「加熱すくも溶液」に、5%酢酸ナトリウム/2.5M酢酸を含むエタノール混合液を、すくも溶液1容:エタノール混合液3容の比率で混合し、液温4℃で静置すると、沈澱形成が見られた。このエタノール沈澱分を濾別し、真空デシケーター中で乾燥した後、その乾燥物に水を加えると再溶解した。このエタノール沈澱溶解液について、その抗HIV活性を評価したところ、抗HIV活性が見出された。
また、「すくも」をメタノールで4時間還流抽出した後、その残渣に残留している可水溶性成分を水で還流抽出して得られる、メタノール抽出残渣・水抽出液に関しても、同様に、その抗HIV活性を評価したところ、抗HIV活性が見出された。すなわち、予めメタノール抽出を行うことで、メタノールに可溶解な、可水溶性成分を除去した後、水抽出される成分が、「加熱すくも溶液」中に含有される活性成分に相当すると考えられる。
この抗HIV活性の評価は、MTT assay法の利用により、細胞変性を50%阻害する添加比率(EC50)の測定によった。なお、別途、各被験水溶液中に含まれる成分合計を、乾燥重量として測定し、前記EC50は、培地単位体積当たりに添加される、かかる乾燥物重量(乾燥物重量/ml単位)で表記した。また、同時に測定される、細胞増殖を50%阻害する添加比率(50%細胞毒性濃度:CC50)についても、(乾燥物重量/ml単位)で表記した。以下の表3に、抗HIV活性の評価結果を示す。
従って、「すくも溶液」が示す抗HIV活性に関与する活性成分の純化には、下記の手順が利用できる。
(i) 先ず、限外濾過膜を利用する分画により、分子量10,000未満の可水溶性成分を除去し、限外濾過膜上に残る分子量10,000以上の可水溶性成分を水に再溶解する。
(ii) この再溶解水溶液に対して、例えば、5%酢酸ナトリウム/2.5M酢酸を含むエタノール混合液を、再溶解水溶液1容:エタノール混合液3容の比率で混合し、液温4℃で静置して、該活性成分を再沈澱化させ、分離・回収する。分離・回収した該活性成分の再沈澱物を濾別後、真空デシケーター中で乾燥処理して、保管する。
この粗純化処理、乾燥した活性成分は、再度水に溶解すると、その単位乾燥重量当たりの抗HIV活性は、元の「すくも溶液」中の単位乾燥重量当たりの抗HIV活性と比較し、格段に高いものとなる。
加えて、前記エタノール沈澱、再溶解した後、さらに0.5N HCl水溶液による処理を施し、生成する沈澱を分離・回収し、0.1N NaHCO3水溶液あるいは、0.5N NaOH水溶液を添加して、再溶解する処理により、さらなる純化を行うこともできる。
産業上の利用の可能性
本発明にかかる藍調製物、なかでも、タデ科植物に属する蓼藍(Polygonum tinctorium Aiton)由来の「すくも」水抽出物は、抗HIVウイルス活性を有し、特には、HIVウイルスの非感染細胞への侵入過程の阻止、感染後における細胞内でのHIVウイルス増殖・複製過程の阻止と、HIVウイルスによる感染ならびに、体内における感染の拡大も関与する機構の異なる過程をほとんど完全に抑制しており、相互に作用機序が異なる複数種の抗HIVウイルス作用を有しているため、耐性の獲得が低く、また、その予防、治療における効果は劇的である。しかも、本発明にかかる藍調製物、なかでも、蓼藍由来の「すくも」水抽出物は、副作用の発現は極めて低く、安全性も高く、更には、安価に提供でき、従って、長期間投与にも十分に耐えられると考えられる。加えて、本発明にかかる藍調製物、なかでも、蓼藍由来の「すくも」抽出物は、それ自体、相互に作用機序が異なる複数種の抗HIVウイルス作用を有しているため、他の薬剤との併用に際しても、患者に投与される薬剤数を減少させることが可能になり、結果として、これら併用薬剤における副作用の発現、耐性の獲得を遅らせることも可能とすることで、現在の薬剤治療にも好影響を与えることができると思われる。これらの利点を含めて、本発明にかかる藍調製物、なかでも、蓼藍由来の「すくも」水抽出物は、特に、感染予防、ならびに、AIDS発症の防止を目的とする薬物治療における抗HIV薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
図1は、HIV−1として、HTLV−IIIB株を利用し、ヒト・リンパ球由来のMT−4細胞への感染と、該HTLV−IIIB株ウイルスに感染した細胞内でのHIV−1増殖過程に対する、培養液中に添加する蓼藍由来の「すくも溶液」による抑制作用を評価した結果を示す。図1に示すグラフは、該HTLV−IIIB株ウイルス希釈液(0.001/ウエルのTCID50)に1時間接触させる感染操作後、MT−4細胞を種々の比率で「すくも溶液」を添加した培養液中において5日間培養した後、MOI(multiplicity of infection)=0.01の感染状態における、感染細胞内でのHIV−1増殖に引き続き、増殖したウイルス粒子の細胞膜表面への表出に付随して培養液中に溶出された、HIV−1ウイルス由来のP24抗原タンパク質濃度の評価結果を示す。
図2は、培養液中に添加する蓼藍由来の「すくも溶液」による、HTLV−IIIB株が持続感染しているMOLT−4細胞(MOLT−4/IIIB)の細胞培養液上清中に含まれるHIV−1ウイルス由来のP24抗原タンパク質濃度の抑制効果を評価した結果を示す。
図3は、PHA刺激によりTリンパ球の増殖を行うPBMCに対して、HTLV−IIIB株ウイルス液に2時間接触させる感染操作後(moi=0.1)、種々の比率で蓼藍由来の「すくも溶液」を添加した培養液中においてIL−2存在下12日間培養した後、培養上清中に含まれるHIV−1ウイルス由来のP24抗原タンパク質濃度の抑制効果を評価した結果を示す。
図4は、種々の比率で蓼藍由来の「すくも溶液」を添加した培養液中において、MOLT−4細胞を24時間培養し、細胞表面にCD4抗原分子を発現している細胞数比率を評価した結果を示す。
図5は、蓼藍由来の「すくも溶液」4種について、それぞれ「すくも溶液」を比率20%で添加した培養液に調製し、前記「すくも溶液」添加培地中で24時間の培養処理を施したMOLT−4細胞に、HIV−1ウイルスを感染させる処理を施した後、新しい培養液中で培養し、細胞内で複製・産生されたHIV−1ウイルスに由来する、培養上清中のP24抗原タンパク質濃度を測定した結果を示す。
Claims (4)
- タデ科植物に属する蓼藍(Polygonum tinctorium Aiton)由来の藍製造工程で調製される「すくも」の水抽出物中に含まれる、
分子量10,000以上の成分であり、
熱に安定であり、
水、アルカリには易溶で、酸には溶けにくく、
有機溶媒に難溶解性である、抗HIV作用を有する成分。 - 請求項1に記載の抗HIV作用を有する成分を、抗HIV作用を有する成分を含有する水性組成物の調製において、該水性組成物中に含有される抗HIV作用成分として使用する方法であって、
前記抗HIV作用を有する成分を含有する水性組成物は、
タデ科植物に属する蓼藍(Polygonum tinctorium Aiton)由来の藍製造工程で調製される「すくも」の水抽出物中に含まれる、前記請求項1に記載の抗HIV作用を有する成分の有効量が、水溶媒中に溶解されている水性組成物であり、
前記蓼藍の葉・茎から藍製造工程で調製される「すくも」の水抽出物の形態の藍調製物として、該水性組成物を調製することを特徴とする方法。 - 請求項1に記載の抗HIV作用を有する成分を、抗HIV作用を有する成分を配合する健康食品の製造において、該健康食品中に含有される抗HIV作用成分として使用する方法であって、
前記抗HIV作用を有する成分を配合する健康食品は、
タデ科植物に属する蓼藍(Polygonum tinctorium Aiton)由来の藍製造工程で調製される「すくも」の水抽出物中に含まれる、前記請求項1に記載の抗HIV作用を有する成分の所定量が、該成分を含む水性組成物として、食品中に配合されている健康食品であり、
前記水性組成物を、蓼藍の葉・茎から藍製造工程で調製される「すくも」の水抽出物の形態の藍調製物として調製した後、調製された前記水性組成物を用いて、所定量の前記請求項1に記載の抗HIV作用を有する成分の配合がなされることを特徴とする方法。 - 請求項1に記載の抗HIV作用を有する成分を、抗HIV作用を有する成分を含む医薬組成物の製造において、該医薬組成物中に含有される抗HIV作用成分の一つとして使用する方法であって、
前記抗HIV作用を有する成分を含む医薬組成物は、
タデ科植物に属する蓼藍(Polygonum tinctorium Aiton)由来の藍製造工程で調製される「すくも」の水抽出物中に含まれる、前記請求項1に記載の抗HIV作用を有する成分の所定量が、該成分を含む水性組成物として、該医薬組成物中に配合されている組成物であり、
前記水性組成物を、蓼藍の葉・茎から藍製造工程で調製される「すくも」の水抽出物の形態の藍調製物として調製した後、調製された前記水性組成物を用いて、所定量の前記請求項1に記載の抗HIV作用を有する成分の配合がなされることを特徴とする方法。
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